説明

臭化水素の臭素元素への変換

臭化水素を臭素元素に変換するための方法を提供する。初期臭化水素リッチガスの一部分を熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションおよび該初期臭化水素リッチガスの残部をもたらす。前記初期臭化水素リッチガスの残部の少なくとも一部分をより低い触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす。好ましい実施形態では、触媒酸化温度は約250℃〜約345℃の範囲であり、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約80%〜99%を臭素元素に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭化水素の臭素元素(elemental bromine)への変換に関し、より詳細には、1つ以上の実施形態において、気体臭化水素を熱酸化工程および触媒酸化工程により臭素元素に変換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臭素元素を使用して供給原料を臭素化して反応性臭化物中間体を生成する従来の工業プロセスが存在する。そしてまたそれらの反応性臭化物中間体は、価値のある最終生成物の合成に利用される。これらの合成反応は概して臭化水素を副生成物として生成し、この副生成物は廃棄物流として環境に排出されることが多い。しかし、臭化水素副生成物は環境適合性ではないので、多くの場合、環境規制基準を満たすために環境に放出する前に先ず中和しなければならない。
【0003】
臭素元素は比較的高価な試薬であり、臭化水素の中和および排出に関連した付帯費用がかかるので、好ましい代案は、合成反応器の流出物から臭化水素を回収し、それを変換して臭素元素に戻し、それを再利用流として臭素化反応器に戻すことである。この代案は、既存のプロセス、例えば特許文献1および特許文献2(これらは、両方ともWaycuilisに対して発行されたものであり、参照により本明細書に援用されている)において現在実施されている。両方の特許文献に気体アルカンの液体炭化水素への変換のための臭素化/合成プロセスが開示されており、気体臭化水素が該合成反応の副生成物として生成される。このプロセスは、その臭化水素を下流で回収し、それを水と接触させて完全にイオン化された臭化水素水溶液を形成する。結果として生じる液を中和し、臭素元素に変換し、それを上流に戻して臭素化反応に再利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,244,876号明細書
【特許文献2】米国特許第7,348,464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在公知であり実施されている方法より向上した効率および費用効果を示す、臭化水素を臭素元素に変換するための代替法が必要とされている。下で説明するように本発明はこの必要を満たすことに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、臭化水素を臭素元素に変換するための方法である。初期臭化水素リッチガスの一部分を熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションおよび該初期臭化水素リッチガスの残部をもたらす。前記初期臭化水素リッチガスの残部の少なくとも一部分を触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす。
【0007】
好ましい初期臭化水素リッチガスは、実質的に乾燥しているガス混合物である。好ましい熱酸化温度は、好ましくは約250℃〜約345℃の範囲である触媒酸化温度より実質的に高い。前記初期臭化水素リッチガスの一部分の熱酸化は、好ましくは、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約80%〜99%、そしてさらに好ましくは約85%〜95%を臭素元素に変換する。前記初期臭化水素リッチガスの残部の少なくとも一部分の触媒酸化は、好ましくは、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約20%〜1%、そしてさらに好ましくは約15%〜5%を臭素元素に変換する。
【0008】
1つの実施形態によると、本方法は、酸化性ガス、好ましくは純粋な酸素または空気などの酸素を含有するガス混合物を前記初期臭化水素リッチガスに、該臭化水素リッチガスの熱酸化中または前に加えることをさらに含む。もう1つの実施形態によると、本方法は、臭化水素含有ガスから初期臭化水素リッチガスを採取することをさらに含む。もう1つの実施形態によると、前記臭化水素含有ガスは、前記初期臭化水素リッチガスより低い臭化水素濃度を有する。前記臭化水素含有ガスは、もう1つの代替実施形態では、臭化水素と低分子量の炭化水素とを含有する気体混合物である。あるいは、前記初期臭化水素リッチガスと前記臭化水素含有ガスは、同じである。
【0009】
好ましい臭化水素含有ガスは、上流のプロセスから採取される。この上流のプロセスは、関連プロセスまたは無関係のプロセスのいずれかである。好ましい上流プロセスは、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素と臭化水素を形成することによって気体アルカンを液体炭化水素に変換する、気体アルカン変換プロセスである。
【0010】
さらにもう1つの実施形態によると、本方法は、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素と臭化水素含有ガスとを形成することによる気体アルカン変換プロセスで、気体アルカンを液体炭化水素に変換することをさらに含む。その臭化水素含有ガスから初期臭化水素リッチガスを採取する。さらにもう1つの実施形態によると、本方法は、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素と臭化水素とを形成することによって気体アルカンを液体炭化水素に変換する前記プロセスに、臭素元素の前記第一および第二のフラクションをフィードとして再利用することをさらに含む。
【0011】
あるいは、本発明は、初期臭化水素リッチガスに酸化性ガスを加えて熱酸化フィードガスを形成することによる、臭化水素を臭素元素に変換するための方法を特徴とする。前記初期臭化水素リッチガスは、臭化水素を含む実質的に乾燥しているガス混合物である。前記熱酸化フィードガスの一部分を熱酸化反応器において熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションおよび該熱酸化フィードガスの残部をもたらす。前記熱酸化フィードガスの残部の少なくとも一部分を触媒反応器において触媒酸化温度で触媒酸化させて、臭素元素の第二のフラクションをもたらす。前記熱酸化温度は、前記触媒酸化温度より実質的に高い。
【0012】
1つの実施形態によると、前記方法は、触媒反応器から排出された触媒反応器流出ガスから臭素元素生成物として臭素元素の第一および第二のフラクションを回収することをさらに含む。もう1つの実施形態によると、前記方法は、前記触媒反応器流出ガスを凝縮して、気相と臭素元素液相と水性液相とを含む三相混合物を得ることをさらに含む。さらにもう1つの実施形態によると、前記方法は、前記気相、臭素元素液相および水性液相を互いに分離することをさらに含む。前記臭素元素液相は、液体状態の本質的に純粋な臭素元素であり、前記臭素元素生成物の第一の部分を含む。
【0013】
さらにもう1つの実施形態によると、前記気相は、酸素および第一の残留臭素元素部分を含む。前記方法は、その第一の残留臭素元素を臭素元素生成物の第二の部分として分離して回収することをさらに含む。さらにもう1つの実施形態によると、前記水性液相は、水およびそれに溶解した第二の残留臭素元素部分を含む。前記方法は、その第二の残留臭素元素を臭素元素生成物の第三の部分として回収することをさらに含む。
【0014】
あるいは、本発明は、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素と臭化水素含有ガスとを形成することによる気体アルカン変換プロセスで気体アルカンを液体炭化水素に変換することにより、臭化水素を臭素元素に変換する方法を特徴とする。その臭化水素含有ガスから初期臭化水素リッチガスを採取する。その初期臭化水素リッチガスの一部分を熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションおよび該初期臭化水素リッチガスの残部をもたらす。前記初期臭化水素リッチガスの残部の少なくとも一部分を触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす。臭素元素の前記第一および第二のフラクションを、気体アルカンを臭素化するための気体アルカン変換プロセスに再利用する。
【0015】
1つの実施形態によると、前記臭化水素含有ガスは、前記初期臭化水素リッチガスより低い臭化水素濃度を有する。前記臭化水素含有ガスは、もう1つの代替実施形態では、臭化水素と低分子量の炭化水素とを含有する気体混合物である。あるいは、前記初期臭化水素リッチガスと前記臭化水素含有ガスは同じである。
【0016】
本発明は、添付の図面および説明からさらに理解される。
【0017】
添付の図面は、本発明の特定の態様を例示するものであるが、それら自体を、本発明を制限するものまたは定義するものとして見るべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本方法を一連のプロセス工程に概念的に分割する、本発明の方法の単純化ブロック線図である。
【図2】図2は、本方法の臭化水素回収工程が循環再生モードで動作する本発明の実施形態の実施の際に用いられるシステムの略図である。
【図3】図3は、本方法の臭化水素回収工程がスイング再生モードで動作する本発明の方法の代替実施形態の実施の際に用いられるシステムの略図である。
【図4】図4は、過剰空気での気体臭化水素の熱酸化反応についての温度に対する熱力学平衡計算をグラフで描写するものである。
【図5】図5は、実施例1の方法による熱酸化反応器ゾーンにおける温度に対する臭化水素熱酸化変換率をグラフで描写するものである。
【図6】図6は、実施例2の方法による熱酸化ユニットに送り込まれた過剰空気の量に対する臭化水素熱酸化変換率をグラフで描写するものである。
【図7】図7は、実施例4に従って実施されるプロセスフロー線図の形式での本発明の臭化水素変換方法の実施形態の略図である。
【図8】図8は、本発明のプロセスの実施形態の単純化ブロック・フロー線図である。
【図9】図9は、本発明のプロセスの1つの実施形態の略図である。
【図10】図10は、本発明のプロセスのもう1つの実施形態の略図である。
【図11A】図11Aは、本発明のプロセスのもう1つの実施形態の略図である。
【図11B】図11Bは、酸化工程において空気の代わりに酸素を使用するときに利用できる代替加工スキームを描写する、図11Aに示した本発明のプロセスの実施形態の略図である。
【図12A】図12Aは、金属酸化物床を通ってフローを逆流させる、図11Aに示した本発明のプロセスの実施形態の略図である。
【図12B】図12Bは、酸化工程において空気の代わりに酸素を使用するときに利用できる代替加工スキームを描写する、図12Aに示した本発明のプロセスの実施形態の略図である。
【図13A】図13Aは、本発明のプロセスのもう1つの実施形態の略図である。
【図13B】図13Bは、酸化工程において空気の代わりに酸素を使用するときに利用できる代替加工スキームを描写する、図13Aに示した本発明のプロセスの実施形態の略図である。
【図14】図14は、本発明のプロセスのもう1つの実施形態の略図である。
【図15】図15は、金属酸化物床を通ってフローを逆流させる、図14に示した本発明のプロセスの実施形態の略図である。
【図16】図16は、本発明のプロセスのもう1つの実施形態の略図である。
【図17】図17は、本発明のプロセスのオリゴマー化反応についての臭化メチル変換率および生成物選択性の、温度の関数としてのグラフである。
【図18】図18は、臭化メチルと乾燥臭化水素酸とメタンの実施例についての変換率および選択性を臭化メチルとメタンのみのものに対して比較するグラフである。
【図19】図19は、臭化メチルのみの反応からの生成物選択性に対する臭化メチルおよびジブロモメタンの反応からの生成物選択性のグラフである。
【図20】図20は、本発明のプロセスの典型的な凝縮生成物サンプルのパラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族(PONA)分析のグラフである。
【図21】図21は、本発明のもう1つの典型的な凝縮生成物サンプルのPONA分析のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、気体臭化水素(HBr)の臭素元素(Br)への変換に関し、さらに詳細には、1つ以上の実施形態において、気体臭化水素を逐次的熱酸化工程および触媒酸化工程により臭素元素に変換する方法に関する。
【0020】
本発明の方法の特定の実施形態を下で説明する。本発明に関係する主な化学反応であると考えられるものの態様を、それが起きると考えられるので論ずるが、副反応が起こることがあることは理解されるはずである。本明細書においていずれかの特定の副反応を論じていないことが、この副反応が起きないことを意味すると想定すべきではない。逆に言えば、下で論ずる主な反応を包括的または限定的とみなすべきではない。
【0021】
図1は、本発明の方法を一連の工程に分割して概念的に描写するものである。この一般的描写に従って、臭化水素と場合により1つ以上の他の成分とを含有する臭化水素含有ガスであるフィードガスが供給される。1つ以上の他の成分がガス混合物中に臭化水素と一緒に存在する場合には、好ましくは、該ガス混合物を自由選択の臭化水素回収工程で前処理して、該ガス混合物の他の成分から初期臭化水素リッチガスを分離し、回収する。
【0022】
所望に応じて残存成分を残留ガスとして排出してもよい。前記初期臭化水素リッチガスは、熱酸化工程において、酸化性ガスと混合され、加熱される。この臭化水素リッチガス部分が熱酸化工程において高温で酸化されて臭素元素および蒸気を生成する。
【0023】
前記臭化水素リッチガスの未反応残部および酸化性ガスは、熱酸化工程から触媒酸化工程に搬送され、そこで残留未反応臭化水素リッチガスの大部分または実質的にすべてが触媒の存在下で酸化されて、追加の臭素元素および蒸気が生成される。結果として生じる臭素元素と蒸気の混合物は、分離および生成物回収工程に送られ、そこで蒸気は水に凝縮される。結果として生じる水と臭素元素は分離され、臭素元素は最終生成物として回収される。
【0024】
本発明の方法の特定の実施形態を図2を参照してさらに詳細に説明する。この実施形態の方法は、図2に図式的に示すおよび参照符号410により一般的に示すプロセス装置システムを用いて実施する。
【0025】
システム410は、その上流端部に該システム410にフィードガスを導入するためのフィードガスライン412(好ましくは、パイプ、コンジットまたはこれらに類するものである)を有する。臭化水素を含有する実質的に任意のガス、すなわち実質的に任意の臭化水素含有ガスが本発明のフィードガスとして役立つ。このフィードガスは、本質的に純粋な臭化水素である場合もあり、または臭化水素と1つ以上の他の成分とを含有するガス混合物である場合もあるが、好ましくは乾燥ガスである。実際、フィードガス用の臭化水素含有ガスとしては通常は純粋なガスよりむしろガス混合物のほうが容易に入手できる。
【0026】
フィードガスとして使用されるガス混合物は、好ましくは少なくとも約20mol%臭化水素を含有するが、さらに好ましくは約33〜50mol%臭化水素を含有する。前記ガス混合物中に存在し得る1つ以上の他の成分の例としては、メタンおよび他の軽質アルカン、臭化アルキルならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。しかし、上に列挙した成分リストは単なる例であり、前記ガス混合物中に存在する成分の数およびタイプを制限するものでないことは理解される。とは言え、好ましくは、前記ガス混合物の成分として水蒸気は除外される。言い換えると、前記ガス混合物は、好ましくは、乾燥ガスとして特徴づけられる。すなわち、前記ガス混合物は、好ましくは、約10mol%より少ない水蒸気しか含有しない。
【0027】
システム410は、臭化水素分離ユニット414および分離媒体再生ユニット416をさらに含み、これらは、組み合わせで、図1に概念的に示す臭化水素回収工程の実施形態を構成している。図2に示すような臭化水素分離ユニット414および分離媒体再生ユニット416の互いの特異的協動的相互接続は、下で説明するような循環再生モードでの臭化水素回収工程の運転を可能にするシステム410の実施形態を構成する。
【0028】
本実施形態によると、フィードガスは、フィードガスライン412経由で臭化水素分離ユニット414に搬送され、このユニット414は、液体吸収剤(すなわち、液体溶剤)または固体吸着剤が入っている密閉容器、チャンバ、コンテナまたはこれらに類するものである。前記吸収剤または吸着剤は、前記ガス混合物中の他の成分を除外するほど臭化水素の吸収または吸着について相対的に選択的である。適切な吸収または吸着選択性に加えて、臭化水素が負荷された吸収剤または吸着剤を、それらからの臭化水素の脱着を可能にする実用的な手法で再生できることがさらに望ましい。これらの基準を満たす当業者に公知の本質的に任意の吸収剤または吸着剤が本方法において役立ち得る。
【0029】
上述の基準を満たす好ましい液体吸収剤は、非水性溶剤、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。代替液体吸収剤としては、水性溶剤、例えば共沸性臭化水素酸(約48重量%)、および非水性極性または非極性非プロトン性またはイオン性溶剤、例えば液体アミン、エーテルおよびグリコール(ポリエチレングリコールおよびさらに特にメチル−エーテル−ポリエチレングリコールを含む)が挙げられる。上述の基準を満たす好ましい固体吸着剤は、シリカゲルである。代替固体吸着剤としては、ゼオライト、固体高分子アミン、固体高分子量ポリエチレングリコールおよびイオン交換樹脂が挙げられる。用語「分離媒体」を以後、場合によっては用いる。この用語は液体吸収剤と固体吸着剤の両方を含む。
【0030】
圧力および温度を含めて、臭化水素分離ユニット414の運転条件は、少なくともある程度は選択される特定の分離媒体の相関的要素である。とは言え、臭化水素分離ユニット414は、概して、約1bar〜約40barの範囲の圧力および約−50℃〜約70℃の範囲の温度で運転される。当業者には理解することができるように、臭化水素分離ユニット414へのガス送り量は、同じく、少なくともある程度は選択される分離媒体、ユニット414の運転作業圧および温度、ならびにユニット414のサイズおよび幾何学的配置の相関的要素である。
【0031】
臭化水素分離ユニット414は、分離媒体によりガス混合物から臭化水素を分離するように機能し、その結果、臭化水素リッチガスおよび残留ガスをもたらす。前記臭化水素リッチガスは、前記臭化水素分離ユニット414において前記分離媒体により吸収または吸着される前記ガス混合物の一部分である。逆に、前記残留ガスは、前記臭化水素分離ユニット414において前記分離媒体により吸収または吸着されなかった前記ガス混合物の残りの部分である。
【0032】
分離媒体の選択性に起因して、分離媒体によって吸収または吸着される臭化水素リッチガスは、好ましくは大部分が臭化水素から成る。すなわち、臭化水素リッチガスは、好ましくは少なくとも約90mol%臭化水素を含有する。さらに好ましくは、臭化水素リッチガスは、微量の他の成分を除いて本質的に完全に臭化水素から成る。すなわち、臭化水素リッチガスは、好ましくは少なくとも約99mol%臭化水素を含有する。従って、臭化水素リッチガスは、好ましくは実質的に水を含まない乾燥ガスである。すなわち、臭化水素リッチガスは、好ましくは、約10mol%より少ない水蒸気しか含有しない。
【0033】
分離媒体の分離効率に起因して、好ましくは、臭化水素分離ユニット414に入るフィードガス中の臭化水素の大部分が、分離媒体によって臭化水素リッチガスとして吸収または吸着される。すなわち、臭化水素リッチガスは、好ましくは、フィードガスからの臭化水素の少なくとも約90mol%を含有する。さらに好ましくは、フィードガス中の臭化水素全体が、分離媒体によって臭化水素リッチガスとして吸収または吸着される。すなわち、臭化水素リッチガスは、さらに好ましくは、フィードガスからの臭化水素の少なくとも約99mol%を含有する。従って、残留ガス中に残存する臭化水素の量は比較的低く、無視できることさえある。すなわち、残留ガスは、好ましくは約1mol%を超えて臭化水素を含有しない。
【0034】
臭化水素分離ユニット414には、該臭化水素分離ユニット414内で生成された残留ガスのシステム410からの排出を可能にする残留ガス出口ライン418が設けられている。排出される残留ガスを環境に許容され得る仕方で処分することができ、またはシステム410の外部でのさらなる加工および/もしくは利用のために回収することができる。例えば、残留ガスを、システム410の上流の関連臭素化反応器(図示なし)のフィードに再利用することができる。
