説明

自己縮合によるポリウレタン合成

本発明は式(I)、(式中、R1は特に直鎖または分岐のアルキル基、aは単結合または二重結合、R2は特に水素原子、R3及びR5はaが単結合のときは水素原子、かつaが二重結合のときは存在せず、R4は水素原子またはORb基、(ここでRbは水素原子または1〜12個の炭素原子から成るアルキル基である)、及びA1は二価アルキレン基である)、で表わされる構造をもつ化合物に関する。
式(I)
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己縮合によるポリウレタンの合成に関する。本発明はさらに、新規モノマー、その製造方法、及びポリウレタン合成のための新規モノマーの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、最も重要なポリマー材料の一つであり、機械工業、コーティング及び被覆、塗料、絶縁材料、弾性繊維、軟質フォーム、医療機器等の種々用途に多様な有用性をもつ素材である。さらに、ポリウレタンの化学特性により、ポリオール、イソシアネート及び重合方法との相関において、フォーム(軟質及び硬質)、熱可塑性材料、相互貫入性ポリマーネットワーク(IPNs)及びセグメントポリウレタン等の別種ポリマー材料の合成も可能である。
【0003】
最近、有益性、耐久性及び生分解性などを考慮して、植物油及び天然脂肪等の天然資源からポリウレタンを合成することに関心が持たれている。さらに、これら天然資源から成るものは、環境との親和性の面からも石油化学製品に比べて好ましい。近年、植物油からの広範な範囲にわたるポリマーの合成及びキャラクタリゼーションに関して多数の研究が行われている(MIyagawa, H., MIsra, M., Drzala, L.T., Mohanty, A.K., Polymer, 2005, 46, 445; Lu, Y., Larock, R.C., BIomacromolecules, 2008, 9, 3332; Wang, H.J., Rong, M.Z.; Zhang, M.Q., Hu, J., Chen, H.W., CzIgany, T., BIomacromolecules, 2008, 9, 615)。
【0004】
植物油はトリグリセリドであり、殆どの場合、植物油の化学構造中には少なくとも1種の不飽和脂肪酸が含まれている(PetrovIc, Z., Polymer RevIews, 2008, 48, 109)。酵素あるいは化学物質を用いて脂肪酸の構造を変え、及び官能基を組み入れる手法が多数知られている(LeItheIser, R.H., Peloza, C.C., Lyon, C.K., Cellular PlastIcs 1969, 5, 346; EhrIch, A., SmIth, M.K., Patton, T.C., J Am Shem Soc, 1959, 6, 149; Sakamoto, W.K., Kanda, D.H.F., Andrade, F.D.A., Das-gupta, D.K., J Mater. ScI., 2003, 38, 1465; Fan, Q., XIao, C., Polymer ComposIte, 2008, 758; Alam, J., RIaz, U., Ahmad, S., Polym. Adv. Technol. 2008, 19, 882; ZanettI-Ramos, B.G., Lemos-Senna, E., SoldI, V., BorsalI, R., Cloutet, E., CramaIl, H., Polymer, 2006, 47, 8080)。それゆえ、ポリオールの合成のため、菜種油、桐油、亜麻仁油、ひまわり油、大豆油等の種々植物油について試験が行われている。
【0005】
従来、ポリウレタンの合成はポリオールをイソシアネートと反応させることによって行われてきた。
【0006】
イソシアネートは反応性が高く、かつ有毒な化学物質である。それゆえ、イソシアネートを用いない合成ルート(非イソシアネート・ルート)によってポリウレタンを製造する方法を用いることが望ましい。
【0007】
ポリウレタンの製造を意図した新規ポリオールの合成研究は多数行われているが、イソシアネートを用いない植物油からのポリウレタンの合成に関する研究は多くない。
【0008】
現在、「非イソシアネート・ルート」としては2ルートがある。第一のルートは自己縮合方法であり、本方法では水酸基とアジド基が含まれるAB型モノマーが用いられる(Kumar, A., RamakrIshnan, S., Chem. Commun., 1993, 1453; Kumar, A., RamakrIshnan, S., J. Polym. ScI., Part A: Polym. Chem., 1996, 34, 839; Ranganathan, T., Ramesh, C., Kumar, A., Chem. Commun., 2004, 154)。第二のルートはアミンを用いた環状炭酸エステルの開環に関わる方法である(OchIaI, B., Satoh, Y., Endo, T., J. Polym. ScI. Part A: Polym Chem., 39, 4091, 2001)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、イソシアネートを用いない合成ルートによるポリウレタン製造の新規な方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、イソシアネート非存在下でポリウレタンの製造が可能であり、かつ化学量論的監視の可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明はさらに、イソシアネートの非存在下におけるポリウレタンの製造を意図した新規な反応モノマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記化学式(I):
【化1】

