説明

舌清掃具

【課題】使用者に痛みを感じさせることなく舌苔を十分に除去することのできる舌清掃具を提供することを課題とする。
【解決手段】この舌清掃具1は、把持部2と、把持部2から延びる連結部3と、連結部3の先端に設けられたヘッド部4と、を備えている。ヘッド部4は、連結部3から延びる基台部41と、基台部41の上面に形成された舌苔除去部42とを有しており、舌苔除去部42は、ショアA硬度が10〜35であり、連結部3は、把持部2を固定した状態で舌苔除去部42に対して垂直方向に1Nの荷重を掛けたときに舌苔除去部42の可動範囲が5〜10mmとなるような弾性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌表面に付着した舌苔を除去するための舌清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食べ物の残渣物や口腔内の細菌などが舌の表面に付着したもの(舌苔)は口臭の原因となるため、この舌苔を除去するための舌清掃具が種々提案されている。例えば特許文献1において提案されている舌清掃具は、握り手の先端側に二つのプレートを設けており、このプレートを舌に押し当てた状態で舌表面を擦るように舌清掃具を動かすことで舌表面に付着した舌苔を掻き集めて舌苔を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4275299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した舌清掃具において舌を擦るプレートはプラスチック製となっているために、舌を擦ったときに使用者は痛みを感じてしまう。このため使用者は十分な力で舌表面を擦ることができず、舌苔が十分に除去することができないという問題があった。そこで、本発明は、使用者に痛みを感じさせることなく舌苔を十分に除去することのできる舌清掃具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る舌清掃具は、把持部と、前記把持部から延びる連結部と、前記連結部の先端に設けられたヘッド部と、を備え、前記ヘッド部は、前記連結部から延びる基台部と、前記基台部の一方面に形成された舌苔除去部とを有しており、前記舌苔除去部は、ショアA硬度が10〜35であり、前記連結部は、前記把持部を固定した状態で前記舌苔除去部に対して垂直方向に1Nの荷重を掛けたときに前記舌苔除去部の可動範囲が5〜10mmとなるような弾性を有する。
【0006】
本発明に係る舌清掃具によれば、舌苔を除去するために舌を擦る舌苔除去部はショアA硬度が10〜35であるために、強い力で舌表面を擦っても使用者は痛みを感じることがなく、十分に強い力で舌表面を擦ることができ、舌苔を十分に除去することができる。また、把持部とヘッド部とを連結する連結部が上述したような弾性を有するために、舌苔除去部を舌に対してしっかりと押圧させることができ舌苔を十分に除去することができると同時に、舌苔除去部を舌に対して押さえつけ過ぎることを防止することもできる。
【0007】
舌苔除去部を上述したような硬度で形成すると、射出成形などで基台部上に舌苔除去部を形成する場合に、基台部に対して舌苔除去部が十分に融着しない可能性がある。しかしながら、舌苔除去部は、基台部の一方面を覆うとともに周縁が折り返されて他方面まで延びているような構成とすることによって、舌苔除去部を基台部に対して強固に取り付けることができる。また、舌苔除去部は基台部の周縁を覆っているために、起こりやすい周縁部からの剥離を防止することができる。
【0008】
また、上記基台部の舌苔除去部側に、溝、貫通孔、及び係合突起の少なくともいずれかを形成することができ、この構成によって基台部と舌苔除去部との接着面積を大きくして舌苔除去部を基台部に対して強固に取り付けることができる。なお、舌清掃具の長さ方向、すなわち、舌清掃具の動作方向に対して交差する方向に溝が延びるように形成することが好ましい。
【0009】
また、上記舌苔除去部は、幅方向に延びる線状突起と、前記線状突起よりも連結部側に形成され前記線状突起よりも高く形成された棒状突起とを有するような構成とすることもできる。この構成によれば、棒状突起で舌苔をほぐして掻き出した後に、この掻き出された舌苔を線状突起によって掻き集めることができ、また、棒状突起の方が高く形成されているため、使用の際に棒状突起を線状突起に先行して確実に舌に当てることができ、十分に舌苔を除去することができる。なお、棒状突起は、例えば円錐状突起や三角錐状突起などとすることができる。
【0010】
また、連結部と基台部とを一体的に形成することが好ましい。
【0011】
また、上記舌苔除去部は、射出成形によって基台部に熱融着されるよう形成することができる。
【0012】
また、舌苔除去部は、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成することができ、熱可塑性エラストマーにより形成することが好ましい。なお、ゴムとしては、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などを挙げることができる。
【0013】
なお、舌苔除去部を基台部に対して強固に取り付けるという観点からは、舌清掃具を、把持部と、前記把持部から延びる連結部と、前記連結部の先端に設けられたヘッド部と、を備え、前記ヘッド部は、前記連結部から延びる基台部と、前記基台部の一方面に熱可塑性エラストマーにより形成された舌苔除去部とを有しており、前記舌苔除去部は、基台部の一方面を覆うとともに、周縁が折り返されて他方面まで延びている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用者に痛みを感じさせることなく舌苔を十分に除去することのできる舌清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態に係る舌清掃具の平面図である。
【図2】図2は本実施形態に係る舌清掃具の側面図である。
【図3】図3は本実施形態に係る舌清掃具の底面図である。
【図4】図4は本実施形態に係る舌苔除去部の記載を省略した舌清掃具の平面図である。
【図5】図5は本実施形態に係る舌清掃具の側面図であり、連結部に掛かる荷重の方向を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る舌清掃具の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書においては、図1の左側を「先端」、右側を「後端」、紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、左右方向を「長さ方向」、上下方向を「幅方向」と称している。
【0017】
図1から図3に示すように、舌清掃具1は、把持部2と、把持部2の先端から延びる連結部3と、連結部3の先端に設けられたヘッド部4と、を備えている。
【0018】
把持部2は、使用者が舌清掃具1を使用する際に握る部分であり、両側部の長さ方向中央部が凹状に湾曲したり、後端に行くにしたがって厚さが薄くなるような形状として使用者が握りやすいようにしている。把持部2は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ナイロン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックによって形成することができる。なお、把持部2は、射出成形によって、後述する連結部3及び基台部41と一体的に形成することが好ましい。
【0019】
連結部3は、把持部2の先端から一体的に延び、把持部2よりもその厚さが薄くなっている。この連結部3は、把持部2を幅方向からバイスなどの固定手段で固定した状態で、図5の矢印で示すように、舌苔除去部42の先端から8mm(幅方向中央)の箇所に対して垂直方向下方に1Nの荷重を掛けたときにその荷重が掛けられた箇所が5〜10mm程度垂直方向下方に変位するような弾性を有している。このように連結部3の先端における変位が10mm以下となるような弾性とすることで、後述する舌苔除去部42を舌に対してしっかりと押圧することができ舌苔を十分に除去することができる。また、連結部3の先端における変位が5mm以上となるような弾性とすることによって、使用の際に舌苔除去部42を舌に対して強く押圧し過ぎないようにすることができる。なお、上述した測定は、精密万能試験機AGS-500D(島津製作所)によって測定することができる。
【0020】
ヘッド部4は、連結部3から一体的に延びる基台部41と、この基台部41の上面に形成された舌苔除去部42とから構成されている。このヘッド部4の大きさは、ヘッド部4を口腔内に挿入したときの嘔吐反射を防止するために、その寸法を幅および長さ20〜30mm、厚み3〜10mmとすることが好ましい。
【0021】
基台部41は、図4に示すように、その周縁に沿って環状の溝411が上面に形成され、中央部には複数の貫通孔412が形成されており、また、複数の係合突起413も形成されている。
【0022】
舌苔除去部42は、図1から図3に示すように、基台部41の上面に形成されるとともにその周縁が折り返されて基台部41の下面まで延びて基台部41の周縁を覆った状態となっており、また、基台部41の溝411や貫通孔412内にも充填されている。この舌苔除去部42は、例えば、熱可塑性エラストマーによって形成されており、具体的には、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ナイロン系等の熱可塑性エラストマーによって形成することができる。この舌苔除去部42のショアA硬度は硬度10〜35程度とすることが好ましく、15〜30とすることがさらに好ましい。この範囲にすることによって、強い力で舌表面を擦っても使用者は痛みを感じることがなく、舌表面をしっかり擦って舌苔を十分に除去することができる。なお、この舌苔除去部42は、射出成形によって基台部41に熱融着させることで形成することができる。また、舌苔除去部42のショアA硬度は、JIS K6253によって測定することができる。
【0023】
また、舌苔除去部42は、ヘッド部4の後端領域に形成された複数本の円錐状突起421と、ヘッド部4の先端側領域に形成された複数列の線状突起422を有している。
【0024】
円錐状突起421は、舌に付着した舌苔をほぐして掻き出すためのものであり、ヘッド部4の後端側領域に形成されているために、使用の際に線状突起422よりも先に舌に当たる。また、より確実に線状突起422よりも先に舌に当たるように、円錐状突起421の高さは、1.5〜5mm程度とすることが好ましく、後述する線状突起422よりも0.5~2.0mm程度高く形成することが好ましい。
【0025】
線状突起422は、上述した円錐状突起421によって掻き出された舌苔を掻き集めるためのものであり、ヘッド部4の幅方向に亘って延びた平面視円弧状に形成されている。各線状突起422の高さは、中央に行くにしたがって高くなるように設計されている。この線状突起422の中央部の高さ、すなわち最大高さは、1.0〜3.0mm程度とすることが好ましい。
【0026】
以上のように構成された舌清掃具1の使用方法について説明すると、まず、使用者は把持部2を把持しヘッド部4を口腔内に挿入して舌苔除去部42を舌に押し当てる。そして、舌苔除去部42を舌に押し当てた状態で舌清掃具1を後端側に引っ張ると、舌苔除去部42の円錐状突起421が舌の表面に付着した舌苔を掻き出し、この掻き出された舌苔を線状突起422によって掻き集めて除去する。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、把持部2は連結部3よりも幅が大きくまた厚くなっているが、幅及び厚さを連結部3と同一とすることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、基台部41には周縁部に環状の溝411が形成されているが、この溝411の形状や位置は特にこれに限定されるものではなく、例えば基台部41の全体に亘って溝411を設けたり、直線状の溝411を複数設けたりすることもできる。
【0030】
また、上記実施形態では、舌苔除去部42を熱可塑性エラストマーにより形成しているが、ショアA硬度が10〜35であれば他の材料を用いることもでき、例えば、シリコーン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成してもよい。
【実施例】
【0031】
図1〜4に示したものと同じ形状であり、舌苔除去部42のショアA硬度と連結部3の弾性を変えた計30種類の舌清掃具1を作製した。なお、舌苔除去部42は、SEBSを用いて形成し、円錐状突起421の高さを3mm、線状突起422の高さを1.8mmとした。また、把持部2,連結部3,及び基台部41は、ポリプロピレンによって一体的に形成した。
【0032】
表1及び2に示すよう、ショアA硬度は、6,10,15,30,35,40の6種類とし、連結部3の弾性は、変位が1mm,3mm,5mm,10mm,15mmの5種類とした。なお、各表中にもあるこの変位とは、把持部2を幅方向からバイスで固定した状態で、図5の矢印で示すように、舌苔除去部42の先端から8mm(幅方向中央)の箇所に対して垂直方向下方に1Nの荷重を掛けたときにその荷重が掛けられた箇所が下方に移動したときの変位のことを示している。このように作製した30種類の舌清掃具を用いて、舌苔の除去に関して行った官能試験の結果を表1に、舌の痛みに関して行った官能試験の結果を表2に示した。なお、各官能試験は20〜50代の男女10名によって行った。以下の表1及び表2の結果から、ショアA硬度を10〜35、変位を5〜10mmとすることで、舌に痛みを感じさせずに、舌苔を十分に除去できることが分かった。
【0033】
【表1】

【0034】
表1について、舌苔の除去が出来たと感じた人数が7名以上のものは「○」とし、5〜6名のものは「△」とし、4名以下のものは「×」とした。
【0035】
【表2】

【0036】
表2については、舌の痛みを感じなかった人数が7名以上のものは「○」、5〜6名のものは「△」、4名以下のものは「×」とした。
【符号の説明】
【0037】
1 舌清掃具
2 把持部
3 連結部
4 ヘッド部
41 基台部
42 舌苔除去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
前記把持部から延びる連結部と、
前記連結部の先端に設けられたヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部は、前記連結部から延びる基台部と、前記基台部の一方面に形成された舌苔除去部とを有しており、
前記舌苔除去部は、ショアA硬度が10〜35であり、
前記連結部は、前記把持部を固定した状態で前記舌苔除去部に対して垂直方向に1Nの荷重を掛けたときに前記舌苔除去部の可動範囲が5〜10mmとなるような弾性を有する、舌清掃具。
【請求項2】
前記舌苔除去部は、前記基台部の一方面を覆うとともに、周縁が折り返されて他方面まで延びている、請求項1に記載の舌清掃具。
【請求項3】
前記基台部は、前記舌苔除去部側の面に溝、貫通孔、及び係合突起の少なくともいずれかが形成されている、請求項1又は2に記載の舌清掃具。
【請求項4】
前記舌苔除去部は、幅方向に延びる線状突起と、前記線状突起よりも連結部側に形成され前記線状突起よりも高く形成された棒状突起とを有する、請求項1から3のいずれかに記載の舌清掃具。
【請求項5】
前記連結部と前記基台部とは、一体的に形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の舌清掃具。
【請求項6】
前記舌苔除去部は、射出成形によって前記基台部に熱融着されている、請求項1から5のいずれかに記載の舌清掃具。
【請求項7】
前記舌苔除去部は、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成される、請求項1から6のいずれかに記載の舌清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228281(P2012−228281A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96595(P2011−96595)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】