説明

航空機の救護架台

【課題】機体の出入口の外側上方に配置されたホイスト装置を使用して,救護者を吊り上げて機内に収容する際に,乗務員が安全に作業を行えて、収容後は救護架台を機内に格納することなく機外に格納でき、しかも飛行の障害にならない航空機の救護用架台の提供。
【解決手段】ヘリコプターの機体下底面に、内部に救護架台起倒機構9を格納した救護架台移送機構を取付けて、救護架台移送機構の駆動モータを駆動して、一端に救護架台17を取り付けてある救護架台起倒機構9を前進させ、その後駆動モータ11を駆動して起倒架台10を前進させつつ救護架台起倒機構9の各リンク14,15,16の作用によって救護架台17を上昇させる。上昇後は各駆動モータを駆動して、救護架台起倒機構9を救護架台移送機構内に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機の機体に取り付けて使用する航空機の救護架台に関するものであって、特にホイスト装置が室外に配置されたヘリコプターに適するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターはホバリングが可能なので、救護者を救出する際によく利用され、機体の出入口の外側上方に配置されたホイスト装置を使って行われている。救護者をホスト装置によって機体の出入口付近迄吊上げた後、機内の乗務員が接地脚部やその上にあるステップを足場にして、横取り等の手法で機内に収容している。
【0003】
最近では、機内にホイスト装置を有したホイスト支柱を配置して、このホイスト支柱を機外に伸長させて、救護者を機体の出入口近くに吊上げた状態でホイスト支柱を機内に格納して収容するような手段がある。(特許文献1)また其の他には、ホバリング可能な航空機の出入口用ハッチを利用した例もある。このハッチは上下2分割構造をしており、ハッチ上側内部にホイスト装置を、下側内部に架台支えを設けておき、ハッチを開放状態にして、ハッチ上側のホイスト装置で救護者を出入口用ハッチ迄吊上げた後、ハッチ下側の架台支え部によって救助用架台の下側を支えながら救護者を機内に収容する方式のものがある(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5−42897
【特許文献2】 特開2010−18274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のホイスト装置だけによる救護者の機内への収容作業は、ヘリコプター翼の回転による風圧や、ヘリコプター自体の動揺等により救助乗務員にとって危険な作業となっている。また、機内にホイスト支柱を設置するものについては、室内スペースが狭くなり易く、その上既存のヘリコプターに設置するには大幅な改造が必要となる。
【0006】
出入口用ハッチのものは、ハッチの内側にホイスト装置と架台支え部の機器を設けてあるので、室内スペースが狭くなり易い。
【0007】
本発明は、上記した従来のものが有している問題を解決しようとするもので、機内のスペースを狭くすることなく現状通りとして、しかも機体の外側に突出して設けられたホイスト装置を有するヘリコプターにおいて、救護作業が安全に行えることを目的としたものである。
【問題を解決するための手段】
【0008】
飛行中は飛行の障害にならない様に、救護架台は機体の下部に収納し、救助作業中にあっては救護架台を延伸させて使用する救護架台である。
【0009】
内部に走行架台案内レール(2b)と起倒基点用ストッパー(3)とを有するガイドレール(2)を接地脚(G)に固定して取付け、ガイドレール(2)には駆動モータ(5)を取付け、節合ロッド(5b)に締結され往復運動する走行架台(6)を有し、走行架台(6)に作動リンクA(8)と作動リンクB(9)及び継ぎリンク(11)を節合して平行リンクを形成し、作動リンクA(8)と作動リンクB(9)の先端部には踏台(18)が取付けられた救護架台(17)を結合し、かつ作動リンクA(8)の中間部において起倒リンク(10)を結合し、起倒リンク(10)の一端部には起倒基点用軸(16)を節合して、起倒基点用軸(16)を起倒基点用ストッパー(3)に設けられた制限突起(3b)に係合させて起倒架台起倒機構(4)を上昇又は下降動作の基点とし、かつ傾斜面(3a)を滑走させて救護架台起倒機構(4)を後退させて格納位置とする。
【発明の効果】
【0010】
救護者および救護乗務員は救護架台上に乗ることが出来るので、機内への移動、収容作業が安全に行なえる。また救護架台は機外に配置されているので、機内の室内スペースは現状を確保できる。その他に既存のヘリコプターに対して、若干の改修によって本発明装置を取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明の航空機の救護架台の正面図(格納の状態)
【図2】 図1の(イ)矢視図
【図3】 図2の(ロ)−(ロ)断面拡大図
【図4】 救護架台起倒機構部を前進させた全体図
【図5】 図4の(ハ)矢視図
【図6】 救護架台を上昇させた状態図
【図7】 救護架台起倒機構の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の詳細を図面に基ずいて説明する。
図1〜図2は本発明の救護架台装置を航空機(A)の機体下底面(D)に格納した状態を示し、機体の横方向幅よりはみ出すことなく内サイドに格納され、また、高さ方向も飛行の障害にならないよう接地脚(G)よりも内サイドの位置にレール取付架台(2c)によって航空機(A)に装備されている。
【0013】
救護架台移送機構(1)は、2本の溝型をしたガイドレール(2)と此のガイドレール(2)に設置された救護架台起倒機構(4)で構成され、ガイドレール(2)は、ある間隔を置いて配置され、レール取付架台(2c)によって相互に締結されるとともに航空機(A)の接地脚(G)の上側に固定されている。
その他ガイドレール(2)には、救護架台起倒機構(4)の機成部材である駆動モータ(5)を設置するための起動モータ取付架台(2a)や、走行架台(6)を案内する走行架台案内レール(2b)や、起倒基点となる起倒基点用ストッパー(3)が設置されている。
【0014】
救護架台起倒機構(4)は図1〜図7に示すように、駆動モータ取付架台(2a)に固定されて駆動軸(5a)と駆動軸(5a)に固定された節合ロッド(5b)とを有した駆動用モータ(5)と、この駆動モータ(5)の前方にあって内部に車輪(7)を有し一部が節合ロッド(5b)に節合され箱型をした走行架台(6)とがあり、この走行架台(6)に設けてある車輪(7)を案内として走行架台案内レール(2b)内を図において左右方向に走行可能としてある。
【0015】
走行架台(6)には、平行リンクを形成する作動リンクA(8)と作動リンクB(9)とが節合軸A(12)、節合軸B(13)によってそれぞれ節合されている。
この接合軸A、B(12,13)の中間部は継ぎリンク(11)が連結軸(14,15)でそれぞれ接合され、上部先端部は一対の救護架台(17)が連結軸(15)によって節合されている。
また救護架台(17)の上部には踏台(18)が固定されている。
【0016】
作動リンクA(8)の中間部には起倒リンク(10)の一端が接合されており、この起倒リンク(10)の他端は起倒基点用軸(16)が接合されている。この起倒基点用軸(16)は、駆動モータ(5)を救護架台起倒機構(4)が前進方向(左方向)になるように駆動したときには起倒基点用ストッパー(3)の傾斜面(3a)を転動して救護架台起倒機構(4)を前進させ、制限突起(3b)迄転動してゆくと、図4,5に示すように救護架台起倒機構(4)の前進止めとなると同時に図6に示すように救護架台起倒機構(4)を最大位置迄上昇させるための作用点となるものである。
【0017】
反対に駆動モータ(5)を図6の状態から救護架台起倒機構(4)が後退方向(右方向)になるように駆動したときは起倒基点用軸(16)は制限突起(3b)より後退を始めて傾斜面(3a)を転動してゆくので、起倒機構(4)は図1,2に示すように格納した状態になる。
尚、踏台(18)は救護架台(17)へ着脱可能に取付けてあるので、状況に応じて、取換可能としてあり、強度に配慮した上で格子状や金網等の構造をしたものが望ましい。
【0018】
次に本発明の作用について説明す。
図1、2に示す踏台(18)が機体下底面(D)の下部に格納された状態から航空機(A)はホバリングしながら機外ホイスト装置(B)の吊りワイヤー(C)を介して、荷物又は救護者(H)を出入口(E)迄吊り上げた後、先ず駆動モータ(5)を駆動すると、駆動軸(5a)は直動してゆくので、救護架台起倒機構(4)は車輪(7)が走行架台案内レール(2b)内をガイドされながら転動して、前進してゆく。
同時に起倒基点用軸(16)も傾斜面(3a)上を転動する。
【0019】
尚も駆動モータ(5)を駆動すると、救護架台起倒機構(4)は前進を続け、最後には起倒基点用軸(16)が制限突起(3b)に嵌入されると、前進は止まるので、起倒リンク(10)は起倒基点用軸(16)を回転中心として右旋回する。
この結果作動リンクA,B(8,9)は右旋回し、同時に救護架台(17)も図6に示すように上昇位置を取る。
【0020】
この結果、踏台(18)も航空機の出入り口(E)近くに位置するので乗務員は容易に踏台(18)上に乗りうつることができ、荷物又は救護者(H)を容易にかつ安全に機内への搬送が可能になる。
荷物又は救護者(H)を機内に収容し終えると、駆動モータ(5)を逆回転させることにより、架台(6)は後退するので、起倒起点用軸(16)も傾斜面(3a)にそって転動し、この結果、起倒リンク(10)は作動リンクA,B(8,9)を折り畳むように作用して最終的には救護架台起倒機構(4)は図1,2に示すような格納された位置となる。
【0021】
なを、本装置を飛行中に発生する風圧を逃げる為に、救護架台(17)が作動する側(図において左側)を除く3方向を防風カバー等で覆うことも可能である。
また、駆動モータ(5)は機内の操縦用駆動源を利用することが出来る。
【0022】
以上説明したように、ヘリコプターに限らず、ホバリング可能な航空機であれば本装置は適用できる。
【0023】
既存の航空機の機体下底面(D)の接地脚(G)上にガイドレール(2)を取り付けて、また、駆動モータ(5)の駆動回路を増設する事によって、既存の航空機にも本装置を適用できる。
【符号の説明】
【0024】
A 航空機
B 機外ホイスト装置
C 吊りワイヤ
D 機体下底面
E 出入口
F 脚
G 接地脚
H 荷物又は救護者
1 救護架台移送機構
2 ガイドレール
3 起倒基点用ストッパー
4 救護架台起倒機構
5 駆動モータ
6 走行架台
8 作動リンクA
9 作動リンクB
10 起倒リンク
16 起倒基点用軸
17 救護架台
18 踏台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
救護者を機外に設けられたホイスト装置によって吊り上げて、機内に収容する際に使用される航空機の救護架台であって、内部に走行架台案内レール(2b)と起倒基点用ストッパー(3)とを有するガイドレール(2)を接地脚(G)に固定して取付け、上記ガイドレール(2)には節合ロッド(5b)に固定された駆動軸(5a)を有する駆動モータ(5)を取付け、上記節合ロッド(5b)に締結されしかも上記走行架台案内レール(2b)に案内されて往復運動する走行架台(6)を有し、上記走行架台(6)に作動リンクA(8)と上記作動リンクB(9)を接合して平行リンクを形成し、上記作動リンクA(8)と上記作動リンクB(9)の先端部には踏台(18)が取付けられた救護架台(17)を結合し、かつ上記作動リンクA(8)の中間部において起倒リンク(10)を結合し、上記起倒リンク(10)の一端部には起倒基点用軸(16)を接合して、上記起倒基点用軸(16)を上記起倒基点用ストッパー(3)に設けられた制限突起(3b)に係合させて救護架台起倒機構(4)を上昇又は下降動作の基点とし、かつ傾斜面(3a)を滑走させて上記救護架台起倒機構(4)を後退させて格納位置とすることを特徴とした航空機の救護架台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106734(P2012−106734A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−290635(P2011−290635)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(508265295)