式中、
R1は、任意に1または2以上のORa置換基(Raは水素原子または炭素原子1〜20個から成るアルキル基を示す)で置換され、かつ1または2以上の不飽和部分を含む炭素原子1〜20個から成る直鎖又は分岐のアルキル基であり、
aは単結合または二重結合であり、
R2は水素原子、ORa基(Raは水素原子、または炭素原子1〜20個を含むアルキル基、またはOH基1個によって置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、あるいは式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2(CH2OCH2)n-CH3で表わされる基(nは1〜100の整数、好ましくは6〜50の整数、さらに好ましくは6、13または45を表わす)であり、
R3は、aが単結合であるときは水素原子を表わし、他方aが二重結合であるときは存在せず、
R4は、水素原子、またはORb基(Rbは水素原子、または炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個によって置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、あるいは式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3で表わされる基(nは1〜100の整数、好ましくは6〜50の整数、さらに好ましくは6、13または45を表わす)であり、
R5は、aが単結合であるときは水素原子を表わし、他方aが二重結合であるときは存在せず、及び
A1は、炭素原子1〜20個から成る二価の直鎖または分岐のアルキレン基を表わし、このアルキレン基は1または2以上の不飽和部分を任意に含む、化合物に関する。
【0013】
本発明において、前記基A1に1または2以上の不飽和部分が含まれる場合、上記化学式(I)の化合物を後続の工程において官能基化することが意図されている。この工程において、該不飽和部分へ化学的変更を加えることが可能である。例えば、エポキシ化を行ってから開環させることが可能であり、これによりA1鎖中へ水酸基を組み入れることが可能である。同様に、R1に1または2以上の不飽和部分が含まれる場合、上記化学式(I)の化合物の後続工程において官能基化を行うことも可能であり、この工程において不飽和部分に対して化学的変更を加えることが可能である。例えば、エポキシ化を行ってから開環させることが可能であり、これによりR1鎖中へ水酸基を組み入れることが可能である。
【0014】
本発明において、前記「アルキル基」は、炭素原子1〜20個、特に1〜12個、さらに好ましくは1〜10個、なおさらに好ましくは1〜5個を含む直鎖または分岐の飽和炭化水素基(これらアルキル基は典型例として式CnH2n+1で表わされ、nは炭素原子数を表わす)を表わす。アルキル基が直鎖であるときは、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、及びデシル基を挙げることができる。アルキル基が分岐あるいは1または2以上のアルキル基で置換されているときは、特にイソプロピル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、及び3-メチルヘプチル基を挙げることができる。用語「アルキル」はシクロアルキル基をも指し、それらシクロアルキル基としては、炭素原子を3〜20個、好ましくは3〜10個を含む、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルあるいは特にアダマンチル等の、飽和型または一部不飽和型、非芳香族系のモノ-、ビ-またはトリ-型環状炭化水素基、及び1または2以上の不飽和部分を含むそれらに対応する環状基が挙げられる。
【0015】
上述の「アルキル」基は1または2以上の置換基によって置換されていてもよい。このような置換基としては、アミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシル、アルキルアミノ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、シアノ、トリフルオロメチル、アルキルスルホニル、カルボキシ、またはカルボキシアルキルを挙げることができる。
【0016】
本発明において「アルコキシ」基は、式-O-アルキル(ここでアルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基である。
用語「アルキルチオ」基は、-S-アルキル(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「アルキルアミノ」基は、NH-アルキル(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「アルキルカルボニル」基は、-CO-アルキル(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「アルキルカルボキシル」基は、-COO-アルキル(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「アルキルスルホニル」基は、-SO2-アルキル(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
ハロゲン原子としては、特にフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
用語「アリールオキシ」基は、-O-アリール基(アリールは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「アリールアルコキシ」基は、アリール-アルコキシ基(アリール及びアルコキシは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。
用語「カルボキシアルキル」基は、HOOC-アルキル-基(アルキルは上記における限定と同様である)で表わされる基を指す。カルボキシアルキル基の例としては、特にカルボキシメチル、またはカルボキシエチルを挙げることができる。
【0017】
アリール基で置換されたアルキル基に対して、用語「アリールアルキル」基あるいは「アラルキル」基が用いられる。「アリールアルキル」基または「アラルキル」基はアリール-アルキル基であり、アリール基及びアルキル基は上記において限定されたそれぞれの基である。アリールアルキル基としては、特にベンジル基またはフェネチル基が挙げられる。これらアリールアルキル基を1又は2以上の置換基によって置換することが可能である。このような置換基としては、アミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシル、アルキルアミノ、アリールオキシ、アリルアルコキシ、シアノ、トリフルオロメチル、アルキルスルホニル、カルボキシ、またはカルボキシアルキルを挙げることができる。
【0018】
本発明において、「アルキレン」基とは、アルケンから2個の末端水素原子が取り除かれた基(アルキリデンとも称される)を指す。このアルキレン基が直鎖である場合、アルキレン基は式-(CH2)n-で示される。
【0019】
上記式(I)において、R1には有利な態様としてOH基で置換されたアルキル基、さらに具体的にはCH3(CH2)5CH(OH)CH2基である。好ましくは、上記式(I)においてR2はOH基である。上記式(I)において、R2は有利な態様として水素原子である。
【0020】
好ましくは、上記式(I)において、R4としてアルコキシ(ORb)基、ここでRbはアルキル基を表わす、より具体的にはOMe基が用いられる。
上記式(I)において、R4は有利な態様として水素原子であってもよい。
【0021】
本発明の有利な一実施態様において、本発明は上述した式(I)で表わされ、かつR1、R2及びR4の少なくとも1つがOH基またはアルコキシ基から成る化合物に関する。
【0022】
本発明の別の有利な実施態様において、本発明は上述した式(I)で表わされ、かつaが単結合であるときはR2及びR4の少なくとも一方がOH基またはアルコキシ基から成る化合物に関する。
【0023】
本発明はまた、下記式(I-1)
【化2】

