自由生活性アメーバ防除剤
【課題】自由生活性アメーバを防除し、病原性自由生活性アメーバに起因する疾病の感染を予防できるほか、アメーバとレジオネラ属細菌が共存している水系において、自由生活性アメーバを宿主としているレジオネラ属細菌を除菌すること。
【解決手段】自由生活性アメーバ防除作用を有する化合物を同定するため、土壌から分離したカビを、培養した後、カビと培地の混合物を1−ブタノールで抽出した合計800個の試料につき、非病原性アメーバ、ネグレリア・ロバニエンシス(N. lovaniensis)を用いて、ペーパーディスク法により検定したところ、抗アメーバ活性を有する化合物の存在が確認され、NMRを用いて1−リノール酸グリセリドであると同定した。そこで、市販の1−リノール酸グリセリドの標準試薬を用いて、当該化合物の抗自由生活性アメーバ活性を確認した。
【解決手段】自由生活性アメーバ防除作用を有する化合物を同定するため、土壌から分離したカビを、培養した後、カビと培地の混合物を1−ブタノールで抽出した合計800個の試料につき、非病原性アメーバ、ネグレリア・ロバニエンシス(N. lovaniensis)を用いて、ペーパーディスク法により検定したところ、抗アメーバ活性を有する化合物の存在が確認され、NMRを用いて1−リノール酸グリセリドであると同定した。そこで、市販の1−リノール酸グリセリドの標準試薬を用いて、当該化合物の抗自由生活性アメーバ活性を確認した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アメーバ作用を有する自由生活性アメーバ防除剤や、該アメーバ防除剤を有効成分として含有する口腔用・水系用等の自由生活性アメーバ防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アメーバは原生動物の一種であり、高等動物に寄生して生息する寄生性アメーバと自然界に広く生息する自由生活性アメーバとに大別され、自由生活性アメーバは、赤痢アメーバに代表される寄生性アメーバとは異なり、ヒトに対する健康上の影響はないと考えられてきた。しかし、1976年に米国での重症肺炎の集団発生が、空調用冷却塔から飛散した水に含まれていたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)による感染症であることが明らかとなったこと、イソチアゾロン系化合物やニトロアルコール系化合物等のレジオネラ属菌用の殺菌剤(特許文献1及び2参照)を水系に添加しても、レジオネラ属菌の除菌に有効でなかったことから、レジオネラ属菌の宿主としての自由生活性アメーバの役割が注目されるようになった。すなわち、ネグレリア(Naegleria)属、アカントアメーバ(Acanthamoeba)属、ハルトマンネラ(Hartmannella)属などのアメーバが、レジオネラ属菌を食胞内に取り込んだ場合、消化を免れたレジオネラ属菌は、食胞内で増殖し、ついには食胞の破裂によりレジオネラ属菌は外界に放散し、新たな宿主へと感染する(非特許文献1参照)。このように、アメーバは、レジオネラ属菌の宿主として重要な役割を果たしており、アメーバと共存しているレジオネラ属菌を効果的に除菌するには、アメーバを殺滅することが考えられる。そこで、水系のアメーバを効果的に防除するために、ヒノキチオール化合物及びグルタルアルデヒド(特許文献1及び2参照)や、ジメチルアミド(特許文献3参照)や、ホスホニウム化合物(特許文献4参照)や、ビス型四級アンモニウム塩(特許文献5参照)を対象水系に添加することを特徴とするアメーバの抑制方法が提案されている。
【0003】
また、近年、ヒト又は動物に感染し、重篤な健康影響を及ぼす自由生活性アメーバについて注目が集まっている。アメーバ性脳炎は、ネグレリア・フォーレリ(N.fowleri)の感染による原発性アメーバ性髄膜脳炎、並びにアカントアメーバ属アメーバ及びバラムチア・マンドリルリス(Balamuthia mandrillaris)による感染による肉芽腫性脳炎に分けることができるが、両病型共に致死的である。また、アメーバ性角膜炎は、コンタクトレンズ装着により生じる角膜上の小さな傷等から、アカントアメーバ属のアメーバが感染することで発症すると考えられ、激しい痛みを伴う角膜潰瘍、混濁、視力障害、さらには失明のおそれもある難治性の疾病であるが(非特許文献1参照)、これらの疾病について簡便で効果的な予防法、治療方法は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−57737号公報
【特許文献2】特開平11−319847号公報
【特許文献3】特開2002−114609号公報
【特許文献4】特開2002−308713号公報
【特許文献5】特開2003−290778号公報
【非特許文献1】八木田健司、泉山信司、生活用水の病原アメーバ汚染とその健康影響−水系環境のアメーバ汚染、モダンメディア52巻8号12-19、2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アメーバの生存及び増殖を抑制するための水系添加剤として提案されている、ヒノキチオール(特許文献1及び2参照)は、コストが高いという問題があり、アルデヒドをベースとする消毒剤(特許文献1及び2参照)は、多くの場合、特に皮膚や呼吸器官の感作反応を惹起するうえに、特有な刺激性の不快臭を有することが多い。また、第四級アンモニウム塩(特許文献5参照)は、濃度の高い水溶液として使用する場合に泡立ちが著しい場合があり、取扱いに不都合を生じる場合があった。
【0006】
また、原発性アメーバ性髄膜脳炎は、世界で180例以上の報告があるが、生存例は5例に過ぎず、生存例に投与された国内承認薬はすべて保険適応外である。アカントアメーバ角膜炎についても、使用されている国内承認薬は保険適応外である(寄生虫症薬物治療の手引き、改訂第6.0版、厚生労働科学研究費補助金・ヒューマンサイエンス振興財団政策創薬総合研究事業―「熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究」班)。
【0007】
したがって、本発明の課題は、安価で、安全性が高く、使用が簡便な自由生活性アメーバ防除剤、病原性自由生活性アメーバに起因する疾病の感染予防又は治療用のアメーバ防除組成物、口腔用・水系用の自由生活性アメーバ防除組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、自由生活性アメーバ防除作用を有する化合物を同定するため、土壌から分離したカビを、押麦を主体とする固体培地を用いて培養した後、カビと培地の混合物を1−ブタノールで抽出した合計800個の試料につき、非病原性アメーバ、ネグレリア・ロバニエンシス(N. lovaniensis)を用いて、ペーパーディスク法により検定したところ、一試料について、阻止円が形成され、抗アメーバ活性を有する化合物の存在が確認され、NMRを用いてかかる化合物の構造解析を行い、1−リノール酸グリセリドであると同定した。そこで、市販の1−リノール酸グリセリドの標準試薬を用いて、当該化合物の抗自由生活性アメーバ活性を確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)一般式(I)又は(II)で表される化合物からなる自由生活性アメーバ防除剤;
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)に関する。
【0014】
また本発明は、(2)1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ−リノレノイルグリシン、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロールから選ばれる前記(1)記載の自由生活性アメーバ防除剤や、(3)自由生活性アメーバが、ネグレリア属、アカントアメーバ属、及びハルトマンネラ属に属する群から選ばれる1又は2種以上のアメーバであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の自由生活性アメーバ防除剤や、(4)前記(1)〜(3)のいずれか記載の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含有することを特徴とする自由生活性アメーバ防除組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
自由生活性アメーバが存在している水系中に、本発明の自由生活性アメーバ防除剤を添加することにより、自由生活性アメーバを防除し、病原性自由生活性アメーバに起因する疾病の感染を予防できるほか、アメーバとレジオネラ属細菌が共存している水系において、自由生活性アメーバを宿主としているレジオネラ属細菌を除菌できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤としては、一般式(I)R1−CO−X(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)、又は、
