説明

航空機のパイロットに対してパイロット警告信号を提供する方法、コンピュータプログラム製品、及び警告デバイス

【課題】 本発明は、航空機のパイロットに対するパイロット警告信号を提供するための方法及びデバイスを提供する。
【解決手段】 本方法は、パイロットにより作動され得るペダルのペダル角度を示す第1信号を提供し、ペダル角度に直接動的に依存する第2信号を提供し、それぞれの場合で、特定時間において第1信号及び第2信号から一対の値を形成し、それぞれの場合で、2つの連続時間における対の値の角度変化と対の値の増分の角度変化とを決定し、ペダルの作動及び航空機の刺激されたタンブリング運動が確認されたときに、対の値の決定された角度変化が第1閾値よりも大きい場合又は対の値の増分の決定された角度変化が第2閾値よりも大きい場合、パイロット警告信号を生成することを備える。また、コンピュータプログラム製品及び警告デバイスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のパイロットに対してパイロット警告信号を提供するための方法に関する。本発明は、さらには、コンピュータプログラム製品及び警告デバイスに関する。
【0002】
それは様々な領域に適用され得るが、本発明は、航空機又は旅客機に関してより詳述される。
【0003】
本発明の技術分野は、航空機の制御要素、特に航空機のラダーを制御するためのペダルが、不適切に作動されたときに、パイロットに警告することに関する。
【背景技術】
【0004】
航空機のパイロットが、ペダル入力としてダブレット、特に繰り返されたダブレットを適用する場合、ヨー、ロール、及び横滑りの横自由度が刺激され、これは、ラダーを介する航空機のタンブリング運動の刺激につながり得る。
【0005】
この刺激が、タンブリング運動(ダッチロールモード)の固有振動数において起こる場合、強い反応が、航空機構造内で共鳴により起こる。タンブリング運動の減衰は、従来、フライトコントロールシステム、特にヨーダンパの効果を通して改良(増加)されている。
【0006】
加えて、フライトコントロールシステムのヨーダンパ権限が制限され得る場合、上述した反応はさらに増大される。残存低減衰の結果として、これは、航空力学の観点で横反応の増加につながる。それ故に、航空機要素、例えばラダーユニットへの高負荷が相応に起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヨーダンパが未だ権限を有するという条件で、増加された航空機の反応の問題は、従来、ラダーによって増加されたヨー減衰によって減衰される。しかしながら、ヨー減衰効果が制限される場合、この手段は効果的でない。
【0008】
代替手段は、航空機の翼上のロール制御面によりヨー減衰を増加させることであろう。
【0009】
しかしながら、ロール制御面のヨー減衰効果は小さいので、この手段は効果的でない。また、これらの代替手段は、実用的な制御の側面により厳格な制限を受ける。
【0010】
ヨー減衰権限を増加するためのさらなる代替手段は、不都合なほどに、ペダルから航空機のラダーへの機械的な信号伝達のための追加的なハードウェアを含み、それ故にコスト及び追加重量を増加させる。
【0011】
それ故に、本発明の目的は、上述した欠点を克服するパイロットに対する警告を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項10の特徴を有するコンピュータプログラム製品と、請求項11の特徴を有する警告デバイスとによって達成される。
【0013】
それに応じて、航空機のパイロットに対するパイロット警告信号を提供する方法が提案され、以下のステップを備える。
a)パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度を示すための第1信号を提供すること。
b)ペダル角度に直接動的に依存する第2信号を提供すること。
c)それぞれの場合で、特定時間における、第1信号及び第2信号から一対の値を形成すること。
d)それぞれの場合で、2つの連続時間における対の値の角度変化及び対の値の増分の角度変化を決定すること。
e)ペダルの作動及び航空機の刺激されたタンブリング運動が確認されたときに、対の値の決定された角度変化が第1閾値よりも大きい場合又は対の値の増分の決定された角度変化が第2閾値よりも大きい場合に、パイロット警告信号を生成すること。
【0014】
また、上述した方法を、プログラム制御装置上で実行させるコンピュータプログラム製品が提案される。
【0015】