式中、
R1は任意に1または2以上のORa置換基(Raは水素原子または炭素原子1〜20個から成るアルキル基を表わす)で置換され、かつ任意に1また2以上の不飽和部分を含む炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、
R2は水素原子、ORa基(Raは水素原子、炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個で置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、または式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3、(nは1〜100の整数、好ましくは6〜50、より好ましくは6、13または45)で表わされる基であり、
R3は水素原子であり、
R4は水素原子またはORb基(Rbは水素原子または炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個で置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、または式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3、(nは1〜100の整数、好ましくは6〜50、より好ましくは6、13または45を表わす)で表わされる基であり、
R5は水素原子であり、及び
A1は任意に1または2以上の不飽和部分を含む炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、
で表わされる好ましい化合物にも関する。
この式(I-1)で表わされる化合物は、前述した式(I)の化合物と、式中のaが単結合を表わしている点において一致している。
【0024】
本発明の有利な一実施態様において、本発明は前述した式(I-1)で表わされる化合物であって、該式中のR2基とR4基の少なくとも一方がOH基またはアルコキシ基から成る化合物に関する。
【0025】
本発明はまた、下記式(I-2):
【化3】

式中、
R1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、
Raは水素原子または炭素原子1〜12個から成るアルキル基であり、
Rbは水素原子または炭素原子1〜12個から成るアルキル基であり、及び
A1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる好ましい化合物にも関する。
この式(I-2)で表わされる化合物は、前述した式(I)で表わされる化合物と、式中のaが単結合であること、R3がH、R2がORa基、R4がORb基、及びR5がHである点において一致している。
【0026】
本発明の一実施態様において、本発明は前述した式(I-2)で表わされる化合物において式中のRaがHである化合物に関する。
【0027】
また、本発明の別の一実施態様において、本発明は前述した式(I-2)で表わされる化合物におけるRb基がメチル基である化合物に関する。
【0028】
また、本発明のさらに別の一実施態様において、本発明は前述した式(I-2)で表わされる化合物におけるA1基が特に炭素原子7個から成る直鎖のアルキレン基である化合物に関する。
【0029】
また、本発明のさらに別の一実施態様において、本発明は前述した式(I-2)で表わされる化合物におけるR1基が特に炭素原子8個から成る直鎖のアルキル基である化合物に関する。
【0030】
本発明はまた、下記式(I-3) で表わされる好ましい化合物にも関する。
【化4】

この化合物については、以下HMODAzと記載する。この化合物はアジ化物である10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノイルであり、ひまわり油から得られるAB型の新規なモノマーである。
【0031】
本発明はさらに、下記式(I-4):
【化5】

式中、
R1は任意に1または2以上のORa基(Raは水素原子または炭素原子1〜20個から成るアルキル基を表わす)によって置換され、かつ任意に1または2以上の不飽和部分を含む炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わし、
R2は水素原子、またはORa基(Raは水素原子、または炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個によって置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、あるいは式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3(nは1〜100の整数、好ましくは6〜50の整数、より好ましくは6、13または45を表わす)、であり、
R4は水素原子、またはORb基(Rbは水素原子、炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個によって置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、または式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3、(ここでnは1〜1000の整数、好ましくは6〜50の整数、より好ましくは6、13または45を表わす)で表わされる基であり、及び
A1は任意に1または2以上の不飽和部分を含む炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる化合物にも関する。
式(I-4)で表わされる化合物は、式中のaが二重結合を表わし、かつR3及びR5が欠如している点において、前述した式(I)の化合物と一致する。
上記式(I-4)において、R2は好ましくはHである。
また、上記式(I-4)において、R4は好ましくはHである。
【0032】
従って、上記式(I-4)で表わされる化合物から、下記式(I-5):
【化6】

式中、
R1は任意にOH基1個によって置換された炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、及び
A1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる化合物を導き出すことができる。
【0033】
式(I-5)で表わされる化合物は、式中のaが二重結合であり、かつR3及びR5が欠如しており、さらにR2及びR4がHである点において前記式(I)で表わされる化合物と一致する。
好ましくは、上記式(I-5)において、R1はOH基1個によって置換されたアルキル基である。
【0034】
従って、本発明は下記式(I-6):
【化7】

