説明

自己診断機能付き近接センサ

【課題】振動態様を自己診断しこの自己診断から故障を予知することができる近接センサを提供する。
【解決手段】検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部12と、近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部20と、非接触センサ部12のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部14と、振動センサ部20のセンサ信号により上記振動態様が設定した態様外か否かの自己診断と、設定外の振動態様が継続すると上記検出が正常に維持できずに故障することを予知する自己診断とを行う自己診断部22とを備えた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己診断機能付き近接センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近接センサは、検出対象に非接触の状態で当該検出対象の存在や移動等を電気信号に置き換えて検出することができるものであり、種類も多く、またその用途も多岐にわたっている。例えば、検出対象が金属である高周波発振型や、検出対象が金属で無くても検出することができる静電容量方式等がある。こうした近接センサの信号出力形態にはアナログ出力、オンオフ出力等がある。そして近接センサは、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に制御機器の状態を検知入力する入力機器の1つとして用いられる。
【0003】
以上の近接センサではその用途によっては振動が加わる環境下で検出対象の存在や移動等の検出に使用される場合、その振動が過度な場合、また過度でなくても一定以上の振動が継続して加わった場合、あるいは過度な振動が一定回数加わった場合、等では破損することがある。例えば高周波発振型の近接センサでは発振コイルが衝撃で断線することがある(特許文献1参照)。このように近接センサが検出を行う上でその機能に異常を来たしていたり、極端には破損しているのに、その近接センサからあたかも正常なごとく信号の入力がPLC等のコントローラに対して継続されたのではコントローラを用いた制御システムにはきわめて不具合である。特に、工程を無人自動化するファクトリーオートメーション(FA)の分野でPLCを用いる場合では、極力回避し、近接センサが正常に作動中にそうした振動による不具合が事前に対処できることが要請されている。
【特許文献1】特開平08−038685
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は近接センサが衝撃等の振動で正常な動作に異常を来たすおそれがある場合に、正常に動作している間に、その振動に対して自己診断を行い、この自己診断からそうした異常を予知することができる近接センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明第1による近接センサは、検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部と、当該近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部と、上記非接触センサ部のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部と、上記振動センサ部のセンサ信号により当該近接センサに加わる振動態様が、当該近接センサが現在は正常でも事前に故障を予知すべき振動態様か否かの自己診断を行い、故障を予知すべき振動態様のとき故障予知信号を出力する自己診断部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明第1では、近接センサが正常に動作している間に、振動センサ部のセンサ信号から、現在は正常に動作しても故障することを予知できるので、この近接センサからPLC等のコントローラにその予知を入力することにより、当該コントローラを含む制御システムは近接センサのセンサ信号を用いた制御に関して安全にシステムを運営制御することができるようになる。
【0007】
本発明第2による近接センサは、検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部と、当該近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部と、上記非接触センサ部のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部と、上記振動センサ部のセンサ信号により当該近接センサに加わる振動態様が、当該近接センサが正常にセンサ動作ができる振動態様か否かの自己診断と、当該近接センサが破損する振動態様か否かの自己診断と、当該近接センサが現在は正常でも事前に故障を予知すべき振動態様か否かの自己診断とのうちの少なくともいずれか1つの自己診断を行なう自己診断部と、上記自己診断の行うモードにするか否かを選択する自己診断モード選択部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明第2では、自己診断モードを選択すると、近接センサが正常に動作できる程度の振動態様か、あるいは、近接センサが破損するような振動態様か、あるいは、現在は正常に動作しても故障を起こす振動態様かを自己診断することができるので、近接センサを用いるPLC等のコントローラを含めた制御システム全体ではそのシステムを安全に運営制御することができるようになる。
【0009】
本発明の好ましい一態様は、上記自己診断を行う振動態様は、近接センサに加わる振動強度、振動周期、振動の累積時間の選択的な組み合わせである。
【0010】
本発明の好ましい一態様は、上記振動センサ部は、加速度センサであり、自己診断部は、加速度センサのセンサ信号から振動加速度が所定値を超えたと自己診断したときに故障予知信号を出力することである。
【0011】
本発明の好ましい一態様は、上記いずれかの自己診断の結果をコントローラに入力することが可能になっていることである。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、上記自己診断部は、当該近接センサが破損する振動態様であると自己診断したとき、センサ処理部ないしはその出力部に出力禁止信号を入力することである。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、上記自己診断部は、上記振動センサ部のセンサ信号の信号波形から上記振動態様の自己診断を行うことである。
【0014】
本発明の好ましい一態様は、上記自己診断部は、マイクロコンピュータからなり、このマイクロコンピュータは、振動態様を判定する判定条件を書き換え可能に記憶している記憶手段と、上記振動センサ部からのセンサ信号と上記メモリが記憶している判定条件とから上記自己診断を行う自己診断手段と、を備えることである。上記記憶手段により、振動態様の判定条件を書き換え可能としていることにより、近接センサが配置使用される環境に対応して近接センサをその環境に即した状態にセットすることができるようになる。
【0015】
なお、振動センサ部のセンサ信号の信号波形から振動強度、周期、振動の履歴、振動の累積時間、等を把握して、例えば高周波発振型では非接触センサ部内の発振コイルが断線している可能性があると自己診断可能としてもよい。また、振動の周期の変化やその変化の履歴等から、近接センサが設置される使用環境の状態を把握することが可能となり、当該近接センサを用いた制御システムをより適確に対処可能とすることができるようになる。
【0016】
なお、本発明では、直流2線式、直流3線式のいずれの近接センサにも適用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の近接センサによれば、衝撃等の振動で正常な動作に異常を来たすおそれがある場合、正常に動作している間に、その異常を予知することができる。したがって、この近接センサを用いた制御システムをより適確安全に対処可能とすることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る近接センサを説明する。図1に同近接センサ全体のブロック構成を示す。図1を参照して、10は実施の形態の近接センサ全体を示す。12は検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部である。この非接触センサ部12は、誘導型であれば、検出コイルを含む検出回路である。また、静電容量型であれば例えば電極やその他の回路等を含む。14は、非接触センサ部12のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部である。例えば上記検出回路出力を検波する検波回路等を含む。16は、センサ処理部14の処理結果を出力信号として図示略のコントローラに出力する出力部である。18はセンサ処理部14の出力を表示する表示部である。この表示部18は例えば発光ダイオードで構成され、センサ処理部14の出力で発光して動作表示することができるようになっている。この表示部18の配置位置は特に限定するものではなく、センサ処理部14と出力部16との間でもよい。
【0019】
出力部16は例えばベースにセンサ処理部14が接続され、コレクタ・エミッタが直流電源ラインと接地との間に接続されたトランジスタで構成され、上記直流電源ラインに負荷が接続されたタイプ、あるいは、ベースにセンサ処理部14が接続され、コレクタが負荷を介して直流電源ラインに接続され、エミッタが接地されたトランジスタで構成されたタイプの近接センサに適用することができる。
【0020】
20は当該近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部である。この振動センサ部20は接触型、非接触型を問わない。接触型では、加速度型として圧電加速度センサが好ましい。この圧電型は振動や衝撃等を検出することができる。例えばこの圧電型では、圧電素子を衝撃で変形可能とし、この変形で圧電素子が発生する電圧信号を振動センサ信号とするものである。
【0021】
22は自己診断部である。この自己診断部22はマイクロコンピュータにより構成されている。自己診断部22は、振動センサ部20のセンサ信号により近接センサの振動態様が設定した態様外か否かの第1自己診断と、その振動態様が上記設定外で近接センサを破損させる衝撃以上であるか否かを自己診断し衝撃以上ではコントローラを停止させる停止信号を出力させる第2自己診断と、振動態様が上記設定外で上記衝撃未満であるが振動態様が継続すると上記検出が正常に維持できずに故障することを予知する故障予知信号を出力させる第3自己診断とを行うようになっている。
【0022】
23は自己診断モード選択部である。この自己診断モード選択部23は、上記第1から第3自己診断のいずれの自己診断モードを選択することができるようになっている。自己診断部22は、自己診断モード選択部23からの自己診断モード選択入力に対応した自己診断を選択する。また、自己診断部22は、その自己診断モード選択入力が無い場合は、第1ないし第3の自己診断を行うことができるようになっている。
【0023】
24は設定部である。設定部24は第1ないし第3自己診断の設定を入力することができるようになっている。設定部24では、第1自己診断の設定入力として、例えば、近接センサの振動態様を例えば振動強度で態様分けすると、「強」、「中」、「弱」をそれに対応した数値入力する。自己診断部22では、振動センサ部20からのセンサ信号を分析し、振動態様を振動強度で判定し、それぞれ、その振動強度が「強」以上であれば、振動強度「強」とする自己診断信号、「強」未満、「中」以上であれば、振動強度「中」とする自己診断信号、「中」未満、「弱」以上であれば、振動強度「弱」とする自己診断信号、「弱」未満であれば、振動が近接センサに影響しないとする自己診断信号を出力する。
【0024】
また、設定部24は、第2自己診断のための設定を入力することができるようになっている。例えば、設定部24からは近接センサの振動態様が当該近接センサを破損させてしまう衝撃の設定値を入力すると、自己診断部22はこの衝撃超過の振動では上記停止信号を出力させる自己診断処理を行う。
【0025】
また、設定部24は、第3自己診断のための振動強度、振動周期、振動の累積時間、等を設定入力することができるようになっている。自己診断部22はその設定入力により、例えば設定部24から近接センサが破損はしないが継続してその強度と周期の振動が加えられると、近接センサが故障してしまうことを予知するための故障予知信号を生成して出力させる自己診断処理を行う。
【0026】
これに自己診断部22からの自己診断は、第1自己診断では自己診断信号とし、第2自己診断では停止信号として、第3自己診断では故障予知信号として出力部26に出力されると共に、この出力部26から図示略のコントローラに与えられるようになっている。この出力部26は例えばベースが自己診断部22に接続され、コレクタが自己診断出力用負荷に接続され、エミッタが接地されたトランジスタで構成することができる。このトランジスタは第1ないし第3自己診断にあわせて配置してもよいし、単一のトランジスタで構成してもよい。