また、航空機のパイロットに向けてパイロット警告信号を提供するための、特に本発明に係る方法を利用する警告デバイスであって、パイロットにより作動され得るペダルのペダル角度に関する情報を含む第1信号を提供するために設けられる第1装置を備え、ペダル角度に直接動的に依存する第2信号を提供するために設けられる第2装置を備え、所定の時間における第1及び第2信号からそれぞれの一対の値を形成するために設けられる第3装置を備え、2つの連続時間における対の角度の角度変化と対の角度の増分の角度変化とをそれぞれの場合で決定するために設けられる第4装置を備え、ペダルの作動及び航空機の刺激されたタンブリング運動が確認されたときに、対の値の所定の角度変化が第1閾値よりも大きい場合又は対の値の増分の所定の角度変化が第2閾値よりも大きい場合に、パイロット警告信号を生成するために設けられる第5装置を備える。
【0016】
コンピュータプログラム装置のようなコンピュータプログラム製品は、例えば、メモリカード、USBスティック、フロッピーディスク、CD−ROM、DVD、ハードディスクのような記録媒体として、あるいはネットワーク内のサーバからダウンロード可能なデータファイルの形式として、提供又は供給され得る。これは、例えば、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラム装置を利用する、対応するデータファイルを伝送することにより、ワイヤレス通信ネットワークで実行することができる。
【0017】
それぞれの装置、すなわち、第1、第2、第3、第4、及び/又は第5装置は、好ましくは、ハードウェア技術を利用して実装され、また、そこでの機能が、ソフトウェア技術を利用して実装され得るであろう。ハードウェア技術を利用する実装において、それぞれの装置は、デバイス、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、プログラム制御装置として、あるいはシステムの一部、例えばコンピュータシステムとして形成され得る。ソフトウェア技術を利用する実装において、それぞれの装置は、コンピュータプログラム製品、関数、ルーチン、プログラムコードの一部、又は設計され得るオブジェクトとして形成され得る。
【0018】
原則的に、航空機のパイロットは、長期にわたってタンブリング運動を減衰することを望んでいると仮定すると、問題は、パイロットが位相の不一致でペダルを作動する場合にのみ発生する。
【0019】
本発明の有利な点は、航空機を動作させるためのペダルの位相関係に関し、パイロットの誤判断を示すためのパイロット警告信号が、パイロットに対して発令されるような場合にある。パイロット警告信号により警告されたパイロットは、彼の過ちを正し、適切なペダル操作を実施でき又はペダル制御を施せる。
【0020】
概して、提案された解決方法は、意図しないにもかかわらず、パイロットによって引き起こされるタンブリング運動の刺激を防ぐため、及び結果としてもたらされる負荷の面で非常にコスト効果の高い選択肢である。
【0021】
本発明の有利な実施形態及び改良点は、従属項内に見出され得る。
【0022】
好ましい発展によれば、第2信号は、航空機の横滑り角度を示す横滑り角度信号、航空機の横負荷因子、又は航空機の垂直軸に関する航空機の回転速度として形成される。
【0023】
さらなる好ましい発展によれば、第2信号は、航空機の再構成された横滑り角度信号として形成される。
【0024】
さらなる好ましい発展によれば、それぞれの角度変化は、複素数演算によって、又は極座標曲線によって決定される。
【0025】
さらなる好ましい発展によれば、第2信号は、垂直軸(負の機体ヨー速度)に関する負の回転速度として形成される。
【0026】
第1及び第2信号は、好ましくは、平滑化のためにローパスフィルタされる。
【0027】
さらなる好ましい発展によれば、ペダルの作動を確認するための以下のステップが誤警報を防止するために提供される。
ペダル速度を提供するために、提供された第1信号のペダル角度の第1時間導関数を決定すること。
第1論理作動信号を提供するために、提供された第1信号と決定された第1時間導関数との関数として、ペダルの関連する作動を推定すること。
【0028】
さらなる好ましい発展によれば、ペダルの作動を確認するための以下のステップが誤警報を防止するために提供される。
パイロットにより作動され得るペダルのペダル角度のための非臨界範囲を提供すること。
非臨界範囲を上回る上方臨界範囲を決定すること。
非臨界範囲を下回る下方臨界範囲を決定すること。
反対の臨界範囲への後続の迅速な移行で(上方又は下方)臨界範囲への進入を検出すること。
移行が検出されるときに、第2論理作動信号を正論理信号レベルに設定すること。
【0029】
さらなる好ましい発展によれば、第1及び第2論理作動信号が論理信号レベルに設定されるときに、第1の一対の値の決定された角度変化が第1閾値よりも大きい場合、又は一対の増分値の角度変化が第2閾値よりも大きい場合、パイロット警告信号が生成される。
【0030】
さらなる好ましい発展によれば、第1信号は、ペダル角度の計測によって提供される。
【0031】
さらなる好ましい発展によれば、第1信号は、計測されたラダー偏位とヨー減衰信号との関数として算出される。
【0032】
さらなる可能な発展によれば、パイロットによるペダルの作動とヨー減衰信号との合計の航空機への効果が評価された結果として、ラダー角度は、第1信号として選択される。
【0033】
さらなる好ましい発展によれば、第1信号及び第2信号は、特定時間においてサンプリングされる。対の値は、実数部とする第1信号及び虚数部とする第2信号で、複素数としてサンプリングされた第1信号及びサンプリングされた第2信号からマッピングされ、2つの連続時間における二対の値の第1及び第2信号における相対的な変化率が、複素数の位相角度における変化としてマッピングされる。
【0034】
さらなる好ましい発展によれば、複素数(この場合の例としてフィルタされ正規化されたロール及びヨー速度から形成される)の値が閾値を超える場合、第1論理タンブリング運動信号は、航空機の大きく刺激されたタンブリング運動を示すために、正論理信号レベルに設定される。
【0035】
さらなる好ましい発展によれば、第1論理タンブリング運動信号が正論理信号レベルに設定される場合、並びに第1及び第2論理作動信号が正論理信号レベルに設定される場合、パイロット警告信号が生成される。
【0036】
さらなる好ましい発展によれば、第1論理タンブリング運動信号が第1所定期間の間に論理信号レベルに設定され、この信号レベルがさらに維持される場合、第2論理タンブリング運動信号は、航空機のタンブリング運動を示すために正論理信号レベルに設定される。第3論理タンブリング運動信号が第2所定期間の間に非正論理信号レベルに設定され、この信号レベルが維持される場合、それは非正論理信号レベルに設定される。
【0037】
さらなる好ましい発展によれば、第2論理タンブリング運動信号が正論理信号レベルに設定される場合、及び第1及び第2論理作動信号が正論理信号レベルに設定される場合、パイロット警告信号が生成される。
【0038】
さらなる好ましい発展によれば、第1装置は、パイロットによって作動され得るペダルの角度を検出及び利用可能にするために設けられる電位性、誘導性、容量性、及び/又は光学性角度センサを備える。また、第1装置に、リニア運動を検出及び利用可能にするために設けられる電位性、誘電性、容量性、及び/又は光学性リニア変換機を備え、パイロットにより作動されるペダルの位置を表示することも考えられる。
【0039】
さらなる好ましい発展によれば、第2装置は、直接計測によりその垂直軸に関する航空機の負の回転速度を検出するとともに、前記負の回転速度から第2信号を得る計測装置を備える。
【0040】
さらなる好ましい発展によれば、プログラム制御装置、特に、第1装置から第5装置の少なくとも1つ、好ましくは、第1から第5装置の全てを含むマイクロコントローラ及びマイクロプロセッサが提供される。
【0041】
さらなる好ましい発展によれば、プログラム制御装置は、検出されたラダー角度及び/又は検出されたヨー減衰から第1信号(x)を算出するために設けられる。また、プログラム制御装置に関して、複素数を利用する演算により、又は極座標曲線によって第2信号(y)を決定するために形成されることも考えられるであろう。
【0042】
さらなる好ましい発展によれば、プログラム制御装置は、一対の値(x、y)を形成するために設けられ、第1時間(k−1)における一対の値(x、y)の少なくとも1つと第1時間(k−1)における一対の値(x、y)の増分の少なくとも1つとを格納可能なメモリが提供され、プログラム制御装置は、第1時間(k−1)における一対の値(x、y)と第2時間(k)における一対の値(x、y)とから角度変化(V)を決定するとともに、第1時間(k−1)における一対の値(x、y)の増分と第2時間(k)における一対の値(x、y)の増分とから増分の角度変化(I)を決定するために設けられる。
【0043】
さらなる好ましい発展によれば、第5装置は、信号光、又はモニタとして形成される光学警告装置、又はラウドスピーカとして形成される音響警告装置、又は振動を生成するためのデバイスとして形成される触覚警告装置を備える。
【0044】
さらなる好ましい発展によれば、第5装置は、光学警告装置、音響警告装置、及び触覚警告装置の任意の好ましい組合せを備える。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】パイロット警告信号を提供するための方法の実施形態のフロー図である。
【図2】航空機のタンブリング運動の減衰について、2つの連続時間における対の値の角度変化を示す概略図である。
【図3】航空機のタンブリング運動の刺激について、2つの連続時間における対の値の角度変化を示す概略図である。
【図4】パイロット警告信号を提供するためのデバイスの第1実施形態の概略ブロック図である。
【図5】パイロット警告信号を提供するためのデバイスの第2実施形態の概略ブロック図である。
【図6】パイロット警告信号を提供するためのデバイスの第3実施形態の概略ブロック図である。
