説明

船舶における燃料自動切替えシステム

【課題】規制海域を航行する船舶において、プレワーニング海域とアラーム海域とを設定し、切替え準備と切替えのアラームを発する燃料自動切替えシステムを得ることを目的とする。
【解決手段】燃料切替えに要する時間と運行速度を定め、この燃料切替え時間と運行速度とで自船が規制海域までに航行する距離を算出し、この距離を規制海域の周囲に加え、アラーム海域として設定し、次いで、切替えの準備に要する時間と前記運航速度とで、自船が設定したアラーム海域までに航行する距離を算出し、この距離をアラーム海域の周囲に加え、プレワーニング海域として設定し、自船がプレワーニング海域に至ったら切替え準備のためのワーニングを発し、アラーム海域に至ったら切替えのアラームを発すると共に、自動的に燃料切替えを開始するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶における燃料の自動切替えシステムに係わるものであり、特に、航行海域上SOx排出規制海域に入る際には低硫黄燃料油に切替え、同海域を出る際には一般燃料油に切替えるなど燃料を切替えて航行するのに、燃料切替えのための準備を行うプレワーニング海域と、燃料の切替えを行うアラーム海域とを設定して、それぞれのアラームを発すると共に、燃料の切替え作業を自動的に行う燃料自動切替えシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バルト海や北海などで船舶を運行するには、規制により低硫黄燃料を使用しなければならなくなった。また、米国やEU域においてこのような燃料規制海域が増加する見込みである。そのため、このような燃料規制海域に立ち入る船舶では、一般燃料油と低硫黄燃料油の2系統で運行することを考慮しなければならない。
このため、燃料油の分離貯蔵、異種油のコンタミネーションを防止することなどを重要事項として、短時間で燃料油を切替えることができる燃料タンクの配置などが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
前記文献によれば、2セットリングタンク×2サービスタンク方式のタンク配置が、異種燃料がタンク内で混合することがないので、スラッジトラブルが発生するリスクは少なく、また、常にサービスタンク内には切替えるべき燃料が貯蔵されているので、循環ラインの切替えだけで短時間に燃料油を切替えることができる。
【0004】
しかし、このように燃料油を切替えるにあたって、短時間で切替えるにしても、切替え時間は掛かるものであるし、既存船のほとんどで採用されている1セットリングタンク×1サービスタンク方式などの場合は切替えに長時間掛かるが、何れにしても、燃料規制海域に入る前に確実に切替えが完了することが必要であり、この切替えができれば問題はないのである。
したがって、切替えに長時間掛かる場合であっても、その切替え時間を考慮して切替えに対応すれば、燃料規制に対応するための追加の設備コストを抑えながら問題なく切替え可能になる。
【0005】
【非特許文献1】雑誌「日本マリンエンジニアリング学会誌」第41巻 第1号(38〜42ページ)平成18年1月1日 社団法人 日本マリンエンジニアリング学会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料を切替えて航行する船舶において、燃料を切替える海域に近づいたら、プレワーニング海域とアラーム海域とを設定し、プレワーニング海域に至ったら燃料切替え海域に近づいたことを認識して切替え準備を始め、アラーム海域に至ったら燃料の切替えを自動的に開始し、燃料切替え海域に入る前に、あるいは、燃料切替え海域を出てから燃料の切替えを完了する燃料自動切替えシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
船舶における燃料自動切替えシステムであって、自船のタンク構造および配管構成から燃料切替えに要する時間と運行速度を定め、この燃料切替えに要する時間と運行速度から自船が燃料切替え海域までに航行する距離を算出し、この距離を燃料切替え海域の周囲に加えてアラーム海域として設定し、海域監視システムの電子海図上に定義すると共に、燃料切替えを行う前に機器の準備に要する時間を定め、この準備に要する時間と前記運航速度から、自船が設定したアラーム海域までに航行する距離を算出し、この距離をアラーム海域の周囲に加えてプレワーニング海域として設定し、海域監視システムの電子海図上に定義し、かつ、自船の位置情報をGPSにより海域監視システムの電子海図上に入力し、この自船位置情報により電子海図上で、自船がプレワーニング海域に至ったときは燃料切替え準備のためのワーニングを発し、自船がアラーム海域に至ったときは燃料切替えのためのアラームを発すると共に、海域監視システムから燃料自動切替え制御システムに作動信号を発して自動的に燃料切替え作動を行わせるようにした。
【0008】
また、この船舶における燃料自動切替えシステムにおいて、自船の航路計画が予め電子海図上に設定されているときは、電子海図上に航路上の点としてアラーム海域を定義し、自船の航路計画が設定されていない場合は、電子海図上に海域としてアラーム海域を定義するようにした。
【0009】
さらに、一般燃料用のストレージタンクと低硫黄燃料用のストレージタンクと、1個のセットリングタンクと1個のサービスタンクと、セットリングタンクとサービスタンクとに接続されたオーバーフロータンクと、2個の燃料清浄機とを備えたタンク構成において、一般燃料用および低硫黄燃料用ストレージタンクと、セットリングタンクと、オーバーフロータンクとに遠隔制御排出弁を備え、セットリングタンクと燃料清浄機とに遠隔制御供給弁を備え、これらの遠隔制御弁を海域監視システムから自動切替え作動信号を送達される燃料自動切替え制御システムからの指令で開閉制御すると共に、セットリングタンクとサービスタンクに空検知用レベル計を設け、オーバーフロータンクに満量検知用と空検知用のレベル計を設け、これらのタンク内の液面を検知しながら、作動信号により自動的に燃料切替えを行うようにしたこと。
【0010】
および、一般燃料用のストレージタンクと低硫黄燃料用のストレージタンクと、2個のセットリングタンクと2個のサービスタンクと、セットリングタンクとサービスタンクとに接続されたオーバーフロータンクと、2個の燃料清浄機とを備えたタンク構成において、一般燃料用および低硫黄燃料用ストレージタンクと、サービスタンクとに遠隔制御排出弁を備え、セットリングタンクに遠隔制御供給弁を備え、これらの遠隔制御弁を海域監視システムから自動切替え作動信号を送達される燃料自動切替え制御システムからの指令で開閉制御すると共に、セットリングタンクとサービスタンクに空検知用のレベル計を設け、これらのタンク内の液面を検知しながら、作動信号により自動的に燃料切替えを行うようにしたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
燃料を切替えて航行する船舶において、燃料切替え準備作業のためのプレワーニング海域および燃料自動切替えのためのアラーム海域を設定し、海域監視システムに入力するようにしたので、船舶がプレワーニング海域、アラーム海域に至ったらワーニングを発し、また、燃料自動切替え制御システムに燃料切替え作動信号を送信するようにしたので、船舶が燃料規制海域に入る前に、確実に低硫黄燃料に切替え、あるいは、燃料規制海域を出てから、確実に一般燃料に切替えることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図示した本発明の最良の形態について説明する。図1は本発明による設定海域と燃料切替え海域を示す概略図である。図2は本発明による燃料自動切替えシステムの構成図、図3は燃料自動切替えシステムの切替えフローを示すフローチャートである。図4は本発明の対象となるタンク構成の一例を示す図、図5は同じくタンク構成の他の例を示す図である。
【0013】
図1において、Sは該海域を航行する全ての船舶に対して、SOxの排出を規制している海域、つまり、燃料切替え海域である。因みに、燃料油中の硫黄分を1,5%以下に要求している。
Aは本発明で設定するアラーム海域であって、該アラーム海域Aは、自船のタンク構造(配置および容量など)および配管構成(配管口径および長さなど)から燃料切替えに要する時間(計算上求められる時間に余裕を持たせるため+αした時間とする)と、運行速度(自船の最大速度あるいは実行速度)を定める。そして、この燃料切替え時間と、運行速度で自船が航行する距離を算出し、この算出された距離を燃料規制海域Sの周囲に加え(燃料規制海域Sの境界ラインにこの距離を+する)、アラーム海域として設定する。
【0014】
このアラーム海域Aは海域監視システムの電子海図上に定義するが、自船の航路計画(ナビライン)が予め電子海図上に設定されているときは、電子海図上に航路上の点として定義する。また、自船の航路計画が設定されていない場合は、電子海図上に海域として定義する。
【0015】
Wは本発明で設定するプレワーニング海域であって、例えば、燃料切替えにあたって使用される清浄機を調整するなど燃料切替え開始前に機関室の関連機器をスタンバイ状態にしておく必要がある。つまり、準備に要する時間を定める(例えば、アラーム海域Aに入る30分前)。そして、この準備に要する時間で、自船が前記運行速度で航行する距離を算出し、この算出した距離をアラーム海域Aの周囲に加え(アラーム海域Aの境界ラインにこの距離を+する)、プレワーニング海域として海域監視システムの電子海図上に定義する。
【0016】
図2は燃料自動切替えシステムの全体構成を示しており、電子海図表示装置に内蔵されている海域監視システム1には、GPS2から自船の位置が常時入力される。この自船位置情報は操舵室の警報パネル3、機関室の警報パネル4および燃料自動切替え制御システム5に信号として伝えられる。
【0017】
図3は燃料自動切替えシステムの切替えフローを示すフローチャートである。先ず、自船の運航速度、燃料切替えに要する時間、切替え機器の準備に要する時間など必要項目を海域監視システム1に入力することにより、電子海図上にアラーム海域Aおよびプレワーニング海域Wが設定され、スタートとする。GPS2から常時自船の位置が海域監視システム1に入力さているので、自船がプレワーニング海域Wに入ったかチェックし、プレワーニング海域Wに入ったら、操舵室の警報パネル3および機関室の警報パネル4に準備の確認を促すためプレワーニングする。
【0018】
そして、予め自船の航路計画が設定されているかどうかを確認し、航路計画が設定されていないときはアラーム海域による監視を開始し、航路計画が設定されている場合は航路計画によるアラーム監視を開始する。アラーム海域Aに入ったら、操舵室の警報パネル3および機関室の警報パネル4に燃料切替えのアラームを発する。そして、アラーム海域に入りアラームが発せられたことを確認し、燃料自動切替え制御システム5に作動信号を発して、燃料の自動切替えを終了する。
【0019】
図4は1セットリングタンク×1サービスタンク方式の構成を示している。一般燃料用のストレージタンク11および低硫黄燃料用ストレージタンク12と、一個のセットリングタンク13および一個のサービスタンク14と、NO1清浄機15およびNO2清浄機16と、燃料油移送ポンプ17を備えており、太線で示した移送ラインにより一般燃料をメインエンジンに供給している状態を示している。なお、セットリングタンク13とサービスタンク14に連結してオーバーフロータンク18が設けられている。
【0020】
セットリングタンク13、サービスタンク14のそれぞれの底部には、例えば、マグネットフロートとスイッチによる空検知用レベル計MF1、MF2が設けられている。また、オーバーフロータンク18には満量検知用と空検知用のレベル計MF3、MF4が設けられている。
【0021】
一般燃料用ストレージタンク11および低硫黄燃料用ストレージタンク12には遠隔制御排出弁V1、V2および遠隔制御供給弁V6、V7が設けられている。また、セットリングタンク13には遠隔制御供給弁V3と遠隔制御排出弁V4が、オーバーフロータンク18には遠隔制御排出弁V5が設けられている。さらに、NO1清浄機15とNO2清浄機16の入り側には遠隔制御供給弁V8、V9が設けられている。
【0022】
そして、これらの遠隔制御弁V1からV9は海域監視システム1から自動燃料切替え作動信号を送達される燃料自動切替え制御システム5のコントロールパネル19からの指令でON、OFF制御される。なお、図中の破線はコントロールパネル19から各遠隔制御弁V1からV9への指令ラインを示している。また、遠隔制御弁としては電磁弁、空気作動弁、油圧作動弁などが使用される。
【0023】
この構成において、太線で示したラインにより一般燃料を供給している状態(通常域の航行)から、低硫黄燃料の供給に切替える手順について説明する。
今、NO1清浄機15は一般燃料の供給に使用されているので、NO2清浄機16を低硫黄燃料用としてスタンバイさせておく、燃料自動切替え制御システム5が低硫黄燃料への切替え信号を受信したら、燃料油移送ポンプ17およびNO1清浄機15を停止し、一般燃料用ストレージタンク11の遠隔制御排出弁V1、セットリングタンク13の遠隔制御供給弁V3およびNO1清浄機15の遠隔制御供給弁V8を閉止して一般燃料の供給を停止する。
【0024】
次いで、オーバーフロータンク18の遠隔制御排出弁V5と一般燃料用ストレージタンク11の遠隔制御供給弁V6を開き、オーバーフロータンク18から一般燃料用ストレージタンク11へ戻すラインを開通させる。この状態で、オーバーフロータンク11の底部に設けたレベル計MF4により液面を検知し、液面がレベル計MF4より高くなったら燃料油移送ポンプ17を駆動してオーバーフロータンク18内の一般燃料を一般燃料用ストレージタンク11に戻し入れる。また、液面がレベル計MF4より下がったときには燃料油移送ポンプ17を停止する。
【0025】
また、同時にオーバーフロータンク18の上部に設けたレベル計MF3により液面を検知し、液面がレベル計MF3より低くなったら、セットリングタンク13の遠隔制御排出弁V4を開き、セットリングタンク13内の一般燃料をオーバーフロータンク18に移送する。
また、セットリングタンク13の底部に設けたレベル計MF1によりセットリングタンク13内の液面を検知し、液面がレベル計MF1より低くなったら、セットリングタンク13の空の状態が確認されるので、セットリングタンク13の遠隔制御排出弁V4、オーバーフロータンク18の遠隔制御排出弁V5、一般燃料用ストレージタンク11の遠隔制御供給弁V6を閉止し、オーバーフロータンク18から一般燃料用ストレージタンク11へ戻すラインを閉鎖する。
【0026】
そして、低硫黄燃料用ストレージタンク12の遠隔制御排出弁V2、セットリングタンク13の遠隔制御供給弁V3、NO2清浄機16の遠隔制御供給弁V9を開き、低硫黄燃料を供給するラインを開通する。そして、燃料油移送ポンプ17を駆動して低硫黄燃料をセットリングタンク13に供給する。また、サービスタンク14の底部に設けたレベル計MF2によりサービスタンク14内の液面を検知し、液面がレベル計MF2より下がったらサービスタンク14内の空の状態が(一般燃料を遣い切ったことが)確認されるので、NO2清浄機16を始動させ、サービスタンク14に低硫黄燃料を供給する。最後に低硫黄燃料への切替え終了信号を出して自動切替えを終了する。
【0027】
なお、上記の説明においては、一般燃料から低硫黄燃料に切替えるにあたり、サービスタンク14内の一般燃料を使い切るものとして説明したが、図中サービスタンク14の底部に設けた開閉弁V10を操作して、サービスタンク14内の一般燃料を一部オーバーフロータンク18に落とし、一般燃料用ストレージタンク11に戻すこともでき、この場合は、その分だけ燃料切替え時間を短縮することができる。
【0028】
図5は2セットリングタンク×2サービスタンク方式の構成を示している。一般燃料用のストレージタンク11および低硫黄燃料用タンク12と、一般燃料用のセットリングタンク21および低硫黄燃料用セットリングタンク22と、一般燃料用サービスタンク23および低硫黄燃料用サービスタンク24と、NO1清浄機15およびNO2清浄機16と、燃料油移送ポンプ17を備えており、太線で示した移送ラインにより一般燃料を供給している状態を示している。なお、セットリングタンク21、22に連結してオーバーフロータンク18が設けられている。
【0029】
セットリングタンク21、22とサービスタンク23、24のそれぞれの底部には、例えば、マグネットフロートとスイッチによる空検知用のレベル計MF5、MF6、MF7、MF8が設けられている。また、ストレージタンク11、12には遠隔制御排出弁V1、V2が設けられ、セットリングタンク21、22には遠隔制御供給弁V11、V12が設けられ、サービスタンク23、24には遠隔制御排出弁V13、V14が設けられている。これらの遠隔制御弁V1、V2、V11からV14は海域監視システム1から自動切替え信号が送達される燃料自動切替え制御システム5のコントロールパネル19からの指令でON、OFF制御される。
【0030】
この構成において、太線で示す移送ラインにより一般燃料を供給している状態から、低硫黄燃料への自動切替え手順を説明する。いま、NO1清浄機15は一般燃料用として使用されており、NO2清浄機16を低硫黄燃料用にスタンバイさせておく、低硫黄燃料用への切替え信号を受信したら、NO1清浄機15と燃料油移送ポンプ17が停止され、一般燃料用のストレージタンク11の遠隔制御排出弁V1と一般燃料用のセットリングタンク21への遠隔制御供給弁V11が閉止され、一般燃料用のセットリングタンク21、同サービスタンク23への一般燃料移送ラインを停止する。
【0031】
一般燃料の供給が停止されたあと、低硫黄燃料用ストレージタンク12の遠隔制御排出弁V2および低硫黄燃料用セットリングタンク22の遠隔制御供給弁V12が開かれ、低硫黄燃料のセットリングタンク22への燃料移送ラインが開通される。そして、燃料油移送ポンプ17が駆動され、低硫黄燃料用セットリングタンク22への低硫黄燃料の供給が開始される。
【0032】
次いで、低硫黄燃料用セットリングタンク22内の液面が、レベル計MF6により検知され、液面がレベル計MF6より高くなると、NO2清浄機16が始動され、低硫黄燃料用セットリングタンク22内の低硫黄燃料が低硫黄燃料用サービスタンク24に供給される。
また、低硫黄燃料用サービスタンク24内の液面がレベル計MF8により検知され、液面がレベル計MF8より高くなると、低硫黄燃料用タンク24の遠隔制御排出弁V14が開き、一般燃料用サービスタンク23の遠隔制御排出弁V13が閉止し、メインエンジンへの低硫黄燃料の供給が開始される。
【0033】
このメインエンジンへの低硫黄燃料の供給が開始されたことが、燃料自動切替え完了の信号として発せられる。なお、低硫黄燃料用サービスタンク24の遠隔制御排出弁V14が開かれ、低硫黄燃料が供給開始されるまでの間は一般燃料用サービスタンク23内に残存する一般燃料が供給されている。
【0034】
この図5に示す2セットリングタンク×2サービスタンク方式のタンク構成の場合は、燃料の切替えにあたって、切替える側のセットリングタンク、サービスタンク(上記説明において、低硫黄燃料用21、23)は共に準備された状態にあるので、いきなり、切替え燃料のタンクへの供給ができ、タンク内に所定量が溜まることにより切替えられ、短時間での燃料切替えが可能である。
【0035】
さて、上記の説明においては、燃料規制海域に入る前に一般燃料から低硫黄燃料に切替える例について説明したが、反対に燃料規制海域から出るときには低硫黄燃料から一般燃料に切替えて航行することになる。この場合も同様に燃料規制海域から出る前に、切替えに要する時間と運行速度とから切替えに要する距離を算出してアラーム海域Aを設定し、電子海図上に定義し、さらに、切替えのための準備に要する時間と運行速度とから準備に要する距離を算出してプレワーニング海域Wを設定し、電子海図上に定義して燃料の自動切替えを設定する。
【0036】
なお、燃料規制海域から出る場合は、完全に燃料規制海域を出てから一般燃料に切替えるようにしなければならないが、いつまでに燃料を切替えなければならないという制約はなく、燃料切替え時間を考慮しなくてよいので、例えば、燃料切替え時間を0時間と設定することができる。つまり、アラーム海域を燃料規制海域の規制ライン上に設定し、燃料規制海域を越えてから、燃料切替えの作動をするように設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による設定海域と燃料規制海域を示す概略図。
【図2】本発明による燃料自動切替えシステムの構成図。
【図3】燃料自動切替えシステムの切替えフローを示すフローチャート。
【図4】本発明の対象となるタンク構成の一例を示す図。
【図5】同じくタンク構成の他の例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 海域監視システム 2 GPS
3 操舵室警報パネル 4 機関室警報パネル
5 燃料自動切替え制御システム
11 一般燃料用ストレージタンク 12 低硫黄燃料用ストレージタンク
13 セットリングタンク 14 サービスタンク
15 NO1清浄機 16 NO2清浄機
17 燃料油移送ポンプ 18 オーバーフロータンク
19 コントロールパネル
21 一般燃料用セットリングタンク 22 低硫黄燃料用セットリングタンク
23 一般燃料用サービスタンク 24 低硫黄燃料用サービスタンク
S 燃料規制海域 A アラーム海域
W プレワーニング海域 V 弁
MF レベル計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自船のタンク構造および配管構成から燃料切替えに要する時間と運行速度を定め、この燃料切替えに要する時間と運行速度から自船が燃料切替え海域までに航行する距離を算出し、この距離を燃料切替え海域の周囲に加えてアラーム海域として設定し、海域監視システムの電子海図上に定義すると共に、燃料切替えを行う前に機器の準備に要する時間を定め、この準備に要する時間と前記運航速度から、自船が設定したアラーム海域までに航行する距離を算出し、この距離をアラーム海域の周囲に加えてプレワーニング海域として設定し、海域監視システムの電子海図上に定義し、かつ、自船の位置情報をGPSにより海域監視システムの電子海図上に入力し、この自船位置情報により電子海図上で、自船がプレワーニング海域に至ったときは燃料切替え準備のためのワーニングを発し、自船がアラーム海域に至ったときは燃料切替えのためのアラームを発すると共に、海域監視システムから燃料自動切替え制御システムに作動信号を発して自動的に燃料切替え作動を行わせるようにしたことを特徴とする船舶における燃料自動切替えシステム。
【請求項2】
自船の航路計画が予め電子海図上に設定されているときは、電子海図上に航路上の点としてアラーム海域を定義することを特徴とする請求項1記載の船舶における燃料自動切替えシステム。
【請求項3】
自船の航路計画が設定されていない場合は、電子海図上に海域としてアラーム海域を定義することを特徴とする請求項1記載の船舶における燃料自動切替えシステム。
【請求項4】
一般燃料用のストレージタンクと低硫黄燃料用のストレージタンクと、1個のセットリングタンクと1個のサービスタンクと、セットリングタンクとサービスタンクとに接続されたオーバーフロータンクと、2個の燃料清浄機とを備えたタンク構成において、一般燃料用および低硫黄燃料用ストレージタンクと、セットリングタンクと、オーバーフロータンクとに遠隔制御排出弁を備え、セットリングタンクと燃料清浄機とに遠隔制御供給弁を備え、これらの遠隔制御弁を海域監視システムから自動切替え作動信号を送達される燃料自動切替え制御システムからの指令で開閉制御すると共に、セットリングタンクとサービスタンクに空検知用レベル計を設け、オーバーフロータンクに満量検知用と空検知用のレベル計を設け、これらのタンク内の液面を検知しながら、作動信号により自動的に燃料切替えを行うようにしたことを特徴とする請求項1〜3記載の船舶における燃料自動切替えシステム。
【請求項5】
一般燃料用のストレージタンクと低硫黄燃料用のストレージタンクと、2個のセットリングタンクと2個のサービスタンクと、セットリングタンクとサービスタンクとに接続されたオーバーフロータンクと、2個の燃料清浄機とを備えたタンク構成において、一般燃料用および低硫黄燃料用ストレージタンクと、サービスタンクとに遠隔制御排出弁を備え、セットリングタンクに遠隔制御供給弁を備え、これらの遠隔制御弁を海域監視システムから自動切替え作動信号を送達される燃料自動切替え制御システムからの指令で開閉制御すると共に、セットリングタンクとサービスタンクに空検知用のレベル計を設け、これらのタンク内の液面を検知しながら、作動信号により自動的に燃料切替えを行うようにしたことを特徴とする請求項1〜3記載の船舶における燃料自動切替えシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−331484(P2007−331484A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163783(P2006−163783)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(503218067)住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 (55)