説明

船舶の浮き上がりを抑えて安定させる筒型減揺装置に設けた水循環装置

【課題】船舶の浮き上がりを抑えて安定した航行をさせる筒型減揺装置の筒内に留まる水を、外来生物の運搬を行わないよう、外の水と入れ替える為の水循環装置を提供する。
【解決手段】減揺装置の筒1の下端部に、船の進行方向からの水を受けとめて、又は受け入れてから、前記水を誘導して前記筒の上部に送り込む誘導板11、又は誘導管を設けて循環させるもので、電気やモーター等の動力を用いずに簡単な装置で外の水との循環が図れるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の浮き上がりを抑えて安定した航行をさせる筒型減揺装置の筒内に留まる水を、外の水と入れ替える為の水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、下端は船底から上端は船の甲板を越えて上方向にマストの様に垂直に長く延ばした貫通した筒(1)を設けたことと、前記船を停泊させた時に該筒(1)を水中に沈める様に該筒(1)の下側の開口部から水を入れながら深く垂直に降ろしてから該筒(1)の上側部を前記船に固定して前記船と該筒(1)とを一体化させた事で、該筒(1)が振り子の様な横揺れとなる横移動の場合には、該筒(1)が水を切る抵抗力と該筒の中に留まっている水自体の重量により横移動が抑制されたときは該筒(1)の上側開口部に開閉自在の蓋(3)を設けて、水中深く垂直に降ろした前記筒(1)を前記蓋(3)で閉じて密閉できるようにし前記筒(1)内の水が下部の開口部から流失し難くしたことで、縦揺れに対しても該筒(1)内の水の重量により抑制され、前記船が発進の際には前記筒(1)を水中から引き上げて進行出来るようにしたことを特長とした特許第4441737号の船舶等の減揺装置において、荷降ろしでの重量減に伴う船体の浮き上がりを抑えるため前記蓋(3)を閉じたことで該筒(1)内に留まっている水が該筒(1)下部の開口部から流失しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わらずに外来生物の運搬を行ってしまうかのう危険性があるので、簡単で効率的な循環装置を設けて外の水と循環できる様にすることを提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4441737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶等の減揺装置の筒(1)を、荷降ろしでの重量減に伴う船体の浮き上がりを抑えるための筒(1)として、筒(1)上部の蓋(3)を閉じて密閉されて留まっている該筒(1)内の水が流出しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに、該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わらずに外来生物の運搬を行ってしまう危険性を排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採用した。
【0006】
請求項1に係る発明は、 下端は船底から上端は船の甲板を越えて上方向にマストの様に垂直に長く延ばした貫通した筒(1)を設けたことと、前記船を停泊させた時に該筒(1)を水中に沈める様に該筒(1)の下側の開口部から水を入れながら深く垂直に降ろしてから該筒(1)の上側部を前記船に固定して前記船と該筒(1)とを一体化させた事で、該筒(1)が振り子の様な横揺れとなる横移動の場合には該筒(1)が水を切る抵抗力と該筒(1)の中に留まっている水自体の重量により横移動が抑制されたときは該筒(1)の上側開口部に開閉自在の蓋(3)を設けて水中深く垂直に降ろした前記筒(1)を前記蓋(3)で閉じて密閉できるようにし前記筒(1)内の水が下部の開口部から流失し難くしたことで、縦揺れに対しても該筒(1)内の水の重量により抑制され前記船が発進の際には前記筒(1)を水中から引き上げて進行出来るようにしたことを特長とした船舶の減揺装置において、荷降ろしでの重量減に伴う船体の浮き上がりを抑えるため水中深く垂直に降ろしてから前記蓋(3)を閉じて上部を密閉して水が入った状態のまま前記筒(1)を下部の開口部分が水中に浸かって該筒(1)内に留まっている水が流失しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに、該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わり循環するように該筒(1)の下部に進行方向からの水を受けとめると伴に誘導して該筒(1)内の上部に送り込むためのスロープを持った水誘導板(11)を設けて循環させる技術手段を採用した。
【0007】
請求項2に係る発明は、船体の浮き上がりを抑えるため水中深く垂直に降ろしてから前記蓋(3)を閉じて上部を密閉して水が入った状態のまま前記筒(1)を下部の開口部分が水中に浸かって該筒(1)内に留まっている水が流失しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに、該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わり循環するように該筒(1)の下部に進行方向からの水を受け入れるための片側開口部を船の進行方向に開けて向けると伴に反対端部を前記筒(1)内の上部方向に向けた水誘導管(15)を設けて循環させる技術手段を採用した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、簡単な構造の船の減揺装置として、停泊時に筒(1)を水中深く沈めて減揺し、航行時に積荷が少なく重量が不足して船が浮き上がる時には、水の入ったままの該筒(1)を一定の深さまで引き上げてから出航することで船の安定を保てるものであるが、該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わらずに外来生物の運搬を行ってしまう危険性を排除するための該筒(1)内の水の循環についても、電気やモーター等の動力を用いずに簡単な装置で外の水との入れ替えが図れることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】は、減揺装置の筒(1)を水中に降ろした停泊中の船舶で、一部透視図を用いた側面図である。
【図2】は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま減揺装置の筒(1)を引き上げて左方向に航行する船舶で、一部透視図を用いた側面図である。
【図3】は、左側に船首を向けた船舶の平面図である。
【図4】は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま減揺装置の筒(1)を引き上げた船舶で、一部透視図を用いた正面図である。
【図5】は、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部正面図である。
【図6】は、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部側面図である。
【図7】は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま減揺装置の筒(1)を引き上げて左方向に航行する船舶で、一部透視図を用いた側面図である。
【図8】は、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部正面図である。
【図9】は、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の実施の態様を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1は、滑車(8)を介してワイヤーロープ(7)を伸ばして減揺装置の筒(1)を水中に降ろした停泊中の船舶で該筒(1)の下端部にスロープを持った水誘導板(11)を備えている。
【0011】
図2は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま筒(1)をワイヤーロープ(7)で引き上げて矢印の左方向に航行する船舶で、該筒(1)の下端部には、本発明のスロープを持った水誘導板(11)が設けられており、進行方向からの水が該水誘導板(11)に突き当たると伴に該水誘導板(11)のスロープに押し上げられてから前記筒(1)の上部へ流れて、該筒(1)内の水が循環する。
【0012】
図3は、左側に船首を向けた船舶の平面図である。
【0013】
図4は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま減揺装置の筒を引き上げた船舶で、一部透視図を用いた正面図である。
【0014】
図5は、本発明の水誘導板(11)を表すため、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部正面図で、該筒(1)の下端部正面に水平な切れ込み部(12)を入れて、円柱形の該筒(1)の最下端部から切れ込み部(12)までスロープができるように内側へ押し込んで湾曲させて、さらに、押し込んで湾曲させた上端を前記筒(1)内の上方向にスロープの延長部(13)として伸ばして設けている。
【0015】
図6は、図5と同じく本発明の水誘導板(11)を表すため、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部側面図で、該筒(1)の下端部正面に水平な切れ込み部(12)を入れて、減揺装置の円柱形の筒(1)の最下端部から切れ込み部(12)までスロープができるように内側へ押し込んで湾曲させて、さらに、切れ込み部(12)から先の内側の上方向にスロープの延長部(13)として伸ばして設けていることを表している。
【0016】
図7は、蓋(3)を閉じて水を中に留めたまま減揺装置の筒(1)をワイヤーロープ(7)で引き上げて矢印の左方向に航行する船舶で、該筒(1)の下端部には、本発明の水誘導管(15)が設けられており、該水誘導管(15)のラッパの様に広げて開けた下側開口部に進行方向からの水が流れ込んで、そのまま上側となる反対端部の開口部から前記筒(1)の上部へ流れて、該筒(1)内の水が循環する。
【0017】
図8は、本発明の水誘導管(15)を表すため、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部正面図で、該筒(1)の下端部に正面に向けて水誘導管(15)の開口部があるが、その開口部の手前に番線状の櫛型のゴミ流入防止装置(16)が前記筒(1)の下端部に設けてている。
【0018】
図9は、図8と同じく本発明の水誘導管(15)を表すため、減揺装置の筒(1)の下端部のみを拡大した部分の、一部透視図を用いた一部側面図で、該筒(1)の下端部の進行方向側となる左側に番線状の櫛型のゴミ流入防止装置(16)が設けられており、右側に開口部を大きく開けた水誘導管(15)が設けられ該水誘導管(15)の反対側開口部は前記筒(1)内の上方向に向けて伸ばして設けていることを表している。
【符号の説明】
【0019】
1…筒
3…蓋
6…滑車を取り付けたポール
7…ワイヤーロープ
8…滑車
11…水誘導板
12…切れ込み部
13…スロープの延長部
15…水誘導管
16…ゴミ流入防止装置
17…船底に設けた漂流物流入防止板
18…ロープ留め金具
20…水を留めたまま引き上げた筒内の水位
A…船
W…水面










【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端は船底から上端は船の甲板を越えて上方向にマストの様に垂直に長く延ばした貫通した筒(1)を設けたことと前記船を停泊させた時に該筒(1)を水中に沈める様に該筒(1)の下側の開口部から水を入れながら深く垂直に降ろしてから該筒(1)の上側部を前記船に固定して前記船と該筒(1)とを一体化させた事で該筒(1)が振り子の様な横揺れとなる横移動の場合には該筒(1)が水を切る抵抗力と該筒(1)の中に留まっている水自体の重量により横移動が抑制されたときは該筒(1)の上側開口部に開閉自在の蓋(3)を設けて水中深く垂直に降ろした前記筒(1)を前記蓋(3)で閉じて密閉できるようにし前記筒(1)内の水が下部の開口部から流失し難くしたことで縦揺れに対しても該筒(1)内の水の重量により抑制され前記船が発進の際には前記筒(1)を水中から引き上げて進行出来るようにしたことを特長とした船舶の減揺装置において、荷降ろしでの重量減に伴う船体の浮き上がりを抑えるため水中深く垂直に降ろしてから前記蓋(3)を閉じて上部を密閉して水が入った状態のまま前記筒(1)を下部の開口部分が水中に浸かって該筒(1)内に留まっている水が流失しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わり循環するように該筒(1)の下部に進行方向からの水を受けとめると伴に誘導して該筒(1)内の上部に送り込むためのスロープを持った水誘導板(11)を設けたことを特徴とした船舶等の浮き上がりを抑えて安定させる筒型減揺装置に設けた水循環装置。
【請求項2】
船体の浮き上がりを抑えるため水中深く垂直に降ろしてから前記蓋(3)を閉じて上部を密閉して水が入った状態のまま前記筒(1)を下部の開口部分が水中に浸かって該筒(1)内に留まっている水が流失しない程度の深さまで引き上げて出航し航行したときに該筒(1)内に留まっている水が外の水と入れ替わり循環するように該筒(1)の下部に進行方向からの水を受け入れるための片側開口部を船の進行方向に開けて向けると伴に反対端部を前記筒(1)内の上部方向に向けた水誘導管(15)を設けたことを特徴とした船舶等の浮き上がりを抑えて安定させる筒型減揺装置に設けた水循環装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6502(P2012−6502A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144716(P2010−144716)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(592040206)