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)で表される化合物を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、これら本発明の自由生活性アメーバ防除用化合物の1種又は2種以上を自由生活性アメーバと接触させることにより、自由生活性アメーバを殺滅することにより防除することができる。
【0019】
上記一般式(I)において、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示すR1としては、二重結合若しくは三重結合を含むものが好ましく、1〜2個の二重結合、特に1個の二重結合を含むものがより好ましい。かかるR1は、親水基と疎水基との間に適当な距離を維持するため、炭素数7〜19であることが必要であり、炭素数13〜17であるものが好ましく、炭素数15〜17であるものがより好ましい。なお、R1が、炭素数7〜19であっても、ステアリン酸などの飽和脂肪酸残基である場合は抗アメーバ活性が確認されない。
【0020】
上記一般式(I)におけるXが、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、又は、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基である場合に、これらは、分岐していても、環式部分を含んでも、二重結合、三重結合を含んでいてもよい。具体的には、Xとしては、例えばグリセリン残基、プロピレングリコール残基、キシリトール残基、ソルビトール残基を挙げることができ、グリセリン残基やキシリトール残基を好適に例示することができる。
【0021】
また、一般式(I)におけるXが、炭素数2〜8のアミノ酸残基又はオリゴペプチド残基である場合に、かかるアミノ酸残基としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、バリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等のα−アミノ酸残基や、β−アラニン、β−チロシン等のβ−アミノ酸残基や、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、γ−アミノ酪酸等のγ−アミノ酸残基や、δ−アミノ吉草酸等のδ−アミノ酸残基や、非天然型のアミノ酸残基などを挙げることができ、また、オリゴペプチド残基としては、グリシル−グリシン、グリシル−アラニン、アラニル−アラニン等のジペプチド残基や、グリシル−グリシル−グリシン、グリシル−グリシル−アラニン等のトリペプチド残基などを挙げることができる。これらの中でも、グリシン残基やセリン残基を好適に例示することができる。
【0022】
上記一般式(I)で表される化合物として、具体的には、1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ-リノレノイルグリシン等を挙げることができ、中でも、1−リノール酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、N−オレオイルグリシンを特に好適に例示することができる。
【0023】
上記の一般式(II)においてR2、R3、及び/又はR4が不飽和脂肪酸残基である場合に、かかる不飽和脂肪酸残基は、二重結合若しくは三重結合を含むものが好ましく、1〜2個の二重結合、特に1個の二重結合を含むものがより好ましい。かかる不飽和脂肪酸残基として具体的には、ミリストレイン酸残基、パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、アルファ−リノレン酸残基、ガンマ−リノレン酸残基、8,11−イコサジエン酸残基、5,8,11−イコサトリエン酸残基等を挙げることができ、中でもリノール酸残基、オレイン酸残基を特に好適に例示することができる。なお、炭素数8〜20であっても、ステアリン酸などの飽和脂肪酸残基である場合は抗アメーバ活性が確認されない。
【0024】
上記一般式(II)で表される化合物として、具体的には、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロール等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明の上記の一般式(I)又は(II)で表される化合物は、市販品を用いることができるほか、化学的に常法により合成することもできるが、実施例で示すように、カビ等の微生物を培養し、培養物から抽出・単離することによっても作製することができる。上記の一般式(I)又は(II)で表される化合物の単離、精製は、例えば、シリカゲル多孔性吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなどを用いることにより行うことができる。単離された化合物の構造は、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトル、可視光線吸収スペクトル、UV吸収スペクトル、反射スペクトル、X線結晶等の公知の分析手段により確認することができるがこれらに制限されない。
【0026】
アメーバは、単細胞生物で、基本的に鞭毛や繊毛を持たず、仮足で運動する原生生物に属する肉質虫類の俗称であり、水系環境中など自然界に広く生息する自由生活性アメーバと、ヒトの腸管など高等生物に寄生して生息する寄生性アメーバに大別されるが、本発明のアメーバ防除剤の対象となるのは、他の生物に依存(共生や寄生)することなく、独立して生活することができる性質を備えた自由生活性の病原性又は非病原性のアメーバである。かかる自由生活性アメーバとしては、例えば、ネグレリア属、アカントアメーバ属、ヴァンネラ属、ハルトマンネラ属、ヴァルカンフィア属、バラムチア属のアメーバを挙げることができ、好ましくは、ネグレリア属、ハルトマンネラ属、アカントアメーバ属のアメーバを挙げることができる。なお、自由生活性アメーバの生活様式は、細菌等を捕食し活発に増殖する栄養体のステージと、栄養体が、乾燥や、栄養状態の悪化などの要因で被嚢し、休眠状態となるシストのステージがあるが、本発明のアメーバ防除剤は、栄養体のステージのアメーバに適用することが好ましい。
【0027】
本発明の自由生活性アメーバ防除組成物としては、上記本発明の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含むものであれば特に制限されず、本発明の自由生活性アメーバ防除剤や自由生活性アメーバ防除組成物は、自由生活性アメーバ自体の殺滅作用や、レジオネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、好酸菌などの宿主としての自由生活性アメーバを殺滅することにより、間接的にレジオネラ属菌を死滅させる殺菌作用を有することから、病原性自由生活性アメーバに直接起因する疾病、例えば、ネグレリア・フォーレリに起因する原発性アメーバ性髄膜脳炎、アカントアメーバ属のアメーバに起因する肉芽種性アメーバ性脳炎やアメーバ性角膜炎の感染予防又は治療に有用であり、また、間接的にレジオネラ属菌、大腸菌O157、好酸菌などに起因する疾病、例えば、レジオネラ・ニューモフィラに起因する在郷軍人病、腸管出血性大腸菌O157に起因する出血性大腸炎の感染予防に有用である。
【0028】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤に溶解剤、分散剤、安定化剤等を配合して、プール、浴槽、冷却循環水などに使用される本発明の水系用アメーバ防除組成物とすることができる。対象水系に対して、例えば、本発明の防除剤(化合物)濃度が1〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/L、より好ましくは50〜200mg/Lの範囲になるように添加し、添加方法については特に制限はなく、対象水系に対して数日から1ヶ月程度間隔で添加してもよく、あるいは水系中の濃度を一定以上に維持するように、連続的に添加してもよい。本発明の自由生活性アメーバ防除化合物を含有する水を系内に循環させることにより、水系中のアメーバを殺滅するとともに、間接的に系内のレジオネラ属菌や大腸菌を併せて殺菌することができる。
【0029】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤に増粘剤、乳化剤、中和剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、香料、油脂類等を適宜配合して、外用うがい・洗口剤などに使用される本発明の口腔用アメーバ防除組成物や、洗浄・消毒用アメーバ防除組成物とすることができる。口腔用アメーバ防除組成物における本発明の防除剤(化合物)濃度を、10〜500mg/L、好ましくは50〜200mg/Lの範囲とすることにより、口腔内の病原性自由生活性アメーバを殺滅することができる。また、トイレ洗浄・消毒剤、浴槽洗浄・消毒剤、皿洗い機用洗浄・消毒剤、洗濯用洗浄・消毒剤、コンタクトレンズ洗浄・消毒剤などの洗浄・消毒用アメーバ防除組成物における本発明の防除剤(化合物)濃度を、1〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/L、より好ましくは50〜200mg/Lの範囲とすることにより、対象環境のアメーバを殺滅するとともに、間接的にレジオネラ属菌や大腸菌を併せて殺菌することができる。