式中、
A1は前記式(I-5)における限定と同様であり、及び
R6は炭素原子1〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基である、によって表わされる化合物にも関する。
【0035】
本発明に係る好ましい化合物として、下記式(I-7)で表わされる化合物を挙げることができる。
【化8】

この化合物については以下HODEAzと記載する。この化合物はアジ化物である12-ヒドロキシオクタデカ-9-エカノイルであり、ひまし油から得られるAB型の新規なモノマーである。
【0036】
本発明はさらに、下記式(II)で表わされる化合物;
【化9】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、A1及びaは式(I)における限定と同様である、をトリエチルアミンの存在下でエチルクロロフォーメートと反応させ、次いでアジ化ナトリウムと反応させる工程を含む前記式(I)で表わされる化合物の調製方法にも関する。
好ましくは、前記式(II)の化合物の反応工程は2段階で行われる。第一段階では、トリエチルアミン存在下で化合物(II)がエチルクロロフォーメートとTHF/水混合液中、0℃で2時間反応され、及び第二段階で第一段階から得られた中間化合物が水中、0℃でアジ化ナトリウムと4時間反応される。
【0037】
本発明はまた、ポリウレタン調製のための1、前記式(I)の化合物の使用にも関する。
【0038】
本発明は、さらに具体的には、式(I-2)または式(I-3)で表わされる化合物の、下記式(III-1):
【化10】

式中、A1、R1及びRbは前記式(I-2)における限定と同様であり、及び
mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための使用に関する。
【0039】
本発明は、さらに具体的には、前記式(I-3)で表わされる化合物の、下記式(III-1-1):
【化11】

式中、mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための使用に関する。
【0040】
本発明はさらに、下記式(III-2):
【化12】

式中、
R6及びA1は前記式(I−6)における限定と同様であり、及び
mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための、式(I)の化合物、とりわけ式(I-4)、(I-5)、(I-6)または(I-7)で表わされる化合物の使用に関する。
本発明は、より具体的には、下記式(III-2-1):
【化13】

式中、mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための前記式(I−7)で表わされる化合物の使用に関する。
【0041】
本発明はさらに、下記式(III-3):
【化14】

式中、mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わし、及び
R6及びA1は前記式(I-6)における限定と同様である、に適合するポリウレタンの調製のための、式(I)で表わされる化合物、より具体的には式(I-4)、(I-5)、(I-6)または(I-7)で表わされる化合物の使用に関する。
【0042】
本発明は、より具体的には、下記式(III-3-1);
【化15】

式中、mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための前記式(I-7)で表わされる化合物の使用に関する。
【0043】
本発明はまた、前記式(I)で表わされる化合物の、50〜100℃、好ましくは80℃における、1〜48時間、好ましくは24時間に亘る自己縮合工程が含まれる、特に式(III-1)、(III-1-1)、(III-2)または(III-2-1)のいずれかに適合するポリウレタンの調製のための方法に関する。
【0044】
本発明はさらに、下記工程、
- 前記式(I)で表わされる化合物をR7OH、(R7は炭素原子1〜4個から成る直鎖または分岐のアルキル基、好ましくはメチル基を表わす)、と反応させて下記式(IV);
【化16】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、A1及びaは前記式(I)における限定と同様である、で表わされる化合物を得る工程、及び
- チタンブトキシドの存在下、80〜180℃、好ましくは130℃における、2〜48時間、好ましくは6時間に亘る式(IV)で表わされる化合物の重縮合工程から成る、特に式(III-3)または式(III-3-1)に適合するポリウレタンの調製のための方法にも関する。
好ましくは、本方法の前記第一の工程は4時間に亘って還流下で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】異なる重合時間後におけるHMODAz(5)の重合サンプルのFTIP (フーリエ変換赤外分光法) スペクトルを示した図である。
【図2】異なる時間間隔におけるHMODAz(5)の重合サンプルの(1H-NMR)プロトンのNMRスペクトルを示した図である。
【図3】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて実施したHMODAz(化合物5)の重合サンプルの分析値を時間関数で示した図である。
【図4】ポリウレタン(6)[式(III-1-1)で表わされる化合物]及びポリウレタン(9)[式(III-2-1)で表わされる化合物]のDSC(示差走査熱量測定)サーモグラムを示した図である。
【図5】レシノール酸(11)から得られたポリウレタンの(1H-RMN)プロトンのRMNスペクトルを示した図である。
【発明を実施するための手段】
【0046】
実施例
実施例1:HMODAz - 式(I-3)で表わされる化合物の合成
HMODAz化合物(下記の化合物5)を下記反応系に従って調製した。
【化17】


