説明

船外機

【課題】船外機の外観が損なわれることなくチルトアップ、チルトダウン操作時の乗員の負担を軽減できるようにする。
【解決手段】船体2に取付けられるクランプブラケット4と、このクランプブラケット4にチルト軸5を介して上下方向に揺動自在に連結された船外機本体6とを備える。船外機本体6における前記チルト軸5より前側であってかつ高い位置に足踏み用プレート25を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルトアップ、チルトダウン操作時における操作力の負担を軽くすることができる船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の船外機は、いわゆるチルトアップ、チルトダウンをすることができるように、船体に取付けられたクランプブラケットと、このクランプブラケットに水平なチルト軸を介して上下方向に揺動自在に支持された船外機本体とから構成されている。この種の船外機においては、前記チルト軸を揺動中心にして船外機本体をプロペラが後上方に移動するように揺動させることによりチルトアップし、これとは逆方向に揺動させることによってチルトダウンする。
【0003】
大型の船外機は、チルトアップやチルトダウンを人力で行うことはできないために、モータあるいは油圧を動力源とするチルト装置を備えている。しかし、小型の船外機においては、チルト装置は装備されておらず、チルトアップやチルトダウンは、乗員が船外機本体の上部を手で把持して船外機本体を上下方向に揺動させることによって行われている。このため、このような小型の船外機においては、チルトアップ、チルトダウン操作時における乗員の負担を軽減できるようにすることが要請されている。
【0004】
チルトアップ、チルトダウン操作時の乗員の負担が軽減された従来の船外機としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に開示された船外機は、チルトアップ、チルトダウンを行うときに乗員が把持するためのハンドルを備えている。
【0005】
このハンドルは、船外機本体の後端部を上方から囲むような門形状に形成されている。このハンドルを用いたチルトアップ操作は、乗員が前記ハンドルの上端部を把持し、このハンドルを前上方に引き上げることによって行う。一方、チルトダウン操作は、乗員が前記ハンドルを把持して船外機本体の重量を支えながら、船外機本体を徐々に下げることによって行う。
【特許文献1】特公平6−98954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているチルト操作用のハンドルでは、チルトアップ、チルトダウン操作時の乗員の負担が期待したほど軽くはならなかった。これは、前記ハンドルの把持部分が船外機本体の上端部の上方近傍に位置付けられており、チルトアップ、チルトダウン操作時に必要な力は、船外機本体の上端部を直接把持する場合とそれほど変わらないからである。
【0007】
チルトアップ、チルトダウン操作時における乗員の操作力の負担をさらに軽減するためには、前記把持部分をより一層高い位置に位置付けることが望ましい。しかし、このように構成すると、ハンドルが船外機本体の上方に高く延びることになるため、船外機の外観が損なわれてしまう。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、船外機の外観が損なわれることなくチルトアップ、チルトダウン操作時における乗員の操作力の負担を軽減できる船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る船外機は、船体に取付けられるクランプブラケットと、このクランプブラケットにチルト軸を介して上下方向に揺動自在に連結された船外機本体とを備えた船外機において、前記船外機本体における前記チルト軸より前側であってかつ高い位置に足踏み用の部材を備えたものである。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記船外機本体の前端部であって左右方向の一方に、棒状に形成されたステアリングハンドルを設け、前記足踏み用の部材を、前記ステアリングハンドルより前記左右方向の他方に位置付けたものである。
【0011】
本発明は、前記発明において、前記足踏み用の部材を、船外機本体の前端部に前方へ向けて突設されたキャリーハンドルに設けたものである。
【0012】
本発明は、前記発明において、前記足踏み用の部材を、キャリーハンドルから前方へ延びる使用位置と、キャリーハンドルから上方に延びる収納位置との間で回動自在にキャリーハンドルに取付け、この足踏み用の部材と前記キャリーハンドルとの間に、足踏み用の部材を前記収納位置側へ付勢するばね部材を弾装したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記足踏み用の部材を乗員が足で踏み込んで、この部材に体重を掛けることによって、船外機本体をチルトアップ方向に付勢することができる。このため、乗員が手で船外機本体の後端上部を把持して力を加えるチルトアップ、チルトダウン操作を足の力で助勢することができるから、チルトアップ、チルトダウン操作時に乗員の腕に加わる負担を軽減することができる。
【0014】
船外機本体の重量がそれほど大きくない場合は、乗員の腕に力を加えることなく、足踏み用の部材を踏み込む力のみによってチルトアップ、チルトダウン操作を行うこともできる。足踏み用の部材は、船外機本体の前部であってカウリングより低い位置に設けることができるから、カウリングの後部上方にハンドルを設ける場合のように外観が損なわれることはない。
【0015】
左右方向の一方に設けられたステアリングハンドルより左右方向の反対側に足踏み用の部材を設けた他の発明によれば、足踏み用の部材を船外機本体の左右方向の中央または中央の近傍に位置付けることができる。このため、足踏み用の部材を使用してチルトアップ、チルトダウン操作を行うときに船外機本体が左右方向にふらつくようなことがないから、チルトアップ、チルトアップ操作をさらに容易に行うことができる。
【0016】
足踏み用の部材をキャリーハンドルに設けた発明によれば、足踏み用の部材を船外機本体に設けるに当たって専用のブラケットが不要になるから、コストダウンを図ることができる。
【0017】
足踏み用の部材が回動自在に構成された発明によれば、足踏み用の部材を使用しないときは前記ばね部材の弾発力によって足踏み用の部材が収納位置に回動するから、航走時に足踏み用の部材が邪魔になることがない。また、キャリーハンドルを把持して船外機を運搬するときに足踏み用の部材が邪魔になることもない。このため、チルトアップ、チルトダウンを楽に行うことができるとともに、使い勝手がよい船外機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る船外機の一実施例を図1〜図3によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る船外機の実施例を示す側面図、図2はキャリーハンドルと足踏み用プレートの平面図、図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【0019】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施例による船外機を示す。この船外機1は、図1に示すように、船体2の船尾板3に取付けられたクランプブラケット4と、このクランプブラケット4に水平なチルト軸5を介して上下方向に揺動自在に連結された船外機本体6とから構成されている。
【0020】
前記船外機本体6は、前記チルト軸5に前端部が取付けられたスイベルブラケット7と、このスイベルブラケット7に回動自在に支持されたステアリング軸8と、このステアリング軸8の上端部に図示していないアッパーマウント部材を介して接続されたガイドエキゾースト9と、このガイドエキゾースト9の下端部に取付けられるとともに前記ステアリング軸8の下端部にロアマウント部材10を介して接続されたアッパーケーシング11と、このアッパーケーシング11の下端部に取付けられたロアケーシング12と、このロアケーシング12に回転自在に設けられたプロペラ13と、前記ガイドエキゾースト9の上部に搭載されたエンジン14と、このエンジン14を覆うカウリング15などによって構成されている。
【0021】
船外機本体6は、図1に示した航走位置から同図中に矢印Aで示す方向(後上方)に前記チルト軸5を中心にして揺動(チルトアップ)させ、チルトアップ位置(図示せず)に位置付けることができる。また、この船外機本体6は、前記チルトアップ位置から前記航走位置まで前記矢印Aとは逆方向に揺動(チルトダウン)させることができる。
【0022】
前記ステアリング軸8の上端部には、船外機1の前方(図1においては右方)に延びるようにステアリングブラケット21が設けられている。このステアリングブラケット21は、前後方向に延びる帯板状に形成されている。このステアリングブラケット21の前端部は、カウリング15の前端部の下方であって前記チルト軸5より高い位置に位置付けられている。
【0023】
このステアリングブラケット21の前端部には、図2および図3に示すように、キャリーハンドル22が取付用ボルト23によって取付けられている。すなわち、このキャリーハンドル22は、船外機本体6の前端部に前方へ向けて突設されている。
このキャリーハンドル22は、次の三つの機能を有するものである。
【0024】
第1の機能は、船外機1を船体2から取外して運搬するときに運搬者が手で把持するための機能である。
第2の機能は、このキャリーハンドル22の船外機左側の端部に設けられているステアリングハンドル24に加えられた操舵力を前記ステアリングブラケット21に伝達する機能である。前記ステアリングハンドル24は、図1に示すように、棒状に形成されている。
第3の機能は、このキャリーハンドル22に設けられている後述する足踏み用プレート25に加えられた乗員の体重をステアリングブラケット21に伝達する機能である。
【0025】
前記キャリーハンドル22は、図2および図3に示すように、前記ステアリングブラケット21に取付けられる取付座26が形成されて左右方向に延びる後部31と、この後部31の船外機右側(図2においては下側)の端部から前方に延びる右側部32と、前記後部31の船外機左側の端部から前方に延びる左側部33と、これらの左右両側部32,33の前端どうしを接続する前部34と、前記左側部33と右側部32との間に架け渡された横架部35とから構成されている。これらの後部31、右側部32、左側部33、前部34および横架部35とは、一体成形により一体に形成されている。また、このキャリーハンドル22の厚みは、前記ステアリングブラケット21の厚みと同等の厚みとなるように形成されている。
【0026】
キャリーハンドル22の前部34と横架部35とは、前記チルト軸5より前側であってかつ高い位置に位置付けられている。
このキャリーハンドル22における前記前部34と横架部35との間には、この前部34を運搬者が把持できるように、指通し空間Sが形成されている。
【0027】
このキャリーハンドル22の前記後部31には、前記取付用ボルト23に螺着するナット36を収容するための凹部37が下方と前方とに向けて開放するように形成されている。前記取付用ボルト23は、図3に示すように、ステアリングブラケット21の前端部に立設されており、前記前部34の取付座26を貫通して凹部37内に臨んでいる。なお、キャリーハンドル22をステアリングブラケット21に取付けるための取付構造は、この実施例の構造に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0028】
キャリーハンドル22の左側部33には、図2および図3に示すように、キャリーハンドル22の他の部位より上方に突出するようにハンドル用取付部33aが設けられている。このハンドル用取付部33aには、前記ステアリングハンドル24の軸部24a(図3参照)が回動自在に支持されている。この取付構造により、ステアリングハンドル24は、キャリーハンドル22に上下方向に回動自在に取付けられている。この実施例によるステアリングハンドル24は、図1に示した起立位置と、先端が前方を指向する航走位置(図示せず)との間で回動できるように構成されている。
【0029】
このようにキャリーハンドル22の左側部33にステアリングハンドル24が設けられていることにより、この実施例による船外機1においては、船外機本体6の前端部であって左側(左右方向の一方)に、ステアリングハンドル24が設けられることになる。
キャリーハンドル22の前記右側部32と前記左側部33とには、後述する足踏み用プレート25の支軸41が取付けられている。
【0030】
足踏み用プレート25は、図2および図3に示すように、所定の形状に曲げられた一枚の金属板によって形成されており、主面(最も広い面)が上と下とに位置する状態で前記支軸41によってキャリーハンドル22に上下方向に回動自在に支持されている。この足踏み用プレート25は、前記キャリーハンドル22の前部34および横架部35と同様に、前記チルト軸5より前側であってかつ高い位置に位置付けられている。また、この足踏み用プレート25のキャリーハンドル22への取付部(支軸41)と、キャリーハンドル22とは、、前記ステアリングハンドル24の取付部分(ハンドル用取付部33a)より低く位置付けられている。
この実施例においては、この足踏み用プレート25によって本発明でいう足踏み用の部材が構成されている。この実施例で示す足踏み用プレート25は、図2および図3中に実線によって示す使用位置と、図3中に二点鎖線で示すように起立した収納位置との間で回動する。
【0031】
また、この足踏み用プレート25は、図2に示すように、前記ステアリングハンドル24より右側(左右方向の他方)に位置付けられている。この実施例による足踏み用プレート25は、船外機本体6の左右方向の中央に位置付けられている。この実施例においては、船外機本体6の左右方向の中心線は、図2に示す平面視において、図3の破断位置を示すIII−III線と同じ位置にある。
【0032】
前記支軸41は、キャリーハンドル22の中央部を左右方向に貫通した状態で前記右側部32と左側部33とに固定されており、足踏み用プレート25を回動自在に支持している。足踏み用プレート25と前記右側部32、左側部33との間には、足踏み用プレート25を左右方向の所定の位置に保持するために、筒状のスペーサ42,43が設けられている。これらのスペーサ42,43は、前記支軸41が貫通しており、支軸41に支持されている。
【0033】
これらのスペーサ42,43のうち、船外機左側(図2においては上側)に位置するスペーサ43の外周部には、足踏み用プレート25を一方向に付勢するためのトーションばね44が設けられている。このトーションばね44は、そのコイル部分44aに前記スペーサ43が挿入された状態で右側端部44bが足踏み用プレート25に接続されるとともに、左側端部44cが前記左側部33に接続されている。
【0034】
このトーションばね44が足踏み用プレート25を付勢する方向は、図3中に矢印Bで示すように、船外機右側から見て足踏み用プレート25が反時計方向に回る方向である。換言すれば、トーションばね44は、足踏み用プレート25を使用位置から収納位置側へ付勢している。この実施例においては、このトーションばね44によって本発明でいうばね部材が構成されている。
【0035】
足踏み用プレート25は、図3に示すように、キャリーハンドル22の指通し空間S内に通された上下方向延在部25aと、この上下方向延在部25aにおけるキャリーハンドル22の上側に位置する一端部から前方に延びる足載せ部25bと、前記上下方向延在部25aにおけるキャリーハンドル22の下側に位置する他端部から後方に延びる後端部25cとから構成されている。
【0036】
前記支軸41は、足踏み用プレート25の前記上下方向延在部25aを左右方向に貫通している。この支軸41の前後方向の位置は、キャリーハンドル22の前部34と横架部35との間であって、図3中に二点鎖線で示すように、足踏み用プレート25が収納位置に移動して起立している状態で、足踏み用プレート25とキャリーハンドル22の前部34との間に指通し空間Sが大きく開放されるような位置に位置付けられている。
【0037】
この足踏み用プレート25の前記足載せ部25bは、図3中に実線で示すように、足踏み用プレート25を船外機右側から見て時計方向に回すことによって、キャリーハンドル22の前部34の上面に接触するように形成されている。この実施例による足載せ部25bは、乗員が片足を載せることができるような大きさに形成されている。足載せ部25bの前後方向の長さは、キャリーハンドル22の前部34から前方に突出する長さであって、前記航走位置に位置付けた状態のステアリングハンドル24の前端より後に位置する長さに形成されている。すなわち、足踏み用プレート25の長さは、ステアリングハンドル24の長さより短くなるように形成されている。この足載せ部25bにおける前記前部34より前方に突出する部分の長さは、図3に示すように、前記支軸41と前記前部34との距離より長くなるように形成されている。この足載せ部25bの上面には、図2に示すように、左右方向に延びる滑り止め用の多数の凹溝45が形成されている。
【0038】
足踏み用プレート25の後端部25cは、図3に示すように、前記同様に足踏み用プレート25を回すことによって、キャリーハンドル22の横架部35の下面に接触するように形成されている。この実施の形態による横架部35は、足踏み用プレート25の上下方向延在部25aの後部上面も接触するように形成されている。このように前記足載せ部25bがキャリーハンドル22の前部34に接触するとともに、後端部25cと上下方向延在部25aとがキャリーハンドル22の横架部35に接触するような足踏み用プレート25の位置が前記使用位置になっている。
【0039】
足踏み用プレート25の前記上下方向延在部25aは、図3中に二点鎖線で示すように、足踏み用プレート25を船外機右側から見て反時計方向に回したときに前記横架部35の前側上端部に接触する。このように上下方向延在部25aが横架部35に接触するような足踏み用プレート25の位置が収納位置になっている。前記上下方向延在部25aが前記横架部35に接触することによって、トーションばね44の弾発力によって付勢された足踏み用プレート25の回転が規制され、足踏み用プレート25は収納位置に保持される。
【0040】
上述したように構成された船外機1において、足踏み用プレート25は、航走中は図3中に二点鎖線で示すように、トーションばね44の弾発力によって収納位置に位置付けられて起立する。この状態では、足踏み用プレート25がキャリーハンドル22から前方へ大きく突出することはない。このため、航走中に足踏み用プレート25がハンドル操作の邪魔になることはない。
【0041】
船外機本体6をチルトアップさせるためには、先ず、乗員が足踏み用プレート25をトーションばね44の弾発力に抗して使用位置に回動させる。足踏み用プレート25が使用位置にあるときは、足踏みプレートの足載せ部25bがキャリーハンドル22の前部34に接触するとともに、足踏み用プレート25の後端部25cがキャリーハンドル22の横架部35に接触する。
【0042】
そして、この足踏み用プレート25の足載せ部25bに乗員が片足を載せて体重を掛けるとともに、手でカウリング15の後端上部を把持して手前に引く。足踏み用プレート25に加えられた乗員の踏力は、足踏み用プレート25からキャリーハンドル22の前部34と横架部35とに加えられ、このキャリーハンドル22からステアリングブラケット21を介してスイベルブラケット7に伝達される。
このように前記踏力がスイベルブラケット7に伝達されることにより、船外機本体6がチルト軸5を中心に揺動してチルトアップする。
【0043】
このため、この実施例による船外機1によれば、乗員が手でカウリング15を引く力と、足で足踏み用プレート25を踏み込む踏力との合力によって船外機本体6をチルトアップさせることができる。また、チルトアップした状態にある船外機本体6を航走位置まで下げるチルトダウン操作時は、足踏み用プレート25に乗員が体重を掛けながら操作することによって、船外機本体6が下がる速度を低く抑えることができ、容易に船外機本体6を徐々に下ろすことができる。チルトアップ操作やチルトダウン操作が終了した後、乗員が足を足踏み用プレート25から下ろすことによって、足踏み用プレート25はトーションばね44の弾発力によって収納位置に回動する。
【0044】
したがって、この実施例による船外機1においては、乗員が手で船外機本体6の後端上部を把持して力を加えるチルトアップ、チルトダウン操作を足で助勢することができるから、チルトアップ、チルトダウン操作時における乗員の手による負担を軽減することができる。なお、船外機本体6の重量がそれほど大きくない場合は、乗員の手に力を加えることなく、足踏み用プレート25を踏み込む踏力のみによってチルトアップ、チルトダウン操作を行うこともできる。
【0045】
この実施例による足踏み用プレート25は、船外機本体6の前部34であってカウリング15より低い位置に設けられているから、カウリング15の後部31上方にハンドルを設ける場合のように船外機1の外観が損なわれることはない。
【0046】
この実施例による船外機1においては、左右方向の一方に設けられたステアリングハンドル24より左右方向の反対側に足踏み用プレート25が設けられているから、足踏み用プレート25を船外機本体6の左右方向の中央または中央の近傍に位置付けることができる。このため、足踏み用の部材を使用してチルトアップ、チルトダウン操作を行うときに船外機本体が左右方向にふらつくようなことがないから、チルトアップ、チルトアップ操作をさらに容易に行うことができる。
【0047】
この実施例による船外機1においては、船外機本体6の前端部に前方へ向けて突設されたキャリーハンドル22に足踏み用プレート25が設けられているから、足踏み用プレート25を船外機本体6に設けるに当たって専用のブラケットが不要である。このため、この実施例によれば、専用のブラケットを使用する場合に較べてコストダウンを図ることができる。
【0048】
この実施例による船外機1においては、足踏み用プレート25を使用しないときは前記トーションばね44の弾発力によって足踏み用プレート25が収納位置に回動するから、航走時に足踏み用プレート25が邪魔になることがない。また、キャリーハンドル22を把持して船外機1を運搬するときに足踏み用プレート25が邪魔になることもない。
【0049】
さらに、この実施例においては、足踏み用プレート25のキャリーハンドル22への取付部(支軸41)と、キャリーハンドル22とが前記ステアリングハンドル24の取付部分(ハンドル用取付部33a)より低く位置付けられているから、足踏み用プレート25に足を容易に載せることができる。
加えて、足踏み用プレート25の長さをステアリングハンドル24の長さより短く形成しているから、航走時に足踏み用プレート25が何らかの原因で使用位置に下がったままの状態であったとしても、足踏み用プレート25が前方に大きく張り出すことはない。このため、足踏み用プレート25が使用位置にある場合であっても、ステアリングハンドル24によって操舵したときに足踏み用プレート25が操作に影響を及ぼすことはなく、足踏み用プレート25を備えているにもかかわらず、高い操作性を保つことができる。
【0050】
上述した実施例では足踏み用プレート25をキャリーハンドル22に設ける例を示したが、足踏み用プレート25は、船外機本体6の他の部位、たとえばスイベルブラケット7やガイドエキゾースト9などに設けることができる。また、足踏み用プレート25の左右方向の位置は、この実施例で示したように左右方向の中央に限定されることはなく、左右方向の中央よりステアリングハンドル24側(左側)または右側に偏る位置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る船外機1の実施例を示す側面図である。
【図2】キャリーハンドルと足踏み用プレートの平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…船外機、4…クランプブラケット、5…チルト軸、6…船外機本体、21…ステアリングブラケット、22…キャリーハンドル、25…足踏み用プレート、41…支軸、44…トーションばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に取付けられるクランプブラケットと、このクランプブラケットにチルト軸を介して上下方向に揺動自在に連結された船外機本体とを備えた船外機において、
前記船外機本体における前記チルト軸より前側であってかつ高い位置に足踏み用の部材を備えたことを特徴とする船外機。
【請求項2】
請求項1記載の船外機において、前記船外機本体の前端部であって左右方向の一方には、棒状に形成されたステアリングハンドルが設けられ、
前記足踏み用の部材は、前記ステアリングハンドルより前記左右方向の他方に位置付けられていることを特徴とする船外機。
【請求項3】
請求項1記載の船外機において、前記足踏み用の部材は、船外機本体の前端部に前方へ向けて突設されたキャリーハンドルに設けられていることを特徴とする船外機。
【請求項4】
請求項3記載の船外機において、前記足踏み用の部材は、キャリーハンドルから前方へ延びる使用位置と、キャリーハンドルから上方に延びる収納位置との間で回動自在にキャリーハンドルに取付けられ、
この足踏み用の部材と前記キャリーハンドルとの間には、足踏み用の部材を前記収納位置側へ付勢するばね部材が弾装されていることを特徴とする船外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−279972(P2008−279972A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127778(P2007−127778)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)