【図7】パイロット警告信号を提供するためのデバイスの第4実施形態の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明は、添付図面を参照して、実施形態に基づいて詳述される。図において、他に示されない限り、同じ参照符号は、同等のもの、又は機能的に等価の要素を示す。
【0047】
図1は、パイロット警告信号Pを提供する方法の実施形態の概略フロー図である。
【0048】
以下、本発明に係る方法は、図2、3、及び4を参照して、図1におけるブロック図に基づいて詳述される。図1に係る方法の実施形態は、以下の方法ステップS1からS5を備える。
【0049】
方法ステップS1
第1信号xは、パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度を示すことに提供される。
【0050】
第1信号xは、好ましくは、ペダル角度の計測によって提供される。代わりに、第1信号xは、計測されたラダー偏位及びヨー減衰信号の関数として算出され得る。また、直接、ラダー偏位を利用することも可能である。この場合、システムが提供する情報は、ヨーダンパの効果とパイロットによるペダルの作動との合計に基づく。
【0051】
方法ステップS2
ペダル角度に直接動的に依存する第2信号yが提供される。直接動的依存は、ペダル角度における変化が、第2信号yの値に直接及び即時の効果を有することを意味する。
【0052】
第2信号yは、例えば、航空機の横滑り角度を示す横滑り角度信号として、航空機の横負荷因子として、又は航空機の垂直軸に関する負の回転速度として、形成される。
【0053】
また、第2信号yは、航空機の再構成された横滑り角度信号としても形成され得る。
【0054】
計測された横滑り角度とは対照的に、再構成された横滑り角度は、航空機への突風の直接的効果を含まない。
【0055】
方法ステップS3
特定時間kのそれぞれ、例えば、2つの信号x及びyのサンプリング時間kのそれぞれでの、それぞれの一対の値x,y、特にx(k),y(k)は、第1信号x及び第2信号yから形成される。
【0056】
方法ステップS4
2つの連続時間k−1,kにおいて、対の値x,yの角度変化Vと、対の値x,yの増分の角度変化Iとが、それぞれの場合において決定される。
【0057】
これに関して、図2は、航空機のタンブリング運動の減衰について、2つの連続時間k−1,kにおいて対の値x,yの角度変化Vを示す概略図である。対照的に、図3は、航空機のタンブリング運動の刺激について、2つの連続時間k−1,kにおいて対の値x,yの角度変化Vを示す概略図である。
【0058】
kの点zは、以下によって決定される。
z(k)=z(x(k),y(k))=x(k)+iy(k)
【0059】
図2によれば、V<Thr(閾値)のときに、タンブリング運動の減衰が起こる。それ故に、V>Thrのときに、図3に係る航空機のタンブリング運動の刺激が起こる。すなわち、Vは、z2における変化k−1→kの角度である。
【0060】
方法ステップS5
ペダルの作動Bと航空機の刺激されたタンブリング運動Tとが確認されたときに、対の値x,yの決定された角度変化Vが第1閾値TH1よりも大きい場合又は対の値x,yの増分の決定された角度変化Iが第2閾値TH2よりも大きい場合に、パイロット警告信号Pが生成される。
【0061】
生成されたパイロット警告信号Pの結果として、音響性、光学性、及び/又はパイロットに対して機械的出力が提供され、前記パイロットに警告するために出力される。また、パイロット警告信号Pは、フライトコントロールシステムの再構成をもたらすために利用され得る。
【0062】
図4は、パイロット警告信号Pを提供するためのデバイス10の第1実施形態の概略ブロック図である。
【0063】
デバイス10は、第1装置11、第2装置12、第3装置13、第4装置14、第5装置15、及び第6装置16を備える。
【0064】
第1装置11は、パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度を示すための第1信号xを提供するために設けられる。
【0065】
さらには、第2装置12は、ペダル角度に直接動的に依存する第2信号yを提供するために設けられる。
【0066】
さらには、第3装置13は、特定時間kにおいて、第1信号x及び第2信号yから一対の値x,yをいずれの場合にも形成するように構成される。
【0067】
第4装置14は、2つの連続時間k−1,kにおいて、対の値x,yの角度変化Vと、対の値x,yの増分の角度変化Iとをいずれの場合にも決定するために設けられる。
【0068】
さらには、ペダルの作動Bと航空機の刺激されたタンブリング運動Tとが確認されたときに、対の値x,yの決定された角度変化Vが第1閾値TH1よりも大きい場合又は対の値x,yの増分の決定された角度変化Iが第2閾値TH2よりも大きい場合、第5装置15は、パイロット警告信号Pを生成するために設けられる。
【0069】
さらには、図4の第6装置16が信号B及びTを提供するために設けられる。
【0070】
特に、位相角度変化は、増分から算出され、一対の値x,yの2つの連続時間k−1,kにおいて形成される。
【0071】
例えば、第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、等しい。特に、第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、0である。
【0072】
図5は、パイロット警告信号Pを提供するためのデバイス10の第2実施形態の概略ブロック図である。図5に係るデバイス10の第2実施形態は、第5装置15の構成において、図4に係るデバイス10の第1実施形態とは異なっている。
【0073】
この理由から、繰り返しを避けるために、第1から第4装置11−14及び第6装置16は再度詳述されない。
【0074】
この場合、第5装置15は、入力側で、対の値x,yの角度変化Vと対の値x,yの増分の角度変化Iとを受信するとともに、その関数として、出力側で、第1論理タンブリング運動信号TS1を提供するために設けられる装置32を有する。角度変化Vが第1閾値TH1よりも大きい場合、又は対の値x,yの増分の角度変化Iが第2閾値TH2よりも大きいことが確認された場合、装置32が、第1論理タンブリング運動信号TS1を正論理信号レベルに設定する。
【0075】
第5装置15は、さらに、第1論理作動信号BS1を提供するための装置33を備える。
【0076】
装置33は、ペダル速度を与えるために提供された第1信号xのペダル角度の第1導関数を決定する。装置33は、さらに、提供された第1信号xと決定された第1時間導関数との関数として、ペダルの関連する作動Bを推定し、その関数として、第1論理作動信号BS1を提供する。
【0077】
第5装置15は、さらに、第2論理作動信号BS2を提供するための装置34を有する。装置34において、パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度に対する非臨界範囲と、非臨界範囲を上回る上方臨界範囲と非臨界範囲を下回る下方臨界範囲とが定義される。装置34は、非臨界範囲が上方から下方臨界範囲又は下方から上方臨界範囲に超過されたときを検出するとともに、このタイプの超過が検出された場合に、その後、出力側の第2論理作動信号BS2を正論理信号レベルに設定する。
【0078】
臨界→臨界への移行が繰り返されない場合、正信号レベルBS2は、時間TMの後に、非正信号レベルに初期化される。
【0079】
第5装置15は、さらに、第1タンブリング運動信号TS1、第1論理作動信号BS1、及び第2論理作動信号BS2において論理AND演算を実行するとともに、TS1、BS1、及びBS2のそれぞれが正論理信号レベルを有する場合、パイロット警告信号Pを出力側において正論理信号レベルに設定するANDゲート28を有する。
【0080】
例えば2Vである正論理信号レベルは、1の論理値に対応する。同様に、例えば0Vである非正論理信号レベルは、ゼロの論理値に対応する。もちろん、異なる定義も考えられる。
【0081】
図6は、パイロット警告信号Pを提供するためのデバイス20の第3実施形態の概略ブロック図である。
【0082】
図6に係るデバイス20の第3実施形態は、図4及び図5に係るデバイス10の2つの実施形態に基づく。
【0083】
図6を参照すると、以下の変数又は参照番号は、以下の信号を示す。
x1(k) 時間kにおいてスケーリングされた第1信号
x2(k) ローパスフィルタされた、時間kにおいてスケーリングされた第1信号
y1(k) 時間kにおいてスケーリングされた第2信号
y2(k) ローパスフィルタされた、時間kにおいてスケーリングされた第2信号
i 虚数
z2(k) 複素数z2(k)であり、z2(k)=x2(k)+i・y2(k)
∠z2(k) 複素数z2(k)の位相角度
|z2(k)| 複素数z2(k)の値
V 時間ステップk−1→kでのz2における∠(z2(k)/z2(k−1))角度変化
【0084】
ローパスフィルタTP1は、入力側でスケーリングされた第1信号x1(k)を受信するとともに、ローパスフィルタされた、出力側でスケーリングされた第1信号x2(k)を提供する。
【0085】
同様に、ローパスフィルタTP2は、ローパスフィルタされた、スケーリングされた第2信号y2(k)を提供するために、スケーリングされた第2信号y1(k)をローパスフィルタする。
【0086】
ローパスフィルタされた、スケーリングされた第2信号y2(k)は、さらに、乗算手段21の虚数iと掛け合わされる。
【0087】
乗算手段21は、ローパスフィルタされた、スケーリングされた第2信号y2(k)にiを掛ける。
【0088】
加算手段22は、複素数z2(k)を形成するために、x2(k)とi・y2(k)とを加算する。
【0089】
