説明

自走式床ワックス剥離装置

【課題】操作を容易にして作業性を良くするとともに、間違った操作を行った場合にもワックス粒が周囲に飛散することない自走式床ワックス剥離装置を提供することを課題とする。
【解決手段】接地研磨部2を上下昇降させる昇降モータ50及びその昇降スイッチ70と、接地部材7を回転駆動させるモータMと走行駆動用の走行モータ27とを略同時に入切可能の駆動スイッチ71を設け、昇降スイッチ70が上昇側の場合には駆動スイッチ71を非通電状態として駆動スイッチ71操作を無効とし、昇降スイッチ70が下降側の場合には駆動スイッチ71の入切操作を有効にして、走行モータ27及びモータMの入切操作を可能にしてなる自走式床ワックス剥離装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面のワックスや汚れ等を剥離除去することのできる自走式床ワックス剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前側に昇降自在のブラスト噴射回収装置を備え、噴射ノズルから床面に向け樹脂粒体と圧縮空気を噴射して床面のワックスや汚れを剥離することのできる付着物除去装置を本出願人が出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の付着物除去装置の前部に設けてあるブラスト噴射回収装置は手動レバーによって昇降させることができるものであるが、ブラスト噴射回収装置を下降させて剥離作業を行っている時にブラスト噴射回収装置を上昇させると噴射されている樹脂粒体や剥離したワックス粒が周囲へ飛散してしまうという不都合がある。又、走行モータや剥離部駆動用モータ、剥離部昇降用のモータ各々に入切スイッチを設けると、操作手順が煩雑になるばかりではなく、操作の順番を間違えてワックス粒を周囲に飛散させてしまうという不都合もあった。
本発明は、操作を容易にして作業性を良くするとともに、間違った操作を行った場合にもワックス粒が周囲に飛散することない自走式床ワックス剥離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
自走式車体1に昇降自在の接地研磨部2を備え、該接地研磨部2は接地部材7を回転接地させることによって床面3のワックスや汚れを剥離除去することが可能で、これら剥離除去したワックス粒が飛散しないよう接地部材7外周部はカバー41で覆った密閉室42を形成し、この密閉室42内のワックス粒を吸引装置によって吸引しながらワックス剥離作業を行うことのできる自走式床ワックス剥離装置において、前記接地研磨部2を上下昇降させる昇降モータ50及びその昇降スイッチ70と、接地部材7を回転駆動させるモータMと走行駆動用の走行モータ27とを略同時に入切可能の駆動スイッチ71を設け、昇降スイッチ70が上昇側の場合には駆動スイッチ71を非通電状態として駆動スイッチ71操作を無効とし、昇降スイッチ70が下降側の場合には駆動スイッチ71の入切操作を有効にして、走行モータ27及びモータMの入切操作を可能にしてなる自走式床ワックス剥離装置の構成とする。
【発明の効果】
【0006】
接地部材7を回転駆動させるモータMと走行駆動用の走行モータ27とを略同時に入切可能の駆動スイッチ71を設けてあるので、モータMと走行モータ27の両方を単一の駆動スイッチ71によって入切操作することができ作業性が良い。
又、接地研磨部2を上下昇降させる昇降モータ50及びその昇降スイッチ70を設け、昇降スイッチ70が上昇側の場合には駆動スイッチ71を非通電状態として駆動スイッチ71操作を無効とし、昇降スイッチ70が下降側の場合には駆動スイッチ71の入切操作を有効にして、走行モータ27及びモータMの入切操作を可能にしてあるので、接地研磨部2が上昇している際には接地部材7が回転せず、接地研磨部2下降時の接地部材7回転中に昇降スイッチ70を上昇側に操作しても直ちに接地部材7の回転が停止し、剥離したワックス粒が飛散することがない。
更に、駆動スイッチ71を入状態にしておけば、昇降スイッチ70の入切操作のみで接地研磨部2の昇降と剥離作業の開始、中断を行うことができ操作性及び作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】操作に関するブロック図
