説明

舌苔除去作用効果を有する食品

【課題】舌苔の除去。
【解決手段】本願発明者らはカテキン類を含む食品を摂取することにより、化学的作用により、顕著に舌苔が除去されることを見出した。すなわち、本発明はカテキン類を舌苔除去作用を有する化合物として含有する食品を提供する。本発明のひとつの実施形態として、エピガロカテキンを含有するガムを挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
舌苔除去作用効果を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
舌に付着する白い苔状のものを舌苔という。舌苔は食物残渣、脱落上皮、細菌及び血球等が堆積し、苔状を呈したものである。舌苔の蓄積は口臭の原因、味覚障害、誤燕性肺炎の原因になることが知られており、また、過剰に蓄積した舌苔は他人に不潔感を与えることから、その除去が望まれる。
【0003】
これまで、舌苔除去の方法として、物理的な除去が行われてきた。物理的除去とは、すなわち、歯ブラシ、舌ブラシなどにより、舌苔をこすり落とすものである。しかしながら、物理的除去は除去時に舌表面の組織を損傷する場合があり、また、強固に付着した舌苔を十分に除去することができない。
【0004】
一方、舌苔除去効果を奏する組成物の摂取により舌苔を除去しようという試みがなされている。特許文献1は植物体由来のプロテアーゼを有効成分として含有する舌苔除去用組成物を開示する。しかしながら、特許文献1では、効果の確認のための比較は、錠剤の投与前後で行われているため、得られる舌苔除去効果は、有効成分による化学的作用のみでなく、錠剤による物理的除去効果にもよると推測される。
【0005】
本願発明者らはカテキン類を含む食品を摂取することにより、化学的作用により、顕著に舌苔が除去されることを見出し、本発明を完成した。カテキン(catechin)は、狭義にはC15146、分子量290.27の木本植物の木芯に多く含まれる水溶性多価フェノールを指し、広義にはその誘導体となるポリフェノールを含む。本明細書では、定義を明確にするため、カテキンとは狭義のカテキンを指し、カテキン類という場合に、カテキン及びその誘導体となる一連のポリフェノールを指すものとする。カテキン類は特に茶に含まれる成分として知られる。カテキン類としてカテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレートなどが知られる。
【0006】
特許文献1は有効成分の植物体由来調製物の例としてプロテアーゼ以外にカテキンを挙げている。しかしながら、カテキンが実際に舌苔除去作用を有することを示す記述はなく、エピガロカテキンに関する記述もない。また、本発明では、カテキン類を食品に含有し、断続的に継続して投与することにより顕著な舌苔除去効果が得られるが、このような効果は、開示も示唆もされていない。
【0007】
特許文献2はポリフェノールと、キシリトールのように細菌による代謝産物として酸を産生しない糖類とを含有する抗菌性組成物を開示し、ポリフェノールとして、カテキンをあげる。しかしながら、カテキンを単独で含有する食品に関する記載はなく、エピガロカテキンに関する記述、また、舌苔除去効果についての記述もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2003/090704公報
【特許文献2】特開2001−226245公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
舌苔の除去を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カテキン類を有効成分として食品に含有した食品を摂取する。
【発明の効果】
【0011】
カテキン類を舌苔除去作用を有する化合物として含有する食品を摂取することで、舌苔の除去が可能となった。
さらには、カテキン類を舌苔除去作用を有する化合物として含有する食品を継続して摂取することにより、非常に顕著な舌苔除去効果が得られることが示された。カテキン類は、緑茶由来の成分である。緑茶は古来より日本人に親しまれていることから、カテキンは安全性が確保されており、イメージもよい。それゆえ、消費者に受け入れられやすく、継続的摂取の安全性も確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実験のスケジュール
【図2】舌苔スコア(TCS)の経時変化
【図3】総揮発性硫化物濃度の経時変化
【図4】官能試験スコア(OLT)の経時変化
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、カテキン類を舌苔除去作用を有する化合物として含有する食品を提供する。食品は限定されることなく、清涼飲料、菓子、冷菓、乳製品、酒類および肉類等をあげることができ、さらに、トローチ、ガム(チューインガム)、キャンディ、グミゼリーを挙げることができる。本発明においては、とりわけ、ガムを食品として用いる場合に顕著な効果が得られることが確認されている。
【0014】
カテキン類としては、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレートなどが挙げられる。本発明においては、特にエピガロカテキンガレート(EGCg)をカテキン類として用いることが好ましい。
【0015】
本発明の食品は、1日のカテキン類の摂取量が1から10グラム、より最適には、3から5グラム程度となるよう摂取し、8週間程度摂取を続けることにより、非常に顕著な舌苔除去効果を示す。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の例を挙げて説明するが、本発明の範囲は以下の例のみに限定されるものではない。
【0017】
表1に示した材料を配合し、エピガロカテキンエピガロカテキンガレート(本明細書においてEGCgと記載する場合がある)を含有する「試験ガム1」、および対照としてエピガロカテキンエピガロカテキンガレートを含有しない「試験ガム2」を作製した。
【0018】
【表1】

【0019】
上記のとおり作製した、試験ガム1、および試験ガム2を、被験者に摂取させ、舌苔量と口臭の評価に基づき、試験ガム1、2の舌苔除去効果を評価した。被験者は、試験への参加を希望した、20代から40代の男女のうち、口腔内スクリーニングで舌苔の付着が認められる24名とした。被験者らは試験開始2週間前に口腔内清掃(スケーリング)を受け、歯垢・歯石の除去を行った。被験者を、年齢・性別による層別化に基づき、2グループに分け、それぞれ、試験ガム1摂取群、試験ガム2摂取群とした。各群の被験者は、それぞれ試験ガム1または2を、1日10粒(2粒×5回)を8週間摂取した。試験開始時、2週目、4週目、6週目、8週目、さらに試験終了後2週目に試験ガム1、2の舌苔除去効果の評価を行った。実験期間中4名が脱落したため,最終的な解析は20名を対象として行った。図1に実験のスケジュールを示す。
【0020】
試験ガム1、2の舌苔除去効果の評価は、肉眼で観察される舌苔量、口臭の程度を測定することにより行った。各測定項目について、グループ間の有意差検定をt検定により行った。また、群内の経時変化を観察するため、0週目との有意差検定をt検定により行った。舌苔量、口臭の程度の測定は以下のように行った。
【0021】
舌苔量の測定
舌苔量は、舌苔を目視により観察し、その面積を0から3までの4段階、厚みを0から2までの3段階で評価した。そして、それらの価を乗じたものを舌苔スコア(TCS)とした。すなわち、TCS=面積(0〜3)×厚み(0〜2)とした。
【0022】
口臭の程度の測定
口臭の程度は、ガスクロマトグラフィー分析および官能試験により行った。それぞれの測定は以下のように行った。
(I)ガスクロマトグラフィー分析
口内気体に含まれる揮発性硫化物(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド)の濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。硫化水素,メチルメルカプタン,硫化ジメチル濃度の合計を総揮発性硫化物濃度(TotalVSC)として記録した。
(II)官能試験
被験者がにおい袋に吐き出した息を複数の検者が0から5までの6段階で評価し、官能試験スコア(OLT)とした。0から5段階までの評価の基準は以下のとおりである。
0:嗅覚閾値以上の臭いを感知しない
1:嗅覚閾値以上の臭いを感知するが、悪臭と認識できない
2:悪臭と認識できる臭い
3:悪臭と容易に判定できる
4:我慢できる強い悪臭
5:我慢できない強烈な悪臭
【0023】
以上の実験の結果を以下に示す。舌苔スコア(TCS)の経時変化を図2に示す。横軸に試験開始後の週数を縦軸に0週からのTCSの変化の平均を示す。
【0024】
試験ガム1摂取群では、4、10週目において、0週目と比較して有意なTCSの低下(p<0.05)が見られた。また、6、8週目において、0週目と比較して有意な低下(p<0.01)が見られた。また、試験ガム2摂取群と比較して、試験ガム1摂取群では、4、6、8、10週目において有意な低下(p<0.01)が見られた。また、ガムの投与期間である0から8週にかけて、徐々に舌苔が低下しており、断続的に継続して摂取することにより、顕著に効果が得られることが示された。
【0025】
総揮発性硫化物濃度の経時変化を図3に示す。横軸に試験開始後の週数を縦軸に0週からの総揮発性硫化物濃度の変化の平均(ppm)を示す。
【0026】
試験ガム1摂取群では、4、6、8週目において0週目と比較して有意な低下(p<0.01)が見られた。また、試験ガム2摂取群と比較して、試験ガム1摂取群の4、6、8週目において有意な差(p<0.01)が見られた。また、試験ガム2摂取群と比較して、試験ガム1摂取群の10週目において有意な差(p<0.05)が見られた。また、ガムの投与期間である0から8週にかけて、徐々に値が低下しており、断続的に継続して摂取することにより、顕著に効果が得られることが示された。
【0027】
官能試験スコアの経時変化を図4に示す。横軸に試験開始後の週数を縦軸に0週からの官能試験スコア(OLT)の変化の平均を示す。試験ガム1摂取群では、8週目において0週目と比較して有意な低下(p<0.05)が見られた。また、試験ガム2摂取群と比較して、試験ガム1摂取群の6、8、10週目において有意な差(p<0.01)が見られた。また、ガムの投与期間である0から8週にかけて、徐々に値が低下しており、断続的に継続して摂取することにより、顕著に効果が得られることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類を舌苔除去作用を有する化合物として含有する食品。
【請求項2】
食品がガムである請求項1の食品。
【請求項3】
カテキン類がエピガロカテキンである請求項1または2の食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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