説明

自転車のクランクアーム・アセンブリ

【課題】自転車のクランクアームとアクスル部との結合領域が、形状による結合の製作精度にかかわらず、腐食から保護されるクランクアーム・アセンブリを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのアクスル部22、42と、少なくとも1つのアクスル部22、42に取り付けられるクランクアーム21、41とを有しており、クランクアーム21、41は結合座を有するとともに、アクスル部22、42が結合座に結合される結合部を有しており、結合座および結合部は、クランクアーム21、41からアクスル部22、42にトルクを伝達できることを保証する形状による結合が形作られている。クランクアーム21、41とアクスル部22、42との間に、接着材料が塗布されている。形状による結合は、クランクアーム21、41とアクスル部22、42とが一体に回転することを保証し、接着は、結合領域の腐食現象に対する封止を保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のクランクアーム・アセンブリに関し、すなわち自転車の変速機のボトムブラケット・アセンブリの構成部品からなるアセンブリであって、クランクアームとクランクアームが取り付けられる少なくとも1つの中央アクスル部とを含むアセンブリに関する。さらに、本発明は、そのようなアセンブリを組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車の変速機の中央アクスルおよびクランクアームに関して、「結合」とは、アクスルとクランクアームとの間の相互の機械的作用であって、これら2つの構成要素をボトムブラケット・アセンブリの軸のまわりで一体的に回転させ、クランクアームとアクスルとの間のトルク、すなわち力の伝達を可能にする機械的相互作用を意味する。一方で、同じ文脈において、「取り付け」とは、これら2つの構成部品をボトムブラケット・アセンブリの軸方向に一体に平行移動させ、クランクアームが滑り出て結合が絶たれてしまうのを防止する相互の機械的作用を意味する。
【0003】
以下で、「アクスル部」と称する場合には、アクスルの全体、および場合によってはアクスルにおいてクランクアームの結合および固定が行われる部分のみの両者を意味する。そのような部分は、その後に他のアクスル部に本発明に包含されない技法および方式によって組み合わせられ、全体としてのアクスルの構造的完全性が回復される。
【0004】
自転車の中央アクスルの端部とクランクアームとの間の結合は、典型的には、従来技術によれば、通常、上述の端部にも、自転車の2つのクランクアームをそれぞれ構成する細長い本体の端部に作られる適切なハウジング座にも形成された溝付きまたは多角形の輪郭によって達成される形状による結合である。さらに、固定ねじまたは他の類似の部材が、アクスルとクランクアームの取り付けを確実にして、クランクアームがアクスルから滑り出ることができないようにしている。
【0005】
その性質ゆえ、形状による結合およびねじによる取り付けは、クランクアームとアクスルとの間に小さな相対変位を許容する或る程度の寸法上の不正確さを有している。
【0006】
ボトムブラケット・アセンブリの全体としての重量を軽減するとともに、製造プロセスを簡単にするために、ねじを廃止して、押し込みによってクランクアームの滑りを防止することが提案されている。そのような手法の例が、特許文献1によって提示されており、そこでは、右側クランクアームが、溝による結合によってアクスルに結合されており、アクスルおよび右側クランクアームの結合外形は、滑りを防止する押し込み結合を形成する公差を有している(第33および34頁の段落33および34)。
【0007】
本発明の発明者は、特許文献1によって提示されている形式の押し込み結合においては、クランクアームがアクスルから滑り出るために要する力が一定の値を有さず、きわめて幅広い範囲でばらつきうることを発見した。挿入工程において、クランクアームは、きわめて短い部位においてしか案内されず、アクスル部と平行でない方向に進んで、結合を想定よりも正確でない変形を引き起こす可能性がある。滑りの力のばらつきは、この現象の目に見える影響である。
【0008】
本発明の発明者は、クランクアームとアクスルの材料同士の接触が、溝による結合の不正確さと組み合わさり、とくには結合の不正確さに由来する動作時の相対変位と組み合わ
さって、押し込み結合で、また取り付けねじによる従来の結合ではさらに、腐食現象が発生しやすい条件が生じることに気が付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2005/058682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な課題は、クランクアームとアクスルとの結合領域が、形状による結合の製作精度にかかわらず腐食から保護されるクランクアーム・アセンブリを製作することにある。
【0011】