【0027】
28は以上の自己診断結果を表示することができる液晶表示部である。この液晶表示部28は、上記第1ないし第3自己診断結果を表示することによりユーザに早期の対応を可能とするものである。例えば、近接センサの配置位置とコントローラとの配置位置とが遠隔の場合で、ユーザが近接センサの配置位置近傍にいる場合では、コントローラは自動的に停止等が行われる一方で、ユーザは近接センサ10の異常等に早期に対応することができる。自己診断結果の表示は液晶表示に限定しない。
【0028】
以上説明した実施の形態では、近接センサ10が正常に動作している間に、振動センサ部20のセンサ信号から振動態様が設定外であれば、現在は正常に動作してもその振動態様の継続で故障することを予知できるので、この近接センサ10からPLC等のコントローラにその予知を入力することにより、当該コントローラを含む制御システムは近接センサのセンサ信号を用いた制御に関して安全にシステムを運営制御することができるようになる。
【0029】
また、自己診断部22は、振動態様が当該近接センサが破損する程度の振動態様であれば、センサ処理部14に対して、センサ処理結果を出力部16からコントローラに出力することを禁止する出力禁止信号を入力するように構成することができる。
【0030】
図2を参照して、自己診断部22は、インターフェース22aと、CPU22bと、データメモリ22cと、プログラムメモリ22dと、を含むマイクロコンピュータで構成されている。インターフェース22aは、振動センサ部20のセンサ信号、設定部24の設定入力、出力部26への出力、表示部26への表示出力のためのインターフェースである。データメモリ22cは、振動態様を判定する判定条件を書き換え可能に記憶している記憶手段を構成している。このデータメモリ22cは、不揮発性メモリで構成することにより、電源OFFしても設定内容を記憶することができる。CPU22bは、近接センサの振動態様が上記判定条件を満たすか否かを判定する判定手段と、上記判定手段の判定により上記自己診断を行う自己診断手段とを構成する。この判定や自己診断はプログラムメモリ22dに予め自己診断処理プログラムで格納されている。
【0031】
上記データメモリ22cに対して振動態様の判定条件を書き換え可能としていることにより、近接センサが配置使用される環境に対応して近接センサをその環境に即した状態にセットすることができるようになる。
【0032】
以上説明したように本実施の形態では、近接センサが正常に動作している間に、振動センサ部のセンサ信号から振動態様が設定外であれば、現在は正常に動作してもその振動態様の継続で故障することを予知できるので、この近接センサからPLC等のコントローラにその予知を入力することにより、当該コントローラを含む制御システムは近接センサのセンサ信号を用いた制御に関して安全にシステムを運営制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る近接センサのブロック図である。
【図2】図2は図1の自己診断部の内部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 近接センサ
12 非接触センサ部
14 センサ処理部
16 出力部
20 振動センサ部
22 自己診断部
23 自己診断モード選択部
24 設定部
26 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部と、
当該近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部と、
上記非接触センサ部のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部と、
上記振動センサ部のセンサ信号により当該近接センサに加わる振動態様が、当該近接センサが現在は正常でも事前に故障を予知すべき振動態様か否かの自己診断を行い、故障を予知すべき振動態様のとき故障予知信号を出力する自己診断部と、
を備えた、ことを特徴とする自己診断機能付き近接センサ。
【請求項2】
検出対象に非接触で該検出対象を検出する非接触センサ部と、
当該近接センサの振動の態様を検知する振動センサ部と、
上記非接触センサ部のセンサ信号から検出対象の検出処理をするセンサ処理部と、
上記振動センサ部のセンサ信号により当該近接センサに加わる振動態様が、当該近接センサが正常にセンサ動作ができる振動態様か否かの自己診断と、当該近接センサが破損する振動態様か否かの自己診断と、当該近接センサが現在は正常でも事前に故障を予知すべき振動態様か否かの自己診断とのうちの少なくともいずれか1つの自己診断を行なう自己診断部と、
上記自己診断を行うモードにするか否かを選択する自己診断モード選択部と、
を備えた、ことを特徴とする自己診断機能付き近接センサ。
【請求項3】
上記自己診断を行う振動態様は、近接センサに加わる振動強度、振動周期、振動の累積時間の選択的な組み合わせである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の近接センサ。
【請求項4】
上記振動センサ部は、加速度センサであり、
上記自己診断部は、加速度センサのセンサ信号から振動加速度が所定値を超えたと自己診断したときに故障予知信号を出力する、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項5】
上記いずれかの自己診断の結果をコントローラに入力することが可能になっている、ことを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項6】
上記自己診断部は、当該近接センサが破損する振動態様であると自己診断したとき、センサ処理部ないしはその出力部に出力禁止信号を入力する、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項7】
上記自己診断部は、振動態様を判定する判定条件を書き換え可能に記憶している記憶手段と、上記振動センサ部からのセンサ信号と上記メモリが記憶している判定条件とから上記自己診断を行う自己診断手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−298562(P2008−298562A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144489(P2007−144489)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)