【0030】
発明の自由生活性アメーバ防除剤に賦形剤、増粘剤、乳化剤、中和剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、香料、油脂類等を適宜配合して、病原性自由生活性アメーバに直接起因する疾病の感染予防又は治療用アメーバ防除組成物とすることができる。かかる感染予防又は治療用組成物の投与形態としては、経口投与、点眼投与、経皮投与を挙げることができる。さらに、飲食品に添加することにより感染予防用の機能性飲食品とすることができる。また、投与量や投与回数は、患者の症状、体重等に応じて適宜決定することができるが、通常成人1日当たり、本発明の防除剤(化合物)を100mg〜1gを投与することが好ましい。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
[抗アメーバ活性を有する化合物のスクリーニング]
(カビの分離)
カビの分離は、文献(G.W.Claus. 1973. Understanding Microbes. W.H.Freeman and Company,NewYork)記載の方法により分離した。すなわち、日本各地をはじめ町田市郊外の山林、玉川大学構内等から採取した土壌1gを、10mLの無菌水に懸濁させた後、ポテトデキストロース寒天培地によりおよそ800種類のカビを分離した。
【0033】
土壌から分離したおよそ800種類のカビを、押麦を主体とする固体培地を用いて28℃にて2週間培養し、培養物を得た。固体培地は、ビタミン類が無添加の押麦20gを121℃で20分滅菌した後、別途同条件で滅菌したYTP液20mLを加えて、よく混合して調製した。なお、YTP液は、酵母エキス(Difco社製)9gと酒石酸ナトリウム(ワコーケミカル社製)4.5gとリン酸一カリウム(ワコーケミカル社製)4.5gとを水1Lに溶解して調製した。
【0034】
培養後に上記培養物20gに対して、1−ブタノールを50mL加え、1−ブタノール層を回収し、エヴァポレーター(EYELA社製)で1−ブタノールを蒸発させて1−ブタノール抽出物を得た。1−ブタノール抽出物をメタノールに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(製品名:シリカゲル60、関東化学株式会社製)にかけて、エチルアセテートで溶出、分画し、800個の試料を得た。
【0035】
(大腸菌塗布寒天培地の調製方法)
細菌検査用寒天(Difco社製)を濃度が1.5%(w/v)となるように滅菌イオン交換水に溶かし、121℃、15分間の滅菌後、滅菌シャーレ(直径9cm)に15〜20mL分注して寒天平板を作製した。次いで、別途、標準寒天平板培地(Nutrient agar、Difco社製)で培養した大腸菌(K12DH1)を適当な量採取し、滅菌イオン交換水に懸濁して濃厚な大腸菌懸濁液を作製し、これを60℃にて、1時間加熱処理した後、滅菌イオン交換水で660nmの吸光度が0.5となるよう希釈した。かかる希釈液0.3mLを上記寒天平板の全面に塗布して、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
【0036】
(ペーパーディスク法による検定)
供試アメーバとしてネグレリア・ロバニエンシス(非病原性)を用いた。ネグレリア・ロバニエンシスの栄養体(濃度:2×108個/mL)0.5mLを大腸菌塗布寒天培地上に塗布した。上記800個の試料のそれぞれについて、(1)希釈なし、(2)1/10の濃度にメタノールで希釈、(3)1/50の濃度にメタノールで希釈、の3種類の濃度で、ペーパーディスクに含浸させ、該3種類のペーパーディスクをネグレリア・ロバニエンシスを撒いた大腸菌塗布寒天培地に載置した後、37℃にて24時間培養した。本実験で用いたネグレリア・ロバニエンシスは、Aq/9/1/45Dという分離株で、国立感染症研究所寄生動物部より分与されたものである。
【0037】
800個の試料のうち、799個の試料においては、培養後、ネグレリア・ロバニエンシスが大腸菌をえさに増殖して白濁していたが、1個の試料においては、ペーパーディスクの周囲に、図1のような阻止円が出現し、抗アメーバ活性が認められた。抗アメーバ活性を認めた試料は、カビF1557株(未同定)の培養抽出物由来のものであった。図1における(1)〜(3)は、(1)希釈なし、(2)1/10の濃度に希釈、(3)1/50の濃度に希釈した場合における阻止円の程度を示したものである。
【0038】
(活性物質の単離精製)
抗アメーバ活性を認めたF1557株由来の試料を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、エチルアセテート:クロロホルム混合液(3:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.25、0.57、0.77〜0.87付近にスポットを認めた(図3(1)参照)。
【0039】
抗アメーバ活性を認めた上記試料について、別途シリカゲルカラムにかけて、エチルアセテート:クロロホルム(3:2)で分画、溶出した。各画分につき、上記と同様のペーパーディスク法を行い、抗アメーバ活性を有することを確認した画分を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、ジクロロメタン:メタノール混合液(9:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.5付近に幅広いスポットを認めた(図3(2)参照)。
【0040】
抗アメーバ活性を認めた上記試料について、さらにSephadexLH20(Amercham、Biosciences社製)を充填したカラムに添加され、メタノール:クロロホルム(9:1)溶液で溶出し、各画分につき、ペーパーディスク法を行い、抗アメーバ活性を有することを確認した画分を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、エチルアセテート:クロロホルム混合液(3:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.25付近にスポットを認めた(図3(3)参照)が、これは(図3(1))のRf値0.25におけるスポットとRf値が一致するものであった。(図3(1))で、抗アメーバ活性を認めた試料は、F1557株(未同定)由来であった。
【0041】
(活性物質の構造解析)
F1557株由来の抗アメーバ活性物質(図3(3)参照)の構造解析は、NMRスペクトル(製品名:GX−270及びLA400T、日本電子株式会社製)により行った。抗アメーバ活性化合物の1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルとを図4に示す。NMRスペクトル構造解析により抗アメーバ活性物質は、1−リノール酸グリセリド(図5参照)であることを同定した。
【0042】
(抗アメーバ活性化合物の市販標準品との比較)
単離精製した抗アメーバ活性化合物と、構造解析に基づいて同定した物質の市販標品(1−リノール酸グリセリド、Sigma社製)とのアメーバ活性を、ペーパーディスク法で比較した。図6の結果からわかるように、単離精製した活性物質と、構造解析に基づいて同定した物質の市販標品との間に有意な差はなかった。したがって、以後の実験を、市販標品を用いて行うこととした。
【0043】
(1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認)
1−リノール酸グリセリドは、ペーパーディスク法によりネグレリア・ロバニエンシスに対して、抗アメーバ活性を示すことが判明したが、かかる抗アメーバ活性が、(1)殺アメーバ活性、(2)忌避活性のいずれかであるかを確認するため、1−リノール酸グリセリドをスライドガラス上でネグレリア・ロバニエンシスに作用させた。ネグレリア・ロバニエンシスの栄養体(生細胞)は、1−リノール酸グリセリドの添加により、細胞が球形に変形した変形栄養体(生細胞)や、中身の粒子が流出して、小顆粒の集合体に変化した破壊栄養体(死細胞)が観察された(図7参照)。また、図8に示すように顕微鏡観察を行い、アメーバの細胞膜が破壊されている様子を観察した。1−リノール酸グリセリドの添加により、図8−(A)に示す球形に変形した栄養体(生細胞)は、図8−(B)に示す矢印の部分で細胞膜の破壊がはじまり、図8−(C)に示す矢印の部分から内容物が漏出し、図8−(D)では漏出した内容物が拡がっている。以上のことから、1−リノール酸グリセリドがネグレリア・ロバニエンシスに対して、細胞膜破壊作用を有するものと結論した。
【0044】
さらに、1-リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を、一般に生死細胞を判定に用いることができる非殺菌的色素トリパンブルーと組み合わせて、細胞の生死と形態の変化を同時に観察した。1−リノール酸グリセリドの終濃度を100μg/mLとした。1−リノール酸グリセリドの添加により変化した各細胞の形態を図9に示す。また、各細胞の形態につき、経時的に示したグラフを図10に示す。栄養体(生細胞)(trophozoites(alive))と変形栄養体(生細胞)(spherically changed cells(alive))が経時的に減少し、破壊された細胞の割合が増加した。破壊栄養体(死細胞)(destructed cells(burst marks)と、栄養体(死細胞)(trophozoites(dead))と、変形栄養体(死細胞)(spherically changed cells(dead))との合計は、2時間後に約90%に達した。以上の試験結果により、1−リノール酸グリセリドが、抗アメーバ活性として、殺アメーバ活性を有するものと結論した。
【実施例2】
【0045】
[1−リノール酸グリセリドの他のアメーバに対する作用の確認]
1−リノール酸グリセリド(100μg/mL)の作用をネグレリア・ロバニエンシス(図11(a)参照)とハルトマンネラ属HT−1(図11(b)参照)の間で比較した。ネグレリア・ロバニエンシスでの細胞破壊作用よりも弱いながらも、1−リノール酸グリセリドのハルトマンネラ属HT−1に対する、殺アメーバ活性が認められた。
【実施例3】
【0046】
[1−オレイン酸グリセリドの作用の確認]
不飽和脂肪酸エステルである1−オレイン酸グリセリド(図12(a)参照)についても、ネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行った。結果を図13に示す。ネグレリア・ロバニエンシスに対するアメーバ細胞破壊作用及び殺アメーバ活性は、1−リノール酸グリセリドとほぼ同程度の結果だった。
【実施例4】
【0047】
[1−オレイン酸グリセリドの他のアメーバに対する作用の確認]
1−オレイン酸グリセリド(100μg/mL)の作用をネグレリア・ロバニエンシス(図14(a)参照)とハルトマンネラ属HT−1(図14(b)参照)の間で比較した。1−オレイン酸グリセリドによるネグレリア・ロバニエンシスの細胞破壊作用よりも弱いながらも、ハルトマンネラ属HT−1では110分経過するまでに約40%の細胞が破壊され、殺アメーバ活性が認められた。
【0048】
[比較例1]
比較例として、飽和脂肪酸エステルである、1−ステアリン酸グリセリド(図12(b)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、細胞破壊作用は全く認められなかった。
【0049】
[比較例2]
比較例として、遊離脂肪酸であって、シス型二重結合を2つ有するリノール酸(図15(a)参照)、シス型二重結合を1つ有するオレイン酸(図15(b)参照)、及び飽和脂肪酸であるステアリン酸(図15(c)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、いずれもほとんど細胞破壊作用は認められなかった。図16は、ネグレリア・ロバニエンシスに対するリノール酸の抗アメーバ活性を示すグラフである。オレイン酸及びステアリン酸についても同様にほとんど細胞破壊作用は認められなかった。
【0050】
[比較例3]
比較例として、高級アルコールである、リノレイルアルコール(図17(a)参照)、オレイルアルコール(図17(b)参照)、オクタデカノール(図17(c)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、いずれもほとんど活性を示さなかった。図18は、ネグレリア・ロバニエンシスに対するリノレイルアルコールの抗アメーバ活性を示すグラフである。オレイルアルコール及びオクタデカノールについても、同様にほとんど活性を示さなかった。
【実施例5】
【0051】
不飽和脂肪酸アミドである、N−オレオイルグリシン(図19参照)では、破壊作用はあまり強くはないが、変形球形死細胞の割合が高く、死滅作用が1−リノール酸グリセリドより早い時間で現れた(図20参照)。
【0052】
(結論)
脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドにおいて、抗アメーバ作用を呈する場合があるが、この場合、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドの脂肪酸は不飽和脂肪酸である必要がある。顕微鏡観察の結果より、細胞膜を破壊していることは明らかであるが、より以上の詳細は不明である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】抗アメーバ活性を検出した試料におけるペーパーディスクの阻止円の様子を示す図である。希釈なし(1)、1/10の濃度に希釈(2)、1/50の濃度に希釈(3)、した場合の阻止円である。
【図2】抗アメーバ活性を有する物質の単離精製のフローチャートを示した図である。
【図3】抗アメーバ活性を有する物質の単離精製過程における薄層クロマトグラフィーの図である。抗アメーバ活性を認めたF1557株由来の試料を、展開した図(1)、2回目の展開図(2)、SephadexLH20カラムにより分画した試料の展開図(3)である。
【図4】F1557株由来の抗アメーバ活性物質の、1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】1−リノール酸グリセリドの化学構造を示す図である。
【図6】F1557株の培養抽出物から単離精製した1−リノール酸グリセリドと、1−リノール酸グリセリドの市販標品の抗アメーバ活性を、ペーパーディスク法で比較した結果を示す図である。
【図7】1−リノール酸グリセリドをネグレリア・ロバニエンシスに、スライドガラス上で作用させた様子を示す図である。
【図8】顕微鏡観察により、アメーバの細胞膜が破壊されていく様子を示す図である。
【図9】トリパンブルーを用いた、1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。栄養体(生細胞)(A)、変形栄養体(生細胞)(B)、栄養体(死細胞)(C)、変形栄養体(死細胞)(D)、破壊栄養体(死細胞)(E)を示す。
【図10】1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を各細胞の形態として、経時的に示したグラフを示す。
【図11】ネグレリア・ロバニエンシス(a)とハルトマンネラ属HT−1(b)に対する1−リノール酸グリセリドの作用を示す図である。
【図12】1−オレイン酸グリセリド(a)、1−ステアリン酸グリセリド(b)の構造式を示す図である。
【図13】1−オレイン酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図14】ネグレリア・ロバニエンシス(a)とハルトマンネラ属HT−1(b)に対する1−オレイン酸グリセリド作用を示す図である。
【図15】リノール酸(a)、オレイン酸(b)、ステアリン酸(c)の構造式を示す図である。
【図16】リノール酸のネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図17】リノレイルアルコール(a)、オレイルアルコール(b)、オクタデカノール(c)の構造式を示す図である。
【図18】リノレイルアルコールのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図19】N−オレオイルグリシンの構造式を示す図である。
【図20】N−オレオイルグリシンのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アメーバ作用を有する自由生活性アメーバ防除剤や、該アメーバ防除剤を有効成分として含有する口腔用・水系用等の自由生活性アメーバ防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アメーバは原生動物の一種であり、高等動物に寄生して生息する寄生性アメーバと自然界に広く生息する自由生活性アメーバとに大別され、自由生活性アメーバは、赤痢アメーバに代表される寄生性アメーバとは異なり、ヒトに対する健康上の影響はないと考えられてきた。しかし、1976年に米国での重症肺炎の集団発生が、空調用冷却塔から飛散した水に含まれていたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)による感染症であることが明らかとなったこと、イソチアゾロン系化合物やニトロアルコール系化合物等のレジオネラ属菌用の殺菌剤(特許文献1及び2参照)を水系に添加しても、レジオネラ属菌の除菌に有効でなかったことから、レジオネラ属菌の宿主としての自由生活性アメーバの役割が注目されるようになった。すなわち、ネグレリア(Naegleria)属、アカントアメーバ(Acanthamoeba)属、ハルトマンネラ(Hartmannella)属などのアメーバが、レジオネラ属菌を食胞内に取り込んだ場合、消化を免れたレジオネラ属菌は、食胞内で増殖し、ついには食胞の破裂によりレジオネラ属菌は外界に放散し、新たな宿主へと感染する(非特許文献1参照)。このように、アメーバは、レジオネラ属菌の宿主として重要な役割を果たしており、アメーバと共存しているレジオネラ属菌を効果的に除菌するには、アメーバを殺滅することが考えられる。そこで、水系のアメーバを効果的に防除するために、ヒノキチオール化合物及びグルタルアルデヒド(特許文献1及び2参照)や、ジメチルアミド(特許文献3参照)や、ホスホニウム化合物(特許文献4参照)や、ビス型四級アンモニウム塩(特許文献5参照)を対象水系に添加することを特徴とするアメーバの抑制方法が提案されている。