【図2】操作スイッチ類の配置を示す平面図
【図3】全体側面図
【図4】全体平面図
【図5】作動原理図
【図6】接地研磨部を示す側面図
【図7】接地研磨部を示す平面図
【図8】接地研磨部の昇降構成を示す側面図
【図9】接地部材の回転状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。車体1下方に左右一対の駆動前輪25とキャスター後輪26とを設け、駆動前輪25は走行モータ27によりチェーン28を介して駆動される。車体1後部には上方へ向け延設したハンドル24を設け、操縦者がこのハンドル24を握り、車体1後方を歩行しながら床ワックスの剥離作業を行う。車体1外観形状は、車体カバー20の形状が、平面視前部左右幅W1よりも後部左右幅W2を狭く構成するとともに、車体カバー20後端部から後方へ向けハンドル24が突出しないようハンドル24を車体1左右後端部から前方上方へ向け延設したループ形状に構成してある。この構成により、剥離装置全長を短くコンパクトにすることが可能で、車体1後部を歩行する操縦者が車体1に接近して操作することができるので、狭い場所での旋回性がよくなる。車体1前側には、揺動軸29を中心に昇降自在の接地研磨部2を設け、この接地研磨部2は回転軸4に軸支した回転体5と該回転体5外周部に複数個設けた接地部材7とから構成されている。
【0009】
図5は本発明の剥離装置の作動原理を示すものであり、接地研磨部2で剥離除去されたワックス粒や汚れは、回転体5後方の回転ブラシ30によって掻き上げられ、その後側の吸引口31から吸引され、ダクト32内を通りサイクロン分離器33によって粒体と空気とに分離される。ほとんどの粒体はサイクロン分離器33で分離されて下方のダストボックス34に落下蓄積される。サイクロン分離器33で分離できなかった少量のワックス粒や空気はダクト35を通りフィルタ室36に吸引され、フィルタ37を介して吸引されたきれいな空気のみがファン38により機外へ排出される。39は、カバー41と床面3との隙間からのワックス粒や汚れ等の噴出を防ぐ密閉ゴムであり、40は研磨されたワックス粒を確実に回収するために床面3表面を摺動する摺動スポンジである。
【0010】
接地部材7は、回転体5回転方向前端側7aを回動軸6に枢支し、回転体5回転方向後方へ向け後退した形状に形成し、横方向の回動軸6に、左右複数個に分割した接地部材7を、密着状態に挿嵌してある。又、接地部材7は回転体5の回転遠心力により回動軸6を中心に後端側7bが外方へ向け回動突出するよう構成し、その回動突出量は規制部8により規制されている。接地部材7外周部には砥粒入りの研磨体10を設け、この研磨体10は、回転時の回転体5下端部9で床面3に当接する接地部材7の回転径D1から、回転体5遠心力により回動突出量を規制された状態での最外端回転径D2にわたって設けてある。すなわち接地部材7は、床面3に直接当接する研磨体10と、この研磨体10のベースとなる部分とから構成されている。この構成により、床面3に衝打される接地部材7の研磨体10へのワックス粒目詰まりが解消され、その後研磨部10が床面3を摺動することにより、継続的に安定した研磨性能を維持することができる。又、接地部材7は、回転体5回転方向後方へ向け後退した形状に形成してあるので、研磨体10と床面3とのなす角度が鋭角になってスムーズな回転となり、騒音や振動を軽減させることができる。
【0011】
接地部材7の研磨体10は、外周縁部10aを回転径D1に近い円弧状に形成し、接地部材7が回動突出量を規制された状態となる回転体5回転時には、研磨体10外周縁部10aと回転軸4までの距離が、回転体5回転方向前側から後側にかけて徐々に長くなるよう構成してある。この構成により、研磨体10と床面3とが更にスムーズに当接するようになり研磨体10が上下にバタつくことなく研磨性能を維持しながら、騒音、振動の少ない均一的なワックス剥離を行うことができる。
【0012】
