自走式掃除機
【課題】 絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を提供する。
【解決手段】 駆動輪を備え、この駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、本体に設けられた壁面に対する本体の位置を検知する為の検知手段とを備えた自走式掃除機において、掃除動作中に、本体の前端が壁面に近接した場合、本体の前端が壁面に近接した状態で、本体を同じ位置に所定時間の間留めるように自走式掃除機を構成する。
【解決手段】 駆動輪を備え、この駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、本体に設けられた壁面に対する本体の位置を検知する為の検知手段とを備えた自走式掃除機において、掃除動作中に、本体の前端が壁面に近接した場合、本体の前端が壁面に近接した状態で、本体を同じ位置に所定時間の間留めるように自走式掃除機を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動手段を備えた自走式掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自走式掃除機は、自走式掃除機本体と壁の距離を計測する手段を備え、壁際を掃除する際に、本体の側面を壁に対向させた状態で、壁に沿って移動していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の他の自走式掃除機は、自走式掃除機本体と壁の距離を計測する手段を備えるとともに、本体端部に略水平回転する補助ブラシを備え、前記補助ブラシを壁に当接させながら移動していた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の他の自走式掃除機は、自走式掃除機本体前端の左右に接触センサーを備え、左右一方の接触センサーが壁との接触を検知した場合に、他方の接触センサーが壁との接触を検知するまで、本体が廻り込むように移動していた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−46246号公報
【特許文献2】特公平7−32752号公報
【特許文献3】特許第2744633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す自走式掃除機は、自走式掃除機本体が壁に接触しない範囲で近接し、本体の側面を壁に対向させた状態で、壁に沿って移動し、自走式掃除機本体下部に設けられた塵埃吸引口から塵埃を吸引していた。
しかしながら、前記塵埃吸引口が壁から離れているため、塵埃を吸引できない領域が生じてしまうという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に示す自走式掃除機は、壁際の塵埃を補助ブラシにより自走式掃除機本体下部に設けられた塵埃吸引口に向けて掻き出し、塵埃吸引口から吸引していた。
しかしながら、略水平回転する補助ブラシは、塵埃を容易に移動することができるフローリングなどの床面においては、塵埃の掻き出し効果が得られるが、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面においては、塵埃を十分に掻き出して吸引することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、特許文献3に示す自走式掃除機は、自走式掃除機本体左右の一方が壁と接触した後に、他方が壁に接触するまで自走式掃除機本体が廻り込むように移動するため、集塵部を自走式掃除機本体前面に設けた場合、壁際の塵埃を吸塵することができる。
しかしながら、壁際の塵埃を吸塵する領域が、自走式掃除機本体が壁に接触した部分に限られるため、部屋の壁際全体を効率よく掃除することができないという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を提供する。
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する為には、駆動輪を備え、この駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、本体に設けられた壁面に対する本体の位置を検知する為の検知手段とを備えた自走式掃除機において、掃除動作中に、本体の前端が壁面に近接した場合、本体の前端が壁面に近接した状態で、本体を同じ位置に所定時間の間留めるように自走式掃除機を構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す平面図、(b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す底面図。
【図2】(a)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す側面断面図、(b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の壁際における回転ブラシの動作を示す説明図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の距離検出センサーの距離計測領域、および本体1の旋回時の本体1の最外周と駆動輪2、2'の軌跡を示す説明図。
【図4】(1a)〜(1c)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの動作を示す平面図。
【図5】(1d)〜(1f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの動作を示す平面図。
【図6】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【図7】(2a)〜(2b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図8】(2c)〜(2d)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図9】(2e)〜(2f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図10】(2g)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図11】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【図12】(3a)〜(3b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図13】(3c)〜(3d)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図14】(3e)〜(3f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図15】(3g)〜(3h)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図16】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す平面図、図1(b)は底面図、図2(a)は側面断面図、図2(b)は壁際における回転ブラシの動作を示す説明図である。
【0015】
図において、本実施の形態における自走式掃除機は、前方が矩形で後方が円形を成す本体1の内部に、本体1を移動させる移動手段である一対の駆動輪2、2'を備える。一対の駆動輪2、2'は本体1の前後方向の略中央に配置され、本体1の底面より突出して被清掃面である床面に接地し、本体1を支持する。
駆動輪2、2'はそれぞれ独立のモーター3、3'により駆動され、本体1に内蔵された制御部(図示せず)の制御信号に従って回転、停止を行う。従動輪4は本体1の移動および、方向転換に対応して360度方向に自在に向きを変えながら本体1の後方底面を支持する。
尚、制御部は、操作部(図示せず)への入力操作や後述する各種検知手段からの入力に基づき、所定のプログラムで本体1に設けられている各種電気部品の制御を行う。
【0016】
本体1の前方には、吸込口体5が前方を上下に回動可能な状態に設置される。吸込口体5は底面から前方下部にかけて塵埃を吸い込む開口である塵埃吸込口6(以下、吸込口6)が設けられ、吸込口6の内部に回転ブラシ7を備える。
回転ブラシ7は軸の周囲に波状に複数列植毛された毛ブラシ8を備え、両端を軸支されて、駆動モーター(図示せず)により連結ベルト(図示せず)を介して回転駆動される。
また、回転ブラシ7の駆動モーターは、制御部からの制御信号に従って、回転・停止・回転数の変化が行われる。これにより、回転ブラシ7の回転数を変化させることが可能となっている。
【0017】
