説明

航空灯火設置支援システム

【課題】 航空灯火の設置前に設置検証を行うことにより、航空機を飛ばして検証する回数を減らすことができるようにすることを目的とする。
【解決手段】 映像画面上の仮想空間に航空灯火位置データ、地形データ及び地図データに基づき空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示すると共にこのシミュレーション画像がこの仮想空間の視点と航空灯火の位置とに応じて変化するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空港の進入灯、滑走路灯、進入角指示灯、進入路指示灯等の航空灯火を設置するのに適用して好適な航空灯火設置支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港には、夜間や霧などで視界が悪い気象状況であっても航空機の着陸が安全に行えるよう、進入灯、滑走路灯、進入角指示灯、進入路指示灯等の航空灯火が設置されている。従来このような航空灯火を設置する場合には、まず図面上での検討により設置位置を決定し、この航空灯火が機上のパイロットからどのように見えるか、実機(航空機)を飛ばしてパイロット等が検証を行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、図面上で検討して設置位置を決定したときには、滑走路等を一様な平面とみなしているので、実際の地形によってはパイロットが所定の条件下で視認できる最適な設置位置とは限らず、設置位置が不適のときは、再度設置位置の修正及び検証を行う必要があった。このように何度も設置位置を修正し、その度に実際に航空機を飛ばして見え方の検証をするには多くの費用がかかるという不都合があった。
【0004】
本発明は、斯る点に鑑み、航空灯火の設置前(計画段階)に、設置検証を行った後に、設置するようにし、航空機を飛ばして検証する回数を減らすことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明航空灯火設置支援システムは、映像画面上の仮想空間に航空灯火位置データ、地形データ及び地図データに基づき空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示すると共にこのシミュレーション画像がこの仮想空間の視点位置と航空灯火の位置とに応じて変化するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は映像画面上の仮想空間に航空灯火位置データ、地形データ及び地図データに基づき空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示し、このシミュレーション画像の仮想空間の視点位置と各航空灯火の位置とに応じて、このシミュレーション画像が変化するようにしたので、航空灯火の設置前(計画段階)に、設置検証を行うことができ、設置後に航空機を飛ばして検証する回数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明航空灯火設置支援システムを実施するための最良の形態の例につき説明する。
【0008】
図1は、本例による航空灯火設置支援システムを示し、1は航空灯火設置を支援するプログラムをRAMより成るワークメモリー2と共に実行するマイクロコンピュータ等より成る中央制御装置(CPU)である。3はROMより成る所定のプログラムが記憶されているメモリーで、中央制御装置1に必要に応じて指示されたプログラムを供給する。
【0009】
図1において、4はキーボード、マウス等より成る入力装置を示し、この入力装置4は例えば緯度、経点、高度からなる視点位置等種々の指示信号を入力すると共にメモリー3に格納されている所定のプログラムを中央制御装置1に呼び出すキー等を有し、この入力装置4はプログラム制御の補助として使用される。
【0010】
また、図1において、5は中央制御装置1の指示に従って動作する3次元描画装置6から入力される3次元描画信号を表示する表示装置である。
【0011】
図1において、7はこの空港の進入灯、滑走路灯、進入角指示灯、進入路指示灯等の全ての航空灯火の設置位置データを記憶する航空灯火位置データメモリーを示し、8はこの空港の進入灯、滑走路灯、進入角指示灯、進入路指示灯等の航空灯火の特性データを記憶する航空灯火特性データメモリーである。
【0012】
例として、進入角指示灯の特性データについて説明する。この進入角指示灯は、図4、図5に示す如く進入角指示灯4個20a,20b,20c,20dが滑走路21の進入方向左側に滑走路21と直交するように一列に並べて配されている。航空機の進入角が3°30′以上では図5Aに示す如く全ての進入角指示灯20a,20b,20c,20dが白く見え、進入角が3°30′〜3°10′では、図5Bに示す如く最も右側の進入角指示灯20dが赤く、その他20a,20b,20cは白く見え、進入角が3°10′〜2°50′では、図5Cに示す如く右側の2個の進入角指示灯20c,20dが赤く、その他20a,20bは白く見える。このときの進入角が最適とされる。
【0013】
また、この航空機の進入角が2°50′〜2°30′では、図5Dに示す如く右側の3個の進入角指示灯20b,20c,20dが赤く、残りの1個20aが白く見え、この進入角が2°30′以下では、図5Eに示す如く4個全部の進入角指示灯20a,20b,20c,20dが赤く見える。航空灯火特性データメモリー8は、このような、進入角とそれに対応した進入角指示灯の見え方を特性データとして記憶している。
【0014】
図1において、9は、地形データ9a、建物データ9b等より成る3次元GISデータが記憶されている3次元GIS(Geographic Information System:地理情報システム)データメモリーを示す。この地形データ9aとしては、本例においては5mメッシュ間隔で高さ精度が20cmの数値地形モデル(DTM:Digital Terrain Model)のデータという比較的精度の良い地形データを記憶している。また、10は地図データ10a等より成る2次元GISデータが記憶されている2次元GISデータメモリーを示す。
【0015】
また、11は複数のシミュレーションの航路が記憶されている航路データメモリーを示し、入力装置4によりシミュレーション航路を選択指示することができる。また、12は機体データメモリーであり、基準点(航路上での航空機の位置を特定する指標)と操縦席における視点位置との位置関係を求める際に必要となる航空機の機種に応じた機体データ(機体の大きさや重さ等のスペック情報)を記憶するものである。
【0016】
本例は上述の如く構成されているので、航空灯火位置データメモリー7よりの航空灯火位置データ、航空灯火特性データメモリー8よりの航空灯火特性データ、3次元GISデータメモリー9よりの比較的精度の良い地形データ9a、建物データ9b等の3次元GISデータ及び地図データ10a等の2次元GISデータを中央制御装置1を介して表示データとして3次元描画装置6に供給する。
【0017】
この結果、表示装置5の映像画面上の仮想空間に、中央制御装置1の指示に従い、航空灯火位置データ、航空灯火特性データ、地形データ及び建物データ等の3次元GISデータ、地図データ等の2次元GISデータとに基づき、空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示することができる。
【0018】
この場合、表示装置5の画像の表示は視点位置に応じて変化する。この視点位置は入力装置4で入力する場合と、飛行シミュレーションの時に自動的に入力する場合とがある。
【0019】
まず、入力装置4により視点位置を入力し、表示装置5の画像の表示をする場合について図2のフローチャートを用いて説明する。入力装置4により視点位置を決定する(ステップS1)。次に、この視点位置データを中央制御装置1に入力すると、視点位置データが3次元描画装置6に供給される。3次元描画装置6は表示装置5の映像画面にこの視点位置から見た画像を表示する。
【0020】
この場合、この視点位置より見ようとする対象物である各航空灯火、例えば進入角指示灯20a,20b,20c,20dの設置位置と視点位置との距離及び各航空灯火から視点位置を見た角度(ピッチ角、ロール角、ヨー角)に応じてシミュレーション画像を変化する(ステップS2)と共に航空灯火特性が航空灯火特性データに応じて変化する(ステップS3)。
【0021】
また、各航空灯火の位置、特性により視点位置からどのように見えるかを判定し、見えないものは見えないものとして、また見える場合には、その灯火特性に応じて見える灯火色として処理し(ステップS4)、その後映像画面の表示を行う(ステップS5)。
【0022】
従って、本例によれば視点位置を入力装置4で指定することにより、その視点位置より空港の航空灯火がどのように見えるかをシミュレーションすることができ、空港の航空灯火の設置前に、検証をすることができる。
【0023】
例えば、図4に示す如く、視点位置を滑走路21からの所定の距離手前とし、入力装置4にて対象物である進入角指示灯(図4では一例としてPAPI:Precision Approach Path Indicatorを示す。)20a,20b,20c,20dに対し進入角度が3°30′以上の位置を視点位置と入力装置4で入力したときには、表示装置5の映像画面に図5Aに示す如き画像が得られる。
【0024】
また、この視点位置の進入角指示灯20a,20b,20c,20dに対する角度を入力装置4で3°30′〜3°10′としたときには、表示装置5の映像画面に図5Bに示す如き画像が得られ、この視点位置の進入角指示灯20a,20b,20c,20dに対する角度を入力装置4で3°10′〜2°50′としたときには、表示装置5の映像画面に図5Cに示す如き画像が得られる。
【0025】
また、入力装置4でこの視点位置を進入角指示灯20a,20b,20c,20dに対する角度を2°50′〜2°30′としたときには、表示装置5の映像画面に図5Dに示す画像が得られ、更に視点位置を進入角指示灯20a,20b,20c,20dに対する角度を2°30′以下としたときには、表示装置5の映像画面に図5Eに示す如き画像が得られる。
【0026】
また、入力装置4により視点位置を滑走路21に進入する所定距離手前としたときに例えば図6に示す如き画像が表示装置5の映像画面が得られたときは、進入灯22の一部が建物データ9bに基づき表示された建物23により遮蔽され見えないことがわかる。
【0027】
次に飛行シミュレーションにより視点位置を自動的に入力する場合について説明する。このときの視点位置は図3に示す如きフローチャートに従って決定される。
先ず飛ばそうとする航空機の機体データを機体データメモリー12より読み出し(ステップS10)、機体の基準点を基に操縦席における視点位置を求める。
【0028】
そして、航路データメモリー11より所望の航路の航路データを取り出す(ステップS11)。次に航路データ上の現在時刻における位置データを求め(ステップS12)、この位置データと機体データとにより当該時刻における視点位置データを求め(ステップS13)、この視点位置データを図2のフローチャートのステップS1の視点位置として決定し、図2のフローチャートに従って表示装置5の映像画面に画像を表示する。
【0029】
次にこの所望の航路の飛行が終了したかを判断し(ステップS14)、この飛行を終了するまで上述の処理を繰り返す。
【0030】
この場合、所望の航路の進行時刻に従って順次視点位置が変わるのに伴いシミュレーション画像も時刻と共に変化し、航路に沿った航空灯火の見え方に関するシミュレーション画像を得ることができる。この結果、空港の航空灯火の設置前に航空灯火の設置検証を行うことができる。
【0031】
また本例は、例えば図7に示す進入路指示灯25の光により案内される範囲26の確認にも応用することができる。ここで進入路指示灯とは、航空機を滑走路へ誘導する為の灯火であり、航空機は複数の進入路指示灯が発する光の中を順次通過していくことにより、滑走路へ安全に誘導される。一般に進入路指示灯は強力な光を発する為、周辺住民への悪影響が出ないよう、例えば所定範囲26内に航空機が入った場合にのみ、次に通過すべき進入路指示灯の光が見える等といったように、所定範囲26を限定的に照らすべく設置位置及び灯火特性が決められている。本例によれば、仮想空間の視点位置を任意に設定できる為、どの範囲が照らされているのかを画面上で確認することができる。
【0032】
本例によれば表示装置5の映像画面上の仮想空間に航空灯火位置データ、航空灯火特性データ、地形データ及び建物データ等の3次元GISデータ、地図データ等の2次元GISデータに基づき空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示し、このシミュレーション画像の仮想空間の視点位置と対象物である各航空灯火の位置(距離、角度)とに応じて、このシミュレーション画像を変化するようにしているので、航空灯火の設置前(計画段階)に、ある程度の設置検証を行うことができ、最適な位置に航空灯火を設置でき、航空灯火を実際に設置後に航空機を飛ばして検証する回数を減らすことができる。
【0033】
また本例においては、地形データ9aとして5mメッシュ間隔で高さ精度が20cmの数値地形モデル(DTM)のデータという比較的精度の良いものを使用したので、滑走路等に多少の高低差があっても、実際の状況に合ったシミュレーションを行うことができ、航空灯火の設置計画を最適に行うことができる。
【0034】
尚、本発明は上述した例に限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成として実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明航空灯火設置支援システムを実施するための最良の形態の例を示す構成図である。
【図2】本発明の説明に供するフローチャートである。
【図3】本発明の説明に供するフローチャートである。
【図4】本発明の説明に供する線図である。
【図5】本発明の説明に供する線図である。
【図6】本発明の説明に供する線図である。
【図7】本発明の説明に供する線図である。
【符号の説明】
【0036】
1‥‥中央制御装置、4‥‥入力装置、5‥‥表示装置、6‥‥3次元描画装置、7‥‥航空灯火位置データメモリー、8‥‥航空灯火特性データメモリー、9‥‥3次元GISデータメモリー、10‥‥2次元GISデータメモリー、11‥‥航路データメモリー、12‥‥機体データメモリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像画面上の仮想空間に航空灯火位置データ、地形データ及び地図データに基づき空港の航空灯火の設置のシミュレーション画像を表示すると共に前記シミュレーション画像が前記仮想空間の視点位置と航空灯火の位置とに応じて変化するようにしたことを特徴とする航空灯火設置支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の航空灯火設置支援システムにおいて、
前記仮想空間の視点位置と航空灯火の位置に応じて変化する航空灯火の見え方を記述した航空灯火特性データを設け、
前記仮想空間の視点位置と航空灯火の位置とに応じて前記シミュレーション画像上での前記航空灯火の見え方が変化することを特徴とする航空灯火設置支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の航空灯火設置支援システムにおいて、
空港近傍領域における建物の位置及びその3次元形状を記述した建物データを設け、
前記仮想空間の視点位置と航空灯火の位置と前記建物の位置及び3次元形状とに応じて前記シミュレーション画像上での前記航空灯火の見え方が変化することを特徴とする航空灯火設置支援システム。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3記載の航空灯火設置支援システムにおいて、
基準点の飛行経路上での位置を表す航路データ、及び前記基準点と操縦席における視点位置との位置関係を含んだ機体データを設け、
前記仮想空間での視点位置は前記機体データを基に航路上の基準点から求めた操縦席の視点位置であることを特徴とする航空灯火設置支援システム。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の航空灯火設置支援システムにおいて、
前記地形データは数値地形モデルに基づいた格子状標高値データであることを特徴とする航空灯火設置支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−103359(P2006−103359A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288772(P2004−288772)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【出願人】(500125272)株式会社キャドセンター (8)