説明

自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法

本発明は分子状酸素含有ガスの存在下における液体パラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法につき開示し、ここで前記方法は(a)液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を供給し、(b)前記液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を水蒸気を含む希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも300℃の温度まで予熱して、少なくとも20容量%の水蒸気を含む揮発した希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を生成させ、(c)次いで前記揮発希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を分子状酸素含有ガスと混合して混合希釈供給流を生成させ、(d)次いで前記混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と混合して、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与えることからなっている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はオレフィンの製造方法に関するものである。特に本発明は、自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法に関するものである。
【0002】
自熱クラッキングは、炭化水素供給物を酸素と混合すると共に自熱クラッキング触媒上に通過させるオレフィンへのルートである。自熱クラッキング触媒は、可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持することができる。燃焼は触媒表面にて開始されると共に、反応体をプロセス温度まで上昇させると共に吸熱クラッキング法を行うのに必要とされる熱は現場で発生される。一般に、炭化水素供給物および分子状酸素を支持触媒に通過させてオレフィン生成物を生成させる。典型的には触媒は少なくとも1種の白金族金属を含み、たとえば白金を含む。自熱クラッキング法は欧州特許第332289号B明細書;欧州特許第529793号B明細書;欧州特許出願公開第0709446号A明細書および国際公開第00/14035号パンフレットに記載されている。
【0003】
追加の供給物成分を自熱クラッカーに通過させることも知られている。適する追加供給物成分はたとえば水素および水蒸気を包含する。たとえば水素は典型的には、これが分子状酸素含有ガスと優先的に反応して、炭化水素供給物の自熱クラッキングに必要な熱を発生するので供給され、より価値ある炭化水素供給物を燃焼させて前記熱を発生させる要件を減少させる。
【0004】
今回、液体炭化水素の自熱クラッキングは、水蒸気を含む希釈剤(これは液体添加水素と予備混合される)を用いることにより有利に操作しうることが突き止められた。
【0005】
従って第一面において本発明は、分子状酸素含有ガスの存在下における液体パラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法を提供し、前記方法は
(a)液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を供給し、
(b)前記液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を水蒸気を含む希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも300℃の温度まで予熱して、少なくとも20容量%の希釈剤を含む揮発した希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を生成させ、
(c)次いで前記揮発希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を分子状酸素含有ガスと混合して、混合希釈供給流を生成させ、
(d)次いで前記混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与える
ことを特徴とする。
【0006】
ここで使用する「液体パラフィン系炭化水素」とは、標準温度および圧力(s.t.p.)にて液体であるパラフィン系炭化水素を意味する。
【0007】
本発明の方法に適する液体炭化水素はナフサ、ガス油、減圧ガス油およびその混合物を包含する。
【0008】
本発明の方法における工程(b)は前記液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を水蒸気を含む希釈剤と混合することからなり、前記希釈剤を少なくとも300℃の温度まで予熱し、少なくとも20容量%の希釈剤を含む揮発された希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を生成させる。
【0009】
