説明

航空機の着陸装置

【課題】ノーズ側着陸装置として採用し得る可調式の着陸装置を提供する。
【解決手段】着陸装置100は、航空機に連結されたショックストラットアセンブリ106と連結部材124とを含んでいる。好ましくは、ショックストラットアセンブリ106及び連結部材124は、非平行な状態で、互いの方向を規定するか又は互いの角度を規定する。連結部材124の作動は、ショックストラットアセンブリ106を、収縮した状態から伸長した状態へと作動させるか又はその逆に作動させる。また、ショックストラットアセンブリ106に対する連結部材124の方向付けされた配置によって、ショックストラットアセンブリ106を、車輪アセンブリ118の引き込み動作中に、収縮状態へと移行させる。これにより、ショックストラットアセンブリ106の長さが該引き込み動作中に所望の長さを超えるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の着陸装置に関し、特に可調式の着陸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの航空機は、所定の離陸速度よりも低い速度でも離陸できるように、航空機重量比及び翼の縦横比に対して十分なエンジン推力を有している。それにも拘わらず、殆どの航空機は、その速度が所定の離陸速度に達するまでは離陸することができない。なぜならば、ノーズを下方へと押し下げる力や、主車輪軸に作用する内部モーメントが、実際に得られるノーズを上方へと押し上げる流体力学的な制御モーメントを上回るからである。
【0003】
これまでに、航空機の低速での離陸を許容するための種々の提案がなされており、これらの提案は、航空機の離陸前の迎角を増加させるために、ノーズ側の着陸装置(前脚)の長さを拡張しておくことを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の長さ拡張の欠点として、着陸の際に、該長さ拡張のために航空機に加わる力が増加すること、及び、着陸装置が航空機内に引き込まれたときに大きな格納スペースが必要となることが挙げられる。
【0005】
上述した欠点に対処するために、少なくとも一つの伸縮可能なノーズ側着陸装置の開発がされつつある。この着陸装置は、一般に、航空機に取り付けられる上側シリンダと、該上側シリンダを車輪アセンブリに対して相対的に移動可能とするべく、該上側シリンダに対して、実質的に並行に且つ同軸に取り付けられたピストン/シリンダアセンブリと、を含んでいる。この着陸装置において、ピストン/シリンダアセンブリの自由端は、航空機から最も遠い位置で車輪アセンブリに連結されている。ノーズ側着陸装置が伸長した静止状態では、車輪アセンブリは、航空機から第1の距離に位置するようになっており、着陸装置が収縮(短縮)した静止状態では、車輪アセンブリは、航空機から第2の距離に位置するようになっている。上記静止状態は、航空機のノーズ側着陸装置(前脚)及び主着陸装置(主脚)の双方に航空機の重量が分配された状態で航空機が静止している状態(即ち動かない状態)として定義される。
【0006】
上述の伸縮可能なノーズ側着陸装置のショックストラットは、該ショックストラットに同軸に取り付けられたピストン/シリンダアセンブリを押圧することで伸長又は収縮可能になっている。そして、離陸前に、ピストン/シリンダアセンブリを押圧したり付勢したりしてショックストラットを伸長させることで、航空機の迎角を増加させる。離陸後は、ピストン/シリンダアセンブリは、着陸装置を、着陸装置格納室ないし凹部に引き込む前にショックストラットを収縮させる。
【0007】
本発明は、ノーズ側着陸装置として採用し得る可調式の着陸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、着陸装置を伸縮動作させるショックストラットに対して方向付けて配置され、着陸装置を必要に応じて航空機の格納室へと引き込む際にショックストラットを自動的に収縮(短縮)させる連結部材を設けるようにした。より詳細には、上記連結部材は、航空機に取り付けられる第1端部と、ショックストラットのシリンダに取り付けられた第2端部と、を有するものとする。さらに、上記連結部材は、ショックストラットの軸心に対して0°以外(すなわち平行以外)の角度を持って方向付けされる連結部材長手軸を含んでいる。上記連結部材としては、ショックストラットを伸縮可能な油圧アクチュエータを採用することができ、連結部材は、着陸装置が伸長した状態、収縮した状態、又は、その他の状態のいずれの状態にあるにせよ、該着陸装置を所望の状態(位置)に固定するべく作動する。
【0009】