回転体5の左右両端部には側板11,12を設けてあり、側板11,12間に回転軸4と略平行な回動軸6を設けてある。この回動軸6には複数に分割した接地部材7を、各々隣接する接地部材7が密着状態になるよう挿嵌してある。従って、接地部材7の分割数が多い程、床面3の凹凸や変形への追従性は良くなる。又、本発明の接地部材7は、回動軸6と、回動軸6に密着状態で挿嵌した接地部材7とにより横一列の研磨ユニットKを形成し、この研磨ユニットKは回転体5に対して着脱自在に構成してある。これら横一列に挿嵌した接地部材7群と、この接地部材7群の回転体5回転方向前側又は後側に位置する接地部材7群とは、左右幅方向位置をずらし、回転中先に接地する接地部材7群の接地部材7と接地部材7との隙間S1と、次に接地する接地部材7群の接地部材7と接地部材7との隙間S2とが重合接地しないよう配列してある。この構成により、先に接地する接地部材7,7間の隙間により発生する未研磨部の縦スジは、次に接地する接地部材7の研磨面によって確実に研磨され、縦スジの残らない均一的な剥離が可能である。これら接地研磨部2を接地させると、カバー41と床面3とで密閉状態となる密閉室42が形成される。
【0013】
車体1前部には、揺動軸29を中心に揺動可能のモータベース43を設け、モータベース43上面に回転体5駆動用のモータMを取着してある。モータベース43左右両端部からは、前方に向け延設する支持部材44を設け、この左右の支持部材44,44間に回転体5を軸支してある。回転体5の左右一側方(本実施例では車体1の右側に配置)にはプーリ45を取着し、モータMに設けたプーリ46との間に無端体(Vベルト)47を巻回してモータMの回転駆動力を回転体5に伝動する伝動部Cを形成してある。これら回転体5や回動軸6、接地部材7等から構成される接地研磨部2は、車体1左側を壁に接近させてワックス剥離作業を行う場合に、接地部材7と壁との距離を極力短くし、壁際近傍までのワックス剥離が可能となるよう伝動部Cを設けた車体1右側とは逆の左側へ向け偏倚させてある。又、モータベース43の構成は、側面視において接地研磨部2が接地状態Bの時に揺動軸29上方位置にモータMを配置してある。モータMの重心位置は、揺動軸29の略真上、乃至やや後方になるよう配置してあり、接地研磨部2を待期状態Aに上昇させた際、揺動軸29からモータM重心位置までの後方向への距離Lが増加するよう構成してある。この構成により、接地研磨部2を揺動軸29中心に上昇させると、重量物であるモータMの重心位置が後方へ移動し、該モータMの重量が接地研磨部2を上昇させる方向に作用して、軽い力で容易に上昇させることが可能となる。
【0014】
回転体5の後側には回転ブラシ30を設けてあり、回転ブラシ30左右一側方に設けたプーリ48と回転体5のプーリ45との間に伝動ベルト49を巻回して回転ブラシ30を駆動してある。モータM上方の車体1側には昇降モータ50を設け、該昇降モータ50とモータベース43間をリンク機構Fで連結してある。このリンク機構Fの具体構成は、モータベース43から上方へ延設したアーム51上端部のピン52に揺動アーム53の長穴部54を係合し、揺動アーム53の他端部は昇降モータ50によって駆動回動されるピン55に連結し、昇降モータ50軸56にはカム体57を取着してある。カム体57の前後にはリミットスイッチ58,59を設けてあり、カム体57の回動により前側のリミットスイッチ58が作動状態の時には、接地研磨部2が下降接地した接地状態Bであり、後側のリミットスイッチ59が作動状態の時は、接地研磨部2が上昇した待期状態Aである。尚、接地状態Bでの長穴部54のピン52の位置は長穴部54長手方向の中間位置にあり、床面3の凹凸で接地研磨部2が上下動した場合にも長穴部54内でピン52の揺動が許容され、揺動アーム53等が破損しないよう構成してある。60は揺動アーム53の振動を抑制するスプリングである。
【0015】
接地部材7の研磨体10は、他の部位を弾性材で構成してあり、研磨体10は接地部材7の枢支部よりも硬度の高い弾性材で構成してある。すなわち、硬い研磨体10で床ワックスを確実に剥離し、研磨体10よりも柔らかい枢支部は、接地部材7の床面3への衝打回転力により撓んで左右に揺れ、隣接する接地部材7,7間のわずかな隙間によって発生する未研磨部の縦スジがつき難く、均一的な剥離を行うことができる。
【0016】
本発明の接地研磨部2には接地部材7が床面3に回転接地した際に、衝突の反力によって接地部材7が上方へ跳ね上がることを防止する抑止体13を設けてある。図5に示すのはその実施の形態であり、(a)は接地部材7側に突起部を設け、この突起部を回転体5側の受板63に弾発付勢させたものであり、(b)は受板63側に弾性スポンジ64を取着した構成である。この構成により、研磨体10を床面3に確実に摺動させることができ、安定した確実な剥離を行わせることができる。これら抑止体13は、接地部材7側もしくは回転体5側に設ければよく、又、その両方に設けてもよい。
【0017】
車体1中央部にはコントローラ62を設け、車体1上方後部には各部の操作を行う操作パネル66を設けてある。本発明の自走式床ワックス剥離装置はハンドル24近傍に設けたコード67のプラグ68を交流100Vコンセントに接続して駆動される。この電源は交流200V電源、又は、車体1にバッテリを搭載する直流電源方式であってもよいが、交流200Vよりは汎用性の高い交流100Vが好ましい。操作パネル66には、電源スイッチ69、昇降スイッチ70、駆動スイッチ71、走行速調整ダイヤル72と走行速調整用のインバータ65、駆動速調整ダイヤル73、アワーメーター74を設けてある。回転体5を駆動するモータMの回転速度調整用のインバータ61はコントローラ62の前方に配置してある。これら走行速度と回転体5駆動速度とを調整して状況に応じた剥離性能を選択することが可能である。
【0018】
電源スイッチ69を入操作するとファン38が作動して吸引を開始する。駆動スイッチ71は、回転体5(接地部材7)を回転駆動させるモータMと走行駆動用の走行モータ27とを略同時に入切操作することができる。又、昇降スイッチ70と駆動スイッチ71は連動してあり、昇降スイッチ70が上昇側の場合には駆動スイッチ71が非通電状態となり、駆動スイッチ71操作は無効となる。昇降スイッチ70が下降側の場合には、駆動スイッチ71の入切操作が有効となり、駆動スイッチ71の入切操作によって走行モータ27及びモータMとを入切操作することができる。この構成により、走行モータ27とモータMとを単一の駆動スイッチ71で入切操作でき、駆動スイッチ71を入状態にしておけば、昇降スイッチ70を下降側にすると接地研磨部2が接地した後に走行モータ27及びモータMが回転して剥離作業を容易に開始することができ、昇降スイッチ70を上昇側にした場合には直ちに走行モータ27及びモータMが停止して、剥離したワックス粒を周囲に飛散させることなく剥離作業を中断することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 車体
2 接地研磨部
3 床面
7 接地部材
27 走行モータ
41 カバー
42 密閉室
50 昇降モータ
70 昇降スイッチ
71 駆動スイッチ
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式車体(1)に昇降自在の接地研磨部(2)を備え、該接地研磨部(2)は接地部材(7)を回転接地させることによって床面(3)のワックスや汚れを剥離除去することが可能で、これら剥離除去したワックス粒が飛散しないよう接地部材(7)外周部はカバー(41)で覆った密閉室(42)を形成し、この密閉室(42)内のワックス粒を吸引装置によって吸引しながらワックス剥離作業を行うことのできる自走式床ワックス剥離装置において、前記接地研磨部(2)を上下昇降させる昇降モータ(50)及びその昇降スイッチ(70)と、接地部材(7)を回転駆動させるモータ(M)と走行駆動用の走行モータ(27)とを略同時に入切可能の駆動スイッチ(71)を設け、昇降スイッチ(70)が上昇側の場合には駆動スイッチ(71)を非通電状態として駆動スイッチ(71)操作を無効とし、昇降スイッチ(70)が下降側の場合には駆動スイッチ(71)の入切操作を有効にして、走行モータ(27)及びモータ(M)の入切操作を可能にしてなる自走式床ワックス剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83464(P2011−83464A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238985(P2009−238985)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)