説明

自己誘導因子化合物およびその使用

【課題】最近の法律変更によって、西側諸国の多くで、ほとんどの抗生物質が使用を禁止されており、むしろ天然抗菌剤を用いて発酵を改善するような解決法が求められている。しかし、これら天然物の多くでは、効力の記載に信頼性がなく、それぞれについて規制当局の精査を受ける可能性が高い。したがって、発酵を最適にするためのまったく新しい手法が求められている。
【解決手段】本発明は、アシルホモセリンラクトン、アシルホモシステインラクトン、アシルチオラクトン、フラノンまたはシグナルペプチドなどの自己誘導因子化合物、ならびに、動物の生産性を向上させるための、動物飼料用添加剤および動物用飼料中での使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定数(quorum)検出分子としても知られている自己誘導因子化合物、ならびにその使用、詳細には動物の生産性を向上させるための動物飼料に対する添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
単純培養および混合培養において、細菌は自らの集団動態を調整する能力から重要な利益を得ている可能性のあることが観察されている(Shapiro、1988年)。そのメカニズムとしての「定数(quorum)検出」は、遺伝子発現を個体群密度と関連づける細菌の能力であることが知られている。微生物が産生するシグナルは、微生物の環境内部および臨界定数(quorum)シグナルの伝達で発現し、次いで応答調節因子を活性化する。これによって、個々の細胞は、その同種または異種の他の細胞と相互作用できるようになる。このようにして、細菌は、防御物質の産生、分化、複製、移動を調整できる。
【0003】
従来、定数(quorum)検出シグナル化合物について最も研究されている応用分野は、診断および、通常は一時的に使用可能な抗生物質の生体内刺激の標本としてである。現在では、多くの菌種が、ビルレンスやその他の特性の自己誘導因子として働く、狭い範囲の単純な分子によるこのシグナル変換過程を利用していることが認められている。同定された最初の分子は、ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fisheri)の生物発光の誘導因子としてのN-(3-オキソヘキサノイル)ホモセリンラクトン(OHHL)であった(Eberhardら、1981年)。
【0004】
ビブリオ(Vibrio)種では、OHHLの産生は、LuxRタンパクによって活性化される密度依存性Lux遺伝子の転写に依存している。産生物Lux1はLuxRおよびOHHLと結合して活性化される。したがって、これは様々な表現型発現を調節するプロセスの一般的なモデルとなるものである。引き続いてOHHLは、一群の化合物、アシルホモセリンラクトン(AHL)類の一部であることが見出された。AHL類(天然および合成)の多くはシグナル伝達能を有する。定数(quorum)検出シグナルすなわち自己誘導因子であることが知られているその他の分子としては、バシラス・サチリス(bacillus subtilis)やストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)中の「受容能伝達ペプチド」などの様々なペプチド類がある。
【0005】
AHL類の中で、N-(3-ヒドロキシブタノイル)ホモセリンラクトン、N-ヘキサノイルホモセリンラクトン、N-ブタノイルホモセリンラクトン、N-(3-オキソオクタニル)ホモセリンラクトン、N-(3-オキソデカノイル)ホモセリンラクトン、N-オクタノイルホモセリンラクトン、7,8-cis-N-(3-ヒドロキシテトラデカノイル)ホモセリンラクトンおよびその他の類似体も活性であることが判っている。ある種の微生物は、3-ヒドロキシパルミチン酸メチルエステルを含有する定数(quorum)検出シグナルを利用していることが知られている。
【0006】
AHL類を利用しているのはグラム陰性細菌のみのようであるが、グラム陽性菌は細胞のシグナル伝達に、チオラクトンペプチドシグナル伝達分子および他のオリゴペプチド断片を使用していると思われる。
【0007】
従来、反芻胃と消化管微生物の操作 は、バージニアマイシン(virginiamycin)などの抗菌剤を含む抗生物質を用いて行われてきた。過去においては、スルホンアミド、テトラサイクリン、ペニシリンを含む多様なタイプの天然および合成化合物が使用されてきた。その主要な機能は、反芻胃の微生物叢を、有害菌を減らし有用菌が優勢になるように修正することであった。
【0008】
しかし、これらの薬剤に対する耐性が、今後広がりかねないという不安から、これらの薬剤を治療量以下で長期間使用した場合の結果についての関心が増大している。
【0009】
セルロース、ヘミセルロース、リグニンを利用可能なエネルギーに変換し、同時に宿主動物にタンパク源を継続的に供給するために、反芻胃細網の中で行われる複雑な働きは、菌種の集団によって達成される。この集団は強度に拮抗的である。プロピオン酸エステル類の良好な産生者である低メタン産生反芻胃システムは、動物にエネルギーを送達するうえで都合がよい。反芻胃をこの目的に向けて最適にすることが、薬剤および栄養剤を介在させることの変わらぬ目標となっている。したがって、その主な目的は、微生物のタンパク産生およびセルロース/リグニン型化合物の分解を最大にし、同時に、有害微生物増殖の否定的側面を最小限に抑えることである。タンパクを消費または分解し、メタン産生を増加させる(エネルギーを消費する)微生物は、それ自体宿主との関係が非相互的であり、あるいは動物から利用可能なデンプンを収奪するので、最適な反芻胃発酵にとっては有害であると考えられる。
【0010】
飼料用添加物または他の生物活性治療薬を使用する際の困難は、多くの物質が微生物集団に対して複合的な影響を与えると言う特殊性による困難である。タンパク分解と脱アミノ化活性を減らすことは、部分的には動物の生産性を増加させることにつながる。微生物集団をコントロールすることによって、揮発性脂肪酸の産生にプラスの影響を及ぼし、メタンの産生を減らすことができる。これらの要素を組み合わせて操作することによって、時によってはかなりの程度、動物の生産性が向上する。
【0011】
WO97/27851(ジョーンズホプキンス大学)には、ホモセリンまたはホモセリンラクトンの投与によって、マイコバクテリア(Mycobacteria)の増殖を阻害できることが開示されている。この出願は、ヒトの結核(M.tuberculosis)感染の診断と治療にこれらの化合物を使用することを提案している。
【0012】
米国特許第5,591,872号(アイオワ大学)には、N-(3-オキソデカノイル)ホモセリンラクトンが、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)での遺伝子発現を調節する自己誘導因子であることが開示されており、この自己誘導因子の類似体または阻害剤を、この微生物による感染の治療および予防に使用できると述べている。
【0013】
WO01/74801(ノッティンガム大学)には、一連のN-アシルシルホモセリンラクトン類および免疫抑制剤としての使用が開示されている。
【特許文献1】WO97/27851(ジョーンズホプキンス大学)
【特許文献2】米国特許第5,591,872号(アイオワ大学)
【特許文献3】WO01/74801(ノッティンガム大学)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、広くは、動物用食餌、特に反芻または単胃動物用の飼料中の定数(quorum)検出分子または自己誘導因子の合成、および使用に関する。最近の法律変更によって、西側諸国の多くで、ほとんどの抗生物質が使用を禁止されており、むしろ天然抗菌剤を用いて発酵を改善するような解決法が求められている。しかし、これら天然物の多くでは、効力の記載に信頼性がなく、それぞれについて規制当局の精査を受ける可能性が高い。したがって、発酵を最適にするためのまったく新しい手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明で開示するように、動物飼料中に自己誘導因子化合物または定数(quorum)検出シグナルを使用すると、天然の微生物集団自体が産生する化合物そのものを使用して、反芻胃細菌叢の動態をコントロールする1つの新しい方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において、用語「定数(quorum)検出分子」と「自己誘導因子化合物」は互換的に使用される。これらの化合物の例を以下に詳述する。
【0017】
第1の態様で、本発明は、1種または複数の自己誘導因子化合物を含有する動物飼料用添加剤を提供する。場合によっては、この自己誘導因子化合物は、動物飼料用材料と混合する前に不活性担体と混合して増量し、水薬としての投与や動物飼料上に噴霧するための溶液として供給し、あるいは、同様に不活性担体とともに錠剤の形に製剤される。不活性担体の例としてはシリカ、タルク、水などがある。
【0018】
さらなる態様として、本発明は、動物飼料用成分および1種または複数の自己誘導因子化合物を含有する動物用飼料を提供する。動物飼料用成分の例としては、タンパク、糖、脂肪および繊維類の1種またはその組み合わせがある。通常、動物用飼料は、穀類やその他植物材料から得られる。
【0019】
さらなる態様として、本発明は、動物に自己誘導因子化合物を投与することを含む、動物の生産性を向上させる非治療的方法を提供する。
【0020】
さらなる態様として、本発明は、動物の生産性を向上させる目的で、動物に投与するための、自己誘導因子化合物の使用を提供する。
【0021】
自己誘導因子化合物あるいは化合物群としては、アシルホモセリンラクトン、アシルホモシステインラクトン、アシルチオラクトン、シグナルペプチドやシグナルフラノンおよび2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノリンなどのキノリン類がある。好ましくは、前記アシルラクトンはC1〜20アシルラクトンである。
【0022】
好ましいアシルホモセリンラクトンの例としては、N-オキソブタノイルホモセリンラクトン、N-オキソペンタノイルホモセリンラクトン、N-オキソヘキサノイルホモセリンラクトン、N-オキソヘプタノイルホモセリンラクトン、N-オキソオクタノイルホモセリンラクトン、N-オキソノナノイルホモセリンラクトン、N-オキソデカノイルホモセリンラクトン、N-ブタノイルホモセリンラクトン、N-ペンタノイルホモセリンラクトン、N-ヘキサノイルホモセリンラクトン、N-ヘプタノイルホモセリンラクトン、N-オクタノイルホモセリンラクトン、N-ノナノイルホモセリンラクトン、N-デカノイルホモセリンラクトン、および7,8-cis-N-(3-ヒドロキシテトラデカノイル)ホモセリンラクトンなどの化合物がある。N-オキソアシルホモセリンラクトンは、好ましくはN-(3-オキソアシル)ホモセリンラクトンである。アシルホモセリンラクトン類の合成については、WO01/74801にその他の例も開示されている。
【0023】
好ましいアシルホモシステインラクトンの例としては、N-オキソブタノイルホモシステインラクトン、N-オキソペンタノイルホモシステインラクトン、N-オキソヘキサノイルホモシステインラクトン、N-オキソヘプタノイルホモシステインラクトン、N-オキソオクタノイルホモシステインラクトン、N-オキソノナノイルホモシステインラクトン、N-オキソデカノイルホモシステインラクトン、N-ブタノイルホモシステインラクトン、N-ペンタノイルホモシステインラクトン、N-ヘキサノイルホモシステインラクトン、N-ヘプタノイルホモシステインラクトン、N-オクタノイルホモシステインラクトン、N-ノナノイルホモシステインラクトン、およびN-デカノイルホモシステインラクトンなどの化合物がある。
【0024】
好ましいアシルチオラクトンの例としては、N-オキソブタノイルチオラクトン、N-オキソペンタノイルチオラクトン、N-オキソヘキサノイルチオラクトン、N-オキソヘプサノイルチオラクトン、N-オキソオクタノイルチオラクトン、N-オキソノナノイルチオラクトン、N-オキソデカノイルチオラクトン、N-ブタノイルチオラクトン、N-ペンタノイルチオラクトン、N-ヘキサノイルホチオラクトン、N-ヘプタノイルチオラクトン、N-オクタノイルチオラクトン、N-ノナノイルチオラクトン、およびN-デカノイルチオラクトンなどの化合物がある。
【0025】
他の実施形態で、前記自己誘導因子化合物は次式の1つで表される。
【0026】
【化1】

式中、XおよびYはO、SまたはNHから独立に選択され、Zは置換または非置換のC1〜C20のアシル鎖である。アシル鎖は、分岐または非分岐でよく、不飽和、部分飽和または飽和でよい。アシル鎖置換基の例としては、ケト、ヒドロキシ、アルケニルまたはフェニル置換基がある。自己誘導因子化合物は部分的または完全にハロゲン化されていてよい。
【0027】
自己誘導因子化合物がキラルである実施形態においては、その化合物は単一の対掌体または光学異性体のなんらかの混合物として存在していてよい。
【0028】
動物飼料用添加剤または動物用飼料は、自己誘導因子化合物のほかに、ティルシン(Tylsine)、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、バクトラシン(bactracin)-メチレン-ジサリチレートおよびバルネムリン(valnemurin)のような抗生物質、またはサリノマイシンのような抗コクシジューム剤などの成分を含むことができる。
【0029】
本発明において、用語「動物の生産性を向上させること」には、動物の成長速度を向上させること、所定の年齢での動物の体重を向上させること、飼料転化率を向上させること、動物が生産する、または動物から得られる製品(たとえば家畜、家禽、魚などの肉、搾乳家畜の乳、家禽類の卵など)の収量または品質を向上させることが含まれ、これらはすべて、前記自己誘導因子化合物を投与されていない対照動物との関係で定義される。これらの比較は当業者にとって容易であり、たとえば、飼料転化率はあるサンプルにおける、消費飼料/動物の全重量を基準にして計算することができる。
【0030】
ある特定の理論に拘泥するものではないが、我々は、動物の食餌に自己誘導因子化合物を含有させると、動物消化管中の菌集団に有益な影響を及ぼすと考えられる。この効果は、動物消化管細菌おけるインビボでの遺伝子発現の調整、界面活性剤が飼料中の脂肪または脂質成分のエマルジョン化を助け、動物がそれをより容易に利用できるようにする、消化管細菌叢による界面活性剤産生の促進、特定の反芻胃液細菌のビルレンス促進、または単胃消化管による抗生物質の産生として現れる。
【0031】
自己誘導因子化合物は、鳥、家畜.海洋動物、家庭用愛玩動物などの動物に投与できる。これらの動物の例としては、家禽、牛、豚、羊、ウサギ、馬、犬猫および魚たとえば養殖魚などがある。
【0032】
自己誘導因子化合物は、動物に対し、好ましくは飼料1トン当たり1〜100,000ナノモル当量、より好ましくは100〜10,000ナノモル当量、最も好ましくは約1,000当量の投与量で、直接または間接的に投与される。
【0033】
自己誘導因子化合物は、動物に対して広範囲の方法で与えることができる。動物飼料用添加物としては、乾燥粉末(たとえば動物用飼料との混合用)、液体(たとえば動物用飼料または動物用飲料水への噴霧用)として、あるいは動物用飼料への直接添加用に製剤することができる。別法としては、自己誘導因子化合物を動物用飼料と前混合して、あるいは補助栄養飼料として動物に直接与えることもできる。前記の方法に加えて、またはそれに替えて、自己誘導因子化合物を含有する組成物はカプセルまたは錠剤の形でもよく、水薬として製剤されていてもよく、あるいは経口で動物に摂取させるための大型丸薬の形でもよい。これらの実施形態では、現場での投与を容易にするために、自己誘導因子化合物を不活性担体たとえば水などの溶剤またはシリカ、タルクなどの固体担体と一緒に混合して製剤してもよい。
【0034】
さらなる態様として、本発明は、動物用飼料の製造方法を提供する。この方法は、1種または複数の動物飼料用成分を1種または複数の自己誘導因子化合物と混合することを含んでいる。また、飼料の加工処理において追加の段階、たとえばペレット化を含んでいてもよい。
【0035】
実施形態によっては、自己誘導因子化合物は、合成化学的手法で作られていてよい。また別法として、その化合物は、植物、藻類、かび、または細菌材料の抽出物または濃縮物から由来するものでもよい。また別な方法として、自己誘導因子化合物は、自然にあるいは形質変換により、自己誘導因子化合物を過剰に発現する遺伝子組み替え微生物から得ることもできる。形質変換した微生物の例としては、アシルホモセリン、ホモシステインまたはチオールラクトン合成酵素遺伝子または遺伝子クラスターをコードしている核酸、またはシグナルペプチドをコードしている核酸で形質変換された細菌または植物細胞がある。形質変換した宿主細胞は、次いで、誘発されて自己誘導因子化合物を発現する。自己誘導因子化合物は、場合によっては細胞培養物から精製し、上述のように製剤してもよい。別法としては、たとえば1種または複数の自己誘導因子化合物を過剰発現するように遺伝子操作された植物から動物用飼料を作ることによって、動物用飼料または動物飼料用添加剤を細菌または植物細胞から直接作ることができる。
【0036】
さらなる態様として、本発明は、アシルホモセリンラクトン化合物の調製方法を提供する。当該方法は、アミノブチロラクトンをアセテート化合物と還流し、アシルホモセリンラクトンを生成させることを含んでいる。この方法で、使用する溶媒としては、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンが好ましく、より好ましくはトルエンである。反応条件としては、反応混合物を大気圧下で還流することが好ましい。
【0037】
好ましくは、アセテート化合物は酪酸エチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、3-オキソ酪酸エチル、3-オキソ吉草酸エチル、3-オキソへキサン酸エチル、3-オキソヘプタン酸エチル、3-オキソオクタン酸エチル、3-オキソノナン酸エチルまたは3-オキソデカン酸エチルである。
【0038】
当該方法は、反応で生成したアシルホモセリンラクトンを精製する追加の工程を含んでいてもよい。1つの実施形態としては、生成物を蒸発操作に付し、5%のメタノールを含むジクロロメタンに再溶解し、カラムクロマトグラフィーで精製することができる。
【0039】
本発明の実施形態を、実施例により以下でより詳細に説明するが、本発明は、それに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
フィステルを形成した草食健常牛(healty fistulated grass fed cows)から得た反芻胃液培養物による牧草サイレージの消化に対する食用ラクトンの効果
アシルホモセリンラクトンなどの自己誘導因子化合物は細菌の培養に大きな影響を与える。たとえば、これらの化合物は、抗生物質および細胞外酵素の発現をトリガーするために使用できる。ヘキサノイルホモセリンラクトン(OHHL)はクロモバクテリウム・ビオラセウム(chromobacterium violaceum)内での抗生物質産生のためのシグナル分子であり、ブタノイルホモセリンラクトンは種々の酵素およびレクチンの産生を含む、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)内の様々の表現型を誘発する。OHHLは異なる種には異なる影響を与えることが知られている。たとえば、エルウィニア・ステワルティ(Erwinia stewartii)中では、OHHLはエキソ多糖類の産生を誘発し、ビブリオ(Vibrio)種では生物発光を促進する。したがって、ルミノバクタ(ruminobacter sp.)、プレボテラ(prevotella sp).、ルミノコッサス(ruminococcus sp.)を含む多くの種から構成される複雑な混合培養では、自己誘導因子化合物をただ1つ導入した場合でさえ、誘発される特定の表現型を予測するのは困難である。しかし、反芻胃混合培養発酵に対する全体的な効果は、飼料の消化効率で測定できる。以下の例で、動物反芻胃効率の生体外モデルは、反芻胃の新鮮胃液を使用した場合の飼料の消化に対する最終的な効果を示す。水で処理したサンプル1個、ナノモル濃度のOHHLを用いて処理した試験サンプル4個を試験した。
【0041】
フィステルを形成した草食健常牛(healty fistulated grass fed cows)から反芻胃胃液を採取し、直ちに75mlの瓶に分注した。これらの瓶を37℃に保った。これらの培養液のそれぞれに、前もって秤量、乾燥した牧草サイレージ約1gをナイロンガーゼ製の子袋に入れて吊り下げた。この時点で、反芻胃胃液中での最終濃度が0、200、500、および1,000ナノモルになるように、シグナルAFL(OHHL)を導入した。次いで、これらを10時間インキュベートした。次いで、飼料サンプルを取り出し、再乾燥、再秤量した。それぞれの処理を3回繰り返した。
【0042】
実験結果から、OHHLの存在量が増加すると、各処理にたいする重量減少量の平均パーセントが増加することがわかった。これは、自己誘導因子化合物を存在させると、動物用飼料の消化効率を向上させることが可能であることを示唆している。
【0043】
飼料に添加するに当たっては、飼料押し出し成形中の損失を見込んで、含有濃度を上述の濃度よりも増やすべきである。このため5〜5000ナノモルの典型的な含有速度で通常は充分である。
【0044】
実施例2
自己誘導因子化合物の合成
商業的に入手可能なAHL化合物は極めて少なく、文献に見られる合成法は工程が長く、収率も低い。したがって、すべてのAHL化合物に対するモデルルートとして役立つ、安価な合成ルートを完成することが重要である。NMRで見て純粋なOHHLを以下のように調製した。
【0045】
α-アミノブチロラクトン(1.0当量)を含むトルエン(ミリモルに対し5ml)溶液に、攪拌しながらトリエチルアミン(1.0当量)を滴下した。次いで、混合物を10分間攪拌した。ブチリル酢酸エチル(1.0当量)を滴下し、混合物を2時間攪拌した。混合物を放冷し、次いで濾過し、蒸発操作に付した。5%のメタノールを含むジクロロメタンでカラムクロマトグラフィーを行い30%以上の全体収率で目的化合物を得た。
【0046】
NMRでOHHLの存在を確認した:
Probe head 5mm H1;AQ 1.9923444 sec;TE300.0K
ID NMR plot parameter:cx 40.0cm;FIP 10.5ppm;F2P-0.500ppm;110.03576Hz/cm
【0047】
OHHLのNMRδ値
7.609ppm;4.525ppm;4.412ppm;4.20ppm;3.402ppm;2.677ppm;2.45ppm;2.16ppm;1.56ppm;0.844ppm。
【0048】
反芻胃中にはAHL類が存在することが知られている(Ericksonら、2000年)。反芻胃胃液の逆相薄層クロマトグラフィーにより、様々なシグナル物質の存在が明らかになった。したがって、細菌種の多くが、定数(quorum)検出のメカニズムから拮抗的利益を既に得ていることは明らかである。
【0049】
既に述べたように、合成シグナル化合物を、動物飼料を通してわずかな投与量で反芻胃に導入して、反芻胃の効率およびその結果として動物の生産性を向上させることができる。いくつかのラクトンシグナルがシュードモナス(Pseudomonas sp.)などの種のビルレンス決定因子を調整することが知られている。2-ヘプチル-3-ヒドロキシ-4-キノリンなどのキノロン類もまた、活性シグナル分子であり、動物の栄養状態と健康を向上するために利用できる。
【0050】
反芻胃で起こる現象をさらに操作するために、AHL化合物の組み合わせを使用できるが、飼料への的確な処方量はもちろん関係する種と飼料によって決まる。最適状態にある牛の反芻胃のシグナル物質を分析し、次いでそれを人工的に再現し、導入するシグナル盗聴(eavesdropping)が、もう1つの選択枝である。同様に、単胃では、quorum検出シグナルを有益な消化管細菌叢による抗生物質の産生を刺激するために利用できる。さらに、この技術を使用して、酵素や界面活性剤などの、その他有益な細菌の産生物を誘発できる。
【0051】
シグナル分子の不活性類似体は、シグナル生成プロセスを妨害する(「シグナル妨害」)ために使用できる。このようにして、たとえば有害消化管細菌のビルレンス遺伝子の転写が後回しになり、病原性障害が緩和される。その結果、動物の健康が改善され、動物の全体的な生産効率に寄与する。生体内発酵での培養物からシグナル分子を採取することが可能であり、たとえば、エンテロコッカス・ハエシリス(Enterococcus faecilis)によって利用されるオリゴペプチドなどのペプチドを過剰に発現させる遺伝子操作によって、シグナルペプチド(典型的にはグラム陽性菌用の定数(quorum)検出シグナル)を調製することができた。
【0052】
実施例3
床式ケージで飼育されるブロイラー幼鶏の成長効率および死亡率に対する食用ラクトンの効果
材料および方法
この実験により、N-(3-オキソヘキサノイル)-L-ホモセリンラクトン(OHHL)(CAS#:143537626、分子式:C10H15NO4、分子量:213)のブロイラー幼鶏の成長効率および死亡率に対する効果を試験した。
【0053】
1mMのOHHL貯蔵溶液(0.213g/L)を以下のようにして調製した。必要容量の約50%の蒸留水を約30〜40℃に加温し、必要量のOHHL粉末の溶解に使用した。溶液は、室温で貯蔵した蒸留水を用いて所定の容量にした。OHHL溶液(0.213g/L)は処理して粉砕した飼料に対してトン当たり3kgの割合で使用した。対照飼料は、トン当たり3kgの蒸留水で処理した。飼料に使用するまでのOHHL溶液の保存期間は2日未満とした。
【0054】
この研究では正の対照として抗生物質BMD110(登録商標)を使用した。有効成分はバシトラシン(bacitracin)メチレンサリチレートである。この化合物は、kg当たりバシトラシンの110gに相当する活性を有し、飼料中に55ppmの投与量で使用する場合(BMD110(登録商標)500g/飼料1トン)、ブロイラー幼鶏の壊疽性腸炎の予防用として承認されている。
【0055】
コクシジウム予防助剤として、すべての実験用食餌のイオノフォアにCoxistac(登録商標)6%混合品を使用した。この製品はkg当たり60gのサリノマイシン(salinomycin)を含み、飼料中に60ppmの投与量で投与される(飼料1トンあたりCoxistac6%混合品1kg)。
【0056】
実験は、ブロイラー幼鶏を入れた日を0日として、35日間継続した。全部で1,200羽の生後間もない雄ブロイラー幼鶏(Cobb×Cobb)を0日の試験に供した。鶏には孵化場でマレック病の予防接種をした。処理群に対してそれぞれ床面積が45平方インチの床面積を持つケージを24個割り当てた。各ケージは、床がコンクリートで、前後に高さが12インチのコンクリート製仕切りがある。隣接するケージとは高さ12インチの堅牢なプラスチック製の仕切りで鶏を分離した。すべての仕切りの頂部には1インチ四方の開孔部をもつ溶接金網を配置した。各ケージは、番号で永続的に識別して、0日に50羽を収容した。各ケージ内には、好きな時に清潔な飲料水が出てくるニップル型給水器を入れた。乾燥飼料は、いつでも食べられるように20kg容量のチューブ型給餌器(ケージに1個)に供給した。
【0057】
鶏舎は、流入空気を暖めるために、建物の北側壁に間隔をあけて設置した5台の天然ガスヒーターで加温した。空気は建物の南面壁に設置した換気扇で排気した。照明方式、鶏舎温度、その他の運営は、北米のブロイラー幼鶏飼育事業者で行われている典型的なものである。死にかけて食餌や飲料水に近づくことのできない鶏は、選別して二酸化炭素ガスで安楽死させた。
【0058】
淘汰または死亡した鶏それぞれの体重、ケージ番号、死亡日を記録した。死亡した鶏は病理学者に提出し、外見的死亡原因を調べた。
【0059】
完全乱塊法を使用して2×2多元配置で,OHHL(0および0.639g/トン)および飼料用抗生物質(バージニアマイシン0および11ppm)の主効果および交互作用効果を検討した。食餌の処理は以下の通りである。
【0060】
【表1】

【0061】
ブロック当たり4つのケージおよび反復ブロックが6個あり、全部で24個のケージがある。
【0062】
本研究の給餌方法としては、0日から20日目までは人工乳飼料型、21日から35日目までは肥育飼料型のものを与えた。食餌の配合は、北米で市販されている食餌の代表的なものである。
【0063】
0または55ppmのBMDを含む人工乳食餌の基礎的混合物を使用した人工乳飼料を製造し、ペレット化し、砕いて粉にした。袋に入った人工乳食餌を蒸留水(OHHL0g/L)またはOHHL溶液(OHHL0.213g/L)と一緒に、容量100kgの水平ダブルリボンミキサーを用いて処理した。蒸留水およびOHHL溶液(OHHL0.213g/L)を飼料1トン当たり3kgの割合で破砕飼料に添加した。肥育飼料は、上述の人工乳飼料 の場合と同様にして製造した。
【0064】
飼料のサンプリングと分析:破砕した人工乳基礎飼料および肥育基礎飼料の各バッチから、少量の代表サンプル10個を採取した。この10個のサンプルを混合して、それぞれ栄養物分析用および保管サンプル用に二分した。対照飼料およびOHHL処理飼料それぞれの代表的混合サンプルを収得した。2つの同一サンプル(分析および保管用)はOHHLの遡及分析に備え-20℃で保存した。各破砕基礎飼料サンプルの一方は、乾燥物質、粗タンパク、カルシウム、リンおよびマンガンを分析した。
【0065】
収集したデータは以下の項目から成る。
1.0日、21日,35日目の体重。
2.各飼料(人工乳および肥育飼料)の消費量。
3.淘汰または死亡した鶏の体重と死亡日。
4.飼料転化率は、ケージを単位にして、消費飼料/(生存鶏の合計体重+死亡および淘汰鶏の合計体重+犠牲鶏の合計体重)として計算した。
5.ケージ当たりの平均体重は、測定時の生存鶏の合計体重/測定時の生存鶏の数として計算した。
6.人工乳飼料および肥育飼料期間における、鶏1羽当たり1日の飼料摂取量は、飼料消費量合計をその期間内の生存鶏数と日数で除したものとして計算した。
7.死亡または淘汰したすべての鶏の外見的死亡原因を報告した。
8.鶏は少なくとも1日1回、群単位で観察し、観察結果を記録した。
9.死亡原因。
【0066】
統計解析
ケージを統計解析の処理単位とした。死亡率は分散分析に先立って、逆正接変換を用いて変換した(SteelおよびTorrie、1980年)。すべてのデータは以下のモデルを用いて、分散分析で解析した。
【0067】
【表2】

【0068】
平均値は、適当な多重範囲検定を用いて比較した(SteelおよびTorrie、Principles and procedures of statistics、a biometrical approach. McGraw Hill Book Co.、NY.、1980年)。
【0069】
結果および考察
食餌にOHHLを投与すると、ブロイラー幼鶏の21日目の体重が有意に増加した(p=0.024)(表1)。体重に対する食用BMDの効果はほとんどなかった。
【0070】
OHHLを投与すると、21日目(p=0.012)および0〜35日全体で(p=0.055)、ブロイラーの飼料効率が向上した。食用 BMDもまた、21〜35日の期間(p<0.001)および肥育)期間全体での(p=0.014)飼料効率を改善した。
【0071】
人工乳期間中の飼料効率に対して、有意なOHHL×BMD交互作用効果が認められた。しかし、これは、人工乳期間にBMDのみを与えられた鶏の飼料効率が低いことに帰することができる(飼料効率=1.422)。BMDと組み合わせたOHHLに対する飼料効率の応答は、OHHL単独に対する応答よりも若干大きい。
【0072】
罹患率と死亡率
本研究では、何らかの病的問題を作り出すことを狙って、古い厩肥を使用した。しかし、全体としての死亡率は、業界の標準である4〜5%と比較すると極めて低かった。BMDなしの場合、OHHLによって死亡率は2.0%から1.7%に減少した。BMDがある場合、OHHLによって死亡率は3,3%から2,7%に低下した(表2)。これらの死亡率の数値変化は統計的に有意ではないが、OHHLを連続的に投与しても鶏の生存に悪影響を与えないという予備的証拠にはなる。最終体重と飼料効率のデータもまた、肥育(growth)効率が優れ、群の罹患率が最小であることを示唆している。すべての斃死鶏を剖検したが、本研究で薬物による異常または有害な効果を示す証拠はなかった。
【0073】
結論
ブロイラー幼鶏に対してOHHLを連続投与すると、21日目の体重(p=0.024)および全体としての飼料効率(p=0.055)が向上した。
【0074】
OHHLで処理したブロイラーの死亡率は、食用 BMDの有無に拘わらず、OHHLで処理していない対照よりも数値が低かった。
【0075】
鶏の健康に対するOHHLのなんらかの有害作用を示す証拠はなかった。
【0076】
実施例4
ヒツジにおける反芻胃の固形物消失に対する食用ラクトンの効果。
材料および方法
本実験により、ヒツジにおける反芻胃固形物の生体内消失に対するN-(3-オキソヘキサノイル)-L-ホモセリンラクトン(OHHL)(CAS#: 143537626、分子式:C10H15NO4、分子量:213)の効果を調べた。
【0077】
OHHL貯蔵溶液(0.639g/L)を以下のようにして調製した。必要容量の約50%の蒸留水を約30〜40℃に加温し、必要量のOHHL粉末を溶解するのに使用した。室温で貯蔵した蒸留水で容量フラスコの標線まで満たした。OHHL溶液(0.213g/L)は、ペレット化した羊の飼料に対して飼料1トン当たり3kgの割合で使用した。対照飼料は、トン当たり3kgの蒸留水で処理した。
【0078】
バッチ混合機と適当な噴霧装置を用いて、飼料に対する液体の均一添加を確実にした。対照飼料を先に製造して、OHHLによる交差汚染を防いだ。体重の2%の固形物を摂取するとの見積もりに基づいて、羊への給餌量が、研究動物の摂取する全固形物の3分の1を占めると予想した。
【0079】
最初、ペレット化した飼料の外側に水溶液を塗布してOHHLを投与しようと試みたが、数日後には、羊の処理飼料摂取量が減少した。そのため、各期間の11日目の午後に始まる1日2回の経口水薬としての投与に変更した。
【0080】
動物は、カニューレに対する障害の可能性を最小に抑え、また、独立的に食べさせることができるように、個体ごとに囲った。新鮮な飲料水をいつでも飲めるように供給した。
【0081】
制限された量のペレット化した給餌を、約0.5kg/日(午前に0.25kgおよび午後に0.25kg)の割合で与えた。必要によっては干草の摂取を制限して、羊が所定の給餌を確実に摂取するようにした。
【0082】
12および13日目に、反芻胃内に袋を入れる約1時間前、および各動物から8時間経過したバッグを取り出した後に、ペレット化した給餌(0.25kg/動物)を動物に与えた。
【0083】
トウモロコシサイレージの新鮮なサンプルを恒量まで乾燥して、室温まで放冷した。固形物を調べるために代表的部分サンプルを採取した。そのサンプルを1mmのふるいを通過するまで粉砕、混合し、固形物分析用のサンプルを採取した。残りのサンプルは、カニューレを挿入した羊の反芻胃から固形物が消失するのをインサイチュで調べるために保管した。
【0084】
本研究ではアンコーレ製の反芻胃サンプリングバッグを使用した。各バッグ大きさは約5cm×10cmあり、1グラムのサンプルに適していた。孔径は53±10ミクロンであった。乾燥し粉砕したトウモロコシサイレージをバッグ内に秤り入れ(1.00±0.01g)、封をした。動物1頭1日当たり、1セット4個のバッグを準備し、バッグには反芻胃への挿入および反芻胃からの取り出しを容易にするために紐を結びつけた。対照バックは反芻胃の中に挿入しなかったが、洗浄して、処理して乾燥した。
【0085】
反芻胃カニューレは5頭の成熟メス羊(約3歳)の各々に外科的に挿入した。手術から回復した後、本研究で使用するために、これらの中から4頭を選んだ。5番目の動物は、実験動物の術後合併症の発生に備えた予備とした。
【0086】
固形物の消失量を、4、8、12および24時間後に取り出して測定した。バッグは対応する空バッグと一緒に、冷水の出る水道で洗浄した。次いでバッグを恒量になるまで乾燥した。固形物消失量の測定は、各動物に対して、各期間の12日目及び13日目の朝に開始して、完了した。
【0087】
2つの処置法の効果を調べるために、ラテン方格を使用した。
A、対照:1トンの給餌に対しOHHL0g。
B:1トンの給餌に対し1.917g相当のOHHLで処理。
【0088】
各期間の継続期間は14日である。全部で4頭の実験動物を体重に基づいて区分けした(2区画)。区画内の動物は無作為で配列1または2に割り当てた。
【0089】
【表3】

【0090】
統計解析
データは、処理、動物、期間、実験日および時間を含む、多重回帰分析で解析した。
【0091】
動物の健康
期間1では、固形物のインサイチュでの消失を測定するに先立って、OHHLで処理した1頭の羊を食欲が乏しいので除外して、予備動物と置き換えた。除外した動物は安楽死させ、解剖して、実験前に進行していた肝膿瘍のあることがわかった。
【0092】
固形物の消失
予想されたように、反芻胃培養時間は、固形物の消失に対して高度に有意な影響(p<0.0001)があった。4および24時間のインキュベーションで、約50%および75%の固形物がアンコーレバッグから消失した(表1)。固形物の消失は各期間中の連続した2日に測定した。しかし、この変数に対する測定日の効果に有意差はなかった(p=0.97)。
【0093】
処置法の平均(treatment means)を表3および4に要約する。OHHLにより、平均固形物消失量はパーセント単位で1.77増加する。応答の大きさは、培養時間でかなり変動するが、これは主としてこのような測定に付随するばらつきを反映するものである。
【0094】
結論
本実験により、OHHLを投与すると羊の反芻胃内でのトウモロコシサイレージの固形物消失量が増加する(p=0.105)ことが判明した。
【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

[参考文献]


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己誘導因子化合物がアシルホモセリンラクトンである、1種または複数の自己誘導因子化合物を含む動物飼料用添加剤。
【請求項2】
前記自己誘導因子化合物が不活性担体と混合されている請求項1に記載の動物飼料用添加剤。
【請求項3】
自己誘導因子化合物がアシルホモセリンラクトンである、動物飼料用成分および1種または複数の自己誘導因子化合物を含む動物用飼料。
【請求項4】
前記動物飼料用成分が1種または複数のタンパク、糖、脂肪または繊維を含む請求項3に記載の動物用飼料。
【請求項5】
前記動物飼料用成分が穀類または他の植物に由来する請求項3または4に記載の動物用飼料。
【請求項6】
前記自己誘導因子化合物がN-オキソブタノイルホモセリンラクトン、N-オキソペンタノイルホモセリンラクトン、N-オキソヘキサノイルホモセリンラクトン、N-オキソヘプタノイルホモセリンラクトン、N-オキソオクタノイルホモセリンラクトン、N-オキソノナノイルホモセリンラクトン、N-オキソデカノイルホモセリンラクトン、N-ブタノイルホモセリンラクトン、N-ペンタノイルホモセリンラクトン、N-ヘキサノイルホモセリンラクトン、N-ヘプタノイルホモセリンラクトン、N-オクタノイルホモセリンラクトン、N-ノナノイルホモセリンラクトン、N-デカノイルホモセリンラクトン、又は7,8-cis-N-(3-ヒドロキシテトラデカノイル)ホモセリンラクトンである請求項1から5のいずれか一項に記載の動物用飼料または動物飼料用添加物。
【請求項7】
前記自己誘導因子化合物が次式:
【化1】

[式中、XおよびYはOであり、Zは置換または非置換のC1〜C20のアシル鎖である]の1つで表される請求項1から6のいずれか一項に記載の動物用飼料または動物飼料用添加剤。
【請求項8】
動物に対して請求項1から7のいずれか一項に記載の動物用飼料または動物飼料用添加剤を投与することを含む、動物の生産性を向上させる非治療的方法。
【請求項9】
動物の生産性を向上させる目的で動物に対して投与するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の動物用飼料または動物飼料用添加剤の使用。
【請求項10】
動物の生産性を向上させることが、動物の成長速度を向上させること、所定の年齢での動物の体重を増加させること、飼料転化率を向上させること、動物によって生産されるまたは動物から得られる産物の産出量または品質を向上させることを含む、請求項8または9に記載の方法または使用。
【請求項11】
動物から生産されるまたは得られる産物が卵、乳または肉である請求項1 0に記載の方法または使用。
【請求項12】
前記動物用飼料または飼料用添加剤を鶏類、家畜、家庭用または愛玩用動物あるいは海洋動物に投与する、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項13】
前記動物が家禽類、牛、豚、羊、兎、馬、犬、猫または魚である請求項12に記載の方法または使用。
【請求項14】
前記自己誘導因子化合物を動物に対し飼料1トンに対し1〜100,000ナノモルに相当する投与量で投与する請求項8から13のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項15】
前記自己誘導因子化合物を動物に対し飼料1トンに対し100〜10,000ナノモルに相当する投与量で投与する請求項14に記載の方法または使用。
【請求項16】
前記自己誘導因子化合物が粉末、液体、カプセルまたは錠剤、水薬または大型丸薬として製剤されている請求項8から1 5のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項17】
前記自己誘導因子化合物が、植物、藻類、カビまたは細菌材料から得られる請求項8から16のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項18】
前記自己誘導因子化合物が、自己誘導因子化合物を過剰発現するように微生物または植物細胞を形質転換させることによって得られる請求項8から17のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項19】
前記自己誘導因子化合物が、動物に与えられあるいは動物用飼料または動物飼料用添加剤の製造で使用される形質転換植物中で産生される請求項18に記載の方法または使用。
【請求項20】
1種または複数の動物飼料用成分と1種または複数の自己誘導因子化合物を混合することを含む方法であって、前記自己誘導因子化合物がアシルホモセリンラクトンである請求項3から7のいずれか一項に記載の動物用飼料の製造方法。
【請求項21】
さらに動物用飼料をペレット化することを含む、請求項19または20に記載の方法。

【公開番号】特開2008−79623(P2008−79623A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327905(P2007−327905)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【分割の表示】特願2002−553913(P2002−553913)の分割
【原出願日】平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願人】(503244860)ゴーマー・マーケティング・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】