モノマー(5)は天然源、すなわち触媒MgOの存在下でメタノールでエステル交換反応されたひまわり油から入手した。
このモノマーHMODAzは5つの主工程から成る方法を用いて合成された。
【0047】
メチル-8-(3-オクチルオキシラン-2-イル)オクタノエート(2)の合成
オレイン酸メチル(1)(5.0 g; 0.017モル)(89%)(ITERG)とメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(4.3 g: 0.025モル)(AldrIch)をジクロロメタン(J. T. Baker)(100mL)中に溶解し、反応混合液を室温下で5時間撹拌しながら混合した。次いで反応混合液を濾過し、得られた溶液を重炭酸ソーダ(AldrIch)飽和水溶液(3×50mL)を用いて洗浄し、さらに水(3×50mL)で洗滌した。有機層を分離して、無水硫酸ソーダ上で乾燥させた。最後に、溶媒を回転下で蒸発させて除去し、中間化合物2を得た。
収量:4.8 g (91%)
IR:1740 cm-1(COOCH3), 841 cm-1(エポキシ)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.87 (3H, t, CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 2.29 (2H, t, CH2-COOCH3); 2.99 (2H, エポキシサイクルプロトン); 3.66 (3H, s, COOCH3)
【0048】
メチル-10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノエート(3)の合成
メチル-8-(3-オクチルオキシラン-2-イル)オクタノエート(2)(4.8 g;0.015モル)、アンバーリスト15(0.05 g)及び過剰量のメタノール(100mL)を12時間還流した。反応混合液を濾過し、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを除去した。反応混合液をジクロロメタン(100mL)中に溶解させ、水(3×50mL)で洗滌した。ジクロロメタン溶液を分離し、蒸発させて中間化合物3を得た。
収量: 4.7 g (89%)
IR: 3476 cm-1 (OH), 1740 cm-1 (COOCH3).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.88 (3H, t, CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 2.29 (2H, t, CH2-COOH); 2.99 (1H, q, CH-OCH3); 3.41 (3H, s, OCH3); 3.49 (1H, m, CH-OH); 3.66 (3H, s, COOCH3).
【0049】
10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノール酸(4)の合成
メチル-10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノエート(3)(4.0 g; 0.012モル)を1Nメタノール・水酸化ナトリウム溶液(100mL)(AldrIch)中に溶解し、還流下で12時間加熱した。反応混合液からメタノールを除去し、粗生成物を水100mL中に溶解した。得られた水溶液を塩酸(AldrIch)を用いて中性化して、ジクロロメタン(J.T. Baker)3×50mLを用いた抽出により生成物を得た。ジクロロメタン溶液を水3×50mLで洗滌し、次いで無水硫酸ソーダ(J.T. Baker)上で乾燥させた。ジクロロメタン溶液を濾過し、溶媒を除去して中間化合物4を得た。
収量: 3.50 g (91%)
IR: 3435 cm-1 (OH), 1709 cm-1 (COOH).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.86 (3H, t, CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 2.34 (2H, t, CH2-COOH); 2.98 (1H, q, CH-OCH3); 3.39 (3H, s, OCH3); 3.47 (1H, m, CH-OH).
13C-RMN (400 MHz, CDCl3): 179.32 ppm (COOH); 84.41 ppm (CH-OMe); 72.20 ppm (CH-OH); 58.31 ppm (OCH3); 22-35 ppm (アルキル鎖プロトン)及び13.90 ppm (CH3).
【0050】
AB型モノマー: 10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノイル(HMODAz)(5)アジ化物の合成
マグネチックスターラー及び添加漏斗が取り付けられた100mL丸底フラスコへ10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノール酸(4)(2.0 g; 0.006モル)、トリエチルアミン(AldrIch)(1.8 g; 0.018モル)及びTHF/水混合液(7:3v/v, 30mL)を加えた。反応混合液を0℃まで冷却し、該反応混合液にクロロエチルフォーメート(Fluka)(1.96 g; 0.018モル)を10分間かけて滴下した。反応混合液を2時間撹拌してから、水(7mL)にアジ化ナトリウム(AldrIch)(1.2 g; 0.018モル)を加えた溶液を10分間かけて滴下し、0℃で4時間撹拌した。THFをロータリーエバポレーター中において除去し、集めた粗生成物をジクロロメタン(100mL)中に溶解した。ジクロロメタン溶液を水(2×50mL)で洗滌し、無水硫酸ソーダ(J.T. Baker)上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去して化合物HMODAz(5)を得た。
収量: 2.0 g (92%)
IR: 3465 cm-1(OH, 2138 cm-1 (N3), 1720 cm-1 (CO).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.87 (3H, t, CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 2.32 (2H, t, CH2-CON3); 2.98 (1H, q, CH-OCH3); 3.39 (3H, s, OCH3); 3.47 (1H, m, CH-OH).
13C-NMR (400 MHz, CDCl3): 180.09 (CON3); 84.11 (CH-OMe); 72.23 (CH-OH); 57.73 (OCH3); 21-37 (アルキル鎖プロトン)及び13.54 (CH3).
HMODAzモノマーは2位水酸基とイソシアネート官能基の前駆体としてのアシルアジド基をもつ自己縮合モノマーである。
【0051】
HMODAz(5)のAB型自己縮合による重合
マグネチックスターラー及び窒素ガスインレットが取り付けられた50mL二口丸底フラスコへ10-ヒドロキシ-9-メトキシオクタデカノイル(5)(2.0 g; 0.005モル)を加え、このフラスコを油浴中に、種々温度(50℃、60℃、80℃及び110℃)において、かつ異なる時間間隔に亘って保持した。
収量: 1.80 g (90%)
IR: 3338 cm-1 (NH), 1695 cm-1 (CO), 1526 cm-1 (NH変形)、1230 cm-1 (C-N).
1N-RMN (400 MHz, CDCl3): 0.87 (CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 3.18 (-CH2-NHCOO); 3.39 (OCH3); 4.88 (NH).
【0052】
実施例2: HMODAzの合成 − 式(I-7)の化合物
HMODAz化合物(以下における化合物8)を下記反応系に従って調製した。
【化18】

