説明

自穿孔ボルトおよびその施工方法

【課題】自穿孔ボルト及びその施工のコストダウンを図る。
【解決手段】自穿孔ボルト1は、中空部3を有するボルト本体2の先端部2aに、中空部3と連通する外部への貫通孔6が形成されたオーガー4を装着している。そして、ボルト本体2を回転押出ししつつオーガー4で掘削して地山13を穿孔した後、中空部3を介して貫通孔6から穿孔内に固結材を注入する。これにより、従来のような非常に高価な穿孔ビットを用いないで済むため、自穿孔ボルト1及びその施工のコストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山の安定化対策に用いられる自穿孔ボルトおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、トンネル掘削工事において天端、切羽などを安定化させるために、注入式フォアポーリングが採用されることがある。注入式フォアポーリングは、地山を穿孔ロッドで穿孔し、穿孔ロッドを引き抜いた後、中空構造の注入ボルトをその穿孔内に挿入し、固結材を注入して地山を固結する工法である。
【0003】
しかし、その穿孔の孔荒れがひどい場合には、穿孔ロッドを引き抜くことが困難となり、また注入ボルトを挿入することができなかった。そこで、孔壁が自立しないような地山では、穿孔ロッドを引き抜かずにそのまま残置して注入ボルトとする自穿孔ボルトが使用されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】鈴木雅行、他17名,「ウレタン系注入材に関する技術資料 −注入式フォアポーリングの設計・試験方法・積算編− −空洞充填に関する留意点−」,ジェオフロンテ研究会 先行補強分科会 ウレタン開発WG,2004年11月30日,p.21−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、穿孔ロッドの先端部には、地山を穿孔するための穿孔ビットが装着される。この穿孔ビットは、穿孔機により加えられる回転と打撃に耐えるため、ビット本体またはビット本体に植設されるチップが超硬合金からなり、非常に高価なものである。そして、自穿孔ボルトにおいてもこのビットが適用され、その先端部に装着されて1回限りの使用で埋設されていた。このため、従来の自穿孔ボルトの製造コスト及びその施工コストが、非常に高くなるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、自穿孔ボルト及びその施工のコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の自穿孔ボルトは、例えば図1に示すように、中空部3を有するボルト本体2の先端部2aに、前記中空部3と連通する外部への貫通孔6が形成されたオーガー4を装着していることを特徴とする。
【0007】
このように、貫通孔6が形成されたオーガー4をボルト本体2の先端部2aに装着することにより、従来のような非常に高価な穿孔ビットを用いることなく、自穿孔ボルト1を製作することができ、その製造コストを低減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明の自穿孔ボルトの施工方法は、例えば図2に示すように、請求項1に記載の自穿孔ボルト1を用いて、前記ボルトを回転押出ししつつ前記オーガー4で掘削して地山13を穿孔した後、固結材12を前記中空部3を通して前記貫通孔6から穿孔14内に注入することを特徴とする。
【0009】
このように、オーガー4で掘削して地山13を穿孔した後、オーガー4が装着されたボルト本体2を穿孔14内に残置したまま、ボルト本体2の中空部3を通してオーガー4の貫通孔6から穿孔14内に固結材12を注入することにより、従来のように非常に高価な穿孔ビットを埋設することなく、自穿孔ボルト1を施工することができ、その施工コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自穿孔ボルトは、中空部を有するボルト本体の先端部において、中空部と連通する外部への貫通孔が形成されたオーガーを装着している。そして、自穿孔ボルトの施工は、ボルト本体を回転押出ししつつオーガーで掘削して地山を穿孔した後、固結材をボルト本体の中空部を通して貫通孔から穿孔内に注入する。これにより、従来のような非常に高価な穿孔ビットを用いないで済むため、自穿孔ボルト及びその施工のコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、トンネル掘削工事において、自穿孔ボルトを用いて注入式フォアポーリングの施工を行い、トンネル天端、切羽などの地山の安定化を図ろうとするものである。対象となる地山は、孔荒れがひどく孔壁が自立しない砂礫層である。また、注入式フォアポーリングの穿孔長は約3m、穿孔径は45mmとしている。
【0012】
まず、本実施の形態における自穿孔ボルト1について説明する。図1に示すように、自穿孔ボルト1は、ボルト本体2と、このボルト本体2の先端部2aに装着されるオーガー4とを備えている。その他、図示しないが、アダプター、カプラーなどの付属部材を適宜備えている。
【0013】
ボルト本体2は、その軸方向に沿って連続する中空部3を有する円管状のものである。なお、ボルト本体2の外面は、連続したネジが形成されているなど、後述する穿孔14内に注入される固結材12との付着性が良いものが好ましい。また、ボルト本体2の材質は、鋼製、樹脂製などが挙げられるが、穿孔機により加えられる回転力に耐え得る材質、構造のものであればよい。
【0014】
オーガー4は、鋼製のオーガー本体5とオーガー本体5の外面に突設されたスクリュー刃8とからなっている。オーガー本体5は、ほぼ円錐形状で、その底面側が開放された内空部7を有している。さらに、オーガー本体5の周壁には外部への貫通孔6が複数形成され、これらの貫通孔6は内空部7を介してボルト本体2の中空部3と連通している。
【0015】
スクリュー刃8は、スパイラル状に、全体外形がオーガー本体5の形状に沿ってほぼ円錐形状に形成されている。スクリュー刃8の径は、最大となる位置でほぼ穿孔14の径に一致する45mmとしてある。また、スクリュー刃8が形成される範囲の軸方向長さは、150〜200mmとしてある。
【0016】
オーガー4のボルト本体2への装着は、オーガー本体5の後端部5aを、ボルト本体2の先端部2aに嵌合して行われる。例えば、ボルト本体2の先端部2aおよびオーガー本体5の後端部5aにねじを形成し、両者を螺合するようにして良い。
【0017】
次に、自穿孔ボルト1の施工方法について説明する。まず、自穿孔ボルト1の後端側にアダプターを介してドリルジャンボなどの穿孔機を連結し(図示せず)、図2(a)に示すように、自穿孔ボルト1を回転押出ししつつ、先端部2aのオーガー4で掘削して、地山13を穿孔する。
【0018】
地山13を穿孔する際には、穿孔機にコンプレッサーが装備され、水、空気などの加圧流体をボルト本体2に供給できるようになっている(図示せず)。この加圧流体は、ボルト本体2の中空部3、オーガー4の内空部7を通って、貫通孔6から噴出される。噴出された加圧流体は、オーガー4による掘削で発生した繰粉などを後方に送り出し、穿孔14の孔口へと排出することができるようになっている。
【0019】
地山13を所定の深さまで穿孔し、必要に応じ穿孔14内を洗浄して、自穿孔ボルト1から穿孔機を取り外すと、図2(b)に示す状態となる。そして、図2(c)に示すように、固結材12のリークを防止するために、穿孔14の口元14aとボルト本体2との間隙をコーキングする。口元14aのコーキング9が完了したら、図2(d)に示すように、自穿孔ボルト1の後端側にミキシングユニット10などをセットする。
【0020】
そして、図2(e)に示すように、ミキシングユニット10のバルブ11を開き、前述した加圧流体と同じ経路を通って、貫通孔6から固結材12を注入する。固結材12は、穿孔14内を順次口元14aに向かって押し出され、地山13内の亀裂15へも浸透して地山13を固結させるとともに、自穿孔14ロックボルトを定着させる。固結材12としては、セメント系、ウレタン系などの周知の注入材を用いることができる。
【0021】
なお、以上の実施の形態においては、自穿孔ボルト1を、トンネル掘削工事におけるトンネル天端、切羽などの安定化対策に用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、法面などの安定化対策として用いても良い。また、ロストビットタイプのAGF工法(注入式長尺先受工法)にも適用可能である。また、オーガー4、スクリュー刃8等の形状、貫通孔6の位置、数、その他、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の自穿孔ボルトを示す側面図(一部断面図)である。
【図2】本発明を適用した一実施の形態の自穿孔ボルトを用いたフォアポーリングの施工手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0023】
1 自穿孔ボルト
2 ボルト本体
2a 先端部
3 中空部
4 オーガー
5 オーガー本体
5a 後端部
6 貫通孔
7 内空部
8 スクリュー刃
9 コーキング
10 ミキシングユニット
11 バルブ
12 固結材
13 地山
14 穿孔
14a 口元
15 亀裂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有するボルト本体の先端部に、前記中空部と連通する外部への貫通孔が形成されたオーガーを装着していることを特徴とする自穿孔ボルト。
【請求項2】
請求項1に記載の自穿孔ボルトを用いて、前記ボルトを回転押出ししつつ前記オーガーで掘削して地山を穿孔した後、固結材を前記中空部を通して前記貫通孔から穿孔内に注入することを特徴とする自穿孔ボルトの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−193909(P2006−193909A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4055(P2005−4055)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】