この回転ブラシ7は回転しながら毛ブラシ8が床面に接触し、床面の塵埃を前方から後方に向けて掻き上げる。回転ブラシ7によって掻き上げられた塵埃は、吸込口6後方に設けられた塵埃受け部9によって本体1内部に連通する風路10に導かれる。
塵埃受け部9は端部がゴムなどの軟質材もしくは植毛によって形成され、床面の凸状部などに当接しても破損したり、床面側に傷をつけたりしないように構成される。
【0018】
本体1内部の風路10の後方には、集塵部11が本体から取り外し可能な状態で設置される。また、集塵部11の後方には、負圧を発生する送風ファン12が設けられ、吸込口6、集塵部11に連通するダクト13を介して、空気を吸引する。
そして、吸引された空気と共に床面から掻き上げられた塵埃は、吸込口6を介して集塵部11に入り、集塵部11とダクト13の接続部に設けられたフィルター14によって、塵埃が取り除かれて清浄空気のみが送風ファン12によって吸引され、排気口15より排出される。
尚、送風ファン12は、制御部からの制御信号に従って、回転・停止・回転数の変化が行われることで風量を調整し、吸込口6における吸引力の調整が行われる。
【0019】
回転ブラシ7は、毛ブラシ8が吸込口6の前方に突出するように吸込口体5に設置されており、吸込口体5の前端が壁に当接すると、図2(b)に示すように、壁際まで毛ブラシ8が到達して塵埃を掻き上げる。
したがって、壁に吸込口体5を押し当てるように本体1を移動させると、壁際の塵埃を捕集することができる。
【0020】
吸込口体5の前端には壁面と接触したことを検知して、制御部(図示せず)に信号を伝達する左右一対の接触センサー16、17を備える。
また、吸込口体5の上部には、超音波の送受信による距離計測を行う第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19、第3の距離計測センサー20が設けられている。
【0021】
第1の距離計測センサー18は本体1の左側から前方に亘る領域を計測し、第2の距離計測センサー19は本体1の前方の領域を計測し、第3の距離計測センサー20は本体1の右側から前方に亘る領域を計測し、それぞれ、壁や障害物と本体1間の距離計測情報を制御部(図示せず)に伝達する。
このように制御部は、距離計測センサーや接触センサーからの情報に基づき、壁や障害物に対する本体の位置関係を認識する。つまり、距離計測センサーや接触センサーは、壁や障害物に対する本体の位置関係を検知する検知手段となっている。
【0022】
尚、本実施の形態において、第2の距離計測センサー19は、本体の左右の略中心に配置され、本体の前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の前方の領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第1の距離計測センサー18は、本体の左側に配置され、本体の左斜め前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の左側から前方に亘る領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第3の距離計測センサー20は、本体の右側に配置され、本体の右斜め前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の右側から前方に亘る領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第1の距離計測センサー18と第3の距離計測センサー20は、第2の距離計測センサー19を中心に、左右対称の位置となるように本体に設けられている。
【0023】
吸込口体5の底面の左右端部には、床面に向けて光を照射する発光部と、床面で反射する光の受光部を備え、受光部の検出する光の強度により段差の深さを検出する一対の段差センサー21、21'を備える。
また、本体1の後方左右側面には、後方側面に向けて光を照射する発光部と、近接する壁や障害物によって反射する光の受光部を備え、受光部の検出する光の強度により、壁や障害物と本体1との距離を検出する近接センサー22、22'を備える。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る自走式掃除機の第1〜第3の距離検出センサーの距離計測領域、および本体1の旋回時の本体1の最外周と駆動輪2、2'の軌跡を示す説明図である。図4(1a)〜(1c)及び図5(1d)〜(1f)は本体1が壁際を掃除するときの動作を示す平面図である。図6は本体1が壁際を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図である。
尚、図4及び図5に示す(1a)〜(1f)は、(1a)から(1f)に向かって、一連の動きを示している。また、図6の(1a)〜(1f)は、図4及び図5の(1a)〜(1f)の状態に対応している。
【0025】
図において、点Oは駆動輪2、2'の中間点であり、駆動輪2、2'を同一回転数でそれぞれ逆方向に駆動させる真地旋回を行った場合の本体1の旋回中心である。D1は本体1が真地旋回を行った場合の駆動輪2、2'の円軌跡である。Aは旋回中心Oから本体1の最遠端である前方側面角までの距離であり、D2は本体1が真地旋回した場合の本体1の端部の描く半径Aの外接円である。また、斜線部分は壁を表す。
【0026】
領域S1、領域S2、領域S3は、それぞれ第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19、第3の距離計測センサー20の前方約30cm、角度約50°の範囲の距離計測領域を示す。本体1が壁や障害物に近接して、壁や障害物がこれらの距離計測領域に差し掛かると、近接した距離計測センサーはそれぞれ距離計測情報を制御部(図示せず)に伝達する。
【0027】
次に、図4〜図6を参照して、本体1が壁際を掃除する場合の清掃面上の動作について説明する。
例えば、図4(1a)に示すように、本体1が左側斜め方向から壁に近接する場合、図6に示す時点1aに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が、30cm以上離間していることを示すLOWレベル(以下、Lレベル)から近接を示すHIGHレベル(以下、Hレベル)に向けて徐々に増加し、また、これに遅れて第2の距離計測センサー19の出力が増加を始める。
【0028】
この間、制御部は第3の距離計測センサー20の出力が、Lレベルより増加しないことから、領域S1が領域S2よりも壁に近接し、領域S3には壁は存在しないことを認識する。
また、第1の距離計測センサー18の出力の増加開始時点と、第2の距離計測センサー19の出力の増加開始時点の時間差、および第1の距離計測センサー18の出力の増加速度と、第2の距離計測センサー19の出力の増加速度の差、を利用して、本体1の壁への近接角度を算出することができる。
【0029】
制御部は、壁に最も近接している第1の距離計測センサー18の出力を監視し、図3(a)に示すように、本体1の外接円D2が壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止する。
次に、図4(1b)に示すように、左の駆動輪2を後方に、右の駆動輪2'を前方に同一回転数で回転させて、本体1を、旋回中心Oを中心に反時計回りに真地旋回させる。ここで、図4(1b)に示す本体1の形状の破線は、本体1の前の状態を示すものであり、以降の図においても同様に記載するものである。
【0030】
本体1が真地旋回すると、本体1の左前角部が壁に対して最接近した後、離間に転じる。制御部は図8に示すように時点aから時点bに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が極大となるのを監視することで、本体1と壁の位置関係を認識することができる。そして、第2の距離計測センサー19の出力が所定値以上となった時点bにおいて、制御部は駆動輪2、2'を停止し、本体1の真地旋回を停止する。
【0031】
次に、図4(1c)に示すように、制御部は、本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
つまり、図4(1b)に示す本体1の位置から左の駆動輪2を停止したままとするか、もしくは前方に微小に回転させながら、右の駆動輪2'を前方に回転させることにより、本体1の前端を壁に当接させる。
【0032】
本体1の前端の全面が壁に当接すると、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知してHレベルの信号を制御部へ出力する。
つまり、左右の接触センサー17,18の両方が壁面に接触し、Hレベルの出力を制御部が検知することで、本体1の前端の全面が壁に当接した状態を制御部が認識する。尚、左右の接触センサーのいずれかが壁面と接触して制御部へと出力される信号は、Hレベルとならないため、制御部は、本体1の前端の全面が壁に接していないと認識する。
