説明

自由状態で通常閉じている弁

【課題】弁が通常閉じている弁構造を備える弁装置が開示される。
【解決手段】上記通常閉じている弁は、弾性の弁突起のへりの下方によって形成される円形の弁シール面と、円形の弁座とを備えることができる。上記弁座は、貫通孔のへり、例えばプラスチックのカセットに上記弁シール面と上記弁座と、上記貫通孔が同心円状となるように成型された貫通孔のへりによって形成される。上記弁突起は中空の「きのこ」形の弁突起又は円錐形の弁突起とすることができる。上記弁突起の内面に全く力が加わらなければ、わずかに長い貫通孔による弁突起の伸びで生じる定常の自由状態の負荷の結果として、上記弁シール面が上記弁座に押し付けられるため、流体は上記弁を全く通過できない。上記弁突起の内面に力が加わると、上記弁シール面は上記弁座から移動させられ、流体は上記弁シート面と弁座の間を通過して、上記弁突起と上記貫通孔の内面との間を通過することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全てがここに参照例として合体されている2006年9月26日出願の米国特許出願暫定第60/847,159号について、第35米国条例第119条に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は手術用の装置及び方法に関する。特に、本発明は眼の手術に使用される手術用カセットに用いられる弁の構造に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の眼は、軽度の劣化から完全な失明までを引き起こす多くの病気に罹り得る。コンタクトレンズや眼鏡がいくつかの軽い病気を補償できるため、眼の手術はそれ以外の病気に対して必要とされる。一般的に、眼の手術は硝子体網膜の手術のような眼球後部の手術と、白内障の手術のような眼球前部の手術に分けられる。最近では、眼球の前部と後部の組み合わされた手術が開発されている。
【0004】
眼の手術に使われる手術用機器は眼球前部の手術用、又は眼球後部の手術用、又は両方に使用されるものに分類することができる。どの場合も手術用機器を使用する際は、しばしば手術用カセット、流体用バッグ、ハンドピース用のチップその他の消費材といった消費財を組み合わせて使用することが必要となる。
【0005】
手術用カセットは手術及び手術用機器による様々の機能を提供することができる。例えば、白内障の手術(水晶体超音波乳化吸引術)用の手術用カセットは、手術現場への洗浄流れや、手術現場からの吸引流れの処理を援助する。手術用カセットはまた、流体バッグの支持台や、手術用機器に吸引、圧入を指示するマニホールドその他の機能を提供できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
白内障手術のような手術の間は、流体の流れは上記手術用カセット内の弁によって制御される。しかしながら、現在のカセットの構造は、その弁が閉じるために積極的に作動しない限り開いていることを意味する「通常開」に分類される弁を利用している。これら通常開の弁は、流体がカセット内の(すなわち手術装置の)吸引管に入るのを許してしまう。また、通常開の弁は、手術中の全体的な清浄度を制限する受液容器が取り外された際、カセットの開口部から流体が滴ってしまうこともありうる。さらにまた、ある用途においては通常開の弁は停電に対して「フェールセーフ」とならず、停電時に好ましくない流体の流れを引き起こすおそれがある。
【0007】
したがって、従来技術のカセット弁構造の問題を軽減または除去するとともにカセット内の流体の流れを制御でき、さらに高い機能性、信頼性、清浄性及び安全性を提供できるカセット弁の構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、弁が通常閉じている弁構造を提供する。この通常閉の弁は、弾性の弁突起のへりの下部と、例えば弁シール面、弁座及び貫通孔が同心円状になるようにプラスチックのカセットに成型された貫通孔のへりに作られた円形の弁座とで形成される円形の弁シール面を備えることができる。上記弁突起は中空の「きのこ」形の弁突起であってもよく、又は円錐形の弁突起であってもよい。上記弁突起の内面に何の力も加わらなければ、貫通孔よりわずかに長い弁突起の伸びによって生じる、安定した自由状態の負荷の結果として、上記弁シール面が上記弁座に押し当てられているため、流体は上記弁を一滴も通過できない。上記弁突起の内面に力が加わると、上記弁シール面は上記弁座面から移動させられるため、上記弁シール面と弁座との間に流体が流れることができ、その後流体が上記弁突起と貫通孔の内面との間を通過することができる。
【0009】
好適な実施形態では、上記弁構造は眼の手術での使用に適した流体工学カセットに使用可能である。
【0010】
本発明の実施形態には、カセットの取り付けの間、カセットの準備の間、手術中及びカセットの取り外しの間、カセットの吸入管への好まざる流体の流入を排除するという優位性がある。
【0011】
本発明の実施形態には、その他にも、カセットの吸入口からの滴りを防止して、手術中の全体的な清浄度を改善するという優位性がある。
【0012】
本発明の実施形態には、その他にも、停電状態の間のフェールセーフを実現する能動的制御を提供するという優位性がある。
【0013】
本発明とその優位性については、類似の符号が類似の特徴を示している添付図とともに以下の記載を参照することでさらに完全な理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】手術用制御装置の1つの実施形態の図式的な表現である。
【図2】手術用カセットの1つの実施形態の図式的な表現である。
【図3】カセット受容器の1つの実施形態の図式的な表現である。
【図4】中空できのこ形の弁突起の内面に力が全く加わらないときの本発明の断面図である。
【図5】中空できのこ形の弁突起の内面に力が加わったときの本発明の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態が添付図に説明されており、多くの図面の類似の対応する部品を参照するために類似の符号が用いられている。
【0016】
本発明の実施形態は、通常閉じている弁、すなわち静的な定常状態の条件においては流体が全く通過できない弁を含む。1つの実施形態によれば、上記弁シール面は、弾性で中空のきのこ形又は円錐形の弁突起の下方のへりでよく、上記弁座は、上記弁突起の内面にある力が加わらない限り、流体が全く上記弁を通過できないように設計された貫通孔のへりでよい。好適な実施形態によれば、上記弁は眼の手術用制御装置での使用に応用される流体力学のカセットに採用される。
【0017】
図1は、眼の手術用制御装置100の1つの実施形態の図式的な表現である。手術用制御装置100は、タッチスクリーン115を有する旋回式モニター110を含んでよい。旋回式モニター110は、タッチスクリーン115を見る必要のある人に向けてどの方向にも向けられる。旋回式モニター110は、回転させ、傾斜させることができ、さらに、一方の側面から他方の側面まで旋回させることができる。タッチスクリーン115はユーザーに制御装置100との相互作用を可能にさせるグラフィカル・ユーザー・インタフェース(「GUI])を提供する。
【0018】
手術用制御装置100はまた、様々のツールや消費財を手術用制御装置100に繋ぐのに使われる接合部パネル120を含む。接合部パネル120は、例えば凝固物接合部、平衡塩類溶液受容器、様々のハンドピース及び流体制御装置(「FMS」)又はカセット受容器125を含むことができる。手術用制御装置100はまた、様々の使い勝手のよい特徴、フットペダル制御(例えばパネル130の後方に格納される)、その他の特徴を含むことができる。操作中は、カセット(不図示)は、カセット受容器の中に設置され、使用中の動きが最小となるように挟み込まれて保持される。
【0019】
図2は、手術用カセット150の1つの実施形態の図式的な表現である。手術用カセット150は、以下の手術中に廃棄されることが可能な閉じた系の流体装置を提供できる。カセット150は、カセット本体155及び該カセット本体155から突き出た上記クランプ(例えば一般的にクランプ領域160及び165で示されるような)と相互作用する部分を含むことができる。カセット150は、ABSプラスチック又は他の適切な材料から形成され得る。実施形態に示されるように、カセット150は、カセット150が手術用制御装置100に挿入されたとき上記手術用制御装置に面する、内部の又は手術用の制御装置との相互作用部分170と、中間部分175及びカバープレート179という3つの基本的な部分から形成される。カセット150の様々の部分は、圧入、連動タブ、化学結合、熱接合、機械的留め具又は他の周知の接合手段によって互いに結合できる。他の実施形態においては、カセット150は一体成型または分割成型される。
【0020】
手術用制御装置との相互作用部分170は、使用中、上記制御装置と向き合うことができ、流体の流路(例えばエラストマーポンプの膜によって提供される蠕動ポンプのための流路177等)や、弁(例えば一般的に195に示される注入/吸引弁等)や、流体の流れを管理する他の特徴のための相互作用を提供できる。カセット150は、手術中の流体を集める流体バッグ(不図示)に接続することもできる。カセット受容器(図3の135に示す)の上に位置するピンは、上記手術用制御装置又はカセット受容器に接触している上記カセットからの流れがなくても上記カセット内の流体の流れを制御できるように、エラストマー弁195を操作する。
【0021】
手術用カセット150は、本発明の様々の実施形態によれば、吸入及び注入のために流体を保持するチャンバーを含む。例えば、チャンバーハウジング180は、2つの注入チャンバー181/182を含むことができる。3番目のチャンバー185は、チャンバーハウジング180の反対側のカセット150の内部に(例えば符号190で示されるカセット150の側面等に)設けることができる。1つの実施形態によれば、上記チャンバー内の流体のレベルは当業者にとって周知の様々な手段で測定することができる。
【0022】
図3は、カセットを外したカセット受容器125の1つの実施形態の図式的な表現である。カセット受容器125は、上記カセット内の流体の流れを制御するための手段として手術用カセット150の弾性の弁膜に作用するように設計された、様々の形状のピン(一般的に135に示される)を備えることができる。カセット受容器125はさらに、蠕動ポンプローラ140を運転中に上記手術用カセット150に密着させるための開口部を含むことができる。蠕動ポンプと補足的なカセットの1つの実施形態が、ここでこの参照によって完全に合体されている米国特許出願第6,293,926号(Sorensen)に記載されている。
【0023】
上記手術用カセット150は、図3の実施形態では、下部レール142と上部レール(不図示)を有する留め具で保持される。各々のレールは、対応する取付け位置で上記カセットと接触する取付け用の突起(取付け突起144等)を備えることができる。解放ボタン146は、上記取付け位置から上記カセットの解放を開始するために押される。上記手術用制御装置100に応じて、上記カセットの解放手順は、圧力や流体の発散、留め具の解放その他の段階を含むいくつかの段階を含むことができる。図3の構造は一例として提供されている。カセット受容器125の形状、ピンの配置及び数量、及びカセット受容器125の他の特徴は、上記手術用制御装置100、行われる手術の手順又は他の要素によって決まる。
【0024】
図4は、本発明の弁200の1つの実施形態の定常状態の条件における断面図である。中空のきのこ形の弁突起210がハウジング205(好適な実施形態では手術用カセット150のプラスチック製本体)の貫通孔225内に配置されている。円形の弁座220は貫通孔225のへりに配置され、円形の弁シール面215はきのこ形の弁突起210のへりに配置される。弁200は、弁座220、弁シール面215、及び貫通孔225が同心円状となるように構成され得る。貫通孔225の長さ217は、210の伸ばされていない長さよりわずかに長い。したがって、弁突起210の内面240に力が全く加わらないときは、貫通孔225の長さがわずかに長いために上記弁突起210の伸びによって生じる定常の自由状態の負荷により、弁シール面215と弁座220との接触は維持される。その結果、流路230からチャンバー231に入った流体は、弁シール面215と弁座220との間を通って流路235に進入することができない。この構造により、弁200は定常状態の条件では閉じられており、流体の流れを妨げる。
【0025】
図5は、弁突起210の内面240に矢印246で示される力が加えられた弁200の断面図である。力246は、弁突起210のきのこ形の頭部を距離219移動させる効果を有しており、弁シール面215と弁座220はもはや接触していない。弁突起210の中空で弾性の円筒部分の伸びはまた、弁突起210の外径を収縮させ、その結果、円筒形の弁突起210の外壁と貫通孔225の内壁との間に、半径方向の隙間245を生じさせる。隙間219及び245により、流体は流路230からチャンバー231に入り、上記弁を通って流路235へと流入することができる。
【0026】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、上記実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されないことが理解されるべきである。上記の実施形態に対して多くの変形、変更、付加及び改良が可能である。これらの変形、変更、付加及び改良は、以下のクレームに詳しく述べる本発明の範囲内のものであることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置であって、
流体の流入路及び流体の流出路を含むハウジングであって、上記2つの流路は貫通孔によって繋がっているハウジングと、
貫通孔に同心円状に配設された弾性の弁突起であって、静的な条件においては、上記弁突起の下方に設けられたへりは上記貫通孔のへりとの接触を維持する弁シール面を形成する弁突起と、
弁座を形成する上記貫通孔と、
を具備する弁装置。
【請求項2】
上記弁突起は中空の、きのこ形をした弁突起であることを特徴とする、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
上記中空の、きのこ形をした弁突起の内面に力が加わることにより、上記きのこ形の弁突起の頭部が移動し、上記弁シール面と上記弁座との間の対応する隙間が生じ、この結果上記流入路と上記流出路が繋がる、請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
上記弁突起は円錐形の弁突起であり、上記円錐の外径は上記貫通孔の端部とのシール面を形成する、請求項1に記載の弁装置。
【請求項5】
上記ハウジングは手術用カセットであることを特徴とする、請求項1に記載の弁装置。
【請求項6】
上記手術用カセットは使用後廃棄される1回の使用に適用される、請求項5に記載の弁装置。
【請求項7】
上記手術用カセットは眼の手術用の制御装置に設置されるカセット受容器への挿入に適用される、請求項5に記載の弁装置。
【請求項8】
上記眼の手術用の制御装置の上記カセット受容器は、上記弁突起の上記内面に力を加える手段を備える、請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99596(P2013−99596A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−21488(P2013−21488)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2007−249824(P2007−249824)の分割
【原出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)