従って工程(b)は、液体パラフィン系炭化水素含有供給原料の蒸発からなっている。これは、希釈剤と混合する前に液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を揮発させることにより達成しうるが、好ましくは液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を希釈剤と混合すると共に同時に或いは次いで揮発させることもできる。好ましくは、予熱された希釈剤を少なくとも部分的に使用して液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を揮発させる。
【0010】
供給原料の揮発の前もしくはその際の希釈剤の使用または既に揮発した供給原料への希釈剤の添加は、揮発供給原料の自己燃焼の危険を減少させる。特に、揮発液体炭化水素は、一般に低温度領域と高温度領域との間の狭い温度範囲のみを有し、ここで自己燃焼が生じうる。この範囲は圧力依存性であり、圧力が増大するにつれて減少する。従って、良好(狭い範囲)の温度制御および揮発供給原料に対する低滞留時間を有することが望ましい。更に、一般に圧力が上昇するにつれ液体炭化水素を揮発させるのは一層困難となり、従って圧力が上昇するにつれ揮発液体炭化水素の滞留時間を減少させることが望ましいが、これは第1に液体炭化水素を揮発させる困難性に基づき困難となる。本発明の方法による希釈剤の使用は、揮発炭化水素の分圧を低下させると共に全圧力を顕著に高く保つ。従って、揮発炭化水素のための安定な温度範囲は均等な全圧力に対するよりも大となり、滞留時間が問題とするよりも短くなる。希釈剤による混合供給流の希釈は更に一層高い流速を得ることをも可能にし、これは液体炭化水素含有流と分子状酸素含有ガスとの混合を一層迅速かつ容易にする。(一般に炭化水素含有流と分子状酸素含有ガスとの混合は、分子状酸素含有ガスおよび炭化水素含有流の各流速が2:1〜5:1となる際に最も効率的となる)。他の諸成分の不存在下に、本発明における炭化水素と酸素との適するモル比を得るには、揮発の後でさえ必要とされる液体炭化水素の流速は必要とされる酸素の流速よりもずっと低いが、本発明による液体炭化水素への希釈剤の添加はこの困難性を減少させる。更に、得られる高い流速はより短い滞留時間内における触媒への混合希釈供給流の供給を可能にし、これも着火問題を減少させる。
【0011】
更に希釈剤を使用して、液体炭化水素の蒸発を促進することもできる。
【0012】
一般に、一層高い全圧力が望ましい。何故なら、これらは改善された選択性をもたらしうるからである。液体パラフィン系炭化水素含有供給原料の一層低い分圧は更に生成物流における生成物の減少した分圧をもたらし、これは生成物流にて生ずる反応を更に減少させると共に、生成物流のための急冷要件を減少させる。
【0013】
熱交換器を用いて混合前に希釈剤を予熱することができる。希釈剤は好ましくは300〜400℃の範囲の温度まで予熱される。
【0014】
水蒸気の他に或いは代案具体例において、希釈剤は一酸化炭素、二酸化炭素、不活性ガス、たとえばヘリウム、ネオン、アルゴンもしくは窒素またはその混合物をも含むことができる。
【0015】
たとえば一酸化炭素および二酸化炭素は、工程(d)の自熱クラッキングプロセスから副生物として得ることができる。
【0016】
好適希釈剤は20〜100容量%の水蒸気、より好ましくは50〜100容量%の水蒸気、特に好ましくは少なくとも75容量%の水蒸気を含む。
【0017】
揮発した希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流は好ましくは少なくとも20容量%の水蒸気、たとえば少なくとも40容量%の水蒸気を含む。
【0018】
典型的には、混合希釈供給流は20〜80容量%の希釈剤、たとえば40〜60容量%の水蒸気を含む。
【0019】
特に好ましくは、混合希釈供給流は20〜80容量%の水蒸気、たとえば40〜60容量%の水蒸気を含む。
【0020】
希釈剤は、任意適する混合装置を用いて液体パラフィン系炭化水素含有供給原料と混合することができる。
【0021】
希釈剤を導入する好適方法はスパージャの使用である。
【0022】
希釈剤を使用して所定量の他の炭化水素(液体パラフィン系炭化水素含有供給原料以外の炭化水素)を本発明の方法に導入することができる。従って希釈剤は更に、液体パラフィン系炭化水素含有供給原料以外に20重量%までの炭化水素(たとえばジエン類、たとえばブタジエン)および/または室温および圧力にてガスである炭化水素を含むこともできる。
【0023】
更に希釈剤を使用して所定量の水素を高温度にて反応に供給することもでき、従って希釈剤は20容量%までの水素を含むことができる。
【0024】
代案として、希釈剤における炭化水素または水素の存在下に希釈剤は20容量%までの分子状酸素を含むこともできる。
【0025】
水蒸気の添加は、水蒸気が熱分解性炭素を触媒上で形成するのを阻止すると共にクラッキング反応にてアセチレンの形成を阻止するという更なる利点を有する。水蒸気(水)は、標準温度および圧力にてガス状である希釈剤、たとえば窒素、一酸化炭素および二酸化炭素よりも生成物流から除去することを容易にする。典型的には、水蒸気(水)は生成物流の処理に際し(たとえば一般に反応を冷却すべく使用される生成物急冷に際し)水相として回収され、従って生成ガスから容易に分離することができる。
【0026】
一具体例において、水蒸気を含む予熱された希釈剤は水素および分子状酸素を含む流れを与えることにより生成させることができ、これは水蒸気(水)を生成すべく反応すると共に所要の予熱温度まで流れを加熱するのに要する熱を発生する。
【0027】
代案具体例においては水蒸気を含む予熱希釈剤を、メタン(および必要に応じ水素)を供給してこれを分子状酸素と反応させることにより水蒸気(水)、二酸化炭素および必要に応じ任意の未反応メタンを含む熱流を生ぜしめることにより生成させることができ、その少なくとも幾分かを予熱希釈剤として使用する。水素および分子状酸素または水蒸気から発生した水蒸気を含む熱流と二酸化炭素とメタンおよび分子状酸素から発生した任意の未反応メタンとを含む熱流を、典型的には先ず最初に400℃よりずっと高い温度および従って希釈剤流に必要な温度よりもずっと高い温度にする。この流れは熱交換により冷却することができ、および/または希釈して所望温度の希釈剤流を生成させることができる。この流れを熱交換により冷却する場合、除去された熱はプロセスへの他の供給物(たとえば下記するような分子状酸素含有ガス)のための予熱として使用することができる。
【0028】
好ましくは、希釈剤として使用される水蒸気の少なくとも幾分かを下流処理工程から、たとえば反応を冷却すべく使用する急冷から得ることができる。水蒸気の更なる適する供給源はプロセス流であり、これは本発明の方法にて反応により形成される水として規定される。
【0029】
水蒸気として循環および使用するのに先立ち、下流処理工程からの水は全て、ボイラに供給すると共に不当な汚染を生ぜしめることなく蒸発させうるよう処理することができる。適する処理工程は有機液体成分の除去、固形分の除去および水の酸度を調整する処理(腐食問題を回避するため)を包含する。蒸発段階にて不当な汚染を生ぜしめない各成分を流れ中に残留させ、少なくとも部分的に反応帯域で消費させる。
【0030】
本発明の工程(c)において、揮発された希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を次いで分子状酸素含有ガスと混合して混合希釈供給流を生成させる。
【0031】
任意適する分子状酸素含有ガスを使用することができる。好適には、分子状酸素含有ガスは分子状酸素、空気および/またはその混合物である。分子状酸素含有ガスを不活性ガス(たとえば窒素もしくはアルゴン)と混合することができる。
【0032】
分子状酸素含有ガスを混合に先立ち予熱することができる。予熱する場合、分子状酸素含有ガスを典型的には150℃未満、好ましくは100℃未満の温度まで予熱する。
【0033】
一般に、混合される各種流れの予熱の量は、混合希釈供給流が混合物の自己着火温度より低くなる温度に限定される。これは一般に、混合供給流が触媒と接触する際に得られる反応温度より顕著に低い。典型的には、発生する混合希釈供給流は250〜500℃の範囲、たとえば350〜450℃の範囲であるが、好適範囲は圧力に依存する。
【0034】
好ましくは、混合希釈供給流はパラフィン系炭化水素(導入しうる液体パラフィン系炭化水素および必要に応じ他の反応性パラフィン系炭化水素)を、パラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの炭化水素から二酸化炭素および水への完全燃焼につき必要とされるパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの化学量論比の5〜16倍、好ましくは5〜13.5倍、より好ましくは6〜10倍の比にて含む。
【0035】
水素(分子状水素)を、本発明の方法に混合希釈供給流の成分として同時供給することができる。好適には水素と分子状酸素含有ガスとのモル比は0.2〜4の範囲、好ましくは1〜3の範囲である。
【0036】
好ましくは水素を、分子状酸素含有ガスと混合する前に、液体パラフィン系炭化水素含有供給原料と予備混合する。
【0037】
熱希釈剤の使用は、低温希釈剤の添加と比較して、混合希釈供給流の加熱要件を減少させる。高温希釈剤の使用は更に、自熱クラッキング反応の始動および遮断における利点をも有する。始動に際し高温希釈剤を反応体の前に触媒に導入して、触媒を希釈剤の温度まで予備加熱させる。反応体を導入する場合、触媒は急速に反応温度まで加熱され、これは典型的には触媒の出口にて600〜1200℃の範囲である。触媒は既に反応体の導入に先立ち高温希釈剤の使用から一層高温度であるため、反応の始動時点における触媒にわたる熱ストレスが減少する。
【0038】
同様に、遮断に際し触媒にわたる熱ストレスは高温希釈剤および必要に応じパージガス単独でなくパージガス(たとえば窒素)を使用して減少させることができる。
【0039】
本発明の工程(d)においては、混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与える。
【0040】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒は一般に第VIII族金属を触媒成分として含む。適する第VIII族金属は白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウムを包含する。ロジウム、より好ましくは白金およびパラジウムが好適である。典型的な第VIII族金属の充填量は、触媒の全乾燥重量に対し0.01〜100重量%、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
【0041】
反応は好適には600〜1200℃の範囲、好ましくは850〜1050℃の範囲、特に好ましくは900〜1000℃の範囲の触媒出口温度で行うことができる。
【0042】
本発明の方法は好ましくは少なくとも1barg(混合希釈供給流の全圧力)の範囲、特に好ましくは、1〜5bargの範囲の高められた圧力で操作される。本発明の方法は好ましくは、0.5bargより大(たとえば0.5〜4bargの範囲)の混合希釈供給流における液体パラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスの分圧にて行われる。
【0043】
混合希釈供給流は、圧力依存性であると共に典型的には10,000h−1barg−1より大であるガス空時速度にて触媒上に通過させ、好ましくは20,000h−1barg−1より大、特に好ましくは100,000h−1barg−1より大である。たとえば20bargの圧力にて、ガス空時速度は特に好ましくは2,000,000h−1より大である。しかしながら、最適ガス空時速度は供給物組成の性質に依存することが了解されよう。
【0044】
反応生成物は好ましくは水で急冷される。何故なら、反応生成物は典型的には適する急冷タワーにて自熱クラッカーから出現するからである。
【0045】
更なる反応が生ずるのを回避するため、生成物流を形成の100ミリ秒以内、好ましくは形成の50ミリ秒以内、特に好ましくは形成の20ミリ秒以内に750〜600℃まで冷却される。前記したように、本発明の方法による希釈剤の使用は、希釈剤の不存在下における反応と比較し、生成物流にて更なる反応が生ずる速度を減少させる。従って本発明は、直接的急冷を排除すると共にこれをより「慣用」の熱回収システム(たとえば廃棄物ヒートボイラー)で交換する能力を与える。
【0046】
オレフィンの他に、炭化水素生成物流は未反応パラフィン系炭化水素、水素、一酸化炭素、メタンおよび少量のアセチレン、芳香族物質および二酸化炭素をも含むことができ、これらは所望のオレフィンから分離する必要がある。
【0047】
第VIII族触媒を用いる場合、好ましくはこれは触媒プロモータと組み合わせて用いられる。プロモータは第IIIA族、IVA族および/またはVA族の金属とすることができる。代案としてプロモータは遷移金属とすることもでき、遷移金属プロモータは第VIII族遷移金属触媒成分として用いうるものとは異なる金属である。
【0048】
好適な第IIIA族金属はAl、Ga、InおよびTlを包含する。これらのうち、GaおよびInが好適である。好適第IVA族金属はGe、SnおよびPbを包含する。これらのうちGeおよびSnが好適である。好適第VA族金属はSbである。第VIIIB族金属と第IIIA族、IVA族もしくはVA族金属との原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。
【0049】
遷移金属系列における適する金属は周期律表第IB〜VIII族におけるような金属を包含する。特に周期律表第IB、IIB、VIB、VIIBおよびVIII族から選択される遷移金属が好適である。この種の金属の例はCr、Mo、W、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdおよびHgを包含する。好適遷移金属プロモータはMo、Rh、Ru、Ir、Pt、CuおよびZnである。第VIII族金属と遷移金属プロモータとの原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。
【0050】
好ましくは触媒は1種のみのプロモータを含み、プロモータは第IIIA族、第IVA族、第VB族および遷移金属系列から選択される。たとえば触媒はロジウム、白金およびパラジウムから選択される金属およびGa、In、Sn、Ge、Ag、AuもしくはCuよりなる群から選択されるプロモータを含むことができる。この種の触媒の好適例はPt/Ga、Pt/In、Pt/Sn、Pt/Ge、Pt/Cu、Pd/Sn、Pd/Ge、Pd/CuおよびRh/Snを包含する。Rh、PtもしくはPdは触媒の全重量の0.01〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%とすることができる。Rh、PtもしくはPdと第IIIA、IVAもしくは遷移金属プロモータとの原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。たとえばRh、PtもしくはPdとSnとの原子比は1:0.1〜50、好ましくは1:0.1〜12.0、より好ましくは1:0.2〜3.0、特に好ましくは1:0.5〜1.5とすることができる。他方においてPtもしくはPdとGeとの原子比は1:0.1〜50、好ましくは1:0.1〜12.0、より好ましくは1:0.5〜8.0とすることができる。PtもしくはPdとCuとの原子比は1:0.1〜3.0、好ましくは1:0.2〜2.0、より好ましくは1:0.5〜1.5とすることができる。
【0051】
代案として、プロモータは第IIIA族、第IVA族および遷移金属系列から選択される少なくとも2種の金属を含むこともできる。たとえば触媒が白金を含む場合、白金は遷移金属系列からの2種の金属、たとえばパラジウムおよび銅で促進することができる。この種のPt/Pd/Cu触媒はパラジウムを乾燥触媒の全重量に対し0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.01〜1重量%の量にて含むことができる。PtとPdとの原子比は1:0.1〜10.0、好ましくは1:0.5〜8.0、より好ましくは1:1.0〜5.0とすることができる。白金と銅との原子比は好ましくは1:0.1〜3.0、より好ましくは1:0.2〜2.0、特に好ましくは1:0.5〜1.5である。
【0052】
触媒が白金を含む場合、これは代案として1種の遷移金属および周期律表第IIIA族もしくは第IVA族から選択される他の金属で促進することもできる。この種の触媒において、パラジウムは触媒の全重量に対し0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%の量にて存在させることができる。PtとPdとの原子比は1:0.1〜10.0、好ましくは1:0.5〜8.0、より好ましくは1:1.0〜5.0とすることができる。Ptと第IIIA族もしくはIVA族金属との原子比は1:0.1〜60、好ましくは1:0.1〜50.0とすることができる。好ましくは第IIIAもしくは第IVA族金属はSnもしくはGe、特に好ましくはSnである。
【0053】
疑念を回避するため、触媒における第VIII族金属およびプロモータは任意の形態で、たとえば金属として或いは金属化合物、たとえば酸化物の形態で存在させることができる。
【0054】
触媒は未支持、たとえば金属ガーゼの形態で存在させうるが、好ましくは支持させる。任意適する支持体材料、たとえばセラミックもしくは金属支持体を使用しうるが、セラミック支持体が一般に好適である。セラミック支持体を使用する場合、セラミック支持体の組成は任意の酸化物またはたとえば600〜1200℃の高温度にて安定である酸化物の組合せとすることができる。支持体材料は好ましくは低熱膨張係数を有し、高温度における相分離に対し耐性である。
【0055】
適するセラミック支持体はコルデライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、アルミナ(α−Al)、イットリア安定ジルコニア、アルミナチタネート、ニアスコンおよびカルシウムジルコニルホスフェートを包含する。セラミック支持体はたとえばγ−Alで洗浄被覆することができる。
【0056】
支持体は好ましくはフォームまたは蜂巣状モノリスの形態である。
【0057】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒は、当業界にて公知の任意の方法で作成することができる。たとえばゲル法および湿潤含浸技術を用いることができる。典型的には支持体に金属を含む1種もしくはそれ以上の溶液を含浸させ、乾燥させ、次いで空気中で焼成する。支持体は1工程もしくはそれ以上の工程にて含浸させることができる。好ましくは複数の含浸工程を用いる。支持体は好ましくは乾燥されると共に各含浸の間に焼成され、次いで最終焼成に好ましくは空気中でかけられる。焼成された支持体を、次いでたとえば水素雰囲気中での熱処理により還元することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子状酸素含有ガスの存在下における液体パラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法において、前記方法は
(a)液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を供給し、
(b)前記液体パラフィン系炭化水素含有供給原料を水蒸気を含む希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも300℃の温度まで予熱して、少なくとも20容量%の希釈剤を含む揮発した希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を生成させ、
(c)次いで前記揮発希釈液体パラフィン系炭化水素含有供給流を分子状酸素含有ガスと混合して混合希釈供給流を生成させ、
(d)次いで前記混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与える
ことを特徴とするオレフィンの製造方法。
【請求項2】
液体パラフィン系炭化水素含有供給原料がナフサ、ガス油、減圧ガス油もしくはその混合物からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合希釈供給流がパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの、炭化水素から二酸化炭素および水への完全燃焼に必要される化学量論比の5〜16倍、好ましくは5〜13.5倍、より好ましくは6〜10倍のパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの比にてパラフィン系炭化水素を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
混合希釈供給流が20〜80容量%、たとえば40〜60容量%の水蒸気を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
希釈剤が50〜100容量%の水蒸気を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
希釈剤が、メタンもしくは液体パラフィン系炭化水素含有供給原料以外の20容量%までの炭化水素を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒が、その触媒成分として第VIII族金属を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528724(P2008−528724A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551730(P2007−551730)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005048
【国際公開番号】WO2006/077370
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(505229003)イネオス ヨーロッパ リミテッド (20)
【Fターム(参考)】