【0033】
本体1は掃除動作中、送風ファン12のみか、又は、送風ファン12と回転ブラシ7を同時に駆動しており、本体1の移動する範囲の床面の塵埃を、吸引口6から吸引して集塵部11に捕集する。図4(1c)に示すように、吸込口体5の前端が壁際に近接(本体1の前端が壁に当接した状態を含む)すると、回転ブラシ7の毛ブラシ8が壁際まで到達して塵埃を掻き出す。
【0034】
このとき、図6に示すように、時点1cにおいて所定の時間の間本体1の位置を移動させない、つまり、同じ位置に留まる停止期間tを設けることにより、壁際での塵埃の捕集効果を向上させることができる。
この停止期間tの間は、駆動輪を停止させて本体1の清掃面上の動きを停止させるか、本体1が壁に押し当るように駆動輪を動作させる、つまり、本体1が壁に向いて移動するように駆動輪を動作させるとよい。
本体1を壁に押し当てるようにすることで、より回転ブラシ7の毛ブラシ8が壁際まで到達しやすくすることができる。
【0035】
また、この停止期間tの間、壁の近傍まで本体1が移動してきた際の状態より、送風ファン12の風量を増加させたり、回転ブラシ7の回転数を増加させたりする。
これにより、塵埃が蓄積しやすい壁の近傍で送風ファンの風量や回転ブラシの回転数を大きくするので、塵埃が多く蓄積されやすい被清掃部における捕集効果をさらに向上させることができると共に、塵埃が多い位置でのみ電気部品の出力を大きくするので、省エネ効果を期待できる。
【0036】
ここで、本体1を壁際で留まらせる時間である停止期間tは、壁際の塵埃を捕集可能な時間に設定されており、約1〜3秒である。
また、この停止時間tは、被清掃部などの状況に応じて可変にしてもよい。例えば、本体1が留まった位置の塵埃を所定の量以下まで取り除いた後、本体1が動くように制御する。この場合、本体1の風路10に、塵埃検知センサーを設け、このセンサーが塵埃の通過を検知しなくなる、又は、検知量が所定のレベル以下となったとき、制御部は本体1が留まった位置の塵埃を取り除いたと判断する。
尚、塵埃検知センサーの例として、対向して配置された発光部とこの発行部からの光を受信する受光部からなり、発行部と受光部の光軸間を塵埃が通過して遮光する際の受光部の光量変化により、制御部が塵埃通過の有無を検知するものなどある。
【0037】
次に制御部は、図4(1c)に示すように、本体1の前端の当接する壁際の掃除を行った後、その右側の壁際、つまり当接した壁面の面方向右側の壁面と対面する位置に、本体1を移動させる。まず、図5(1d)に示すように、本体1を後方右側に旋回させながら後退させ、さらに後方左側に旋回させる。
そして、図6に示すように、本体1が壁から所定距離後退した時点1dで駆動輪2、2'を停止する。この間、制御部は右側と左側の旋回量を同じくすることにより、本体1前方が壁に平行に相対するようにする。
このとき、制御部は本体1を図4(1c)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離とする。これにより、吸込口6が満遍なく被清掃面上を通過するので、塵埃の取り残しを少なくすることができる。
【0038】
次に、制御部は図5(1e)に示すように、本体1を前方右側に旋回させながら前進させ、さらに図5(1f)に示すように、本体1を前方左側に旋回させながら前進させる。
制御部は、図6に示す時点1dから時点1eに至る間、第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19を監視し、本体1を前方左側への旋回に転じるタイミングを決定する。
【0039】
そして、時点1eで前方左側への旋回を始めた後は、再び本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
そして、図5(1f)に示すように、吸込口体5の前端を壁際に当接させる。このとき制御部は、本体1を図5(1d)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離となるように動作させる。
つまり、図4(1c)に示す本体1の位置から、図5(1f)に示す本体1の位置までの、本体1の壁に沿った移動量は、吸込口6の横幅に等しいか、少し短い距離となる。
【0040】
上記図4(1c)から図5(1d)までの動作を壁に沿って繰り返すことにより、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。また、吸込口6が壁際の同じ箇所を通過することがないため、壁際を効率よく掃除することができる。
【0041】
次に、本体1が壁沿いを移動中に部屋の隅に差し掛かった場合の動作について説明する。図7〜図10に示す(2a)〜(2g)は本体1が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図、図11は本体1が部屋の隅を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図である。また、斜線部分は壁を表す。
尚、図7〜図10に示す(2a)〜(2g)は、(2a)から(2g)に向かって、一連の動きを示している。また、図11の(2a)〜(2g)は、図7〜図10の(2a)〜(2g)の状態に対応している。
【0042】
図7(2a)は図5(1d)の状態と同様に、本体1が壁際を掃除しながら壁沿いを図面右方向に移動してきた状態であり、本体1は正面の壁際を掃除した後、後方右側に旋回しながら後退し、さらに本体1前方が正面の壁に平行に相対するように後方左側に旋回して停止した状態である。
このとき、図11に示すように、時点2aにおける第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19の出力はLレベルに減少するが、第2の距離計測センサー20の出力はLレベルとならないため、制御部は図4(1a)に示すように、本体1の右側に壁が存在し、正面の壁とで作られる隅部が存在することを認識する。
【0043】
制御部は、本体1の右側が部屋の隅に差し掛かったことを認識すると、右側の壁に対応した処理モードを実行する。図7(2b)に示すように、本体1を右側の壁から所定距離残して右側に向ける。
次に、図6(2c)に示すように、本体1の右前角部が右側の壁に接触しないように近接させながら、本体1の前端が正面の壁に当接するまで前進させる。本体1の前端の全面が正面の壁に当接すると、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知する。
【0044】
制御部は、図11の時点2cから本体1の位置を移動させない停止期間tを設けた後、図8(2d)に示すように、右側の壁に沿って本体1を後退させる。そして、図9(2e)に示すように、本体1の右端が前壁に沿って横向きになるまで左側前方に旋回させる。そして、図9(2f)に示すように、反時計回りに180°真地旋回させた後、図10(2g)に示すように、右側に直進させて、本体1の前端が右側の壁に当接するまで前進させる。
【0045】
この後、本体1を右側の壁に沿ってさらに移動させる動作は、図4(1c)から図5(1f)までの動作と同様である。
【0046】
以上のように、本体1が部屋の隅に差し掛かった場合、隅に面する2つの壁の両方の壁際に本体1の前端を当接させる処理を行うため、部屋の隅の壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【0047】
次に、図12〜図16を参照して、本体1が部屋の角を掃除する場合の動作について説明する。尚、図12〜図15に示す(3a)〜(3h)は、本体1の一連の動きを示す。また、図16に示す(3a)〜(3h)は、図12〜図15に示す(3a)〜(3h)の状態にそれぞれ対応する。また、斜線部分は壁を表す。
例えば、図12(3a)に示すように、本体1が左側斜め方向から部屋の角付近の壁に近接する場合、図16に示す時点3aに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が、30cm以上離間していることを示すLレベルから近接を示すHレベルに向けて徐々に増加する。
このとき、第2の距離計測センサー19の出力がLレベルのままであることから、制御部は壁への近接角度が小さいか、部屋の角が存在しているかのどちらかであることを認識する。
【0048】
制御部は第1の距離計測センサー18の出力を監視し、図12(3a)に示すように、本体1の外接円D2が壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止する。
次に、図12(3b)に示すように、左の駆動輪2を後方に、右の駆動輪2'を前方に同一回転数で回転させて、本体1を反時計回りに真地旋回させる。本体1が真地旋回すると、本体1の左前角部が壁に対して最接近した後、離間に転じる。制御部は図16に示すように時点3aから時点3bに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が極大となるのを監視することで、本体1と壁の位置関係を認識することができる。
そして、第2の距離計測センサー19の出力が所定値以上となった時点3bにおいて、制御部は駆動輪2、2'を停止し、本体1の真地旋回を停止する。
【0049】
次に、図13(3c)に示すように、制御部は、本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
つまり、左の駆動輪2を停止したままとするか、もしくは、前方に微小に回転させながら、右の駆動輪2'を前方に回転させることにより、本体1の前端を壁に当接させる。このとき、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知して、図16に示すように時点3cにおいてHレベルを出力するが、第3の距離計測センサー20の出力はLレベルのままである。
制御部はこの状態から、本体1の前端の中央から右端までの間に部屋の角が位置していることを認識する。
【0050】
制御部は、本体1の右側が部屋の角に差し掛かったことを認識すると、停止期間tの後に部屋の角に面する2つの壁に対応した処理モードを実行する。図13(3d)に示すように、本体1を後方右側に旋回させながら後退させ、さらに後方左側に旋回させる。そして、図16に示すように、本体1が壁から所定距離の位置となった時点3dで駆動輪2、2'を停止する。
この間、制御部は右側と左側の旋回量を同じくすることにより、本体1前方が正面の壁に平行に相対するようにする。このとき、制御部は本体1を図13(3c)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離とする。
【0051】
次に、制御部は、本体1を図13(3d)の状態から図14(3e)の状態まで動作させる間、第1の距離計測センサー18の出力を監視しながら、本体1を時計回りに真地旋回させる。つまり、図16に示す時点3dから真地旋回を開始して、第1の距離計測センサー18の出力が増加して極大となった後、Lレベルとなる時点3eで、真地旋回を停止させる。この制御により、本体1の進行方向を部屋の角に寄り過ぎず、離れすぎない適切な方向とすることができる。
【0052】
次に、制御部は、図14(3f)に示すように、部屋の角を廻り込むのに適した所定半径で本体1を左前方に旋回させる。そして、本体1が、正面の壁に対して直角に対する右側の壁に近接し、本体1の外接円D2が右側の壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止させる。そして、図15(3g)に示すように、本体1を反時計回りに真地旋回させた後、図15(3h)に示すように左に旋回させて本体1の前端を右側の壁に当接させる。
【0053】
制御部は、図16に示す時点3gから時点3hに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力がLレベルに転じることで、本体1の左端が部屋の角の外側に位置することを認識し、また、時点3hで接触センサー16、17の両方の出力がHレベルとなることから、本体1の前端の中央から左端までの間に部屋の角が位置していることを認識する。
【0054】
この後、本体1を右側の壁に沿ってさらに移動させる動作は、図4(1c)から図5(1f)までの動作と同様である。
【0055】
以上のように、本体1が部屋の角に差し掛かった場合、角に面する2つの壁の両方の壁際に本体1の前端を当接させる処理を行うため、部屋の角の壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【0056】
吸込口体5の底面の左右端部に設けられた段差センサー21、21'は、本体1の移動中に廊下の縁などから落下することを防止するために備えたもので、段差を検知して制御部に情報を伝達する。制御部はこれを受けて本体1を旋回させて段差のない方向に移動させる。
【0057】
本体1の後方左右側面に設けられた近接センサー22、22'は、本体1が後退しているときに、本体1の後方の進路に障害物が存在することを検知するために備えたもので、本体1の後退動作中に障害物を検知して制御部に情報を伝達する。制御部はこれを受けて本体1の後退動作を停止し、進路を変更させる。
【0058】
また、本体1が前後動作を繰り返しながら壁沿いを横方向に移動する際に、前後動作の距離を十分確保できないほど、相対する2面の壁が近接する狭い被掃除領域に至った場合、近接センサー22、22'の検知により、本体1が狭い被掃除領域に位置していることを認識し、本体1の左右いずれかの端部を壁に沿わせて、移動する動作モードに移行する。
また、予め狭い被掃除領域であることを複数の距離計測センサーで認識した場合にも、本体1の左右いずれかの端部を壁に沿わせて、移動する動作モードで掃除を行う。
【0059】
なお、本体1内には蓄電池(図示せず)が設置されており、制御部や駆動部、送風ファン、センサー等を動作させる電力を供給する。また、本体1内部に蓄電池の充電回路(図示せず)を備え、外部電源から接続端子(図示せず)を介して、蓄電池に充電する。
【0060】
以上のように、本実施の形態における自走式掃除機は、本体1の前端に回転ブラシ7を備え、毛ブラシ8が吸込口6の前方に突出するように吸込口体5に設置されているため、壁際まで毛ブラシ8が到達して塵埃を掻き上げる。
したがって、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面の壁際でも塵埃を捕集することができる。
【0061】
また、本体1の前端を壁際に当接させて、壁沿いに移動させるため、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。また、部屋の隅や角においても、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 本体、2 駆動輪、2' 駆動輪、3 モーター、4 従動輪、5 吸込口体、6 吸込口、7 回転ブラシ、8 毛ブラシ、9 塵埃受け部、10 風路、11 集塵部、12 送風ファン、13 ダクト、14 フィルター、15 排気口、16 接触センサー、17 接触センサー、18 第1の距離計測センサー、19 第2の距離計測センサー、20 第3の距離計測センサー、21 段差センサー、21' 段差センサー、22 近接センサー、22' 近接センサー、O 旋回中心、D1 駆動輪2、2'の円軌跡、A 旋回中心Oから本体1の最遠端までの距離、D2 本体1の外接円、S1 距離計測領域、S2 距離計測領域、S3 距離計測領域、t 停止期間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動手段を備えた自走式掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自走式掃除機は、自走式掃除機本体と壁の距離を計測する手段を備え、壁際を掃除する際に、本体の側面を壁に対向させた状態で、壁に沿って移動していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の他の自走式掃除機は、自走式掃除機本体と壁の距離を計測する手段を備えるとともに、本体端部に略水平回転する補助ブラシを備え、前記補助ブラシを壁に当接させながら移動していた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の他の自走式掃除機は、自走式掃除機本体前端の左右に接触センサーを備え、左右一方の接触センサーが壁との接触を検知した場合に、他方の接触センサーが壁との接触を検知するまで、本体が廻り込むように移動していた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−46246号公報
【特許文献2】特公平7−32752号公報
【特許文献3】特許第2744633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す自走式掃除機は、自走式掃除機本体が壁に接触しない範囲で近接し、本体の側面を壁に対向させた状態で、壁に沿って移動し、自走式掃除機本体下部に設けられた塵埃吸引口から塵埃を吸引していた。
しかしながら、前記塵埃吸引口が壁から離れているため、塵埃を吸引できない領域が生じてしまうという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に示す自走式掃除機は、壁際の塵埃を補助ブラシにより自走式掃除機本体下部に設けられた塵埃吸引口に向けて掻き出し、塵埃吸引口から吸引していた。
