説明

航空機冷却用システム

航空機冷却用システム(10)は、筐体(14),前記筐体(14)に形成された冷却用空気吸気口(18)、及び冷却用空気が前記冷却用空気吸気口(18)を通って流れることができる、前記筐体(14)の側面(24,26,28,30)に設置された複数の熱交換器(32,34,36,38)を具備する冷却部材(12)を具備する。
冷却用空気供給路(40,40’)は、航空機尾部面に形成された冷却用空気供給口(44,44’)と前記冷却部材(12)とを前記冷却用空気吸気口(18)を接続する。
冷却用空気排出路(46)は、前記冷却部材(12)の前記熱交換器(32,34,36,38)と冷却用空気排気口(50)とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機内に取り付けられている燃料電池システムを冷却するのに適した航空機冷却用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは低排気で高効率な電流の発生を可能にする。このため、例えば自動車工学や航空学のような多種の移動用途において、電気エネルギーを発生するために燃料電池システムを用いる努力が現在されている。例えば航空機では、電力を供給するために現在用いられている機内の発電機、及び主エンジン又は補助エンジン(APU)により動かされる発電機を、燃料電池システムと置き換えることが考えられる。さらに、燃料電池システムは、航空機に予備電力を供給するため、及びこれまで予備電力システムとして用いられてきたラムエアータービン(RAT)を置き換えるために用いられることができる。
【0003】
電気エネルギーに加えて、使用中の燃料電池は熱エネルギーを発するため、該熱エネルギーは燃料電池のオーバーヒートを防ぐために冷却用システムを用いて燃料電池から取り除かれなければならない。故に、例えば機内電力供給のため、航空機内に取り付けられた燃料電池システムは、電気エネルギーに対する高需要を満たせるように設計されなければならない。しかしながら、高い電気エネルギー発生能力を有する燃料電池は、大量の熱エネルギーも発生し、それ故に、高い冷却の必要性を有する。さらに、発熱し、信頼性のある動作様式を保証するために冷却されなければならない多数の他の専門装置が航空機内には設置されている。例えば、これらの専門装置は、航空機の空調ユニットや電子部品を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い周辺温度でも、航空機内の発熱装置、例えば燃料電池から確実かつ効果的な高熱量除去ができる小型構造の航空機冷却用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明に係る航空機冷却用システムは、筐体、該筐体内に形成される冷却用空気吸気口、及び該筐体の側面に設置され、該冷却用空気吸気口を通じて供給される冷却用空気が流れることができる複数の熱交換器を具備する冷却部材を具備する。例えば、該冷却部材は、ほぼ正六面体形状又は直方体の筐体を具備できる。そして、前記冷却用空気吸気口は該筐体の側面に形成されることができ、一方で熱交換器は複数又は該筐体の他の側面すべてに設置される。
【0006】
この小型ユニットの容積に対して、前記冷却部材は広い伝熱面積を有し、それ故に優れた冷却能力において注目に値する。さらに、広い伝熱面積に対する冷却用空気の分配により、前記冷却部材を通過する冷却用空気流の圧損は、有利な方法で低く保たれることができる。従って、本発明に係る航空機冷却用システムは、極めて効果的な方法で動作可能で、高熱量でも航空機内の発熱装置から除く能力がある。
【0007】
本発明に係る航空機冷却用システムの冷却用空気供給路は、航空機の尾部部分に形成される冷却用空気供給口と、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口とを接続する。ここで、“航空機の尾部部分”は、航空機の翼より尾部側に設置された航空機領域を意味する。該冷却用空気供給路は、パイプにより範囲を画定されることができる。しかしながら、前記冷却部材、及び/又は前記冷却用空気供給口に関連する前記冷却部材の空気吸気口の所望の対応する配置を考慮して、状況に応じて、該冷却用空気供給路の範囲を画定するためのパイプを省くこともできる。
【0008】
航空機が飛行中には、通常、相対的に高い気圧が、航空機の機首部分にかかる。これに対し、通常、低い気圧が、航空機が飛行中に空気が周りを流れる胴体外形に沿って発達する。結果として、航空機の機首部分にかかる気圧より低いが、空気が周りを流れる胴体形状に沿って生じる前記低圧より高い気圧が、航空機の尾部部分に形成された冷却用空気供給口にかかる。従って、該冷却用空気供給口領域での圧力状態は、外気を該冷却用空気供給口と前記冷却用空気供給路とを通して、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口へと運ぶために有利に用いられることができる。同時に、航空機の尾部部分に形成される冷却用空気供給口は、航空機飛行時により高い気圧にさらされる航空機の機首部分の冷却用空気供給口よりも付着物の影響を受けにくい。さらに、航空機の尾部部分に形成された冷却用空気供給口は、わずかな付加空力抵抗を生じさせるだけである。
【0009】
最後に、本発明に係る航空機冷却用システムは、前記冷却部材の前記熱交換器と冷却用空気排気口とを接続する冷却用空気排出路を具備する。その結果、該冷却用空気排出路は、前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後に暖まる冷却用空気を周囲中へ送り戻すために用いられる。前記冷却用空気供給路のように、該冷却用空気排出路も、パイプにより範囲を画定することができる。しかしながら、航空機内の前記冷却部材の所望の対応する配置を考慮して、状況に応じて該冷却用空気排出路の範囲を画定するためのパイプを省くこともできる。
【0010】
前記冷却用空気排出路は、航空機が飛行中に前記冷却用空気供給口にかかる気圧よりも低い気圧が航空機が飛行中に広がる航空機の領域に作られるのが好ましい。これにより、前記冷却用空気供給口にかかる気圧と前記冷却用空気排気口領域に広がっている気圧との間の気圧差は、外気を前記冷却用空気供給口と前記冷却用空気供給路とを通して、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口へと送るため、及び前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後のその冷却用空気を、前記冷却用空気排出路と前記冷却用空気排気口とを通して周囲へ排出し戻すために有利に用いることができる。従って、本発明に係る航空機冷却用システムは、冷却用空気送り装置を動かすための電力に対する需要を減らせる点において注目に値する。
【0011】
前記冷却部材は、前記冷却用空気吸気口の領域に設置された送風機を具備することが好ましい。該送風機は、半径流送風機、斜流送風機、または奥行きのない冷却部材の場合には、横流送風機として構成されることができる。さらに、軸流送風機のような送風機の構成が考えられる。好ましくは半径流送風機として構成された送風機は、前記冷却用空気供給路を通り前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口内へながれる空気を吸い込み、そして(半径流送風機の回転軸に対する)半径方向へ、前記冷却部材筐体の側面に設置された前記熱交換器へ該空気を強制的に流すことに用いられる。該送風機は圧縮機として構成されることができる。該送風機を用いることで、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口への冷却用空気の適切な供給が、たとえ前記冷却用空気供給口と前記冷却用空気排気口の領域の気圧状態が、例えば航空機の地上操作中に、前記冷却部材を通して冷却用空気の適切な輸送を許さない場合であっても保証される。
【0012】
本発明に係る航空機冷却用システムの前記冷却用空気供給路内に、更なる送風機が設置されることができる。前記冷却部材送風機のように、この更なる送風機は、半径流送風機、斜流送風機、又は横流送風機としても構成されることができる。さらに、軸流送風機としてのこの更なる送風機の構成が考えられる。この更なる送風機は、冷却用空気を、前記冷却用空気供給路を通して、前記冷却部材筐体内に形成される前記冷却用空気吸気口の方向へ送るために用いる。この更なる送風機は、たとえ前記冷却用空気供給口及び/又は前記冷却用空気排気口の好ましくない気圧条件の場合でも、及び/又は前記冷却部材送風機の不具合の場合でも、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口への冷却用空気の適切な供給を可能とするような高いシステム冗長性を保証する。すなわち、前記航空機のすべての操作状態において、例えば地上操作時においても、前記航空機冷却用システムの最適な動作が保証される。さらに、例えば前記航空機の地上操作時において、冷却用空気を送り込むための前記冷却部材の送風機の替わりとしてこの更なる送風機を用いることができ、これにより、状況に応じて騒音発生を減らすことが可能になる。
【0013】
本発明に係る航空機冷却用システムの前記冷却用空気供給口は、航空機の尾部面の領域に設置できる。航空機が飛行中には、航空機の尾部面の領域に設置される冷却用空気供給口に入る前の冷却用空気は、飛行方向とは逆に、航空機の外形に沿って流れる。結果として、航空機尾部面の領域に設置された冷却用空気供給口は、航空機が飛行中に凍結するという危険性が低い。前記冷却用空気排気口は、胴体下部外板の領域に設置できる。好ましくは、前記冷却用空気排気口は、前記冷却部材又は少なくともそれらの周辺の近くに位置する胴体下部外板の部分に設置される。航空機尾部面の領域に設置された冷却用空気供給口と胴体下部外板の領域に設置された冷却用空気排気口は、前記冷却用空気供給口と前記冷却用空気排気口の間の気圧差を最適な利用を可能にする。さらに、特に付着物に対する優れた防御が保証される。
【0014】
本発明に係る航空機冷却用システムの構成の他の形態では、前記冷却用空気供給口は、航空機のエンジンパイロン又は舵ユニットの領域に設置されることができる。例えば、前記冷却用空気供給口は、舵ユニットの前端領域、又は航空機の尾部において胴体とエンジンを固定するのに用いられるエンジンパイロンの前端領域に設置されることができる。本発明に係る航空機冷却用システムはただ一つの冷却用空気供給口を具備することができる。しかしながら、必要ならば、二つ以上の冷却用空気供給口を設置することも可能である。例えば、それぞれエンジンと胴体を固定する二つのエンジンパイロンは、それぞれ冷却用空気供給口を設置されることができる。好ましくは、それぞれの冷却用空気供給口は、対応する冷却用空気供給路によって前記冷却部材の前記空気吸気口に接続される。
【0015】
前記冷却用空気供給路は、ラムエアー路形式に構成されることができる。従って、前記冷却用空気供給口は、例えばNACA(全米航空諮問委員会)冷却用空気供給口のように設計されることができる。さらに、ラムエアー路として構成された前記冷却用空気供給路は、拡散器を具備することができる。これにより、航空機が飛行中に、前記冷却用空気供給口を通り前記冷却用空気供給路へ入る冷却用空気は、前記拡散器領域で減速した流速で、前記冷却用空気供給路を流れる。結果として、前記拡散器内で、前記気圧の動的成分は、部分的に静圧に変換され、その結果、ラム圧とも呼ばれる、外部気圧と比較される超過静圧が発生する。該ラム圧は、前記冷却部材方向、及び/又は前記冷却部材の前記熱交換器を通る前記冷却用空気流を引き起こす及び/又は促進する。
【0016】
前記冷却用空気供給口を通る冷却用空気流を制御するために、前記冷却用空気供給口は、例えばフラップ形式に構成された閉鎖部材を備えられることができる。必要ならば、該閉鎖部材は、前記冷却用空気供給口を閉じるように、又は前記冷却用空気供給口の所望の通気流の断面を開けるように工夫されていることが好ましい。該閉鎖部材は、前記冷却用空気供給口の通気流の断面を制限なく調整できることが好ましい。同様にして、前記冷却用空気排気口も、例えば同様のフラップ形式の閉鎖部材を具備されることができる。前記冷却用空気排気口の閉鎖部材は、前記冷却用空気供給口の前記閉鎖部材の様に、必要ならば、閉じるように、又は完全に若しくは部分的に前記冷却用空気排気口の通気流の断面を開けるように工夫される。前記冷却用空気排気口の通気流の断面の制限ない調整が、同じくできることが好ましい。前記閉鎖部材を用いて、前記冷却用空気供給口領域と前記冷却用空気排気口領域での好ましい気圧状態の調整が促進できる。
【0017】
前記冷却用空気供給口は、外面的には平坦で、正面向きにはスクープ型冷却用空気供給口が設置された形式として構成されることができる。このような前記冷却用空気供給口の設計は、特に前記冷却用空気供給口が航空機の舵ユニット領域または航空機のエンジンパイロン領域に設置されているときには、目的にかなっている。
【0018】
前記冷却用空気供給路内に、冷却用空気流偏向装置が設置されることができる。第一位置では、該冷却用空気流偏向装置は、前記冷却部材の前記冷却用空気吸気口の方向へ前記冷却用空気供給路を流れる冷却用空気流を導くように工夫されたものであることが好ましい。第二位置では、他方で該冷却用空気流偏向装置は、その冷却部材を通り越す様に、例えば更なる冗長冷却部材方向へ前記冷却用空気供給路を流れる冷却用空気流を導くように工夫されたものであることが好ましい。該更なる冗長冷却部材は前記冷却部材と同様の構成にできる。例えば、本発明に係る航空機冷却用システムの前記冷却部材の不具合の場合には、該冷却用空気流偏向装置は、前記冗長冷却部材方向へ前記冷却用空気供給路を流れる該冷却用空気流を導くために第二位置へ移り、これにより、前記冷却部材の不具合の場合でも、本発明に係る航空機冷却用システムの適切な機能が保証される。該冷却用空気流偏向装置は、電動モータによって第一位置と第二位置の間を動くことができる。冗長性の理由から、必要であれば、例えば一つの共通のシャフト上に設置される二つの電動モータが該冷却用空気流偏向装置を第一位置と第二位置の間を動かすために設置されてもよい。
【0019】
さらに、本発明に係る航空機冷却用システムは、前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後にその冷却用空気内に蓄えられる熱を利用するための装置を具備することができる。前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後にその冷却用空気内に蓄えられる熱を利用するための該装置は、例えばエンジン予熱装置、燃料予熱装置、又は航空機エンジンに流入させる水のための装置とすることができる。前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後に暖められるその冷却用空気は、例えば、航空機の尾部内に設置されるエンジンを直接予熱するために用いることができる。あるいは、前記エンジン予熱装置内で、冷却用空気に蓄えられた前記熱は、例えば熱交換器を用いて、該エンジンを予熱するためのさらなる媒体へ単に伝導されてもよい。同様に、前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後に暖められるその冷却用空気は、例えば、航空機のエンジン又は航空機内に具備される燃料電池へ供給される燃料を直接予熱するために用いることができる。しかしあるいは、前記燃料予熱装置内で、冷却用空気に蓄えられた前記熱は、例えば適切な熱交換器を用いて、該燃料を予熱するためのさらなる媒体へ単にもう一度伝導されることができる。航空機エンジンに流入させる水を加熱するための前記装置内で、前記冷却部材の前記熱交換器を流れた後にその冷却用空気内に蓄えられる熱は、直接又は間接的にエンジンに流入させる水を予熱し、水注入装置を水運搬パイプの凍結から守る。
【0020】
本発明の前記航空機冷却用システムの構成において特に好ましくは、前記冷却部材の少なくとも一つの熱交換器は、燃料電池の冷却用回路に組み込まれ、例えば、冷却用回路は、燃料電池使用中に発生する余熱を燃料電池から取り除くのに用いられる。その高い冷却能力により、本発明に係る航空機冷却用システムは、燃料電池使用中に発生する高い熱量を燃料電池から確実に除くことができる。この場合、前記冷却部材の前記熱交換器は、前記冷却部材の一以上の熱交換器に不具合が発生した場合でも、前記燃料電池システムの適切な冷却を保証するための冗長装置の形を取ることができる。
【0021】
さらに、これらの追加又は代替の前記冷却部材の一以上の熱交換器を、航空機空調システムの冷却用回路、エンジン冷却用回路、水分凝縮と水生成のための冷却用回路、及び/又は航空機内の電子部品を冷却するための冷却用回路に組み込むことができる。従って、例えば第一に必要な冷却用エネルギーを航空機内の燃料電池システムに供給するために用いることができる本発明に係る航空機冷却用システムは、航空機内の他の冷却用システムと有利に組み合わせることができ、これによって冷却能力を他の消費物へも提供することができる。
【0022】
原則として、前記冷却部材の前記熱交換器は、航空機内に具備される様々な冷却用システムの冷却用回路に直接組み込むことができる。しかし、あるいは、冷却用エネルギーの中間冷却器への移送も考えられる。中間冷却器の使用は、特に前記冷却部材の熱交換器が航空機内に具備される冷却用システムの冷却用回路、例えばオイル冷却用回路、に直接組み込まれていない場合には安全理由のために重要である。特に前記冷却部材の前記熱交換器がエンジン冷却用回路に組み込まれている場合、そのラインの配置は、すべての操作状態において適切な冷却機能が保証され、例えばエンジン部品等によるそのラインの損傷がないようにすべきである。本発明に係る航空機冷却用システムは、その冷却機能に重点をおいた要求に基づいて設計することができ、モジュラー方式に沿って設計することができる。さらに、このシステムをシステムの周囲構造に最適化できる。
【0023】
さらに、本発明に係る航空機冷却用システムは、エンジンパイロンで気流に影響を与える装置を具備することが好ましい。気流に影響を与える前記装置は、前記冷却用空気排出路及び/又は前記冷却用空気排気口に接続することができる。あるいは、気流に影響を与える前記装置は、前記熱交換器を出て行く冷却用空気を受け取り、その冷却用空気を一以上のエンジンパイロンへ送るために、前記冷却部材の前記熱交換器に直接接続することができる。エンジンパイロン領域での気流への意図した影響のおかげで、騒音による周囲への影響の有利な低減を実現できる。
【0024】
添付図面を参照に本発明に係る航空機冷却用システムの三つの実施態様の詳細な説明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】航空機冷却用システムの冷却部材の三次元図である。
【図2】航空機尾部面の領域に設置された冷却用空気供給口を有する航空機冷却用システムである。
【図3】航空機尾部面の領域に設置された冷却用空気供給口と冷却用空気供給路内に設置された軸流送風機とを有する航空機冷却用システムである。
【図4】舵ユニットの領域に設置された冷却用空気供給口を有する航空機冷却用システムである。
【図5】エンジンパイロンの領域に設置された二つの冷却用空気供給口を有する航空機冷却用システムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、図2〜5に描かれている航空機冷却用システム10で用いられるのに適した冷却部材12を示している。前記冷却部材12は直方体(実質的に立方体形)の筐体14を具備する。前記冷却部材12の前方側面16は、冷却用空気吸気口18を具備する。前記冷却用空気吸気口18の領域内には、半径流送風機20が設置されている。半径流送風機20は、図1中のPin矢印として示される前記冷却用空気吸気口18方向へ冷却用空気を吸い込み、そして図1中のPout矢印として示される半径流送風機20の回転軸22に関して半径方向外向きに冷却用空気を強制的に流すために用いられる。前方側面16に隣接する前記冷却部材12の側面24、26、28、30はそれぞれ熱交換器32,34,36,38を具備する。前記冷却用空気吸気口18から前記冷却部材12の前記筐体14へ通過する冷却用空気は、前記熱交換器32,34,36,38を流れ、その際、比較的低い気圧損失で、冷却用エネルギーを前記熱交換器の冷却路を流れている冷却されるべき媒体へ伝達する。
【0027】
図2〜5が示すように、前記航空機冷却用システム10の冷却部材12は胴体の尾部部分に設置される。この冷却部材12の配置は、航空機のAPUを置き換える、図中に示されてない燃料電池システムを冷却するために使われる前記航空機冷却用システム10の目的に適っている。そのため、従来APUを受け入れるために使われていた胴体の尾部部分の設置空間は、前記航空機冷却用システム10の前記冷却部材12のための設置空間として用いられることができる。
【0028】
図2に示される前記航空機冷却用システム10には、前記冷却部材12の前記冷却用空気吸気口18が、ラムエアー路形式に構成された冷却用空気供給路40に接続される。前記冷却用空気供給路40は、航空機尾部面42の領域に形成された冷却用空気供給口44へ通じている。前記冷却用空気供給口44は、前記冷却用空気供給口44を閉め又は所望の可変気流断面に開くことに用いられるフラップ形式に構成された閉鎖部材を具備する。
【0029】
前記冷却用空気供給路40から前記冷却部材12へ供給された前記冷却用空気は、前記冷却部材12の前記熱交換器32,34,36,38を流れた後、冷却用空気排出路46から胴体下部外板48内に形成された冷却用空気排気口50へ導かれる。前記冷却用空気供給口44のように、前記冷却用空気排気口50は、前記冷却用空気排気口50を閉め又は所望の可変気流断面に開くことに用いられるフラップ形式の閉鎖部材を具備する。
【0030】
航空機の飛行時には、より高い気圧が、胴体下部外板48内に形成される前記冷却用空気排気口50よりも、航空機の前記尾部面42の領域に設置された前記冷却用空気供給口44にかかる。この気圧差は、前記冷却用空気を前記航空機冷却用システム10の前記冷却部材12へ送るために有利に用いることができる。航空機の地上操作時には、前記冷却部材12の前記半径流送風機20が、前記冷却部材12へ冷却用空気の適切な供給を保証する。前記航空機の尾部面42の領域に形成された前記冷却用空気供給口44は、前記航空機の機首部分に作成された冷却用空気供給口よりも付着物の影響を受けにくい。さらに、前記冷却用空気供給口44の領域の気流状態のため、すなわち前記冷却用空気供給口44に入る前に前記冷却用空気は飛行している方向と逆方向に流れるため、凍結の危険性は減る。最後に、前記航空機の尾部面42の領域に設置された前記冷却用空気供給口44は、低付加空力抵抗を有することができる。
【0031】
前述したように、前記航空機冷却用システム10は、航空機内に具備される燃料電池システムの冷却用システムとして用いることができる。従って、前記冷却部材12の少なくとも二つの熱交換器32,34は、燃料電池を冷却する冷却用回路に組み込むことができ、前記熱交換器32,34は冗長冷却用装置としての機能を果たす。結果として、一つの熱交換器32、34の不具合でも、前記燃料電池システムと特に燃料電池システムに具備される前記燃料電池の適切な冷却が、他方の熱交換器34,32により保証される。
【0032】
前記冷却部材12の残りの熱交換器36,38は、航空機空調システムとエンジン冷却用回路に組み込まれる。あるいは、前記熱交換器36,38は航空機内の電子部品を冷却するための冷却用回路、又は航空機内に具備される他の冷却用回路に組み込まれることができる。前記航空機冷却用システム10により発生される冷却能力は、航空機内の複数の消費物に供給することができる。前記熱交換器36,38は対応する冷却用回路に直接組み込まれることができる。しかしながら、安全の理由で必要であり、又は他の理由で望まれるのであれば、前記冷却部材12の前記熱交換器36,38も、冷却用エネルギーを中間冷却器を介して冷却用回路に間接的に伝導するために中間冷却器と熱的に連結されることができる。
【0033】
前記冷却用空気供給路40内には、図2中には示されてない冷却用空気流偏向装置が設置される。第一位置では、電気モータ駆動冷却用空気流偏向装置は、前記冷却部材12の方向へ、前記冷却用空気供給路40を流れる前記冷却用空気を導く。他方で第二位置では、該冷却用空気流偏向装置は、前記冷却用空気供給路40から前記冷却部材12を遮り、前記冷却用空気供給路40を流れる前記冷却用空気が、図2には示されてない冗長冷却部材12へ導かれることを確保する。結果として、前記冷却部材12の不具合の場合であっても、前記航空機冷却用システム10の適切な機能が保証される。
【0034】
前記冷却部材12の前記熱交換器32,34,36,38を流れた後に暖められる前記冷却用空気は、図5にのみ示され、航空機の尾部に設置される二つのエンジン52,54の予熱に用いられ、エンジン52,54に供給される燃料の予熱に用いられる。さらに、前記冷却部材12のエンジン32,34,36,38を流れることで加熱された前記冷却用空気は、水注入装置内で水を予熱し、その水はエンジン52,54へ注入され排気物を減らし、水注入装置の水輸送パイプの凍結を防ぐ。
【0035】
図3に示される前記航空機冷却用システム10は、さらに軸流送風機56が前記冷却用空気供給路40内に設置されている点で図2に示した配置と異なる。前記軸流送風機56は、前記冷却部材12の前記冷却用空気吸気口18の方向へ、前記冷却用空気供給路40を通って冷却用空気が流れるよう促進する。従って、前記軸流送風機56は、前記冷却部材12の前記軸流送風機20に関して特別な冗長性を備え、前記冷却部材12へ冷却用空気を送るために使われる前記冷却用空気供給口44と前記冷却用空気排気口50の気圧差がない航空機の地上操作中にも、適切な冷却用空気流を保証する。その他の点は、図3に示される航空機冷却用システム10の構造と作動方法は、図2の対応する配置の構造と動作方式に相当する。
【0036】
図2及び図3に示される配置と異なって、図4で示される前記航空機冷却用システム10内の前記冷却用空気供給口44は、航空機舵ユニット58の前端領域に設置される。前記冷却用空気供給口44は、外面的に平坦なスクープ型冷却用空気供給口形式に構成されることができ、またピトー、及び/又はラムエアー吸気口形式を取ることができる。一方で、前記冷却用空気排気口50は、航空機尾部面42の領域に位置される。この配置も、航空機飛行時において、前記冷却用空気供給口44に係る気圧と前記冷却用空気排気口50の領域に広がる気圧との間の差が、前記冷却部材12へ該冷却用空気流を送るために使われる。その他の点は、図4に示される前記航空機冷却用システム10の構成と作動方法は、図2及び図3に示される配置の構成と作動に一致する。
【0037】
最後に、図5に示される前記航空機冷却用システム10は、前記航空機冷却用システム10が、航空機の舵ユニット58の領域に設置される冷却用空気供給口44の代わりに、エンジン52,54を備える二つのパイロン60,62に形成された二つの冷却用空気供給口44,44’を具備する点で、図4の対応する配置と異なる。前記冷却用空気供給口44,44’は、二つの冷却空気供給路40,40’によって前記冷却部材12の前記冷却用空気吸気口18に接続される。図4に示された配置と同様に前記冷却用空気の放出は、航空機尾部面42の領域に形成された冷却用空気排気口50を通して行われる。ここでもまた、航空機飛行時において、前記冷却用空気供給口44,44’と前記冷却用空気排気口50の間の気圧差が、該冷却用空気流を前記冷却部材12へ送るために使われる。また同時に、例えば空気排出により排出される空気の一部を、エンジンキャリアにおける気流に影響を与えるために用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機冷却用システム(10)を有する航空機であって、冷却部材(12)、該冷却部材(12)の冷却用空気吸気口(18)と前記航空機の尾部面(42)領域に形成された冷却用空気供給口(44)とを接続する冷却用空気供給路(40)、及び冷却用空気排気路(46)を具備し、
前記冷却部材(12)は、筐体(14)、該筐体14内に形成される冷却用空気吸気口(18)、及び該筐体(14)の側面(24、26、28、30)に配置され、該冷却用空気吸気口(18)を通じて供給される冷却用空気が流れる複数の熱交換器(32、34、36、38)を具備するものであり、
前記冷却用空気排出路(46)は、前記冷却部材(12)の前記熱交換器(32、34、36、38)と、胴体下部外板(48)領域に設置され、航空機の飛行中において、前記航空機の前記尾部面(42)領域に形成された前記冷却用空気供給口(44)より低い圧力がかかる冷却用空気排出口(50)とを接続するものであることを特徴とする航空機。
【請求項2】
前記冷却部材(12)は、さらに前記冷却用空気吸気口(18)領域に設置された送風機(20)を具備するものであることを特徴とする請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記冷却用空気供給路(40)内に、更なる送風機(56)が設置されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記冷却用空気供給路(40)が、ラムエアー路形式に構成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項5】
前記冷却用空気供給口(44)が、スクープ型空気供給口形式に構成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項6】
前記冷却用空気供給路(40)内に設置される冷却用空気流偏向装置であって、
第一位置では、前記冷却部材(12)の冷却用空気吸気口(18)の方向へ、該冷却用空気供給路(40)を流れる冷却用空気流を導き、
第二位置では、その冷却部材(12)を通り越す様に、該冷却用空気供給路(40)を流れる冷却用空気流を導くよう工夫されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項7】
前記冷却部材(12)の前記熱交換器(32、34、36、38)を流れた後、その冷却用空気内に蓄えられた熱を利用するための装置を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項8】
前記冷却部材(12)の前記熱交換器(32、34、36、38)を流れた後、その冷却用空気内に蓄えられた熱を利用するための前記装置が、エンジン予熱装置、燃料予熱装置、又は航空機エンジンに流入させる水を加熱するための装置であることを特徴とする請求項7に記載の航空機。
【請求項9】
前記冷却部材(12)の前記熱交換器(32、34、36、38)が、燃料電池システムの冷却用回路、航空機空調システムの冷却用回路、エンジン冷却用回路、水分凝縮と水生成のための冷却用回路、及び/または前記航空機に搭載された電子部品を冷却するための冷却用回路に組み込まれるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項10】
前記冷却用空気排出路(46)に接続される装置であって、エンジンパイロン(60、62)における気流に影響するための装置を特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の航空機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506185(P2011−506185A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538386(P2010−538386)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009882
【国際公開番号】WO2009/080168
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)