また、本発明の発明者は、押し込み結合の場合、得られたクランクアーム・アセンブリが、所定の滑り力を保証できないということにより分解してしまう可能性があるということに気が付いた。
【0012】
したがって、本発明の主な第2の課題は、より小さな総重量、簡単な組み立てプロセス、および分解に対する適切な耐久力を兼ね備えるクランクアーム・アセンブリを製作することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、最も一般的に言えば、本発明は、その第1の態様において、請求項1に記載の自転車用クランクアーム・アセンブリに関し、その第2の態様において、請求項17に記載の組み立て方法に関する。好ましい特徴が、従属請求項に提示されている。
【0014】
さらに具体的には、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのアクスル部と、該少なくとも1つのアクスル部に取り付けられるクランクアームとを有しており、クランクアームが結合座を有するとともに、アクスル部が結合座に結合される結合部を有しており、結合座および結合部が、クランクアームからアクスル部へとトルクを伝達できるのを保証する形状による結合をなすように形作られている自転車のクランクアーム・アセンブリが、クランクアームとアクスル部との間に接着材料が塗布されることを特徴とする。
【0015】
接着材料は、好ましくは、結合領域の封止およびクランクアームとアクスル部との間の相対変位の防止という二重の効果を有している。これら効果の両方が、形状による結合の精度または採用される取り付けシステムの種類にかかわらず、腐食現象が始まる可能性を、無くすことはできないかもしれないが低減するうえで役に立つ。
【0016】
好ましくは、結合座は、軸方向にアクスル部を支持するための肩部を有しており、場合によっては、肩部が、軸方向で結合座を完全に閉じている。このような肩部は、クランクアームに対するアクスル部の軸方向の正確な位置決めを保証している。
【0017】
好ましくは、接着材料が、結合座と結合部との間に設けられて、さらに好ましくは、それが結合部を結合座に完全に封じている。このようにして、結合手段に対する塵埃や湿気などの外部因子からの完全に保護されることが保証され、クランクアームの材料とアクスル部の材料との間の接触領域において、腐食現象の発生が抑止される。
【0018】
好ましくは、クランクアーム・アセンブリは、結合座および結合部の少なくとも一方に形成された接着室を有しており、接着材料が接着室に設けられている。所定の量の接着材料を挿入できる特定の接着室があることによって、最も内側の結合領域へと進入しようとする外気要因に対抗する特定の障壁を、好ましい位置に配置することができる。またこれによって、接着条件、具体的には得られる接着力が、クランクアームが滑り出るのを防止するためにそれが重要となる実施の形態において、極めてうまく制御できるようになる。
【0019】
さらに好ましくは、接着材料は、接着室にも、結合座と結合部との間の残りの空間の少
なくとも一部分にも存在している。このやり方で、汚染要因または湿気が、最も内側の結合領域に閉じ込められたままになることが防止される。
【0020】
接着室は、さまざまな形状をとることができると同時に、ただ1つであっても、多数あってもよく、1つまたは複数の領域に集中していても、あるいはクランクアームとアクスル部との間で分配されていてもよい。接着室は、結合座に形成されたクランクアームの環状の溝、および/または結合部に形成されたアクスル部の環状の溝を含むことができる。さらに接着室は、結合部そのものの先細りの前方領域によって結合座と結合部との間に残される空き空間を含むことができる。そのような先細りの前方領域は、好ましくは、結合部の1/3以下の軸方向の広がりを有している。好ましくは、先細りの前方領域が、2〜5mmに等しい軸方向の広がりを有している
【0021】
好ましくは、環状の溝は、軸方向でボトムブラケット・アセンブリの中心に対して遠隔位置に配置される。有効接着度は実際この領域においてより大きく、それは自転車の使用時により大きな応力が加わり、したがって、対処がなされないならば取り付け壊れる局所的変形をより受けやすいからである。
【0022】
接着材料は、さまざまな種類の接着材料であってよい。好ましくは、接着材料が硬化性樹脂であり、さらに好ましくは、エポキシまたはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である。このやり方により、接着特性が未だ活性化されていないときの接着材料の分布、および最終的な接着力のいずれをもより容易に制御することができる。
【0023】
好ましい実施の形態においては、クランクアーム・アセンブリは、結合手段がクランクアームおよびアクスル部に係合したままであることを保証するための固定手段を有しており、固定手段が接着材料を含んでいる。
【0024】