【0035】
分離媒体は、好ましく高選択的で高効率的であっても、有限の臭化水素吸収または吸着の容量を有する。従って、臭化水素分離ユニット414を実用的に運転するために、その臭化水素負荷が最大許容量(すなわち、飽和)に達する時点でもしくは該時点より前に、および/またはそうでなければその分離媒体が臭化水素負荷容量低減を示す時点でもしくは該時点より前に、分離媒体を再生することが望ましい。従って、好ましくは密閉容器、チャンバ、コンテナまたはこれらに類するもの、例えば分別カラムである、分離媒体再生ユニット416は、一般に、負荷分離媒体を除荷状態に再生するように機能する。
【0036】
分離媒体再生ユニット416は、分離媒体を実質的に劣化させない従来の圧力または熱的手段により、負荷分離媒体から臭化水素リッチガスの大部分または本質的にすべてを脱着する。結果として、脱着は、分離媒体から臭化水素リッチガスを遊離させ、同時に分離媒体をその実質的な除荷状態に回復させる。分離媒体再生ユニット416の運転条件は、少なくともある程度は選択される特定の分離媒体の相関的要素である。とは言え、圧力が主脱着メカニズムである場合、分離媒体再生ユニット416は、概して、約0.1bar〜約10barの範囲の圧力および約0℃〜約70℃の範囲の温度で運転される。熱が主脱着メカニズムである場合、分離媒体再生ユニット416は、概して、約1bar〜約40barの範囲の圧力および約50℃〜約300℃の範囲の温度で運転される。
【0037】
上で述べたように、図2に示すおよび下記のとおり説明する臭化水素分離ユニット414と分離媒体再生ユニット416の協動的相互接続は、循環再生モードでの臭化水素回収工程の運転を可能にする。詳細には、臭化水素分離ユニット414は、負荷分離媒体出口ポート420および再生分離媒体入口ポート422を有する。同様に、分離媒体再生ユニット416は、負荷分離媒体入口ポート424および再生分離媒体出口ポート426を有する。臭化水素分離ユニット414の負荷分離媒体出口ポート420と分離媒体再生ユニット416の負荷分離媒体入口ポート424の間にはそれらの間での連絡を提供するために負荷分離媒体ライン428が伸びている。臭化水素分離ユニット414の再生分離媒体入口ポート422と分離媒体再生ユニット416の再生分離媒体出口ポート426の間には、同じくそれらの間での連絡を提供するために再生分離媒体ライン430が伸びている。
【0038】
分離媒体再生ユニット416は、臭化水素リッチガス出口ポート432をさらに有する。この臭化水素リッチガス出口ポート432から、図1に概念的に示すおよびシステム410に関連して下でより詳細に説明する熱酸化工程へと臭化水素リッチガスライン434が伸びている。
【0039】
循環再生モードでの臭化水素回収工程の運転中、分離媒体は臭化水素分離ユニット414と分離媒体再生ユニット416の間の閉ループ内で継続的に循環される。このループの1回の通過は、臭化水素分離ユニット414からの負荷分離媒体の退出と、負荷分離媒体出口ポート420および負荷分離媒体ライン428経由での分離媒体再生ユニット416へのその搬送とを含む。この負荷分離媒体が負荷分離媒体入口ポート424経由で分離媒体再生ユニット416に導入され、臭化水素リッチガスがそこで負荷分離媒体から脱着されて、分離媒体が再生される。臭化水素リッチガスが負荷分離媒体から脱着されると、結果として生ずる遊離した臭化水素リッチガスは臭化水素リッチガス出口ポート432および臭化水素リッチガスライン434経由で熱酸化工程に搬送される。
【0040】
再生後、再生された分離媒体は分離媒体再生ユニット416から退出され、再生分離媒体出口ポート426および再生分離媒体ライン430経由で臭化水素分離ユニット414に搬送される。この再生分離媒体は、そこに在る再生分離媒体入口ポート422を経由して臭化水素分離ユニット414へと導入され、これによりこの分離媒体のこのループを通る1回の通過が完了する。この分離媒体は、システム410が運転中である限り継続的にさらにこのループを通過する。この循環再生モードが液体分離媒体と固体分離媒体の両方に適用可能であることを特筆しておく。
【0041】
臭化水素回収工程は、循環再生モードでの場合、臭化水素分離ユニット414における分離媒体の滞留時間を、好ましくは、分離媒体上への臭化水素リッチガスの実質的な負荷を可能にするのに十分な値に設定するやり方で運転される。同様に、分離媒体再生ユニット416内での分離媒体の滞留時間は、好ましくは、分離媒体からの臭化水素リッチガスの実質的な脱着を可能にするのに十分な時間である。これにより、結果として分離媒体は最適に利用されることとなる。
【0042】
臭化水素分離ユニット414および分離媒体再生ユニット416を、説明のために、単一容器であるようにそれぞれ図2に示し、上で説明している。しかし、本発明がこの様式に限定されないことは理解される。示してはいないが、臭化水素回収工程の最大許容量および/または効率を増加させるために多数の容器の内部接続されたネットワークを臭化水素分離ユニットとしてかつ/または分離媒体再生ユニットとして利用することは、当業者の知識の範囲内であり、本発明の範囲内である。
【0043】
多容器型ユニットの容器は、分離媒体と臭化水素含有ガスの多工程向流接触の場合のもののように、連続して動作することができる。あるいは、容器は、互いに協動的に並行して動作することができる。例えば、多数のより小さい容器を並行して利用して、より大きな最大許容量を得ることができる。詳細には、並列容器を互いに連結して、分離ユニット414および/もしくは再生ユニット416のより大きな総容量を得ることができるか、または対の分離ユニット容器と再生ユニット容器を独立して、しかし並行して運転して、より大きな総合容量を得ることができる。いずれの場合も、当業者には明らかであるように、各容器の個々の運転は、単一容器型ユニットに関して上で説明したのと実質的に同じであり、実質的に同じ結果を達成する。
【0044】
逆に、同じく示してはいないが、臭化水素分離ユニットと分離媒体再生ユニットの両方を、その中に多数のチャンバまたはゾーンを有する単一容器に組み込むことは当業者の知識の範囲内であり、本発明の範囲内であり、この多数のチャンバまたはゾーンにより臭化水素リッチガス吸収/吸着および分離媒体再生の個々の段階を同じ容器内で実施することが可能になる。
【0045】
本方法の代替実施形態は、スイング再生モードでの臭化水素回収工程の運転を可能にする。この実施形態の方法は、図3に図式的に示しかつ参照符号500によって一般に示すプロセス装置のシステムを用いて実施する。図3のシステム500は、臭化水素回収工程の構造要素およびそれらと関連付けられる運転の点のみが、図2のシステム410と異なる。図3に示すシステム500の残りの要素は図2に示したシステム410と共通であり、図2において用いたのと同じ参照符号により図3に示す。
【0046】
システム500は、第一のデュアル機能ユニット502と第二のデュアル機能ユニット504を含み、これらは組み合わせで、図1に概念的に示した臭化水素回収工程の代替実施形態を構成している。各ユニット(502、504)は、互いに本質的に同一である。従って、各ユニット(502、504)は、選択的で再生可能な固体吸着剤、例えば上で述べた好ましい吸着剤、シリカゲルが入っている密閉容器、チャンバ、コンテナまたはこれらに類するものである。液体分離媒体を使用してシステム500をスイング再生モードで運転することは可能であり得るが、固体分離媒体を使用してスイング再生モードで運転するほうが好ましいことを特筆しておく。このことによって、スイング再生モードが固体媒体と液体媒体の間で選好を示さない循環再生モードと区別される。
【0047】
図3に示すような第一のデュアル機能ユニット502と第二のデュアル機能ユニット504の互いの特異的協動的相互接続は、スイング再生モードの基礎である下で説明する並行周期的様式でのユニット502、504の運転を可能にする。詳細には、第一のデュアル機能ユニット502は、第一のフィードガス入口ライン506、第一の臭化水素リッチガス出口ライン508および第一の残留ガス出口ライン510を有する。インラインバルブ512、514がそれぞれ第一のフィードガス入口ライン506および第一の臭化水素リッチガス出口ライン508内にあり、これらによってシステム500の運転者は、下で説明するやり方で、そこを通るガスフローを選択的に調節することができる。第二のデュアル機能ユニット504は、同様に、第二のフィードガス入口ライン516、第二の臭化水素リッチガス出口ライン518および第二の残留ガス出口ライン520を有する。インラインバルブ522、524がそれぞれ第二のフィードガス入口ライン516および第二の臭化水素リッチガス出口ライン518内にあり、これらによってシステム500の運転者は、下で説明するやり方で、そこを通るガスフローを選択的に調節することができる。
【0048】
スイング再生モードでの臭化水素回収工程の運転中、各デュアル機能ユニット(502、504)は、各ユニット(502、504)が臭化水素分離機能と分離媒体再生機能を交互にもたらすように、ある期間にわたって並行して周期動作する。従って、第一のデュアル機能ユニット502が、臭化水素分離機能をもたらすように動作するとき、第二のデュアル機能ユニット504は、分離媒体再生機能をもたらすように動作する。逆に、第二のデュアル機能ユニット504が、臭化水素分離機能をもたらすように動作するとき、第一のデュアル機能ユニット502は、分離媒体再生機能をもたらすように動作する。
【0049】
循環再生モードの運転とは異なり、各デュアル機能ユニット(502、504)の分離媒体は、システム500がスイングモード運転中である限り、そのそれぞれのユニット内に保持されることを特筆しておく。とは言え、第一のデュアル機能ユニット502(または切り替えられたときには第二のデュアル機能ユニット504)が臭化水素分離機能で動作しているとき、その動作パラメータおよび結果として生ずる産出物は、上で説明した臭化水素分離ユニット414のものと本質的に同じである。同様に、第二のデュアル機能ユニット504(または切り替えられたときには第一のデュアル機能ユニット502)が分離媒体再生機能で動作しているとき、その動作パラメータおよび結果として生ずる産出物は、上で説明した分離媒体再生ユニット416のものと本質的に同じである。
【0050】
臭化水素分離機能での第一のデュアル機能ユニット502の、分離媒体再生機能での第二のデュアル機能ユニット504の運転との同時運転は、インラインバルブ512、514、522、524の位置の協調制御によって果たされる。詳細には、第一のデュアル機能ユニット502が臭化水素分離機能で動作しており、第二のデュアル機能ユニット504が分離媒体再生機能で動作しているとき、バルブ512および524は、それぞれ、ライン506および518を通るフローを可能にするために開いており、一方、バルブ514および522は、それぞれ、ライン508および516を通るフローを防止するために閉じている。
【0051】
同様に、臭化水素分離機能での第二のデュアル機能ユニット504の、分離媒体再生機能での第一のデュアル機能ユニット502の運転との、同時運転は、インラインバルブ512、514、522、524の位置の協調制御によって果たされる。詳細には、第二のデュアル機能ユニット504が臭化水素分離機能で動作しており、第一のデュアル機能ユニット502が分離媒体再生機能で動作しているとき、バルブ512および524は、それぞれ、ライン506および518を通るフローを防止するために閉じており、一方、バルブ514および522は、それぞれ、ライン508および516を通るフローを可能にするために開いている。
【0052】
システム運転者は、上で説明したやり方でバルブ512、514、522、524の操作により、2つのユニット502、504の機能を切り替える(すなわち、スイングさせる)。機能切り替えは、分離媒体がその臭化水素リッチガス負荷限界(すなわち、飽和)に達する時点でもしくは好ましくは該時点の前に、かつ/または分離媒体が、さらなる臭化水素リッチガスを吸着する能力低下を実質的に示す前に行う。
【0053】
第一のデュアル機能ユニット502が、臭化水素分離機能で動作しており、第二のデュアル機能ユニット504が分離媒体再生機能で動作しているとき、システム運転者は、第一の残留ガス出口ライン510および/または第二の臭化水素リッチガス出口ライン518を監視して、機能切り替え点を決めることができる。しかし、機能切り替えは、好ましくは時限的に行い、好ましくは、第一の残留ガス出口ライン510の残留ガス中の臭化水素の濃度が約0〜1mol%を超える前または第二の臭化水素リッチガス出口ライン518の臭化水素リッチガス中の臭化水素の濃度が約90〜100%未満に降下する前の切り替え時間を選択して行う。
【0054】
同様に、第二のデュアル機能ユニット504が、臭化水素分離機能で動作しており、第一のデュアル機能ユニット502が分離媒体再生機能で動作しているとき、システム運転者は、第二の残留ガス出口ライン520および/または第二の臭化水素リッチガス出口ライン508を監視して、機能切り替え点を決めることができる。しかし、機能切り替えは、好ましくは時限的に行い、好ましくは、第二の残留ガス出口ライン520の残留ガス中の臭化水素の濃度が約0〜1%を超える前または第一の臭化水素リッチガス出口ライン508の臭化水素リッチガス中の臭化水素の濃度が約90〜100%未満に降下する前の切り替え時間を選択して行う。
【0055】
スイング再生モードで動作するシステム500の全サイクル、および相応じて臭化水素回収工程は、機能切り替えを2回行ったときに、すなわち各ユニット502、504が、臭化水素分離機能の全期間を1回および分離媒体再生機能の全期間を1回完了したときに完了する。システム500は、システム500が運転中である限り継続的にさらなるサイクルを繰り返す。従って、スイング再生動作モードは、連続運転動作モードによく似ている。
【0056】
臭化水素回収工程は、スイング再生モードでの場合、臭化水素分離機能を行うときにユニットのサイクル時間および運転条件を、残留ガス中の臭化水素の有意なブレークスルーを伴うことなく分離媒体上への臭化水素リッチガスの実質的な負荷を可能にするのに十分な値に設定するやり方で好ましくは運転する。同様に、分離媒体再生機能を行うときのユニットのサイクル時間および運転条件を、ユニット内の分離媒体からの臭化水素リッチガスの実質的な脱着を可能にするのに十分な値に設定する。これにより、結果として分離媒体は最適に利用されることとなる。
【0057】
システム500を、説明のために2つのデュアル機能ユニットを有するものとして図3に示し、上で説明している。しかし、本発明がこの様式に限定されないことは理解される。示してはいないが、臭化水素回収工程の容量および/または効率を増加させるために3つ以上のデュアル機能ユニットの相互接続されたネットワークを利用することは、当業者の知識の範囲内であり、本発明の範囲内である。すべてのユニットは、好ましくは、互いに並行して協動的に動作し続ける。しかし、当業者には明らかであるように、各ユニットの個々の動作は、2ユニットに関して上で説明したのと実質的に同じであり、実質的に同じ結果を達成する。
【0058】
3つ以上のデュアル機能ユニットの使用には、時差運転を可能にする追加の利点があり、詳細には、この時差運転により、有利なことに吸着段階と脱着段階の間での各ユニットの減圧および再加圧が可能になる。当業者には明らかであるように、有利なことに、この時差運転により、運転者は、各吸着または脱着段階後にユニット内に残存する残留ガスをパージしてシステム500からの残留ガスの損失を最小にすること、ならびにパージおよび/または減圧中の段階間のフローの中断を回避することもできる。
【0059】
図1に概念的に示す臭化水素回収工程のもう1つの代替実施形態では、臭化水素リッチガスが極低温手段によりフィードガスから分離され、回収される。この実施形態を図には示していないが、この実施形態の実施は、システム410の臭化水素分離および分離媒体再生ユニット414、416またはシステム500の第一および第二デュアル機能ユニット502、504を単に従来の極低温分別ユニットと交換することによって果たされる。フィードガスは、システム410または500のフィードガスライン412と同一であるフィードガスライン経由で、極低温分別ユニットに直接導入される。結果として生じる臭化水素リッチガスは、その極低温分別ユニットから排出され、システム410または500の臭化水素リッチガスライン434と同一である臭化水素リッチガスライン経由で、図1に概念的に示す熱酸化工程に搬送される。前記極低温分別ユニットは、概して、約40bar〜約5barの範囲の圧力および約−50℃〜約−150℃の範囲の最低温度で運転される。
【0060】
本発明の方法を実施するために使用する臭化水素変換システムにおいて上述の臭化水素回収工程の実施形態のどれを用いるかに関係なく、臭化水素回収工程の結果として生ずる初期臭化水素リッチガスは、図2または3に示す臭化水素リッチガスガスライン434経由で熱酸化工程に送られる。
【0061】
場合によっては、フィードガスライン412で供給されたフィードガスは、臭化水素回収工程が不必要である十分に高い臭化水素濃度を有することがある。これらの場合、フィードガスライン412は水素回収工程を迂回し、熱酸化工程に送るための臭化水素リッチガスライン434にフィードガスを直接導入する。従って、これらの場合、初期臭化水素リッチガスとフィードガス、すなわち臭化水素含有ガスは同じである。
【0062】
図2または3のいずれかを参照して、両方の実施形態の熱酸化工程が、臭化水素リッチガスライン434の下流端部に位置する熱酸化ユニット436を含む。熱酸化ユニット436は、直列に混合ゾーン438および熱酸化ゾーン440に区画分けされている。熱酸化ユニット436は、混合ゾーン438と流体連通している酸素含有ガスライン442を有し、このライン442が、酸素含有ガスの混合ゾーン438への導入を可能にする。酸素含有ガスは、純粋な酸素および酸素と他のガスの混合物を含めて実質的にいずれの酸素含有ガスであってもよいが、好ましくは、酸素含有ガスは乾燥ガスである。酸素含有ガスは、上で述べたように純粋な酸素であってもよいが、好ましい酸素含有ガスは、一般には、より対費用効果が高く運転に適便な代替品である空気である。
【0063】
熱酸化ユニット436は、第一のトリムヒーター444および第二のトリムヒーター446を場合により含み、これらは代替的にスタートアップヒーターと呼ばれる。自由選択の第一のトリムヒーター444は、混合ゾーン438に入る臭化水素リッチガスを予熱するために臭化水素リッチガスライン434内にあり、一方、自由選択の第二のトリムヒーター446は、混合ゾーン438に入る酸素含有ガスを予熱するために酸素含有ガスライン442内にある。熱酸化ユニット436は、熱酸化ゾーン440内に位置するパイロットバーナー448および液噴インジェクタ450も場合により含む。パイロットバーナー燃料ライン452は、自由選択のパイロットバーナー448と連通していて該パイロットバーナー448に従来の燃料を補給する。
【0064】
熱酸化ユニット436の運転は、臭化水素リッチガスおよび酸素含有ガスをそれぞれ臭化水素リッチガスライン434および酸素含有ガスライン442経由で混合ゾーン438に導入することにより開始される。混合ゾーン438における臭化水素リッチガスと酸素含有ガスの混合は、好ましくは、任意の数の従来の混合器具(当業者に公知である器具)の1つによって果たされる。ここで役立つ例示的混合器具としては、ジェット型インジェクタ、旋回安定化ミキサ、ベンチュリエダクタおよびこれらに類するものが挙げられる。結果として生じるガス混合物を本明細書では熱酸化フィードガスと呼ぶ。熱酸化フィードガスは、好ましくは、約4:1.05〜4:1.5の範囲、そしてさらに好ましくは約4:1.1〜4:1.2の範囲の臭化水素の酸素に対するモル比を有する。言い換えると、熱酸化フィードガスは、好ましくは、完全反応のための化学量論的要求量に対して約5〜50%過剰な酸素、そしてさらに好ましくは約10%〜20%過剰な酸素を有する。
【0065】
自由選択の第一のトリムヒーター444が臭化水素リッチガスライン434内に備えられている場合、臭化水素リッチガスは、好ましくは、混合ゾーン438の上流で約150℃〜約250℃の範囲の温度に予熱される。予熱しない場合、臭化水素リッチガスは、好ましくは、約70℃〜約150℃の範囲の温度で混合ゾーン438に導入される。いずれの場合も、臭化水素リッチガスは、好ましくは、約1bar〜約20barの範囲の圧力で混合ゾーン438に導入される。
【0066】
自由選択の第二のトリムヒーター446が酸素含有ガスライン442に備えられている場合、酸素含有ガスは、好ましくは、混合ゾーン438の上流で約150℃〜約250℃の範囲の温度に予熱される。予熱しない場合、酸素含有ガスは、好ましくは、約70℃〜約150℃の範囲の温度で混合ゾーン438に導入される。いずれの場合も、酸素含有ガスは、好ましくは、約1bar〜約20barの範囲の圧力で混合ゾーン438に導入される。
【0067】
上に挙げた温度範囲内への臭化水素リッチガスおよび酸素含有ガスの予熱は、このフィード混合物が、熱酸化ユニット436の熱酸化ゾーン440内で再循環熱反応ガスとの混合によりさらに加熱されたとき、熱酸化反応を有利に開始させることができる。場合により、少量の触媒を混合ゾーン438においてまたは熱酸化ゾーン440の入口端部において用いて、混合ゾーン438内または熱酸化ゾーン440の入口端部内での熱酸化反応を開始させてもよい。この熱酸化反応は、下記の反応式:
