説明

航空機用可動性空気排出装置

本発明の対象は、航空機の航空力学的表面のレベルに取り付けた網(10)を具えた空気排出装置であり、同網は、航空機の航空力学的表面の延長部に配設された挿入区域で画定されている複数の開口部を含んでおり、同装置と網が通過用面と呼ばれている、空気の通過を許す平面で特徴付けられており、とりわけ故障の場合に、同装置の通過用面を増大させるために、少なくとも部分的に可動性部分を含むことを特徴としており、および網(10)が故障の無い正常な飛行の最も制約の厳しい条件の下で排出すべき空気量に応じて決められている通過用面を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の外部を流れる空気流束と接触する可能性を有する航空力学的表面のレベルに特に予定されている同航空機用可動性空気排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、通常、暖房、冷房または換気を特に保証するための空気系を具えており、同系は、少なくとも1の空気取り入れ口から、交換機または空気を必用とするか空気と機能する他の機器を通過する、少なくとも1の空気排出口までに延びている回路を含む。
【0003】
場合に応じて、この空気取り入れ口と空気排出口は、航空機の胴体、翼面または支柱の表面、そしてもっと一般的に航空機の航空力学的表面のレベルに配設してある。
【0004】
この空気系は、例えば同系の取り入れ口と排出口間の空気流束のエネルギーの相違のために、または同系の設置の制約で生じる航空力学上の形状の場合によってできる拡張のために、外部の空気流束と接触する表面のレベルにおける取り入れ口または排出口の設置に関連する表面の欠陥によって、必然的に乱気流の帯が発生する。
【0005】
そこで、顧客の期待に応えるために、航空機製造者は、燃料の消費に密接に繋がっている開発費を軽減すべく、その航空機の航空力学性を向上させることに努めている。
【0006】
この目的を達成すべく、空気系に関する最良の解決策は、同空気系の集合体の応力の損失をできるだけ抑えることにある。
【0007】
本発明は、空気系の一部分すなわち空気排出装置を最適にすることを狙いとしている。
【0008】
空気排出装置は、表面の欠陥に起因する空気を流さないか、または外部の空気流束の攪乱による空気を流すとき、乱気流の帯が発生することによって航空機の航空力学性に影響を及ぼす。
【0009】
他方では、空気流出口の中を経て通過するときの空気系の空気流束が蒙る応力の損失もまた、航空機の航空力学性に影響する。
【0010】
この諸マイナス的影響を相殺すべく、空気系の中を空気が流れるとき、空気流出口で航空機に供給されている推進力を無駄にしないことが追求されている。この意味で、理想は、推進力の規模を最適にするために、高度の排出速度で、外部の空気流束の方向に空気を放射することにある。
【0011】
従来の技術では、空気排出口には大きく分けて、2種の系統がある。
【0012】
第1の動力学的排出口の系統は、空気排出口のレベルで、膨らみが持たせてあって、航空機の後方に方向づけられている排出口を有する。
【0013】
この形状は、排気を外部の空気流束の方向に次第に誘導することによって、排出口が空気系の排気を保護する範囲で応力の損失を減少させられて、そのことによって排出空気で生じる推進力を無駄にしないことができる。
【0014】
しかしながら、この形状は、表面の著しい欠陥をもたらし、それによって大きな乱気流の帯が発生する。
【0015】
したがって、この解決策は、空気系から出る排出空気のエネルギーが外部の空気流束のエネルギーよりも強力であるとき、とりわけ排出空気が生じる推進力を無駄にしないことで得られる利点が、乱気流の帯の発生に関連する支障を相殺するときに推奨されている。
【0016】
本発明は、もっと正確に言って、露出型空気排出口である第2の系統に関する。動力学的排出口に比して、露出型空気排出口は、表面の欠陥と乱気流の帯の発生が少ない。
【0017】
しかしながら、この形状は、排出する空気が外部の空気流束の方向に方向づけられている限り、応力の損失と推進力を無駄にしないことが困難であるので、性能が劣る。
【0018】
通常、露出型排出口は、図1に示してあり、FR20070052546号文書に記載されている如く、網が具えてある。網の形による空気排出口10は、航空機の航空力学的表面の延長部に設置されている、挿入区域14で画定されている長方形の多数の開口部12を含んでおり、各開口部12は、一方では、矢印18で具象化されている排出空気を外部の空気流束20に近似する方向に誘導し、他方では、表面の欠陥の規模を縮小させるために傾斜している、内方に向けられているそれぞれ1の偏向板16を含んでいる。
【0019】
普及している1の実施態様では、空気排出口は、開口部12の複数の階層22を含んでおり、同階層は、網の力学的特性を高めることを可能にする少なくとも1の補強部すなわち通路24で分離されている。
【0020】
網型のこの空気排出口は、表面の欠陥を著しく軽減させることを可能にする。 しかしながら、同排出口の表面に関連する、まだ著しい応力の損失のレベルで満足すべきではない。
【0021】
別の制約によって、空気排出口は、稀な場合ではあるが、故障の場合と言うもっと重要な必用に応えるために大きくなければならない。したがって、空気排出口は、
正常な飛行の要求に応えるべく、通常、大きめであるので、応力の損失および表面に余計な欠陥をもたらして、航空機の航空力学上の性能を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明は、正常な飛行条件のために空気排出口の航空力学上の特性を最適にすることを可能にするが、故障の場合の必用に応える網型の空気排出装置を提案することによって、従来の技術欠陥を排除することを狙いとしている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そのために、本発明は、航空機の航空力学的表面のレベルに取り付けた網を具えた空気排出口を対象としていり、同網は、航空機の航空力学的表面の延長部に配設してある挿入区域で画定してある多数の開口部を含んでおり、同装置と網は、通過用面と呼ばれる空気通過を可能ならしめている表面を特徴としており、装置の通過用面を増加させるために、少なくとも1の可動性部分、とりわけ故障の場合および網が故障の無い正常な飛行の最も制約の厳しい条件で排出すべき空気量に応じて決められている通過用面を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
この解決策で、表面の欠陥の軽減になる、網の明白な表面の縮小が可能になる。更に、網の形態が故障の無い、正常と言われている機能状態に合わせて決定されているので、応力の消失は、網に覆われている排出口の区間を増加させるに至る故障のような稀な状態のためにではなく、この機能状態のために最小限にすることができる。
【0025】
その他の特性と利点は、添付図に照らして、単に例として示した、本発明の以後の記述で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】空気排出口の断面図である。
【図2A】正常な飛行条件に当たる第1の状態における本発明の第1の変形態様による空気排出口を図式的に示す断面図である。
【図2B】故障の場合に当たる第2の状態における本発明の第1の変形態様による空気排出口を図式的に示す断面図である。
【図3A】正常な飛行条件に当たる第1の状態における本発明の第2の変形態様による空気排出口を図式的に示す図である。
【図3B】故障の場合に当たる第2の状態における本発明の第2の変形態様による空気排出口を図式的に示す図である。
【図4A】正常な飛行条件に当たる第1の状態における本発明の別の変形態様による空気排出口を図式的に示す図である。および
【図4B】故障の場合に当たる第2の状態における本発明の別の変形態様による空気排出口を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
【実施例】
【0028】
図1に、航空機の航空力学的表面のレベルに口を開けている孔すなわち排出口を含む空気排出口が示されており、同排出口には、同航空力学的表面のレベルに取り付けてある網10が具えてある。
【0029】
この網は、ナセル、胴体、支柱または翼面のレベルに予定できる。もっとも、他の位置も考慮できる。
【0030】
この空気排出装置は、少なくとも1の空気取り入れ口から、少なくとも1の交換機または例えば暖房装置、冷房装置または換気装置のように空気を必用とするまたは空気で機能する他の機器を通過して、少なくとも1の空気排出口まで延びている回路をそれぞれ1つ含む、航空機のためのいずれか1の空気系に組み込まれることができる。この諸空気系は、当業者に知られているので、これ以上詳述しない。他方では、本発明による空気排出装置は、この諸適用に限定されているのではなく、他の回路、他の機器または他の空気取り入れ口に適合することが可能である。
【0031】
1の実施態様では、網10は、航空機の航空力学的表面の延長部に配設してある挿入区域14で画定してある多数の開口部12を含んでいる。各開口部12は、一方では、外部の空気流束20に近似する方向に、矢印18で具象化されている排出空気を誘導し、他方では、表面の欠陥の規模を縮小させるために傾斜している、内方に向けられている1の偏向板16を含んでいる。
【0032】
変形態様では、網10は、偏向板を全然含まないか、または開口部の一方の側のレベルに予定できる回転軸に可動状に取り付けられているシャッタの形で偏向板を含むことができ、とりわけ外部の空気流束20の前方に配設してあり、同流束20に垂直な偏向板を含むことができる。偏向板の運動、とりわけ偏向板を開く運動は、適切ななんらかの方法で調節できる。
【0033】
表面の欠陥を低下させるために、開口部の巾は狭い。
【0034】
空気排出口10の構造的で機械的特性を高めるために、同排出口は、開口部を少なくとも2の階層に分離する長手方向の少なくとも1の補強部すなわち通路を含むことができる。この通路は、同一階層の開口部間に予定されている挿入区域14の撓曲の危険を制限するために、開口部の高さ(外部の空気流束20に垂直な方向)を制限することを可能にする。
【0035】
排出装置は、空気の通過を許可する排出口の空いている表面に当たる通過用面で特徴づけられており、同通過用面は、とりわけ排出すべき空気量に応じて決定されている。
【0036】
排出口が網で閉鎖されているとき、空気排出装置の通過用面の広さは、開口部12の表面の合計に当る。
【0037】
以前の技術とは反対に、本発明による網の通過用面は、故障時に排出すべき空気排出量に応じて決められているのではなく、故障のない正常な飛行の最も制約の多い条件で排出する空気排出量で決められている。
【0038】
例として、予備冷却装置の排出口の網は、以前の技術では、頻度が10000時間の飛行に1回である故障の場合のために寸法が決められていた。1回の故障には、排出すべき排気は約2.4 kg/秒であるので、約10dm2の通過用面、すなわち約43dm2の網の表面の広さが必用になる。
【0039】
この場合、本発明では、通過用面は、正常な飛行の最も制約の多い場合のために排出すべき空気の排気量、すなわち排出すべき排気量1.9kg/秒に応じて決定されている。この排出量は、約4,2dm2の通過用面、すなわち約20dm2の網の表面の広さが必用になる。
【0040】
網の表面の明らかな縮小がみられ、それは表面の欠陥の軽減になる。
【0041】
網の形状は、故障の無い、正常と言われている機能状態に応じて決められているので、応力の損失は、故障の無い正常な飛行条件のために、できるだけ抑えられる。
【0042】
故障の場合にもっと首尾一貫した空気排出量の通過を可能にするために、排出口は、故障または一時的な必用の場合に通過用面を変更させるために、少なくとも1の可動性部分を含んでいる。
【0043】
第1の実施態様では、排出口は、同排出口の通過用面積を変えることができるために、網および少なくとも1の可動性部分で閉鎖されることができ、同可動性部分は、とりわけ故障の場合に、排出すべき空気量がもっと大量に通過できるように、排出口を少なくとも部分的に開放する第1の状態、および同可動性部分が航空機の航空力学的表面の平面に配設されていて、同部分を少なくとも部分的に閉鎖する第2の状態になることができる。
【0044】
有利なことに、網10または網10の少なくとも1部分は、排出口を少なくとも部分的に開放するために可動性を有する。排出口の断面が網の断面とほぼ同じであるので、この解決策で、より小型の装置が得られる。
【0045】
説明を簡単にするために、本発明は、可動性網に適用して記述しておいた。もちろん、提示する説明は、網の可動性部分に部分的に適用できる。
【0046】
第1の変形態様では、網は、図2A,2B,3Aおよび3Bに示したように、航空機の航空力学的表面のレベルに配設してある回転軸22で回転できる。
【0047】
したがって、故障の無い場合、網10は、図2Aと3Aに示したように、航空機の航空力学的表面の延長部に配設してある。故障に遭遇したときまたは一時的な必用のときに、網10は、図2Bと3Bに示したように、排出口を開放するために回転して、より大量の空気量の通過を可能にする。
【0048】
網の回転の最適な角度は、約30°である。
【0049】
第1の実施態様では、回転軸22は、図2Aと2Bに示したように、外部の空気流束20の方向に垂直である。
【0050】
この場合、回転軸22は、外部の空気流束の方向に、網の上流側の縁部のレベルに配設してあることが好ましい。したがって、故障の場合、大量の流出が発生する故障では、排出空気で生じる推進力を無駄にしない力学型空気排出の形になる。他方では、この形状は、空気の排出を促進する、排出時の減圧を生じることができる。
【0051】
この形状の別の利点として、小型の排出装置が得られる。 、
【0052】
別の実施態様では、回転軸22は、図3Aと3Bに示したように、外部の空気流束20の方向に平行している。
【0053】
図4Aと4Bに示した別の変形態様では、網10は、開口部に垂直に配設してある、図4Aに示した第1の位置と、もっと大量の空気量の通過を可能にする、少なくとも部分的に排出口を開放する、図4Bに示した第2の位置との間を移動できる。図4Aと4Bに示したように、網は、航空機の航空力学的表面の平面内を移動できる。
【0054】
例えばジャッキ、バネまたはウオームのように、網または網の一部分を操作するための作動器具が予定されている。
【符号の説明】
【0055】
10.網
12.開口部
14.挿入区域
16.偏向板
18.矢印
20.外部の空気流束
22.回転軸
24.通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の航空力学的表面のレベルに取り付けた網(10)を具えた空気排出装置であり、同網は、航空機の航空力学的表面の延長部に配設された挿入区域(14)で画定されている複数の開口部(12)を含んでおり、同装置と網は、通過用面と呼ばれている、空気が通過できる平面を特徴としており、とりわけ故障の場合、同装置の通過用面を増大させるために、少なくともその1部分が可動性部分を含むことを特徴としており、および網(10)が、故障の無い場合の最も制約の多い条件の下で排出すべき空気量に應じて決定されている通過用面を有することを特徴としている。
【請求項2】
網(10)または網(10)の少なくとも1部分が、同網(10)または同網の少なくとも1部分が航空機の航空力学的表面の延長部内で排出口に垂直に配設されている正常な飛行条件に当たる第1の位置、および網(10)または網(10)の少なくとも1部分が、同装置の通過用面を増大させるように開口部を少なくとも部分的に開放する、とりわけ故障条件に当たるもう1つの位置を占めるために可動性を有することを特徴とする、請求項1による空気排出装置。
【請求項3】
網(10)または網(10)の少なくとも1部分が移動できることを特徴とする、請求項2による空気排出装置。
【請求項4】
網(10)または網(10)の少なくとも1部分が回転できることを特徴とする、請求項2による空気排出装置。
【請求項5】
網(10)または網(10)の少なくとも1部分が航空機の外部を流れる空気流束(20)の方向に平行な回転軸(22)で回転できることを特徴とする、請求項4による空気排出装置。
【請求項6】
網(10)または網(10)の少なくとも1部分が、航空機の外部を流れる空気流束(20)の方向に垂直な回転軸(22)で回転できることを特徴とする、請求項4による空気排出装置。
【請求項7】
回転軸(22)が、航空機の外部を流れる空気流束(20)の方向に、網(10)上流側の縁部のレベルに配設してあることを特徴とする、請求項6による空気排出装置。
【請求項8】
網の回転角度が約30°であることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1の請求項による空気排出装置。
【請求項9】
上記請求項のいずれか1の請求項による空気排出装置を含む航空機。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−525978(P2010−525978A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504810(P2010−504810)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050763
【国際公開番号】WO2008/148973
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)