説明

船体構造におけるスティフナ

【課題】 本発明は、スティフナを桁材やロンジ材に溶接して取り付けても、スティフナのトウ部立ち上がり部に不良部の発生を削減できる船体構造におけるスティフナを得ることを目的とする。
【解決手段】 船体構造におけるスティフナであって、桁材やロンジ材に溶接されて取り付けられるスティフナのトウ部形状を、トウ部の先部上端をR形状とし、当該部の溶接脚長(溶接の上端)がR形状にかかるようにした。また、トウ部の先部に立ち上がり部を設け、該立ち上がり部の上部をR形状とした。さらに、トウ部のR形状に滑らかに続けてえぐり部を設けた形状とすることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体構造におけるスティフナに関するものであり、特に、スティフナの形状に特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
二重船殻構造の船体においては、船体外板の内面および船底内板や船側内板の外面に、船体縦方向の補強材としてガーダーやロンジ材が適宜の間隔をもって設けられ、また、該ガーダーやロンジ材とクロスして、高さ方向(船側)、あるいは横方向(船底)の補強材としてフロア材や桁材が適宜の間隔をもって設けられている。
【0003】
そして、例えば船体外板の内面に設けられたロンジ材と、船側あるいは船底内板の外面に設けられたロンジ材とを連結する部材として、フロア材の上にフロアスティフナが、溶接されて取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
なお、取り付けられる部材によってウェブスティフナとかフロアスティフナと称されるが、同等のものであるので、以下まとめて単にスティフナとする。
【0004】
図5はスティフナの取り付け状態を示す図であり、図6はスティフナの側面形状を示す拡大図である。スティフナ1は低部にヒール部1−Aとトウ部1−Bが形成され、該部において一般的には、15mmの垂直立ち上がり部を有する形状になっている。
このスティフナ1はフロア材3の上に溶接されると共に、船底内板4と船底外板5に取り付けられた各ロンジ材2に溶接されている。
【0005】
そして、スティフナ1がロンジ材2に溶接されるときは、表面側(便宜上図5で見える側)のヒール部1−A側から、トウ部1−Bを廻って、裏面側(便宜上図5で見えない側)のヒール部1−A側に廻し溶接されている。
この廻し溶接をするとき、トウ部1−Bの溶接脚長の上端部においてスティフナ1材がカットされる不良部Cが発生する場合がある。これは、例えば15mmの垂直立ち上がり部において、溶接脚長8mmの溶接を施すと、該溶接のパワーに対抗する残余部の熱容量に余裕がないためである。
【0006】
この不良部Cの発生は、品質レベルの低下に繋がることになる。また、場合によっては手直しが必要となり、その手直し工数が生じることになる。
【0007】
【特許文献1】特開平2005−178447号公報 (第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のごとき問題点を解決したもので、スティフナをロンジ材に廻し溶接で溶着しても、スティフナのトウ部立ち上がり部での不良部の発生を削減できる船体構造におけるスティフナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
船体構造におけるスティフナであって、桁材やロンジ材に溶接されて取り付けられるスティフナのトウ部形状を、トウ部の先部の上端をR形状とした。また、R形状とするRの大きさは、当該部の溶接脚長(溶接の上端)がR形状にかかるようにした。さらに、該トウ部のR形状に滑らかに続けてえぐり部を設けた形状とすることも特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
船体構造において、スティフナのトウ部の先部上端の形状をR形状とし、スティフナをロンジ材や桁材に溶接するときの溶接脚長の上端がR形状にかかるようにしたので、スティフナのトウ部での不良部の発生を削減できるようになった。このため、スティフナの取り付けに伴う手直し工数が削減でき、品質レベルの低下も抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図示した本発明の最良の形態について説明する。図1は本発明によるスティフナの側面形状を示す図、図2は図1の要部拡大図、図3は本発明の変形例を示す図であり、図4は本発明を用いたスティフナの改良例を示す図である。
【0012】
スティフナ11は、ロンジ材12とフロア材13との交差部において、フロア材13の上に溶接されると共に、船底内板と船底外板に取り付けられた各ロンジ材12とに溶接されて取り付けられている。該スティフナ11のトウ部11−BはRが付けられた湾曲した形状になっている。Rの大きさはスティフナ11をロンジ材12に廻し溶接して取り付けるときの溶接脚長Hより大きくして、溶接の上端がR形状にかかるようにしてある。例えば、溶接脚長が8mmの溶接を施すときには、Rを10mm以上にしている。
【0013】
図3に示す形状では、スティフナ11のトウ部11−Bに3mm〜5mm程度の立ち上がり部を設けて、この立ち上がり部の上部をR形状にしている。この場合も、前記と同様にスティフナ11をロンジ材12に廻し溶接して取り付けるときの溶接脚長H、つまり、溶接の上端がR形状にかかるようにしてある。例えば、溶接脚長8mmの溶接を施すとして、3〜5mmの立ち上がり部の上部に7mm程度のRを付けた形状にしている。なお、立ち上がり部は垂直あるいは垂直に近い傾斜にしている。
【0014】
このような形状のスティフナ11をロンジ材12に廻し溶接して取り付けても、溶接の残余部にコーナー部を形成してないので、熱容量が大きくなり、溶接熱の集中が緩和されスティフナ11がカットされるような不良部は発生しない。したがって、手直し工数が削減される。
【0015】
図4には本発明を適用したスティフナの改良例を示している。スティフナ11のトウ部11−Bにおいて、R形状に滑らかに続けてえぐり部14を設けている。このような形状にすれば、図示のごとく所定の平板の下方にえぐり部14を設け、該えぐり部14に滑らかに続けてその下方部にRを付けるように加工すればよく、大きな板材から全体形状を切り出して形成するものに比べて切り落とし余材を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるスティフナの側面形状を示す図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】本発明の変形例を示す図。
【図4】本発明を用いたスティフナの改良例を示す図。
【図5】スティフナの取り付け例を示す図。
【図6】従来のスティフナの側面形状を示す拡大図。
【符号の説明】
【0017】
1 スティフナ 2 ロンジ材
3 フロア材 4 船底内板
5 船底外板 C 不良部
11 スティフナ 12 ロンジ材
13 フロア材 14 えぐり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁材やロンジ材に溶接されて取り付けられるスティフナの、トウ部の先部上端をR形状とし、トウ部の先部における廻し溶接の脚長上端がR形状にかかるようにしたことを特徴とする船体構造におけるスティフナ。
【請求項2】
トウ部の先部に立ち上がり部を設け、該立ち上がり部の上部をR形状としたことを特徴とする請求項1記載の船体構造におけるスティフナ。
【請求項3】
トウ部の先部上端のR形状に滑らかに続けてえぐり部を設けた形状としたことを特徴とする請求項1、請求項2記載の船体構造におけるスティフナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−161178(P2007−161178A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362717(P2005−362717)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(503218067)住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 (55)