遅延手段23は、k及びk−1の間の時間ステップずつ、複素数z2(k)を遅延することができる。除算手段24は、複素数z2(k)/z2(k−1)を除算することができる。
【0090】
装置25は、増分形成することができ、それ故に、Δz2(k)を提供することができる。
【0091】
装置26も、位相角度を計算するために提供され、その手段は、出力側に、時間ステップk+1→kで複素数z2(k)の位相角度変化V=∠(z2(k)/z2(k−1))を提供する。
【0092】
それぞれの装置27は、値を形成することができる。また、装置27aも、値を形成することができ、その後、1ずつ値を減少させる。
【0093】
入力信号がそれぞれの閾値TH1−TH3よりも大きい場合、装置TH1−TH3のそれぞれは、正論理信号レベルを有する出力信号を出力する。
【0094】
全ての入力信号が正論理信号レベルを有する場合、それぞれの装置28は、入力信号にAND演算を実行することができ、出力側に正論理信号レベルを有する信号を提供する。
【0095】
図6における右側の論理ANDゲート28の出力信号は、航空機のタンブリング運動を示すための第1論理タンブリング運動信号TS1に対応する。複素数の位相角度∠z2(k)が第1閾値TH1よりも大きい場合、複素数の増分|Δz2(k)|−1の値が第2閾値TH2よりも大きい場合、及び複素数の絶対値|z2(k)|が第3閾値よりも大きい場合、これは正論理信号レベルに設定される。
【0096】
装置29及び30は、第1タンブリング運動信号TS1の非正又は正信号レベルを確認するために確認ブロックとして適している。
【0097】
入力信号TS1が長さTLの最終期間における信号レベルのように仮定された場合、中間信号TS1は、非正信号レベルに設定される。中間信号TS1aが長さTHの最終期間における信号レベルのように仮定された場合、第2論理タンブリング運動信号TS2は、正信号に設定される。
【0098】
第2期間THを設定するために、調整された航空機速度Vtas(k)の関数として(又は、航空機の瞬時動作点を特徴付ける他のパラメータの関数として)第2期間THを算出する装置31が提供される。
【0099】
図7は、パイロット警告信号Pを提供するためのデバイス40の第4実施形態の概略ブロック図である。
【0100】
図7に係るデバイス40の第4実施形態は、図4及び5に係るデバイス10の2つの実施形態に基づく。
【0101】
図7を参照すると、以下の変数又は参照番号は、以下の信号を示す。
DRM ペダル角度
DRMref ペダル角度に対する非臨界参照値
x1(k) 時間kにおいてスケーリングされた第1信号であり、x1は、
【数1】

である。
x2(k) ローパスフィルタされた、時間kにおいてスケーリングされた第1信号
β 航空機の横滑り角度
βref 横滑り角度βの非臨界参照角度
y1(k) 時間kにおいてスケーリングされた第2信号であり、y1は、
【数2】

である。
y2(k) ローパスフィルタされた、時間kにおいてスケーリングされた第2信号
i 虚数
z2(k) 複素数z2(k)であり、z2(k)=x2(k)+i・y2(k)
∠z2(k) 複素数z2(k)の位相角度
|z2(k)| 複素数z2(k)の値
【数3】

ここで、rは機体ヨー速度であり、rrefはヨー速度rに対する非臨界参照値である。参照値rrefは、固定的に予め決められ得る、又は所定の航空機パラメータの関数として適応的に調整され得る。
2(k) ローパスフィルタされたa1(k)
【数4】

ここで、pは、機体ロール速度であり、prefは、ロール速度pに対する非臨界参照値である。参照値prefは、固定的に予め決められ得る、又は所定の航空機パラメータの関数として適応的に調整され得る。
V= ∠(z2(k)/z2(k−1))
【0102】
ペダルの作動Bが確認されたとき及び航空機の刺激されたタンブリング運動Tが確認されたときに、決定された角度変化Vが第1閾値TH1よりも大きい場合又は対の値の増分の角度変化Iが第2閾値TH2よりも大きい場合、デバイス40のANDゲート28は、パイロット警告信号Pを提供し、これは、確認手段30によってさらに確認される。
【0103】
本発明は、好ましい例示的な実施形態を参照して述べられたが、それに限定されず、様々な方法で改良され得る。
【符号の説明】
【0104】
10,20,40 デバイス
11 第1装置
12 第2装置
13 第3装置
14 第4装置
15 第5装置
16 第6装置
21 乗算手段
22 加算手段
23 遅延手段
24 除算手段
25 増分形成装置
26 位相角度算出装置
27 絶対値形成装置
28 ANDゲート
29−34 装置
35 ORゲート
a 機体ヨー速度
b 機体ロール速度
x 第1信号
y 第2信号
k 時間
V 速度
I 増分
B ペダルの確認された作動のための信号
BS1 第1論理作動信号
BS2 第2論理作動信号