このやり方で、形状による結合は、クランクアームとアクスル部とが一体に回転することを保証し、接着により、クランクアーム・アセンブリが分解しない必要な所定の最小限界力を確保する。このクランクアーム・アセンブリは、より小さな総重量、簡単な組み立てプロセス、および分解に対する適切な耐久力を兼ね備えている。さらには、アクスル部およびクランクアームは、特別な加工を必要とせず、組み立てプロセスが簡単であって費用対効果が高い。
【0025】
さらに固定手段は、好ましくは、アクスル部の結合部のクランクアームの結合座内へ機械的に押し込む押込力を有している。機械的な押し込みと接着材料との組み合わせにより、最良の取り付け状態が達成可能であり、すなわちクランクアームをアクスル部から分解するために必要な力を、極めて確実に決定することができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、より具体的にはクランクアームを自転車の変速機のボトムブラケット・アセンブリのアクスル部へと組み付けるための方法は、クランクアームからアクスル部へとトルクを伝達できることを保証するため、クランクアームとアクスル部との形状による結合を含み、またこの方法はクランクアームとアクスル部との間に接着材料が塗布されることを特徴とする。
【0027】
好ましくは、接着材料は、クランクアームとアクスル部の一方に、それらが係合される前に塗布され、その後にクランクアームおよびアクスル部が軸方向に押し合わされる。このやり方で、両者間の接着材料の良好な分布を、簡単なやり方で得ることができる。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照して行う本発明のいくつかの好ましい実施の形態についての以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のクランクアーム・アセンブリが組み込まれている自転車の変速機のボトムブラケット・アセンブリの軸方向の断面図である。
【図2】図1の左側クランクアーム・アセンブリの軸方向の断面図である。
【図3】図2のアセンブリの斜視図であり、部品が分離されて示されている。
【図4】図2の軸方向の断面図であり、部品が分離されて示されている。
【図5】図2のクランクアーム・アセンブリの詳細の軸方向の拡大断面図である。
【図6】図5に類似した断面図であるが、別の実施の形態を説明している。
【図7】図5に類似した断面図であるが、別の実施の形態を説明している。
【図8】図1のアセンブリの詳細の線VIII‐VIIIに沿った横断面図である。
【図9】図8に類似した断面図であるが、別の実施の形態を説明している。
【図10】図5に類似した断面図であるが、別の実施の形態を説明している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面においては、自転車の変速機のボトムブラケット・アセンブリが、全体として符号10で示されており、ボトムブラケット・アセンブリ10を支持する自転車のフレームボックス11のみが描かれている。
【0031】
とくに図1を参照すると、ボトムブラケット・アセンブリ10は、左側および右側の2つのクランクアーム・アセンブリ20および40を有しており、それぞれが、クランクアーム21および41ならびにアクスル部22および42をそれぞれ有している。2つのアクスル部22および42は、互いに実質的に同一であり、全体として符号12で示されているアクスル・アセンブリを使用時に形成するよう、前面の歯13と固定ナット14による結合によって一体に回転するが、前面の歯13と固定ナット14は、他に関係なく従来型のものであるため概略的にしか示されていない。他の実施の形態(図示されていない)においては、2つの異なるアクスル部を設けてもよく、さらに2つのアクスル部の一方を省略し、他方がアクスル全体を備えるようにもできることに留意されたい。
【0032】
右側クランクアーム・アセンブリ40は、広く受け入れられている慣習にしたがって、ここで示されていないクラウンと係合するように意図されたスポーク47を有している点で、左側クランクアーム・アセンブリ20と相違している。以下では、左側クランクアーム・アセンブリ20について説明するが、言うまでもなく、説明の内容は右側クランクアーム・アセンブリ40についても有効である。
【0033】
アクスル12は、フレームボックス11で、ボトムブラケット・アセンブリ10の主軸Xのまわりで、例えば転がり軸受15によって回転可能に支持されているが、転がり軸受15は、フレームボックス11から軸方向に突き出して固定されたアダプタ支持具16に取り付けられている。
【0034】
左側クランクアーム・アセンブリ20において、クランクアーム21とアクスル部22は、(図3に示されているように)クランクアーム21からアクスル部22へとトルクを伝達することができるようにする結合手段、ならびにその結合手段の分離を防止するための固定手段によって、互いに係合している。
【0035】
結合手段は、クランクアーム21に形成された結合座23、およびアクスル部22に形成された結合部24を有しており、結合座23および結合部24が、例えば溝付きの輪郭による形状による結合をなすように形作られている。そのような溝付きの輪郭は、図8に詳しく示されているように、例えば好ましくは、本件出願と同じ出願人の欧州特許出願第05425376号に記載されている種類の輪郭であり、結合座23の輪郭25と、それに一致するアクスル部24の輪郭26とが、連続した一致する波形に沿った形状を有している。図9に示されている別の実施の形態においては、同様の溝付きの輪郭が設けられているが、結合座23の溝付きの輪郭25’およびアクスル部24の溝付きの輪郭26’は、結合座23およびアクスル部24の両方で波形の頂点が水平にされ、2つの輪郭25’と26’の間に空白の空間33’が残されている点で、輪郭25および26と相違している。
【0036】
一致する輪郭25と26(または25’と26’)の公差は、クランクアーム21とアクスル部22との間に押し込み結合を形成するようにされている。
【0037】
図3および図5〜7から分かるように、結合座23は、クランクアーム21の本体において軸心Xに沿って軸心方向に延びており、ボトムブラケット・アセンブリ10の中心線Kと反対の方向を向いている端部に、肩部28を有している。肩部28は、軸心Xに向かって半径方向に単純に張り出すことができ、あるいは、(図示されていない他の実施の形
態においては)同じ軸心Xまで延びて結合座23を完全に閉じてもよい。結合部24は、母線が軸心Xに実質的に平行である本体部27と、溝付きの輪郭の頂点と溝の両方に先細りの前方領域29とを有している。前方領域29は、挿入案内部の機能を有しており、軸心Xの方向に長さL(図4に示されている)にわたって延び、クランクアーム21の結合座23とアクスル部22の結合部24との間に空き空間30を残している。長さLは、好ましくは、結合部24の全体の軸方向の広がりAの1/3以下であり、さらに好ましくは、広がりAの1/6〜1/3の間、すなわち絶対値では、2〜5mmである。
【0038】
さらに、クランク・アセンブリ20は、図5から分かるように、結合座23において肩部28に隣接した位置に形成された環状の溝31を有している。図6および7のそれぞれの実施の形態においては、溝31’が溝31に対向して結合部24に形成され、2つのさらなる溝31’’が肩部28および溝31から軸方向に離間して結合座23に形成されている。
【0039】
クランクアーム・アセンブリ20の組み立てにおいて、とりわけ図3および4を参照すると、最初にクランクアーム20の環状の溝31が、図面に符号50で総称的に示されている接着材料で満たされる。接着材料50は、硬化性樹脂であって、好ましくは熱硬化性であり、例えばエポキシ樹脂およびフェノール樹脂から選択されるが、前者が好ましい。第1の好ましい実施の形態によれば、塗布される接着材料50の量は、溝31の容量に正確に対応して、溝31内に1つの封止帯しか形成されないようになる。
【0040】
第2の好ましい実施の形態によれば、接着材料50は、溝31の容量を超える量で溝31内に配置される。
【0041】
次いで、アクスル部22の前部案内領域29が、クランクアーム21の結合座23へと挿入され、適切な挿入力を軸方向に加えつつ、アクスル部22がクランクアーム21を貫くように押し込まれる。
【0042】
アクスル部22の前部案内領域29が、クランクアーム21の結合座23で肩部28に当接するまで前進するようにされる。この工程において、接着材料50は、余分に配置されている場合には環状の溝31から押し出され、機械的な押し込みによって、溝付きの輪郭25と溝付きの輪郭26との間に進入する。
【0043】
この時点において、クランクアーム・アセンブリ20は、接着剤50の硬化を生じさせるような条件へと取り入れられる。とくに、接着剤50が熱硬化性である場合には、クランクアーム・アセンブリ20は、接着材料そのものの硬化温度とされ、完全に固まるまでそのような温度に保たれる。典型的な温度値は、120°〜180°であり、10〜60分の間の時間にわたる。
【0044】
前記のやり方において、接着剤50は溝31(さらには、おそらくは31’、31’’)とともに、クランクアーム21のアクスル部22への固定手段の構成に寄与している。
【0045】
このように、クランクアーム21とアクスル部22との間において、接着室が環状の溝31および空き空間30から形成され、図6および7の実施の形態においては、溝31’および31’’がそれぞれ加えられる。環状の溝31および空き空間30(長さL)の寸法を適切に調節することによって、クランクアーム21について典型的には30〜40kNである所望の引き抜き力を得ることができる接着領域を得ることが可能である。
【0046】
好ましくは、クランクアーム20およびアクスル部22の固定手段が、接着材料50に加えて押し込み結合を含んでいることに注意すべきである。
【0047】
また、いくつかのクランクアーム・アセンブリ20においては、加工の欠陥またはアクスル部22の不正確な挿入による膨れ上がりに起因して、溝付き輪郭25と溝付き輪郭26との間にすき間51(図5においては、意図的にかなり拡大されて示されている)が生じる可能性があることに、注意すべきである。このようなアセンブリにおいて、すき間の寸法が小さく、かつ硬化前の接着材料が流動性を有しているため、毛管現象によるすき間51への進入が促され、一端から他端までであっても結合領域の全体を濡らして、腐食に対する保護およびクランクアームの取り付け作用を最大化することができる。
【0048】
図6に示した実施の形態において、溝31’が半径方向に突き出した縁32’を形成しており、縁32’が接着材料の硬化後に溝31および31’に存在する接着材料50に囲まれたままとなることに、注意すべきである。このやり方で、接着剤の効果に加え、クランクアーム21の機械的な保持の効果がもたらされる。
【0049】
追加の溝31’および31’’は、好ましくは環状である。
【0050】
さらに、図7の実施の形態において、溝31’’を結合部24と結合座23のどちらに製作してもよく、さらにはこれら部材の両方に製作してもよいことに注意すべきである。
【0051】
追加の溝31’’は、1つであっても、図7に示されているように2つ以上であってもよい。図10の実施の形態は、結合座23の特定の追加の溝31’’’を示しており、それは結合座23の溝付きの輪郭25の溝よりも深い。好ましくは、追加の溝31’’’は、クランクアーム21において自転車のフレームボックス11に面する側壁60よりも、肩部28により接近して位置している。距離Tの好ましい範囲は、1〜15mmである。図10において、溝31’は任意に設けることができる。
【0052】
追加の溝31’’’は、結合座23の溝付きの輪郭25を得るための機械加工作業の際に、切削屑脱離部として好都合に機能する。好ましい機械加工作業は、工具(図示されていない)を側壁60の方から挿入して、溝31に達するまで移動させることによる結合座23のブローチ加工で構成される。結合座23が肩部28によって閉じられているため、工具の行程が行き止まりとなっているが、追加の溝31’’’が、切削屑が溝31の内側でクランクアームに付着したまま残ることがないようにしている。これは、結合座が完全に行き止まりである場合にも有用である。
【0053】
さらに、クランクアーム21および41が、アルミニウムまたはチタニウム合金などといった金属材料から作られ、アクスル部22が、鋼または軽金属合金から作られることに、注意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアクスル部(22、42)と、前記少なくとも1つのアクスル部(22、42)に取り付けられるクランクアーム(21、41)とを有しており、前記クランクアーム(21、41)が結合座(23)を有するとともに、前記アクスル部(22、42)が前記結合座(23)へと結合する結合部(24)を有しており、結合座(23)および結合部(24)が、前記クランクアーム(21、41)から前記アクスル部(22、42)にトルクを伝達できることを保証する形状による結合をなすように形作られている自転車のクランクアーム・アセンブリ(20、40)であって、
前記クランクアーム(21、41)と前記アクスル部(22、42)との間に接着材料(50)が塗布されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
請求項1において、前記結合座(23)が、軸方向に前記アクスル部(22、42)を支持するための肩部(28)を有しているアセンブリ。
【請求項3】
請求項2において、前記肩部(28)が、軸方向に前記結合座(23)を完全に閉じているアセンブリ。
【請求項4】
請求項1において、前記接着材料(50)が、前記結合座(23)と前記結合部(24)との間に設けられているアセンブリ。
【請求項5】
請求項1において、接着材料(50)が、結合部(24)を結合座(23)へと完全に封じているアセンブリ。
【請求項6】
請求項4において、前記結合座(23)および前記結合部(24)の少なくとも一方に形成された接着室(30、31;31’、31’’)を有しており、前記接着材料(50)が前記接着室(30、31;31’、31’’)に設けられているアセンブリ。
【請求項7】
請求項6において、前記接着材料(50)が、前記接着室(30、31;31’、31’’)、および前記結合座(23)と前記結合部(24)との間の残りの空間(51)の少なくとも一部分の両者に存在しているアセンブリ。
【請求項8】
請求項6において、前記接着室が、前記結合座(23)に形成された前記クランクアーム(21、41)の環状の溝(31;31’’)、および/または前記結合部(24)に形成された前記アクスル部(22、42)の環状の溝(31’)を有しているアセンブリ。
【請求項9】
請求項8において、前記環状の溝(31;31’)が、軸方向でボトムブラケット・アセンブリ(10)の中心(K)に対して遠隔位置に位置しているアセンブリ。
【請求項10】
請求項6において、前記接着室が、前記結合部(24)そのものの先細りの前方領域(29)によって前記結合座(23)と前記結合部(24)との間に残される空き空間(30)を有しているアセンブリ。
【請求項11】
請求項10において、前記先細りの前方領域(29)が、前記結合部(24)の軸方向の広がりの1/3以下の軸方向の広がりを有しているアセンブリ。
【請求項12】
