説明

航空機の翼の非平面翼端装置、及び非平面翼端装置を備えた翼

翼に装着される翼端装置は、付け根及び先端部を有し、翼端装置(W(W1、W2)の局所上反角が付け根(E1)から先端部(E2)にかけて連続的に増加又は減少し、後縁(50)の局所後退角が、翼端装置(W(W1、W2))の付け根(E1)から先端部(E2)への後縁(50)の延伸経路に沿って連続的に増加し、前縁(60)の局所後退角が、付け根(E1)から第1の中間点(61a)への延伸経路において連続的に増加し、第1の中間点(61a)から第2の中間点(62a)への延伸経路において連続的に減少し、第2の中間点(62a)から少なくとも翼端装置(W(W1、W2))の先端部(E2)の前の(内側の)領域への延伸経路において連続的に増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の翼の非平面翼端装置、及び非平面翼端装置を備えた翼に関する。
【背景技術】
【0002】
形状及び設計寸法の異なるいくつかの非平面翼端装置が当該技術分野において周知である。
特許文献1に記載された翼の翼端拡張部は、上面、下面、前縁、及び後縁を有する。この翼端拡張部は、翼への連結部と翼端拡張部の先端との間において、上反角が連続的に増加し、前縁及び後縁の両方の後退角が連続的に増加し、翼端拡張部の翼弦長が連続的に減少する形状をなす。また、この翼端拡張部は、連結部において、途切れることなく翼に連結されている。
【0003】
特許文献1には、空力抵抗の減少による空力性能の向上を主な目的とする多種類の翼端装置やウィングレットが記載されている。翼端装置は、新しい航空機に配置してもよいし、既存の航空機に後付けしてもよい。後者の場合、既存の翼形状が別の翼形状に変更される。いずれの場合にせよ、空力性能の増加と構造的荷重の増加のバランスをとるよう翼端装置を設計する必要がある。この構造的荷重は、一般的な簡易方法においては、翼付け根の曲げモーメントから求められる。また、空力性能の増加は、航空機の重量に関連する全ての影響ともバランスが取れていなければならない。様々な翼端装置に対する評価は、設計シナリオ及び境界条件に基づき結果が異なる場合もある。
【0004】
当該技術分野においては、翼端フェンス(WTF)という装置も知られている。この翼端フェンスは、類似する寸法の2つのコンポーネントを有し、翼に対しほぼ垂直をなして上方又は下方に延設される。翼の流れ特性を向上させるために、翼端装置が配置される主翼の外側部と翼端装置との間で上反角及び後退角が連続的に滑らかに推移する翼端装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10117721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の翼端装置と比べて、翼端装置が配置される翼の空力性能を向上させ、寸法や性能の異なる多数の航空機の改良を可能とする翼端装置及びこの翼端装置を備える翼を提供することにある。本発明のさらなる目的は、寸法や性能の異なる航空機の改造に用いることができ、翼の構造を変更させることなく、もしくはわずかな変更を加えるだけで、翼及び航空機の空力性能を向上させることができる翼端装置及びこの翼端装置を備える翼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、本願の独立請求項に記載された特徴により達成される。他の実施形態は、独立請求項の従属請求項に記載される。
本発明による翼端装置は、主翼の外側部に装着される独立部品として使用可能であり、翼の構造を変更させることなく、もしくは比較的軽微で効率的な変更を加えるだけで、飛行時等の空力効率を最適化することができる。
【0008】
本発明による翼端装置は、翼端装置が装着される翼の性能を向上させ、かつ、その翼を備える航空機の全体的な性能も向上させる特性を有する。さらに、本発明による翼端装置の構成においては、ナビゲーションライトをそのナビゲーションライトを覆うガラスと一体化させることができる。
【0009】
さらに、本発明による翼端装置の実施形態においては、翼端装置が後付け部品として用いられた際に、翼にかかる構造的荷重の増加を抑えることが可能である。また、本発明による形状を個々のケースに適合させることにより、このような構造的荷重を無視できる程度に低減可能である。したがって、本発明による翼端装置は、特に既存の航空機の翼の改造に適用されることができ、翼はそのままの状態で、もしくはわずかに変更するだけで改造を加えることができる。
