説明

船舶推進装置用エンジンの機温表示装置及び船舶

【課題】エンジン冷却水温度が高いモデルについてもエンジン冷却水温度を適正な温度レベルに表示できる船舶推進装置用エンジン状態表示装置を提供する。
【解決手段】船外機BのエンジンCに関する温度の検出信号に基づいて機温データ値を算出し、この機温データ値を船舶A側に備えるエンジン状態表示装置20にLANにより送信する。エンジン状態表示装置20の制御部22で不揮発メモリ23に記憶してある標準のエンジンモデルの複数の閾値温度に基づいて機温データ値を演算して複数段階の温度レベルの中の一つの温度レベルを指示する表示データとし、この表示データを船舶A側の表示器25に表示する。機温データ値算出送信手段は、エンジンに固有のエンジンブロック壁温度に関する複数の閾値を用いて演算を行い、適正な換算した機温データ値として送信するように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジン状態の表示要素の1つのエンジンの機温を船舶側の表示器に表示するエンジン状態表示装置を備えた船舶推進装置用エンジンの機温表示装置及び船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船外機のエンジン状態の表示要素の1つに、エンジンの機温(エンジン冷却水温度)がある。従来においては、エンジン冷却水温度を検出するセンサの信号をエンジンコントロールユニットに入力し、エンジンコントロールユニットからエンジン冷却水温度のデータをLAN(Local Area Network)により船舶側の表示器に送信し表示している。
【0003】
特許文献1には、船外機のエンジンの各種状態を検出した状態データ値がLANにより送信され、状態データ値を送受信モジュールを介して制御部(CPU)に入力され、該制御部で不揮発メモリに記憶してある表示情報に基づいて状態データ値を演算して表示データ(複数段階の温度レベル)とし、この表示データを表示ドライバを介して表示器に表示するエンジン状態表示装置とを備えた船舶推進装置用エンジン状態表示装置が開示されている。
【0004】
この船舶推進装置用エンジン状態表示装置によれば、不揮発メモリには、表示情報としてエンジン冷却水温度に関する複数の閾値温度が予め記憶され、制御部は、LANにより送信されるエンジン冷却水温度を検出する温度センサの検出信号を入力すると、エンジン冷却水温度を算出し、さらにこのエンジン冷却水温度を複数の閾値温度と対比することにより、エンジン冷却水温度を5段階のレベルに温度表示するための表示データに変換する。
【特許文献1】特開2005−164743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の船舶推進装置用エンジン状態表示装置によれば、不揮発メモリに記憶してあるエンジン冷却水温度に関する複数の閾値温度が船外機のモデル毎に共通で使用され、一方、船外機のエンジンコントロールユニットから送信されるエンジン冷却水温度レベルはモデル毎に異なるので、異なるモデルの表示情報(エンジン冷却水温度に関する複数の閾値温度)に基づいて状態データ値を演算して表示データを出力する場合があり、そのような場合は、表示器に表示されるエンジン冷却水温度は望ましい温度レベルを表示するものではなかった。例えば、エンジン冷却水温度が高いモデルの表示情報をエンジン冷却水温度が低いモデルに用いると、船舶推進装置用エンジン状態表示装置の表示器にそのまま高いレベルを表示してしまい、ユーザーに不安を与えてしまう可能性があった。
【0006】
そこで、特にエンジン冷却水温度の設定が異なるモデル、例えば、エンジン冷却水温度が高いモデルのときは、新たな温度センサをエンジン冷却水温度が適切に検出できる適切な位置に備えることにより、適正な温度レベルを表示させるようなシステムを構成することが考えられる。
【0007】
しかし、このシステムは、部品点数と組み付け工数が増えると共に、コストアップとなる。
【0008】
