説明

船殻などの水面下面体の清掃装置

船殻などの水面下面体を清掃する装置であって、その回転ディスク(1)は清掃すべき面体に対して加圧液を放出するノズル(2)を有している。該ノズル(2)は回転ディスク(1)の回転軸(3)に対して傾斜して取り付けられており、かつ回転軸(3)と同心状の中空スピンドル(4)を通して加圧液を供給されるべく配置されている。ノズルの傾斜配置において、清掃される面体に対して垂直でないノズル(2)からの液体ジェットの速度成分(Vp)が、回転ディスク(1)の回転方向(R)と同じ方向である接線速度成分(Vt)と、選択的にディスクの中心に対して外側を指向する正である半径方向速度成分とを有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船殻などの面体、特に少なくとも部分的に従来の清掃方法を制限的に利用できる大きな面体の清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船殻などの大きな面体のための装置を開発することは、部分的に水面下にあり利用が制約されるが故に非常に難しい問題である。また面体はそれを粗く平滑を失わせる海洋生物により付着されるが故に頻繁に清掃する必要がある。そのような生物の層により覆われる船殻は、船殻と水との摩擦が増加する結果、燃料消費を著しく増加する。摩擦が1%増加すると燃料消費が3%増加することに注目すべきである。
【0003】
さらに船殻は一般に有機錫化合物を含んだ毒性の船底塗料でコーティングされており、該塗料は残れば海洋生物を毒殺することになるので、清掃作業中にその位置に残るのが望ましい。つまり面体からは不純物を除くが存在する船底塗料のいかなる層をも損傷しないかごく限られた程度だけ損傷する装置を開発することが課題にされる。
【0004】
ノルウェー特許第310902号(Andorsen)には海洋構造物、主として閉網および魚類養殖網籠のための清掃装置が開示されている。該装置はディスク周縁にノズルを具えた回転ディスクを有しており、該回転ディスクは清掃される垂直面体に沿って垂直に動かされるライン中に懸垂されている。ノズルをある傾斜で指向させることにより所謂「フォイル(foil)」効果が得られる。これはディスクと清掃される面体との間の一種の吸引を意味するものと理解される。
【特許文献1】ノルウェー特許第310902号
【0005】
ノルウェー特許第313746号(Andorsen)には主として船殻や沖合構造物、漁場プラントなどの海洋構造物のための清掃装置が開示されており、該装置は回転体の上に配置されたノズルと3または5個の回転体を具えた清掃ユニットを有している。主ユニットはワイヤーまたはチェーンにより懸垂されている。
【特許文献2】ノルウェー特許第代313746号
【0006】
該特許によれば一般に25cm未満の直径を有した回転体のサイズを低減することが重要であり、これにより速度を上げようとしている。これにより与えられた水圧での清掃効果の改善に繋がるものと仮定されている。水圧が回転体に駆動力を与えることは明らかであり、200〜250バールの動作圧力が開示されている。
【0007】
アメリカ特許第3,946,692号には車輪を具えた水面下の面体を清掃する装置が開示されており、その清掃体は循環回転ブラシがブラシと面体との間に吸引力を生じるように配置されている。該装置は一般に3個のブラシを有しており、ブラシ当りの吸引力は約220kg、つまり装置全体/運搬具にすると約660kgとなる。
【特許文献3】アメリカ特許第3,946,692号
【0008】
ブラシは別個の水圧モーターにより駆動され、回転速度は700〜1200rpmである。ブラシ直径は一般に400mmであるが、加圧水の供給については開示されていない。
【0009】
アメリカ特許第4,574,722号は、第3,946,692号と同様に、水面下の船殻などの面体を清掃するブラシを具えた運搬具を開示している。図面に示されているように、小さな面体運搬具が運搬具が船の垂直面に沿って動かされるときにブイとして機能する。この装置の重要な特徴は、各ブラシが可撓性の懸垂機構を有しており、これが清掃されるべき面体が平坦でないときに良好な清掃を確実としている点である。また運搬具は浮力タンクを有している。
【特許文献4】アメリカ特許第4,574,722号
【特許文献5】アメリカ特許第3,946,692号
【0010】
アメリカ特許第4,926,775号は主として水面下の垂直面に使用される清掃装置を開示している。該装置は面体に対して高圧水を撒布する1組の(または少なくとも1個の)ノズルを有しており、該ノズルは1個(少なくとも)1個の回転ディスク上に配置されており、その回転軸は清掃される面体に対して主として垂直である。
【特許文献6】アメリカ特許第4,926,775号
【0011】
特記すべきは、ノズルは傾斜配置されて接線方向運動成分の撒布水を提供するもので、ディスクを回転させる反応力を生じることになる。加えて1個以上のノズルは清掃される面体から離間指向されており該面体に対して装置を接近位置させている。
【0012】
アメリカ特許第5,884,642号は可動運搬具を開示しており、加圧水を用いて船殻などの金属面体を清掃するものである。移動は歯車と磁気要素または部分を有するチェーンによるものである。歯車は個々に制御されるものであり、これにより運搬具に連続可動性/操縦性を付与するものである。
【特許文献7】アメリカ特許第5,884,642号
【0013】
清掃ノズルは運搬具下方の回転対称中心アームに沿って分散配置されており、このアームが中心軸(48)について軸転するように配置されており、該中心軸を通って水が供給される。ノズルは異なる半径の円を画く。この特許ではアームが傾斜配置されたノズルの方向に対して回転するということは記載されてなく、したがって回転機構はアメリカ特許第4,926,775号に開示されたのと同じと仮定される。
【0014】
アメリカ特許第6,425,340号は水面下の面体を清掃する装置を開示しており、永久磁石を利用して例えば船殻などに装置を吸引するようになっている。清掃装置は「超高圧水ジェットシステム」を有しており、塗料などのコーティングを除くためのものである。25000psiまたは1725バールの水圧が記載してあり、システムは少なくとも1個の軸承ノズルを有している。
【特許文献8】アメリカ特許第6,425,340号
【0015】
さらに該装置は囲繞鞘を有しており、これがノズルオリフィス(orifice)の周囲の領域を船殻に対して密にカバーして緩くなった物質を回収する。これにより環境には損失がない。この特許のノズルが自分自身について回転することは注目すべきであり、回転ディスク上に設けられているのではない。例えば図5(回転部分32)および明細書の第9欄第15−16行および第30−33行目を見ればこのことは明らかである。この特許は広く従来技術を提供するものである。
【0016】
アメリカ特許第5,048,445号は上記特許と同様な目的の装置を開示するものであり、装置/船の推進のための「スラスターユニット」を開示している。ノズルは回転リング状の1個以上のマニフォルド上に配置されており、ノズルは傾斜配置されており、高圧下でノズルを離れる水からの反力がノズルを支持するリング状のマニフォルドを回転させ、その回転速度は一般に90rpmである。
【特許文献9】アメリカ特許第5,048,445号
【0017】
また水を流したり散布するための回転ヘッドを具えた陸上用途の多くの清掃装置があり、例えばアメリカ特許第3,829,019号に開示されている。この特許は床や壁を清掃する装置であって、ケースが水チャンネルを具えた回転アームと壁、床(テラス)などの面体に対して水を放出するノズルを覆っている。アームの回転はアーム上の傾斜配置ノズルによるが、いくつかのノズルは回転駆動ノズルとは逆方向に傾斜指向されている。
【特許文献10】アメリカ特許第3,829,019号
【0018】
回転方向を定めるノズルは一般に30度後方への角度を有しており、反対方向に傾斜するノズルは一般に15度前方傾斜を有している。後方指向ノズルは前方指向ノズルより少なくないが、前者は回転方向により近い方向を有しているので、回転方向の前者の力成分の和は後者の力成分の和より大である。しかし前方指向ノズルの力成分はそのようなノズルがない場合に得られるものよりも速度を低減する。
【0019】
ノズルを具えた回転アームは実質的に開いた構造に配置されており、装置が水面下に入った場合にはアームの回転させる能力を劇的に低減する水により囲繞されるであろうから、この特許の装置は水面下の面体の清掃には適してない。
【0020】
アメリカ特許第4,314,521号には水面下の面体を清掃する装置と方法とが開示されており、該装置は回転体に取り付けられたブラシとノズルとを有しており、回転は傾斜配置されたノズルまたは例えば水力モーターにより駆動される。該装置は主として操縦者により制御されると記載されており、ノズルの配置についてはなにも記載がないが、回転を駆動する場合には傾斜していなければならないことは明らかである。
【特許文献11】アメリカ特許第4,314,521号
【0021】
液体は面体下のポンプから供給され、加えて回転を充分かつ容易にすべく該装置は面体からの空気供給を必要としている。回転体はケースの下に隠されており、清掃されるべき面体に面した側を除いて該カバーはブラシの全面を覆い、回転体にはノズルが併設されている。
【0022】
簡単に言うと多くの船殻などの面体を清掃する装置があり、ブラシを使用してノズルを通して加圧水を散布している。ノズルに基づいた装置の間で、あるものは回転体上に配置されたノズルを有しており、あるものはアーム上のノズルを有しており、あるものはリング状体上のノズルを有しており、あるものは「全」ディスク上に配置されたノズルを有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
船殻に施された船底塗料の部分を損傷または除くことなしに船殻の汚れた面の十分な清掃を提供するという顕著な課題がある。同時に高圧下の液体を高速回転ディスクなどに運搬して長期間に亘って容易にかつ遺漏のない液体結合を確立するという著しい課題がある。
【0024】
この発明の主たる目的は、水面下の面体を機械的に清掃する装置を提供することにあり、特に船殻など除き難い海洋生物で汚された面体を清掃することにある。
【0025】
この発明の他の目的は、測定できるような損傷を与えることなしに塗料/船底塗料で処理された面体を清掃してしかも環境に好ましくない汚染を課することなくすることのできる装置を提供することにある。
【0026】
この発明のさらなる目的は、無人潜水艦、所謂ROVに適した清掃を行いさらに垂直な面体であっても清掃されるべき面体に吸着することが広くできる装置を提供することにある。
【0027】
この発明のさらなる目的は、加圧下の水を施すことにより汚れたまたは重度に汚染された面体を効果的に清掃する装置を提供し、かつある水圧について最適な清掃効果を奏することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の目的を達成すべく、この発明は請求項1に記載の構成を有するものである。
【0029】
実施例は従属請求項に記載の特徴を有するものである。
【0030】
上記したように、傾斜配置ノズルを有した回転ディスクに基づいた従来技術の清掃装置がある。これらの構造に共通なのは、ノズルから水ジェットへの反力の利用であり、より詳しくはノズルからの水ジェットの速度成分であり、それは回転ディスクの回転軸に平行ではなく、この速度成分がディスクに回転を与えるのである。
【0031】
従来技術による解決策を実施するのは簡単ではあるが、ディスクを回転させるのに使われる理論的に有用な清掃力がかなり大きなものとなる。加えて、回転速度は水圧によってのみ決まってくるので、それらのシステムは状態に応じての速度の個々の制御能力に欠けている。
【0032】
傾斜配置清掃ノズルから離れる水ジェットの速度Vは回転ディスクに垂直な速度成分Vnと回転ディスク(その回転面)に平行な速度成分Vpとのベクトル和であると見なされる。
【0033】
平行速度成分Vpは回転ディスクに対して半径方向である速度成分Vrと回転ディスク、より詳しくは各清掃ノズルが配分されている回転ディスクと同心状の仮想円形線、に対して接線方向の速度成分Vtとの和であると見なされる。
【0034】
比較的高い回転速度が必要であるので、この発明の回転体(回転ディスク)の外形は可能な限り周囲の水からの摩擦を低くすべきである。これには回転の方向を横切ってできる限り一様な形状により達成される。より技術的には、以下のように言える。回転体はそこを通る任意の扇状部分が実質的に同じ形状とサイズとなる形状を有しなければならない。
【0035】
水面下の面体を清掃する回転ディスクを有した従来技術の装置は主としてディスクを回転させるのに傾斜指向ノズルを用いてきた。この発明の装置は別個の動力源を有しており、これがディスクを所望の速度で強制駆動するのである。従来技術の装置では例えば水圧および上記のように接線方向速度成分が回転方向と逆を指向しなければならないことで回転速度が制約されるのである。
【0036】
実際全ての清掃ノズルは同じに配置され得る必要はなく、逆の接線方向傾斜を有した各清掃ノズルについては、清掃ノズルが回転ディスクの回転を与える場合には回転速度は低減される。
【0037】
この発明においては清掃ノズルの半分を超えるものが、回転速度の点で妥協することなしに接線方向速度成分Vtが回転ディスクについての回転Rの方向と同じ方向を有するような、接線方向傾斜を有している。かくしてある水圧において抑制されない清掃効果が達成されるのである。
【0038】
殆どの清掃ノズルが、放出される水の接線方向速度成分Vtが回転ディスクの回転方向Rと同じ方向を持つ、ように配置されるのが好ましい。
【0039】
この発明によれば回転が他の方法で保持されるので、可能な限りの清掃効果を達成すべく、清掃ノズルの傾斜配列は最適化される。これによりある供給水圧において最適な清掃効果が得られる。つまり所望の効果を得るのに極端に高い水圧は必要とされず、装置の静止・回転部分間の液の液密移動を行うスピンドルとガスケットの如く、これは構成要素の寿命にポジテイブな効果を及ぼすのである。
【0040】
この発明の装置のさらなる利点は、回転体(より詳しくはその中央領域)と清掃される面体との間に強い吸引力が働くということである。この吸引力は清掃ノズルから高速度で放出されている水の「反動」を完全に相殺する。これにより例えば清掃される船殻の近くに装置を保持する余分なエネルギーを必要としないということである。
【0041】
充分な数の清掃ノズルが、清掃ノズルから放出されている水の半径方向速度成分Vrが0より大である、つまり各清掃ノズルが配分されている回転ディスクと同心状の仮想円から外側を指向する速度成分がある、ような傾斜を有するのが望ましい。
【実施例】
【0042】
図1は従来技術の回転ディスクをその回転軸3に沿って示したものである。回転ディスク1の円周に沿って4個の清掃ノズル2が配置されており、供給された速度成分を有した水は主として回転軸3と平行な方向、つまり紙面から垂直上方に放出され、速度成分は各清掃ノズル2の位置において仮想円の接線と主として平行である。
【0043】
この接線方向速度成分は時計回り(右方へ)に配置された全ての清掃ノズルについてのものである。高圧水が各4個の清掃ノズル2から放出されると、ノズルひいてはそれらが配置されている回転ディスクには矢印Rで示すようにディスクを左方に回そうとする反力が作用する。水ジェットの接線方向速度成分は回転ディスクに回転を与えるが回転軸に平行な速度成分は清掃される面体を押圧し、通常回転ディスクと平行となる。各清掃ノズルからの水ジェットは一般にある広がりを有しており、鋭角「扇」を形成する3個の矢印で示すように円錐状または好ましくは扇状となる。
【0044】
図2aにこの発明の回転ディスクを示す。図1のものと同じ基本的な構成要素を有しているが、図示しない外部モーターにより駆動される歯車5を有しており、これが清掃ノズル2から放出される水とは独立にディスクを回転させることができる。図1の清掃ノズルとは逆に、各清掃ノズルからの接線方向速度成分が反時計方向を指向するようにノズルが配置されている。この発明によれば、清掃ノズルの配列(傾斜)は回転ディスクの反時計方向回転に対して、つまり清掃ノズルからの水ジェットの接線方向速度成分の合計からなる回転ディスクに作用する力に対して邪魔とならない。
【0045】
図2において仮想円に対する接線Tの配置が示されており、この上に問題とする清掃ノズルが配分されている。図1におけるように、図2の回転ディスクは全部で4個の清掃ノズルを有しており、回転ディスクの円周近くにおいて相互に90度離間している。従来技術の回転ディスクのように、水は回転軸3と同心状に配置された中空スピンドルを経てディスクに供給される。
【0046】
実際には各清掃ノズルからの水ジェットはある広がり、例えば扇状または鋭角円錐形状を有している。図中では鋭角扇状の小さな矢印で示されている。したがって水ジェットの方向は非常に正確に定められる。水のそのような扇状方向スプレーを例えばノズルが配分されている仮想円の接線と比べると、接線との比較の基本となるのはスプレーの中央部分であり、同じスプレーの周辺部分は必ず若干外れた方向となる。図2aでは回転ディスクと平行な速度成分Vpは各ノズルが取付けられている回転ディスクと同心状の仮想円の接線と主として平行である。
【0047】
図2bに示す図2aのものの変形である特に好ましい実施例にあっては、各ノズルからの水ジェットの方向が、清掃される面体に対して垂直ではない速度成分Vpがノズルが取り付けられている仮想円の接線と平行ではなく接線に対して外に位置する、ようになっている。速度成分Vpは図示のように2個の速度成分、つまりVrとVtに分解されており、Vrは回転ディスクまたは回転ディスクと同心状の仮想円に対して半径方向であり、Vtは同じ円に対して接線方向である。
回転体(回転ディスク)ひいてはそれに取り付けられているノズルは清掃される面体に対してある距離、近くにあるので、これの接線に対する傾斜は、水ジェットが面体を回転ディスクの半径より大なる半径を有した円形の領域で叩くことを、示唆している。
【0048】
つまりノズルからの水は回転ディスクと清掃されるべき面体との間に余分の液体を加えることはなく、したがって回転ディスクと清掃されるべき面体との間には局部的な過剰圧力はないのである。
【0049】
図3に図2bの回転ディスクの変形を示す。唯一異なる点は回転ディスクが3個の清掃ノズルを有しており、それらノズルは120度の角度距離で相互に離間配置されている。
【0050】
図4に示す実施例にあっては、清掃ノズル2、2’を具えた回転ディスク11を使っており、清掃ノズルは2個の同心状円形線に沿って分布され、4個のノズルが各円形線上にある。内円形線上の清掃ノズル2’は外円形線上のノズル2に比べて45度ずれている。
【0051】
両方の円形線上の全ての清掃ノズルからの液体ジェットの接線方向速度成分Vtは反時計方向である。回転ディスクは矢印Rで示すように図2a、2b、3と同じように反時計方向に回転するべく配置されている。外円に沿ってのノズルは図2b、3と同じように、それらから放出されている水が0より大なる半径方向速度成分Vrになるように配置されている、つまりノズル2からの水が清掃される面体上の回転ディスクの円周の突出を越えて(外側に)面体を叩くようになっている。
【0052】
図5に好ましき実施例の回転ディスクの断面を示す。回転ディスク1は清掃される面体8に対面している側面6および反対側面7において主として平坦である。円周部分の狭い領域9において回転ディスクは清掃される面体の側において面体8から傾斜するリング状領域を有しており、傾斜領域の外端10は反対側面7へと丸く形成されている。
【0053】
回転ディスクが面体8から浮揚力を受けるので、この形態は非常に有利であると分かっている。浮揚力はディスクの中央に近く起きる強い部分力を補償するのである。回転ディスクと面体の間にはある吸引力が望ましいが、回転ディスクを保持している装置が清掃される面体(一般に船殻)に沿って簡単に動かされ得ない程に吸引力が強くなるのは望ましくない。
【0054】
図5では回転ディスクが両側で平坦であるが、これから変わっている形状、例えば清掃される面体が凹状の側面も使われる。いずれにしても、清掃ディスクの形状はその全円周に亙って平坦であり、回転ディスクの任意の扇状部分は実質的に同じ形状とサイズとなろう。
【0055】
実際のテストからすると、この発明の装置による清掃効果は150〜1250バールなどの比較的低い水圧でも非常に良い。したがって顕著な清掃効果を必要とする大きくかつ非常に汚染された面体に関しては、清掃ノズルからの力により導入される回転に比べて外部モーターにより与えられる回転を有した回転ディスクを使うのが明らかに有利である。より好ましい水圧は250〜350バールの範囲にある。
【0056】
この発明の基本的な目的は、いかなる与えられた清掃作業についても秀れた清掃効果を達成する一方水圧やノズルの傾斜やディスクの回転速度の組合せに関しての高度な自由度を保つこと、である。回転速度は水圧(液圧)とは独立にかつノズルの傾斜とは独立に決まるのである。ノズルの傾斜が交換可能な個々のノズルによるか決まった、しかし異なる配置を有したディスクによるディスクの置換によるかはあまり重要ではない。以上の解決法はいずれもこの発明の範疇に入るものである。
【0057】
この発明の装置は主として船殻、特にその水面下の部分の清掃のためのものである。この目的のためにこの発明の装置は3〜4個の回転ディスクを有しておりかつこの目的に合ったROVに取り付けられるものである。一般にそのようなROVは双安定性であって、かつ、清掃中に船殻に対してまたは沿ってそのいかなる配置も可能とするスラスターを有している。この目的に適したROVは現存しているのでこの発明の一部をなすものではない。
【0058】
またこの発明の装置は陸上の大きな面体を清掃するのにも適しており、この目的のためには手動または別個のモーターで運搬されるより小型のユニットにより支持されている。いかなる状態においても、それ自身既知の位置決め手段を有するのが望ましく、つまり清掃される面体に対して実質的に平行にしかもある距離を置いて回転ディスクが常時支持されるのが望ましい。清掃ノズルと面体との距離は比較的短く、例えば0.3〜4cmの範囲、より一般的には0.5〜2cmの範囲である。
【0059】
回転ディスクを位置決めする手段は一般にフレームを有しており、その上で1個以上のディスクがホイールに取り付けられており、該ホイールはフレームまたは個々の回転ディスクに取り付けられている。また該ホイールは清掃作業中は清掃される面体に対して静止している。そのような位置決め手段は既知のものであるので詳細は割愛する。
【0060】
船殻の清掃については、毒性のある船底塗料が損傷されないことが重要である。以下にこれを例示する。
【0061】
実験例。トリブチルスズ(tributyltin)(TBT)抗汚剤で処理されたテスト面体上で清掃が行われた。清掃ノズルへのテスト水はテスト容器から/へ再循環されて、容器に導入された有機化合物の希釈が回避された。しかし回転ディスクの動作は他の方法で行われた、つまり容器中の濃度の希釈は12l/分であった。しかしこの効果は最初のテストサンプルについて0.35%だけのものであり、それ以降のサンプルについては1.7%であった。テストの仕様を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
使用された分析方法および各化合物についての検出限界についての分析した化学化合物は表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
TBTはDBT、MBTおよびTFTに分解され、したがってそれらの化合物は全て分析して清掃中の有機スズ化合物の全漏洩の正しい姿を得る必要がある。漏洩分析の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
この表には希釈の効果は反映されていないが、上記したように、それは決して1.7%を越えるものではない。分析の不確定要因は約20%と言われている。
【0068】
分析は最初または第2回目の清掃の前後におけるTBT、DBTまたはTFTの増加は示していない。サンプル1、2については増加が見られ、MBTについてはサンプル2より低いというMBTの測定はこれに合致しない。MBTの合致しない結果についてはここでは説明していないが、測定は全体として、抗汚剤が清掃作業によりごくわずかに影響されていることを明らかに表わしている。
【0069】
以上種々この発明の利点について記載したが、特に強調すべきは、回転ディスクの強制回転は最適清掃効果のためのノズルの傾斜選択の自由度の増大を可能にするということである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は広く造船業界などにおいて利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】従来技術の回転ディスクの模型図である。
【図2a】この発明の第1の実施例における清掃ノズルを具えた回転体の模型図である。
【図2b】この発明の第1の実施例の変形回転体の模型図である。
【図3】この発明の第1の実施例のさらなる変形によるノズルを具えた回転体の模型図である。
【図4】この発明の第2の実施例の清掃ノズルを具えた回転体の模型図である。
【図5】図2bの回転体の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1: 回転ディスク
2: 清掃ノズル
4: 中空スピンドル
8: 面体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船殻などの水面下面体の清掃装置であって、回転体(1)が別個の推進手段により回転駆動されるべく設けられてかつ清掃すべき面体に対して加圧液体を放出するノズル(2)を有しており、該ノズル(2)が回転体(1)の回転軸(3)に対して傾斜して取り付けられおり、これによりノズルから放出される水ジェットが回転体の回転面に直交する速度成分Vnと回転体の該回転面に平行な速度成分Vpとを有しており、上記ノズルには回転軸(3)と同心状の中空スピンドル(4)を介して加圧液体が供給され、回転体(1)が回転ディスク(1)の形状を有していて該ディスクを通して任意の扇形部分が実質的に等しい形状とサイズとを有しており、平行速度成分Vpが速度成分Vrと速度成分Vtとの和であり、速度成分Vrは回転ディスク(1)に対して半径方向でありかつ速度成分Vtは回転ディスク上でノズル(2)が配列されている円形線に対して接線方向であり、回転ディスク(1)の回転方向が、ノズル(2)の傾斜に対して少なくとも半分のノズル(2)から放出される液体について接線方向速度成分Vtが回転ディスク(1)の回転(R)方向と同じ方向を有しているように、選ばれていることを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
少なくともノズル(2)の半分が、ノズル(2)から放出される液体について半径方向速度成分Vrがポジティブつまり各ノズル(2)が配分されている回転ディスク(1)と同心状の仮想円形線から外側を指向するような、傾斜を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
回転ディスク(1)が外部推進手段と係合する歯車機構(5)により回転駆動されていることを特徴とする請求項1、2に記載の装置。
【請求項4】
外部推進手段が水力モーターであることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
回転ディスクが清掃される面体(8)側において平面または凹面状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項6】
回転ディスク(1)が20〜50cmの範囲の直径を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項7】
外部推進手段が回転ディスクを200〜700rpmの角速度で回転させるように配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項8】
ノズル(2)に供給される水の圧力が100〜500バールの範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項9】
ノズル(2)に供給される水の圧力が250〜350バールの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
2個以上のノズル(2)が回転ディスク(1)の回転軸(3)を中心とする共通円形線に沿って配置されており、ノズルが共通円形線に沿って角度的に対称に配分されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項11】
回転ディスク(1)がノズル(2、2’)が角度的対称で配置されている少なくとも2個の円形線を有していることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
間隔要素が設けられていて、回転ディスク(1)が常に清掃される面体と平行にかつ該面体から所定の距離で保たれていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項13】
間隔要素がホイールであることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記間隔要素が、回転ディスクを面体とノズルとの距離が0.5〜2cmの範囲にある位置に保持するように、配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
ノズル(2)が円錐状の水ジェットを提供するように配置されており、清掃される面体(8)を叩く円錐水ジェットがノズル(2)の傾斜に応じて主として円形または楕円形である領域にあることを特徴とする請求項1〜14のいずれかひとつに記載の装置。
【請求項16】
ノズル(2)がスリット状の開口を有してかつ、回転ディスクの半径と平行な方向において直交する方向より広い領域において清掃される面体(8)を叩く水ジェットを供給するように、配置されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかひとつに記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−510588(P2007−510588A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539416(P2006−539416)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/NO2004/000339
【国際公開番号】WO2005/044657
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506156067)