しかしながら、略水平回転する補助ブラシは、塵埃を容易に移動することができるフローリングなどの床面においては、塵埃の掻き出し効果が得られるが、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面においては、塵埃を十分に掻き出して吸引することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、特許文献3に示す自走式掃除機は、自走式掃除機本体左右の一方が壁と接触した後に、他方が壁に接触するまで自走式掃除機本体が廻り込むように移動するため、集塵部を自走式掃除機本体前面に設けた場合、壁際の塵埃を吸塵することができる。
しかしながら、壁際の塵埃を吸塵する領域が、自走式掃除機本体が壁に接触した部分に限られるため、部屋の壁際全体を効率よく掃除することができないという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を提供する。
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する為には、駆動輪を備え、この駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、本体に設けられた壁面に対する本体の位置を検知する為の検知手段とを備えた自走式掃除機において、掃除動作中に、本体の前端が壁面に近接した場合、本体の前端が壁面に近接した状態で、本体を同じ位置に所定時間の間留めるように自走式掃除機を構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面を有する部屋の壁際全体を、効率よく掃除することが可能な自走式掃除機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す平面図、(b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す底面図。
【図2】(a)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す側面断面図、(b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の壁際における回転ブラシの動作を示す説明図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の距離検出センサーの距離計測領域、および本体1の旋回時の本体1の最外周と駆動輪2、2'の軌跡を示す説明図。
【図4】(1a)〜(1c)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの動作を示す平面図。
【図5】(1d)〜(1f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの動作を示す平面図。
【図6】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が壁際を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【図7】(2a)〜(2b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図8】(2c)〜(2d)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図9】(2e)〜(2f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図10】(2g)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図。
【図11】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の隅を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【図12】(3a)〜(3b)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図13】(3c)〜(3d)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図14】(3e)〜(3f)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図15】(3g)〜(3h)本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの動作を示す平面図。
【図16】本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機が部屋の角を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1に係る自走式掃除機の構成を示す平面図、図1(b)は底面図、図2(a)は側面断面図、図2(b)は壁際における回転ブラシの動作を示す説明図である。
【0015】
図において、本実施の形態における自走式掃除機は、前方が矩形で後方が円形を成す本体1の内部に、本体1を移動させる移動手段である一対の駆動輪2、2'を備える。一対の駆動輪2、2'は本体1の前後方向の略中央に配置され、本体1の底面より突出して被清掃面である床面に接地し、本体1を支持する。
駆動輪2、2'はそれぞれ独立のモーター3、3'により駆動され、本体1に内蔵された制御部(図示せず)の制御信号に従って回転、停止を行う。従動輪4は本体1の移動および、方向転換に対応して360度方向に自在に向きを変えながら本体1の後方底面を支持する。
尚、制御部は、操作部(図示せず)への入力操作や後述する各種検知手段からの入力に基づき、所定のプログラムで本体1に設けられている各種電気部品の制御を行う。
【0016】
本体1の前方には、吸込口体5が前方を上下に回動可能な状態に設置される。吸込口体5は底面から前方下部にかけて塵埃を吸い込む開口である塵埃吸込口6(以下、吸込口6)が設けられ、吸込口6の内部に回転ブラシ7を備える。
回転ブラシ7は軸の周囲に波状に複数列植毛された毛ブラシ8を備え、両端を軸支されて、駆動モーター(図示せず)により連結ベルト(図示せず)を介して回転駆動される。
また、回転ブラシ7の駆動モーターは、制御部からの制御信号に従って、回転・停止・回転数の変化が行われる。これにより、回転ブラシ7の回転数を変化させることが可能となっている。
【0017】
この回転ブラシ7は回転しながら毛ブラシ8が床面に接触し、床面の塵埃を前方から後方に向けて掻き上げる。回転ブラシ7によって掻き上げられた塵埃は、吸込口6後方に設けられた塵埃受け部9によって本体1内部に連通する風路10に導かれる。
塵埃受け部9は端部がゴムなどの軟質材もしくは植毛によって形成され、床面の凸状部などに当接しても破損したり、床面側に傷をつけたりしないように構成される。
【0018】
本体1内部の風路10の後方には、集塵部11が本体から取り外し可能な状態で設置される。また、集塵部11の後方には、負圧を発生する送風ファン12が設けられ、吸込口6、集塵部11に連通するダクト13を介して、空気を吸引する。
そして、吸引された空気と共に床面から掻き上げられた塵埃は、吸込口6を介して集塵部11に入り、集塵部11とダクト13の接続部に設けられたフィルター14によって、塵埃が取り除かれて清浄空気のみが送風ファン12によって吸引され、排気口15より排出される。
尚、送風ファン12は、制御部からの制御信号に従って、回転・停止・回転数の変化が行われることで風量を調整し、吸込口6における吸引力の調整が行われる。
【0019】
回転ブラシ7は、毛ブラシ8が吸込口6の前方に突出するように吸込口体5に設置されており、吸込口体5の前端が壁に当接すると、図2(b)に示すように、壁際まで毛ブラシ8が到達して塵埃を掻き上げる。
したがって、壁に吸込口体5を押し当てるように本体1を移動させると、壁際の塵埃を捕集することができる。
【0020】
吸込口体5の前端には壁面と接触したことを検知して、制御部(図示せず)に信号を伝達する左右一対の接触センサー16、17を備える。
また、吸込口体5の上部には、超音波の送受信による距離計測を行う第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19、第3の距離計測センサー20が設けられている。
【0021】
第1の距離計測センサー18は本体1の左側から前方に亘る領域を計測し、第2の距離計測センサー19は本体1の前方の領域を計測し、第3の距離計測センサー20は本体1の右側から前方に亘る領域を計測し、それぞれ、壁や障害物と本体1間の距離計測情報を制御部(図示せず)に伝達する。
このように制御部は、距離計測センサーや接触センサーからの情報に基づき、壁や障害物に対する本体の位置関係を認識する。つまり、距離計測センサーや接触センサーは、壁や障害物に対する本体の位置関係を検知する検知手段となっている。
【0022】
尚、本実施の形態において、第2の距離計測センサー19は、本体の左右の略中心に配置され、本体の前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の前方の領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第1の距離計測センサー18は、本体の左側に配置され、本体の左斜め前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の左側から前方に亘る領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第3の距離計測センサー20は、本体の右側に配置され、本体の右斜め前方に向けて超音波を送信することにより、上記のように本体の右側から前方に亘る領域に位置する壁や障害物と本体との距離を計測する。
また、第1の距離計測センサー18と第3の距離計測センサー20は、第2の距離計測センサー19を中心に、左右対称の位置となるように本体に設けられている。
【0023】
吸込口体5の底面の左右端部には、床面に向けて光を照射する発光部と、床面で反射する光の受光部を備え、受光部の検出する光の強度により段差の深さを検出する一対の段差センサー21、21'を備える。
また、本体1の後方左右側面には、後方側面に向けて光を照射する発光部と、近接する壁や障害物によって反射する光の受光部を備え、受光部の検出する光の強度により、壁や障害物と本体1との距離を検出する近接センサー22、22'を備える。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る自走式掃除機の第1〜第3の距離検出センサーの距離計測領域、および本体1の旋回時の本体1の最外周と駆動輪2、2'の軌跡を示す説明図である。図4(1a)〜(1c)及び図5(1d)〜(1f)は本体1が壁際を掃除するときの動作を示す平面図である。図6は本体1が壁際を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図である。
尚、図4及び図5に示す(1a)〜(1f)は、(1a)から(1f)に向かって、一連の動きを示している。また、図6の(1a)〜(1f)は、図4及び図5の(1a)〜(1f)の状態に対応している。
【0025】
図において、点Oは駆動輪2、2'の中間点であり、駆動輪2、2'を同一回転数でそれぞれ逆方向に駆動させる真地旋回を行った場合の本体1の旋回中心である。D1は本体1が真地旋回を行った場合の駆動輪2、2'の円軌跡である。Aは旋回中心Oから本体1の最遠端である前方側面角までの距離であり、D2は本体1が真地旋回した場合の本体1の端部の描く半径Aの外接円である。また、斜線部分は壁を表す。
【0026】
領域S1、領域S2、領域S3は、それぞれ第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19、第3の距離計測センサー20の前方約30cm、角度約50°の範囲の距離計測領域を示す。本体1が壁や障害物に近接して、壁や障害物がこれらの距離計測領域に差し掛かると、近接した距離計測センサーはそれぞれ距離計測情報を制御部(図示せず)に伝達する。
【0027】
次に、図4〜図6を参照して、本体1が壁際を掃除する場合の清掃面上の動作について説明する。
例えば、図4(1a)に示すように、本体1が左側斜め方向から壁に近接する場合、図6に示す時点1aに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が、30cm以上離間していることを示すLOWレベル(以下、Lレベル)から近接を示すHIGHレベル(以下、Hレベル)に向けて徐々に増加し、また、これに遅れて第2の距離計測センサー19の出力が増加を始める。
【0028】
この間、制御部は第3の距離計測センサー20の出力が、Lレベルより増加しないことから、領域S1が領域S2よりも壁に近接し、領域S3には壁は存在しないことを認識する。
また、第1の距離計測センサー18の出力の増加開始時点と、第2の距離計測センサー19の出力の増加開始時点の時間差、および第1の距離計測センサー18の出力の増加速度と、第2の距離計測センサー19の出力の増加速度の差、を利用して、本体1の壁への近接角度を算出することができる。
【0029】
制御部は、壁に最も近接している第1の距離計測センサー18の出力を監視し、図3(a)に示すように、本体1の外接円D2が壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止する。
次に、図4(1b)に示すように、左の駆動輪2を後方に、右の駆動輪2'を前方に同一回転数で回転させて、本体1を、旋回中心Oを中心に反時計回りに真地旋回させる。ここで、図4(1b)に示す本体1の形状の破線は、本体1の前の状態を示すものであり、以降の図においても同様に記載するものである。
【0030】
本体1が真地旋回すると、本体1の左前角部が壁に対して最接近した後、離間に転じる。制御部は図8に示すように時点aから時点bに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が極大となるのを監視することで、本体1と壁の位置関係を認識することができる。そして、第2の距離計測センサー19の出力が所定値以上となった時点bにおいて、制御部は駆動輪2、2'を停止し、本体1の真地旋回を停止する。
【0031】
次に、図4(1c)に示すように、制御部は、本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
つまり、図4(1b)に示す本体1の位置から左の駆動輪2を停止したままとするか、もしくは前方に微小に回転させながら、右の駆動輪2'を前方に回転させることにより、本体1の前端を壁に当接させる。
【0032】
本体1の前端の全面が壁に当接すると、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知してHレベルの信号を制御部へ出力する。
つまり、左右の接触センサー17,18の両方が壁面に接触し、Hレベルの出力を制御部が検知することで、本体1の前端の全面が壁に当接した状態を制御部が認識する。尚、左右の接触センサーのいずれかが壁面と接触して制御部へと出力される信号は、Hレベルとならないため、制御部は、本体1の前端の全面が壁に接していないと認識する。
【0033】
本体1は掃除動作中、送風ファン12のみか、又は、送風ファン12と回転ブラシ7を同時に駆動しており、本体1の移動する範囲の床面の塵埃を、吸引口6から吸引して集塵部11に捕集する。図4(1c)に示すように、吸込口体5の前端が壁際に近接(本体1の前端が壁に当接した状態を含む)すると、回転ブラシ7の毛ブラシ8が壁際まで到達して塵埃を掻き出す。
【0034】
このとき、図6に示すように、時点1cにおいて所定の時間の間本体1の位置を移動させない、つまり、同じ位置に留まる停止期間tを設けることにより、壁際での塵埃の捕集効果を向上させることができる。
この停止期間tの間は、駆動輪を停止させて本体1の清掃面上の動きを停止させるか、本体1が壁に押し当るように駆動輪を動作させる、つまり、本体1が壁に向いて移動するように駆動輪を動作させるとよい。
本体1を壁に押し当てるようにすることで、より回転ブラシ7の毛ブラシ8が壁際まで到達しやすくすることができる。
【0035】
また、この停止期間tの間、壁の近傍まで本体1が移動してきた際の状態より、送風ファン12の風量を増加させたり、回転ブラシ7の回転数を増加させたりする。
これにより、塵埃が蓄積しやすい壁の近傍で送風ファンの風量や回転ブラシの回転数を大きくするので、塵埃が多く蓄積されやすい被清掃部における捕集効果をさらに向上させることができると共に、塵埃が多い位置でのみ電気部品の出力を大きくするので、省エネ効果を期待できる。
【0036】
ここで、本体1を壁際で留まらせる時間である停止期間tは、壁際の塵埃を捕集可能な時間に設定されており、約1〜3秒である。
また、この停止時間tは、被清掃部などの状況に応じて可変にしてもよい。例えば、本体1が留まった位置の塵埃を所定の量以下まで取り除いた後、本体1が動くように制御する。この場合、本体1の風路10に、塵埃検知センサーを設け、このセンサーが塵埃の通過を検知しなくなる、又は、検知量が所定のレベル以下となったとき、制御部は本体1が留まった位置の塵埃を取り除いたと判断する。
尚、塵埃検知センサーの例として、対向して配置された発光部とこの発行部からの光を受信する受光部からなり、発行部と受光部の光軸間を塵埃が通過して遮光する際の受光部の光量変化により、制御部が塵埃通過の有無を検知するものなどある。
【0037】
次に制御部は、図4(1c)に示すように、本体1の前端の当接する壁際の掃除を行った後、その右側の壁際、つまり当接した壁面の面方向右側の壁面と対面する位置に、本体1を移動させる。まず、図5(1d)に示すように、本体1を後方右側に旋回させながら後退させ、さらに後方左側に旋回させる。
そして、図6に示すように、本体1が壁から所定距離後退した時点1dで駆動輪2、2'を停止する。この間、制御部は右側と左側の旋回量を同じくすることにより、本体1前方が壁に平行に相対するようにする。
このとき、制御部は本体1を図4(1c)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離とする。これにより、吸込口6が満遍なく被清掃面上を通過するので、塵埃の取り残しを少なくすることができる。
【0038】
次に、制御部は図5(1e)に示すように、本体1を前方右側に旋回させながら前進させ、さらに図5(1f)に示すように、本体1を前方左側に旋回させながら前進させる。
制御部は、図6に示す時点1dから時点1eに至る間、第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19を監視し、本体1を前方左側への旋回に転じるタイミングを決定する。
【0039】
そして、時点1eで前方左側への旋回を始めた後は、再び本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
そして、図5(1f)に示すように、吸込口体5の前端を壁際に当接させる。このとき制御部は、本体1を図5(1d)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離となるように動作させる。
つまり、図4(1c)に示す本体1の位置から、図5(1f)に示す本体1の位置までの、本体1の壁に沿った移動量は、吸込口6の横幅に等しいか、少し短い距離となる。
【0040】
上記図4(1c)から図5(1d)までの動作を壁に沿って繰り返すことにより、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。また、吸込口6が壁際の同じ箇所を通過することがないため、壁際を効率よく掃除することができる。
【0041】
次に、本体1が壁沿いを移動中に部屋の隅に差し掛かった場合の動作について説明する。図7〜図10に示す(2a)〜(2g)は本体1が部屋の隅を掃除するときの動作を示す平面図、図11は本体1が部屋の隅を掃除するときの距離検出センサーと接触センサーの出力の遷移を示す説明図である。また、斜線部分は壁を表す。
尚、図7〜図10に示す(2a)〜(2g)は、(2a)から(2g)に向かって、一連の動きを示している。また、図11の(2a)〜(2g)は、図7〜図10の(2a)〜(2g)の状態に対応している。
【0042】
図7(2a)は図5(1d)の状態と同様に、本体1が壁際を掃除しながら壁沿いを図面右方向に移動してきた状態であり、本体1は正面の壁際を掃除した後、後方右側に旋回しながら後退し、さらに本体1前方が正面の壁に平行に相対するように後方左側に旋回して停止した状態である。
このとき、図11に示すように、時点2aにおける第1の距離計測センサー18、第2の距離計測センサー19の出力はLレベルに減少するが、第2の距離計測センサー20の出力はLレベルとならないため、制御部は図4(1a)に示すように、本体1の右側に壁が存在し、正面の壁とで作られる隅部が存在することを認識する。
【0043】
制御部は、本体1の右側が部屋の隅に差し掛かったことを認識すると、右側の壁に対応した処理モードを実行する。図7(2b)に示すように、本体1を右側の壁から所定距離残して右側に向ける。
次に、図6(2c)に示すように、本体1の右前角部が右側の壁に接触しないように近接させながら、本体1の前端が正面の壁に当接するまで前進させる。本体1の前端の全面が正面の壁に当接すると、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知する。
【0044】
制御部は、図11の時点2cから本体1の位置を移動させない停止期間tを設けた後、図8(2d)に示すように、右側の壁に沿って本体1を後退させる。そして、図9(2e)に示すように、本体1の右端が前壁に沿って横向きになるまで左側前方に旋回させる。そして、図9(2f)に示すように、反時計回りに180°真地旋回させた後、図10(2g)に示すように、右側に直進させて、本体1の前端が右側の壁に当接するまで前進させる。
【0045】
この後、本体1を右側の壁に沿ってさらに移動させる動作は、図4(1c)から図5(1f)までの動作と同様である。
【0046】
以上のように、本体1が部屋の隅に差し掛かった場合、隅に面する2つの壁の両方の壁際に本体1の前端を当接させる処理を行うため、部屋の隅の壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【0047】
次に、図12〜図16を参照して、本体1が部屋の角を掃除する場合の動作について説明する。尚、図12〜図15に示す(3a)〜(3h)は、本体1の一連の動きを示す。また、図16に示す(3a)〜(3h)は、図12〜図15に示す(3a)〜(3h)の状態にそれぞれ対応する。また、斜線部分は壁を表す。
例えば、図12(3a)に示すように、本体1が左側斜め方向から部屋の角付近の壁に近接する場合、図16に示す時点3aに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が、30cm以上離間していることを示すLレベルから近接を示すHレベルに向けて徐々に増加する。
このとき、第2の距離計測センサー19の出力がLレベルのままであることから、制御部は壁への近接角度が小さいか、部屋の角が存在しているかのどちらかであることを認識する。
【0048】
制御部は第1の距離計測センサー18の出力を監視し、図12(3a)に示すように、本体1の外接円D2が壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止する。
次に、図12(3b)に示すように、左の駆動輪2を後方に、右の駆動輪2'を前方に同一回転数で回転させて、本体1を反時計回りに真地旋回させる。本体1が真地旋回すると、本体1の左前角部が壁に対して最接近した後、離間に転じる。制御部は図16に示すように時点3aから時点3bに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力が極大となるのを監視することで、本体1と壁の位置関係を認識することができる。
そして、第2の距離計測センサー19の出力が所定値以上となった時点3bにおいて、制御部は駆動輪2、2'を停止し、本体1の真地旋回を停止する。
【0049】
次に、図13(3c)に示すように、制御部は、本体1の前端の全面が同時に壁に当接するよう、第1の距離計測センサー18の出力と第2の距離計測センサー19の出力を監視しながら、駆動輪2、2'の回転を制御する。
つまり、左の駆動輪2を停止したままとするか、もしくは、前方に微小に回転させながら、右の駆動輪2'を前方に回転させることにより、本体1の前端を壁に当接させる。このとき、吸込口体5の前端に設けられた左右の接触センサー17、18の両方が接触を検知して、図16に示すように時点3cにおいてHレベルを出力するが、第3の距離計測センサー20の出力はLレベルのままである。
制御部はこの状態から、本体1の前端の中央から右端までの間に部屋の角が位置していることを認識する。
【0050】
制御部は、本体1の右側が部屋の角に差し掛かったことを認識すると、停止期間tの後に部屋の角に面する2つの壁に対応した処理モードを実行する。図13(3d)に示すように、本体1を後方右側に旋回させながら後退させ、さらに後方左側に旋回させる。そして、図16に示すように、本体1が壁から所定距離の位置となった時点3dで駆動輪2、2'を停止する。
この間、制御部は右側と左側の旋回量を同じくすることにより、本体1前方が正面の壁に平行に相対するようにする。このとき、制御部は本体1を図13(3c)の位置からの右方向への移動量を吸込口6の横幅の1/2に等しいか、少し短い距離とする。
【0051】
次に、制御部は、本体1を図13(3d)の状態から図14(3e)の状態まで動作させる間、第1の距離計測センサー18の出力を監視しながら、本体1を時計回りに真地旋回させる。つまり、図16に示す時点3dから真地旋回を開始して、第1の距離計測センサー18の出力が増加して極大となった後、Lレベルとなる時点3eで、真地旋回を停止させる。この制御により、本体1の進行方向を部屋の角に寄り過ぎず、離れすぎない適切な方向とすることができる。
【0052】
次に、制御部は、図14(3f)に示すように、部屋の角を廻り込むのに適した所定半径で本体1を左前方に旋回させる。そして、本体1が、正面の壁に対して直角に対する右側の壁に近接し、本体1の外接円D2が右側の壁に差し掛かかる直前の位置で駆動輪2、2'を停止させる。そして、図15(3g)に示すように、本体1を反時計回りに真地旋回させた後、図15(3h)に示すように左に旋回させて本体1の前端を右側の壁に当接させる。
【0053】
制御部は、図16に示す時点3gから時点3hに至る間に、第1の距離計測センサー18の出力がLレベルに転じることで、本体1の左端が部屋の角の外側に位置することを認識し、また、時点3hで接触センサー16、17の両方の出力がHレベルとなることから、本体1の前端の中央から左端までの間に部屋の角が位置していることを認識する。
【0054】
この後、本体1を右側の壁に沿ってさらに移動させる動作は、図4(1c)から図5(1f)までの動作と同様である。
【0055】
以上のように、本体1が部屋の角に差し掛かった場合、角に面する2つの壁の両方の壁際に本体1の前端を当接させる処理を行うため、部屋の角の壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【0056】
吸込口体5の底面の左右端部に設けられた段差センサー21、21'は、本体1の移動中に廊下の縁などから落下することを防止するために備えたもので、段差を検知して制御部に情報を伝達する。制御部はこれを受けて本体1を旋回させて段差のない方向に移動させる。
【0057】
本体1の後方左右側面に設けられた近接センサー22、22'は、本体1が後退しているときに、本体1の後方の進路に障害物が存在することを検知するために備えたもので、本体1の後退動作中に障害物を検知して制御部に情報を伝達する。制御部はこれを受けて本体1の後退動作を停止し、進路を変更させる。
【0058】
また、本体1が前後動作を繰り返しながら壁沿いを横方向に移動する際に、前後動作の距離を十分確保できないほど、相対する2面の壁が近接する狭い被掃除領域に至った場合、近接センサー22、22'の検知により、本体1が狭い被掃除領域に位置していることを認識し、本体1の左右いずれかの端部を壁に沿わせて、移動する動作モードに移行する。
また、予め狭い被掃除領域であることを複数の距離計測センサーで認識した場合にも、本体1の左右いずれかの端部を壁に沿わせて、移動する動作モードで掃除を行う。
【0059】
なお、本体1内には蓄電池(図示せず)が設置されており、制御部や駆動部、送風ファン、センサー等を動作させる電力を供給する。また、本体1内部に蓄電池の充電回路(図示せず)を備え、外部電源から接続端子(図示せず)を介して、蓄電池に充電する。
【0060】
以上のように、本実施の形態における自走式掃除機は、本体1の前端に回転ブラシ7を備え、毛ブラシ8が吸込口6の前方に突出するように吸込口体5に設置されているため、壁際まで毛ブラシ8が到達して塵埃を掻き上げる。
したがって、絨毯などの塵埃を容易に移動することができない床面の壁際でも塵埃を捕集することができる。
【0061】
また、本体1の前端を壁際に当接させて、壁沿いに移動させるため、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。また、部屋の隅や角においても、壁際の塵埃を取り残しなく捕集することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 本体、2 駆動輪、2' 駆動輪、3 モーター、4 従動輪、5 吸込口体、6 吸込口、7 回転ブラシ、8 毛ブラシ、9 塵埃受け部、10 風路、11 集塵部、12 送風ファン、13 ダクト、14 フィルター、15 排気口、16 接触センサー、17 接触センサー、18 第1の距離計測センサー、19 第2の距離計測センサー、20 第3の距離計測センサー、21 段差センサー、21' 段差センサー、22 近接センサー、22' 近接センサー、O 旋回中心、D1 駆動輪2、2'の円軌跡、A 旋回中心Oから本体1の最遠端までの距離、D2 本体1の外接円、S1 距離計測領域、S2 距離計測領域、S3 距離計測領域、t 停止期間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を備え、該駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、
前記本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、
前記本体に設けられた壁面に対する該本体の位置を検知する為の検知手段と、
を備えた自走式掃除機において、
掃除動作中に、前記本体の前端が壁面に近接した場合、前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体を同じ位置に所定時間の間留めることを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
前記本体を同じ位置に所定時間の間留める際に、前記本体の前端を壁面に押し当てることを特徴とする請求項1に記載の自走式掃除機。
【請求項3】
前記塵埃吸引口の内部には、回転ブラシが回転可能に軸支され、
前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体が同じ位置に所定時間の間留まっている状態において、前記塵埃吸込口からの吸引風量を増加させるか、前記回転ブラシの回転数を増加させるか、もしくはその両方を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の自走式掃除機。
【請求項4】
前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体を同じ位置に所定時間の間留まる動作を、壁面の面方向に所定距離移動して繰り返すことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の自走式掃除機。
【請求項5】
前記所定の移動距離は、前記塵埃吸込口の幅を超えない大きさであることを特徴とする請求項4に記載の自走式掃除機。
【請求項6】
前記検知手段は、前記本体の前端に設けられた接触センサーを含み、該接触センサーが壁面に接触したこと検知して前記本体の前端が壁面に近接したことを検知することを特徴とする請求項1乃至5に記載の自走式掃除機。
【請求項7】
前記検出手段は、3個以上の距離検出センサーを含み、
該距離検出センサーのそれぞれの検出値を比較することにより、壁により構成される被掃除領域の隅又は角を検出し、隅に対応した隅移動制御、又は、角に対応した角移動制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の自走式掃除機。
【請求項1】
駆動輪を備え、該駆動輪により被清掃面上を移動する本体と、
前記本体の前端下部に設けられた塵埃吸込口と、
前記本体に設けられた壁面に対する該本体の位置を検知する為の検知手段と、
を備えた自走式掃除機において、
掃除動作中に、前記本体の前端が壁面に近接した場合、前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体を同じ位置に所定時間の間留めることを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
前記本体を同じ位置に所定時間の間留める際に、前記本体の前端を壁面に押し当てることを特徴とする請求項1に記載の自走式掃除機。
【請求項3】
前記塵埃吸引口の内部には、回転ブラシが回転可能に軸支され、
前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体が同じ位置に所定時間の間留まっている状態において、前記塵埃吸込口からの吸引風量を増加させるか、前記回転ブラシの回転数を増加させるか、もしくはその両方を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の自走式掃除機。
【請求項4】
前記本体の前端が壁面に近接した状態で、前記本体を同じ位置に所定時間の間留まる動作を、壁面の面方向に所定距離移動して繰り返すことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の自走式掃除機。
【請求項5】
前記所定の移動距離は、前記塵埃吸込口の幅を超えない大きさであることを特徴とする請求項4に記載の自走式掃除機。
【請求項6】
前記検知手段は、前記本体の前端に設けられた接触センサーを含み、該接触センサーが壁面に接触したこと検知して前記本体の前端が壁面に近接したことを検知することを特徴とする請求項1乃至5に記載の自走式掃除機。
【請求項7】
前記検出手段は、3個以上の距離検出センサーを含み、
該距離検出センサーのそれぞれの検出値を比較することにより、壁により構成される被掃除領域の隅又は角を検出し、隅に対応した隅移動制御、又は、角に対応した角移動制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の自走式掃除機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−106820(P2013−106820A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254637(P2011−254637)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
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