P パイロット警告信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のパイロットに対してパイロット警告信号(P)を提供する方法であって、
a)パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度を示すために第1信号(x)を提供するステップ、
b)ペダル角度に直接動的に依存する第2信号(y)を提供するステップ、
c)それぞれの場合で、特定時間(k)における第1信号(x)及び第2信号(y)から一対の値(x,y)を形成するステップ、
d)それぞれの場合で、2つの連続時間(k−1,k)における、一対の値(x,y)の角度変化(V)と、一対の値(x,y)の増分の角度変化(I)とを決定するステップ、
e)ペダルの作動(B)及び航空機の刺激されたタンブリング運動(T)が確認されたときに、対の値(x,y)の決定された角度変化(V)が第1閾値(TH1)よりも大きい場合又は対の値(x,y)の増分の決定された角度変化(I)が第2閾値(TH2)よりも大きい場合に、パイロット警告信号(P)を生成するステップ、を備える方法。
【請求項2】
第2信号(y)は、航空機の横滑り角度を示すための横滑り角度信号、特に航空機の再構成された横滑り角度信号として、航空機の横負荷因子として、又は航空機の垂直軸に関する航空機の負の回転速度として形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
誤警告を防止するため、ペダルの作動(B)を確認するために、以下のステップ、
ペダル速度を提供するために、提供された第1信号(x)のペダル角度の第1時間導関数を決定するステップ、
第1論理作動信号(BS1)を提供するために、提供された第1信号(x)と決定された第1時間導関数との関数として、ペダルの関連する作動(B)を推定するステップが提供されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
誤警告を防止するため、ペダルの作動(B)を確認するために、以下のステップ、
パイロットにより作動され得るペダルのペダル角度のための非臨界範囲を提供するステップ、
許容できる範囲を上回る上方臨界範囲を決定するステップ、
非臨界範囲を下回る下方臨界範囲を決定するステップ、
非臨界範囲が上方から下方臨界範囲へ、又は下方から上方臨界範囲へ超過されたときを検出するステップ、
超過が検出されたときに、第2論理作動信号(BS2)を正論理信号レベルに設定するステップが提供されることを特徴とする請求項1乃至3のいずか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1(BS1)及び第2(BS2)論理作動信号が論理信号レベルに設定される場合に、決定された速度(V)が第1閾値(TH1)よりも大きい場合又は形成された増分(I)が第2閾値(TH2)よりも大きい場合に、パイロット警告信号(P)が生成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
第1信号(x)は、ペダル角度の計測によって提供され、又は
第1信号(x)は、計測されたラダー偏位の関数として、又は計測されたラダー偏位とヨー減衰信号との関数として算出されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1信号(x)及び第2信号(y)は、特定時間(k)においてサンプリングされ、スケーリングされ、かつフィルタリングされ、対の値(x,y)は、実数部分とする第1信号と虚数部分とする第2信号とを有する複素数(z2(k))として、サンプリングされた第1信号(x(k))とサンプリングされた第2信号(y(k))とからマッピングされ、2つの連続時間(k−1,k)において二対の値(z2(k−1);z2(k))の第1及び第2信号で関連する変化の速度(v)は、複素数(z2(k))の位相角度(∠(z2(k)/z2(k−1)))の変化としてマッピングされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複素数の位相角度(∠z2(k))が第1閾値(TH1)よりも大きく、複素数の増分(|Δz2(k)|)マイナス1の値が第2閾値(TH2)よりも大きく、かつ複素数で変化の絶対値(|z2(k)|)が第3閾値(TH3)よりも大きい場合に、第1論理タンブリング運動信号(TS1)は、航空機のタンブリング運動を示す正論理信号レベルに設定され、及び/又は
第1論理タンブリング運動信号(TS1)が第1所定期間(TL)の間に、正論理信号レベルに設定される場合に、第2論理タンブリング信号(TS2)は、航空機のタンブリング運動を示す正論理信号レベルに設定され、第1論理タンブリング運動信号(TS1)が、第2所定期間(TH)の間に、正論理信号レベルに設定される場合に、第2論理タンブリング信号(TS2)は、負の論理信号レベルに初期化されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1論理タンブリング運動信号(TS1)が正論理信号レベルに設定される場合、及び第1(BS1)及び第2(BS2)論理作動信号が論理信号レベルに設定される場合、パイロット警告信号(P)が生成され、及び/又は、
第2論理タンブリング運動信号(TS2)が正論理信号レベルに設定される場合、及び第1(BS1)及び第2(BS2)論理作動信号が論理信号レベルに設定される場合に、パイロット警告信号(P)が生成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に係る方法を、プログラム制御装置上で実行させるコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
特に、請求項1乃至9のいずれか一項に係る方法を利用して、航空機のパイロットに向けてパイロット警告信号(P)を提供するための警告デバイス(10,20,40)であって、
パイロットによって作動され得るペダルのペダル角度に関する情報を含む第1信号(x)を提供するために設けられる第1装置(11)を備え、
ペダル角度に直接動的に依存する第2信号(y)を提供するために設けられる第2装置(12)を備え、
所定の時間(k)における第1(x)及び第2(y)信号からそれぞれの一対の値(x,y)を形成するために設けられる第3装置(13)を備え、
2つの連続時間(k−1,k)における対の値(x,y)の角度変化(V)と対の値(x,y)の増分の角度変化(I)とを、それぞれの場合で決定するために設けられる第4装置(14)を備え、
ペダルの作動(B)及び航空機の刺激されたタンブリング運動(T)が確認されたときに、対の値(x,y)の所定の角度変化(V)が第1閾値(TH1)よりも大きい場合又は対の値(x,y)の増分の所定の角度変化(I)が第2閾値(TH2)よりも大きい場合に、パイロット警告信号(P)を生成するために設けられる第5装置(15)を備える警告デバイス。
【請求項12】
第1装置(11)は、計測されたペダルの差異角度又は差異進路から第1信号(x)を生成する電位性、誘電性、容量性、及び/又は光学性角度センサ及び/又はリニア変換器を備えることを特徴とする請求項11に記載の警告デバイス。
【請求項13】
第2装置(12)は、直接計測によりその垂直軸に関する航空機の負の回転速度を検出するとともに、前記負の回転速度から第2信号を得る計測装置を備えることを特徴とする請求項11又は12に記載の警告デバイス。
【請求項14】
第5装置(15)は、
信号光及び/又はモニタを含む光学警告装置、及び/又は、
音響スピーカを含む音響警告装置、及び/又は、
振動を生成するためのデバイスを含む触覚警告装置を備えることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の警告デバイス。
【請求項15】
第1から第5装置の少なくとも1つ、好ましくは、第1から第5装置の全てを含むプログラム制御装置、特に、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサが提供されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の警告デバイス。
【請求項16】
プログラム制御装置は、検出されたラダー角度及び/又は検出されたヨー減衰から第1信号(x)を算出する、及び/又は複素数を利用する演算により、又は極座標曲線により第2信号(y)を決定するために設けられることを特徴とする請求項15に記載の警告デバイス。
【請求項17】
プログラム制御装置は、一対の値(x,y)を形成するために設けられ、及び/又は、
第1時間(k−1)における一対の値(x,y)の少なくとも1つと第1時間(k−1)における一対の値(x,y)の増分の少なくとも1つとを格納可能なメモリが提供され、プログラム制御装置は、第1時間(k−1)における一対の値(x,y)と第2時間(k)における一対の値(x,y)とから角度変化(V)を決定するとともに、第1時間(k−1)における一対の値(x,y)の増分と第2時間(k)における一対の値(x,y)の増分とから増分の角度変化(I)を決定するために設けられることを特徴とする請求項15又は16に記載の警告デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−533470(P2012−533470A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521041(P2012−521041)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060645
【国際公開番号】WO2011/009918
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany