説明

船体の消磁電流計算方法及び装置

【課題】作業者の技量や経験に影響されず、任意に設定した調定面又は調定線における船体外部磁場が最小となる消磁電流値を導出することの可能な、船体の消磁電流計算方法及び装置を提供する。
【解決手段】磁気測定所等において非消磁状態の船体外部磁場を計測し(ST1)、消磁コイル効果磁場を計測し(ST2)、調定面又は調定線を設定し(ST3)、ST1で得られた船体外部磁場を基にインバース法により調定面又は調定線における非消磁状態の船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算し(ST4)、ST2で得られた各消磁コイル効果磁場を基にインバース法により調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場ベクトルHC1〜HCnを推定計算し(ST5)、消磁状態の船体外部磁場ベクトルHF/Dが最小となるような最適解iC1〜iCnを最適パラメータ探索法で求める(ST6〜8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の(例えば鋼鉄製の)船体内に設けられた各消磁コイルに通電する消磁電流値を計算する、船体の消磁電流計算方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼鉄等の磁性体によって構成された船体を有する船舶の外部磁場は大別して、鋼材自身による永久磁場と、船体自身が地球磁場によって誘起される誘導磁場とから成り、これらが重畳して船体外部磁場を形成している。
【0003】
船舶から発生するこれら船体外部磁場を最小にするために、従来は次のようにして各消磁コイルに通電する消磁電流値を決定していた。すなわち、まず、複数個の磁気検知器を測定海面の海底に敷設してある磁気測定所において、それら磁気検知器群の配列線上に船舶を航走又は係留させ、船舶の船底下における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を各磁気検知器で計測する。一方、船体内に設置された各消磁コイルに通電することで発生する船体外部磁場を各磁気検知器で計測する。そして、磁気測定所の職員が、試行的に各消磁コイル非通電時の船体磁場と各消磁コイルの発生する船体外部磁場とを組み合わせることで、船舶の船底下における船体外部磁場が基準値以下となるように消磁電流値を決定する。
【0004】
また、別の方法として例えば、垂直方向の船体磁気を消磁するためのMコイルを1回目に調定し、首尾線方向の船体磁気を消磁するためのLコイルを2回目に調定し、左右舷方向の船体磁気を消磁するためのAコイルを3回目に調定する手法が下記特許文献1及び2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−335255号公報
【特許文献2】特開2007−245791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の磁気測定所の職員による消磁電流値の決定は、消磁状態(各消磁コイル通電時)の船体外部磁場が基準値以下であればよいので、理想的な消磁電流値と比較した誤差が大きくなりやすく、また、職員の技量により消磁電流値に差が生じるという問題がある。
【0007】
さらに、磁気検知器は船底下の決められた深度に設置されており、その測定値をそのまま消磁電流値の調定に用いているため、より深深度の船体外部磁場や上方あるいは側方の船体外部磁場を最小にするための調定を行うことはできない。
【0008】
一方、上記特許文献1及び2の手法では、例えば1回目にMコイルを、2回目にLコイルを、3回目にAコイルをそれぞれ調定するが、各コイルの最適消磁電流値は他のコイルの消磁電流値次第で異なるため、例えば1回目に調定したMコイルの消磁電流値が、3回目であるAコイルの調定後にも最適値といえるわけではない。したがって、算出された全てのコイルの消磁電流値による消磁状態の船体外部磁場は、最適消磁電流値による消磁状態の船体外部磁場からの誤差が大きい傾向にある。
【0009】
消磁電流調定の順番を決めるためには、各消磁コイルに優先度を付けなければならないが、消磁の効果はこの優先度に大きく影響される。これは経験的に決める他ないが、上記のMコイル、Lコイル、Aコイルの他に傾斜コイル等様々な消磁コイルを調定する場合、優先度を決めるのは非常に困難となる。さらに、任意の位置における船体外部磁場を最小にするような消磁電流調定は行うことができない。
【0010】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、作業者の技量や経験に影響されず、任意に設定した調定面又は調定線における船体外部磁場が最小となる消磁電流値を導出することの可能な、船体の消磁電流計算方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、船体の消磁電流計算方法である。この方法は、
船体内に設けられた複数個の消磁コイルへの通電量を推定計算する、船体の消磁電流計算方法であって、
船体の外部の磁気検出器により測定した各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を基に、インバース法により、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を推定するステップと、
前記船体の外部の磁気検出器により測定した、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基に、インバース法により、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場を推定するステップと、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するステップとを有する。
【0012】
第1の態様の方法において、前記インバース法は長球調和関数展開法であってもよい。
【0013】
第1の態様の方法において、前記インバース法は球調和関数展開法であってもよい。
【0014】
第1の態様の方法において、前記インバース法は点磁気双極子重畳法であってもよい。
【0015】
本発明の第2の態様も、船体の消磁電流計算方法である。この方法は、
内部に複数個の消磁コイルを設けた船体の数値計算モデルを作成するステップと、
任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を数値シミュレーション法により推定するステップと、
前記調定面又は調定線における、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を、数値シミュレーション法により推定するステップと、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するステップとを有する。
【0016】
第2の態様の方法において、前記数値シミュレーション法は積分方程式法であってもよい。
【0017】
第2の態様の方法において、前記数値シミュレーション法は有限要素法であってもよい。
【0018】
第1又は第2の態様に記載の方法において、前記最適パラメータ探索法は遺伝的アルゴリズムであってもよい。
【0019】
第1又は第2の態様の方法において、前記最適パラメータ探索法は最急降下法であってもよい。
【0020】
第1又は第2の態様の方法において、前記最適パラメータ探索法は焼き鈍し法であってもよい。
【0021】
第1又は第2の態様の方法において、前記最適パラメータ探索法は最小2乗法であってもよい。
【0022】
本発明の第3の態様は、船体の消磁電流計算装置である。この装置は、
船体内に設けられた複数個の消磁コイルと、船体の外部に設置された磁気検出器と、前記磁気検出器における測定データに基づいて各消磁コイルの消磁電流値を演算する演算部とを備え、前記演算部は、
前記磁気検出器により測定した各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を基に、インバース法により、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を推定し、
前記磁気検出器により測定した、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基に、インバース法により、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場を推定し、その後、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定する。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、船体の外部の磁気検出器により測定した各消磁コイル非通電時の船体外部磁場及び各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基にしたインバース法により、又は数値シミュレーション法により、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場及び各消磁コイル効果磁場を推定し、前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するので、作業者の技量や経験に影響されず、任意に設定した調定面又は調定線における船体外部磁場が最小となる消磁電流値を導出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る船体の消磁電流計算方法の手順説明図。
【図2】同実施の形態の長球調和関数展開法で使用する数学モデルの概要図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る船体の消磁電流計算方法の手順説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、複数個の磁気検出器(例えば、X,Y,Z方向(直交3軸)の3軸磁気検知器)を測定海面の海底に敷設した設備を有する磁気測定所にて定期的に実施される磁気測定時の船体外部磁場の測定値から、例えば長球調和関数の展開式によりX,Y,Z方向の船体外部磁場展開係数を求め、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時(非消磁状態)の船体外部磁場を推定する。一方、磁気測定所における、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場の測定値から、例えば長球調和関数の展開式により各消磁コイル効果磁場展開係数を求め、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場を推定する。そして、最適パラメータ探索法を用いて、前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時(消磁状態)の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を特定する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る船体の消磁電流計算方法の手順説明図である。始めに、磁気測定所等において、海底等に設置された複数の磁気検出器により、非消磁状態の船体外部磁場を計測する(ST1)。同様に、船体内に設置されている消磁コイルに通電したときに発生する単位電流当たりの磁場である消磁コイル効果磁場を全ての消磁コイルC1〜Cnについて計測する(ST2)。なお、消磁コイルC1〜Cnの中には、船体全体に及ぶように敷設された首尾線方向、横方向、垂直方向の磁場を発生するもののほか、例えば船首付近の局所的な外部磁場を消磁するために敷設されたものもある。以下の各ステップは、基本的に、コンピュータとソフトウェアの協働によって実現される。
【0029】
次に、消磁をしたい調定面又は調定線を設定する(ST3)。なお、この調定面又は調定線は、船体下部だけではなく、上部、前部、後部、右部、左部その他についても任意に設定可能である。続いて、ST1で得られた船体外部磁場を基に、インバース法により、ST3で設定した調定面又は調定線における非消磁状態の船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算する(ST4)。同様にST2で得られた各消磁コイル効果磁場を基に、インバース法により、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場ベクトルHC1〜HCnを推定計算する(ST5)。
【0030】
ST4及びST5で用いるインバース法は、実測値に基づく公知の解析手法であり、長球調和関数展開法や球調和関数展開法、点磁気双極子重畳法(船体外部磁場を任意の位置に配置した複数の磁気双極子の磁場の和とする方法)等が該当する。ここでは、一例として長球調和関数展開法を用いる場合について説明する。
【0031】
図2は、本実施の形態の長球調和関数展開法で使用する数学モデルの概要図である。ここでは、船体を回転楕円体と見なし、座標軸は船体中心を原点とし、首尾線前方向をX軸、右舷方向をY軸、垂直下方向をZ軸と定義する。次に、原点を基準としてX軸上の両側の位置に点C1,C2を置き、これらを焦点とし、船体と見なしている回転楕円体の内接、外接する共焦点楕円体面をξieとして、回転楕円体座標(ξ,η,φ)を設ける。船舶の鋼材で構成された船体は、計算上はこうして中空回転楕円体モデルに置き換えることができる。このような中空回転楕円体モデル(船体)の外部磁場は、伝導電流を含まない空間領域に船体が存在しているものとすると、うずなしである。このため、船体外部磁場のスカラー・ポテンシャルすなわち磁位は、ラプラスの方程式を満足する。
【0032】
回転楕円体座標における任意の点P(ξ,η,φ)は、点C1,C2を焦点とする回転楕円面ξ(ξ≧1)、点C1,C2を焦点とする回転双曲面η(−1≦η≦1)、及びX軸を境界とする半平面φ(0≦φ≦2π)の交点として表される。ここで、点Pの回転楕円体座標(ξ,η,φ)を直角座標(x,y,z)で表すと、
【数1】