【0053】
AB型モノマーの合成: 12-ヒドロキシオクタデク-9-エノイル(HMODAz)(8)のアジ化物
HMODAz(5)の合成に用いた手順と同様の手順を、リシノール酸(80%)(TCI ChemIcals)から出発するAB型のHODEAzモノマー(8)の合成に適用した。
リシノール酸はcIs構造中にC9二重結合をもつOH基を含むC18脂肪酸である。
収量:90%
IR: 3400 cm-1 (OH), 3008 (=C-H), 2133 cm-1 (N3), 1720 cm-1 (CO).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.87 (3H, t, CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 2.31 (2H, t, CH2-CON3); 3.58 (1H, m, CH-OH); 5.3-5.6 (CH=CH).
13C-RMN (400 MHz, CDCl3): 180.53 (CON3); 132.96及び125.31 (CH=CH); 71.38 (CH-OH); 42.88 (CH2CON3); 36.78及び35.25 (CH2-CH(OH)-CH2); 21-37 (アルキル鎖プロトン)及び13.54 (CH3).
【0054】
HODEAz(8)の自己縮合による重合
式(9)で表わされるポリマーを得るための重合は、実施例1において式(6)で表わされるポリマーについて前述した反応手順に従って行われる。
【0055】
実施例3: HMODAzの自己縮合、反応進行の特徴付け及び監視
本発明に従ったポリウレタンの合成は、アジ化ナトリウムの自己縮合及び水酸基の自己縮合を基盤としている。この技術には以下の長所、すなわち、I)「ワンポット」法を用いることによりモノマーの加熱が僅かであるため反応が温和な条件下で起こる特長、及びII)モル比の最適化が不要な特長がある。
HMODAz(5)の自己縮合は、50℃、60℃、80℃及び110℃等の異なる温度で生ずる。表1に反応の詳細な条件及び重合結果を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
重合に用いられた温度のすべてが有効であることが見出された。温度はアジ化アシルの分解及び重合比率に重大な影響を与える要素である。例えば、試験1(50℃で実施)と試験4(vII)(80℃で実施)を比較することにより、80℃で反応させた場合において高分子量が得られることが確認される。
【0058】
前記反応の進行についてより完全な分析を行うため、80℃において異なる重合試験を実施した。
【0059】
図1及び図2は、それぞれ重合の進行におけるFTIRスペクトル及び1H-NMRスペクトルの説明図であり、図3は反応を監視するSECスペクトルの説明図である。
【0060】
アシルアジド基(CON3)の存在による2138cm-1におけるバンドは、80℃まで加熱される時にイソシアネート基に対応する2270cm-1におけるバンドによって置き換えられる。3341cm-1に吸収バンドが観察されるのは、N-Hウレタン結合があるためである。反応進行中、15分後に採取したサンプルから、IRスペクトルに基づいて、アジ化アシル基がほぼ完全にイソシアネート基へ移行していることが示された(図2)。FTIR分析後、前記サンプルをエタノールと反応させるために残し、1H-NMR分光法によって分析した。ウレタン基へ結合されたメチレン基のプロトンの存在により、ピークは4.06ppm(Hg)に観察された(図2)。
【0061】
前記サンプルのFTIRスペクトルにより、重合時間が増加されるに従ってイソシアネートバンド(2270cm-1)の強度が減少し、他方ポリウレタンの生成によってN-Hバンド(3338cm-1)の強度が増加することが示された。1720cm-1にあるアジ化アシルのカルボニル基のバンドは、ウレタン結合の生成によって、より低周波数(1695cm-1)へと移動する。
【0062】
1H-NMRスペクトルについても同様な結論が得られた。末端基としてのカーバメート基(NH-COO-CH2CH3)に付加されるメチレンプロトンについての4.06ppmにおけるピーク強度は、ポリウレタンの分子量の増加により、時間(15分、1時間、3時間など)とともに減少する(図2)。ウレタン基のNHプロトンによる4.80ppmにおけるピーク強度の増加、及びポリウレタン(-CH2-NH-COO-)のウレタン基へ結合されたメチレン基のプロトンによる3.16ppmにおけるピーク強度の増加も観察された。
【0063】
SECクロマトグラフィーの結果から、15分後に得られたサンプルにトレース量のダイマー、トリマー及びテトラマーと、それより多い量のイソシアネートモノマーが生成されることが示されている(図3)。重合時間が増えると、オリゴマーに対応するSECピークの強度が減少し、SECピークはより高い分子量の方へ移動する縮合重合のメカニズムが示される。
【0064】
実施例4:HODEAzの自己縮合、反応進行の特徴付けと監視
HODEAzモノマー(8)の自己縮合は異なる温度(60℃及び80℃)において生じた。下記表2に反応の詳細条件及び縮合重合結果を示す。
【0065】
【表2】

【0066】
この表から、60℃で合成されたポリウレタンの分子量は80℃で自己縮合によって得られたポリウレタンの分子量よりも小さいことが確認される。
【0067】
実施例5: 示差走査熱量測定による分析
図4は、10℃/分の加熱速度で自己縮合させたHMODAz (5)及びHODEAz (8)から生じたポリウレタンについてのDSCサーモグラムを示した図である。HMODAzから合成されたポリウレタンのガラス転移温度は-20℃であり、またHODEAzから合成されたポリウレタンのガラス転移温度は-48℃である。それゆえ、これらポリウレタンが室温よりも低い低ガラス転移温度をもつことを確認することは重要である。従って、これらポリウレタンを他の剛性なブロックポリマーと結合させて熱可塑性エラストマーを調製することが可能である。
【0068】
実施例6: リシノール酸からのポリウレタンの合成
下記反応系に従ってAB型モノマー(以下、化合物10と記載する)を調製した。
【化19】

【0069】
ウレタン交換反応のためのAB型モノマーであるメチル-11-ヒドロキシヘプトデク-8-エニルカーバメート(10)の合成
マグネチックスターラー及び環流凝縮器が装着された100mL丸底フラスコ中へ、12-ヒドロキシ-オクタデク-9-エノイル(8)のアジ化物(2.0g; 0.006モル)及びメタノールドライ(50mL)を加えた。反応混合物を4時間環流下に置いた後、過剰のメタノールをロータリーエバポレーターによって除去した。粗カーバメート生成物をジクロロメタン(100mL)中に溶解し、水(2×50mL)で洗滌し、無水硫酸ソーダ上で乾燥させ、ろ過し、次いで溶媒を除去してカーバメート(10)を得た。
収量: 1.85 g (92%)
IR: 3600-3400 cm-1 (OH), 3334 (NH), 3008 (=C-H), 1703 cm-1 (CO).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.87 (3H, t, CH3); 11.20-1.70 (メチレンプロトン); 3.14 (2H, CH-NHCOO-); 3.59 (1H, m, CH-OH); 4.63 (1H, NH-COO); 5.3-5.6 (CH=CH).
【0070】
化合物(10)を得るための(ウレタン交換反応を介した)縮合重合
マグネチックスターラー、真空アダプター及び窒素ガスインレットが取り付けられた50mL容量の二口丸底フラスコ中へ、メチル-11-ヒドロキシヘプトデク-8-エニルカーバメート(1.0g; 0.003モル)及びチタンテトラブトキシド(0.035g; 1×10-4モル)を加えた。反応混合液を窒素ガスを用いて2度浄化して真空状態とした。反応フラスコを窒素ガス浄化下温度130℃で4時間油浴中に、次いで130℃で2時間真空中に保持した。
収量: 0.80 g (80%)
IR: 3338 cm-1 (NH), 1695 cm-1 (CO), 1526 cm-1 (NH変形), 1230 cm-1 (C-N).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.86 (CH3); 1.20-1.70 (メチレンプロトン); 3.13 (-CH2-NHCOO); 3.63 (OCH3); 4.86 (NH); 5.3-5.6 (CH=CH).
【0071】
ウレタン交換反応は非イソシアネートルートによる溶媒を使用しないポリウレタン合成反応である。この反応は、触媒の存在下でのビスウレタン(A-A)とジオール(B-B)との縮合によって成る反応である。しかしながら、本発明方法、すなわち触媒としての化合物(10): メチル-11-ヒドロキシ-8-エニルカーバメート(10)の存在下におけるAB型モノマーの縮合を用いて成る別のルートがある。
【0072】
ウレタン交換反応による縮合重合は、温度130℃において触媒としてのチタンテトラブトキシドの存在下で2段階によって行った。第一段階では、窒素流下での130℃4時間の撹拌によって反応を行い、オリゴマーを得た。第二段階では真空中、温度130℃において2時間反応を実施してオリゴマーの付加縮合を行った。得られたポリマーについてIR、NMR及びGCによりキャラクタリゼーションを行った。下記表3にウレタン交換反応の反応条件及び結果を示す。触媒の不存在下、ウレタン交換反応による分子量の増加は生じなかった。ポリウレタン(11)の1H-NMRスペクトルによって、ポリウレタンの構造を確認した(図5)。ウレタン交換反応の確認は、3.13ppmにおける-CH2NHCOO-プロトンによる信号強度に比較した3.65ppmにおけるOCH3プロトンの強度の減少に基づいて行った。上記反応温度において、ポリマー中の二重結合の存在は、二重結合による二次反応がないことを示唆するものである。
【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