そこで、この発明は、船外機、特にエンジン冷却水温度の設定が異なるモデルの船外機に買い換えても船舶に備えられた既存のエンジン状態表示装置に適正なレベルの機温を表示できる船舶推進装置用エンジンの機温表示装置及び船舶を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、船舶推進装置のエンジンに関する温度を検出し、この検出信号に基づいて機温データ値を算出し、この機温データ値をLANにより送信する機温データ値算出送信手段と、前記機温データ値を制御部で標準の閾値温度に基づいて演算して複数段階の温度レベルの中の一つの温度レベルを指示する表示データとし、この表示データを船舶側の表示器に表示するエンジン状態表示装置とを備えた船舶推進装置用エンジンの機温表示装置において、前記機温データ値算出送信手段は、前記エンジンに固有のエンジンブロック壁温度に関する複数の閾値を用いて前記検出信号に対して演算処理を行い、前記エンジン状態表示装置で演算されるときに適正な温度レベルになるように換算した機温データ値として送信するように構成された船舶推進装置用エンジンの機温表示装置としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記船舶推進装置のエンジンブロック壁温度を検出し、この検出信号に基づいて前記機温データ値に算出することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記エンジンコントロールユニットの制御部が、前記機温データ値を算出することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一に記載の機温表示装置を備えた船舶としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
各請求項に記載の発明によれば、船舶推進装置、特にエンジン冷却水温度の設定が異なるモデルの船舶推進装置に買い換えても船舶に備えられた既存のエンジン状態表示装置に適正なレベルの機温を表示できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、船舶推進装置のエンジンブロック壁温度から機温を算出するので、より適正な温度検出が行えて、適正なレベルのエンジン冷却水温度を表示することができ、エンジンの制御に必要な機温の検出センサを用いることができ、機温を表示するための温度センサを設ける必要がない。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、船舶推進装置にエンジンコントロールユニットとは別途に、機温データ値を算出する制御部を設けずに、エンジンコントロールユニットの制御部のソフトプログラムを修正することで対応でき、既存のエンジン状態表示装置に対応させることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れか一に記載の発明と同一の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0018】
図1乃至図7には、この発明の実施の形態1を示す。
【0019】
まず構成を説明する。図1に船舶推進装置用エンジンの機温表示装置を実施するための船舶推進装置用エンジン状態表示システム(以下、単に表示システムという。)100が示されている。該表示システムは、図2に示すように、船舶Aの後尾に設置する船外機Bに備えるエンジンコントロールユニット(以下、ECUという)10と、船舶Aの運転席の前方位置に備えられる船舶推進装置用エンジン状態表示装置(以下、単にゲージという。)20と、及び、船外機BのエンジンCの各種状態をそれぞれ検出する複数の検出手段(図示しない)とを備え、ECU10からゲージ20に対してLANにより状態データ値を送信し、ゲージ20において状態データ値を表示情報(複数の閾値)を用いて演算して表示データとして表示部に船舶推進装置用エンジンの各種状態を表示するシステムである。
【0020】
ECU10は、エンジンCのエンジン回転数、機温、バッテリの電圧、及び油圧状態をそれぞれ所要の検出手段(図示しない)により検出した検出信号aを入力し、演算して状態データ値(機温データ値)bを作り、該状態データ値bをLANによりゲージ20へ送信する(図1参照)。ゲージ20は、図3に示すように、例えば液晶パネル等からなる表示部25に、エンジン回転数25aを数値表示し、その下側にいずれも5ピッチメモリとカーソル(指針)移動による5段階レベル表示である機温(≒エンジン冷却水温度)25bとバッテリの電圧レベル25cと油圧レベル25dの各状態を表示する。以下、エンジン回転数、バッテリの電圧、及び油圧状態については説明を省略し、機温の表示について説明する。
【0021】
ECU10は、制御部11によりエンジン制御を行うと共に、図6に示すフローチャートに示す制御手順で動作する。制御部11は、エンジンブロック壁温度を検出する温度センサ(図示しない)の検出信号をANポートより入力してA/D変換し(ステップS11)、演算してエンジンブロック壁温度を算出し(ステップS12)、この温度に対して、不揮発メモリ12に記憶されている第1乃至第4の閾値を順に読み出してそれぞれ判断し(ステップS13〜S16)、ゲージ20に適切に処理されるように換算された状態データ値(通信データ)b1〜b5を作り送受信モジュール(図示しない)よりゲージ20に送信する(ステップS18〜S22)ように構成され、このフローを反復する。
【0022】
ゲージ20は、送受信モジュール21と制御部22と不揮発メモリ23と表示ドライバ24と表示部25とを備えてなる。
【0023】
ゲージ20は、ECU10からLANにより送信される状態データ値b1〜b5を送受信モジュール21で受信しデジタルデータの状態データ値b1‘〜b5’に変換して制御部22に入力し、制御部22で、図7に示すフローチャートに示す制御手順で動作し、状態データ値b1‘〜b5’に対して、不揮発メモリ23に記憶されている第1乃至第4の閾値を順に読み出してそれぞれ判断し(ステップS33〜S36)、ゲージ20に適切に処理されるように換算された第1レベル〜第5レベルの表示データc1〜c5を作り(ステップS37〜S41)、この表示データを表示ドライバ24を介して表示部25に表示するように構成され、このフローを反復する。
【0024】
続いて、不揮発メモリ12に記憶されている第1乃至第4の閾値と、不揮発メモリ23に記憶されている第1乃至第4の閾値との関係について図4と図5に示す折れ線グラフを参照して説明する。
【0025】
図4に示す折れ線グラフは、標準のエンジンモデルのエンジンブロック壁温度と機温との関係を示すものである。この折れ線グラフに示すように、エンジンブロック壁温度の、−30℃、50℃、59℃、125℃、135℃、150℃が屈曲ポイントの温度であり、各温度に対して、機温の、−30℃、25℃、45℃、65℃、85℃、150℃がそれぞれ対応している。エンジンブロック壁温度の59℃はエンジンの正常時の最小温度であり、エンジンブロック壁温度の125℃はエンジンの正常時の最大温度である。
【0026】
図4には、折れ線グラフの各1本の折れ線(直線)に対応して図3に対応する表示部25の5段階レベルの機温表示が説明の理解のために表示されている。これから分かるように、この実施の形態では、表示部25は、折れ線グラフの1本の折れ線(直線)と、ゲージ20の温度表示を5ピッチメモリの1ピッチとを対応させ、かつ、折れ線グラフの何れか1本の直線上にセンサ温度に対応して、カーソル(指針)を対応する1ピッチの中央に表示する方式としている。
【0027】
図5に示す折れ線グラフは、エンジン冷却水温度の設定が異なる(標準のエンジンモデルよりもエンジンブロック壁温度が高い)エンジンモデルのエンジンブロック壁温度と機温との関係を示すものである。この折れ線グラフに示すように、エンジンブロック壁温度の、−30℃、78℃、93℃、175℃、188℃、200℃が屈曲ポイントの温度であり、各温度に対して、機温の、−30℃、30℃、55℃、75℃、95℃、150℃がそれぞれ対応している。エンジンブロック壁温度の93℃はエンジンの正常時の最小温度であり、エンジンブロック壁温度の175℃はエンジンの正常時の最大温度である。
【0028】
図6に示すフローチャートのステップS13〜S16に係る第1乃至第4の閾値は、図2に示す船外機BのエンジンCに固有の値であり、エンジンCに固有のECU10の不揮発メモリ12に記憶されている。具体的な第1、第2、第3、第4の閾値(数値)は、エンジンCが例えば図4に示すエンジンブロック壁温度が低いエンジンモデルAの場合には、図4中の、エンジンブロック壁温度に関する50℃、59℃、125℃、135℃である。また、エンジンCが例えば図5に示すエンジンブロック壁温度が高いエンジンモデルBの場合には、第1、第2、第3、第4の閾値は、図5中の、エンジンブロック壁温度に関する78℃、93℃、175℃、188℃である。
【0029】
図7に示すフローチャートのステップS33〜S36に係る第1乃至第4の閾値は、図2に示す船舶Aに備えるゲージ20に固有の値であり、不揮発メモリ23に記憶されている。具体的な第1、第2、第3、第4の閾値(数値)は、エンジンCが標準モデルの機温に関する温度に限定される。具体的な第1、第2、第3、第4の閾値(数値)は、この実施の形態では、図4に示すエンジンブロック壁温度が低いエンジンモデルAが標準であるので、図4中の、機温に関する25℃、45℃、65℃、85℃である。
【0030】
従って、図4の温度特性を有するエンジンモデルAと図5の温度特性を有するエンジンモデルBとの温度特性が相違したときに以下に述べるような制御が行われる。
【0031】