4HBr(g)+O(g)→2Br(g)+2H
による臭化水素酸化反応として特徴づけられる。
【0068】
混合ゾーン438内で熱酸化フィードガスが形成され次第、熱酸化フィードガスは迅速に熱反応ゾーン440に移送される。好ましくは、熱酸化ゾーン440は、廃ガス酸化プロセス用の従来の熱酸化ユニットに用いられているものなどの、高温に適する耐火性ラインを有する密閉容器、チャンバ、コンテナまたはこれらに類するものである。混合ゾーン438が、上に列挙したタイプの単なる機械混合器具である場合、その混合器具は、熱酸化フィードガスを熱酸化ゾーン440に直接排出する。
【0069】
熱酸化フィードガスは、好ましくは、熱酸化ゾーン440内での高温反応ガスの再循環をもたらすのに十分な運動エネルギーを有するジェットとして熱酸化ゾーン440に排出される。ガス再循環は、熱酸化フィードガスの加熱および高温再循環ガスとの混合をもたらし、その結果、約650℃〜約800℃の最低均一熱酸化反応開始温度が達成される。これが、熱酸化ゾーン440内で熱酸化反応を開始させ、それを持続的にさせる。
【0070】
始動中に熱酸化ゾーン440を予熱するためにおよびその後、熱酸化反応の開始を保証するために、場合により小型パイロットバーナー448を運転してもよい。あるいは、または加えて、反応を開始させるために少量の触媒を混合ゾーン438内でまたは熱酸化ゾーン440の入口端部で用いてもよい。反応を開始させるために使用することができる触媒の非限定的な例としては、熱安定性遷移金属酸化物、例えば酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロムもしくは希土類酸化物およびこれらに類するもの、または白金、ルテニウムもしくは他の白金族金属またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0071】
いずれの場合も、約650℃〜約800℃の最低均一熱酸化反応開始温度を達成し、それによって熱酸化ゾーン440内で均一な熱酸化反応を開始させるために、1)酸化フィードガスの予熱および再循環ガスとの混合;2)パイロットバーナー448による熱酸化フィードガスの始動時加熱;もしくは3)少量の開始触媒と併用での熱酸化フィードガスの予熱のいずれかの使用、またはこれらの任意の併用が好ましい。
【0072】
熱酸化反応開始温度が達成され次第、熱の喪失を最少にすれば、熱酸化ゾーン440内で熱酸化反応が相当急速に進行する。従って、熱酸化ゾーン440内での反応条件は、断熱条件に近い。反応による大きな発熱に起因して、反応するガスの個々の組成、および過剰酸素の存在、および空気を酸化性ガスとして利用する場合に存在することがある窒素などの不活性ガスの存在に依存して、反応ガスの温度は急速に約800℃超に上昇し、反応が進むにつれて約1000℃〜1200℃の範囲まで達することがある。
【0073】
上に挙げた臭化水素酸化反応式に従って臭化水素の臭素元素への実質的変換を達成するために、熱酸化ゾーン440を約950℃〜約1100℃の範囲の温度および約1bar〜約20barの範囲の圧力に維持することが好ましい。加えて、熱酸化ゾーン440内での熱酸化フィードガスの好ましい滞留時間は、約1秒と約10秒の間の範囲である。
【0074】
熱酸化ゾーン440内で比較的高い反応温度を維持するために好ましい手段は、図2および3に再循環矢印によって示すように、熱酸化ゾーン440の下流端部の高温熱酸化反応ガスの一部を熱酸化ゾーン440の上流端部に継続的に再循環させて戻す手段である。再循環された高温ガスは、混合ゾーン438から熱酸化ゾーン440に入ってくる新しい熱酸化フィードガスと接触して混ざり、それにより新たな熱酸化フィードガスおよび再循環ガスを熱酸化反応開始温度に加熱し、反応を持続的にさせる。
【0075】
高温熱酸化反応ガスの再循環を果たすために、熱酸化ゾーン440内に場合により内部バッフルを取り付けることができる。熱酸化ゾーン440を場合により多数のサブゾーンに細分することもできる。これらの下流サブゾーンは、所望に応じて、熱酸化反応が起きる熱酸化ゾーン440内での追加の滞留時間をもたらす。高温使用に適するセラミックまたは他の耐火材から成る充填材を熱酸化ゾーン440内に配置して、そこでの混合および加熱を助長すること、ならびに余熱により運転の安定性をもたらすことができる。充填材は、無作為不規則充填材(randomly−dumped packing)である場合もあり、または構造充填材である場合もある。
【0076】
熱酸化ゾーン440内の反応温度を維持する際に再循環高温熱酸化反応ガスを補給するために追加の自由選択の熱源を設けることもできる。さらに、自由選択の第一および第二のトリムヒーター444、446と共に、上で述べたように混合ゾーン438においてまたは熱酸化ゾーン440の入口端部において少量の触媒を用いると、実務者は、混合ゾーン438内で熱酸化反応を開始させるならびに熱酸化ゾーン440内で所望の反応温度を達成および維持するといった望ましい効果を達成することができる。これにより、所望に応じて熱酸化ゾーン440内で高温ガスを再循環させる必要または臭化水素リッチガスおよび/もしくは酸化性ガスのフローもしくは組成物の小さな偏りもしくは乱れを補償する必要を低減するまたはなくすことができる。
【0077】
自由選択のパイロットバーナー448を、自由選択の第一および第二のトリムヒーター444、446の代わりにまたはこれらに加えて補助熱源として用いることもできる。混合ゾーン438に隣接する熱酸化ゾーン440の上流端部に位置するパイロットバーナー448にパイロットバーナー燃料ライン452経由で従来の燃料を送る。パイロットバーナー448での従来の燃料の燃焼により、それがトリムヒーターとして機能して、所望に応じて制御された様式で熱酸化ゾーン440内の最低反応温度を維持できる。予熱しない場合、パイロットバーナー448を用いて、上で述べたように熱酸化反応を開始させることもできる。
【0078】
さらにもう1つの代替補助熱源は、関連上流プロセスからの廃熱である。例えば、液体炭化水素を生産するための気体アルカン変換プロセス、例えば臭素化/合成プロセスも、本方法の熱酸化ゾーン440において役立ち得る廃熱を概してもたらす。
【0079】
本反応におけるような乾燥気体臭化水素の熱酸化は、熱酸化ゾーン440を越えて下流に移動する大きな熱増加を特徴とする。この温度勾配は、この反応の発熱性と、熱酸化フィードガス中の蒸気の非存在または比較的少量の蒸気の存在による反応物の比較的低い熱容量とに起因し得る。熱酸化ゾーン440内で熱酸化反応を開始させるためにおよび/または熱酸化ゾーン440内の反応温度を維持するために上で説明したような高温ガスの再循環によってこの温度勾配を有利に使用することができるが、熱酸化ゾーン440内で発生する高温には固有の欠点もある。
【0080】
熱酸化ゾーン440内での高温は、臭化水素変換反応の高い変換率に最も有効である公知の触媒、例えばCuBrまたはCeBr、にとって有害である。詳細には、そのような触媒は、熱酸化反応ゾーン440に関して考えられる運転温度で不安定であり、これは、触媒活性の喪失の原因となり、ならびに下流プロセス装置を汚す可能性もある。従って、好ましい実施形態において、熱酸化ゾーン440には実質的に触媒がない。しかし、自由選択の充填材が熱酸化ゾーン440に配置される代替実施形態では、熱酸化ゾーン440の入口端部付近の充填材の一部分または層を、熱酸化ゾーン440内での高温で上に挙げた最活性触媒より大きな安定性を示す触媒活性物質でコーティングすることができる。これらの触媒活性物質は、熱酸化ゾーン440内での高温熱酸化反応を開始および/または促進する。本実施形態において役立つ触媒活性物質の例示的クラスとしては、揮発性金属臭化物または揮発性希土類臭化物を形成しない、遷移金属酸化物または希土類酸化物が挙げられる。あるいは、白金族金属と同じ触媒活性物質から形成された触媒性金網、メッシュまたはこれらに類するものを熱酸化ゾーン440内に配置して、高温熱酸化反応を開始および/または促進することができる。
【0081】
熱酸化ゾーン440において発生する高温のもう1つの固有の欠点は、熱酸化反応ゾーン440に関して考えられる高い運転温度での臭化水素変換反応に課せられる平衡制限である。図4は、臭化水素の完全反応に必要とされる理論量より20%過剰な空気と臭化水素の熱酸化反応についての熱力学平衡計算を温度に対してグラフで表示するものである。反応度が、約500℃より高い温度では100%未満の完了に制限されることがわかる。従って、例えば、この温度平衡制限は、約1000℃の断熱熱酸化反応温度では、気体運動論的反応速度に依存して、約91%の理論最大値に臭化水素変換率を制限するだろう。
【0082】
この平衡制限は、図2および3に示すように熱酸化ゾーン440において自由選択の液噴インジェクタ450を用いることによってある程度緩和することができる。本プロセスの代替実施形態によると、液滴の噴霧物が熱酸化ゾーン440経由で液噴インジェクタ450に導入される。噴霧された液滴は蒸発し、一部分は熱酸化反応ガスを冷却する。この部分的冷却は、熱酸化反応ゾーン440内での温度上昇を和らげるといった望ましい効果を及ぼすことができ、その結果、図4に示しかつ上で説明した平衡制限を低減することができる。しかし、より低い温度では運動論的反応速度が低下し、その結果、望ましい、より高い変換率を達成するために追加の滞留時間が必要となる可能性が高い。
【0083】
1つの実施形態によると、熱酸化反応ゾーン440に噴霧される液体は、水性臭化水素酸または何らかの他の臭化物含有液体廃棄物流である。この水性臭化水素酸は、臭化水素回収プロセスから得ることができる。例示的臭化水素回収プロセスは、液体炭化水素生成物流からの、多工程向流抽出カラム内のその流れの水洗による、残留臭化水素の除去である。いずれの場合も、液体噴霧物中の気化された臭化物含有化合物が臭化水素リッチガス中の臭化水素と共に熱酸化ゾーン440において熱酸化されて、熱酸化ゾーン440において生成される臭素元素の量を補充する。
【0084】
混合ゾーン438および熱酸化ゾーン440は、説明のために、単一ユニタリー構造に一体化されているように図2および3に示し、上で説明している。しかし、本発明がこの様式に限定されないことは理解される。示してはいないが、混合ゾーン438および熱酸化ゾーン440を互いに流体連通している別々の構造で収容することは、当業者の知識の範囲内であり、本発明の範囲内である。
【0085】
熱酸化ゾーン440の下流端部の高温熱酸化反応ガスを熱酸化流出ガスと呼ぶ。この熱酸化流出ガスは、臭素元素、蒸気、未変換臭化水素および過剰酸素を含む。空気が酸素含有ガスであるとき、熱酸化流出ガスは、酸素に加えて他の空気成分、例えば窒素および二酸化炭素をさらに含む。熱酸化流出ガスは、好ましくは、約950℃〜約1100℃の範囲の温度および約1〜約100barの範囲の圧力である。好ましくは、熱酸化ガス中の臭素元素の量は、臭化水素回収工程から臭化水素リッチガスライン434に排出される臭化水素リッチガス中に存在する臭化水素の約80%〜約95%の範囲の熱酸化工程における臭化水素変換率に相当する。
【0086】
熱酸化ユニット436は、熱酸化流出ガス出口ポート454をさらに有する。この熱酸化流出ガス出口ポート454から図1に概念的に示す触媒酸化工程へと熱酸化流出ガスライン456が伸びている。本実施形態の触媒酸化工程は、熱酸化流出ガス入口ポート460を有する熱酸化流出ガスライン456の下流端部に位置する触媒反応器458を含む。従って、熱酸化流出ガスは、熱酸化ユニット436から熱酸化流出ガス出口ポート454および熱酸化流出ガスライン456経由で触媒反応器458に搬送され、熱酸化流出ガス入口ポート460経由で触媒反応器458に導入される。
【0087】
廃熱回収熱交換器462が熱酸化流出ガスライン456内にあり、これは熱酸化流出ガスを約250℃〜約335℃の温度に冷却し、それによって熱酸化ゾーン440からの廃熱を回収する。好ましくは、廃熱回収熱交換器462内の熱交換面の温度は、熱酸化流出ガスの露点より上で維持されるので、然程高価でない材料、例えばニッケルまたはニッケル含有金属合金を廃熱回収熱交換器462の構成に使用することができる。
【0088】
触媒反応器458は、高活性酸化触媒床が入っている密閉容器、チャンバ、コンテナまたはこれらに類するものである。触媒反応器において役立つ高反応性酸化触媒の代表的クラスとしては、遷移金属酸化物、遷移金属臭化物、希土類酸化物、希土類臭化物またはこれらの組み合わせが挙げられ、さらに、これらを直接使用することができ、または酸化物、炭化物もしくは窒化物担体上に分散させることができる。これらの代表的高反応性酸化触媒の中で、アルミナに担持されたCuO/CuBrまたはアルミナもしくはジルコニアに担持されたCeBrが好ましい。熱酸化流出ガスは、約250℃〜約345℃の範囲の反応器入口温度および約1bar〜約20barの範囲の圧力の触媒反応器458内で高活性酸化触媒床と断熱的に接触して、熱酸化流出ガス中の残存臭化水素の変換を本質的に完了させる。従って、前記高活性酸化触媒は、上で述べた反応式での臭化水素変換反応の少なくとも約5%〜約20%を完了させる。
【0089】
触媒反応器458内の触媒床と接触する未変換臭化水素の量は、フィードガス中に最初に存在する全臭化水素の比較的少量であるので、未冷却断熱触媒反応器458全体にわたっての温度上昇は比較的小さい。従って、触媒反応器458の出口温度を、好ましくは約300℃〜約450℃の範囲、そしてさらに好ましくは約325℃〜約350℃の範囲に維持することができ、これにより酸化触媒の長期安定性が維持される。
【0090】
触媒反応器458は、触媒反応器流出ガスを排出する触媒反応器流出ガス出口ポート464を有する。熱酸化および触媒酸化工程は、フィードガス中の臭化水素の臭素元素への本質的に完全な変換を達成するので、触媒反応器流出ガスは、臭素元素、蒸気、過剰酸素および任意の残存未反応成分、例えば酸素以外の空気成分から主として成る。触媒反応器流出ガス出口ポート464から図1に概念的に示す分離および生成物回収工程へと触媒反応器流出ガスライン466が伸びている。
【0091】
本実施形態の分離および生成物回収工程は、急冷/コンデンサ468、三相気/液/液分離器470、ガス処理ユニット472および水性液処理ユニット474を含む。触媒反応器流出ガスは、触媒反応器流出ガス出口ポート464および触媒反応器流出ガスライン466経由で急冷/コンデンサ468へと搬送される。触媒反応器流出ガスは、急冷/コンデンサ468で急冷され、約1〜約20barの範囲の圧力で約5℃〜約60℃の範囲の温度に冷却され、それによりガスの実質的な部分が液体に凝縮される。この結果が、気相と、より重い臭素元素液相と、より軽い水性液相とを含む三相混合物である。この三相混合物がコンデンサ出口ライン476経由で三相気/液/液分離器470に搬送され、そこで気相、水性液相および臭素元素液相すべてが互いに分離される。
【0092】
臭素元素液相は、三相気/液/液分離器470の底部から抜き取られる。この臭素元素液相は、液体状態の本質的に純粋な臭素元素であり、水に溶解したほんの微量、典型的には約0.3重量%の残留物を含有し、微量の未反応臭化水素を含有する可能性がある。臭素元素液相は、上で説明した上流プロセスから回収された大量の臭素元素生成物を含有する。この臭素元素生成物が三相気/液/液分離器470から臭素元素生成物回収ライン477経由で回収される。
【0093】
三相気/液/液分離器470の頂部から抜き取られる気相は、酸素含有ガスライン442内の酸素含有ガスが空気である場合には主として酸素枯渇空気を含み、または酸素含有ガスライン442内の酸素含有ガスが純粋な酸素である場合には主として酸素を含む。この気相は、急冷/コンデンサ468において凝縮されない一切の残留臭素元素も含む。この気相中の臭素元素の濃度は、好ましくは約1mol%〜約10mol%の範囲である。
【0094】
より高いシステム運転作業圧およびより低い急冷/凝縮温度は、凝縮を最大にし、その結果、三相分離器から出て行く気相中の残留臭素濃度は最小になる。逆に、より低い圧力およびより高い急冷/凝縮温度での運転は、気相中のより高い残留臭素蒸気濃度をもたらす結果となるだろう。
【0095】
この気相が分離器気相出口ライン478経由でガス処理ユニット472に搬送される。このガス処理ユニット472は、システム410の指定サイズおよび運転条件用に当業者によって選択される、ガス流からハロゲンをほぼ完全に回収できる実質的に任意の従来の操作ユニット、例えば、吸収ガススクラビングユニット、固体床式吸収ユニットまたはこれらに類するものである。ガス処理ユニット472は、気相から臭素元素を除去する。残存する実質的に臭素のない気相は、ベントライン480経由でガス処理ユニット472から排出され、一方、残留臭素元素は、ガス処理ユニット472から回収されて、ガス処理臭素回収ライン482経由で臭素元素生成物回収ライン477に送られる。
【0096】
三相気/液/液分離器470中のより重い臭素元素液相からデカントされるより軽い水性液相は、水およびそれに溶解した多少の残留臭素元素から主として成る。水性液相の第一の部分は、インライン冷却器494内での再利用された第一の水性液相部分の第一の冷却後、インラインポンプ484によりコンデンサ再利用ライン492経由でクエンチ/コンデンサ468に戻される。冷却された第一の水性液相部分は、クエンチ/コンデンサ468のための冷媒として機能する。第二のより軽い水性液相部分は、インラインポンプ484により分離器水性液相出口ライン486経由で水性液処理ユニット474に搬送される。水性液処理ユニット474は、システム410の指定サイズおよび運転条件用に当業者によって選択される、液体流から溶解したハロゲンを回収できる実質的に任意の従来の操作ユニット、例えば、蒸留塔、再沸ストリッパ塔、固体床式吸収ユニットまたはこれらに類するものである。
【0097】
水性液処理ユニット474は、水性液相から溶解臭素元素を除去する。その臭素元素は、その水性液処理ユニット474から水性液処理臭素回収ライン488経由で回収され、臭素元素生成物回収ライン477に送り込まれる。実質的に臭素の無い水性液相は、ドレインライン490経由で水性液処理ユニット474から排出される。
【0098】
あるいは、インライン冷却器494内での再利用された実質的に臭素を含まない水性液相の第一の冷却後、この実質的に臭素を含まない水性液相の一部分をコンデンサ再利用ライン492経由でクエンチ/コンデンサ468に戻してもよい。溶解臭素を含有する、三相分離器470から出て行く水性液相を使用する代わりに、これを行ってもよい。この代替実施形態(図示せず)では、水性液相から腐食性の溶解臭素を回収するため、安価な材料をインライン冷却器494の構成に利用することができよう。しかし、この利点は、より大きい最大許容量の水性液処理ユニット474によって必要とされる出費増加により相殺される。
【0099】
以下の実施例は、臭化水素の臭素元素への変換を可能にする本発明の範囲および有用性を実証するものである。しかし、これらの実施例を本発明の範囲を制限するものとみなしてはならない。
【実施例】
【0100】
実施例1
1インチID(21mm)を有し、かつ、46インチ(1168mm)の長さである石英管を本実施例の反応器として用いる。この管長の最初の半分は、1/4インチ(6.4mm)セラミックベルサドル(Berl saddle)の充填材が入っている充填部である。その管長の残りの半分は開放されている。2つの加熱ゾーンを有する電気炉内にこの管を置く。各加熱ゾーンは、12インチ(305mm)の長さである。管の充填部を第一加熱ゾーンに配置し、この充填部はおおよそ55cmの空隙容積を有する。その管の開放部を第二の加熱ゾーンに配置し、この開放部は、おおよそ105cmの容積を有する。
【0101】
一連の熱試験である実行T−1〜T−7を前記反応器内で行い、各試験実行は、異なる動作パラメータセットを有する。各熱試験実行において、過剰空気および気体臭化水素を前記管の充填部に所望の送り量で送る。充填部の最初の長さは、反応物混合および予熱ゾーンとして機能する。充填部に取り付けられた0.25インチ(6.4mm)OD内部石英サーモウェルとスライド式熱電対を協調利用して充填部の温度プロフィールを判定する。フィードガスが加熱ゾーン内の充填部の中、約4インチ(102mm)の点に達すると、該フィードガスが炉温にほぼ等しくなることが観察される。従って、充填部の最初の4インチが反応物混合および予熱ゾーンを規定し、一方、50%空隙容積を有する該充填部の最後の8インチ(203mm)と、開放部の全長が、熱酸化反応器ゾーンを規定する。従って、この石英管は、図2および3に示すような混合ゾーン438および熱酸化ゾーン440に直列に区画分けされた熱酸化ユニット436の様式で機能する。
【0102】
反応器ゾーン内での気体反応物の滞留時間を算出する。反応器ゾーンから排出される、結果として生じる気体流出物を水冷コンデンサに輸送し、そこで液体臭素元素相および水性液相をコンデンサ流出物として得る。そのコンデンサ流出物を一連の5台の気−液インピンジャー経由で輸送してそのコンデンサ流出物から臭素元素および一切の未反応臭化水素を回収する。最初の2台のインピンジャーには0.1N HSOが入っており、3番目のインピンジャーには水が入っており、4および5番目のインピンジャーには5%NaOHと5%NaSOの水性混合物が入っている。
【0103】
液体臭素元素相および水性液相を計量し、分析する。このデータを5台のインピンジャー溶液の分析と共に用いて、熱酸化反応器ゾーンから回収された臭素元素と臭化水素の総量を決定し、それにより熱酸化反応器ゾーンにおける臭化水素変換百分率を決定する。
【0104】
各試験実行の動作パラメータおよび結果を下の表1に示す。
【0105】
【表1】

図5は、熱酸化反応器ゾーンにおける臭化水素変換率に対する反応器温度の影響を示すグラフ描写である。
【0106】
実施例2
一連の追加の熱試験である実行T−7〜T−10を実施例1と同じ装置においておよび同じ分析法を用いて実施する。しかし、本実施例の焦点は、化学量論量に対して過剰な空気の量を変化させることが熱酸化反応器ゾーンにおける臭化水素変換率に及ぼす影響を判定することである。加えて、試験実行T−10におけるフィードガス・スループットを減少させて、高過剰空気の熱酸化反応器ゾーンにおける反応物滞留時間増加の臭化水素変換率に対する影響を判定する。
【0107】
これらの追加の試験実行の動作パラメータおよび結果を下の表2に示す。試験実行T−2およびT7の結果も比較のために表1のものを繰り返す。
【0108】
【表2】

図6は、熱酸化反応器ゾーンにおける臭化水素変換率に対する過剰空気の量の影響を示すグラフ描写である。
【0109】
実施例3
実施例1および2の石英管の充填を、実施例1および2と同じ特性を有するセラミックベルサドルを管の第一の加熱ゾーン全体に詰め込むことにより変更する。管の第二の加熱ゾーンの最初の5インチ(127mm)に50cmの触媒を充填し、この第二の加熱ゾーンの残りの7インチ(178mm)にセラミックベルサドルを詰め込む。従って、この石英管は、図2および3に示すような触媒反応器458の機能をシミュレートするものである。
【0110】
一連の触媒試験である実行C−1〜C−4を、上と同様の装置において同じ分析法を用いて行って、より低い温度範囲内で動作したときの触媒が臭化水素の酸化に及ぼす影響を判定する。これらの触媒試験実行の動作パラメータおよび結果を下の表3に示す。
【0111】
【表3】

表3に示した結果は、好ましく活性はより高いが、熱安定性がより低いCuO触媒が、約350℃という相対的に低い温度において指定試験条件で相当に高い変換率を達成することを示している。比較して、一般に活性はより低いが、熱安定性がより高いのNiO触媒は、同様の臭化水素変換率を達成するために約550℃という有意に高い温度で動作しなければならない。さらに、650℃と750℃以上の間の、より高い温度での、より活性の低いNiO触媒の動作は、より高い臭化水素変換率ではなく、より低い臭化水素変換率をもたらす。これは、図4に図示する臭化水素酸化反応の熱力学的平衡温度制限に基づいて予期されることに相反する。
【0112】
実施例4
図7を参照して、実施例4は、プロセスフロー線図で図式的に示す本発明の臭化水素変換方法の実施形態である。コンピュータシミュレーションを用いて、下記のようなプロセスの単位動作との関連でこのフロー線図に参照しやすく載せる流れを定義する:
601 HBrフィード:速度=8.65kg・モル/時;P=5bar;T=35℃
602 空気フィード:速度=11.57kg・モル/時(20%過剰);P=1bar;T=30℃
603 エアコンプレッサ:POUT=5bar
604 空気からのBrストリッパ:速度=2.34kg・モル/時;P=5bar;T=158℃
605 予熱交換器:TOUT=166℃
606 熱酸化反応器(耐火内張されたものなど)
607 ミキサ/高温ガス再循環ゾーン:TOUT=732℃
608 熱酸化ゾーン:TOUT=1001℃
609 ハイグレード熱回収交換器、TOUT=254℃
610 熱酸化反応器流出物:HBr出口部速度=0.866kg・モル/時(Brに90%変換)
611 触媒酸化反応器:TOUT=350℃、POUT=3.3bar
612 触媒床(CuO、CeBr、Crなど)
613 触媒酸化反応器流出物:HBr出口部速度=0.0029kg・モル/時(Brに99.97%変換)
614 ローグレード熱回収交換器:TOUT=115℃
615 コンデンサ:TOUT=20℃
616 三相分離器
617 三相分離器流出物:液体Br出口部速度=3.361kg・モル/時
618 三相分離器流出物:水性相出口部速度=4.221kg・モル/時(約0.3モル%Br
619 三相分離器流出物:蒸気相出口部速度=10.65kg・モル/時(9mol%Br、4mol%O、85mol%N、約1mol%HO)
620 Br回収システム(循環、再生溶剤、周期的再生固体吸着剤など)
621 Br回収システム流出物:Br出口部速度=0.96kg・モル/時(再生溶剤、吸着剤などから)
622 Br回収システム流出物:スクラブ洗浄ベント流出口部速度=9.689kg・モル/時(93.2mol%N、4.5mol%O、約1mol%HO、微量アルゴン、CO
623 水性臭素ストリッピングカラム
624 水性臭素ストリッピングカラム流出物:空気ストリッピング処理Br蒸気出口部速度=2.36kg・モル/時(77.5mol%N、20.4mol%O、約0.5%HO、約0.5mol%Br、微量アルゴン、CO
625 臭素ストリッピング・カラム・リボイラ:TOUT=60℃
626 ストリッピング処理水冷却器:TOUT=30〜50℃
627 ストリッピング処理水冷却器流出物:ストリッピング処理水出口部速度=4.198kg・モル/時(約99.93mol%HO、約0.0697mol%HBr)
628 最終生成物:Br出口部速度=4.323kg・モル/時
本発明の上記実施形態において役立つフィードガスは、一般に、臭化水素を含有する実質的に任意のガス、すなわち臭化水素含有ガス、として特徴づけられた。従って、フィードガスは、本質的に純粋な臭化水素ガスである場合もあり、または臭化水素と1つ以上の他の成分とを含有するガス混合物である場合もある。フィードガスは、関連供給源または無関係の供給源である上流プロセスから、多くの場合、採取される。用語「採取される」は、一定のプロセスガス流に関して本明細書において用いる場合、臭化水素含有ガスが初期臭化水素リッチガスより低い臭化水素濃度を有する場合にシステム410または500の臭化水素回収工程での加工のために臭化水素含有ガスを上流プロセスからフィードガスライン412に送ることを包含する。用語「採取される」は、初期臭化水素リッチガスと臭化水素含有ガスが同じである場合には殆どまたは全く追加の加工がないため臭化水素含有ガスを上流プロセスからシステム410または500の臭化水素リッチガスライン434に直接送ることも包含する。
【0113】
上流プロセスは、本発明の臭化水素変換方法が、フィードガスを採取する上流プロセスにその臭素元素生成物を再び搬送して戻すとき、「関連供給源」と呼ばれる。上流プロセスは、本発明の臭化水素変換方法が、ある使用者に、またはフィードガスを採取する上流プロセス以外の行先にその臭素元素生成物を搬送するとき「無関係の供給源」と呼ばれる。
【0114】
フィードガスを採取することができる関連上流供給源の一般的に言われる例は、有機または無機供給原料をより望ましい最終生成物に変換するためのプロセスである。1つのそのような典型的な変換プロセスでは、気体アルカンが臭素化され、結果として生じるアルキル臭化物が触媒合成されて液体炭化水素生成物を形成する。この合成反応は、本臭化水素変換方法のためのフィードガスとして特に適する臭化水素と低分子量の炭化水素との混合物を一般に含む副生成物ガスをもたらす。
【0115】
一部の事例では、上で述べたように、この副生成物ガスは、実質的に一切さらなる上流加工を伴わずにシステム410または500のフィードガスライン412にフィードガスとして直接導入することに適する状態である。他の事例では、システム410または500のフィードガスライン412への導入前に、システム410または500の上流で1つ以上の追加の前処理段階を行うことにより、その副生成物ガスをさらに加工することが望ましいことがある。例えば、そのような追加の前処理段階としては、加熱、冷却、膨張、圧縮、凝縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる。そのような追加の前処理段階(もしあれば)およびそれらを行う手法の適切な選択は、当業者の知識の範囲内であり、本発明の範囲内である。
【0116】
本臭化水素変換法のためのフィードガスの関連供給源であり得る、望ましい液体炭化水素を生成するための典型的な上流プロセスの詳細は、米国特許出願第12/123,924号(特許出願公開番号US 2008/0275284 A1)において具現されており、この特許出願は参照により本明細書に援用されている。これらの詳細を、図8〜21を参照して下の説明でも述べる。
【0117】
以下の説明を通して用いるとき、用語「低分子量のアルカン」は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはそれらの混合物を指す。同じくこの説明を通して用いるとき、「アルキル臭化物」は、一、二および三臭化アルカンを指す。加えて、図9および10にそれぞれ図示するライン11および111におけるフィードガスは、好ましくは天然ガスである。天然ガスを処理して硫黄化合物および二酸化炭素を除去することができるが、フィードガス中の少量、例えば約2mol%未満、の二酸化炭素は許容され得る。
【0118】
望ましい液体炭化水素生成物を生成するための例示的関連上流プロセスを一般的に描写するブロック・フロー線図を図8に図示し、一方、このプロセスの特定の実施形態を図9および10に図示する。図8について言えば、再利用ガスとフィードガスとで構成されるガス流を乾燥臭素蒸気と併せ、アルカン臭素化反応器に送る。このガス流は、好ましくは、低分子量の炭化水素を含む。このガス流と乾燥臭素蒸気をアルカン臭素化反応器内で反応させて、気体アルキル臭化物および臭化水素酸蒸気を生成する。結果として生じる気体アルキル臭化物および臭化水素酸蒸気をアルキル臭化物変換反応器に送り、そこで気体アルキル臭化物を反応させて、より高い分子量の炭化水素および追加の臭化水素酸蒸気を形成する。
【0119】
臭化水素酸除去ユニットにおいて再循環水溶液によって臭化水素酸蒸気をより高い分子量の炭化水素から除去する。この再循環水溶液が臭化水素酸(またはこの酸がその水溶液によって中和される場合には金属臭化物塩)を臭化物酸化ユニットに運ぶ。上流でまだ中和されていない場合、臭化水素酸を臭化物酸化ユニットにおいて中和して金属臭化物塩を形成する。いずれの場合も、酸素または空気を臭化物酸化ユニットに補給してその金属臭化物塩を酸化して臭素元素を形成し、それをアルカン臭化反応器に再利用する。
【0120】
天然ガスフィードも、より高い分子量の炭化水素および臭化水素酸蒸気と共に臭化水素酸除去ユニットに導入する。臭化水素酸蒸気を上で説明したようにそこで除去し、一方、天然ガスフィードおよびより高い分子量の炭化水素は、脱水および生成物回収ユニットに搬送し、そこで気相と液相を分離し、回収する。脱水および生成物回収ユニットからもたらされる再利用およびフィードガスのガス流は、残留プロセスガスおよび天然ガスフィードを含むものであり、これをアルカン臭素化反応器に搬送し、そしてまたこの脱水および生成物回収ユニットにおいてそのより高い分子量の炭化水素から水を除去して望ましい炭化水素液体生成物を得る。このようにして、図8に図示するプロセスは、低分子量の炭化水素から液体炭化水素生成物を生成する。
【0121】
図8に一般的に描写するプロセスの特定の実施形態を、図9を参照しながら下で説明する。約1bar〜約30barの範囲の圧力下のフィードガスと再利用ガスの混合物である、低分子量のアルカンを含有するガス流を、ライン62経由でライン25に搬送する。このガス流は、ポンプ24によりライン25経由で輸送された乾燥液体臭素とさらに混合する。このガス流と乾燥液体臭素が熱交換機26を通過し、ここで液体臭素が気化されて乾燥臭素蒸気になる。ガス流と乾燥臭素蒸気からの、結果として生じる低分子量のアルカンの混合物を第一反応器30に送る。この第一反応器30に導入される混合物中の低分子量のアルカンの乾燥臭素蒸気に対するモル比は、好ましくは2.5:1を上回る。第一反応器30は、前記混合物を約250℃〜約400℃の範囲の反応初期温度に加熱する入口部予熱ゾーン28を有する。
【0122】
低分子量のアルカンは、第一反応器30において約250℃〜約600℃の範囲の比較的低温で、かつ約1bar〜約30barの圧力で乾燥臭素蒸気と発熱反応して、気体アルキル臭化物および臭化水素酸蒸気を生成する。運転温度範囲の上限は、この臭素化反応の発熱性に起因して、そのフィード混合物を加熱する反応開始温度範囲の上限より高い。前記の低分子量のアルカンがメタンである場合、次の一般反応に従って臭化メチルが形成される:
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、臭化メチルに対して有意に高い選択性で起きる。さらに、モノハロゲン化臭化メチルへの選択性は、約4.5:1のメタン対臭素比を用いると、より小さいメタン対臭素比を用いて得られる選択性に比べて増加する。少量のジブロモメタンおよびトリブロモメタンもこの臭素化反応において形成される。より高級のアルカン、例えばエタン、プロパンおよびブタンも容易に臭素化され、その結果、一および多臭素化化学種、例えば臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルが生ずる。約2.5対1より有意に低いアルカン対臭素比を用いると、臭化メチルへのより低い選択性が生じ、望ましくない炭素すすの著しい形成が観察される。
【0123】
第一反応器30に送られる乾燥臭素蒸気は、実質的に無水である。第一反応器30における臭素化段階からの実質的にすべての水蒸気の除去は、望ましくない二酸化炭素の形成を実質的になくし、その結果、アルキル臭化物に対するアルカン臭素化の選択性が増加し、アルカンからの二酸化炭素の形成の際に発生する大量の廃熱がなくなることが見出されている。
【0124】
アルキル臭化物および臭化水素酸を含有する第一反応器30からの流出物をライン31経由で退出させ、熱交換器32において軽度に冷却した後、第二反応器34に搬送する。前記流出物が熱交換器32において軽度に冷却される温度は、第二反応器34においてアルキル臭化物をより高い分子量の炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約350℃の範囲であるか、または第二反応器34においてアルキル臭化物をオレフィンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。そのアルキル臭化物を第二反応器34において結晶性アルミノケイ酸塩触媒の固定床33で発熱反応させる。第二反応器34において用いる温度および圧力ならびに具体的な結晶性アルミノケイ酸塩が第二反応器34において形成される実際の生成物(単数または複数)を決める。
【0125】
固定床33における結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、より高い分子量の炭化水素の形成が望まれるときには、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒である。前記ゼオライト触媒は、好ましくは水素、ナトリウムまたはマグネシウム型のものであるが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、Na、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることにより合成される様々な孔径および酸度を有する他のゼオライト触媒を第二反応器34において使用することができる。
【0126】
第二反応器34においてオレフィンを形成することが望まれるとき、固定床33における結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはX型またはY型ゼオライト触媒である。好ましいゼオライトは、10XまたはY型ゼオライトであるが、当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライトをこのプロセスで使用することができる。好ましくはプロトン型、ナトリウム型、プロトン/ナトリウム混合型のゼオライト触媒を使用するが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。これらの様々な代替カチオンには反応選択性をシフトさせる効果がある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライトを第二反応器34において使用することができる。
【0127】
第二反応器34を運転する温度は、より高い分子量へのまたはオレフィンへの反応の選択性を決める上で重要なパラメータである。
【0128】
触媒を選択して第二反応器34においてより高い分子量の炭化水素を形成する場合、約150℃〜450℃の範囲内の温度で第二反応器34を運転することが好ましい。第二反応器34における約300℃より高い温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量を増加させる結果となるが、より低い温度は、より重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。前記温度範囲の下端で、例えば、150℃ほども低い温度でのZSM−5ゼオライトを用いる臭化メチル反応に関して、C+ 生成物への高い選択性と共におおよそ20%の臭化メチル変換率に注目される。この好ましいゼオライトZSM−5触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと環化反応も起きるので、C+ フラクションは置換芳香族から主として成る。
【0129】
300℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加する。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特に、望ましくないメタンへの選択性が増加する。驚くべきことに、エタンまたはC〜Cオレフィン成分は殆ど形成されない。450℃近くの温度で、臭化メチルのメタンへのほぼ完全な変換が起きる。
【0130】
約300℃と400℃の間の最適運転温度では、運転中に経時的に少量の炭素が反応の副生成物として触媒上に堆積していき、これは、反応条件およびフィードガスの組成に依存して数時間から数百時間までの範囲にわたって触媒活性が低下する原因となる。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、従って触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器34における約150℃〜約450℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約400℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズが最小化される。
【0131】
触媒を選択して第二反応器34においてオレフィンを形成する場合、約250℃〜500℃の範囲内の温度で第二反応器34を運転することが好ましい。第二反応器34における約450℃超の温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量およびコークスの分解も増加させる結果となるが、より低い温度は、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびより重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。この好ましい10Xゼオライト触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと環化反応も起きるので、C+ フラクションは実質的な置換芳香族を含有すると考えられる。
【0132】
400℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加すると考えられる。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特にオレフィンへの選択性が増加する。550℃を超える温度では、臭化メチルのメタンおよび炭素質コークスへの高い変換が起きると考えられる。
【0133】
約300℃と450℃の間の好ましい運転温度範囲では、運転中に経時的に触媒上に反応の副生成物として堆積するコークスの量がより少なくなる可能性が高い。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、そしてそれゆえに触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器34における約250℃〜約500℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約450℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいオレフィンおよびC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズが最小化される。
【0134】
前記触媒は、正常なプロセスフローから第二反応器34を断路することにより現場で定期的に再生することができる。断路したら、ライン70経由で約1〜約5barの圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の不活性ガスで第二反応器34をパージして、実際に役立つ限り、触媒に吸着された未反応材料を除去する。その後、第二反応器34にライン70経由で約1bar〜約5barの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の空気または不活性ガスで希釈した酸素を加えることにより、その脱着された炭素をCOに酸化する。この再生期間中に二酸化炭素および残留空気または不活性ガスを第二反応器34からライン75経由で排気する。
【0135】
臭化水素酸およびより高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物を含む第二反応器34の流出物をライン35経由で退出させ、交換器36において0℃〜約100℃の範囲の温度に冷却する。ライン35中の冷却された流出物をライン12の中で炭化水素ストリッパ47からの蒸気流出物(フィードガスと炭化水素ストリッパ47内でのフィードガスとの接触によりストリッピングされたより高い分子量の残留炭化水素とを含有する)と併せる。結果として生じる併せた蒸気混合物をスクラバ38に進ませ、ライン41経由でスクラバ38に輸送される、濃縮された部分酸化金属臭化物塩水溶液と接触させる。
【0136】
前記濃縮された部分酸化金属臭化物塩水溶液は、金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの化学種の混合物を含有する。前記臭化物塩の好ましい金属は、Fe(III)、Cu(II)もしくはZn(II)またはこれらの混合物であり、これらは、然程高価でなく、約120℃〜約180℃の範囲の低い温度で容易に酸化し、それ故、ガラス内張またはフルオロポリマー内張装置の使用を可能にする。しかし、酸化性臭化物塩を形成するCo(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)または他の遷移金属もこのプロセスでは使用することができる。あるいは、同じく酸化性臭化物塩を形成するアルカリ土類金属、例えばCa(II)またはMg(II)を使用することができる。臭化水素酸を前記水溶液に溶解させ、金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの化学種の混合物によって中和して、溶解した状態の金属臭化物塩と水をもたらし、それらをライン44経由でスクラバ38から除去する。スクラバ38において凝縮された一切の液体炭化水素をスキミングし、ライン37に退出させ、生成物回収ユニット52からライン54に出て行く液体炭化水素に加える。
【0137】
オレフィン、より高い分子量の炭化水素またはそれらの混合物を含有する、残留蒸気相をスクラバ38から流出物として除去し、ライン39経由で脱水器50に搬送して、蒸気流から実質的にすべての水をライン53経由で除去する。オレフィン、より高い分子量の炭化水素またはそれらの混合物を含有する乾燥蒸気流をライン51経由で生成物回収ユニット52に搬送し、そこでオレフィン、C+ ガソリン範囲炭化水素フラクションまたはこれらの混合物を液体生成物としてライン54経由で回収する。当業者の知識の範囲内で天然ガスもしくはリファイナリーガス流を加工するために、かつ/または、オレフィン系炭化水素を回収するためにそのまま用いられる任意の従来の脱水および液体回収方法、例えば、固体床乾燥剤吸着、その後の冷凍凝縮、極低温膨張、または循環吸収油もしくは他の溶剤を、この運転に利用することができる。
【0138】
生成物回収ユニット52からの残留蒸気流出物を、このプロセスのための燃料として利用することができるパージ流57と、コンプレッサ58により圧縮されるライン62中の再利用残留蒸気流とに分割する。コンプレッサ58から排出された再利用残留蒸気を2つのフラクションに分割する。第一フラクションは、フィードガスモル体積の少なくとも2.5倍に等しいものであり、これをライン62経由で輸送し、ポンプ24によって搬送された乾燥液体臭素と併せ、交換器26で加熱して臭素を気化し、第一反応器30に送る。第二フラクションは、ライン62からアルキル臭化物濃度を希釈するのに十分な速度で制御バルブ60によって調節されるライン63経由で第二反応器34へと抜き取られ、反応熱を吸収する。従って、第二反応器34は、変換率対選択性を最大にすると共に炭素堆積による触媒失活率を最小にする選択運転温度で、好ましくは約300℃〜約450℃の範囲で維持される。要するに、再利用蒸気流出物によってもたらされる希釈が、第一反応器30における臭素化の制御された選択性および第二反応器34における制御された温度緩和を可能にする。
【0139】
ライン44経由でスクラバ38から除去される溶解した状態の金属臭化物を含有する水を炭化水素ストリッパ47に進ませ、そこで、ライン11経由で輸送されて入ってくるフィードガスとの接触により、この水性相から残留溶解炭化水素をストリッピングする。ストリッピングされた水溶液を炭化水素ストリッパ47からライン65経由で輸送し、熱交換機46において約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却し、吸収器48に進ませ、そこでライン67でベント蒸気からの残留臭素を回収する。吸収器48からの水溶液流出物をライン49経由で熱交換器40に輸送し、約100℃〜約600℃の範囲、そして最も好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の温度に予熱し、第三反応器16に進ませる。
【0140】
送風機またはコンプレッサ13によりほぼ周囲圧〜約5barの範囲の圧力でライン10経由で臭素ストリッパ14に酸素または空気を送達して、残留臭素を水からストリッピングする。水をストリッパ14からライン64に除去し、ライン56において脱水器50からの水流53と併せて水流出物流にし、このプロセスから除去する。臭素ストリッパ14から出て行く酸素または空気をライン15経由で、ほぼ周囲圧〜約5barの範囲の圧力および約100℃〜約600℃の範囲、だが最も好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の温度で動作する反応器16に送る。この酸素または空気が、反応器16内の金属臭化物塩水溶液を酸化し、臭素元素および金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの化学種の混合物をもたらす。上で述べたように、酸化性臭化物塩を形成するCo(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)または他の遷移金属を使用することができるが、この臭化物塩の好ましい金属は、Fe(III)、Cu(II)もしくはZn(II)またはこれらの混合物である。これらは、然程高価でなく、約120℃〜約180℃の範囲のより低い温度で容易に酸化し、これはガラス内張またはフルオロポリマー内張装置の使用を可能にするだろう。あるいは、同じく酸化性臭化物塩を形成するアルカリ土類金属、例えばCa(II)またはMg(II)を使用してもよい。
【0141】
臭化水素酸は、そのような構成の金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの化学種の混合物と反応して、金属臭化物塩および水を再びもたらす。第二反応器16内の熱交換器18は、水および臭素を気化するための熱を補給する。従って、これらの総合的反応の結果、第一反応器30および第二反応器34において生成された臭化水素酸の、液相状態の臭素元素および蒸気への正味の(net)酸化をもたらすと考えられる。これらの反応は、触媒サイクルにおいて働く金属臭化物/金属酸化物または金属水酸化物によって触媒される。
【0142】
前記金属臭化物がFe(III)Brである場合、反応は、
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O(g)=3Br(g)+Fe(OH)
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
であると考えられる。
【0143】
前記金属臭化物がCu(II)Brである場合、反応は、
1)4Cu(+2a)+8Br(−a)+3HO+3/2O(g)=3Br(g)+CuBr・3Cu(OH)
2)6HBr(g)+HO=6H(+a)+6Br(−a)+H
3)6H(+a)+6Br(−a)+CuBr・3Cu(OH)=4Cu(+2a)+8Br(−a)+6H
であると考えられる。
【0144】
ライン19経由で第三反応器16の出口から蒸気として出て行く臭素元素および水および任意の残留酸素(および/または空気を酸化剤として利用する場合には窒素)をコンデンサ20において約0℃〜約70℃の範囲の温度およびほぼ周囲圧約5barの範囲の圧力で冷却して臭素および水を凝縮し、三相分離器22に進ませる。液体の水は、おおまかには約3重量%の臭素に対する限られた溶解度を有するので、凝縮されるいずれの追加の臭素も、三相分離器22において別個の、より濃度の高い液体臭素相を形成する。しかし、この液体臭素相は、おおまかには0.1%未満の水に対する著しく低い溶解度を有する。従って、実質的に乾燥している臭素蒸気は、液体臭素および水を凝縮し、単純な物理的分離により水をデカントし、その後、液体臭素を再び気化することによって容易に得ることができる。
【0145】
液体臭素をポンプ24により三相分離器22からライン25にポンピングして、蒸気流62と混合するのに十分な圧力にする。このようにして、臭素を回収し、プロセス内で再利用する。残留酸素または窒素、および凝縮されない一切の残留臭素蒸気が三相分離器22を出てライン23を通って臭素スクラバ48に進み、そこで残留臭素は、溶解することによりおよび還元金属臭化物との反応により金属臭化物水溶液流65に回収される。水は、分離器22からライン27経由で除去され、ストリッパ14に導入される。
【0146】
図9に示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器34において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器30に戻す機能を果たす、図9に示す臭素ストリッパ14、反応器16およびそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図9のライン35経由で第二反応器34を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から、好ましくはスクラバ38の上流で分離する。
【0147】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器30への再注入のために、図9のプロセスのライン25に戻す。
【0148】
図10を参照して説明するもう1つの実施形態では、約1bar〜約30barの範囲の圧力下のフィードガスと再利用ガスの混合物である、低分子量のアルカンを含有するガス流を、ライン162経由で搬送し、ポンプ124によって輸送された乾燥液体臭素とさらに混合する。そのガス流および乾燥液体臭素は熱交換器126を通過し、ここで液体臭素は乾燥臭素蒸気に気化される。そのガス流からの結果として生じる低分子量のアルカンと乾燥臭素蒸気の混合物を、第一反応器130に送る。この第一反応器130に導入される混合物中の低分子量のアルカンの乾燥臭素蒸気に対するモル比は、好ましくは2.5:1を上回る。第一反応器130は、前記混合物を約250℃〜約400℃の範囲の反応開始温度に加熱する入口部予熱ゾーン128を有する。
【0149】
低分子量のアルカンは、第一反応器130において約250℃〜約600℃の範囲の比較的低い温度および約1bar〜約30barの範囲の圧力で乾燥臭素蒸気と発熱反応して、気体アルキル臭化物および臭化水素酸蒸気を生成する。第一反応器130における運転温度範囲の上限は、この臭素化反応の発熱性に起因して、反応開始温度範囲の上限より高い。前記の低分子量のアルカンがメタンである場合、次の一般反応に従って臭化メチルが形成される:
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、臭化メチルへの有意に高い選択性を伴って起きる。さらに、約4.5:1のメタン対臭素比を用いると、モノハロゲン化臭化メチルへの選択性が増加する。少量のジブロモメタンおよびトリブロモメタンもこの臭素化反応において形成される。より高級のアルカン、例えばエタン、プロパンおよびブタンも容易に臭素化され、その結果、一および多臭素化化学種、例えば臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルが生ずる。約2.5対1より有意に低いアルカン対臭素比を用いると、臭化メチルへのより低い選択性および望ましくない炭素すすの著しい形成が観察される。
【0150】
第一反応器130に送られる乾燥臭素蒸気は、好ましくは実質的に無水である。第一反応器130における臭素化段階からの実質的にすべての水蒸気の除去は、望ましくない二酸化炭素の形成を実質的になくし、その結果、アルキル臭化物へのアルカン臭素化の選択性が増加し、アルカンからの二酸化炭素の形成の際に発生する大量の廃熱がなくなる。
【0151】
アルキル臭化物および臭化水素酸を含有する第一反応器130からの流出物をライン131経由で退出させ、熱交換器132において軽度に冷却した後、第二反応器134に搬送する。前記流出物が熱交換器132において軽度に冷却される温度は、第二反応器134においてアルキル臭化物をより高い分子量の炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約350℃の範囲であり、または第二反応器134においてアルキル臭化物をオレフィンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。そのアルキル臭化物を第二反応器134において結晶性アルミノケイ酸塩触媒の固定床133で発熱反応させる。第二反応器134において用いる温度および圧力ならびに結晶性アルミノケイ酸塩触媒が第二反応器134において形成される実際の生成物(単数または複数)を決める。
【0152】
固定床133における結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、より高い分子量の炭化水素の形成が望まれるときには、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒である。前記ゼオライト触媒は、好ましくは水素、ナトリウムまたはマグネシウム型のものであるが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、Na、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることにより合成される様々な孔径および酸度を有する他のゼオライト触媒を第二反応器134において使用することができる。
【0153】
第二反応器134でのアルキル臭化物の反応からオレフィンを形成することが望まれるとき、第二反応器134において用いられる結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはX型またはY型ゼオライト触媒である。好ましいゼオライトは、10XまたはY型ゼオライトであるが、当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライトをこのプロセスで使用することができる。好ましくはプロトン型、ナトリウム型、プロトン/ナトリウム混合型のゼオライト触媒を使用するが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。これらの様々な代替カチオンには反応選択性をシフトさせる効果がある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライト触媒を第二反応器134において使用することができる。
【0154】
第二反応器134を運転する温度は、より高い分子量の炭化水素へのまたはオレフィンへの反応の選択性を決める上で重要なパラメータである。
【0155】
触媒を選択して第二反応器134においてより高い分子量の炭化水素を形成する場合、約150℃〜450℃の範囲内の温度で第二反応器134を運転することが好ましい。第二反応器134における約300℃より高い温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量を増加させる結果となるが、より低い温度は、より重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。前記温度範囲の下端で、例えば、150℃ほども低い温度でのZSM−5ゼオライトを用いる臭化メチル反応に関して、C+ 生成物への高い選択性と共におおよそ20%の臭化メチル変換率に注目される。この好ましいゼオライトZSM−5触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと環化反応も起きるので、C+ フラクションは置換芳香族から主として成る。
【0156】
300℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加する。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特に、望ましくないメタンへの選択性が増加する。驚くべきことに、エタンまたはC〜Cオレフィン成分は殆ど形成されない。450℃近くの温度で、臭化メチルのメタンへのほぼ完全な変換が起きる。
【0157】
約300℃と400℃の間の最適運転温度では、運転中に経時的に少量の炭素が反応の副生成物として触媒上に堆積していき、これは、反応条件およびフィードガスの組成に依存して数時間から数百時間までの範囲にわたって触媒活性が低下する原因となる。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、従って触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器134における約150℃〜約450℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約400℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズが最小化される。
【0158】
触媒を選択して第二反応器134においてオレフィンを形成する場合、約250℃〜500℃の範囲内の温度で第二反応器134を運転することが好ましい。第二反応器134における約450℃超の温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量およびまたコークスの分解を増加させる結果となるが、より低い温度は、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびより重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。好ましい10Xゼオライト触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと、環化反応も起きるので、C+ フラクションは実質的な置換芳香族を含有すると考えられる。
【0159】
400℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加すると考えられる。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特にオレフィンへの選択性が増加する。550℃を超える温度では、臭化メチルのメタンおよび炭素質コークスへの高い変換が起きると考えられる。
【0160】
約300℃と450℃の間の好ましい運転温度範囲では、運転中に経時的に触媒上に反応の副生成物として堆積するコークスの量がより少なくなる可能性が高い。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、そしてそれゆえに触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器134における約250℃〜約500℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約450℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいオレフィンおよびC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズが最小化される。
【0161】
前記触媒は、正常なプロセスフローから第二反応器134を断路することにより現場で定期的に再生することができる。断路したら、ライン170経由で約1〜約5barの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の不活性ガスで第二反応器134をパージして、実際に役立つ限り、触媒に吸着された未反応材料を除去する。その後、第二反応器134にライン170経由で約1bar〜約5barの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の空気または不活性ガスで希釈した酸素を加えることにより、その脱着された炭素をCOに酸化する。この再生期間中に二酸化炭素および残留空気または不活性ガスを第二反応器134からライン175経由で排気する。
【0162】
臭化水素酸およびより高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物を含む流出物をライン135経由で第二反応器134から退出させ、熱交換器36で0℃〜約100℃の範囲の温度に冷却し、ライン112内で炭化水素ストリッパ147からの蒸気流出物と併せる。結果として生じる混合物をスクラバ138に進ませ、ライン164経由でポンプ143などの任意の適する手段によりスクラバ138に輸送されたストリッピング処理再循環水と、そのストリッピング処理再循環水が熱交換器155で約0℃〜約50℃の範囲の温度に冷却された後、接触させる。
【0163】
スクラバ138において凝縮された一切の液体炭化水素生成物をスキミングし、流れ137として退出させ、液体炭化水素生成物154に加える。臭化水素酸をスクラバ138内の水溶液に溶解させ、スクラバ138からライン144経由で除去し、炭化水素ストリッパ147に搬送する。水溶液に溶解した残留炭化水素を、フィードガス111との接触により炭化水素ストリッパ147においてストリッピングする。炭化水素ストリッパ147からのストリッピングされた水性相を熱交換器146において約0℃〜約50℃の範囲の温度に冷却し、ライン165経由で吸収器148に搬送し、そこで残留臭素をベント流167から回収する。
【0164】
オレフィン、より高い分子量の炭化水素またはそれらの混合物を含有する、残留蒸気相をスクラバ138から流出物として除去し、ライン139経由で脱水器150に搬送して、蒸気流から実質的にすべての水をライン153経由で除去する。オレフィン、より高い分子量の炭化水素またはそれらの混合物を含有する乾燥蒸気流をライン151経由で生成物回収ユニット152に搬送し、そこでオレフィン、C+ ガソリン範囲炭化水素フラクションまたはこれらの混合物を液体生成物としてライン154経由で回収する。当業者の知識の範囲内で、天然ガスもしくはリファイナリーガス流を加工するためにおよび/またはオレフィン系炭化水素を回収するためにそのまま用いられる任意の従来の脱水および液体回収方法、例えば、固体床乾燥剤吸着、その後の冷凍凝縮、極低温膨張、または循環吸収油もしくは他の溶剤を、この運転に利用することができる。
【0165】
生成物回収ユニット152からの残留蒸気流出物を、このプロセスのための燃料として利用することができるパージ流157と、コンプレッサ158により圧縮されるライン162中の再利用残留蒸気流とに分割する。コンプレッサ158から排出された再利用残留蒸気を2つのフラクションに分割する。第一フラクションは、フィードガスモル体積の少なくとも2.5倍に等しいものであり、これをライン162経由で輸送し、ポンプ124によって搬送された乾燥液体臭素と併せ、熱交換器126で加熱して臭素を気化し、第一反応器130に送る。第二フラクションは、ライン162からアルキル臭化物濃度を希釈するのに十分な速度で制御バルブ160によって調節されるライン163経由で第二反応器134へと抜き取られ、反応熱を吸収する。従って、第二反応器134は、変換率対選択性を最大にすると共に炭素堆積による触媒失活率を最小にする選択運転温度で、好ましくは約300℃〜約450℃の範囲で維持される。要するに、再利用蒸気流出物によってもたらされる希釈が、第一反応器130における臭素化の制御された選択性および第二反応器134における制御された温度緩和を可能にする。
【0166】
酸素、酸素富化空気または空気110を送風機またはコンプレッサ113によりほぼ周囲圧〜約5barの範囲の圧力で臭素ストリッパ114に送達し、水から残留臭素をストリッピングする。ストリッピングされた水をストリッパ114からライン164経由で排出し、それを2つの部分に分ける。ストリッピングされた水の第一の部分は、ライン164経由でこのプロセスに再利用されるが、第二の部分はライン156経由で除去される。ストリッピングされた水の第一の部分を熱交換器155において約20℃〜約50℃の範囲の温度に冷却し、ポンプ143などの任意の適切な手段により、スクラバ138に入るのに十分な圧力に維持する。第一の部分の相対量は、スクラバ138からライン144によって除去される臭化水素酸溶液流出物が約10重量%〜約50重量%の範囲、そしてさらに好ましくは約30重量%〜約48重量%の範囲の臭化水素酸濃度を有するように選択する。これは、交換器141および予熱器119内で気化されなければならない水の量を最少にし、ならびに結果として生ずる臭化水素酸に対するHBrの蒸気圧を最小にする。
【0167】
吸収器148からの水溶液流出物中の溶解された臭化水素酸をライン149経由で輸送し、ライン115経由で臭素ストリッパ114から出てきた酸素、酸素富化空気または空気と併せる。併せた水溶液流出物および酸素、酸素富化空気または空気を熱交換器141の第一の側面に進ませ、その混合物を約100℃〜約600℃の範囲、そして最も好ましくは約120℃〜約250℃の範囲の温度に予熱する予熱器119を通って、金属臭化物塩または金属酸化物を収容している酸化反応器である第三反応器117に進ませる。前記臭化物塩または金属酸化物の好ましい金属は、Fe(III)、Cu(II)またはZn(II)であるが、酸化性臭化物塩を形成するCo(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)または他の遷移金属も使用することができる。あるいは、同じく酸化性臭化物塩を形成するアルカリ土類金属、例えばCa(II)またはMg(II)を使用してもよい。
【0168】
酸化反応器117における金属臭化物塩は、濃縮水溶液の形態であり得るが、好ましくは、この濃縮塩水溶液は、シリカゲルなどの多孔質、高表面積、酸耐性不活性担体に吸収されている。さらに好ましくは、10〜20重量%の濃度範囲である酸化物形態の金属が、50〜200m/gの範囲の比表面積を有するアルミナなどの不活性担体上に堆積させられる。
【0169】
酸化反応器117は、ほぼ周囲圧〜約5barの圧力および約100℃〜約600℃の範囲、最も好ましくは約130℃〜350℃の範囲の温度で動作する。これらの動作範囲内で、金属臭化物を酸素により酸化して臭素元素および金属水酸化物、金属酸化物または金属オキシ臭化物化学種をもたらす。臭素元素および金属酸化物は、担持された金属臭化物塩の場合、または酸化反応器117を、水が主に蒸気として存在する、より高温およびより低圧で運転する場合に生産される。いずれの場合も、臭化水素酸が金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物化学種と反応し、中和されて金属をもとに戻す。これらの総合的反応の結果、第一反応器130および第二反応器134において生成された臭化水素酸の、臭素元素および蒸気への正味酸化をもたらすと考えられる。これらの反応は、触媒サイクルにおいて働く金属臭化物/金属酸化物または金属水酸化物によって触媒される。
【0170】
前記金属臭化物が、水が液体として存在し得る圧力および温度範囲内の水溶液中のFe(III)Brである場合、反応は、
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O(g)=3Br(g)+Fe(OH)3
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)3=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
であると考えられる。
【0171】
前記金属臭化物が、水溶液中のCu(II)Brであって、水が液体として存在し得る圧力および温度範囲内のものである場合、反応は、
1)4Cu(+2a)+8Br(−a)+3HO+3/2O(g)=3Br(g)+CuBr・3Cu(OH)
2)6HBr(g)+HO=6H(+a)+6Br(−a)+H
3)6H(+a)+6Br(−a)+CuBr・3Cu(OH)=4Cu(+2a)+8Br(−a)+6H
であると考えられる。
【0172】
前記金属臭化物が、不活性担体に担持されているCu(II)Brであって、水が主に蒸気として存在する、より高い温度およびより低い圧力条件でのものである場合、反応は、
1)2Cu(II)Br=2Cu(I)Br+Br(g)
2)2Cu(I)Br+O(g)=Br(g)+2Cu(II)O
3)2HBr(g)+Cu(II)O=Cu(II)Br+HO(g)
であると考えられる。
【0173】
酸化反応器117の出口から蒸気として出て行く臭素元素および水および任意の残留酸素(および/または空気を酸化剤として利用する場合には窒素)を、交換器141の第二の側面およびコンデンサ120において、臭素および水が凝縮される約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却し、三相分離器122に進ませる。液体の水は、おおまかには約3重量%の臭素に対する限られた溶解度を有するので、凝縮されるいずれの追加の臭素も、三相分離器122において別個の、より濃度の高い液体臭素相を形成する。しかし、この液体臭素相は、おおまかには0.1%未満の水に対する著しく低い溶解度を有する。従って、実質的に乾燥している臭素蒸気は、液体臭素および水を凝縮し、単純な物理的分離により水をデカントし、その後液体臭素を再び気化することによって容易に得ることができる。凝縮された液体臭素および水中の有意な残留HBrを避けるためにHBrのほぼ完全な反応をもたらす条件で運転することが重要である。HBrは、水性相中の臭素の混和性を増大させ、および有意に高い濃度では単一の三成分液相をもたらす。
【0174】
液体臭素をポンプ124により三相分離器122からライン125にポンピングして、蒸気流162と混合するのに十分な圧力にする。このようにして、臭素を回収し、このプロセス内で再利用する。残留空気、酸素富化空気または酸素および凝縮されない一切の臭素蒸気が三相分離器122を出てライン123を通って臭素スクラバ148に進み、そこで残留臭素は、ライン165経由でスクラバ148に搬送された臭化水素酸溶液流へ溶解することにより回収される。水は、三相分離器122からライン129経由で除去され、ストリッパ114に進む。
【0175】
臭素元素蒸気および水蒸気が凝縮され、単純な物理的分離により液相中で容易に分離されて実質的に乾燥している臭素をもたらす。有意に水が存在しないことが、COの生成およびその後の流出物の生成のないアルカンの選択的臭素化を可能にし、主としてC〜Cオレフィン、より重い生成物、実質的に分岐したアルカンおよび置換芳香族またはそれらの混合物を含有するC+ フラクションへのアルキル臭化物の選択的反応を可能にする。第一反応器130における臭素化反応および第二反応器134におけるその後の反応からの副生成物臭化水素酸蒸気は、水性相に容易に溶解され、金属臭化物の酸化の結果として生じる金属水酸化物または金属酸化物化学種によって中和される。
【0176】
図10に示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器134において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器130に戻す機能を果たす、図10に示す臭素ストリッパ114、酸化反応器117およびそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図10のライン135経由で第二反応器134を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から、好ましくはスクラバ138の上流で分離する。
【0177】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器130への注入のために、図10のプロセスのライン125に戻す。
【0178】
図11Aに図示するもう1つの実施形態によると、アルキル臭素化およびアルキル臭化物変換工程は、上で図9および10に関して説明した対応する工程と実質的に同様に運転する。より詳細には、低分子量のアルカンを含有するガス流であって、約1bar〜約30barの範囲の圧力下のフィードガスおよび再利用ガス混合物から成るものであるガス流を、ライン262および211経由でそれぞれ搬送し、ライン225の中で乾燥液体臭素と混合する。結果として生じる混合物をポンプ224により輸送し、熱交換器226に進ませ、そこで液体臭素を気化する。前記ガス流および乾燥臭素蒸気からの低分子量のアルカンの混合物を第一反応器230に送る。この第一反応器230に導入される混合物中の低分子量のアルカンの乾燥臭素蒸気に対するモル比は、好ましくは2.5:1を上回る。
【0179】
第一反応器230は、前記混合物を約250℃〜約400℃の範囲の反応開始温度に加熱する入口部予熱ゾーン228を有する。低分子量のアルカンは、第一反応器230において約250℃〜約600℃の範囲の比較的低い温度および約1bar〜約30barの範囲の圧力で乾燥臭素蒸気と発熱反応して、気体アルキル臭化物および臭化水素酸蒸気を生成する。運転温度範囲の上限は、この臭素化反応の発熱性に起因して、反応開始温度範囲の上限より高い。前記の低分子量のアルカンがメタンである場合、次の一般反応に従って臭化メチルが形成される:
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、臭化メチルへの有意に高い選択性を伴って起きる。さらに、約4.5:1のメタン対臭素比を用いると、モノハロゲン化臭化メチルへの選択性が増加する。少量のジブロモメタンおよびトリブロモメタンもこの臭素化反応において形成される。より高級のアルカン、例えばエタン、プロパンおよびブタンも容易に臭素化され、その結果、一および多臭素化化学種、例えば臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルが生ずる。2.5対1より有意に低いアルカン対臭素比を用いると、臭化メチルへの実質的により低い選択性および望ましくない炭素すすの著しい形成が観察される。
【0180】
第一反応器230に送られる乾燥臭素蒸気は、実質的に無水である。第一反応器230における臭素化段階からの実質的にすべての水蒸気の除去は、望ましくない二酸化炭素の形成を実質的になくし、その結果、アルキル臭化物に対するアルカン臭素化の選択性が増加し、アルカンからの二酸化炭素の形成の際に発生する大量の廃熱がなくなる。
【0181】
アルキル臭化物および臭化水素酸を含有する第一反応器230からの流出物をライン231経由で退出させ、熱交換器232において軽度に冷却した後、第二反応器234に搬送する。前記流出物が熱交換器232において軽度に冷却される温度は、第二反応器234においてアルキル臭化物をより高い分子量の炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約350℃の範囲であり、または第二反応器234においてアルキル臭化物をオレフィンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。そのアルキル臭化物を第二反応器234において結晶性アルミノケイ酸塩触媒の固定床233で発熱反応させる。第二反応器234において用いる温度および圧力ならびに具体的な結晶性アルミノケイ酸塩触媒が第二反応器234において形成される実際の生成物を決める。
【0182】
固定床233において用いる結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、より高い分子量の炭化水素の形成が望まれるときには、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒である。前記ゼオライト触媒は、好ましくは水素、ナトリウムまたはマグネシウム型のものであるが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、Na、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることにより合成される様々な孔径および酸度を有する他のゼオライト触媒を第二反応器234において使用することができる。
【0183】
第二反応器234でのアルキル臭化物の反応からオレフィンを形成することが望まれるとき、第二反応器234において用いられる結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、好ましくはゼオライト触媒、そして最も好ましくはX型またはY型ゼオライト触媒である。好ましいゼオライトは、10XまたはY型ゼオライトであるが、当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライトをこのプロセスで使用することができる。好ましくはプロトン型、ナトリウム型、プロトン/ナトリウム混合型のゼオライト触媒を使用するが、前記ゼオライトは、イオン交換により他のアルカリ金属カチオン、例えばLi、KもしくはCsで、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg、Ca、SrもしくはBaで、または遷移金属カチオン、例えばNi、Mn、V、Wで、または水素型に改変されていることもある。これらの様々な代替カチオンには反応選択性をシフトさせる効果がある。当業者には明らかであるように、アルミナ対シリカ比を変えることによって合成される異なる孔径および酸度を有する他のゼオライト触媒を第二反応器234において使用することができる。
【0184】
第二反応器234を運転する温度は、より高い分子量へのまたはオレフィンへの反応の選択性を決める上で重要なパラメータである。
【0185】
触媒を選択して第二反応器234においてより高い分子量の炭化水素を形成する場合、約150℃〜450℃の範囲内の温度で第二反応器234を運転することが好ましい。第二反応器234における約300℃より高い温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量を増加させる結果となるが、より低い温度は、より重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。前記温度範囲の下端で、例えば、150℃ほども低い温度でのZSM−5ゼオライトを用いる臭化メチル反応に関して、C+ 生成物への高い選択性と共におおよそ20%の臭化メチル変換率に注目される。この好ましいゼオライトZSM−5触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと環化反応も起きるので、C+ フラクションは置換芳香族から主として成る。
【0186】
300℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加する。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特に、望ましくないメタンへの選択性が増加する。驚くべきことに、エタンまたはC〜Cオレフィン成分は殆ど形成されない。450℃近くの温度で、臭化メチルのメタンへのほぼ完全な変換が起きる。
【0187】
約300℃と400℃の間の最適運転温度では、運転中に経時的に少量の炭素が反応の副生成物として触媒上に堆積していき、これは、反応条件およびフィードガスの組成に依存して数時間から数百時間までの範囲にわたって触媒活性が低下する原因となる。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、従って触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器234における約150℃〜約450℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約400℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズが最小化される。
【0188】
触媒を選択して第二反応器234においてオレフィンを形成する場合、約250℃〜500℃の範囲内の温度で第二反応器234を運転することが好ましい。第二反応器234における約450℃超の温度は、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収量およびまたコークスの分解を増加させる結果となるが、より低い温度は、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびより重い分子量の炭化水素生成物の収量を増加させる。好ましい10Xゼオライト触媒を用いてアルキル臭化物反応を行うと、環化反応も起きるので、C+ フラクションは実質的な置換芳香族を含有すると考えられる。
【0189】
400℃近くに温度を上昇させると、臭化メチル変換率は90%以上に増加すると考えられる。しかし、C+ 生成物への選択性は減少し、より軽質の生成物、特にオレフィンへの選択性が増加する。550℃を超える温度では、臭化メチルのメタンおよび炭素質コークスへの高い変換が起きると考えられる。
【0190】
約300℃と450℃の間の好ましい運転温度範囲では、運転中に経時的に触媒上に反応の副生成物として堆積するコークスの量がより少なくなる可能性が高い。メタンの形成と関連付けられる約400℃超のより高い反応温度は、アルキル臭化物の熱分解および炭素またはコークスの形成、そしてそれゆえに触媒の失活率の増加に有利に働くと考えられる。逆に、前記範囲の下端の温度、特に約300℃より下の温度も、触媒からのより重い生成物の脱着の速度低下に起因して、コークス化の一因となり得る。従って、第二反応器234における約250℃〜約500℃の範囲内、だが好ましくは約300℃〜約450℃の範囲内の運転温度は、1通過あたりのより高い変換率に対する炭素形成に起因して、望ましいオレフィンおよびC+ 生成物への選択性増加とより低い失活率のバランスを保ち、これにより、必要とされる触媒量、再利用率および装置サイズを最小化される。
【0191】
前記触媒は、正常なプロセスフローから第二反応器234を断路することにより現場で定期的に再生することができる。断路したら、ライン270経由で約1〜約5barの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の不活性ガスで第二反応器234をパージして、実際に役立つ限り、触媒に吸着された未反応材料を除去する。その後、第二反応器234にライン270経由で約1bar〜約5barの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の空気または不活性ガスで希釈した酸素を加えることにより、その脱着された炭素をCOに酸化する。この再生期間中に二酸化炭素および残留空気または不活性ガスを第二反応器234からライン275経由で排気する。
【0192】
臭化水素酸およびより高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物を含む流出物をライン235経由で第二反応器234から退出させ、交換器236で約100℃〜約600℃の範囲の温度に冷却する。図11Aに図示するように、バルブ238を開放位置にならびにバルブ239および234を閉鎖位置にしてライン235および241経由でその冷却された流出物を輸送し、固相金属酸化物の床298が収容されている反応器240に導入する。前記金属酸化物の金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)または錫(Sn)から選択される。
【0193】
前記金属は、所望の運転温度に関してのその物理的および熱力学的特性の影響のために、ならびに可能性のある環境および健康への影響ならびに費用のためにも選択される。好ましくはマグネシウム、銅および/または鉄を前記金属として用いるが、マグネシウムが最も好ましい。これらの金属は、酸化物を形成するばかりでなく、臭化物塩も形成する特性を有し、約500℃より低い温度範囲では反応が可逆的である。固体金属酸化物は、好ましくは、適する耐摩耗性担体、例えば、合成非晶質シリカ(例えば、メリーランド州のDavison Catalysts of Columbiaによって製造されているDavicat Grade 57)またはさらに好ましくは約50〜200m/gの比表面積を有するアルミナ担体上に固定化されている。
【0194】
反応器240において約600℃より低い温度、そして好ましくは約100℃〜約500℃の間の温度で臭化水素酸と前記金属酸化物とを下記の一般式(式中、Mは金属を表す)に従って反応させる:
2HBr+MO→MBr+H
この反応の結果として生ずる蒸気を、オレフィンおよび/または高分子炭化水素と共にライン244、218および216で開放バルブ219経由で熱交換器220へと輸送し、そこでその混合物を約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却する。この冷却された混合物を脱水器250に送り届けてガス流から実質的にすべての水をライン253経由で除去する。オレフィン、より高い分子量の炭化水素またはこれらの混合物を含有する乾燥したガス流をライン251経由で生成物回収ユニット252に進ませてオレフィン、C+ フラクション、またはこれらの混合物を液体生成物としてライン254で回収する。当業者の知識の範囲内で、天然ガスもしくはリファイナリーガスを加工するためにおよび/またはオレフィン系炭化水素を回収するためにそのまま用いられる任意の従来の脱水および液体回収方法、例えば、固体床乾燥剤吸着、その後の冷凍凝縮、極低温膨張、または循環吸収油もしくは他の溶剤を、この運転に利用することができる。
【0195】
生成物回収ユニット252からの残留蒸気流出物を、このプロセスのための燃料として利用することができるパージ流257と、コンプレッサ258により圧縮される再利用残留蒸気流とに分割する。コンプレッサ258から排出された再利用残留蒸気を2つのフラクションに分割する。第一フラクションは、フィードガス体積の少なくとも1.5倍に等しいものであり、これをライン262経由で輸送し、ライン225で搬送された液体臭素およびフィードガスと併せ、熱交換器226に進ませ、そこで液体臭素を気化し、上で説明したやり方で第一反応器230に送る。第二フラクションは、ライン262からアルキル臭化物濃度を希釈するのに十分な速度で制御バルブ260によって調節されるライン263経由で第二反応器234へと抜き取られ、反応熱を吸収する。従って、反応器234は、変換率対選択性を最大にすると共に炭素堆積による触媒失活率を最小にする選択運転温度で、好ましくは約300℃〜約450℃の範囲で維持される。要するに、再利用蒸気流出物によってもたらされる希釈が、第一反応器230における臭素化の制御された選択性および第二反応器234における制御された温度緩和を可能にする。
【0196】
酸素、酸素富化空気または空気210を送風機またはコンプレッサ213、ライン214およびバルブ249により、ほぼ周囲圧〜約10barの範囲の圧力で反応器246に送達する。この酸素、酸素富化空気または空気は、熱交換器215において約100℃〜約500℃の範囲の温度に予熱された後、固相金属臭化物の床299が収容されている反応器246に入る。酸素と金属臭化物とが下記の一般反応(式中、Mは金属を表す)に従って反応する:
MBr+1/2O→MO+Br
乾燥した、実質的にHBrを含まない臭素蒸気をこのようにして生成し、これにより、液体臭素からの水または臭化水素酸のその後の分離の必要がなくなる。反応器246は、600℃より下、そしてさらに好ましくは約300℃〜約500℃の間で運転する。結果として生ずる臭素蒸気を反応器246からライン247、バルブ248そしてライン242経由で熱交換器またはコンデンサ221に輸送し、そこで臭素を液体に凝縮する。その液体臭素をライン242経由で分離器222に輸送し、そこで液体臭素をライン225経由で除去し、ポンプ224などの適する手段により熱交換器226および第一反応器230に輸送する。
【0197】
残留空気または未反応酸素を分離器222からライン227経由で臭素スクラブ洗浄ユニット223、例えば、当業者による選択に応じて、適する溶剤または適する固体吸着媒体が収容されているベンチュリ・スクラビング・システム、に輸送し、そこで残存臭素を捕捉する。捕捉された臭素をスクラビング溶剤または吸着剤から熱または他の適する手段によって脱着する。回収した臭素をライン212経由でライン225に輸送する。スクラブ洗浄空気または酸素をライン229経由で排気する。この要領で、窒素および任意の他の実質的に非反応性成分をこのプロセスのシステムから除去し、それによってこのプロセスの炭化水素含有部分への侵入を防止する。加えて、周囲環境への臭素の喪失を回避する。
【0198】
単純な物理的溶解度によってではなく本実施形態による化学反応によってHBrを除去することの1つの利点は、より高いプロセス温度でのHBrの低レベルへの実質的に完全な掃気である。もう1つの明瞭な利点は、除去された臭素からの水の排除であり、その結果、臭素相と水相の分離の必要および水相からの残留臭素のストリッピングの必要がなくなる。
【0199】
反応器240および246を周期方式で運転することができる。図11Aに図示するように、バルブ238および219を開放モードで運転して、第二反応器234を退出した流出物から臭化水素酸を除去することができ、一方、バルブ248および249を開放モードで運転して、空気、酸素富化空気または酸素を反応器246に流してその中に含まれる固体金属臭化物を酸化することができる。反応器240および246においてそれぞれ金属酸化物および金属臭化物の有意な変換が起こったら、バルブ248および249を閉鎖する。この時点で、反応器246内の床299は、実質的に固体金属臭化物の床であるが、反応器240内の床298は、実質的に固体金属酸化物である。図12Aに図示するように、バルブ245および243を今度は開放して、酸素、酸素富化空気または空気を反応器240に流してその中に含まれる固体金属臭化物を酸化することができ、一方、バルブ239および217を開放して、第二反応器234を退出したオレフィン、より高い分子量の炭化水素および/または臭化水素酸を含む流出物を反応器246に導入することができる。反応器246および240においてそれぞれ金属酸化物および金属臭化物の有意な変換が起こるまでこの要領で反応器を運転し、その後、前に論じたようにバルブを開放および閉鎖することにより、図11Aに図示するフロー図式のサイクルに反応器を戻す。
【0200】
図11Aおよび12Aに示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器234において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器230に戻す機能を果たす、図11Aおよび12Aに示す反応器240および246、分離器222、臭素スクラブ洗浄ユニット223ならびにそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図11Aおよび12Aのライン235経由で第二反応器234を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から分離する。
【0201】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器230への注入のために、図11Aおよび12Aのプロセスのライン225に戻す。
【0202】
酸素をライン210経由で輸送し、反応器240および246において酸化性ガスとして用いるとき、図11Aおよび12Aに図示する実施形態を、反応器246(図11B)または240(図12B)のいずれかから生成された臭素蒸気がライン242および225経由で第一反応器230に直接輸送されるように変更することができる。酸素は反応性でありシステム内に蓄積しないので、臭素蒸気を液体に凝縮して窒素などの未反応成分を除去する必要がうまく回避される。市販空気分離ユニットなどの実質的にすべての市販の酸素供給源が必要な圧力でライン210に酸素を供給するので、コンプレッサ213を図11Bおよび12Bに図示していない。そうでない場合、当業者には明らかであるが、コンプレッサ213を用いてそのような圧力を実現することができる。
【0203】
図11Bおよび12Bに示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、図11Aおよび図12Aに関して上で説明したのと実質的に同じやり方で本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。
【0204】
図13Aに図示する実施形態において、反応器240および246にそれぞれ収容されている固体金属酸化物粒子および固体金属臭化物粒子の床は流動床であり、これらの流動床の連続運転に対処すべく下で説明する様式で接続されており、各反応器(240および246)へのフロー方向を変えるため、ならびに各反応器(240および246)からのフロー方向を変えるためにバルブなどの装置に供給する必要がない。この実施形態によると、オレフィン、より高い分子量の炭化水素および/または臭化水素酸を含む流出物を、第二反応器234からライン235経由で退出させ、交換器236において約100℃〜約500℃の範囲の温度に冷却し、固体金属酸化物粒子の床298が収容されている反応器240の底部に導入する。
【0205】
図11Aに関して上で説明した様式で臭化水素酸を金属酸化物と反応させるとき、その導入された流体のフローによって床298内の粒子が反応器240内を上に向かって移動するように誘導される。床298の頂部または頂部付近では、床298の粒子は、反応器240における固体金属酸化物と臭化水素酸の実質的に完全な反応に起因して、耐摩耗性担体上に実質的に固体の金属臭化物を含む。従って、堰型またはサイクロン型または他の従来の固体/気体分離手段により床298の粒子を反応器240の床298の頂部または頂部付近から退出させ、それが重力によりライン259に流下し、それを反応器246内の固体金属臭化物の床299の底部または底部付近に導入する。
【0206】
ライン210内の酸素、酸素富化空気または空気を、最初に送風機またはコンプレッサ213を通過させ、ほぼ周囲圧〜約10barの範囲の圧力に加圧した後、反応器246に送達する。その酸素、酸素富化空気または空気を、ライン214経由で熱交換器215に通して輸送もし、この熱交換器215においてその酸素、酸素富化空気または空気を約100℃〜約500℃の範囲の温度に予熱した後、反応器246の固相金属臭化物の床299の下へと導入する。図11Aに関して上で説明した様式で酸素は金属臭化物と反応して、乾燥した、実質的にHBrを含まない臭化物蒸気を生成する。
【0207】
酸素が金属臭化物と反応するとき、その導入されたガスのフローによって床299内の粒子が反応器246内を上に向かって流れるように誘導される。床299の頂部または頂部付近では、床299の粒子は、反応器240における固体金属酸化物と臭化水素酸の実質的に完全な反応に起因して、耐摩耗性担体上に実質的に固体の金属臭化物を含む。従って、堰型またはサイクロン型または他の従来の固体/気体分離手段により床299の粒子を反応器246の床299の頂部または頂部付近から退出させ、それが重力によりライン264に流下、それを反応器240内の固体金属臭化物の床298の底部または底部付近に導入する。この要領で、反応器240および246を、運転パラメータを変えずに継続的に運転することができる。
【0208】
図13Aに示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器234において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器230に戻す機能を果たす、図13Aに示す反応器240および246、分離器222、臭素スクラブ洗浄ユニット223ならびにそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図13Aのライン235経由で第二反応器234を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から分離する。
【0209】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器230への注入のために、図13Aのプロセスのライン225に戻す。
【0210】
図13Bに図示する実施形態では、酸素を酸化性ガスとして用い、ライン210経由で反応器246に送る。従って、図13Aに図示する実施形態は、反応器246から生成された臭素蒸気がライン242および225経由で第一反応器230に直接輸送されるように変更されている。酸素は反応性でありシステム内に蓄積しないので、臭素蒸気を液体に凝縮して窒素などの未反応成分を除去する必要がうまく回避されるはずであると考えられる。市販空気分離ユニットなどの実質的にすべての市販の酸素供給源が、ライン210に酸素を必要な圧力で供給するので、コンプレッサ213を図13Bに図示していない。そうでない場合、当業者には明らかであるが、コンプレッサ213を用いてそのような圧力を実現することができる。
【0211】
図13Bに示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、図13Aに関して上で説明したのと実質的に同じやり方で本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。
【0212】
図14に図示したもう1つの実施形態によると、アルキル臭素化およびアルキル臭化物変換工程は、下で論ずることを除き、図11Aに関して詳細に説明した対応する工程と実質的に同様に運転する。反応器246から発散される残留空気または酸素および臭素蒸気をライン247、バルブ248そしてライン242そしてバルブ300経由で熱交換器にまたはコンデンサ221に輸送し、そこで臭素含有蒸気を約30℃〜約300℃の範囲の温度に冷却する。次に、還元原子価状態の固相金属臭化物の床422が収容されている反応器320にその臭素含有蒸気をライン242経由で輸送する。前記金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)またはモリブデン(Mo)から選択される。前記金属は、所望の運転温度でのその物理的および熱力学的特性、ならびに可能性のある環境および健康への影響ならびに費用にも基づいて選択される。好ましくは銅または鉄を前記金属として用いるが、銅が最も好ましい。
【0213】
前記固体金属臭化物は、好ましくは、適する耐摩耗性担体、例えば、合成非晶質シリカ、例えば、メリーランド州のDavison Catalysts of Columbiaによって製造されているDavicat Grade 57に固定されている。さらに好ましくは、前記金属は、約50〜200m/gの範囲の比表面積を有するアルミナ担体上に約10〜20重量%の範囲の酸化物の形態で堆積させられる。臭素蒸気は、固相金属臭化物、好ましくは適切な耐摩耗性担体上に保持された固相金属臭化物と、反応器320において約300℃より下の温度、そして好ましくは約30℃〜約200℃の間の温度で、下記の一般式(式中、Mは金属を表す)に従って反応する:
2MBr+Br→2MBrn+1
この要領で、臭素を二次金属臭化物、すなわち2MBrn+1として反応器320内に蓄え、一方、残留空気または酸素を含有する、結果として生じる蒸気を、ライン324、バルブ326そしてライン318経由で反応器320から排気する。
【0214】
フィードガス(ライン211)と再利用ガスの混合物である、低分子量のアルカンを含有するライン262内のガス流を、熱交換器352(ここでガス流を約150℃〜約600℃の範囲の温度に予熱する)、バルブ304そしてライン302経由で反応器310に搬送する。反応器310には酸化原子価状態の固相金属臭化物の床312が収容されている。前記金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)またはモリブデン(Mo)から選択される。前記金属は、所望の運転温度でのその物理的および熱力学的特性、ならびに可能性のある環境および健康への影響ならびに費用にも基づいて選択される。好ましくは銅または鉄を前記金属として用いるが、銅が最も好ましい。
【0215】
酸化状態での前記固体金属臭化物は、好ましくは、適する耐摩耗性担体、例えば、合成非晶質シリカ、例えば、メリーランド州のDavison Catalysts of Columbiaによって製造されているDavicat Grade 57に固定されている。さらに好ましくは、前記金属は、約50〜200m/gの比表面積を有するアルミナ担体上に担持された約10〜20重量%の範囲の酸化状態で堆積させられる。前記ガス流の温度は、約150℃〜約600℃、そして好ましくは約200℃〜約450℃である。前記ガス流の温度は、反応器310において、下記の一般式(式中、Mは金属を表す)に従って酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、臭素元素蒸気および還元状態の固体金属臭化物をもたらす:
2MBrn+1→2MBr+Br
結果として生ずる臭素蒸気を、低分子量のアルカンを含有するガス流と共に、ライン314、315、バルブ317、ライン330、熱交換器226経由でアルキル臭素化反応器230に輸送する。
【0216】
反応器310および320は、周期方式で動作することができる。図14に図示するように、バルブ304を開放モードで運転して、低分子量のアルカンを含有するガス流を反応器310に輸送することができ、一方、バルブ317を開放モードで運転して、このガス流と反応器310において生成された臭素蒸気とをアルキル臭素化反応器230に輸送することができる。同様に、バルブ306を開放モードで運転して、反応器246からの臭素蒸気を反応器320に輸送することができ、一方、バルブ326を開放モードで運転して、残留空気および酸素を反応器320から排気することができる。
【0217】
図15に図示するように、還元金属臭化物および酸化金属臭化物の対応する酸化および還元状態への有意な変換がそれぞれ反応器320および310において起こったら、バルブ304、317、306および326を閉鎖する。この時点で、反応器320内の床422は、酸化状態の実質的に金属臭化物の床であるが、反応器310内の床312は、還元状態の実質的に金属臭化物である。バルブ304、317、306および326を閉鎖したら、バルブ308および332を開放して、低分子量のアルカンを含有するガス流をライン262、熱交換器352(ここでガス流を約150℃〜約600℃の範囲に加熱する)、バルブ308そしてライン309経由で反応器320に輸送する。反応器320において酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、臭素元素蒸気および還元状態の固体金属臭化物をもたらす。
【0218】
バルブ332も開放して、結果として生じる臭素蒸気を、低分子量のアルカンを含有するガス流と共にライン324および330および熱交換器226経由で輸送した後、アルキル臭素化反応器230に導入することもできる。加えて、バルブ300を開放して、反応器246から発散された臭素蒸気をライン242経由で交換器221を通って反応器310へと輸送することができ、そこで還元原子価状態の固相金属臭化物は臭素と反応して臭素を金属臭化物として有効に蓄える。加えて、バルブ316を開放して、結果として生じる、実質的に臭素のないガスを、ライン314および318経由で排気することができる。
【0219】
反応器310および320においてそれぞれ還元金属臭化物および酸化金属臭化物の床の対応する酸化および還元状態への有意な変換が起こるまでこの要領で反応器を運転する。その後、前に論じたようにバルブを開放および閉鎖することにより、図14に図示するフロー図式のサイクルに反応器310および320を戻す。
【0220】
図14および15に示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器234において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器230に戻す機能を果たす、図14および15に示す反応器310、320、240および246ならびにそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図14および15のライン235経由で第二反応器234を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から分離する。
【0221】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器230への注入のために、図14および15のプロセスのライン330に戻す。
【0222】
図16に図示する実施形態において、反応器310および320にそれぞれ収容されている床312および322は、流動床であり、それらの床の連続運転に対処すべく下で説明する様式で接続されており、各反応器(310および320)へのフロー方向を変えるため、ならびに各反応器(310および320)からのフロー方向を変えるためにバルブなどの装置に供給する必要がない。この実施形態によると、反応器246からライン242経由で退出した臭素含有蒸気を交換器370および372において約30℃〜約300℃の範囲の温度に冷却し、流動状態の固体床322が収容されている反応器320の底部に導入する。
【0223】
図14に関して上で説明した様式で臭素蒸気と床322の底部に入ってくる還元金属臭化物とを反応させるとき、その導入された流体のフローにより、床322内の粒子は反応器320内を上に向かって流れるように誘導される。床322の頂部または頂部付近では、床322の粒子は、反応器320における還元金属臭化物と臭素蒸気の実質的に完全な反応に起因して、耐摩耗性担体上に実質的に酸化された金属臭化物を含む。従って、堰型またはサイクロン型または他の従来の固体/気体分離手段により床322の粒子を反応器320の床322の頂部または頂部付近から退出させ、それが重力によりライン359に流下し、それを反応器310内の床312の底部または底部付近に導入する。
【0224】
フィードガス(ライン211)と再利用ガスの混合物である、低分子量のアルカンを含有するライン262内のガス流を、熱交換器352(ここでガス流を約150℃〜約600℃の範囲の温度に予熱する)、バルブ304そしてライン302経由で反応器310に搬送する。この加熱されたガス流は反応器310の底部に導入され、これにより、床312内の粒子が反応器310内を上に向かって流れるように誘導される。その加熱されたガス流は、床312の底部または底部付近に入って行く酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、臭素元素蒸気および還元状態の固体金属臭化物をもたらす。その臭素元素を、ライン354および交換器355経由での第一反応器230への再導入のために反応器310から退出させる。
【0225】
床312の頂部または頂部付近の粒子は、反応器310における実質的に完全な熱分解に起因して、耐摩耗性担体上に実質的に還元された固体金属臭化物を含む。堰型またはサイクロン型または他の従来の固体/気体分離手段によりそれらの粒子を反応器310の床312の頂部または頂部付近から退出させ、それが重力によりライン364に流下する。退出した粒子を反応器310内の床322の底部または底部付近に導入する。この要領で、反応器310および320を、運転パラメータを変えることなく継続的に運転することができる。
【0226】
図16に示した気体アルカンを液体炭化水素に変換するための上記プロセスを、本発明の方法を組み込むように改造できることは当業者には容易にわかる。本発明の方法の気体アルカン変換プロセスへの統合は、第二反応器234において生成された臭化水素を臭素元素に変換し、それを第一反応器230に戻す機能を果たす、図16に示す反応器310、320、240および246ならびにそれらの協動要素の代わりに同じ機能を実施するための図2または3のシステムを用いることにより果たされる。詳細には、図16のライン235経由で第二反応器234を出て行く蒸気相流出物に含有される臭化水素(すなわち臭化水素酸)を、より高い分子量の炭化水素、オレフィンまたはこれらの混合物から分離する。
【0227】
結果として生じる気体臭化水素流を、必要または所望に応じて適切な前処理段階(加熱、冷却、膨張、圧縮、濃縮、希釈、乾燥、添加剤導入またはこれらに類するものを挙げることができる)を用いてまたは用いずに、図2または3のそれぞれシステム410または500のフィードガスライン412に搬送する。上で説明したおよび図2および3にそれぞれ示すようなシステム410または500における臭化水素の臭素元素への変換後、システム410または500の臭素元素生成物回収ライン477における臭素元素を、もしあれば必要または所望に応じて適切な前処理、および第一反応器230への注入のために、図16のプロセスのライン354に戻す。
【0228】
本発明のプロセスは、約1bar〜約30barの範囲の低圧および約20℃から気相についての約600℃、そして好ましくは約20℃から液相についての約180℃の範囲の比較的低温で動作するので、望ましい液体炭化水素生成物を生成するための関連上流プロセスの上に挙げた実施形態のすべてが他の従来のプロセスより然程高価でないと考えられる。これらの運転条件は、容易に入手できる金属合金から構成される比較的単純な設計の然程高価でない装置、または気相用のガラス内張装置ならびに液相用のポリマー内張もしくはガラス内張容器、パイプおよびポンプの使用を可能にすると考えられる。
【0229】
望ましい液体炭化水素生成物を生成するための本関連上流プロセスは、望ましくない副生成物を最少にするので運転のためのおよび過剰な二酸化炭素の生産のためのエネルギーを然程必要としないため、より効率的でもあるとも考えられる。本プロセスは、実質的な芳香族含量を有し、その結果、ガソリン範囲燃料成分のオクタン価を有意に増加させる、液化石油ガス(LPG)、オレフィンおよびモーターガソリン燃料領域の、様々な分子量の成分を含む混合炭化水素生成物を直接生成することができる。
【0230】
以下の実施例は、望ましい液体炭化水素生成物を生成するための本関連上流プロセスを実証するものである。
【0231】
実施例5
乾燥臭素とメタンの様々な混合物を459℃〜491℃の範囲の温度でおおよそ7200時−1のガス空間速度(Gas Hourly Space Velocity:GHSV)で均一反応させる。GHSVは、リットルでの触媒−床間隙率を含む総反応器触媒−床容積で除した時間当たりの標準リットルでのガス流量と定義する。本実施例の結果は、4.5:1より大きいメタン対臭素のモル比について臭化メチルへの選択性が、臭素のほぼ完全変換で90〜95%の範囲であることを示す。
【0232】
実施例6
図20および図21は、ZSM−5ゼオライト触媒を用いる臭化メチルとメタンの反応に関する2回の試験実行中に回収された2つのC+ 液体生成物サンプルの2つの例示的PONA分析を図示するものである。これらの分析は、生成されたC+ フラクションの実質的芳香族含量を示す。
【0233】
実施例7
ZSM−5ゼオライト触媒を用いて、おおよそ94時−1のガス空間速度(GHSV)で、約100℃〜約460℃の温度範囲にわたって、おおよそ2barの圧力で、臭化メチルを反応させる。オリゴマー化反応についての臭化メチル変換率および生成物選択性の、温度の関数としてのグラフである図17に図示するように、臭化メチル変換率は、約200℃〜約350℃の範囲で急速に増加する。約100℃〜約250℃のより低い温度は、より高い分子量の生成物への選択性に有利に働くが、変換率は低い。約250℃〜約350℃の範囲のより高い温度は、50%〜ほぼ100%の範囲のより高い変換率を示すが、低分子量の生成物、特に望ましくないメタンへの選択性の増加が観察される。約350℃超のより高い温度でメタンへの選択性は急速に増加する。約450℃で、メタンへのほぼ完全な変換が起きる。
【0234】
実施例8
ZSM−5ゼオライト触媒を用いて、おおよそ2barの圧力で、約250℃で、そして約260℃でも、おおよそ76時−1のGHSVで、臭化メチル、臭化水素およびメタンを反応させる。同じZSM−5ゼオライト触媒を用いて、ほぼ同じ圧力で、約250℃および約260℃で、おおよそ73時−1のGHSVで、臭化水素なしで、臭化メチルとメタンのみの混合物を用いる比較試験も実行した。幾つかの実行した実施例の試験の比較変換率および選択性を図示するグラフである図18は、HBrの存在に起因して、生成物選択性に対して非常にわずかな影響しか示さない。臭化水素酸は変換率および選択率に対してわずかな影響しか及ぼさないため、いずれにせよ追加の臭化水素酸を形成する、アルキル臭化物の変換反応の前に臭素化反応段階において生じた臭化水素酸を除去する必要はない。したがって、このプロセスは実質的に単純化され得る。
【0235】
実施例9
ZSM−5ゼオライト触媒を用いて230℃で臭化メチルを反応させる。その反応器にジブロモメタンを加える。生成物選択性のグラフである図19は、臭化メチルとジブロモメタンの反応が、臭化メチル単独に対してC+ 生成物への選択性のシフトをもたらすことを示す。従って、これらの結果は、ジブロモメタンも反応性であり、そのため臭素化段階でのブロモメタンへの非常に高い選択性が本プロセスには必要ないことを明示している。しかし、ジブロモメタンの存在が触媒失活率を増加させることが観察され、純粋な臭化メチルと比較して、選択性と失活率との兼ね合いを最適にするためにより高い運転温度を必要とした。
【0236】
実施例10
ZSM−5ゼオライト触媒を用いて、295℃およびおおよそ260時−1のGHSVで、メタン中の12.1mol%臭化メチルと2.8mol%臭化プロピルの混合物を反応させる。おおよそ86%の臭化メチル変換率およびおおよそ98%の臭化プロピル変換率が観察される。
【0237】
従って、上に示した本プロセスのすべての実施形態によると、金属臭化物/金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物は、臭素をこのプロセス内で容易に再利用できる触媒サイクルで動作する。金属臭化物は、約100℃〜約600℃の範囲、そして最も好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の温度で、水性相か蒸気相かのいずれかで酸素、酸素富化空気または空気によって容易に酸化されて、臭素元素蒸気および金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物をもたらす。約180℃より低い温度での運転は、低費用の耐腐食性フルオロポリマー内張装置の使用を可能にする結果となるので有利である。臭化水素酸は、金属水酸化物または金属酸化物との反応により中和されて、水蒸気および金属臭化物をもたらす。
【0238】
本発明の上記好ましい実施形態を説明し、示したが、提案したものおよび他のものなどの代替および変更をそれらに施すことができ、そうした代替および変更は本発明の範囲内に入ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期臭化水素リッチガスの一部分を熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションと該初期臭化水素リッチガスの残部とをもたらす段階;および
前記初期臭化水素リッチガスの前記残部の少なくとも一部分を触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす段階
を含む、臭化水素を臭素元素に変換する方法。
【請求項2】
前記初期臭化水素リッチガスが、実質的に乾燥しているガス混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱酸化温度が、実質的に前記触媒酸化温度より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒酸化温度が、約250℃〜約345℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記初期臭化水素リッチガスの前記一部分の熱酸化が、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約80%〜99%を臭素元素に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記初期臭化水素リッチガスの前記一部分の熱酸化が、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約85%〜95%を臭素元素に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記初期臭化水素リッチガスの前記残部の前記少なくとも一部分の触媒酸化が、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約20%〜1%を臭素元素に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記初期臭化水素リッチガスの前記残部の前記少なくとも一部分の触媒酸化が、該初期臭化水素リッチガス中の全臭化水素の約15%〜5%を臭素元素に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
臭化水素含有ガスから前記初期臭化水素リッチガスを採取することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記臭化水素含有ガスが、前記初期臭化水素リッチガスより低い臭化水素濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記初期臭化水素リッチガスが、前記臭化水素含有ガスである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記臭化水素含有ガスが、臭化水素と低分子量の炭化水素とを含有する気体混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記臭化水素含有ガスが、上流のプロセスから採取される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記上流のプロセスが、関連プロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記上流のプロセスが、無関係のプロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記上流のプロセスが、気体アルカン変換プロセスであり、ならびに、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素を形成することにより、該気体アルカンが該液体炭化水素に変換される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
気体アルカン変換プロセスで、気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて液体炭化水素および臭化水素含有ガスを形成することにより、該気体アルカンを該液体炭化水素に変換することと、該臭化水素含有ガスから前記初期臭化水素リッチガスを採取することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
臭素元素の前記第一および第二のフラクションをフィードとして前記気体アルカン変換プロセスに再利用することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記初期臭化水素リッチガスの熱酸化中または前に該初期臭化水素リッチガスに酸化性ガスを添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
初期臭化水素リッチガスに酸化性ガスを添加して熱酸化フィードガスを形成する段階(この場合、該初期臭化水素リッチガスは、臭化水素を含む実質的に乾燥しているガス混合物である);
該熱酸化フィードガスの一部分を熱酸化反応器において熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションと該熱酸化フィードガスの残部をもたらす段階;および
該熱酸化フィードガスの該残部の少なくとも一部分を触媒反応器において触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす段階(この場合、該熱酸化温度は、該触媒酸化温度より実質的に高い)
を含む、臭化水素を臭素元素に変換する方法。
【請求項21】
前記触媒反応器から排出された触媒反応器流出ガスから臭素元素生成物として臭素元素の前記第一および第二のフラクションを回収することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒反応器流出ガスを凝縮して、気相と臭素元素液相と水性液相とを含む三相混合物を得ることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記気相、前記臭素元素液相および前記水性液相を互いに分離することをさらに含み、前記臭素元素液相が、液体状態の本質的に純粋な臭素元素であり、前記臭素元素生成物の第一の部分を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記気相が酸素および第一の残留臭素元素部分を含む請求項22に記載の方法であって、該第一の残留臭素元素を前記臭素元素生成物の第二の部分として回収することをさらに含む、方法。
【請求項25】
前記水性液相が、水およびそれに溶解した第二の残留臭素元素部分を含む請求項22に記載の方法であって、該第二の残留臭素元素を前記臭素元素生成物の第三の部分として回収することをさらに含む、方法。
【請求項26】
気体アルカン変換プロセスで気体アルカンを液体炭化水素に変換する段階であって、該気体アルカンを臭素化することおよび結果として生じる臭化アルキルを触媒反応させて該液体炭化水素および臭化水素含有ガスを形成することによって変換する、段階;
該臭化水素含有ガスから初期臭化水素リッチガスを採取する段階;
該初期臭化水素リッチガスの一部分を熱酸化温度で熱酸化して、臭素元素の第一のフラクションおよび該初期臭化水素リッチガスの残部をもたらす段階;
該初期臭化水素リッチガスの該残部の少なくとも一部分を触媒酸化温度で触媒酸化して、臭素元素の第二のフラクションをもたらす段階;ならびに
臭素元素の該第一および第二のフラクションを該気体アルカン変換プロセスに再利用して、該気体アルカンを臭素化する段階
を含む、臭化水素を臭素元素に変換する方法。
【請求項27】
前記臭化水素含有ガスが、前記初期臭化水素リッチガスより低い臭化水素濃度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記初期臭化水素リッチガスが、前記臭化水素含有ガスである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記臭化水素含有ガスが、臭化水素と低分子量の炭化水素とを含有する気体混合物である、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−533504(P2012−533504A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520660(P2012−520660)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040620
【国際公開番号】WO2011/008573
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)