【0010】
前述の効果は、当該技術分野において周知の翼端装置では得ることができないか、非常に限られた程度しか得ることができない。なぜなら、これらの翼端装置は、翼端フェンスは例外として、抗力を大幅に減らすことを主目的としており、その結果、翼の付け根の曲げモーメントが増加するからである。当該技術分野で周知の翼端装置において前述の対策が可能であると仮定したとして、例えば、荷重が中立であるよう、即ち翼にかかる構造的荷重の増加が抑制されるよう構成されているとしても、周知の翼端装置においては、形状高さ等の構成により、翼の性能向上が満足のいくものとはならない。したがって、それらの対策は効果的であるとは認められない。
【0011】
それに対して、本発明による翼端装置においては、翼にこの翼端装置を後付け部品として装着することにより翼の空力性能の向上が得られる。この翼端装置は、比較的コンパクトな構成、即ち、短い有効スパン長を有する。この翼端装置により生じる空力荷重は少ない。
【0012】
本発明による、翼に装着される翼端装置は、付け根及び先端部を有する。この翼端装置において、翼端装置の局所上反角が付け根から先端部にかけて連続的に増加又は減少し、後縁の局所後退角が、翼端装置の付け根から先端部への後縁の延伸経路に沿って連続的に増加し、前縁)の局所後退角が、付け根から第1の中間点への延伸経路において連続的に増加し、第1の中間点から第2の中間点への延伸経路において連続的に減少し、第2の中間点から少なくとも翼端装置の先端部の前の(内側の)領域への延伸経路において連続的に増加する。
【0013】
前縁の後退角は、翼端装置の第2の中間点から先端部への延伸経路において連続的に増加していてもよい。もしくは、前縁の後退角が翼端装置の第2の中間点からサブ領域への延伸経路において連続的に増加し、このサブ領域が先端部の前に(内側に)設けられるとともに付け根から先端部への間に長手方向に延びる長さである翼端装置の全長の8%以下の長さを有し全長の最も外側に設けられていてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態においては、翼端装置の局所上反角の増加又は減少が、付け根(E1)の局所スパン方向と先端部の局所スパン方向との間の角度が30〜90度となるべく構成される。
【0015】
本発明の別の実施形態においては、翼端装置の付け根から先端部へ延びる長手方向から見て付け根と先端部の最も外側の点との間の距離が付け根の局所形状翼弦長の20〜80%の長さであり、付け根と先端部の最も外側の点との間の距離が、翼端装置の局所座標系の局所翼端装置厚さ方向において定義される。
【0016】
本発明の一実施形態においては、付け根と第1の変化点との間に位置する第1のセクションの、翼端装置の長手方向の長さが、翼端装置の長手方向の全長の15〜50%の長さである。
【0017】
本発明の一実施形態においては、第1の変化点と第2の変化点との間に位置する第2のセクションの長手方向の長さが、翼端装置の全長の5〜30%の長さである。
本発明の一実施形態においては、第2の変化点と先端部との間に位置する第3のセクションの翼端装置の長手方向の長さが、翼端装置の全長の15〜70%の長さである。
【0018】
本発明の一実施形態においては、第3のセクションの前縁が外端において後縁に接合される。
本発明の別の実施形態は、本発明による翼端装置を備える翼に関する。本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による翼端装置の一実施形態を備えた航空機の斜視図。
【図2】本発明による翼端装置の別の実施形態を備えた航空機の側面図。
【図3】本発明による翼端装置の一実施形態の後面図。
【図4】本発明による翼端装置の第1の実施形態の平面図。
【図5】最も外側の領域の構造が図4の翼端装置とは異なる、本発明による翼端装置の第2の実施形態の平面図。
【図6】翼端装置形状の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び2に示す実施形態において航空機Fは2つの翼10a及び10bを有する。これらの翼のそれぞれに、本発明による翼端装置W1、W2が配置可能である。図1及び2には、航空機の座標系KS−Fも示されている。各翼10a及び10bは少なくとも1つの補助翼11a、11bを備える。もしくは、各翼10a、10bは多数のスポイラ12a、12b、スラット13a、13b、及び/又は後縁下げ翼14a、14bを備えていてもよい。図1においては、一部のスポイラ12a、12b、スラット13a、13b、及び/又は後縁下げ翼14a、14bのみに符号が付されている。図1には、航空機Fに関する座標系も示されている。この座標系は、航空機の長手方向軸X、航空機の横方向軸Y、航空機の垂直方向軸Zを含む。さらに、航空機Fは少なくとも1つの方向舵21を有する垂直尾翼20を備える。また、航空機Fは昇降舵25を少なくとも1つ有する昇降舵水平尾翼24を備えていてもよい。この昇降舵水平尾翼24は、T字尾翼や十字尾翼であってもよい。
【0021】
本発明による航空機Fは、図1及び2に示す航空機Fとは異なる形状を有していてもよい。例えば、本発明による航空機は、高翼機やブレンデッドウィングボディであってもよい。さらに、昇降舵水平尾翼に代えて先尾翼を備えていてもよい。
【0022】
図3〜6は、本発明による翼端装置の実施形態を示す。これらは、右側の翼の翼端装置を航空機の飛行方向、即ち航空機の長手方向軸Xに対向する方向から見た図である。図1及び2の右側翼端装置にはW1の符号が付され、図3〜6の右側翼端装置にはWの符号が付されている。図3〜6には、航空機の座標系KS−F、及び翼端装置Wが配置される翼Tの座標系KS−Tも示されている。
【0023】
翼Tの座標系KS−Tはスパン方向SW,翼弦方向FT、および翼厚方向FDを含む局所座標系である。本発明による定義においては、翼Tの局所座標系KS−Tは、局所翼弦方向FTが航空機座標系KS−Fの長手方向軸Xに平行するよう配向されている。軸の方向、及び翼Tの局所座標系KS−Tの原点位置は、翼Tの各ポイントで最小の断面積を有する断面に基づいて定義できる。ここで、局所座標系KS−Tの原点は、各断面に位置するその断面の重力中心点である。そして、局所翼厚方向FD及び局所翼弦方向FTは、各ポイントで最小の断面積を有する断面に位置する。
【0024】
本発明による別の定義においては、翼Tの局所座標系KS−Tは、翼Tの座標系KS−Tの翼弦方向FTが航空機の座標系KS−FのX方向又は長手方向に延び、翼Tの座標系KS−Tの翼厚方向FDが航空機の座標系KS−FのZ方向、又は航空機Fの垂直軸Zの方向に延びるように配向される。
【0025】
翼端装置Wが配置される翼Tのスパン方向SWに関して、翼端装置Wは、翼端装置Wに接合される付け根E1、及び翼端を形成する先端部E2を有し、翼Tを拡張する。翼Tのスパン方向SWは、翼端装置Wが装着される翼Tの最外部を起点とする。翼端装置Wは、後縁50、前縁60、上面70、及び下面80を有し、これらは付け根E1と先端部E2の間に延びる。
【0026】
翼端装置Wは、翼Tに直接装着可能である。この場合、翼Tと翼端装置Wが接合する領域又はラインは、エッジ又は捩れを含んでいてもよい。
翼端装置Wは、境界領域、即ち移行領域Aを介して翼Tに装着されていてもよい。この場合、移行領域Aの上面A1の一側が翼Tの上面T1に接合され、他側が翼端装置Wの上面70に接合される。そして、移行領域Aの下面A2の一側が翼Tの下面T2に接合され、他側が翼端装置Wの下面80に接合される。ここで、翼T及び翼端装置Wに隣接される移行領域Aにおける隣接領域又はライン、もしくは移行領域A内の隣接する領域又はラインは、エッジや捩れを形成していてもよい。
【0027】
図3〜6に示される、本発明による翼端装置Wを備えた翼Tの実施形態においては、境界領域即ち移行領域Aは、翼Tと翼端装置Wの間に配置される。この実施形態においては、翼Tと翼端装置Wとの間の移行領域A又は移行、後縁50、前縁60、上面70、及び/又は下面80が、接線連続性を満たすべく、捩れがないように構成される。つまり、翼は数学的に微分可能な湾曲形状を有し、前述のとおり、翼Tの表面と翼端装置Wの表面の接線が、対向方向から生じる移行点において、互いに角度の増加が不連続的になることはない。
【0028】
翼Tの表面から移行領域Aへの移行、及び/又は移行領域Aから翼端装置Wへの移行は、曲率連続性を有するよう、即ち数学的に二回微分可能となるよう形成される。
一実施形態においては、翼Tと翼端装置Wとの間の境界領域即ち移行領域A及び/又は移行、後縁50、前縁60、上面70、及び/又は下面80が、エッジや角を有し、これらの位置が捩れのない湾曲したセクションの一部とならないように形成される。これらの移行位置においては、翼T及び翼端装置Wの接線が、互いに対向する方向に延びる接線に関しては、互いに角度的不連続性を有する。
【0029】
移行領域Aに関して、本発明による翼の実施形態において後者である限りは、本発明による局所翼座標系KS−Tの定義も適用される必要がある。
別の実施形態においては、翼Tが移行領域Aを有しておらず、翼Tの表面から翼端装置Wへの移行は、接線が連続性を有するように構成されていている(即ち、少なくとも一回は微分可能である)か、曲率が連続性を有するように構成されている。
【0030】
本発明による翼端装置W、W1、W2においては、翼端装置W、W1、W2の局所上反角が付け根E1から先端部E2にかけて、即ち翼端装置Wの長手方向Lにおいて連続的に増加又は減少する。上反角が翼端装置Wの長手方向Lに増加する場合は、翼端装置W、W1、W2又は先端部E2は上方に延びる。反対に、上反角が翼端装置Wの長手方向Lに減少する場合は、翼端装置W、W1、W2又は先端部E2は下方に延びる。
【0031】
ここでいう「上方」とは、翼Tを起点として、翼Tの上面から離れる方向を意味する。すなわち、航空機座標系KS−Fの正のZ方向、または翼座標系KS−Tの正の翼厚方向を意味する。
【0032】
翼端装置Wの一実施形態においては、翼端装置Wの上面及び/又は下面が、各面の全方向にわたって接線連続性又は曲率連続性を有するよう構成される。他の実施形態においては、翼端装置Wの上面及び/又は下面が1つ又は複数の位置において捩れを有し、上面及び/下面が連続する形状を少なくとも有する。
【0033】
局所上反角は、長手方向Lに沿って延びる、翼端装置Wの基準線を基準とする。本構成において、局所上反角は、その各点で局所上反角が求められる基準線に沿って延びる接線と、固定線との間の角度である。具体的には、航空機座標系KS−FのX−Z平面上に位置する、翼端装置Wの断面の重力の中心点をつないだ線である。固定線は、航空機座標系KS−FのY軸に平行する線である。
【0034】
本発明においては、長手方向Lは、前述の基準線と同じであってもよい。本発明による翼端装置Wの形状の説明においては、翼端装置Wの局所座標系KS−Wが参照されるが、この座標系は、翼端装置Wの長手方向Lにおける延伸経路上のポイントにおいて局所的に形成されている。
【0035】
翼端装置Wの局所座標系KS−Wに含まれる軸は、局所スパン方向SW−W、局所翼端装置厚さ方向WD、及び航空機座標系KS−Fの長手方向軸Xに平行する局所翼端装置翼弦方向WTである。軸の方向、及び翼端装置Wの局所座標系KS−Wの原点位置は、翼端装置Wの各ポイントで最小の断面積を有する断面に基づいて定義できる。ここで、局所座標系KS−Wの原点は、各断面に位置するその断面の重力中心点である。そして、局所翼端装置翼厚方向WD及び局所翼端装置翼弦方向WTは各ポイントで最小の断面積を有する断面に位置する。
【0036】
本構成においては、長手方向Lは、最小の断面積を有する断面の重力中心点をつないだ線である。そして、局所翼端装置厚さ方向WD及び局所翼厚装置翼弦方向WT、又は局所翼厚方向FD及び局所翼弦方向FTは、最小の断面積を有する断面に位置する。
【0037】
本発明の一実施形態においては、局所翼端装置翼弦方向WTに延びる翼端装置翼弦長、及び局所翼端装置厚さ方向WDに延びる翼端装置厚さが、翼端装置の長手方向Lにおいて連続的に減少する。
【0038】
本発明においては、決定要因の「連続的」減少や、「連続的」増加という用語は、その決定要因を基準とする。つまり、前述の実施形態においては、各基準線に沿って単調に減少又は増加する翼端装置厚さである。本構成においては、決定因子の減少又は増加の推移は捩れを含んでいてもよい。
【0039】
本発明による翼端装置Wの別の決定要因となる特性として、後縁後退角とも呼ばれる後縁50の局所後退角は、付け根E1から先端部E2への経路において連続的に増加する。もしくは、付け根1から先端部E2の前の(内側の)スペース又は領域への経路において連続的に増加する。したがって、Z軸に対向するよう航空機Fを上から見た場合、翼端装置Wの長手方向Lに沿って後退角が増加しているため、後縁50は、後縁50の方向と航空機長手方向Xとの間の角度が連続的かつ単調に減少するよう湾曲している。本構成においては、後縁50の形状は、翼端装置の長手方向Lに沿って見ると、増加的に後方に湾曲するよう数学的に微分可能である。翼端装置Wの一実施形態においては、後縁50は、接線が連続的となる又は曲率が連続的となる形状をなす。一実施形態においては、翼端装置Wの後縁50は、後縁50が少なくとも連続的であるように、1つ又は複数の位置において捩れを有する。
【0040】
本発明による翼端装置Wの設計において、前縁60の後退角は、付け根E1から第1の中間点61aへの前縁61の延伸経路においては連続的に増加し、第1の中間点61aから第2の中間点62aへの前縁62の延伸経路においては減少し、第2の中間点62aから少なくとも翼端装置W、W1、W2の先端部E2の前側(内側)の領域への前縁63の延伸経路においては連続的に増加する。第1の中間点61a及び第2の中間点62aは、前縁60の延伸経路の変化点である。
【0041】
翼端装置Wの一実施形態においては、前縁60の延伸経路が、接点連続性又は曲率連続性を有する。別の実施形態においては、翼端装置Wの前縁60が、前縁60が少なくとも連続的な形状を有するように、1つ又は複数の位置において捩れを有する。
【0042】
図4に示す本発明による翼端装置Wの一実施形態においては、前縁63の第3のセクションB3内のサブセクションB4は、前縁60と後縁50とが外端点で接合して先端部E2を形成すべく構成される。サブセクションB4の前までのセクションB3の局所後退角と比べて、サブセクション64の起点63aから端部E2にかけての前縁60の局所後退角が著しく増加している。そのため、翼弦長が大幅に減少している。このようなサブセクションB4は、長手方向Lから見て、翼端装置Wの全長の3〜8%の長さを有する長手方向のセクションに沿って延び得る。
【0043】
本発明の別の実施形態においては、長手方向Lから見て、前縁60の後退角が増加するのはサブ領域B4までの部分であってもよい。このサブ領域B4の長さは、翼端装置W、W1、W2の長手方向Lの全長の8%以下である。例えば、前縁のサブセクションB4における延伸経路は、本発明による第3の領域B3のサブ領域B4とは異なるものであってもよい。例えば、サブ領域B4において、前縁60の後退角が再度増加してもよい。または、サブ領域B4の後退角が一定であってもよい。しかし、いずれの場合でも、長手方向Lから見て、翼端装置W、W1、W2の先端部E2の前のサブ領域B4にかけては、前縁60の後退角が増加する。ここで、先端部E2の前の領域は、翼端装置W、W1、W2の長手方向Lに延びる全長の8%以下である長さを有し、全長の最も外側に設けられる。しかし、別の実施形態においては、図5に示すとおり、サブ領域B4を設けていなくともよい。
【0044】
中間点61a及び62aにより、翼端装置Wは3つの領域B1、B2及びB3にスパン方向に分割される。各領域の境界面は、航空機座標系KS−FのX−Z面(図4)、又は局所翼端装置厚さ方向WD及び局所翼端装置翼弦方向WTに沿った面である。第1の領域B1は付け根E1と第1の変化点61aとの間に位置し、第2の領域は第1の変化点61aと第2の変化点62aとの間に位置し、第3の領域は第2の変化点62aと先端部E2との間に位置する。
【0045】
付け根E1と第1の変化点61aとの間に位置する第1のセクションの、翼端装置W、W1、W2の長手方向の長さは、翼端装置W、W1、W2の長手方向の全長の15〜50%である。さらに、第1の変化点61aと第2の変化点62aとの間に位置する第2のセクションB2の長手方向の長さは、翼端装置W、W1、W2の全長の5〜30%である。また、第2の変化点62aと先端部E2との間に位置する第3のセクションB3の長手方向の長さは、翼端装置W、W1、W2の全長の15〜70%である。
【0046】
前縁60の第1のセクションB1の後退角は、所定の変化点に到達するまで著しく増加する。対応する後縁の後退角の増加が少ないため、この領域の形状翼弦長は著しく減少している。続く第2のセクションB2における前縁後退角はわずかに減少し、次の変化点から翼端装置の外側部分にかけて再度連続的に増加する。
【0047】
本発明による前縁60の延伸経路の特徴及び構成においては、第3のセクション内の後退角を変化させることにより、翼端装置W全体の設計を変化させることができる。これにより、翼Tに関連する空力効果を得ることができ、航空機Fに好影響を与えることができる。前縁60の後退角を変更または調整することにより、長手方向Lの形状翼弦長の推移が調整でき、設計境界条件及び空力要求を効果的に満たすことができる。本発明による解決策に基づいて前縁の後退角を変化させることにより、翼端装置Wの形状翼弦長をスパン方向又は長手方向Lに沿って変化させることができ、境界条件及び要件に合うよう構成することができる。さらに、前縁60の後退角を変化させることにより、翼端装置Wのスパン長を変化させることができる。また、長手方向Lに沿って形状翼弦長も変化させることにより、翼端装置Wの表面を変化させることができる。さらに、前縁60の延伸経路に2つの変化点61a及び62aを設けることにより、翼端装置Wにおける局所翼端装置スパン方向SW−W及び局所翼端装置翼弦方向WTの流れ成分を、設計境界条件を考慮して様々な流れ条件に応じて設定可能となる。設計境界条件としては、翼端装置Wの総面積、総重量、揚力係数、翼端装置Wの各領域の局所表面荷重等が挙げられる。
【0048】
本構成においては、第3の領域B3における前縁60の後退角の増加を、第1の領域B1における前縁60の後退角の増加よりも小さくしてもよい。この場合、翼端装置Wのスパン長の増加、及び翼Tの空力抵抗の減少が可能となる。
【0049】
例えば図5に示す実施形態においては、翼端装置翼弦長が、最長である付け根E1において100%とすると、領域B3の先端部がその5〜25%の長さとなるよう付け根E1から先端部に向かって減少する。この構成においては、先端部E2が、直線状又は曲線状をなす先端部を形成する。また、縁部67は、捩れ68を介して前縁60の第3の領域B3に接合されていてもよい。縁部67は、航空機の長手方向軸Xに平行であってもよい。さらに、本発明による翼端装置Wの構成においては、スパン方向における第1の領域B1、即ち翼端装置の内側部における長手方向Lにおける断面積が大幅に縮小されている。その結果、本発明による翼端装置Wにおいては、有効スパン長が同じであっても、表面積が従来の翼端装置に比べて大幅に小さくなっている(図4及び5参照)。
【0050】
この特徴により、本発明による翼端装置Wにおいては、従来の翼端装置に比べて最大設計高さを低くすることができる。本発明においては、翼端装置W、W1、W2の付け根E1から先端部E2に延びる長手方向Lから見て、付け根と先端部の最も外側の点との間の距離が、付け根E1の局所形状翼弦長の20〜80%となるよう構成されている。この付け根Eと先端部E2の最も外側の点との間の距離は、翼端装置Wの局所座標系KS−Wの局所翼端装置厚さ方向WDにおいて定義される。
【0051】
本発明による翼端装置Wの形状により、空力的荷重の少ない翼端装置を提供することが可能となる。この効果は、一般的な設計パラメータである捩れたキャンバーによるものだけでなく、スパン方向において内側に位置する領域B1の局所翼弦長が大幅に減少していることにより主にもたらされる。前縁60の後退角の推移が二度変化することにより、本発明による翼端装置Wのスパン長は、前縁の後退角が連続的に増加する従来の翼端装置に比べて大幅に増加している。したがって、スパン長の増加及び湿潤面積の減少により、誘導抗力及び形状抗力に関する空力効果が得られる。さらに、本発明による翼端装置Wの形状により、従来の解決策と同等の空力効率を維持しながら、翼Fへの構造的荷重を減らすことができる。
【0052】
構造的利点と釣り合うよう本発明による翼端装置Wの形状高さ及び/又はスパン長を増加させた場合、それにより生じる空力荷重分布及び湿潤面積により、従来の翼端装置と比較して、全体的抗力を向上させることができる。
【0053】
本発明による翼端装置Wは、既存の航空機の改造や再整備に用いることもでき、翼Tの構造を変更させることなく、もしくはわずかな変更を加えるだけで、空力性能を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後縁(50)の局所後退角が、翼端装置(W(W1、W2))の付け根(E1)から先端部(E2)への後縁(50)の延伸経路に沿って連続的に増加することと、
前縁(60)の局所後退角が、付け根(E1)から第1の中間点(61a)への前縁(60)の延伸経路において連続的に増加し、第1の中間点(61a)から第2の中間点(62a)への延伸経路において連続的に減少し、第2の中間点(62a)から少なくとも翼端装置(W(W1、W2))の先端部(E2)の前の領域への延伸経路において連続的に増加することとを特徴とする、
付け根(E1)及び先端部(E2)を有するとともに翼端装置(W(W1、W2)の局所上反角が付け根(E1)から先端部(E2)にかけて連続的に増減する、翼(T(10a、10b))の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項2】
前縁(60)の局所後退角が翼端装置(W(W1、W2))の第2の中間点(62a)から先端部(E2)への延伸経路において連続的に増加する請求項1に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項3】
前縁(60)の局所後退角が翼端装置(W(W1、W2))の第2の中間点(62a)からサブ領域(B4)への延伸経路において連続的に増加し、該サブ領域(B4)が先端部(E2)の前に設けられるとともに、付け根(E1)から先端部(E2)への間に長手方向(L)に延びる長さである翼端装置(W(W1、W2))の全長の8%以下の長さを有して全長の最も外側に設けられる請求項1に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項4】
翼端装置(W(W1、W2))の局所上反角の増加又は減少が、付け根(E1)における局所スパン方向(SW−W)と先端部(E2)における局所スパン方向(SW−W)との間の角度が30〜90度となるべく構成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項5】
翼端装置(W(W1、W2))の付け根(E1)から先端部(E2)へ延びる長手方向(L)から見て、付け根(E1)と先端部(E2)の最も外側の点との間の距離が付け根(E1)における局所形状翼弦長(WT)の20〜80%の長さであり、付け根(E1)と先端部(E2)の最も外側の点との間の距離が、翼端装置(W)の局所座標系(KS−W)の局所翼端装置厚さ方向(WD)において定義される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項6】
付け根(E1)と第1の変化点(61a)との間に位置する第1のセクションの、翼端装置(W(W1、W2))の長手方向(L)の長さが、翼端装置(W(W1、W2))の長手方向(L)の全長の15〜50%の長さである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項7】
第1の変化点(61a)と第2の変化点(62a)との間に位置する第2のセクション(B2)の長手方向(L)の長さが、翼端装置(W(W1、W2))の全長の5〜30%の長さである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項8】
第2の変化点(62a)と先端部(E2)との間に位置する第3のセクション(B3)の翼端装置(W(W1、W2))の長手方向(L)の長さが、翼端装置(W(W1、W2))の全長の15〜70%の長さである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項9】
第3のセクション(B3)の前縁(63)が外端(E2)において後縁に接合される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の翼端装置(W(W1、W2))を備える翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−525292(P2012−525292A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507646(P2012−507646)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002663
【国際公開番号】WO2010/124877
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany