説明

臭気成分が低減された抗酸化剤

【課題】抗酸化成分を含有する植物の抽出液から得られた、臭気が極度に低減された抗酸化剤を提供する。
【解決手段】抗酸化成分を含むハーブ系香辛料植物を、アルコール濃度20〜80重量%のアルコール水溶液にて抽出し、得られた植物抽出液を減圧下でアルコールを留去してアルコール濃度を10重量%以下とした後に、合成吸着剤に通液することにより臭気成分を除去して得られたものであることを特徴とする、臭気成分が低減された抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分が低減された抗酸化剤に関し、更に詳しくは、抗酸化成分を含有するローズマリー、セージ等のハーブ系香辛料植物またはそれらの混合物の抽出液から得られた、臭気成分が極度に低減された、天然の抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ローズマリー、セージ等のハーブ系の香辛料植物が、抗酸化成分を含有することは既知であり、該抗酸化成分の抽出について従来種々検討されてきた。しかし、ハーブ系の香辛料植物は、独特の強い臭気を有するため、これらをそのまま、もしくは粗精製状態で抗酸化剤として食品、化粧品等に用いる場合、その独特の臭気のために利用上の制約を受けていた。そこで、抗酸化成分の精製を目的として、活性炭、珪藻土、酸性白色土等の吸着剤を用いた精製処理(特許文献1、特許文献2等)が検討されてきたが、完全に脱臭することは困難であった。また、超臨界流体を用いて抽出を行うことにより、無臭の抗酸化成分を製造する検討もなされている(特許文献3)が、超臨界抽出は設備費が高く、生産コスト的に不利である。
【0003】
特許文献4には、ローズマリー抽出液の抽出物を吸着させた樹脂担体をカラムに充填し、溶媒で脱着溶離する方法が記載されている。しかし、この方法も脱臭という観点からは不十分であった。
【特許文献1】特開昭55−102508号公報
【特許文献2】特開昭57−203445号公報
【特許文献3】特開平3−9984号公報
【特許文献4】特開2000−72685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、抗酸化成分を含有する植物の抽出液から得られた、臭気が極度に低減された抗酸化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定のアルコール濃度のアルコール水溶液によって抽出された抗酸化成分を含有する植物の抽出液について、アルコール濃度を一定以下とした後に、合成吸着剤に通液することによって、臭気成分が低減された抗酸化剤が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明の要旨は、抗酸化成分を含むハーブ系香辛料植物を、アルコール濃度20〜80重量%のアルコール水溶液にて抽出し、得られた植物抽出液を減圧下でアルコールを留去してアルコール濃度を10重量%以下とした後に、合成吸着剤に通液することにより臭気成分を除去して得られたものであることを特徴とする、臭気成分が低減された抗酸化剤にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抗酸化成分を含有する植物の抽出液から得られた、臭気が極度に低減された抗酸化剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いられる、臭気成分及び抗酸化成分を含む植物原料としては、特に限定されるものではないが、ハーブ系香辛料植物が好ましく、中でもローズマリー、セージ、オレガノ、タイム、マジョラム、クローブ、ペパーミント、ブラックペッパー、ターメリック、ジンジャー、シソ、シナモン、ナツメグ等がより好ましく、ローズマリー、セージ等が特に好ましい。ハーブ系香辛料植物、特にローズマリー、セージ等は、有用な抗酸化成分を多く含有していることから飲食品、化粧品等に広く使用されうる一方で、飲食品、化粧品等に配合されては不都合な臭気成分をも含有している。
【0009】
本発明によれば、これらの植物原料から、有用な抗酸化成分を、工業的に有利に収率よく抽出し、臭気成分を、簡便な方法で効率よく除去することができる。ここで、「抗酸化成分」とは、食品、化粧品等を酸化して劣化させることを防止する成分、すなわち油脂類の変質、色素の退色、香味の劣化、褐変現象等を防止する成分を表わす。具体的には、例えば、ローズマリー等に含まれるロスマリン酸、ロスマノール、カルノソール等、ターメリック等に含まれるクルクミン等が挙げられる。また、「臭気成分」とは、特に強い臭気を発する化合物を意味するものであり、飲食品、化粧品等に混入されていても支障をきたさない低臭気成分は含まれない。このような臭気成分の具体例としては、ショウノウ、シネオール、リモネン、ピネン等のテルペン類;リナロール等の不飽和アルコール類;ボルネオール等のテルペンアルコール類等が挙げられる。これらの中でも、テルペンアルコール類等が特に大きな臭気原因となる。これら臭気成分は、例えば、ローズマリーにはショウノウ、リナロール、ボルネオール等が含まれており、これらを除去することで臭気が極度に低減された抗酸化剤が得られる。本発明は、テルペンアルコール類の除去に特に有効である。
【0010】
抽出に用いられる植物原料の形態としては、全草、各植物部位または該部位の2種以上を混合したものを用いることができるが、好ましくは葉もしくは全草が用いられる。これら植物原料は、生でも乾燥物でもよいが、好ましくは乾燥物である。粉砕程度は特に制限されないが、例えば粗切り状態が好ましい。
【0011】
上記植物原料から抗酸化成分を抽出するに際し、抽出溶媒としては、アルコール水溶液が用いられる。アルコールとしては、通常、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の飽和アルコールである。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール等が挙げられ、これらの中でも、メタノール、エタノールが好ましい。該アルコール水溶液のアルコール濃度は、通常20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%、更に好ましくは40〜60重量%である。抽出時の温度としては、植物原料の種類等にもよるが、通常室温〜90℃、好ましくは50〜80℃の範囲である。更に好ましくは、常圧にてアルコール水溶液が還流する程度の温度である。このとき、抽出器は解放系でも閉鎖系でもよい。抽出時間は、原料及び抽出温度等にもよるが、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜4時間である。
【0012】
抽出処理の後、抽出溶液と植物原料残査を分ける手段は、濾過等の公知の方法が用いられる。抽出処理後の植物原料残査に対し、更に抽出操作を1〜3回、好ましくは2回程度行ない、最初の抽出溶液と合わせて用いてもよい。
【0013】
上記した抽出方法により、植物原料から抗酸化成分が効率よく抽出される。植物原料は、その1〜100倍量の、好ましくは2〜10倍量の抽出溶媒によって、効率的に抽出される。また抽出溶液の濃度は、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。この濃度範囲においては、抗酸化成分の抽出効率が特に好ましい。
【0014】
得られた抽出溶液は、臭気成分を除去する目的で、合成吸着剤で処理される。合成吸着剤処理の前処理として、抽出溶液からアルコールの一部又は全部を除去する必要がある。ここで、アルコールの除去は、それ自体既知の通常用いられる方法で行なうことができる。アルコールを除去した濃縮抽出溶液のアルコール濃度としては、低いほどよく、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは、ほぼ水溶液の状態である。
【0015】
この操作により、沈殿物が析出することがある。この沈殿物には油溶性の抗酸化成分が多く含有されているので、濾過等の手段により分離して回収してもよい。こうすることにより、合成吸着剤処理時の吸着剤への負荷が減少するため、吸着剤のライフを延長させることができ、水溶性抗酸化剤の臭気の低減を効率的に行うことができる。
【0016】
該濃縮抽出溶液は、アルコールを除去するとともに、抽出物の濃度を調節することが望ましい。抽出物の濃度としては、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。濃度調節の方法としては、水添加等が挙げられる。抽出物の濃度調節時期としては、特に制限されることはなく、アルコール除去操作とは独立に行なうことができる。好ましくはアルコール除去時又は除去後である。
【0017】
上記したように適切に濃度調節された濃縮抽出溶液は、合成吸着剤に通液し処理される。本発明で用いられる合成吸着剤としては、特に限定されないが、例えば、比表面積約が300〜1500m2 /g程度、細孔容積が0.3〜2.5mL/g程度、最頻度半径が20〜700Å程度が好ましい。このような合成樹脂の具体例としては、ダイヤイオンTMHP20、HP21等のHP樹脂;セパビーズTMSP825、SP850、SP207等のSP樹脂(以上、三菱化学社製);アンバーライトTMXAD−2、XAD−4、XAD−16(以上、ロームアンドハース社製)等のスチレン−ジビニルベンゼン系樹脂;ダイヤイオンTMHP2MG(三菱化学社製)、アンバーライトTMXAD−7、XAD−8(以上、ロームアンドハース社製)等のアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの合成吸着剤は市販されている。
【0018】
合成吸着剤に通液する方法としては、例えばバッチ方法と連続処理方法が挙げられる。バッチ方法としては、例えば、カラムのように下端が解放可能な容器中で合成吸着剤と濃縮抽出溶液とを一定時間、必要に応じて攪拌等を行い接触させ濃縮抽出液を取り出せばよい。また合成吸着剤を充填したカラム等に濃縮抽出溶液を連続的に通液し、臭気成分が合成吸着剤に吸着され臭気の低減された濃縮抽出溶液を連続して回収する連続処理方法がある。この方法は簡便で短時間で効率的に臭気成分の除去を行うことができ、且つ水溶性抗酸化成分も収率良く回収できるのでより好ましい。
【0019】
連続処理方法(以下、「吸着剤処理」と称することがある。)においては合成吸着剤カラムの形状は特に制限無いが、通常円筒型の一般的なカラムが用いられる。通液速度としては、通常、SV(1時間当たりの通液量/吸着剤の見掛け体積)で0.1〜20、好ましくは0.5〜10、更に好ましくは1〜5の範囲である。その際の温度としては、特に制限されるものではないが、通常5〜40℃で実施される。
【0020】
更に好ましい通液条件としては、合成吸着剤相を通過する濃縮抽出溶液が、合成吸着剤1gに対し、抽出物を乾燥重量で0.3g以上含有するように調節するとよい。上限は特に限定されるものではないが、吸着剤処理により臭気の低減された濃縮抽出溶液を連続して回収できるように当業者が設定すればよい。好ましくは0.3g〜3gの範囲である。こうすることにより、有用な抗酸化成分の合成吸着剤への吸着が、更に抑制される。
【0021】
上記した通液条件を決める方法としては、例えば、濃縮抽出溶液の一部を取り、溶媒を蒸発乾固させて抽出乾燥物重量を測定し、濃縮抽出溶液中の抽出物濃度を算出し、その濃度に基づいて合成吸着剤に通液する液量を決めてもよいし、濃度と液量から処理に用いる合成吸着剤の量を決めてもよい。
【0022】
特に抗酸化成分を含む植物原料として先述のようなハーブ系香辛料植物を用いる際には、濃縮抽出溶液の一部を採り、その吸光度測定値、例えば、ローズマリーからの抽出物の場合には280nmにおける溶液の吸光度値から大凡の抽出物含有量を把握することができる。つまり、予め液中の抽出物濃度と上記吸光度値との相関関係を求めておくことにより、濃縮抽出溶液の吸光度値から該液中の抽出物乾燥重量を算出することができる。これはハーブ系香辛料植物における抗酸化成分含有量が多いことによる。
【0023】
具体的な通液量としては、例えば合成吸着剤6.5g(見掛け体積約10mL)に対し、上記濃縮抽出溶液を通常20〜5000mL、好ましくは100〜1000mL程度通液するとよい。
【0024】
抽出溶液を上記条件にて吸着剤処理をすることにより、水溶性抗酸化成分を多く含む抗酸化成分が吸着剤層から早く溶出し、臭気成分は吸着剤層に長時間滞留するため、抗酸化成分を効率よく回収することができる。
【0025】
抗酸化成分回収の開始点としては、例えば、該成分が吸着剤層から溶出し始めた時点が挙げられ、具体的にはカラムから出てきた液を波長280nm等の光源を用いて吸光度を測定し、吸光度が上昇を開始した点を回収開始点とる方法が挙げられる。回収の終点としては、例えば、カラム出口にて通過液の臭いを嗅いで臭気が感じられたと人間が判断した時点、又は通過液中の臭気成分、たとえばショウノウ、ボルネオール、リナロール等をヘッドスペースGC法等にて分析し、これらの臭気成分の通過液中濃度が急激に増加し始める直前の時点等が挙げられる。回収の終点においては、使用後のカラムを、未使用又は再生後の充填カラムに交換してもよく、並列に接続したカラムの流路を切り替えて使用してもよく、直列に複数接続して上流側のカラムの終点後、該カラムを取り除き、下流側に未使用又は再生後の充填カラムを設置してもよく、あるいはそれらを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
このようにして、工業的に効率よく臭気の低減された抗酸化成分、特に水溶性成分を多く含有する抗酸化成分を取得することができる。更に、使用後の充填カラムに対し、30〜60重量%のアルコール水溶液を通液することにより、吸着剤に吸着したまま残った水溶性抗酸化成分を脱着させて回収することもできる。
【0027】
臭気成分の効率的除去に加え、抗酸化成分の純度をさらに高めるために、合成吸着剤カラムやオクタデシル基化学結合型シリカ(ODS)カラム等を用いたクロマト分離等の方法を併用してもよい。
【0028】
抽出溶液からアルコールの一部又は全部を除去する際に析出し、分離回収された、高濃度アルコール水溶液に溶解することによって得ることができ、また、吸着剤処理時に溶出せず、吸着剤に残存した抗酸化成分(主に油溶性)については、合成吸着剤を、2〜100倍(容量)の70重量%以上の高濃度アルコール水溶液、またはアルコールで処理し脱着溶離させて回収することができる。該高濃度アルコール水溶液またはアルコールによる処理は、該液を吸着剤に通液してもよく、吸着剤を浸せきさせてもよい。また場合によっては加熱処理して残存した抗酸化成分を脱着させてもよい。このようにして得られる油溶性抗酸化成分は、更に、これらの操作に加え、合成吸着剤カラムやオクタデシル基化学結合型シリカ(ODS)カラム等を用いたクロマト分離等の方法を併用して精製してもよい。
【0029】
得られた抗酸化成分を含む回収液は、所望により、それ自体既知の通常用いられる方法により溶媒の一部又は全部を除去し、濃縮物を得ることもできるし、抗酸化成分を固体状として回収することもできる。かくして、臭気が低減された抗酸化成分、特に臭気の極めて少ない水溶性抗酸化成分を得ることができる。
【0030】
上述の方法によって得られた水溶性及び/又は油溶性抗酸化成分を多く含有する抗酸化剤は、優れた抗酸化能を有しており、そのまま飲食品や化粧品などの抗酸化剤として使用できる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例及び比較例において、抗酸化能評価及び官能評価は次のとおり行った。
【0032】
<抗酸化能評価>
抗酸化能は電子供与能の価数を指標として、相対的に比較した。電子供与能はラジカル部分を有する化合物、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(以下、「DPPH」と称する)が還元されるとその還元度合により吸光度が減少することを利用して測定した。同一または同種の物質ではこの電子供与能の価数が高いほど、抗酸化能が高いと言える。具体的な測定方法は以下の通りである。
【0033】
抗酸化成分を濃度5重量%となるように溶媒(抗酸化成分A、B、D、E、F、G、Hは水、抗酸化成分Cはエタノール)に溶解し、これを電子供与能測定用原液とした。この電子供与能測定用原液を溶媒(抗酸化成分A、B、D、E、F、G、Hは水、抗酸化成分Cはエタノール)で希釈し、これを試験溶液とした。試験溶液0.05mLと1Mトリス・塩酸緩衝液(pH7)0.05mLと80mg/LのDPPH−エタノール溶液2.0mLと溶媒2.9mL(抗酸化成分A、B、D、E、F、G、Hは水、抗酸化成分Cはエタノール)とを混合し、室温にて20分間静置後、室温下で525nmにおける吸光度(以下、「OD525(sample)」と称する)を測定した。
【0034】
上記測定法で、試験溶液の代わりにエタノール0.05mLを用いたものを対照とし、80mg/LのDPPH−エタノール溶液2.0mLに代えてエタノール2.0mLを用いたものをブランクとして、それぞれについて同様に525nmにおける吸光度(以下、それぞれ「OD525(control)」および「OD525(blank)」と称する)を測定した。各抗酸化成分の電子供与能測定用原液の電子供与能は以下の式により算出した。
電子供与能=[OD525(control)−{OD525(sample)−OD525(blank)}]/(試験溶液調製時の電子供与能測定用原液の希釈率)
【0035】
<官能評価>
評価基準は、人間が臭いを嗅いで判断することとし、完全無臭(水分のみ)の場合の評価を「−」とし、原料抽出液乾固物の評価を「++++」とする5段階の評価とした。
【0036】
実施例1
ローズマリー乾燥葉(粗切り)100gに50%エタノール水溶液を1000mL加えて3時間70℃にて還流し、その後ろ紙でろ過して抽出液を得た。ろ紙上のローズマリー抽出残さを、さらに1000mLの50%エタノール水溶液にて上記と同様に、抽出操作を更に2回繰り返して抽出液を得た。これらの抽出液を合わせ約2700mLのローズマリー抽出液を得た。これを、エバポレータを用いて減圧下(約50mmHg)、約55℃にて溶媒留去し、水添加することにより、沈殿物を含むエタノール含有量1重量%以下(液体クロマトグラフィーの検出限界以下)の濃縮抽出液500mLを得た。これを、平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過してろ液と沈殿物とに分けた。
【0037】
このろ液をガラス製カラム(径12.5mmφ)にスチレン−ジビニルベンゼン系樹脂吸着剤(三菱化学社製:ダイヤイオンTMHP20)を20mL仕込んだ装置に、SV=約3の通液速度で通液し、無臭の通過液500mLを得た。この場合、合成吸着剤相を通過する濃縮抽出溶液は、合成吸着剤1gに対して抽出物を乾燥重量で0.8g含有していた。この通過液をエバポレーターで溶媒留去し、固形の水溶性抗酸化成分Aを約12g得た。
【0038】
更に、該吸着剤カラムに50mLの50%エタノール水溶液をSV=約3で通液し、得られた通過液をエバポレーターで溶媒留去し、約1gの水溶性抗酸化成分Bを得た。
【0039】
更に、該吸着剤カラムに50mLの90%エタノール水溶液をSV=約3で通液し、得られた通過液をエバポレーターで溶媒留去し、約1.5gの油溶性抗酸化成分Cを得た。 得られた各抗酸化成分の抗酸化能評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0040】
実施例2
セージ乾燥葉(粗切り)100gに60%メタノール水溶液を1000mL加えて5時間70℃にて還流し、その後ろ過して抽出液を得た。セージ残さを、さらに1000mLの60%メタノール水溶液にて同様に抽出する操作を2回繰り返して抽出液を得た。これらの抽出液を合わせ、エバポレータを用いてメタノールを留去したところ、沈殿が析出した。これを、平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液500mLと沈殿物を得た。このろ液をガラス製カラム(径12.5mmφ)にダイヤイオンTMHP20(三菱化学社製)を20mL仕込んだ装置に、SV=約3の通液速度で通液し、水溶性抗酸化成分を含む無臭の通過液500mLを得た。この場合、合成吸着剤相を通過する濃縮抽出溶液は、合成吸着剤1gに対して抽出物を乾燥重量で約0.6g含有していた。この通過液をエバポレーターで溶媒留去し、固形の水溶性抗酸化成分Eを10g得た。 得られた抗酸化成分の抗酸化能評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0041】
比較例1
実施例1と同様の方法で、沈殿物を含む濃縮抽出液を得た。これを平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液500mLを得た。このろ液をエバポレーターで溶媒留去し、水溶性抗酸化成分Eを約16g得た。
得られた抗酸化成分の抗酸化評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0042】
比較例2
実施例2と同様の方法で、沈殿物を含む濃縮抽出液を得た。これを平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液500mLを得た。このろ液をエバポレーターで溶媒留去し、水溶性抗酸化成分Fを約12g得た。
得られた抗酸化成分の抗酸化評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0043】
比較例3
実施例1と同様の方法で、沈殿物を含む濃縮抽出液を得た。これを平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液500mLを得た。このろ液をガラス製カラム(径12.5mmφ)に粒状活性炭を20cm3 仕込んだ装置に、SV=約3の通液速度で通液し、水溶性抗酸化成分を含む通過液500mLを得た。この場合、活性炭相を通過する濃縮抽出液は、活性炭1gに対して抽出物を乾燥重量で0.8g含有していた。この通過液をエバポレーターで溶媒留去し、水溶性抗酸化成分Gを約10g得た。
得られた抗酸化成分の抗酸化評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0044】
比較例4
実施例2と同様の方法で、沈殿物を含む濃縮抽出液を得た。これを平均孔径1.6μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液500mLを得た。このろ液をガラス製カラム(径12.5mmφ)に粒状活性炭を20mL仕込んだ装置に、SV=約3の通液速度で通液し、水溶性抗酸化成分を含む通過液500mLを得た。この場合、活性炭相を通過する濃縮抽出液は、活性炭1gに対して抽出物を乾燥重量で0.6g含有していた。この通過液をエバポレーターで溶媒留去し、水溶性抗酸化成分Hを約8g得た。
得られた抗酸化成分の抗酸化評価及び官能評価結果を表1に示した。
【0045】
〔表1〕抗酸化能評価及び官能評価結果
──────────────────────────
抗酸化成分 電子供与能 官能評価
──────────────────────────
実施例1 成分A 29.8 −
成分B 21.0 +
成分C 11.0 ++
──────────────────────────
実施例2 成分D 21.3 −
──────────────────────────
比較例1 成分E 31.8 ++++
──────────────────────────
比較例2 成分F 22.0 ++++
──────────────────────────
比較例3 成分G 26.1 +++
──────────────────────────
比較例4 成分H 17.5 +++
──────────────────────────
−:臭いなし +〜++++:+が多いほど臭いが強い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化成分を含むハーブ系香辛料植物を、アルコール濃度20〜80重量%のアルコール水溶液にて抽出し、得られた植物抽出液を減圧下でアルコールを留去してアルコール濃度を10重量%以下とした後に、合成吸着剤に通液することにより臭気成分を除去して得られたものであることを特徴とする、臭気成分が低減された抗酸化剤。
【請求項2】
植物抽出液が、抗酸化成分を含むハーブ系香辛料植物をアルコール濃度40〜60重量%のアルコール水溶液にて抽出して得られたものである請求項1に記載の、臭気成分が低減された抗酸化剤。
【請求項3】
得られた植物抽出液を減圧下でアルコールを留去してアルコール濃度を1重量%以下とした後に、濾過して沈澱物を分離し、しかる後に合成吸着剤に通液して得られたものである請求項1又は2に記載の、臭気成分が低減された抗酸化剤。
【請求項4】
比表面積が300〜1500m2 /g、細孔容積が0.3〜2.5mL/g、最頻度半径が20〜700Åの合成吸着剤に通液することにより得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の、臭気成分が低減された抗酸化剤。
【請求項5】
臭気成分がテルペンアルコール類又は/及びテルペン類である請求項1〜4のいずれかに記載の、臭気成分が低減された抗酸化剤。

【公開番号】特開2008−75088(P2008−75088A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272012(P2007−272012)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願2001−86950(P2001−86950)の分割
【原出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】