【0003】
また、近年、ヒト又は動物に感染し、重篤な健康影響を及ぼす自由生活性アメーバについて注目が集まっている。アメーバ性脳炎は、ネグレリア・フォーレリ(N.fowleri)の感染による原発性アメーバ性髄膜脳炎、並びにアカントアメーバ属アメーバ及びバラムチア・マンドリルリス(Balamuthia mandrillaris)による感染による肉芽腫性脳炎に分けることができるが、両病型共に致死的である。また、アメーバ性角膜炎は、コンタクトレンズ装着により生じる角膜上の小さな傷等から、アカントアメーバ属のアメーバが感染することで発症すると考えられ、激しい痛みを伴う角膜潰瘍、混濁、視力障害、さらには失明のおそれもある難治性の疾病であるが(非特許文献1参照)、これらの疾病について簡便で効果的な予防法、治療方法は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−57737号公報
【特許文献2】特開平11−319847号公報
【特許文献3】特開2002−114609号公報
【特許文献4】特開2002−308713号公報
【特許文献5】特開2003−290778号公報
【非特許文献1】八木田健司、泉山信司、生活用水の病原アメーバ汚染とその健康影響−水系環境のアメーバ汚染、モダンメディア52巻8号12-19、2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アメーバの生存及び増殖を抑制するための水系添加剤として提案されている、ヒノキチオール(特許文献1及び2参照)は、コストが高いという問題があり、アルデヒドをベースとする消毒剤(特許文献1及び2参照)は、多くの場合、特に皮膚や呼吸器官の感作反応を惹起するうえに、特有な刺激性の不快臭を有することが多い。また、第四級アンモニウム塩(特許文献5参照)は、濃度の高い水溶液として使用する場合に泡立ちが著しい場合があり、取扱いに不都合を生じる場合があった。
【0006】
また、原発性アメーバ性髄膜脳炎は、世界で180例以上の報告があるが、生存例は5例に過ぎず、生存例に投与された国内承認薬はすべて保険適応外である。アカントアメーバ角膜炎についても、使用されている国内承認薬は保険適応外である(寄生虫症薬物治療の手引き、改訂第6.0版、厚生労働科学研究費補助金・ヒューマンサイエンス振興財団政策創薬総合研究事業―「熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究」班)。
【0007】
したがって、本発明の課題は、安価で、安全性が高く、使用が簡便な自由生活性アメーバ防除剤、病原性自由生活性アメーバに起因する疾病の感染予防又は治療用のアメーバ防除組成物、口腔用・水系用の自由生活性アメーバ防除組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、自由生活性アメーバ防除作用を有する化合物を同定するため、土壌から分離したカビを、押麦を主体とする固体培地を用いて培養した後、カビと培地の混合物を1−ブタノールで抽出した合計800個の試料につき、非病原性アメーバ、ネグレリア・ロバニエンシス(N. lovaniensis)を用いて、ペーパーディスク法により検定したところ、一試料について、阻止円が形成され、抗アメーバ活性を有する化合物の存在が確認され、NMRを用いてかかる化合物の構造解析を行い、1−リノール酸グリセリドであると同定した。そこで、市販の1−リノール酸グリセリドの標準試薬を用いて、当該化合物の抗自由生活性アメーバ活性を確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)一般式(I)又は(II)で表される化合物からなる自由生活性アメーバ防除剤;
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)に関する。
【0014】
また本発明は、(2)1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ−リノレノイルグリシン、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロールから選ばれる前記(1)記載の自由生活性アメーバ防除剤や、(3)自由生活性アメーバが、ネグレリア属、アカントアメーバ属、及びハルトマンネラ属に属する群から選ばれる1又は2種以上のアメーバであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の自由生活性アメーバ防除剤や、(4)前記(1)〜(3)のいずれか記載の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含有することを特徴とする自由生活性アメーバ防除組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
自由生活性アメーバが存在している水系中に、本発明の自由生活性アメーバ防除剤を添加することにより、自由生活性アメーバを防除し、病原性自由生活性アメーバに起因する疾病の感染を予防できるほか、アメーバとレジオネラ属細菌が共存している水系において、自由生活性アメーバを宿主としているレジオネラ属細菌を除菌できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤としては、一般式(I)R1−CO−X(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)、又は、
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)で表される化合物を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、これら本発明の自由生活性アメーバ防除用化合物の1種又は2種以上を自由生活性アメーバと接触させることにより、自由生活性アメーバを殺滅することにより防除することができる。
【0019】
上記一般式(I)において、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示すR1としては、二重結合若しくは三重結合を含むものが好ましく、1〜2個の二重結合、特に1個の二重結合を含むものがより好ましい。かかるR1は、親水基と疎水基との間に適当な距離を維持するため、炭素数7〜19であることが必要であり、炭素数13〜17であるものが好ましく、炭素数15〜17であるものがより好ましい。なお、R1が、炭素数7〜19であっても、ステアリン酸などの飽和脂肪酸残基である場合は抗アメーバ活性が確認されない。
【0020】
上記一般式(I)におけるXが、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、又は、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基である場合に、これらは、分岐していても、環式部分を含んでも、二重結合、三重結合を含んでいてもよい。具体的には、Xとしては、例えばグリセリン残基、プロピレングリコール残基、キシリトール残基、ソルビトール残基を挙げることができ、グリセリン残基やキシリトール残基を好適に例示することができる。
【0021】
また、一般式(I)におけるXが、炭素数2〜8のアミノ酸残基又はオリゴペプチド残基である場合に、かかるアミノ酸残基としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、バリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等のα−アミノ酸残基や、β−アラニン、β−チロシン等のβ−アミノ酸残基や、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、γ−アミノ酪酸等のγ−アミノ酸残基や、δ−アミノ吉草酸等のδ−アミノ酸残基や、非天然型のアミノ酸残基などを挙げることができ、また、オリゴペプチド残基としては、グリシル−グリシン、グリシル−アラニン、アラニル−アラニン等のジペプチド残基や、グリシル−グリシル−グリシン、グリシル−グリシル−アラニン等のトリペプチド残基などを挙げることができる。これらの中でも、グリシン残基やセリン残基を好適に例示することができる。
【0022】
上記一般式(I)で表される化合物として、具体的には、1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ-リノレノイルグリシン等を挙げることができ、中でも、1−リノール酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、N−オレオイルグリシンを特に好適に例示することができる。
【0023】
上記の一般式(II)においてR2、R3、及び/又はR4が不飽和脂肪酸残基である場合に、かかる不飽和脂肪酸残基は、二重結合若しくは三重結合を含むものが好ましく、1〜2個の二重結合、特に1個の二重結合を含むものがより好ましい。かかる不飽和脂肪酸残基として具体的には、ミリストレイン酸残基、パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、アルファ−リノレン酸残基、ガンマ−リノレン酸残基、8,11−イコサジエン酸残基、5,8,11−イコサトリエン酸残基等を挙げることができ、中でもリノール酸残基、オレイン酸残基を特に好適に例示することができる。なお、炭素数8〜20であっても、ステアリン酸などの飽和脂肪酸残基である場合は抗アメーバ活性が確認されない。
【0024】
上記一般式(II)で表される化合物として、具体的には、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロール等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明の上記の一般式(I)又は(II)で表される化合物は、市販品を用いることができるほか、化学的に常法により合成することもできるが、実施例で示すように、カビ等の微生物を培養し、培養物から抽出・単離することによっても作製することができる。上記の一般式(I)又は(II)で表される化合物の単離、精製は、例えば、シリカゲル多孔性吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなどを用いることにより行うことができる。単離された化合物の構造は、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトル、可視光線吸収スペクトル、UV吸収スペクトル、反射スペクトル、X線結晶等の公知の分析手段により確認することができるがこれらに制限されない。
【0026】
アメーバは、単細胞生物で、基本的に鞭毛や繊毛を持たず、仮足で運動する原生生物に属する肉質虫類の俗称であり、水系環境中など自然界に広く生息する自由生活性アメーバと、ヒトの腸管など高等生物に寄生して生息する寄生性アメーバに大別されるが、本発明のアメーバ防除剤の対象となるのは、他の生物に依存(共生や寄生)することなく、独立して生活することができる性質を備えた自由生活性の病原性又は非病原性のアメーバである。かかる自由生活性アメーバとしては、例えば、ネグレリア属、アカントアメーバ属、ヴァンネラ属、ハルトマンネラ属、ヴァルカンフィア属、バラムチア属のアメーバを挙げることができ、好ましくは、ネグレリア属、ハルトマンネラ属、アカントアメーバ属のアメーバを挙げることができる。なお、自由生活性アメーバの生活様式は、細菌等を捕食し活発に増殖する栄養体のステージと、栄養体が、乾燥や、栄養状態の悪化などの要因で被嚢し、休眠状態となるシストのステージがあるが、本発明のアメーバ防除剤は、栄養体のステージのアメーバに適用することが好ましい。
【0027】
本発明の自由生活性アメーバ防除組成物としては、上記本発明の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含むものであれば特に制限されず、本発明の自由生活性アメーバ防除剤や自由生活性アメーバ防除組成物は、自由生活性アメーバ自体の殺滅作用や、レジオネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、好酸菌などの宿主としての自由生活性アメーバを殺滅することにより、間接的にレジオネラ属菌を死滅させる殺菌作用を有することから、病原性自由生活性アメーバに直接起因する疾病、例えば、ネグレリア・フォーレリに起因する原発性アメーバ性髄膜脳炎、アカントアメーバ属のアメーバに起因する肉芽種性アメーバ性脳炎やアメーバ性角膜炎の感染予防又は治療に有用であり、また、間接的にレジオネラ属菌、大腸菌O157、好酸菌などに起因する疾病、例えば、レジオネラ・ニューモフィラに起因する在郷軍人病、腸管出血性大腸菌O157に起因する出血性大腸炎の感染予防に有用である。
【0028】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤に溶解剤、分散剤、安定化剤等を配合して、プール、浴槽、冷却循環水などに使用される本発明の水系用アメーバ防除組成物とすることができる。対象水系に対して、例えば、本発明の防除剤(化合物)濃度が1〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/L、より好ましくは50〜200mg/Lの範囲になるように添加し、添加方法については特に制限はなく、対象水系に対して数日から1ヶ月程度間隔で添加してもよく、あるいは水系中の濃度を一定以上に維持するように、連続的に添加してもよい。本発明の自由生活性アメーバ防除化合物を含有する水を系内に循環させることにより、水系中のアメーバを殺滅するとともに、間接的に系内のレジオネラ属菌や大腸菌を併せて殺菌することができる。
【0029】
本発明の自由生活性アメーバ防除剤に増粘剤、乳化剤、中和剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、香料、油脂類等を適宜配合して、外用うがい・洗口剤などに使用される本発明の口腔用アメーバ防除組成物や、洗浄・消毒用アメーバ防除組成物とすることができる。口腔用アメーバ防除組成物における本発明の防除剤(化合物)濃度を、10〜500mg/L、好ましくは50〜200mg/Lの範囲とすることにより、口腔内の病原性自由生活性アメーバを殺滅することができる。また、トイレ洗浄・消毒剤、浴槽洗浄・消毒剤、皿洗い機用洗浄・消毒剤、洗濯用洗浄・消毒剤、コンタクトレンズ洗浄・消毒剤などの洗浄・消毒用アメーバ防除組成物における本発明の防除剤(化合物)濃度を、1〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/L、より好ましくは50〜200mg/Lの範囲とすることにより、対象環境のアメーバを殺滅するとともに、間接的にレジオネラ属菌や大腸菌を併せて殺菌することができる。
【0030】
発明の自由生活性アメーバ防除剤に賦形剤、増粘剤、乳化剤、中和剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、香料、油脂類等を適宜配合して、病原性自由生活性アメーバに直接起因する疾病の感染予防又は治療用アメーバ防除組成物とすることができる。かかる感染予防又は治療用組成物の投与形態としては、経口投与、点眼投与、経皮投与を挙げることができる。さらに、飲食品に添加することにより感染予防用の機能性飲食品とすることができる。また、投与量や投与回数は、患者の症状、体重等に応じて適宜決定することができるが、通常成人1日当たり、本発明の防除剤(化合物)を100mg〜1gを投与することが好ましい。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
[抗アメーバ活性を有する化合物のスクリーニング]
(カビの分離)
カビの分離は、文献(G.W.Claus. 1973. Understanding Microbes. W.H.Freeman and Company,NewYork)記載の方法により分離した。すなわち、日本各地をはじめ町田市郊外の山林、玉川大学構内等から採取した土壌1gを、10mLの無菌水に懸濁させた後、ポテトデキストロース寒天培地によりおよそ800種類のカビを分離した。
【0033】
土壌から分離したおよそ800種類のカビを、押麦を主体とする固体培地を用いて28℃にて2週間培養し、培養物を得た。固体培地は、ビタミン類が無添加の押麦20gを121℃で20分滅菌した後、別途同条件で滅菌したYTP液20mLを加えて、よく混合して調製した。なお、YTP液は、酵母エキス(Difco社製)9gと酒石酸ナトリウム(ワコーケミカル社製)4.5gとリン酸一カリウム(ワコーケミカル社製)4.5gとを水1Lに溶解して調製した。
【0034】
培養後に上記培養物20gに対して、1−ブタノールを50mL加え、1−ブタノール層を回収し、エヴァポレーター(EYELA社製)で1−ブタノールを蒸発させて1−ブタノール抽出物を得た。1−ブタノール抽出物をメタノールに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(製品名:シリカゲル60、関東化学株式会社製)にかけて、エチルアセテートで溶出、分画し、800個の試料を得た。
【0035】
(大腸菌塗布寒天培地の調製方法)
細菌検査用寒天(Difco社製)を濃度が1.5%(w/v)となるように滅菌イオン交換水に溶かし、121℃、15分間の滅菌後、滅菌シャーレ(直径9cm)に15〜20mL分注して寒天平板を作製した。次いで、別途、標準寒天平板培地(Nutrient agar、Difco社製)で培養した大腸菌(K12DH1)を適当な量採取し、滅菌イオン交換水に懸濁して濃厚な大腸菌懸濁液を作製し、これを60℃にて、1時間加熱処理した後、滅菌イオン交換水で660nmの吸光度が0.5となるよう希釈した。かかる希釈液0.3mLを上記寒天平板の全面に塗布して、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
【0036】
(ペーパーディスク法による検定)
供試アメーバとしてネグレリア・ロバニエンシス(非病原性)を用いた。ネグレリア・ロバニエンシスの栄養体(濃度:2×108個/mL)0.5mLを大腸菌塗布寒天培地上に塗布した。上記800個の試料のそれぞれについて、(1)希釈なし、(2)1/10の濃度にメタノールで希釈、(3)1/50の濃度にメタノールで希釈、の3種類の濃度で、ペーパーディスクに含浸させ、該3種類のペーパーディスクをネグレリア・ロバニエンシスを撒いた大腸菌塗布寒天培地に載置した後、37℃にて24時間培養した。本実験で用いたネグレリア・ロバニエンシスは、Aq/9/1/45Dという分離株で、国立感染症研究所寄生動物部より分与されたものである。
【0037】
800個の試料のうち、799個の試料においては、培養後、ネグレリア・ロバニエンシスが大腸菌をえさに増殖して白濁していたが、1個の試料においては、ペーパーディスクの周囲に、図1のような阻止円が出現し、抗アメーバ活性が認められた。抗アメーバ活性を認めた試料は、カビF1557株(未同定)の培養抽出物由来のものであった。図1における(1)〜(3)は、(1)希釈なし、(2)1/10の濃度に希釈、(3)1/50の濃度に希釈した場合における阻止円の程度を示したものである。
【0038】
(活性物質の単離精製)
抗アメーバ活性を認めたF1557株由来の試料を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、エチルアセテート:クロロホルム混合液(3:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.25、0.57、0.77〜0.87付近にスポットを認めた(図3(1)参照)。
【0039】
抗アメーバ活性を認めた上記試料について、別途シリカゲルカラムにかけて、エチルアセテート:クロロホルム(3:2)で分画、溶出した。各画分につき、上記と同様のペーパーディスク法を行い、抗アメーバ活性を有することを確認した画分を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、ジクロロメタン:メタノール混合液(9:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.5付近に幅広いスポットを認めた(図3(2)参照)。
【0040】
抗アメーバ活性を認めた上記試料について、さらにSephadexLH20(Amercham、Biosciences社製)を充填したカラムに添加され、メタノール:クロロホルム(9:1)溶液で溶出し、各画分につき、ペーパーディスク法を行い、抗アメーバ活性を有することを確認した画分を、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットし、エチルアセテート:クロロホルム混合液(3:1)を展開溶媒として展開した。Rf値0.25付近にスポットを認めた(図3(3)参照)が、これは(図3(1))のRf値0.25におけるスポットとRf値が一致するものであった。(図3(1))で、抗アメーバ活性を認めた試料は、F1557株(未同定)由来であった。
【0041】
(活性物質の構造解析)
F1557株由来の抗アメーバ活性物質(図3(3)参照)の構造解析は、NMRスペクトル(製品名:GX−270及びLA400T、日本電子株式会社製)により行った。抗アメーバ活性化合物の1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルとを図4に示す。NMRスペクトル構造解析により抗アメーバ活性物質は、1−リノール酸グリセリド(図5参照)であることを同定した。
【0042】
(抗アメーバ活性化合物の市販標準品との比較)
単離精製した抗アメーバ活性化合物と、構造解析に基づいて同定した物質の市販標品(1−リノール酸グリセリド、Sigma社製)とのアメーバ活性を、ペーパーディスク法で比較した。図6の結果からわかるように、単離精製した活性物質と、構造解析に基づいて同定した物質の市販標品との間に有意な差はなかった。したがって、以後の実験を、市販標品を用いて行うこととした。
【0043】
(1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認)
1−リノール酸グリセリドは、ペーパーディスク法によりネグレリア・ロバニエンシスに対して、抗アメーバ活性を示すことが判明したが、かかる抗アメーバ活性が、(1)殺アメーバ活性、(2)忌避活性のいずれかであるかを確認するため、1−リノール酸グリセリドをスライドガラス上でネグレリア・ロバニエンシスに作用させた。ネグレリア・ロバニエンシスの栄養体(生細胞)は、1−リノール酸グリセリドの添加により、細胞が球形に変形した変形栄養体(生細胞)や、中身の粒子が流出して、小顆粒の集合体に変化した破壊栄養体(死細胞)が観察された(図7参照)。また、図8に示すように顕微鏡観察を行い、アメーバの細胞膜が破壊されている様子を観察した。1−リノール酸グリセリドの添加により、図8−(A)に示す球形に変形した栄養体(生細胞)は、図8−(B)に示す矢印の部分で細胞膜の破壊がはじまり、図8−(C)に示す矢印の部分から内容物が漏出し、図8−(D)では漏出した内容物が拡がっている。以上のことから、1−リノール酸グリセリドがネグレリア・ロバニエンシスに対して、細胞膜破壊作用を有するものと結論した。
【0044】
さらに、1-リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を、一般に生死細胞を判定に用いることができる非殺菌的色素トリパンブルーと組み合わせて、細胞の生死と形態の変化を同時に観察した。1−リノール酸グリセリドの終濃度を100μg/mLとした。1−リノール酸グリセリドの添加により変化した各細胞の形態を図9に示す。また、各細胞の形態につき、経時的に示したグラフを図10に示す。栄養体(生細胞)(trophozoites(alive))と変形栄養体(生細胞)(spherically changed cells(alive))が経時的に減少し、破壊された細胞の割合が増加した。破壊栄養体(死細胞)(destructed cells(burst marks)と、栄養体(死細胞)(trophozoites(dead))と、変形栄養体(死細胞)(spherically changed cells(dead))との合計は、2時間後に約90%に達した。以上の試験結果により、1−リノール酸グリセリドが、抗アメーバ活性として、殺アメーバ活性を有するものと結論した。
【実施例2】
【0045】
[1−リノール酸グリセリドの他のアメーバに対する作用の確認]
1−リノール酸グリセリド(100μg/mL)の作用をネグレリア・ロバニエンシス(図11(a)参照)とハルトマンネラ属HT−1(図11(b)参照)の間で比較した。ネグレリア・ロバニエンシスでの細胞破壊作用よりも弱いながらも、1−リノール酸グリセリドのハルトマンネラ属HT−1に対する、殺アメーバ活性が認められた。
【実施例3】
【0046】
[1−オレイン酸グリセリドの作用の確認]
不飽和脂肪酸エステルである1−オレイン酸グリセリド(図12(a)参照)についても、ネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行った。結果を図13に示す。ネグレリア・ロバニエンシスに対するアメーバ細胞破壊作用及び殺アメーバ活性は、1−リノール酸グリセリドとほぼ同程度の結果だった。
【実施例4】
【0047】
[1−オレイン酸グリセリドの他のアメーバに対する作用の確認]
1−オレイン酸グリセリド(100μg/mL)の作用をネグレリア・ロバニエンシス(図14(a)参照)とハルトマンネラ属HT−1(図14(b)参照)の間で比較した。1−オレイン酸グリセリドによるネグレリア・ロバニエンシスの細胞破壊作用よりも弱いながらも、ハルトマンネラ属HT−1では110分経過するまでに約40%の細胞が破壊され、殺アメーバ活性が認められた。
【0048】
[比較例1]
比較例として、飽和脂肪酸エステルである、1−ステアリン酸グリセリド(図12(b)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、細胞破壊作用は全く認められなかった。
【0049】
[比較例2]
比較例として、遊離脂肪酸であって、シス型二重結合を2つ有するリノール酸(図15(a)参照)、シス型二重結合を1つ有するオレイン酸(図15(b)参照)、及び飽和脂肪酸であるステアリン酸(図15(c)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、いずれもほとんど細胞破壊作用は認められなかった。図16は、ネグレリア・ロバニエンシスに対するリノール酸の抗アメーバ活性を示すグラフである。オレイン酸及びステアリン酸についても同様にほとんど細胞破壊作用は認められなかった。
【0050】
[比較例3]
比較例として、高級アルコールである、リノレイルアルコール(図17(a)参照)、オレイルアルコール(図17(b)参照)、オクタデカノール(図17(c)参照)を用いてネグレリア・ロバニエンシスに対する作用の確認を行ったが、いずれもほとんど活性を示さなかった。図18は、ネグレリア・ロバニエンシスに対するリノレイルアルコールの抗アメーバ活性を示すグラフである。オレイルアルコール及びオクタデカノールについても、同様にほとんど活性を示さなかった。
【実施例5】
【0051】
不飽和脂肪酸アミドである、N−オレオイルグリシン(図19参照)では、破壊作用はあまり強くはないが、変形球形死細胞の割合が高く、死滅作用が1−リノール酸グリセリドより早い時間で現れた(図20参照)。
【0052】
(結論)
脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドにおいて、抗アメーバ作用を呈する場合があるが、この場合、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドの脂肪酸は不飽和脂肪酸である必要がある。顕微鏡観察の結果より、細胞膜を破壊していることは明らかであるが、より以上の詳細は不明である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】抗アメーバ活性を検出した試料におけるペーパーディスクの阻止円の様子を示す図である。希釈なし(1)、1/10の濃度に希釈(2)、1/50の濃度に希釈(3)、した場合の阻止円である。
【図2】抗アメーバ活性を有する物質の単離精製のフローチャートを示した図である。
【図3】抗アメーバ活性を有する物質の単離精製過程における薄層クロマトグラフィーの図である。抗アメーバ活性を認めたF1557株由来の試料を、展開した図(1)、2回目の展開図(2)、SephadexLH20カラムにより分画した試料の展開図(3)である。
【図4】F1557株由来の抗アメーバ活性物質の、1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】1−リノール酸グリセリドの化学構造を示す図である。
【図6】F1557株の培養抽出物から単離精製した1−リノール酸グリセリドと、1−リノール酸グリセリドの市販標品の抗アメーバ活性を、ペーパーディスク法で比較した結果を示す図である。
【図7】1−リノール酸グリセリドをネグレリア・ロバニエンシスに、スライドガラス上で作用させた様子を示す図である。
【図8】顕微鏡観察により、アメーバの細胞膜が破壊されていく様子を示す図である。
【図9】トリパンブルーを用いた、1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。栄養体(生細胞)(A)、変形栄養体(生細胞)(B)、栄養体(死細胞)(C)、変形栄養体(死細胞)(D)、破壊栄養体(死細胞)(E)を示す。
【図10】1−リノール酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を各細胞の形態として、経時的に示したグラフを示す。
【図11】ネグレリア・ロバニエンシス(a)とハルトマンネラ属HT−1(b)に対する1−リノール酸グリセリドの作用を示す図である。
【図12】1−オレイン酸グリセリド(a)、1−ステアリン酸グリセリド(b)の構造式を示す図である。
【図13】1−オレイン酸グリセリドのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図14】ネグレリア・ロバニエンシス(a)とハルトマンネラ属HT−1(b)に対する1−オレイン酸グリセリド作用を示す図である。
【図15】リノール酸(a)、オレイン酸(b)、ステアリン酸(c)の構造式を示す図である。
【図16】リノール酸のネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図17】リノレイルアルコール(a)、オレイルアルコール(b)、オクタデカノール(c)の構造式を示す図である。
【図18】リノレイルアルコールのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【図19】N−オレオイルグリシンの構造式を示す図である。
【図20】N−オレオイルグリシンのネグレリア・ロバニエンシスに対する作用を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)又は(II)で表される化合物からなる自由生活性アメーバ防除剤;
【化1】
(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、
Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)
【化2】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)
【請求項2】
1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ−リノレノイルグリシン、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロールから選ばれる請求項1記載の自由生活性アメーバ防除剤。
【請求項3】
自由生活性アメーバが、ネグレリア属、アカントアメーバ属、及びハルトマンネラ属に属する群から選ばれる1又は2種以上のアメーバであることを特徴とする請求項1又は2記載の自由生活性アメーバ防除剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含有することを特徴とする自由生活性アメーバ防除組成物。
【請求項1】
一般式(I)又は(II)で表される化合物からなる自由生活性アメーバ防除剤;
【化1】
(式中、R1は、不飽和結合を1〜3個有する炭素数7〜19のアルケニル基又はアルキニル基を示し、
Xは、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基を1〜7個有する炭素数2〜8のヒドロキシアルケニルオキシ基、又は、炭素数2〜8のアミノ酸残基若しくはオリゴペプチド残基を示す。)
【化2】
(式中、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、ヒドロキシ基、又は不飽和結合を1〜3個有する炭素数8〜20の脂肪酸残基を示す。但し、式中R2、R3、及びR4のうち、少なくとも1個が脂肪酸残基であるが、R2又はR4のみが脂肪酸残基である場合を除く。)
【請求項2】
1−ミリストレイン酸グリセリド、1−パルミトレイン酸グリセリド、1−オレイン酸グリセリド、1−リノール酸グリセリド、モノパルミトレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノリノール酸プロピレングリコール、モノオレイン酸キシリトール、モノリノール酸キシリトール、N−パルミトレオイルグリシン、N−パルミトレオイルアラニン、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルアラニン、N−オレオイルセリン、N−オレオイルグルタミン酸、N−リノレオイルグリシン、N−α−リノレノイルグリシン、N−γ−リノレノイルグリシン、1,2−ジミリストレオイルグリセロール、1,2−ジパルミトレオイルグリセロール、1,2−ジオレオイルグリセロール、1,2−ジリノレオイルグリセロール、1,2−ジ−α−リノレノイルグリセロール、1,2−ジ−γ−リノレノイルグリセロール、1−ミリストレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−ミリストレオイルグリセロール、1−パルミトレオイル−2−オレオイルグリセロール、1−オレオイル−2−パルミトレオイルグリセロールから選ばれる請求項1記載の自由生活性アメーバ防除剤。
【請求項3】
自由生活性アメーバが、ネグレリア属、アカントアメーバ属、及びハルトマンネラ属に属する群から選ばれる1又は2種以上のアメーバであることを特徴とする請求項1又は2記載の自由生活性アメーバ防除剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の自由生活性アメーバ防除剤を有効成分として含有することを特徴とする自由生活性アメーバ防除組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−51755(P2009−51755A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218852(P2007−218852)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(593171592)学校法人玉川学園 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(593171592)学校法人玉川学園 (38)
【Fターム(参考)】
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