となる。この座標系を用いると、ラプラスの方程式の解すなわちξ>ξeの外部磁位Fe(ξ,η,φ)は、
【数2】

のように長球調和関数の無限級数展開で表示できる。ここで、船体外部磁場の各成分Hx,Hy,Hzの表現式は、式2の負の導関数により定義されるため、
【数3】

【数4】

【数5】

となる。
【0033】
船体外部磁場の各展開係数は、ST1で計測した船体外部磁場の値を式3〜5にあてはめ、最小2乗法により求めることができる。そして、各展開係数より、ST3で設定した調定面又は調定線における非消磁状態の船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算する(ST4)。
【0034】
また、消磁コイルC1〜Cnに各々による消磁コイル効果磁場の各展開係数も同様に、ST2で計測した各消磁コイル効果磁場の値を式3〜5にあてはめ、最小2乗法により求めることができる。そして、各展開係数より、ST3で設定した調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場ベクトルHC1〜HCnを推定計算する(ST5)。
【0035】
ここで、各消磁コイルの電流値をiC1〜iCnとすると、前記調定面又は調定線における消磁状態の船体外部磁場ベクトルHF/Dは、
【数6】

となる。消磁状態の船体外部磁場ベクトルHF/Dが最小となるような最適解iC1〜iCnを遺伝的アルゴリズム(GA:GeneticAlgorithms)や最急降下法、焼き鈍し法、最小2乗法等の最適パラメータ探索法で求めることになる。いずれも公知の手法のため詳細な説明は省略するが、ここでは一例として、最急降下法を用いた場合の適応例を記述する。
【0036】
まず、各消磁コイルの電流値iC1〜iCnを仮設定する(ST6)。次に、仮設定した電流値における消磁状態の船体外部磁場を式6により算出する(ST7)。その消磁状態の船体磁場の例えば最大値を記憶しておき、その値が徐々に小さくなり、最後に収束するまで各消磁コイルの電流値を少しずつ変化させ、収束したときの電流値が最適消磁電流値となり、最適消磁電流値と最適消磁状態の船体外部磁場が出力される(ST8)。なお、船体外部磁場ベクトルHF/Dが最小とは、例えば、船体外部磁場ベクトルHF/Dのx成分,y成分もしくはz成分のいずれか又はそれら3成分の2乗平均の、ST3で設定した調定面又は調定線における平均値ないし最大値が最小であることをいう。
【0037】
本実施の形態によれば、船体の外部の磁気検出器により測定した非消磁状態の船体外部磁場及び各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基にしたインバース法により、任意に設定した調定面又は調定線における非消磁状態の船体外部磁場及び各消磁コイル効果磁場を推定し、前記調定面又は調定線における消磁状態の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するので、作業者の技量や経験に影響されず、任意に設定した調定面又は調定線における船体外部磁場が最小となる消磁電流値を短時間で導出可能となる。
【0038】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る船体の消磁電流計算方法の手順説明図である。各ステップは、基本的に、コンピュータとソフトウェアの協働によって実現される。始めに、積分方程式法や有限要素法等の数値シミュレーションに対応した船体の3次元計算モデルを作成する(ST9)。なお、この3次元計算モデルには、前記船体内に設けられた複数の消磁コイルのモデルも含まれる。次に、消磁をしたい調定面又は調定線を設定する(ST10)。なお、この調定面又は調定線は船体下部だけではなく、上部、前部、後部、右部、左部その他についても設定可能である。続いて、数値シミュレーションにより、ST10で設定した調定面又は調定線における非消磁状態の船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算する(ST11)。同様に、数値シミュレーションにより、前記調定面及び調定線における各消磁コイル効果磁場ベクトルHC1〜HCnを推定計算する(ST12)。これ以降、ST13〜15については、前述したST6〜8と同様である。
【0039】
なお、ST11における船体外部磁場ベクトルHN/Dの推定計算に関し、積分方程式法又は有限要素法といった数値解析手法では船体の数値計算モデルを作成して船体に地磁気が印加されることによる誘導磁気を計算することが可能である一方、船体の有する永久磁気についてはどのように計算するかが問題となる。しかし、実際には、船体には永久磁気を除去する脱磁処理(船体に幾巻きかの胴巻輪線を装着してそれらに電流の極性を正負に変えながらその大きさを漸減して通電する(つまり磁場を印加する)脱磁処理)が施されるので、船体の永久磁気はゼロとして船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算することが可能である。あるいは、脱磁処理後の残留永久磁気をシミュレーションで推定計算し、その計算値を船体の永久磁気の値として船体外部磁場ベクトルHN/Dを推定計算してもよい。
【0040】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と比較して、磁気測定所等における船体外部磁場測定及び消磁コイル効果磁場測定が不要という利点がある。このため、船体の建造中や設計段階においても各消磁コイルに通電すべき消磁電流値を導出可能となる。
【0041】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【符号の説明】
【0042】
1〜Cn 消磁コイル
C1〜iCn 消磁電流値
C1〜HCn 消磁コイル効果磁場ベクトル
N/D 船体外部磁場ベクトル(非消磁状態)
F/D 船体外部磁場ベクトル(消磁状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体内に設けられた複数個の消磁コイルへの通電量を推定計算する、船体の消磁電流計算方法であって、
船体の外部の磁気検出器により測定した各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を基に、インバース法により、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を推定するステップと、
前記船体の外部の磁気検出器により測定した、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基に、インバース法により、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場を推定するステップと、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するステップとを有する、船体の消磁電流計算方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記インバース法が長球調和関数展開法である、船体の消磁電流計算方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記インバース法が球調和関数展開法である、船体の消磁電流計算方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記インバース法が点磁気双極子重畳法である、船体の消磁電流計算方法。
【請求項5】
内部に複数個の消磁コイルを設けた船体の数値計算モデルを作成するステップと、
任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を数値シミュレーション法により推定するステップと、
前記調定面又は調定線における、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を、数値シミュレーション法により推定するステップと、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定するステップとを有する、船体の消磁電流計算方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記数値シミュレーション法が積分方程式法である、船体の消磁電流計算方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記数値シミュレーション法が有限要素法である、船体の消磁電流計算方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法において、前記最適パラメータ探索法が遺伝的アルゴリズムである、船体の磁気低減方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の方法において、前記最適パラメータ探索法が最急降下法である、船体の磁気低減方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の方法において、前記最適パラメータ探索法が焼き鈍し法である、船体の磁気低減方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の方法において、前記最適パラメータ探索法が最小2乗法である、船体の磁気低減方法。
【請求項12】
船体内に設けられた複数個の消磁コイルと、船体の外部に設置された磁気検出器と、前記磁気検出器における測定データに基づいて各消磁コイルの消磁電流値を演算する演算部とを備え、前記演算部は、
前記磁気検出器により測定した各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を基に、インバース法により、任意に設定した調定面又は調定線における各消磁コイル非通電時の船体外部磁場を推定し、
前記磁気検出器により測定した、各消磁コイルの発生する単位電流あたりの磁場である各消磁コイル効果磁場を基に、インバース法により、前記調定面又は調定線における各消磁コイル効果磁場を推定し、その後、
前記調定面又は調定線における各消磁コイル通電時の船体外部磁場が最小となる消磁電流値を最適パラメータ探索法を用いて特定する、船体の消磁電流計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111084(P2011−111084A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270871(P2009−270871)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)