請求項10において、前記先細りの前方領域(29)が、2〜5mmである軸方向の広がりを有しているアセンブリ。
【請求項13】
請求項1において、前記接着材料(50)が硬化性樹脂であるアセンブリ。
【請求項14】
請求項13において、前記硬化性樹脂(50)が、エポキシまたはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であるアセンブリ。
【請求項15】
請求項1において、クランクアーム(21、41)とアクスル部(22、42)とが係合したままであるように結合を保証するための固定手段をさらに有しており、前記固定手段が前記接着材料(50)を含んでいるアセンブリ。
【請求項16】
請求項15において、前記固定手段が、さらに、前記アクスル部(22、42)の結合部(24)をクランクアーム(21、41)の結合座(23)内へ機械的に押し込む押込力を有しているアセンブリ。
【請求項17】
請求項1において、前記結合座(23)が、少なくとも1つの切削屑脱離用溝(31’’’)を有しているアセンブリ。
【請求項18】
請求項17において、前記結合座が溝付きの輪郭(25)を有しており、切削屑脱離用溝(31’’’)が、前記溝付きの輪郭(25)の溝よりも深いアセンブリ。
【請求項19】
請求項17において、前記結合座が、クランクアーム(21)の外側側壁(60)と軸方向に前記アクスル部(22、42)を支持する前記肩部(28)との間に延在しており、前記切削屑脱離用溝(31’’’)が、前記外側側壁(60)よりも前記肩部(28)により接近しているアセンブリ。
【請求項20】
請求項19において、前記切削屑脱離用溝(31’’’)と前記肩部(28)との間の距離が、1〜15mmであるアセンブリ。
【請求項21】
クランクアーム(21、41)からアクスル部(22、42)にトルクを伝達できることを保証するため、クランクアーム(21、41)とアクスル部(22、42)との間に形状による結合を有している自転車の変速機のボトムブラケット・アセンブリ(10)において、クランクアーム(21、41)をアクスル部(22、42)へと組み付けるための方法であって、
クランクアーム(21、41)とアクスル部(22、42)との間に接着材料(50)を塗布することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21において、前記接着材料(50)が、前記クランクアーム(21、41)と前記アクスル部(22、42)とが係合される前に、前記クランクアーム(21、41)および前記アクスル部(22、42)の一方に塗布され、その後に前記クランクアーム(21、41)および前記アクスル部(22、42)が軸方向に押し合わされる方法。
【請求項23】
請求項22において、前記接着材料(50)が、前記クランクアーム(21、41)および前記アクスル部(22、42)の少なくとも一方に形成された接着室(31;31’、31’’)に塗布される方法。
【請求項24】
請求項21において、前記接着材料(50)が硬化性樹脂である方法。
【請求項25】
請求項24において、前記硬化性樹脂(50)が、エポキシまたはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である方法。
【請求項26】
請求項21において、少なくとも1つの切削屑脱離用溝(31’’’)が結合座(23
)に形成される方法。
【請求項27】
請求項26において、溝付きの輪郭が、前記結合座(23)で機械加工作業によって形成される方法。
【請求項28】
請求項27において、前記機械加工作業がブローチ加工作業である方法。
【請求項29】
長手軸と、アクスル部(22、42)にトルクを伝達する形状付きの輪郭とを有している結合座(23)を有している自転車のクランクアーム(21、41)であって、
前記結合座が、前記長手軸と平行な方向に結合座を少なくとも部分的に閉じる肩部(28)を備え、また前記結合座が切削屑脱離用溝を有している自転車のクランクアーム(21、41)。
【請求項30】
請求項29において、前記形状付きの輪郭が溝付きの輪郭であり、前記切削屑脱離用溝が溝付きの輪郭の溝よりも深い自転車のクランクアーム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−107642(P2013−107642A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−43662(P2013−43662)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2007−118028(P2007−118028)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(592072182)カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (94)
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA