説明

自走式電線点検装置

【課題】下側電線点検部が下側電線の位置に追従して、下側電線を高精度に点検することができる自走式電線点検装置を提供する。
【解決手段】上下に配置された電線の上側電線A1に係合する鼓状の回転体12と、下側電線A2の状態を点検する下側電線点検部26とを備え、回転体12が上側電線A1に対して滑走しながら電線の状態を点検する自走式電線点検装置であって、下側電線点検部26の上下動を許容する上下動手段51と、下側電線点検部26の水平方向の往復動を許容する往復動手段52とからなり、下側電線点検部26が下側電線A2の位置に追従する追従機構50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配設された電線(例えば送電線)上を滑走しながら、電線の状態を点検する自走式の電線点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線などの架空配設された電線は、経年劣化により外部損傷や内部腐食が生じるため、定期的に点検する必要がある。従来、このような送電線の点検は、人が送電線に乗って行っていた。しかし、人による点検作業は、危険を伴う上、送電を一時ストップする必要があるため作業効率が悪い。このような事情から、送電線上を走行しながら送電線の状態を点検する自走式の電線点検装置が開発されている(例えば特許文献1)。すなわち、特許文献1の電線点検装置は、上側2本と下側2本とからなる4本の電線を並行に配設した架空送電線の夫々の電線を点検するものである。
【0003】
特許文献1の電線点検装置は、図6に示すように、電線幅方向に延びた2本のプーリ回転軸101と、各プーリ回転軸101に2個ずつ取り付けられた上側プーリ102と、2本のプーリ回転軸101を連結する連結アーム103とを有する。プーリ回転軸101に、上側電線の損傷等の異常を検出する上側の上側電線点検部104が取り付けられており、上側プーリ102は、上側の2本の電線A1に係合して、装置は自動的にバランスを調整しながら走行している。
【0004】
連結アーム103には、電線と直交する方向(鉛直方向)に基軸105が延びており、基軸105を中心に回転可能であり、基軸105周りに回転可能な下側電線アーム106と、この下側電線アーム106から下側電線アーム106と直交する方向に延びる2本のセンサアーム107a、107bと、このセンサアーム107a、107bの先端に設けられ、下側電線A2の状態を点検する下側電線点検部108a、108bとで構成されている。下側電線点検部108a、108bは、下側電線A2に係合する下側プーリ109a、109bとカメラ110a、110bとを備える。センサアーム107a、107bは板ばね等にて構成されている。
【0005】
下側電線点検部108a、108bを電線から退避させた状態を、図7(a)に示す。この状態から、下側電線を点検する際には、図7(b)に示すように、基軸105を回動中心として、下側電線アーム106が電線に直交するように回動させる。このとき、下側プーリ109a、109bは、下側電線A2の上方に配された状態となる。下側電線A2を点検する際には、下側電線上を下側プーリ109a、109bが走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−220346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような電線点検装置の走行においては、上側プーリ102が上側電線A1に係合することにより、上側電線A1のみで装置の重量を支えている。このため、上側電線A1には装置の重量がかかる一方で、下側電線A2には装置の重量がかからない。これにより、図8(a)に示すように、上側電線A1は、装置の重力によって下方側に下がる。なお、仮想線は上側プーリ102が係合していない状態の上側電線A1の位置を示している。
【0008】
一方、下側電線A2は下がることがなく、その位置は、ほぼ一定の位置に維持される。従って、図8(a)に示すように、上側プーリ102が上側電線A1に係合した状態における上側電線A1と下側電線A2との上下方向間隔X2は、上側プーリ102が上側電線A1に係合していない状態における上側電線A1と下側電線A2との上下方向間隔X1よりも狭くなる。また、図8(b)に示すように、上側プーリ102が上側電線A1に係合した状態における上側電線A1の位置は、上側プーリ102が上側電線A1に係合していない状態における上側電線A1の位置よりも、例えばYだけずれることがある。この上下方向間隔や、上側電線A1の水平方向の位置ずれは、電線の場所によってばらつきがあり、上側電線A1と下側電線A2との鉛直方向及び水平方向の相対的な位置関係は場所によって異なる。この場合、センサアーム107a、107bが板ばねにて構成されていると、センサアーム107a、107bが下側電線A2の位置に追従できず、鉛直方向や水平方向に無駄な荷重が付与され続けて変形することがあった。
【0009】
また、下側プーリ109a、109bが下側電線A2を走行する際、下側プーリ109a、109bには、電線撚り方向の摩擦が働き、下側プーリ109a、109bがねじられる方向に荷重が付与され続ける。これが原因で、センサアーム107a、107bが変形したり、脱輪したりするおそれもある。
【0010】
このようにセンサアームが107a、107bが変形すると、下側電線点検部108a、108bが適切な位置に配置されず、下側電線A2の画像が不鮮明になったり、下側電線A2の画像が得られない等して、下側電線A2の点検精度が悪くなるという問題があった。
【0011】
本発明の課題は、下側電線点検部が下側電線の位置に追従して、下側電線を高精度に点検することができる自走式電線点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の自走式電線点検装置は、上下に配置された電線の上側電線に係合する鼓状の回転体と、下側電線の状態を点検する下側電線点検部とを備え、前記回転体が上側電線に対して滑走しながら電線の状態を点検する自走式電線点検装置であって、前記下側電線点検部の上下動を許容する上下動手段と、前記下側電線点検部の水平方向の往復動を許容する往復動手段とからなり、前記下側電線点検部が下側電線の位置に追従する追従機構を設けたものである。
【0013】
本発明の自走式電線点検装置では、下側電線点検部の上下動、及び水平方向の往復動を許容する追従機構を設けているので、下側電線点検部は、あらゆる方向に柔軟に移動することができる。これにより、上側電線と下側電線との相対的な位置関係が、場所により異なっても、下側電線点検部は下側電線の位置に追従することができる。これにより、下線電線点検部は、下側電線において適切な位置に配置される。
【0014】
前記上下動手段は、基部を中心として先端部が揺動する揺動軸を備え、この揺動軸の先端側に前記下側電線点検部を設けることができる。
【0015】
前記往復動手段は、下側電線点検状態で電線が延びる方向と直交し、かつ水平方向に延びる点検部支持ロッドを備え、この点検部支持ロッドの軸線方向に沿って、前記下側電線点検部が往復動することができる。この場合、前記点検部支持ロッドの外周に、その軸方向に弾性力を有する弾性部材を設けることができる。これにより、弾性部材の圧縮力と引張力を作用させて、下側電線が延びる方向と直交する方向から下側電線点検部を下側電線に押さえつけることにより、下側電線点検部は下側電線に対してずれるのを防止できる。従って、下側電線点検部はガタツキ無く下側電線を移動することができ、追従性を一層向上させることができる。
【0016】
前記揺動軸は、前記基部と前記点検部支持ロッドの一端部とを連結する第1軸部と、前記上下動支点と前記点検部支持ロッドの他端部とを連結する第2軸部とを備えることができる。すなわち、第1軸部と第2軸部と点検部支持ロッドとで三角形状としている。これにより、第1軸部と第2軸部とで、鉛直方向に対する耐力が向上するとともに、点検部支持ロッドにて、水平方向及び回転力(回転体が走行する際に、電線撚り方向の摩擦によるねじり力)に対する耐力が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下線電線点検部は、下側電線において適切な位置に配置されるため、下側電線を高精度に点検することができる。
【0018】
第1軸部と第2軸部と点検部支持ロッドとで三角形状とすると、揺動軸の鉛直方向、水平方向及び周方向の強度を向上させることができて、揺動軸の変形を防止できる。これにより、下側電線の点検精度を向上させることができ、また、装置を長寿命なものとできる。しかも、揺動軸がコンパクトなものとなって、装置の小型化を図ることができるとともに、加工コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電線点検装置の電線走行状態の簡略斜視図である。
【図2a】下側点検ユニットの斜視図である(退避状態)。
【図2b】下側点検ユニットの斜視図である(点検状態)。
【図2c】図2a及び図2bの部分拡大図である。
【図3】下側点検ユニットを切断した状態を示す斜視図である。
【図4】下側点検ユニットの要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の電線点検装置の電線走行状態を示す下側点検ユニットの要部簡略平面図であり、(a)は点検部支持ロッドの中央に下側電線が位置した図であり、(b)は点検部支持ロッドの端部に下側電線が位置した図である。
【図6】従来の電線点検装置の電線走行状態の簡略斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は、下側点検ユニットの動作を説明するための簡略平面図である。
【図8】(a)及び(b)は、電線点検装置が走行する際の電線の位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態にかかる電線点検装置1を4本の電線を並行に配設した送電線A(4導体A)の上に配置した状態を示す。この電線点検装置1は、上側の2本の電線A1を点検しながら電線A1上を滑走する滑走部10と、下側の2本の電線A2を点検する下線点検ユニット20と、重心調整部30とを主に備える。尚、以下の説明において、電線点検装置の進行方向、すなわち電線Aの延びる方向を前後方向、鉛直方向を上下方向、これらの方向と直交する方向を幅方向と言う。また、図1において、電線点検装置1は、スペーサSに接近する向き(図中の右向き)に進行するものとする。
【0022】
滑走部10は、幅方向に延びた2本のプーリ回転軸11と、各プーリ回転軸11に2個ずつ取り付けられた上側回転体(上側プーリ)12と、2本のプーリ回転軸11を連結する連結アーム14とを有する。プーリ12はプーリ回転軸11に回転自在に取り付けられ、プーリ回転軸11上で2本の電線A1間の幅と同じ分だけ幅方向に離隔して配される。各プーリ回転軸11は、連結軸13を介して連結アーム14の両端に取り付けられる。連結軸13にはモータ(図示省略)が内蔵され、このモータを回転駆動することで、連結軸13を中心に各プーリ回転軸11を回転させることができる。
【0023】
滑走部10には、上側の電線A1の状態を点検するための上側電線点検部15が設けられる。図示例では、後方のプーリ回転軸11の各プーリ12の幅方向両側から前方に延びた支持具16を取り付け、この支持具16を介してプーリ回転軸11に上側電線点検部15が取り付けられる。上側電線点検部15は、例えばカメラで電線の状態を点検するものであり、その撮影データはバッテリーボックス34に設けられた記録部に記録される。支持具16はプーリ回転軸11の外周面に回転可能に取り付けられ、プーリ回転軸11を回転させることにより上側電線点検部15を上下に移動させることができる。図示例は、上側電線点検部15により電線A1を点検可能な状態を示しており、この状態から上側電線点検部15を上方へ移動させれば、上側電線点検部15とスペーサ等の障害物との接触を回避することができる。
【0024】
図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すように、基軸21の上端部には連結部材20aが設けられ、この連結部材20aを介して下側点検ユニット20が連結アーム14に取り付けられる。下線点検ユニット20は、図1に示すように、電線と直交する方向(図示例では鉛直方向)に延びた基軸21と、基軸21を中心に(すなわち図2(a)等の垂直回転軸M1を中心に)回転可能であり、上下に並べて配された駆動回転輪22及び従動回転輪23と、従動回転輪23から水平方向に延び、従動回転輪23と共に基軸21周りに回転可能な回転アーム24と、この回転アーム24に設けられる2つの追従機構50とを備える。追従機構50には、下側電線A2の状態を点検する下側電線点検部26が設けられている。
【0025】
駆動回転輪22は、基軸21の内部に内蔵されたモータ(図示省略)で回転駆動され、従動回転輪23は、基軸21に自由回転可能に取り付けられる。図2(a)〜図2(c)に示すように、駆動回転輪22にはカム27が設けられ、回転アーム24にはカム27と係合するローラフォロア28が設けられる。カム27には、図2(a)に示すように、ローラフォロア28が嵌まり込む凹部27aと、凹部27aの左側(駆動回転輪22の逆回転方向側)に設けられた肩面27bとが設けられる。ローラフォロア28は、図2(a)に示すように、回転アーム24の基端部(基軸21側端部)の外周面に、回転アーム24の外径方向に突出して回転自在に設けられている。ローラフォロア28は、図2(c)に示すようにフォロア支持部28bを介して回転アーム24周りに回転可能に取り付けられる。フォロア支持部28bは、回転アーム24の外周に設けられた環状の部材であり、回転アーム24と共に基軸21周りに回転可能であると共に、回転アーム24周りに回転可能に設けられる。フォロア支持部28bは、図2(c)及び図3に示すように回転アーム24の外周に回転自在に設けられた円筒部材25aと連結されている。円筒部材25aには、図3に示すように付勢手段としてコイルばねからなる弾性部材60が設けられ、この弾性部材60の弾性力により、カムフォロア支持部28bを回転アーム24周りの逆方向(図2(a)(b)の反時計回り方向)に常時一定の力が付勢される。
【0026】
基軸21には、図2(c)に示すように、従動回転輪23の基軸21周りの回転を所定位置で規制するためのストッパ21aが設けられる。本実施形態では、従動回転輪23から下方に突出して設けられた第1ピン23aと、基軸21の外周面から突出した第1ストッパ21aとが設けられる。第1ピン23aと第1ストッパ21aとが当接し、基軸21周りで係合することにより、従動回転輪23及びこれに取付けられた部材(回転アーム24、ローラフォロア28、フォロア支持部28b)の基軸21周りの回転が規制される。また、フォロア支持部28bには、フォロア支持部28bの回転アーム24周りの回転を所定位置で規制するための第2ストッパ28cが設けられている。
【0027】
図4に示すように、追従手段50は、下側電線点検部26の上下動を許容する上下動手段51と、下側電線点検部26の水平方向の往復動を許容する往復動手段52とからなる。
【0028】
上下動手段51は、回転アーム24に回動自在に外嵌されるブロック体53と、このブロック体53に設けられる揺動軸25とからなる。夫々の追従手段50を構成する2つのブロック体53同士は、回転アーム24の外周に設けられた円筒部材25aを介して連結されている。揺動軸25は、アルミパイプにて構成される2本の軸部材(第1軸部54及び第2軸部55)から構成されており、第1軸部54と第2軸部55との一端部が夫々ブロック体53に連結されているとともに、第1軸部54と第2軸部55との他端部が、ブロック体53から離間する程相互に離間するようにして、第1軸部54と第2軸部55とがハの字状となるように配置されている。
【0029】
揺動軸25は、ブロック体53を基部として回転アーム24の外周に自由回転する。すなわち、揺動軸25の基端部(回転アーム24側端部)側にブロック体53が設けられ、このブロック体53で揺動軸25を下方から支持することで、揺動軸25の自重による回転を規制している。すなわち、ブロック体53を回転アーム24周りに回転させることにより、揺動軸25は図4の矢印Aに示すように、回転アーム24周りに回転することができる。図2(a)に示す状態では、カム27とローラフォロア28との係合により、フォロア支持部28bと連結されたブロック体53が静止され、揺動軸25の先端が上端位置(本実施形態では水平位置)で保持される。
【0030】
往復動手段52は、図4及び図5に示すように、下側電線点検状態で下側電線A2が延びる方向と直交し、かつ水平方向に延びる点検部支持ロッド56と、この点検部支持ロッド56の外周に巻回される弾性部材(本実施形態ではコイルばね)57と、点検部支持ロッド56及びコイルばね57に外嵌されるスライド部材58を備える。点検部支持ロッド56は、その一端部が第1軸部54の揺動側先端部に連結されるとともに、その他端部が第2軸部55の揺動側先端部に連結される。そして、点検部支持ロッド56及びコイルばね57に、スライド部材58が外嵌されており、このスライド部材58に下側電線点検部26が固定されている。これにより、揺動軸25の先端側に下側電線点検部26が設けられることになり、スライド部材58と下側電線点検部26とは、図4の矢印Bに示すように、点検部支持ロッド56の軸線方向に沿って一体的に往復動することができる。
【0031】
下側電線点検部26は、スライド部材58に取り付けられる支持枠59と、この支持枠59に取り付けられる一対の下側プーリ61a、61bと、一対のカメラ62a、62bとから構成されている。すなわち、下側プーリ61a、61bは、下側電線点検状態において、電線A2が延びる方向に沿って、支持枠59に回転可能に取り付けられている。これにより、下側電線A2を点検する際には、下側プーリ61a、61bは、下側電線A2の前後に配設されるともに、下側電線A2の上方に係合される。カメラ62a、62bは、下側電線A2を点検する際には、下側電線A2を挟んだ状態で配設されるように、支持枠59に取り付けられている。カメラ62a、62bにて下側電線A2の状態を撮影すると、その撮影データはバッテリーボックス34に設けられた記録部に記録される。
【0032】
重心調整部30は基軸21の下端部に設けられ(図1参照)、第1アーム31、第2アーム32、連結軸33、及びバッテリーボックス34を有する。第1アーム31の一端は基軸21の下端に取り付けられ、第1アーム31の他端は第2アーム32の端部に連結軸33を介して取り付けられる。バッテリーボックス34は第2アーム32に取り付けられる。基軸21の内部には、第1アーム31を基軸21を中心に回転駆動するモータ(図示省略)が設けられ、連結軸33の内部には、第2アーム32を第1アーム31に対して連結軸33を中心に回転駆動するモータが設けられる。バッテリーボックス34には、各モータや点検部に電源を供給するバッテリーや、点検部により撮影された電線の画像や外周面の曲率のデータを記録する記録部が備えられる。
【0033】
次に、下側電線点検部26にて下側電線A2を点検する方法について説明する。最初、下側電線点検部26は下側電線A2から退避状態となっており、下側プーリ61a、61bは、下側電線A2に係合していない状態となっている(図7(a)の状態)。また、揺動軸25の先端は上方位置(本実施形態ではおよそ水平位置)に配されている(図2(a)参照)。このとき、回転アーム24のローラフォロア28は、駆動回転輪22のカム27の凹部27aに嵌まり込んでいる。この状態から駆動回転輪22を回転させると、フォロア支持部28bの回転アーム24周りの回転はバネ(付勢手段)60の弾性力により規制されているため、フォロア支持部28bが回転することなく(すなわち揺動軸25の先端を上方位置に保ったままで)、従動回転輪23、回転アーム24、揺動軸25、及び下側電線点検部26が一体に基軸21周りに回転する。
【0034】
下側電線点検部26が下側電線A2の上方に来るまで(図7(b)の状態)従動回転輪23が回転すると、図2(c)に示すように、従動回転輪23の第1ピン23aが基軸21の第1ストッパ21aに当接し、従動回転輪23及び回転アーム24の基軸21周りの回転が規制される。この状態で、さらに駆動回転輪22(カム27)を回転させると、カム27と第1ピン23a及び第1ストッパ21aとが協働して、バネ60の弾性力に抗ってフォロア支持部28b及びブロック体53が回転し、これにより揺動軸25が自重により、先端が下がる方向に回転する。ローラフォロア28の回転が進むと、図2(b)に示すように、ローラフォロア28がカム27の凹部27aから外れて、ローラフォロア28が肩面27bにより上方から押さえられた状態となる。こうしてフォロア支持部28bが回転アーム24周りに回転する。従って、追従機構50の上下動手段51の作用、すなわちブロック体53の回転により揺動軸25の先端が降下して、下側電線点検部26を下降させる。そして、下側電線点検部26の下側プーリ61が下側電線A2の上方に配されると、揺動軸25の下降が止まる。このようにして、上下動手段51は、下側電線点検部26を下側電線A2の上下方向に追従させることができる。
【0035】
それと同時に、図5(b)に示すように、追従機構50の往復動手段52の作用、すなわち、スライド体58が点検部支持ロッド56に巻回されたコイルばね57上を、軸方向に移動して水平方向位置を変位する。そして、下側プーリ61a、61bが下側電線A2の水平方向位置と合うまでスライド体58が往復動することにより、下側電線点検部26の水平方向位置を変位させる。このとき、図5(a)に示すように、スライド体58が点検部支持ロッド56の中央に位置するとき、コイルばね57は自由状態となっている。一方、図5(b)に示すように、スライド体58が点検部支持ロッド56の中央からずれると、スライド体58は、点検部支持ロッド56の中央に戻る方向の引張力が作用する。このようにして、下側電線A2が延びる方向と直交する方向(本実施形態では水平方向)にコイルばね57の圧縮力と引張力を作用させて、水平方向から下側電線点検部26を下側電線A2に押さえつけることにより、下側電線点検部26は下側電線A2に対して水平方向にずれるのを防止できる。従って、下側電線点検部26はガタツキ無く下側電線A2を移動することができ、追従性を一層向上させることができる。
【0036】
このように、下側電線点検部26の上下動、及び水平方向の往復動を許容する追従機構50を設けているので、下側電線点検部26は、あらゆる方向に柔軟に移動することができる。これにより、上側電線A1と下側電線A2との相対的な位置関係が、場所により異なっても、下側電線点検部26は下側電線A2の位置に追従することができる。これにより、下線電線点検部26は、下側電線A2において適切な位置に配置されるため、下側電線A2を高精度に点検することができる。
【0037】
しかも、第1軸部54と第2軸部55と点検部支持ロッド56とで三角形状としているため、第1軸部54と第2軸部55とで、鉛直方向に対する耐力が向上するとともに、点検部支持ロッド56にて、水平方向及び回転力(下側プーリ61a、61bが走行する際に、電線撚り方向の摩擦によるねじり力)に対する耐力が向上する。
【0038】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では4導体を点検する電線点検装置に本発明を適用する場合を示しているが、電線の本数は特に限定されず、上下に配設された送電線であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
12 上側プーリ
26 下側電線点検部
52 揺動軸
50 追従機構
51 上下動手段
52 往復動手段A 送電線
54 第1軸部
55 第2軸部
56 点検部支持ロッド
57 弾性部材
A 送電線
A1 上側電線
A2 下側電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された電線の上側電線に係合する鼓状の回転体と、
下側電線の状態を点検する下側電線点検部とを備え、前記回転体が上側電線に対して滑走しながら電線の状態を点検する自走式電線点検装置であって、
前記下側電線点検部の上下動を許容する上下動手段と、前記下側電線点検部の水平方向の往復動を許容する往復動手段とからなり、前記下側電線点検部が下側電線の位置に追従する追従機構を設けたことを特徴とする自走式電線点検装置。
【請求項2】
前記上下動手段は、基部を中心として先端部が揺動する揺動軸を備え、この揺動軸の先端側に前記下側電線点検部を設けたことを特徴とする請求項1の自走式電線点検装置。
【請求項3】
前記往復動手段は、下側電線点検状態で電線が延びる方向と直交し、かつ水平方向に延びる点検部支持ロッドを備え、この点検部支持ロッドの軸線方向に沿って、前記下側電線点検部が往復動することを特徴とする請求項1又は請求項2の自走式電線点検装置。
【請求項4】
前記点検部支持ロッドの外周に、その軸方向に弾性力を有する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項3の自走式電線点検装置。
【請求項5】
前記揺動軸は、前記基部と前記点検部支持ロッドの一端部とを連結する第1軸部と、前記上下動支点と前記点検部支持ロッドの他端部とを連結する第2軸部とを備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自走式電線点検装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−257371(P2012−257371A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128413(P2011−128413)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(505087230)株式会社ハイボット (6)