説明

航空機の操縦システム

【課題】本発明の目的は、パイロットが操縦装置を速く操作した場合であっても飛行状態に関する運用制限の超過が防止される航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法を提供することである。
【解決手段】航空機の操縦システムは、操縦装置10と、航空機の飛行状態によって変化する第1諸元を検出するセンサ70と、第1諸元に基づいて、第1諸元が制限値に達する操縦装置10の制限操舵位置を算出する制限操舵位置演算部90と、操縦装置10の操舵位置と制限操舵位置とに基づいて生成された反力生成コマンドに基づいて、パイロットが操縦装置10に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる反力生成用アクチュエータ20と、操舵位置に基づいてインナー・ループ・コマンドを生成するインナー・ループ・コマンド演算部110と、操舵位置とインナー・ループ・コマンドとに基づいて、航空機の舵面50を駆動する舵面アクチュエータ30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイロットは、航空機を操縦する際、常時変動する航空機の出力システム及び飛行制御システム等を認識していなければならない。パイロットは、これらシステムの現在の状態だけでなく、それらの作動制限を知っている必要がある。
【0003】
航空機によっては機構的なばねが用いられ、航空機の作動制限が近づいていることを指摘するために触覚による合図(キュー)が制御レバーを介してパイロットに提供される。そのような機構的なばねは、設定された所定のレベルで連動し、制御に所定の抵抗力を供給する。予め設定されたこれらのレベルは一度ばねが取り付けられたら変更不可能である。
【0004】
特許文献1は、航空機の所定の動的条件に応じて接触力の大きさを変更することが可能であり、且つ機構的なばねを必要としない航空機用出力レバー触覚キューイングシステムを開示している。このシステムにおいては、機構的なばねは、コンピュータ制御されたソフトウエア、可変な磁性粒子摩擦クラッチ、及び電子トリムモータに置き換えられている。触覚警報として出力レバーソフトストップ及び出力レバーバックドライブが用いられている。これらの触覚警報は、出力コマンドが所定の作動限界に達すると、ばね様の触覚キューを提供する。バックドライブコマンドは、航空機及びエンジンの作動状況に基づいて出力レバーを可変の速度でトリムダウンさせる。触覚キューは、航空機及びエンジンが作動制限を超過していない状態になるまで作動したままである。
【0005】
一方、図1は、インナー・ループ・コマンドを使用する従来の操縦システムを開示している。操縦システムは、操縦装置210と、舵面アクチュエータ230と、スワッシュプレート240と、舵面250と、インナー・ループ・アクチュエータ260と、レート・ジャイロ270と、インナー・ループ・コマンド演算部280を備える。舵面アクチュエータ230は、インナー・ループ・アクチュエータ260を介して操縦装置210に接続され、スワッシュプレート240を介して舵面250に接続されている。舵面アクチュエータ230は、操縦装置210の操舵位置に基づいて舵面を駆動する。ここで、レート・ジャイロ270は機体の外乱による姿勢変化を検出し、インナー・ループ・コマンド演算部280に出力する。インナー・ループ・コマンド演算部280は姿勢変化に基づいてインナー・ループ・コマンドを出力する。インナー・ループ・コマンドは、パイロットの操舵入力により舵面アクチュエータ230に与えられるコマンド量を操縦装置210の操舵位置を変化させずに増減させるためのコマンドである。インナー・ループ・アクチュエータ260は、インナー・ループ・コマンドに基づいて、舵面アクチュエータ230を介して舵面250を駆動する。したがって、パイロットが細かな修正操舵をせずに操縦装置210の操舵位置を一定に保持した場合であっても、外乱によって機体が不安定になることが防がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−516970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、パイロットが操縦装置を速く操作した場合であっても飛行状態に関する運用制限の超過が防止される航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による航空機の操縦システムは、操縦装置(10)と、航空機の飛行状態によって変化する第1諸元(A)を検出するセンサ(70)と、前記第1諸元に基づいて、前記第1諸元が制限値(Alim)に達する前記操縦装置の制限操舵位置(δlim)を算出する制限操舵位置演算部(90)と、前記操縦装置の操舵位置(δ)と前記制限操舵位置とに基づいて、反力生成コマンドを生成する反力生成コマンド演算部(120)と、前記反力生成コマンドに基づいて、パイロットが前記操縦装置に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる反力生成用アクチュエータ(20)と、前記操舵位置に基づいてインナー・ループ・コマンドを生成するインナー・ループ・コマンド演算部(110)と、前記操舵位置と前記インナー・ループ・コマンドとに基づいて、前記航空機の舵面(50)を駆動する舵面アクチュエータ(30、35)と、を具備する。
【0010】
前記インナー・ループ・コマンド演算部は、前記インナー・ループ・コマンドが前記操舵位置の時間変化率に依存するように前記インナー・ループ・コマンドを生成する。前記舵面アクチュエータは、前記操舵位置が速く変化した場合に前記舵面の駆動量が減少するように前記舵面を駆動する。
【0011】
上記航空機の操縦システムは、前記インナー・ループ・コマンドに基づいて作動するインナー・ループ・アクチュエータ(60)を更に具備する。前記舵面アクチュエータは、前記操舵位置と前記インナー・ループ・アクチュエータの出力変位に基づいて前記舵面を駆動する。
【0012】
上記航空機の操縦システムは、飛行制御演算部(140)と、舵面コマンド演算部(150)を更に具備する。前記飛行制御演算部は、前記操舵位置に基づいて操舵コマンドを生成する。前記舵面コマンド演算部は、前記操舵コマンドから前記インナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドを生成する。前記舵面アクチュエータは、前記舵面コマンドに基づいて前記舵面を駆動する。
【0013】
前記センサは、前記第1諸元を含む複数諸元(A〜C)を検出する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置演算部は、前記複数諸元の値の組合せと前記制限操舵位置を対応付けたテーブル(91)に基づいて前記制限操舵位置を算出する。
【0014】
前記制限操舵位置演算部は、前記制限値と前記第1諸元の差分(ΔA)と、前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出し、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する。
【0015】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を更に検出する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置演算部は、前記差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記割合を対応付けたテーブル(95)とに基づいて、前記操舵位置変化量を算出する。
【0016】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を更に検出する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置演算部は、前記第1諸元の所定の予測時間(Δtp)後の予測値としての第1諸元予測値(Ap)を算出し、前記制限値と前記第1諸元予測値の差分(ΔAlim)と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とを対応付けたテーブル(95)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出し、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する。
【0017】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を更に検出する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置演算部は、前記第1諸元の所定の予測時間(Δtp)後の予測値としての第1諸元予測値(Ap)を算出し、前記第1諸元予測値と、前記第1諸元と、保持時間として前記予測時間が設定されたバッファ(99)と、フィルタ(102)とに基づいて、前記第1諸元予測値の補正値としての第1諸元補正値(Ac)を算出し、前記制限値と前記第1諸元補正値の差分(ΔAlim)と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とを対応付けたテーブル(95)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出し、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する。
【0018】
本発明による航空機の操縦方法は、航空機の飛行状態によって変化する第1諸元(A)を検出するステップと、前記第1諸元に基づいて、前記第1諸元が制限値(Alim)に達する操縦装置(10)の制限操舵位置(δlim)を算出するステップと、前記操縦装置の操舵位置(δ)と前記制限操舵位置とに基づいて、反力生成コマンドを生成するステップと、前記反力生成コマンドに基づいて、パイロットが前記操縦装置に操舵入力を行うときに受ける反力を変化させるステップと、前記操舵位置に基づいてインナー・ループ・コマンドを生成するステップと、前記操舵位置と前記インナー・ループ・コマンドとに基づいて、前記航空機の舵面(50)を駆動するステップとを具備する。
【0019】
前記インナー・ループ・コマンドを生成する前記ステップにおいて、前記インナー・ループ・コマンドが前記操舵位置の時間変化率に依存するように前記インナー・ループ・コマンドを生成する。前記舵面を駆動する前記ステップにおいて、前記操舵位置が速く変化した場合に前記舵面の駆動量が減少するように前記舵面を駆動する。
【0020】
前記操縦装置は、インナー・ループ・アクチュエータ(60)及び舵面アクチュエータ(30)を介して前記舵面に接続される。前記舵面を駆動する前記ステップは、前記インナー・ループ・アクチュエータが前記インナー・ループ・コマンドに基づいて作動するステップと、前記舵面アクチュエータが、前記操舵位置及び前記インナー・ループ・アクチュエータの出力変位に基づいて前記舵面を駆動するステップとを含む。
【0021】
上記航空機の操縦方法は、前記操舵位置に基づいて操舵コマンドを生成するステップと、前記操舵コマンドから前記インナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドを生成するステップを更に具備する。前記舵面を駆動する前記ステップにおいて、前記舵面コマンドに基づいて前記舵面を駆動する。
【0022】
前記第1諸元を検出する前記ステップにおいて、前記第1諸元を含む複数諸元(A〜C)を検出する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置を算出する前記ステップにおいて、前記複数諸元の値の組合せと前記制限操舵位置を対応付けたテーブル(91)に基づいて前記制限操舵位置を算出する。
【0023】
前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、前記制限値と前記第1諸元の差分(ΔA)と、前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出するステップと、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップとを含む。
【0024】
上記航空機の操縦方法は、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を検出するステップを更に具備する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記操舵位置変化量を算出する前記ステップにおいて、前記差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記割合を対応付けたテーブル(95)とに基づいて、前記操舵位置変化量を算出する。
【0025】
上記航空機の操縦方法は、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を検出するステップを更に具備する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、前記第1諸元の所定の予測時間(Δtp)後の予測値としての第1諸元予測値(Ap)を算出するステップと、前記制限値と前記第1諸元予測値の差分(ΔAlim)と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とを対応付けたテーブル(95)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出するステップと、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップとを含む。
【0026】
上記航空機の操縦方法は、前記第1諸元とは異なる複数諸元(B、C)を検出するステップを更に具備する。前記複数諸元は前記飛行状態によって変化する。前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、前記第1諸元の所定の予測時間(Δtp)後の予測値としての第1諸元予測値(Ap)を算出するステップと、前記第1諸元予測値と、前記第1諸元と、保持時間として前記予測時間が設定されたバッファ(99)と、フィルタ(102)とに基づいて、前記第1諸元予測値の補正値としての第1諸元補正値(Ac)を算出するステップと、前記制限値と前記第1諸元補正値の差分(ΔAlim)と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合(dA/dδ)とを対応付けたテーブル(95)とに基づいて、操舵位置変化量(Δδ)を算出するステップと、前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、パイロットが操縦装置を速く操作した場合であっても飛行状態に関する運用制限の超過が防止される航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、インナー・ループ・コマンドを使用する従来の操縦システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る操縦システムの概略図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る操縦システムのブロック図である。
【図4】図4は、インナー・ループ・コマンド演算部のブロック図である。
【図5】図5は、制限操舵位置演算部のブロック図である。
【図6】図6は、反力生成コマンド演算部のブロック図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る操縦システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】図8は、第1比較例に係る操縦システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】図9は、第2比較例に係る操縦システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係る操縦システムの概略図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る操縦システムのブロック図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施形態に係る制限操舵位置演算部のブロック図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施形態に係る制限操舵位置演算部のブロック図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施形態に係る制限操舵位置演算部のブロック図である。
【図15】図15は、本発明の第6の実施形態に係る制限操舵位置演算部のブロック図である。
【図16】図16は、第2の実施形態に係る操縦システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付図面を参照して、本発明による航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る操縦システムを説明する。本実施形態に係る操縦システムは、機力操縦システムであって、ヘリコプタのような航空機に適用される。機力操縦システムは、例えば、ハイドロメカニカル操縦システムである。本実施形態に係る操縦システムは、操縦装置10と、反力生成用アクチュエータ20と、舵面アクチュエータ30と、スワッシュプレート40と、舵面50と、インナー・ループ・アクチュエータ60と、センサ70と、制御装置80を備える。制御装置80は、制限操舵位置演算部90と、インナー・ループ・コマンド演算部110と、反力生成コマンド演算部120を備える。
【0031】
操縦装置10は、インナー・ループ・アクチュエータ60、舵面アクチュエータ30、及びスワッシュプレート40を介して舵面50に接続されている。インナー・ループ・アクチュエータ60は、第1部分61と、第2部分62を備える。舵面アクチュエータ30は、入力部31と、出力部32を備える。第1部分61は、操縦装置10に接続されている。第2部分62は、入力部31に接続されている。出力部32は、スワッシュプレート40を介して舵面50に接続されている。
【0032】
センサ70は、航空機の飛行状態によって変化する機体運動の諸元を検出し、検出した諸元を示す諸元信号を制御装置80に出力する。反力生成用アクチュエータ20は、操縦装置10の操舵位置を検出し、検出した操舵位置を示す操舵位置信号を制御装置80に出力する。制御装置80は、インナー・ループ・コマンドをインナー・ループ・アクチュエータ60に出力し、反力生成コマンドを反力生成用アクチュエータ20に出力する。インナー・ループ・アクチュエータ60は、インナー・ループ・コマンドに基づいて作動する。より具体的には、第1部分61に対する第2部分62の相対位置がインナー・ループ・コマンドに基づいて変化する。第1部分61に対する第2部分62の相対位置は、インナー・ループ・アクチュエータ60の出力変位と称される場合がある。反力生成用アクチュエータ20は、反力生成コマンドに基づいて、パイロットが操縦装置10に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る操縦システムのブロック図を示している。操縦装置10の操舵位置δは、パイロットの操舵入力によって変化する。インナー・ループ・コマンド演算部110は、操舵位置δを示す操舵位置信号に基づいて、インナー・ループ・コマンドを生成する。
【0034】
図4を参照して、インナー・ループ・コマンド演算部110は、ハイパスフィルタ111を備える。インナー・ループ・コマンドは、操舵位置δを示す操舵位置信号を入力とするハイパスフィルタ111の出力に相当する。より具体的には、インナー・ループ・コマンドは、操舵位置信号を入力とする伝達関数G111(s)の出力にゲインKを乗算して得られる。伝達関数G111(s)は、時定数をτとすると、下記式で表される。このように、操舵位置δの時間変化率に依存するインナー・ループ・コマンドが生成される。
【数1】

【0035】
図3を参照して、インナー・ループ・アクチュエータ60は、インナー・ループ・コマンドに基づいて作動し、これによりインナー・ループ・アクチュエータ60の出力変位が変化する。第2部分62の位置は、インナー・ループ・コマンドに基づくインナー・ループ・アクチュエータ60の出力変位が第1部分61の位置に減算的に合成されて決定される。舵面アクチュエータ30は、操舵コマンドとしての第2部分62の位置に基づいて舵面50を駆動する。第1部分61が操舵位置δに連動しているため、舵面アクチュエータ30は、操舵位置δとインナー・ループ・アクチュエータ60の出力変位に基づいて、舵面50を駆動する。すなわち、舵面アクチュエータ30は、操舵位置δ及びインナー・ループ・コマンドに基づいて舵面50を駆動する。
【0036】
センサ70は、航空機の飛行状態によって変化する機体運動の諸元を検出し、検出した諸元を示す諸元信号を出力する。ここで、諸元は、エンジントルク、バンク角、前進速度、横方向の速度、メインロータの回転数等である。本実施形態では、センサ70は、複数の諸元A〜Cを検出する。ここで、諸元Aは、舵面50の影響を受ける。制限操舵位置演算部90は、諸元A〜Cを示す諸元信号に基づいて、諸元Aが制限値に達する操縦装置10の制限操舵位置δlimを算出する。
【0037】
図5を参照して、制限操舵位置演算部90は、諸元A〜Cの値の組合せと制限操舵位置δlimとを対応付けたテーブル91を備える。制限操舵位置演算部90は、テーブル91に基づいて制限操舵位置δlimを算出する。このような制限操舵位置δlimの算出方法は、制限操舵位置δlimが諸元Aだけでなく諸元B,Cにも依存する場合に有効である。
【0038】
図6を参照して、反力生成コマンド演算部120は、操舵位置δを示す操舵位置信号と制限操舵位置δlimとに基づいて、パイロットが操縦装置10から受けるべき反力を示す反力生成コマンドを生成する。反力生成コマンドは、操舵位置δが制限操舵位置δlimの近くで反力が急に大きくなるように生成される。
【0039】
図3を参照して、反力生成用アクチュエータ20は、反力生成コマンドに基づいて、パイロットが操縦装置10に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる。
【0040】
図7を参照して、本実施形態に係る航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法の効果を説明する。図7は、パイロットが操舵入力により、時刻tより前は操舵位置δを一定に保持し、時刻tにおいて操舵位置δを制限操舵位置δlimまで速く変化(増加)させてその後一定に保持した場合において、操舵位置δ、インナー・ループ・コマンド、操舵コマンド、及び、舵面50の影響を受ける諸元Aの変化を示す。本実施形態においては、操舵コマンドは第2部分62の位置である。
【0041】
パイロットは、操縦装置10から受ける反力の変化に基づいて制限操舵位置δlimを認識し、操舵位置δが制限操舵位置δlimに達した後は、操舵位置δを制限操舵位置δlimに保持する。
【0042】
インナー・ループ・コマンドは、時刻tより前は一定値(例えばゼロ)に保持され、時刻tにおいて速く変化(増加)した後、時刻tより前の値に向かって漸近する。
【0043】
インナー・ループ・コマンドに基づくインナー・ループ・アクチュエータ60の出力変位が第1部分61の位置に減算的に合成されて決定されるため、第2部分62の位置としての操舵コマンドは、時刻tより前は一定に保持され、時刻t以後に制限操舵位置δlimに対応する位置まで変化した後、制限操舵位置δlimに対応する位置に保持される。ここで、第2部分62の位置の時刻t以後における変化は、時刻tにおける操舵位置δの変化に比べると緩やかである。
【0044】
諸元Aは、時刻tより前は一定値に保持され、時刻t以後に制限値まで変化してその後制限値で一定に保持される。本実施形態においては、操舵位置δに基づくインナー・ループ・コマンドに基づいて舵面アクチュエータ30が舵面50を駆動する。例えば、操舵位置δの時間変化率に依存するインナー・ループ・コマンドに基づいて、操舵位置δが速く変化した場合に舵面50の駆動量が減少するように、舵面アクチュエータ30が舵面50を駆動する。そのため、諸元Aが過渡応答において制限値を超過することが防止される。本実施形態においては、パイロットが反力変化に基づいて操縦装置10の操舵位置δを制限操舵位置δlimに保持するため、諸元Aが定常応答において制限値で一定に保持される。諸元Aが過渡応答において制限値を超過することが防止されるため、航空機が不安定になることが防止される。更に、諸元Aが定常応答において制限値で一定に保持されるため、航空機の性能を最大限生かした操縦が可能となる。
【0045】
なお、上述の効果と同様の効果が得られるのであれば、図4に示されるアルゴリズムとは異なるアルゴリズムによりインナー・ループ・コマンドを生成してもよい。
【0046】
上述の効果をより明らかにするために、図8を参照して、第1比較例における操舵位置δ、第2部分62の位置としての操舵コマンド、及び、舵面50の影響を受ける諸元Aの変化を説明する。第1比較例においては、インナー・ループ・コマンドが無効にされて第2部分62の第1部分61に対する相対位置が固定される。操舵位置δは、図7の場合と同様に変化する。第2部分62の第1部分61に対する相対位置が固定されているため、第2部分62の位置は操舵位置δに連動する。したがって、第2部分62の位置としての操舵コマンドは、時刻tより前は一定に保持され、時刻tにおいてある位置まで速く変化してその後はその位置で一定に保持される。諸元Aは、時刻tより前は一定値に保持され、時刻tにおいて急に変化して制限値を一時的に超過して最大値をとった後、制限値まで減少して制限値で一定に保持される。第1比較例においては、諸元Aが過渡応答において制限値を超過するため、航空機が不安定になる。
【0047】
上述の効果をより明らかにするために、図9を参照して、第2比較例における操舵位置δ、第2部分62の位置としての操舵コマンド、及び、舵面50の影響を受ける諸元Aの変化を説明する。第2比較例においては、インナー・ループ・コマンドが無効にされて第2部分62の第1部分61に対する相対位置が固定され、且つ、制限操舵位置算出部90が制限操舵位置δlimのかわりに制限操舵位置δlim’を算出する。ここで、制限操舵位置δlim’は、諸元Aが過渡応答の最大値において制限値を超過しないように設定されている。この場合、パイロットが操舵入力により、時刻tより前は操舵位置δを一定に保持し、時刻tにおいて操舵位置δを制限操舵位置δlim’まで速く変化させてその後一定に保持する。第2部分62の第1部分61に対する相対位置が固定されているため、第2部分62の位置は操舵位置δに連動する。したがって、第2部分62の位置としての操舵コマンドは、時刻tより前は一定に保持され、時刻tにおいてある位置まで速く変化してその後はその位置で一定に保持される。図9に示された操舵コマンドの時刻tにおける変化量は、図8に示された操舵コマンドの時刻tにおける変化量より小さい。諸元Aは、時刻tより前は一定値に保持され、時刻tにおいて急に変化して制限値の近傍まで達した後、時刻tより前の一定値に向かって少し戻った値で一定に保持される。第2比較例においては、諸元Aが定常応答において制限値からずれた値で一定に保持されるため、航空機の性能を最大限生かした操縦が実現されない。
【0048】
(第2の実施形態)
図10を参照して、本発明の第2の実施形態に係る操縦システムを説明する。本実施形態に係る操縦システムは、フライ・バイ・ワイヤ操縦システムであって、ヘリコプタのような航空機に適用される。本実施形態に係る操縦システムは、操縦装置10と、反力生成用アクチュエータ20と、舵面アクチュエータ35と、スワッシュプレート40と、舵面50と、センサ70と、制御装置85を備える。制御装置85は、制限操舵位置演算部90と、インナー・ループ・コマンド演算部110と、反力生成コマンド演算部120と、飛行制御演算部140と、舵面コマンド演算部150を備える。
【0049】
舵面アクチュエータ35は、スワッシュプレート40を介して舵面50に接続されている。
【0050】
センサ70は、航空機の飛行状態によって変化する機体運動の諸元を検出し、検出した諸元を示す諸元信号を制御装置85に出力する。反力生成用アクチュエータ20は、操縦装置10の操舵位置を検出し、検出した操舵位置を示す操舵位置信号を制御装置85に出力する。制御装置85は、反力生成コマンドを反力生成用アクチュエータ20に出力し、電気信号又は光信号としての舵面コマンドを舵面アクチュエータ35に出力する。反力生成用アクチュエータ20は、反力生成コマンドに基づいて、パイロットが操縦装置10に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる。舵面アクチュエータ35は、舵面コマンドに基づいて、スワッシュプレート40を介して舵面50を駆動する。
【0051】
図11は、本実施形態に係る操縦システムのブロック図を示している。操縦装置10の操舵位置δは、パイロットの操舵入力によって変化する。インナー・ループ・コマンド演算部110は、第1の実施形態と同様に構成される。インナー・ループ・コマンド演算部110は、第1の実施形態と同様に、操舵位置δを示す操舵位置信号に基づいて、インナー・ループ・コマンドを生成する。
【0052】
飛行制御演算部140は、操舵位置δに基づいて操舵コマンドを生成する。舵面コマンド演算部150は、例えば減算器である。舵面コマンド演算部150は、操舵コマンドからインナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドを生成する。舵面アクチュエータ35は、舵面コマンドに基づいて舵面50を駆動する。すなわち、舵面アクチュエータ35は、操舵コマンド及びインナー・ループ・コマンドに基づいて舵面50を駆動する。
【0053】
センサ70は、第1の実施形態と同様に構成される。センサ70は、第1の実施形態と同様に、複数の諸元A〜Cを検出し、検出した諸元を示す諸元信号を出力する。制限操舵位置演算部90は、第1の実施形態と同様に構成される。制限操舵位置演算部90は、第1の実施形態と同様に、諸元A〜Cを示す諸元信号に基づいて、諸元Aが制限値に達する操縦装置10の制限操舵位置δlimを算出する。
【0054】
反力生成コマンド演算部120は、第1の実施形態と同様に構成される。反力生成コマンド演算部120は、第1の実施形態と同様に、操舵位置δを示す操舵位置信号と制限操舵位置δlimとに基づいて、パイロットが操縦装置10から受けるべき反力を示す反力生成コマンドを生成する。反力生成コマンドは、操舵位置δが制限操舵位置δlimの近くで反力が急に大きくなるように生成される。
【0055】
反力生成用アクチュエータ20は、第1の実施形態と同様に、反力生成コマンドに基づいて、パイロットが操縦装置10に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる。
【0056】
図16を参照して、本実施形態に係る航空機の操縦システム及び航空機の操縦方法の効果を説明する。図16は、パイロットが操舵入力により、時刻tより前は操舵位置δを一定に保持し、時刻tにおいて操舵位置δを制限操舵位置δlimまで速く変化(増加)させてその後一定に保持した場合において、操舵位置δ、操舵コマンド、インナー・ループ・コマンド、電気信号又は光信号としての舵面コマンド、及び、舵面50の影響を受ける諸元Aの変化を示す。
【0057】
パイロットは、操縦装置10から受ける反力の変化に基づいて制限操舵位置δlimを認識し、操舵位置δが制限操舵位置δlimに達した後は、操舵位置δを制限操舵位置δlimに保持する。
【0058】
操舵コマンドは、操舵位置δと同様に変化する。すなわち、操舵コマンドは、時刻tより前は一定に保持され、時刻tにおいて制限操舵位置δlimに対応する値まで速く変化(増加)し、その後制限操舵位置δlimに対応する値で一定に保持される。
【0059】
インナー・ループ・コマンドは、時刻tより前は一定値(例えばゼロ)に保持され、時刻tにおいて速く変化(増加)した後、時刻tより前の値に向かって漸近する。
【0060】
操舵コマンドからインナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドが生成されるため、舵面コマンドは、時刻tより前は一定に保持され、時刻t以後に制限操舵位置δlimに対応する値まで変化した後、制限操舵位置δlimに対応する値に保持される。ここで、舵面コマンドの時刻t以後における変化は、時刻tにおける操舵位置δや操舵コマンドの変化に比べると緩やかである。
【0061】
諸元Aは、時刻tより前は一定値に保持され、時刻t以後に制限値まで変化してその後制限値で一定に保持される。本実施形態においては、操舵位置δに基づくインナー・ループ・コマンドに基づいて舵面アクチュエータ35が舵面50を駆動する。例えば、操舵位置δの時間変化率に依存するインナー・ループ・コマンドに基づいて、操舵位置δが速く変化した場合に舵面50の駆動量が減少するように、舵面アクチュエータ35が舵面50を駆動する。そのため、諸元Aが過渡応答において制限値を超過することが防止される。本実施形態においては、パイロットが反力変化に基づいて操縦装置10の操舵位置δを制限操舵位置δlimに保持するため、諸元Aが定常応答において制限値で一定に保持される。諸元Aが過渡応答において制限値を超過することが防止されるため、航空機が不安定になることが防止される。更に、諸元Aが定常応答において制限値で一定に保持されるため、航空機の性能を最大限生かした操縦が可能となる。
【0062】
(第3の実施形態)
図12を参照して、本発明の第3の実施形態に係る航空機の操縦システムを説明する。本実施形態に係る航空機の操縦システムは、第1又は第2の実施形態に係る航空機の操縦システムの制限操舵位置演算部90が、図12に示す制限操舵位置演算部90で置き換えられたものである。本実施形態に係る制限操舵位置演算部90は、減算器92と、除算器93と、加算器94とを備える。本実施形態に係る制限操舵位置演算部90は、諸元B、Cを用いないで制限操舵位置δlimを算出する。
【0063】
減算器92は、諸元Aの所定の制限値Alimから諸元Aを減算して諸元差分値ΔAを算出する。除算器93は、操舵位置δの変化量に対する諸元Aの変化量の割合dA/dδで諸元差分値ΔAを除して操舵位置変化量Δδを算出する。言い換えると、除算器93は、割合dA/dδの逆数と諸元差分値ΔAとの積としての操舵位置変化量Δδを算出する。加算器94は、操舵位置δに操舵位置変化量Δδを加算して制限操舵位置δlimを算出する。
【0064】
(第4の実施形態)
図13を参照して、本発明の第4の実施形態に係る航空機の操縦システムを説明する。本実施形態に係る航空機の操縦システムは、第1又は第2の実施形態に係る航空機の操縦システムの制限操舵位置演算部90が、図13に示す制限操舵位置演算部90で置き換えられたものである。本実施形態に係る制限操舵位置演算部90は、減算器92と、除算器93と、加算器94と、テーブル95を備える。テーブル95は、諸元B、Cの値の組合せと操舵位置δの変化量に対する諸元Aの変化量の割合dA/dδとを対応付けている。本実施形態においては、操舵位置δの変化量に対する諸元Aの変化量の割合が諸元B、Cによって変化する点が第3の実施形態と異なる。
【0065】
減算器92は、諸元Aの所定の制限値Alimから諸元Aを減算して諸元差分値ΔAを算出する。除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδで諸元差分値ΔAを除して操舵位置変化量Δδを算出する。言い換えると、除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδの逆数と諸元差分値ΔAとの積としての操舵位置変化量Δδを算出する。加算器94は、操舵位置δに操舵位置変化量Δδを加算して制限操舵位置δlimを算出する。このような制限操舵位置δlimの算出方法は、制限操舵位置δlimが諸元Aだけでなく諸元B,Cにも依存する場合に有効である。
【0066】
(第5の実施形態)
図14を参照して、本発明の第5の実施形態に係る航空機の操縦システムを説明する。本実施形態に係る航空機の操縦システムは、第1又は第2の実施形態に係る航空機の操縦システムの制限操舵位置演算部90が、図14に示す制限操舵位置演算部90で置き換えられたものである。本実施形態に係る制限操舵位置演算部90は、減算器92と、除算器93と、加算器94と、テーブル95と、微分器96と、乗算器97と、加算器98を備える。テーブル95は、諸元B、Cの値の組合せと操舵位置δの変化量に対する諸元Aの変化量の割合dA/dδとを対応付けている。本実施形態においては、諸元Aのかわりに諸元Aの予測値Apが減算器92に入力される点が第4の実施形態と異なる。
【0067】
微分器96は、諸元Aを微分して諸元微分dA/dtを算出する。乗算器97は、諸元微分dA/dtと所定の予測時間Δtpとの積である諸元変化量ΔApを算出する。加算器98は、諸元Aに諸元変化量ΔApを加算して、諸元Aの予測時間Δtp後の予測値としての諸元予測値Apを算出する。減算器92は、諸元Aの所定の制限値Alimから諸元予測値Apを減算して諸元差分値ΔAlimを算出する。除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδで諸元差分値ΔAlimを除して操舵位置変化量Δδを算出する。言い換えると、除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδの逆数と諸元差分値ΔAlimとの積としての操舵位置変化量Δδを算出する。加算器94は、操舵位置δに操舵位置変化量Δδを加算して制限操舵位置δlimを算出する。諸元Aの予測値Apに基づいて制限操舵位置δlimが算出されるため、本実施形態に係る制限操舵位置δlimの算出方法は、諸元Aが非常に速く変化する場合に有効である。
【0068】
(第6の実施形態)
図15を参照して、本発明の第6の実施形態に係る航空機の操縦システムを説明する。本実施形態に係る航空機の操縦システムは、第1又は第2の実施形態に係る航空機の操縦システムの制限操舵位置演算部90が、図15に示す制限操舵位置演算部90で置き換えられたものである。本実施形態に係る制限操舵位置演算部90は、減算器92と、除算器93と、加算器94と、テーブル95と、微分器96と、乗算器97と、加算器98と、バッファ99と、減算器100と、減算器101と、一次遅れフィルタ102を備える。一次遅れフィルタ102の伝達関数G102(s)は、時定数をτとすると、下記式で表される。
【数2】

テーブル95は、諸元B、Cの値の組合せと操舵位置δの変化量に対する諸元Aの変化量の割合dA/dδとを対応付けている。本実施形態においては、予測値Apのかわりに予測値Apが補正された補正値Acが減算器92に入力される点が第5の実施形態と異なる。
【0069】
微分器96は、諸元Aを微分して諸元微分dA/dtを算出する。乗算器97は、諸元微分dA/dtと所定の予測時間Δtpとの積である諸元変化量ΔApを算出する。加算器98は、諸元Aに諸元変化量ΔApを加算して、諸元Aの予測時間Δtp後の予測値としての諸元予測値Apを算出する。減算器100は、諸元予測値Apを入力とするバッファ99の出力から諸元Aを減算した予測誤差を算出する。ここで、バッファ99の保持時間は予測時間Δtpである。減算器101は、減算器100が算出した予測誤差を入力とする一次遅れフィルタ102の出力を諸元予測値Apから減算した諸元補正値Acを算出する。減算器92は、諸元Aの所定の制限値Alimから諸元補正値Acを減算して諸元差分値ΔAlimを算出する。除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδで諸元差分値ΔAlimを除して操舵位置変化量Δδを算出する。言い換えると、除算器93は、テーブル95に基づいて、割合dA/dδの逆数と諸元差分値ΔAlimとの積としての操舵位置変化量Δδを算出する。加算器94は、操舵位置δに操舵位置変化量Δδを加算して制限操舵位置δlimを算出する。本実施形態によれば、諸元Aの予測値Apが予測誤差に基づいて補正される。
【0070】
以上、上記各実施形態に係る操縦システムがヘリコプタに適用される場合を説明したが、上記各実施形態に係る操縦システムを固定翼機に適用してもよい。
【0071】
制限操舵位置演算部90、インナー・ループ・コマンド演算部110、反力生成コマンド演算部120、飛行制御演算部140、及び舵面コマンド演算部150は、電気回路が載ったボードとして実現されてもよく、コンピュータとしての制御装置80又は85がコンピュータプログラムに基づいて動作することで実現されてもよい。
【0072】
上記各実施形態において、反力生成用アクチュエータ20のかわりに操舵位置センサ(不図示)を用いて操縦装置10の操舵位置δを検出してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…操縦装置
20…反力生成用アクチュエータ
30…舵面アクチュエータ
31…入力部
32…出力部
35…舵面アクチュエータ
40…スワッシュプレート
50…舵面
60…インナー・ループ・アクチュエータ
61…第1部分
62…第2部分
70…センサ
80、85…制御装置(コンピュータ)
90…制限操舵位置演算部
91…テーブル
92…減算器
93…除算器
94…加算器
95…テーブル
96…微分器
97…乗算器
98…加算器
99…バッファ
100、101…減算器
102…一次遅れフィルタ
110…インナー・ループ・コマンド演算部
111…ハイパスフィルタ
120…反力生成コマンド演算部
140…飛行制御演算部
150…舵面コマンド演算部
210…操縦装置
230…舵面アクチュエータ
240…スワッシュプレート
250…舵面
260…インナー・ループ・アクチュエータ
270…レート・ジャイロ
280…インナー・ループ・コマンド演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦装置と、
航空機の飛行状態によって変化する第1諸元を検出するセンサと、
前記第1諸元に基づいて、前記第1諸元が制限値に達する前記操縦装置の制限操舵位置を算出する制限操舵位置演算部と、
前記操縦装置の操舵位置と前記制限操舵位置とに基づいて、反力生成コマンドを生成する反力生成コマンド演算部と、
前記反力生成コマンドに基づいて、パイロットが前記操縦装置に対して操舵入力を行うときに受ける反力を変化させる反力生成用アクチュエータと、
前記操舵位置に基づいてインナー・ループ・コマンドを生成するインナー・ループ・コマンド演算部と、
前記操舵位置と前記インナー・ループ・コマンドとに基づいて、前記航空機の舵面を駆動する舵面アクチュエータと、
を具備する
航空機の操縦システム。
【請求項2】
前記インナー・ループ・コマンド演算部は、前記インナー・ループ・コマンドが前記操舵位置の時間変化率に依存するように前記インナー・ループ・コマンドを生成し、
前記舵面アクチュエータは、前記操舵位置が速く変化した場合に前記舵面の駆動量が減少するように前記舵面を駆動する
請求項1の航空機の操縦システム。
【請求項3】
前記インナー・ループ・コマンドに基づいて作動するインナー・ループ・アクチュエータを更に具備し、
前記舵面アクチュエータは、前記操舵位置と前記インナー・ループ・アクチュエータの出力変位に基づいて前記舵面を駆動する
請求項2の航空機の操縦システム。
【請求項4】
飛行制御演算部と、
舵面コマンド演算部と
を更に具備し、
前記飛行制御演算部は、前記操舵位置に基づいて操舵コマンドを生成し、
前記舵面コマンド演算部は、前記操舵コマンドから前記インナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドを生成し、
前記舵面アクチュエータは、前記舵面コマンドに基づいて前記舵面を駆動する
請求項2の航空機の操縦システム。
【請求項5】
前記センサは、前記第1諸元を含む複数諸元を検出し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置演算部は、前記複数諸元の値の組合せと前記制限操舵位置を対応付けたテーブルに基づいて前記制限操舵位置を算出する
請求項1乃至4のいずれかに記載の航空機の操縦システム。
【請求項6】
前記制限操舵位置演算部は、
前記制限値と前記第1諸元の差分と、前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とに基づいて、操舵位置変化量を算出し、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する
請求項1乃至4のいずれかに記載の航空機の操縦システム。
【請求項7】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元を更に検出し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置演算部は、前記差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記割合を対応付けたテーブルとに基づいて、前記操舵位置変化量を算出する
請求項6の航空機の操縦システム。
【請求項8】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元を更に検出し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置演算部は、
前記第1諸元の所定の予測時間後の予測値としての第1諸元予測値を算出し、
前記制限値と前記第1諸元予測値の差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とを対応付けたテーブルとに基づいて、操舵位置変化量を算出し、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する
請求項1乃至4のいずれかに記載の航空機の操縦システム。
【請求項9】
前記センサは、前記第1諸元とは異なる複数諸元を更に検出し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置演算部は、
前記第1諸元の所定の予測時間後の予測値としての第1諸元予測値を算出し、
前記第1諸元予測値と、前記第1諸元と、保持時間として前記予測時間が設定されたバッファと、フィルタとに基づいて、前記第1諸元予測値の補正値としての第1諸元補正値を算出し、
前記制限値と前記第1諸元補正値の差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とを対応付けたテーブルとに基づいて、操舵位置変化量を算出し、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出する
請求項1乃至4のいずれかに記載の航空機の操縦システム。
【請求項10】
航空機の飛行状態によって変化する第1諸元を検出するステップと、
前記第1諸元に基づいて、前記第1諸元が制限値に達する操縦装置の制限操舵位置を算出するステップと、
前記操縦装置の操舵位置と前記制限操舵位置とに基づいて、反力生成コマンドを生成するステップと、
前記反力生成コマンドに基づいて、パイロットが前記操縦装置に操舵入力を行うときに受ける反力を変化させるステップと、
前記操舵位置に基づいてインナー・ループ・コマンドを生成するステップと、
前記操舵位置と前記インナー・ループ・コマンドとに基づいて、前記航空機の舵面を駆動するステップと
を具備する
航空機の操縦方法。
【請求項11】
前記インナー・ループ・コマンドを生成する前記ステップにおいて、前記インナー・ループ・コマンドが前記操舵位置の時間変化率に依存するように前記インナー・ループ・コマンドを生成し、
前記舵面を駆動する前記ステップにおいて、前記操舵位置が速く変化した場合に前記舵面の駆動量が減少するように前記舵面を駆動する
請求項10の航空機の操縦方法。
【請求項12】
前記操縦装置は、インナー・ループ・アクチュエータ及び舵面アクチュエータを介して前記舵面に接続され、
前記舵面を駆動する前記ステップは、
前記インナー・ループ・アクチュエータが前記インナー・ループ・コマンドに基づいて作動するステップと、
前記舵面アクチュエータが、前記操舵位置及び前記インナー・ループ・アクチュエータの出力変位に基づいて前記舵面を駆動するステップと
を含む
請求項11の航空機の操縦方法。
【請求項13】
前記操舵位置に基づいて、操舵コマンドを生成するステップと、
前記操舵コマンドから前記インナー・ループ・コマンドを減算して舵面コマンドを生成するステップを更に具備し、
前記舵面を駆動する前記ステップにおいて、前記舵面コマンドに基づいて前記舵面を駆動する
請求項11の航空機の操縦方法。
【請求項14】
前記第1諸元を検出する前記ステップにおいて、前記第1諸元を含む複数諸元を検出し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置を算出する前記ステップにおいて、前記複数諸元の値の組合せと前記制限操舵位置を対応付けたテーブルに基づいて前記制限操舵位置を算出する
請求項10乃至13のいずれかに記載の航空機の操縦方法。
【請求項15】
前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、
前記制限値と前記第1諸元の差分と、前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とに基づいて、操舵位置変化量を算出するステップと、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップと
を含む
請求項10乃至13のいずれかに記載の航空機の操縦方法。
【請求項16】
前記第1諸元とは異なる複数諸元を検出するステップを更に具備し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記操舵位置変化量を算出する前記ステップにおいて、前記差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記割合を対応付けたテーブルとに基づいて、前記操舵位置変化量を算出する
請求項15の航空機の操縦方法。
【請求項17】
前記第1諸元とは異なる複数諸元を検出するステップを更に具備し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、
前記第1諸元の所定の予測時間後の予測値としての第1諸元予測値を算出するステップと、
前記制限値と前記第1諸元予測値の差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とを対応付けたテーブルとに基づいて、操舵位置変化量を算出するステップと、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップと
を含む
請求項10乃至13のいずれかに記載の航空機の操縦方法。
【請求項18】
前記第1諸元とは異なる複数諸元を検出するステップを更に具備し、
前記複数諸元は前記飛行状態によって変化し、
前記制限操舵位置を算出する前記ステップは、
前記第1諸元の所定の予測時間後の予測値としての第1諸元予測値を算出するステップと、
前記第1諸元予測値と、前記第1諸元と、保持時間として前記予測時間が設定されたバッファと、フィルタとに基づいて、前記第1諸元予測値の補正値としての第1諸元補正値を算出するステップと、
前記制限値と前記第1諸元補正値の差分と、前記複数諸元と、前記複数諸元の値の組合せと前記操舵位置の変化量に対する前記第1諸元の変化量の割合とを対応付けたテーブルとに基づいて、操舵位置変化量を算出するステップと、
前記操舵位置変化量と、前記操舵位置とに基づいて、前記制限操舵位置を算出するステップと
を含む
請求項10乃至13のいずれかに記載の航空機の操縦方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−57178(P2011−57178A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212256(P2009−212256)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)