説明

自転車試験装置

【課題】自転車の利用条件を多様に模擬した試験を可能とする。
【解決手段】ダイナモメータ2、自転車のクランク軸を回転駆動する自転車駆動装置3、自転車の前輪またはフロントフォークを固定する前輪固定装置4、制御装置5とを設ける。ダイナモメータ2は、自転車の後輪が載置されるローラ23と、軸トルク計22と、軸トルク計22を介してローラ23を駆動するモータ21とを備える。自転車駆動装置3は、自転車のクランク軸に連結する駆動シャフト36と、駆動軸トルク計35と、駆動軸トルク計35を介して駆動シャフト36に連結する駆動モータ34とを備える。制御装置5は、軸トルク計22を参照して、モータ21を制御しローラ23から自転車の後輪に与える負荷を制御すると共に、駆動軸トルク計35を参照して、駆動モータ34を制御し自転車のクランク軸に加えるトルクを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動補助自転車などの自転車の試験に用いられる自転車試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動補助自転車などの自転車の試験に用いられる自転車試験装置としては、自転車の後輪に当接し当該後輪の回転に対する負荷を与えるローラと、自転車のペダルを回転駆動する駆動装置とを備えた自転車試験装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-74792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る自転車試験装置によれば、自転車の後輪の各回転状態において、当該後輪の回転に対して与えることのできる負荷は、ローラの回転慣性質量によって一義的に定まってしまうため、任意の負荷を後輪の回転に対して与えることができない。
また、ペダルを介したクランク軸の駆動トルクを任意に制御することもできない。
そして、このために、この自転車試験装置によっては、走行路の特性(たとえば、平坦路や山坂路)、運転者の特性(たとえば、男性や女性)といった自転車の利用条件を多様に模擬した試験を行うことが困難であった。
そこで、本発明は、自転車の利用条件を多様に模擬した試験を行える自転車試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、自転車の試験に用いられる自転車試験装置に、前記自転車のクランク軸を回転駆動する駆動装置と、前記自転車の後輪に負荷を与える負荷装置と、制御装置とを備えたものである。ここで、前記駆動装置は、前記自転車のクランク軸に連結される駆動シャフトと、前記駆動シャフトに連結した第1のモータと、前記駆動シャフトに作用するトルクを計測する第1のトルク計とを備え、前記負荷装置は、前記自転車の後輪が載置されるローラと、前記ローラに連結した第2のモータと、前記ローラに作用するトルクを計測する第2のトルク計とを備え、前記制御装置は、前記第1のモータと第2のモータの駆動を制御するものである。
【0006】
ここで、このような自転車試験装置には、クランク軸を回転駆動する駆動装置に代えて、前記自転車のクランクを回転駆動する駆動装置を設けるようにしても良い。また、この場合、駆動装置としては、駆動シャフトと、当該駆動シャフトの先端に設けられた前記自転車のクランク軸穴の内ネジと螺合する、前記駆動シャフトと中心軸が一致する雄ネジと、当該雄ネジを前記内ネジと螺合させた状態で前記自動車のクランクに係合する、前記駆動シャフトに連結した係合部材と、前記駆動シャフトに連結した第1のモータと、前記駆動シャフトに作用するトルクを計測する第1のトルク計とを備えた駆動装置などを用いることができる。
これらのような自転車試験装置によれば、前記第1のモータと第2のモータの駆動を制御することにより、自転車のクランク軸に加えるトルクや、自転車の後輪に作用させる負荷(走行抵抗)を、任意に制御することができるので、自転車の利用条件を多様に模擬した試験を行うことができるようになる。
【0007】
また、以上のような自転車試験装置は、制御装置において、前記第1のトルク計が測定したトルクに応じて前記第1のモータの駆動を制御すると共に、前記第2のトルク計が測定したトルクに応じて前記第2のモータの駆動を制御するように構成してもよい。
このようにすることにより、フィードバック制御によって、より精度良く、自転車のクランク軸に加えるトルクや、自転車の後輪に作用させる負荷(走行抵抗)を制御することができるようになる。
ここで、以上の自転車試験装置に、さらに、前記第1のモータの回転速度を計測する第1の回転速度計を備え、前記制御装置において、前記第1のトルク計が測定したトルクと、前記第1の回転速度計が計測した回転速度とに応じて前記第1のモータの駆動を制御するようにしたり、以上の自転車試験装置に、前記第2のモータの回転速度を計測する第2の回転速度計を備え、前記制御装置において、前記第2のトルク計が測定したトルクと、前記第2の回転速度計が計測した回転速度とに応じて前記第2のモータの駆動を制御するように構成することも好ましい。
【0008】
これらのようにすることにより、ローラの周面が模擬する走行路で模擬する自転車の走行速度や、自転車のクランク軸の回転速度についても、任意に制御することができるようになり、自転車の利用条件を、より多様に模擬した試験を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、自転車の利用条件を多様に模擬した試験を行える自転車試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る自転車用試験装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自転車試験装置のダイナモメータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る自転車試験装置の自転車駆動装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る自転車試験装置の自転車駆動装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1a、bに、本実施形態に係る自転車試験装置の構成を示す。
ここで、図中に示したように上下左右前後方向を定めるものとして、図1aは自転車試験装置の上面模式図を、図1bは自転車試験装置の後面模式図を示している。
図示するように自転車試験装置は、ピット1、ピット1の上面によって構成された床の床下に配置されたダイナモメータ2、電動補助自転車などの自転車のクランク軸を回転駆動する自転車駆動装置3、ピット1の床面上に配置された、自転車の前輪またはフロントフォークをピット1に対して固定する前輪固定装置4、制御装置5とを備えている。
【0012】
次に、図2a、bにダイナモメータ2の構成を示す。
ここで、図2aはダイナモメータ2の上面模式図を、図2bはダイナモメータ2の後面模式図を示している。
図示するように、ダイナモメータ2は、モータ21、軸トルク計22、ローラ23、機械慣性装置24とを備えている。
ローラ23の中心軸の一端は、軸トルク計22を介在して、モータ21のシャフトに連結しており、ローラ23の中心軸の他端は機械慣性装置24に連結している。
ローラ23は、その周面によって、図1bに示すように、自転車の後輪に対して走行路を模擬するものであり、当該ローラ23の頂上部は、ピット1の床面と同じ高さで、ピット1の床に設けられた開口に露出している。そして、ローラ23の頂上部に自転車の後輪が載置される。
【0013】
そして、軸トルク計22は、自転車の後輪とローラ23との間で作用する力によって、モータ21のシャフトとローラ23の中心軸との間に働く軸トルクを検出し、制御装置5に出力する。
また、モータ21は回転計を内蔵しており、回転計で検出したモータ21の回転速度を制御装置5に出力する。
また、機械慣性装置24は、複数の回転慣性質量の異なる複数のフライホイールを備えており、制御装置5の制御に応じて、任意数の任意のフライホイールとローラ23の中心軸との連結/連結断を行うことにより、連結したフライホイールの組み合わせによって定まる回転慣性質量をローラ23に追加することにより、自転車の走行慣性相当の回転慣性力をローラ23に付与する。
【0014】
このようなダイナモメータ2を用いることにより、制御装置5は、モータ21の回転計で計測されたモータ21の回転速度、軸トルク計22で検出された軸トルクを参照しながら、モータ21の発生トルクや回転速度を制御し、自転車の後輪とローラ23の周面が模擬する走行路との間で作用させる負荷(走行抵抗)や、ローラ23の周面が模擬する走行路で模擬する自転車の走行速度を任意に制御することができるようになる。
【0015】
また、モータ21の回転計で計測されたモータ21の回転速度の変化より求まる回転角加速度に応じて、機械慣性装置24を制御することにより、自転車の走行慣性を模擬することができる。なお、自転車の走行慣性は、モータ21の発生トルクで模擬することもでき、このようにする場合には、機械慣性装置24は不要である。
【0016】
次に、図3に自転車駆動装置3の構成を示す。
ここで、図3aは自転車駆動装置3の上面模式図を、図3bは自転車駆動装置3の後面模式図を示している。
図示するように、自転車駆動装置3は、上下移動可能なZステージ31、Zステージ31に支持された前後方向に移動可能なYステージ32、Yステージ32に支持された左右方向に移動可能なXステージ33、Xステージ33に支持された駆動モータ34、駆動軸トルク計35、駆動モータ34のシャフトに駆動軸トルク計35を介して連結された駆動シャフト36とを備えている。
【0017】
Zステージ31は、昇降レバー311を回転させることによりジャッキ312によって上下に移動するように構成されており、Yステージ32は回転レバー321を回転させることによりローラ322によってZステージ31に対して前後方向に移動するように構成されており、Xステージ33は回転レバー331を回転させることによりローラ332によってYステージ32に対して左右方向に移動するように構成されている。
【0018】
次に、駆動シャフト36は、駆動軸トルク計35に連結する軸351連結されたフランジ361と、駆動シャフト36の先端の連結ソケット362とを、両者に各々トリボールジョイントによって継がる鋼管363で連結したものである。
ここで、図1a、bに示すように、自転車駆動装置3は、およそダイナモメータ2のローラ23の頂上に後輪が載せ置かれた自転車のクランク軸の左側先端の平均的な位置付近に、駆動シャフト36の先端が位置するように一部、ピット1の床下に自転車駆動装置3の一部が埋設された形態でピット1に対して固定されている。
【0019】
そして、図1a、bに示すように、自転車からクランクを取り外した上で、駆動シャフト36の先端の連結ソケット362を、クランクを取り外すことによって露出する自転車のクランク軸の先端のテーパーに嵌合させることにより、駆動シャフト36は自転車のクランク軸に連結される。
【0020】
ここで、Zステージ31、Yステージ32、Xステージ33は、自転車の型式によらずに、駆動シャフト36の位置を自転車のクランク軸位置に位置づけられるように設けている。
次に、駆動軸トルク計35は、駆動シャフト36を介して、駆動モータ34のシャフトから自転車のクランク軸に働く軸トルクを検出し、制御装置5に出力する。
また、駆動モータ34は回転計を内蔵しており、回転計で検出したモータ21の回転速度を制御装置5に出力する
このような自転車駆動装置3を用いることにより、制御装置5は、駆動モータ34の回転計で計測された駆動モータ34の回転速度、駆動軸トルク計35で検出された軸トルクを参照しながら、駆動モータ34の発生トルクや回転速度を制御し、自転車のクランク軸の回転速度や、自転車のクランク軸に加えるトルクを、任意に制御することができるようになる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のような自転車試験装置によれば、自転車の後輪に作用させる負荷(走行抵抗)や、ローラ23の周面が模擬する走行路で模擬する自転車の走行速度や、自転車のクランク軸の回転速度や、自転車のクランク軸に加えるトルクを、任意に制御することができるので、自転車の利用条件を多様に模擬した試験を行うことができるようになる。
【0022】
ところで、以上の実施形態では、自転車駆動装置3において、自転車のクランクを取り外した上で、駆動シャフト36を、駆動シャフト36先端の連結ソケット362を用いて、自転車のクランク軸に連結することにより、クランク軸を回転駆動するようにしたが、これは、自転車駆動装置3において自転車のクランクを回転駆動するようにすることにより、自転車のクランクの取り外しを不要とするようにしてもよい。
【0023】
すなわち、この場合には、たとえば、図3c、dに示すように駆動シャフト36の先端部364を構成するようにする。
ここで、図3cは自転車駆動装置3の上面模式図を、図3dは自転車駆動装置3の後面模式図を示している。
図示するように、駆動シャフト36の先端部には雄ネジ部365と、くの字状の駆動クランク366が設けられている。
ここで、自転車のクランクのクランク軸穴には、図4aに示すようにクランク軸保護、隠蔽用のクランクキャップ90を取り付けるために、図4bに示すように内ネジ91が設けられている。そして、駆動シャフト36の雄ネジ部364の雄ネジは、この内ネジ91と螺合するサイズ形状を有する。
【0024】
そして、自転車の試験の際には、自転車のクランクキャップ90を取り外し、図4cに示すように駆動シャフト36の雄ネジ部365を自転車のクランク軸穴の内ネジ91に螺合させることにより、駆動シャフト36をセットする。
このようにセットすることにより、駆動シャフト36の駆動クランク366は、図示するように自転車のクランクと係合し、駆動モータ34を回転することにより自転車のクランクを回転駆動することができるようになる。
【符号の説明】
【0025】
1…ピット、2…ダイナモメータ、3…自転車駆動装置、4…前輪固定装置、5…制御装置、21…モータ、22…軸トルク計、23…ローラ、24…機械慣性装置、31…Zステージ、32…Yステージ、33…Xステージ、34…駆動モータ、35…駆動軸トルク計、36…駆動シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の試験に用いられる自転車試験装置であって、
前記自転車のクランク軸を回転駆動する駆動装置と、
前記自転車の後輪に負荷を与える負荷装置と、
制御装置とを有し、
前記駆動装置は、前記自転車のクランク軸に連結される駆動シャフトと、前記駆動シャフトに連結した第1のモータと、前記駆動シャフトに作用するトルクを計測する第1のトルク計とを備え、
前記負荷装置は、前記自転車の後輪が載置されるローラと、前記ローラに連結した第2のモータと、前記ローラに作用するトルクを計測する第2のトルク計とを備え、
前記制御装置は、前記第1のモータの駆動と前記第2のモータの駆動を制御することを特徴とする自転車試験装置。
【請求項2】
自転車の試験に用いられる自転車試験装置であって、
前記自転車のクランクを回転駆動する駆動装置と、
前記自転車の後輪に負荷を与える負荷装置と、
制御装置とを有し、
前記駆動装置は、駆動シャフトと、当該駆動シャフトの先端に設けられた前記自転車のクランク軸穴の内ネジと螺合する、前記駆動シャフトと中心軸が一致する雄ネジと、当該雄ネジを前記内ネジと螺合させた状態で前記自動車のクランクに係合する、前記駆動シャフトに連結した係合部材と、前記駆動シャフトに連結した第1のモータと、前記駆動シャフトに作用するトルクを計測する第1のトルク計とを備え、
前記負荷装置は、前記自転車の後輪が載置されるローラと、前記ローラに連結した第2のモータと、前記ローラに作用するトルクを計測する第2のトルク計とを備え、
前記制御装置は、前記第1のモータの駆動と前記第2のモータの駆動を制御することを特徴とする自転車試験装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自転車試験装置であって、
前記制御装置は、前記第1のトルク計が測定したトルクに応じて前記第1のモータの駆動を制御すると共に、前記第2のトルク計が測定したトルクに応じて前記第2のモータの駆動を制御することを特徴とする自転車試験装置。

【請求項4】
請求項3記載の自転車試験装置であって、
前記第1のモータの回転速度を計測する第1の回転速度計を備え、
前記制御装置は、前記第1のトルク計が測定したトルクと、前記第1の回転速度計が計測した回転速度とに応じて前記第1のモータの駆動を制御することを特徴とする自転車試験装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の自転車試験装置であって、
前記第2のモータの回転速度を計測する第2の回転速度計を備え、
前記制御装置は、前記第2のトルク計が測定したトルクと、前記第2の回転速度計が計測した回転速度とに応じて前記第2のモータの駆動を制御することを特徴とする自転車試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−36833(P2013−36833A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172738(P2011−172738)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)