説明

船外機のシール構造

【課題】建付けバラツキに対して追従し、特にシール機能及び外観性を損ねることのない船外機のシール構造を提供する。
【解決手段】エンジン102の下部を覆うボトムカウリング11の上端部11a外側に、エンジン102の上部を覆うトップカウリング12の下端部12aが配置されるように、シール材30を介してボトムカウリング11にトップカウリング12を装着する船外機のシール構造であって、シール材30は、断面略逆U字状でその開口部にボトムカウリング11の上端部11aが挿入されてボトムカウリング11に取り付けられる取付基部31と、取付基部31の外側壁に取り付けられ、トップカウリング12の下端部12a内側面に弾接する中空シール部32と、中空シール部32に外側に向けて突出するように設けられ、上面がトップカウリング12の下端部12a下面に弾接するリップ部33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの下部を覆うボトムカウリングの上端部外側に、エンジンの上部を覆うトップカウリングの下端部が配置されるように、シール材を介してボトムカウリングにトップカウリングを装着するタイプの船外機のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、船外機100は、船体の船尾板200に取付けられ、歯車機構(図示しない)を介して下部に設けられたプロペラ101をカウリング10内に収納されたエンジン102によって回転させるようになっている。
そしてカウリング10は、エンジン102の下部を覆うボトムカウリング11と、同じくエンジン102の上部を覆うトップカウリング12とからなり、ボトムカウリング11にトップカウリング12が着脱可能に装着されている。このとき、図8で示すように、ボトムカウリング11の上端部11aの外側に、トップカウリング12の下端部12aが配置され、両カウリング11,12の間に設けられたシール材20によってボトムカウリング11とトップカウリング12との隙間が密閉される。
【0003】
シール材20は、断面略逆U字状でその開口部にボトムカウリング11の上端部11aが挿入されるようにしてボトムカウリング11に取り付けられる取付基部21と、取付基部21の外側壁に取り付けられ、トップカウリング12の下端部12aの内側面に弾接する中空シール部22と、取付基部21の外側壁端部が下側に延設され、その延設端部から外側に向けて突設されトップカウリング12の下端部12aの下面に弾接するリップ部23とを備えている。
なお、取付基部21の内側には複数(ここでは4つ)の突起部24が設けられるとともに芯材25が埋設され、ボトムカウリング11に対する取付け強度を上げて容易に外れないようにされている。
【0004】
このように構成されたシール材20によれば、トップカウリング12の下端部12aに、中空シール部22に加えてリップ部23を弾接させているので、ボトムカウリング11とトップカウリング12との間の見切り部が十分にシールされ、止水性能の向上が図られている。
【0005】
また、ボトムカウリングに取付けられた断面略逆U字状の取付基部に一体成形した中空シール部を、トップカウリングの内側に弾接させることによってボトムカウリングとトップカウリングとの間の見切り部を密閉するシール材を備えるシール構造については、下記に示す特許文献1にも開示されている。
【特許文献1】特開2006−213153号公報
【0006】
特許文献1に開示されたシール構造は、トップカウリングの内側に、ボトムカウリングに取付けられた取付基部に一体成形された中空シール部を弾接させるとともに、トップカウリングの下端側内側面に、略全周に渡って下方に延び、ボトムカウリングの上端部内側に位置する飛沫防止リブ部を設けたものである。
これによれば、中空シール部によって十分なシール性が確保されない場合であっても、浸入した海水等がカウリング内で霧状に飛散しないようにすることができるといった効果を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図8で示したシール材20によれば、建付けバラツキによってボトムカウリング11に対するトップカウリング12の位置が変化するとシール性が悪くなる恐れがある。
すなわち、図9(a)で示すように、トップカウリング12の位置が二点鎖線で示す正規の位置から、実線で示すように内側(ボトムカウリング11側)にばらついた場合には、トップカウリング12の下端部12aの下面に弾接するリップ部23の先端が、トップカウリング12よりも外側に飛び出すのでシール不足になるとともに外観上見栄えも悪くなる。
逆に、図9(b)で示すように、トップカウリング12の位置が二点鎖線で示す正規の位置から、実線で示すように外側(ボトムカウリング11側とは逆側)にばらついた場合には、リップ部23の先端が、トップカウリング12の下端部12aの下面から外れてシール切れが発生する。
【0008】
また、特許文献1に開示されたシール構造は、シール性が確保されない場合を予め想定し、海水が浸入しても飛沫防止リブ部で防止するものであり、シール材の他に飛沫防止リブ部といった部材を必要とする。
その上、特許文献1に開示されたシール構造は、図9を参照して説明したような、ボトムカウリングとトップカウリング間の建付けバラツキについてはまったく考慮するものでない。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、建付けバラツキに対して追従し、特にシール機能及び外観性を損ねることのない船外機のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の船外機のシール構造は、エンジン(102)の下部を覆うボトムカウリング(11)の上端部(11a)外側に、前記エンジン(102)の上部を覆うトップカウリング(12)の下端部(12a)が配置されるように、シール材(30)を介して前記ボトムカウリング(11)に前記トップカウリング(12)を装着する船外機のシール構造であって、
前記シール材(30)は、断面略逆U字状でその開口部に前記ボトムカウリング(11)の上端部(11a)が挿入されてボトムカウリング(11)に取り付けられる取付基部(31)と、前記取付基部(31)の外側壁に取り付けられ、前記トップカウリング(12)の下端部(12a)内側面に弾接する中空シール部(32)と、前記中空シール部(32)に外側に向けて突出するように設けられ、上面が前記トップカウリング(12)の下端部(12a)下面に弾接するリップ部(33)と、を備えることを特徴にする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記トップカウリング(12)の下端部(12a)の内側コーナー部を斜めに切欠き、その切欠き部分(C)に前記中空シール部(32)を弾接するようにしたことを特徴にする。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記リップ部(33)の突出長(L)を、前記トップカウリング(12)の下端部(12a)の厚さ(T)以下にしたことを特徴にする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記取付基部(31)の外側壁下端の位置を、前記弾接時の前記中空シール部(32)の最下端の位置より高くしたことを特徴にする。
【0014】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の船外機のシール構造によれば、トップカウリングの下端部の下面から内側面にかけて、中空シール部とその中空シール部に突設されたリップ部を同時に弾接させているので、ボトムカウリングとトップカウリングとの間の見切り部を十分にシールすることができる。
また、リップ部は中空シール部に一体化され弾接時には両者が同時に撓むので、ボトムカウリングの上端部の位置に対してトップカウリングの下端部の位置が建付けバラツキにより上下左右に変位しても、その変位に追従することができ、特にシール機能や外観性を損なうことはない。
さらに、中空シール部とリップ部とを一体化することにより、断面積を低減することができるのでコストを安価に抑えることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、トップカウリングの下端部の内側コーナー部に形成した斜め切欠き部分に中空シール部を弾接するようにしたので、弾接時に中空シール部のリップ部の付け根部より上側の部位が、切欠き部分に沿って弾接し、切欠き部分を形成しない場合と比較して、密閉性が高まり、その分、シール性の向上が図られる。
【0017】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、リップ部の突出長を、トップカウリングの下端部の厚さ以下にしたので、トップカウリングに対する弾接時にリップ部の先端がトップカウリングよりも外側に飛び出して見栄えを悪くすることが防止される。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、取付基部の外側壁下端の位置を、弾接時の中空シール部の最下端の位置より高くしたので、弾接時にトップカウリングの下端部の下面に接するリップ部とその付け根部以下の中空シール部の部位は、外から視認ことができるが、取付基部の外側壁については外から視認できないので外観上見栄えが良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1,図2および図7を参照して、本発明の実施形態に係る船外機のシール構造について説明する。なお、従来例として示したものと同一部位には同一の符号を付した。
【0020】
本発明の実施形態に係る船外機のシール構造は、図7に示すように、船体の船尾板200に取付けられた船外機100において、図1,図2で示すように、エンジン102の下部を覆うボトムカウリング11の上端部11aの外側に、同じくエンジン102の上部を覆うトップカウリング12の下端部12aが配置されるように、シール材30を介してボトムカウリング11にトップカウリング12を着脱可能に装着するタイプのものである。船外機100は、歯車機構(図示しない)を介して下部に設けられたプロペラ101をカウリング10内に収納されたエンジン102によって回転させるようになっている。
【0021】
本発明の実施形態に係る船外機のシール構造に使用されるシール材30は、図1に示すように、断面略逆U字状でその開口部にボトムカウリング11の上端部11aが挿入されるようにしてボトムカウリング11に取り付けられる取付基部31と、取付基部31の外側壁に取り付けられ、トップカウリング12の下端部12aの内側面に弾接する中空シール部32と、中空シール部32に外側に向けて突出するように設けられ、上面がトップカウリング12の下端部12aの下面に弾接するリップ部33とを備えている。
なお、取付基部31の内側壁内側には複数(ここでは4つ)の突起部34が設けられるとともに芯材35が埋設され、ボトムカウリング11に対する取付け強度を上げて容易に外れないようにされている。なお、取付け強度が十分であれば、芯材35を省くことも可能である。
【0022】
中空シール部32から突出形成されたリップ部33は断面舌状で、中空シール部32の最外側下部から斜め上方に向けて突設されている。
そして、図1に示すように、リップ部33の延びる方向と、リップ部33の付け根部に上側から接する中空シール部32の部位の角度θは略90度にしてある。なお、トップカウリング12の下側部12aの下面から内側コーナー部にかけての弾接量を多くするためその角度θを90度よりも小さくすることもできる。
また、リップ部33の突出長Lは、トップカウリング12の下端部12aの厚さT以下に設定され、トップカウリング12に対する弾接時にリップ部33の先端がトップカウリング12よりも外側に飛び出して見栄えを悪くすることを防止している。
【0023】
また、図2で示すように、取付基部31の外側壁下端の位置を、弾接時の中空シール部の最下端の位置よりS分高くしている(なお、同じ高さにするようにしてもよい)。これによれば、弾接時にトップカウリング12の下端部12aの下面に接するリップ部33とその付け根部以下の中空シール部32の部位は、外から視認ことができるが、取付基部31の外側壁については外から視認できないのでその分、見栄えが良くなる。
【0024】
さらに、トップカウリング12の下端部12aは板状であるが、特にその内側コーナー部には斜めに切欠きを形成し、その切欠き部分Cに中空シール部32を弾接するようにしている。これによれば、弾接時に中空シール部32のリップ部33の付け根部より上側の部位が、形成された切欠き部分Cに沿って弾接するので、トップカウリング12の下端部12aの下面から切欠き部分Cにかけて、リップ部33と中空シール部32でトップカウリング12の下端部を包込むようなシールが行われる。なお、トップカウリング12の下端部12aの内側コーナー部に切欠き部分Cを特に設けなくても十分なシール性を確保することはできるが、切欠き部分Cを形成することでシール機能を効率的にさらに向上させることができる。
【0025】
なお、中空シール部32及びリップ部33の材料としては、例えば、EPDM等のゴム材料やTPE,PVC等の樹脂材料があげられる。
【0026】
このように構成された船外機のシール構造によれば、トップカウリング12の下端部12aの下面から内側面にかけて、中空シール部32とその中空シール部32に突設されたリップ部33を同時に弾接させているので、ボトムカウリング11とトップカウリング12との間の見切り部を十分にシールすることができる。
【0027】
また、リップ部33は中空シール部32に一体化され弾接時には両者が同時に撓むので、図3乃至図6に示すように、ボトムカウリング11の上端部11aの位置に対してトップカウリング12の下端部12aの位置が建付けバラツキにより変位しても、その変位に追従することができ、特にシール機能や外観性を損なうことはない。
すなわち、図3で示すように、建付けバラツキにより弾接位置が横方向に接近(図3において左側)したり、図4で示すように、逆に、建付けバラツキにより弾接位置が横方向に離間(図4において右側)したり、あるいは、図5で示すように、建付けバラツキにより弾接位置が上方向に離間(図5において上側)したり、図6で示すように、建付けバラツキにより弾接位置が下方向に離間(図6において下側)したとしても、弾接位置が隣接する中空シール部32とリップ部33が同時に撓み、トップカウリング12の下端部12aを内側と下側から包込むようにシールするので、十分なシール性が確保される。
【0028】
さらに、中空シール部32とリップ部33とを一体化することにより、断面積を低減することができるのでコストを安価に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る船外機のシール構造に使用されるシール材を示す断面図である。
【図2】図1に示すシール材のシール状態を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1に示すシール材の、建付けバラツキにより弾接位置が横方向に接近したときのシール状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】図1に示すシール材の、建付けバラツキにより弾接位置が横方向に離間したときのシール状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1に示すシール材の、建付けバラツキにより弾接位置が上方向に離間したときのシール状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1に示すシール材の、建付けバラツキにより弾接位置が下方向に離間したときのシール状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】船外機の外観斜視図である。
【図8】従来例に係る船外機のシール構造に使用されるシール材を示す断面図である。
【図9】図8に示すシール材の、建付けバラツキに対するシール状態を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 カウリング
11 ボトムカウリング
11a 上端部
12 トップカウリング
12a 下端部
20 シール材
21 取付基部
22 中空シール部
23 リップ部
24 突起部
25 芯材
30 シール材
31 取付基部
32 中空シール部
33 リップ部
34 突起部
35 芯材
100 船外機
101 プロペラ
102 エンジン
200 船尾板
C 切欠き部分
L 突出長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの下部を覆うボトムカウリングの上端部外側に、前記エンジンの上部を覆うトップカウリングの下端部が配置されるように、シール材を介して前記ボトムカウリングに前記トップカウリングを装着する船外機のシール構造であって、
前記シール材は、断面略逆U字状でその開口部に前記ボトムカウリングの上端部が挿入されてボトムカウリングに取り付けられる取付基部と、前記取付基部の外側壁に取り付けられ、前記トップカウリングの下端部内側面に弾接する中空シール部と、前記中空シール部に外側に向けて突出するように設けられ、上面が前記トップカウリングの下端部下面に弾接するリップ部と、を備えることを特徴にする船外機のシール構造。
【請求項2】
前記トップカウリングの下端部の内側コーナー部を斜めに切欠き、その切欠き部分に前記中空シール部を弾接するようにしたことを特徴にする請求項1に記載の船外機のシール構造。
【請求項3】
前記リップ部の突出長を、前記トップカウリングの下端部の厚さ以下にしたことを特徴にする請求項1又は2に記載の船外機のシール構造。
【請求項4】
前記取付基部の外側壁下端の位置を、前記弾接時の前記中空シール部の最下端の位置より高くしたことを特徴にする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の船外機のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−149799(P2008−149799A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337827(P2006−337827)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)