本発明の一態様によれば、航空機の着陸装置は、シリンダ、該シリンダに対して移動可能に支持されたピストン、及び、該シリンダの少なくとも一部を伸縮自在に支持するとともに、上記航空機における、その重心位置から航空機長手方向に第1距離だけ離間した位置に枢着されたハウジング、を有するショックストラットアセンブリと、上記航空機の重心位置に対して、上記航空機長手方向に上記第1距離だけ離間した位置から所定量だけ後方に離間した第2距離の位置にて枢着された第1部分、及び、上記シリンダに枢着され、該第1部分に対して相対移動可能に構成された第2部分、を有する連結部材と、を備え、上記連結部材は、上記着陸装置が展開された状態(引き出された状態)にあるときに上記航空機の迎角を変化させるべく、第1長さから第2長さまでの範囲で作動するように構成されている。
【0010】
本発明の別の態様によれば、航空機の着陸装置は、シリンダ、該シリンダに対して移動可能に支持されたピストン、及び、該シリンダの少なくとも一部を伸縮自在に支持するとともに、上記航空機における、その重心位置から航空機長手方向に第1距離だけ離間した位置に枢着されたハウジング、を有するショックストラットアセンブリと、上記航空機の重心位置に対して、上記航空機長手方向に上記第1距離だけ離間した位置から所定量だけ後方に離間した第2距離の位置にて枢着された第1部分、及び、上記シリンダに枢着され、該第1部分に対して相対移動可能に構成された第2部分、を有する連結部材と、を備え、上記連結部材は、上記着陸装置の引き込み動作中において、ショックストラット長手軸に対する連結部材長手軸の方向付けされた配置(幾何学的配置)に基づいて、上記ショックストラットアセンブリを格納される状態へと変化させるように構成されている。
【0011】
本発明の更に別の態様によれば、航空機の着陸装置の作動方法は、(1)ショックストラットが収縮した状態で、着陸装置を展開させる工程と、(2)上記ショックストラットを構成する伸縮自在なシリンダに連結された第1端部と、上記航空機における上記ショックストラットとの連結部よりも後方の位置に連結された第2端部とを有する連結部材を、上記航空機が静止している間に、上記ショックストラットが収縮した状態から伸長した状態へと移行するように作動させる工程と、(3)上記着陸装置が引き込まれて、該着陸装置が展開された状態から格納される状態へと変化する間に、上記連結部材と上記ショックストラットとの間の運動学的関係の動作を介して、上記ショックストラットを収縮させる工程と、を含む。
【0012】
以下の説明において、図面の同一の参照番号は、類似の要素又は動作として扱うものとする。図面の要素の寸法及び相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らない。例えば、種々の要素の形状及び角度は一定の縮尺で描くことはできない。そして、これらの要素のいくつかは、図の読み易さを改善するために任意に拡大又は位置変更されている。さらに、いくつかの構成は、単に、その存在及び他の構成に対する位置を示すためだけに、模式的に又は概略で示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、航空機軸を含む航空機の斜視図である。
【図2】図2は、航空機(模式的に示す)に連結されたショックストラットアセンブリ及び連結部材を有する着陸装置の側面図であって、本発明の一形態による、収縮され且つ展開された状態におけるショックストラットアセンブリ及び連結部材を示す。
【図3】図2の着陸装置の側面図であって、本発明の一形態による、伸長され且つ展開された状態におけるショックストラットアセンブリ及び連結部材を示す。
【図4】図4は、図2の着陸装置の側面図であって、本発明の一形態による、伸長され且つ部分的に展開された状態におけるショックストラットアセンブリ及び連結部材を示す。
【図5】図5は、図2の着陸装置の斜視図であって、本発明の一形態による、着陸装置が伸長され且つ航空機の格納室に引き込まれて格納された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、特定の具体的な詳細を、本発明の様々な形態を理解するための一例として記載する。しかし、当業者であれば、このような詳細がなくとも本発明を実施可能であることは理解できるであろう。他の例において、着陸装置、各種アセンブリ及びそれらの動作に関連した周知の構成は、発明の形態の説明が不必要に不明瞭になるのを回避するために、必ずしも詳細には示されない。
【0015】
特に必要がない限り明細書及び特許請求の範囲全体を通した以下の説明において、「備える」は、「含むがこれに限定されるものではない」という意味で使用するものとする。
【0016】
さらに、「長手」は、部材の長さに関連する広い意味で使用するものとする。図1は、航空機長手軸12(ロール方向に操縦する際の軸となるロール軸とも呼ばれる)を有する航空機10を示す。航空機長手軸12は、その通常の飛行方向に沿って、航空機の尾部16からノーズに亘って胴体部を貫通するように延び且つ水線(図示省略)に平行な軸に一致している。「後方」という語は、矢印22で示される方向であって、一般に、航空機10の通常の飛行方向又は航空機長手軸12に沿って、そのノーズ18側から尾部16側に向かう方向を意味している。航空機10は、航空機長手軸12に加えて、さらに横軸24及び鉛直軸26を有している。横軸24(ピッチ軸又はトランスバース軸(交軸)ともいう)は、航空機10の主翼28に平行に延び且つバトックライン(図示省略)に平行な軸である。横軸24は、航空機10をピッチ方向30(例えばノーズ側を上昇又は下降させる方向)に操作することができる軸である。鉛直軸26(ヨー軸ともいう)は、他の二つの軸12,24に対して垂直で且つ胴体ステーション(図示省略)に対して平行な軸である。鉛直軸26は、航空機10をヨー方向32(例えば左旋回又は右旋回)に操作することができる軸である。
【0017】
航空機軸12,24,26に加えて、航空機10の構成要素はそれぞれ独自に軸を持つこともできる。例えば、円筒状の構成要素の、本明細書で用いられている長手軸を、胴体部、ショックストラットアセンブリ、連結部材、アクチュエータ等の、軸対称形又は円筒形構成要素の軸心という形で設けてもよい。言い換えると、特定の構成要素の長手軸は、該要素の長さによって定義される。
【0018】
図2は、展開され(引き出され)且つ収縮した状態の着陸装置100を示している。着陸装置100は、命令により、航空機102の格納室ないし凹部104から外側へ展開される。着陸装置100は、展開され且つ収縮した状態では、航空機の少なくとも一部の重量を支えることができる。
【0019】
着陸装置100は、通常、異なる状態(長さ)で又は異なる圧縮比で作動するショックストラットアセンブリ106を含んでいる。この圧縮比は、一の状態における圧力を他の状態における圧力で除した値である。通常、ショックストラットアセンブリ106は、完全に圧縮した状態と、完全に伸長した状態との間で移動可能に構成されている。着陸及び滑走中の通常作動時においては、ストラット長(支柱長、すなわちストローク)は、後述するように、ピストンの動作及びシリンダの位置によって変化する。さらに、ショックストラットアセンブリ106は、展開され且つ収縮した状態と、展開され且つ伸長した状態と、引き込まれ且つ収縮した状態と、引き込まれ且つ伸長した状態とに移行し得る。着陸装置100は、展開された状態で、航空機重量の一部を静的に支持する。しかし、詳細は後述するように、ショックストラットアセンブリ106は異なる長さ(例えば、収縮した状態と伸長した状態)とすることができる。ここでいう「伸長した状態」とは、完全に収縮した長さを超えるショックストラットアセンブリ106の全ての長さを含んでいる。
【0020】
ショックストラットアセンブリ106は、航空機102に対してショックストラット枢軸112を介して枢着された上端部110を有する外側シリンダ108を含む。ショックストラットアセンブリ106は、ピストン114と、外側シリンダ108内で移動可能に支持された内側シリンダ116とを更に含む。ピストン114は、取付部材120を介してピストン114に連結された車輪アセンブリ118に対して力を伝達するとともに車輪アセンブリ118からの力を受ける。一形態において、内側シリンダ116は、ピストン114を内側に嵌め込んだ状態で互いの間の相対移動を許容することで、着陸装置100又は航空機102から地表面122(滑走路や舗装路、離陸面には限られない)に伝達される内力、衝撃力、操作力及び他の力の少なくとも1つの吸収、変換及び減衰の少なくとも1つを行う。
【0021】
上述のように、ピストン114は内側シリンダ116に嵌合支持され、内側シリンダ116は外側シリンダ108に嵌合支持されている。内側シリンダ116と外側シリンダ108との相対的な嵌合移動は、ショックストラットアセンブリ106の長さを増減するように作用する。さらに、内側シリンダ116と外側シリンダ108との相対位置は、ショックストラットアセンブリ106が、展開され且つ収縮した状態と、展開され且つ伸長した状態とのいずれの状態にあるかを決定する。図2に最も良く示されているように、ショックストラットアセンブリ106が展開され且つ収縮した状態では、地表面122と航空機102の第1部分123との間に鉛直距離117aが生じる。
【0022】
連結部材124が、ショックストラットアセンブリ106の長さを調整することで、外側シリンダ108に対する内側シリンダ116の相対的な嵌合移動を生じさせるべく作動する。連結部材124は、ショックストラット枢軸112の後方に第1長手距離128だけ離間した位置に配設され且つ航空機102に枢着された連結部材上側枢軸126を含んでいる。連結部材124は、内側シリンダ116に枢着される下端部132を更に含む。連結部材124としては、アクチュエータシリンダ136により支持されるアクチュエータピストンロッド134を有する油圧シリンダを使用することができる。とはいえ、本発明の目的を達成することができるものであれば、連結部材124として他のタイプのアクチュエータを使用するようにしてもよい。一形態において、連結部材124として、航空機102からショックストラットアセンブリ106へと荷重が伝達される状態であっても所望の位置で係止可能な自動ロック式アクチュエータを採用することができる。アクチュエータシリンダ136に対するアクチュエータピストン134の相対移動は、ショックストラットアセンブリ106を伸長又は収縮させるように作用し、それにより、着陸装置100が展開された状態にあるときに、ショックストラットアセンブリ106が収縮した状態から伸長した状態に又はその逆に移動する。
【0023】
連結部材124の構成要素、すなわち、アクチュエータ・ピストンロッド134及びアクチュエータシリンダ136は、通常、連結部材長手軸138に対して同軸に配設される。ショックストラットアセンブリ106の構成要素、すなわち、外側シリンダ108、ピストン114、及び内側シリンダ116は、通常、ショックストラット長手軸140に対して同軸に配設される。そして、連結部材長手軸138は、ショックストラット長手軸140に対して角度142にしたがってその方向付けがなされる。一形態において、角度142aは約0°以上45°以下の範囲内にある。ここで0°は、アクチュエータ124がショックストラットアセンブリ106に平行であるか又はショックストラットアセンブリ106に沿って配設されている状態に対応している。
【0024】
着陸装置100は、航空機102と外側シリンダ108との間で延びるブレース144を更に含むものであってもよい。一形態において、ブレース144としては、上側部材146及び下側部材148を有するロック型ブレースを採用することができる。一形態において、上側部材116は、航空機102に枢着されており、着陸装置100が格納された状態で、ショックストラットアセンブリ106の一部を支持するU型の股状アームを含んでいる(図5参照)。下側部材148としては、上側部材146及び外側シリンダ108に両端部がそれぞれ枢着された棒、リンク、又は二力部材を採用することができる。ブレース144は、着陸装置100を、その展開状態において伸長した状態と収縮した状態とのいずれの状態にあるか否かに拘わらず安定化させるように作用する。
【0025】
図3は、連結部材124を伸長することにより、車輪アセンブリ118が航空機102に対して相対的に下方に移動した後の、伸長した状態にあるショックストラットアセンブリ106を示している。展開され且つ伸長した状態では、地表面122から第1部分123までの距離が第2鉛直距離117bとなる。さらに、図3には、ショックストラットアセンブリ106が展開された状態で伸長したときに生じる(又は増加する)航空機102の迎角150が示されている。上述の如く、ショックストラットアセンブリ106は、展開され且つ伸長した状態から完全に伸長した状態までのいかなる位置にも移動させることができる。しかしながら、航空機102が地上を走行中は、ショックストラットアセンブリ106は、伸長した状態又は収縮した状態のいずれかの状態にある必要がある。なぜならば、内側シリンダ116は、ショックストラットアセンブリ106の位置を維持するために外側シリンダ108に固定されるからである。仮に、地上走行中に伸長又は収縮することが求められる場合には、ショックストラットアセンブリ106の位置を維持するために、一組のトルクアーム又はこれと等価な位置調整装置を使用するようにすればよい。展開され且つ伸長した状態では、航空機102と車輪アセンブリ118との間の伸長した距離152bは、図2に示す収縮した距離152aよりも大きい。さらに、展開され且つ伸長した状態では、角度142bは減少して角度142a(図2に示す角度であって、ショックストラットアセンブリ106が展開された且つ収縮した状態にあるときの角度)よりも小さくなる。
【0026】
図4は、着陸装置100が、展開され且つ伸長した状態(図3参照)から格納状態(図5参照)へと移行する引き込み途中の状態を示している。引き込み途中では、格納/展開機構(図示省略)が、連結部材上側枢軸127の周りにショックストラットアセンブリ106を回動させる。着陸装置100の格納位置(図5参照)への引き込み途中では、連結部材124は、円弧状をなす経路154aに沿って、内側シリンダ108の動きを抑制するべく作用する。経路154aは、連結部材124の所望の伸長した長さ156に対応している。この所望の伸長した長さ156は、連結部材124の最大伸長長さであってもよいし、又はそれよりも小さい長さであってもよい。この所望の伸長した長さ156は、着陸装置100が引き込まれるに連れてショックストラットアセンブリ106の収縮長さ158が調整されるように作用する。ショックストラット枢軸112、連結部材上側枢軸127、及び連結部材124に対するショックストラットアセンブリ106の方向によって、連結部材124は、ショックストラットアセンブリ106の収縮長さ158を自動的に調整するように機能する。一形態において、ショックストラットアセンブリ106が格納位置(図5参照)に向かって旋回するに連れて、内側シリンダ116が収縮した状態へと後退し、それに連れて、ショックストラットアセンブリ106の収縮長さ158が短くなる。
【0027】
着陸装置100が、展開され且つ収縮した状態(図2参照)から格納状態(図5参照)へと引き込まれる過程(収縮した状態が好ましい離陸又はタッチアンドゴー操作の間に発生する状況)では、連結部材124は圧縮状態となり、内側シリンダ116が外側シリンダ108内に入り込んだ状態となる。この状態の内側及び外側シリンダ116,108間の位置関係は、着陸装置100の引き込み動作中に一定に維持されるが、連結部材124は伸長状態へと移行する。このようにして、着陸装置100は、基本的に、連結部材上側枢軸127というよりはむしろショックストラット枢軸112を中心とする経路154bに沿って引き込まれる。
【0028】
上述のように、連結部材124に対するショックストラットアセンブリ106の方向付けされた配置によって、ショックストラットアセンブリ106は、結果的として図5に示すように、格納され且つ収縮した状態になる。さらに、連結部材124の所望の伸長した長さ156は、ショックストラットアセンブリ106が収縮したり、連結部材124の最大伸長長さを超えて伸長したりするのを防止する。このことは、ショックストラットアセンブリ106が格納される間又は格納された後において、ショックストラットアセンブリ106に対して意図しない又は望まない伸長をもたらすのを防止することができる。仮に連結部材124が最大伸長長さでない場合には、連結部材124は油圧ロックを介して一定長さに維持されることとなる。格納室104の体積や形状に起因して、着陸装置は、不必要な干渉の可能性を最小化又は除去するべく、該装置を収縮させない限り収容することができない。
【0029】
通常動作時には、格納/展開機構に対して、着陸装置100を格納された位置から展開させるための動力が付与される。着陸装置100が格納位置から展開される際、展開後にショックストラットアセンブリ106が完全に伸長することができるように、連結部材124は、最大伸長位置に固定維持される。或いは、連結部材124は、展開中にショックストラットアセンブリ106を収縮位置を含む他の位置に移行させるために調整される。上述したように、ショックストラットアセンブリ106は、着陸前に連結部材124を上述した方法で作動させることによって収縮可能になっている。或いは、完全に展開された後にショックストラットアセンブリ106が収縮した状態になるように、該展開中に連結部材124を作動させるようにしてもよい。別の形態では、着陸装置100は、例えば、航空機102の着陸前における連結部材124の収縮又は固定解除の失敗に備えて、着陸負荷の増加を許容するように設計したものであってもよい。しかし、このような失敗が発生した場合には、減少した速度又はより軽い質量負荷を得るために、航空機102の操作を通じて着陸負荷を減少させることが好ましい。
【0030】
着陸装置100は、収縮した状態と伸長した状態とのいずれの状態からも格納することができる。着陸装置100が、収縮した状態から格納状態へと移行する場合には、連結部材124は、その長さが最大長さに達するまで延長されることとなる。別の形態では、ショックストラットアセンブリ106の状態に関係なく、車輪アセンブリ118が格納室104に入る前に、連結部材124によって、ショックストラットアセンブリ106を自動的に適切な長さに合わせるようにしてもよい。
【0031】
連結部材124によって実行される伸長及び収縮機能は、例えば図示したものとは異なる配置や方向を有するアクチュエータや、これに限らない多種多様な装置によって実現することができる。そのような代替の形態において、連結部材124を、内側シリンダ116や外側シリンダ108の中(すなわち内部)に配設するようにしてもよい。別の形態において、連結部材124は、最大長さと最小長さとの間で係止されることなく最大長さ又は最小長さで係止可能としてもよい。
【0032】
一般に、ショックストラットアセンブリ106の伸長動作は、車輪アセンブリ118の滑走面である地表面122から航空機102までの高さの増加に対応している。したがって、着陸装置がノーズ側着陸装置(前脚)である場合には、航空機102の後側着陸装置(主脚)がそのままの状態に維持されるならば、航空機102のノーズが地表面122に対して上昇することとなる。それ故、航空機102は、ショックストラットアセンブリ106が伸長した後に、ノーズが上昇した姿勢を有することとなって、離陸前の迎角150(図3参照)に関して上述したように、結果として航空機102の翼に作用する揚力が増加することとなる。着陸装置100は、航空機102のパイロットが様々な離陸状況に応じて連結部材124を選択的に作動させることができるように適切な制御機能を含むものとしてもよい。伸長した状態で離陸した後、ショックストラットアセンブリ106を格納前に収縮することに関しては、パイロットからの如何なる追加的な入力指令や信号を必要としない。なぜなら、連結部材124は、ショックストラットアセンブリ106を自動的に、格納され且つ収縮した状態にするように機能するからである(図5参照)。上述した各種形態では、さらなる形態を提供するために組み合わせることもできる。2008年6月25日に出願された米国特許出願61/075484の全ては、本明細書に援用することができる。更に別の形態を提供するために、様々な特許、出願及び刊行物に記載の装置、特徴、方法及び概念を使用する必要がある場合には、実施態様を変更してもよい。
【0033】
これらの変更又は他の変更に際しては、上記の詳細な説明を考慮することができる。一般に、以下の請求項で使用される語は、発明を、明細書に開示された特定の形態や請求項の語に限定するように解釈すべきではなく、全てのタイプの航空機102、着陸装置、ショックストラット、連結部材、アクチュエータ、方法、及び他の態様を含むように、請求項に従って解釈するべきである。したがって、本発明は、開示された範囲に限定されないが、その代わりに、本発明の範囲は、以下の請求項によって完全に決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の着陸装置であって、
シリンダと、該シリンダに対して移動可能に支持されたピストンと、該シリンダの少なくとも一部を伸縮自在に支持するとともに、上記航空機における、その重心位置から航空機長手方向に第1距離だけ離間した位置に枢着されたハウジングと、を有するショックストラットアセンブリと、
上記航空機の重心位置に対して、上記航空機長手方向に上記第1距離だけ離間した位置から所定量だけ後方に離間した第2距離の位置にて枢着された第1部分と、上記シリンダに枢着され、該第1部分に対して相対移動可能に構成された第2部分と、を有する連結部材と、
を備え、
上記連結部材は、上記着陸装置が展開された状態にあるときに上記航空機の迎角を変化させるべく、第1長さから第2長さまでの範囲で作動するように構成されていることを特徴とする航空機の着陸装置。
【請求項2】
航空機の着陸装置であって、
シリンダと、該シリンダに対して移動可能に支持されたピストンと、該シリンダの少なくとも一部を伸縮自在に支持するとともに、上記航空機における、その重心位置から航空機長手方向に第1距離だけ離間した位置に枢着されたハウジングと、を有するショックストラットアセンブリと、
上記航空機の重心位置に対して、上記航空機長手方向に上記第1距離だけ離間した位置から所定量だけ後方に離間した第2距離の位置にて枢着された第1部分と、上記シリンダに枢着され、該第1部分に対して相対移動可能に構成された第2部分と、を有する連結部材と、
を備え、
上記連結部材は、上記着陸装置の引き込み動作中において、ショックストラット長手軸に対する連結部材長手軸の方向付けされた配置に基づいて、上記ショックストラットアセンブリを格納される状態へと変化させるように構成されていることを特徴とする航空機の着陸装置。
【請求項3】
少なくとも一つのショックストラットを有する航空機の着陸装置の作動方法であって、
上記ショックストラットが収縮した状態で、上記着陸装置を展開させる工程と、
上記ショックストラットを構成する伸縮自在なシリンダに連結された第1端部と、上記航空機における上記ショックストラットとの連結部よりも後方の位置に連結された第2端部とを有する連結部材を、上記航空機が静止している間に、上記ショックストラットが収縮した状態から伸長した状態へと移行するように作動させる工程と、
上記着陸装置が引き込まれて、該着陸装置が展開された状態から格納される状態へと変化する間に、上記連結部材と上記ショックストラットとの間の運動学的関係の動作を介して、上記ショックストラットを収縮させる工程と、を備えることを特徴とする航空機の着陸装置の作動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−18269(P2010−18269A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−151078(P2009−151078)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(501348092)グッドリッチ コーポレイション (17)