式中、
R1は、任意に1または2以上のORa置換基(Raは水素原子、または任意に1または2以上の不飽和部分を含み、かつ炭素原子1〜20個から成るアルキル基を表わす)によって置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、
aは単結合または二重結合を表わし、
R2は水素原子、ORa基(Raは水素原子、あるいは炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個で置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、または式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3、(nは1〜100、好ましくは6〜50の整数、さらに好ましくは6、13または45を表わす)で表わされる整数であり,
R3は、aが単結合であるときは水素原子を表わし、またはaが二重結合であるときは存在せず、
R4は水素原子、またはORb基(Rbは水素原子、または炭素原子1〜20個から成るアルキル基、またはOH基1個で置換された炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐のアルキル基を表わす)、あるいは式-(OCH2CH2)n-OHまたは-CH2-(CH2OCH2)n-CH3、(nは1〜100、好ましくは6〜50の整数、さらに好ましくは6、13または45を表わす)で表わされる整数であり,
R5は、aが単結合であるときは水素原子を表わし、またはaが二重結合であるときは存在せず、及び
A1は任意に1または2以上の不飽和部分を含み、かつ炭素原子1〜20個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる化合物。
【請求項2】
前記式(I)中のR1、R2及びR4の少なくとも1つがOH基またはアルコキシ基から成ることを特徴とする請求項1項記載の化合物。
【請求項3】
前記式(I)において、aが単結合を表わすとき、R2及びR4の少なくとも1つがOH基またはアルコキシ基から成ることを特徴とする請求項1項または2項記載の化合物。
【請求項4】
【化3】

式中、
R1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、
Raは水素原子または炭素原子1〜12個から成るアルキル基であり、
Rbは水素原子または炭素原子1〜12個から成るアルキル基であり、及び
A1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
下記式(I-3):
【化4】

で表わされる請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
下記式(I-5):
【化6】

式中、
R1は、任意にOH基1個で置換された、炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基であり、
A1は炭素原子6〜12個から成る直鎖または分岐の二価アルキレン基である、で表わされる請求項1項または2項記載の化合物。
【請求項7】
下記式(I-7):
【化8】

で表わされる請求項6項記載の化合物。
【請求項8】
下記式(II):
【化9】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、A1及びaは請求項1における限定と同様である、で表わされる化合物をトリエチルアミン存在下でエチルクロロフォーメートと反応させ、次いでアジ化ナトリウムと反応させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の式(I)で表わされる化合物の調製方法。
【請求項9】
ポリウレタンの調製のための、請求項1〜7のいずれかに記載の式(I)で表わされる化合物の使用。
【請求項10】
下記式(III-1):
【化10】

式中、A1、R1及びRbは請求項5における限定と同様であり、及び
Mは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、なおさらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための請求項4項または5項記載の式(I)で表わされる化合物の使用。
【請求項11】
下記式(III-2):
【化12】

式中、A1は請求項6項における限定と同様であり、R6は炭素原子1〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基、及びmは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、さらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための請求項6項または7項記載の式(I)で表わされる化合物の使用。
【請求項12】
下記式(III-3):
【化14】

式中、A1は請求項6項における限定と同様であり、R6は炭素原子1〜12個から成る直鎖または分岐のアルキル基、及びmは2〜50,000の整数、好ましくは2〜10,000の整数、より好ましくは2〜5,000の整数、さらに好ましくは2〜50の整数を表わす、に適合するポリウレタンの調製のための請求項6項または7項記載の式(I)で表わされる化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の温度50〜100℃、好ましくは80℃における1〜48時間、好ましくは24時間に亘る自己縮合工程が含まれることを特徴とするポリウレタンの調製方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物のアルコールR7OH、(R7は炭素原子1〜4個から成る直鎖または分岐のアルキル基、好ましくはメチル基をあらわす)と反応させて下記式(IV):
【化16】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、A1及びaは請求項1項における限定と同様である、で表わされる化合物を得る工程と、
温度80〜180℃、好ましくは130℃における式(IV)で表わされる化合物のチタンテトラブトキシドの存在下での2〜48時間、好ましくは6時間に亘る縮合重合工程から構成されるポリウレタンの調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508468(P2013−508468A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533681(P2012−533681)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052190
【国際公開番号】WO2011/045546
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512003744)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (C.N.R.S)
【Fターム(参考)】