特に機温が高いモデルの船外機に買い換えても船舶に備えられた既存のエンジン状態表示装置に適正なレベルの機温を表示できることについて、以下に図4〜図7を用いて具体的に説明する。
【0032】
図6のステップS13の判断においてブロック壁温度が第1の閾値よりも小さい場合、ステップS18へ進む。該ステップS18の「ゲート20の第1の閾値よりも小さい状態データ値b1を出力する」ことについて、具体的数値で説明すると、ECU10が、図5において、エンジンブロック壁温度の第1レベル(−30℃〜78℃)内の適宜温度、例えばエンジンブロック壁温度70℃を検出した場合に、図4において、機温が第1レベル(−30℃〜25℃)内の適宜温度(好ましくはほぼ中間の温度の10℃)に相当する信号をゲージ20へ出力するものである。これは、ECU10が、非標準のエンジンモデルの第1レベルのエンジンブロック壁温度の入力に対して、標準のエンジンモデルの第1レベルの機温に換算して出力するものである。すると、図7のステップS33の判断において機温データ値が第1の閾値よりも小さいとステップS37へ進み、適正な第1レベルの機温を表示できる。
【0033】
図6のステップS14の判断においてエンジンブロック壁温度が第2の閾値よりも小さい場合、ステップS19へ進む。該ステップS19の「ゲート20の第1と第2の閾値間の状態データ値b2を出力する」ことについて、具体的数値で説明すると、ECU10が、図5において、第2レベルの温度範囲(78℃〜93℃)内の適宜温度、例えばエンジンブロック壁温度90℃を検出した場合に、図4において、機温が第2レベルの温度範囲(25℃〜45℃)内の適宜の温度(好ましくは中間の温度の35℃)に相当する信号をゲージ20へ出力するものである。これは、ECU10が、非標準のエンジンモデルの第2レベルのエンジンブロック壁温度の入力に対して、標準のエンジンモデルの第2レベル内の適宜の機温に換算して出力するものである。すると、図7のステップS34の判断において機温データ値が第2の閾値よりも小さいとステップS38へ進み、適正な第2レベルの機温を表示できる。
【0034】
図6のステップS15の判断においてエンジンブロック壁温度が第3の閾値よりも小さい場合、ステップS20へ進む。該ステップS20の「ゲート20の第2と第3の閾値間の状態データ値b3を出力する」ことについて、具体的数値で説明すると、ECU10が、図5において、第3レベルの温度範囲(93℃〜175℃)内の適宜温度、例えばエンジンブロック壁温度160℃を検出した場合に、図4において、機温が第3レベルの温度範囲(45℃〜65℃)内の適宜温度(好ましくは中間の温度の55℃)に相当する信号をゲージ20へ出力するものである。これは、ECU10が、非標準のエンジンモデルの第3レベルのエンジンブロック壁温度の入力に対して、標準のエンジンモデルの第3レベル内の適宜の機温に換算して出力するものである。すると、図7のステップS35の判断において機温データ値が第3の閾値よりも小さいとステップS39へ進み、適正な第3レベルの機温を表示できる。
【0035】
図6のステップS16の判断においてエンジンブロック壁温度が第4の閾値よりも小さい場合、ステップS21へ進む。該ステップS21の「ゲート20の第3と第4の閾値間の状態データ値b4を出力する」ことについて、具体的数値で説明すると、ECU10が、図5において、第4レベルの温度範囲(175℃〜188℃)内の適宜温度、例えばエンジンブロック壁温度180℃を検出した場合に、図4において、機温が第4レベルの温度範囲(65℃〜85℃)内の適宜温度(好ましくは中間の温度の75℃)に相当する信号をゲージ20へ出力するものである。これは、ECU10が、非標準のエンジンモデルの第4レベルのエンジンブロック壁温度の入力に対して、標準のエンジンモデルの第4レベル内の適宜の機温に換算して出力するものである。すると、図7のステップS36の判断において機温データ値が第4の閾値よりも小さいとステップS40へ進み、適正な第4レベルの機温を表示できる。
【0036】
図6のステップS16の判断においてブロック壁温度が第4の閾値よりも大きい場合、ステップS22へ進み、該ステップS22の「ゲート20の第4の閾値よりも大きい状態データ値b5を出力する」ことについて、具体的数値で説明すると、ECU10が、図5において、第5レベルの温度範囲(188℃〜200℃)内の適宜温度、例えばエンジンブロック壁温度200℃を検出した場合に、図4において、機温が第5レベルの温度範囲(85℃〜150℃)内の適宜温度(好ましくはほぼ中間の温度の120℃)に相当する信号をゲージ20へ出力するものである。これは、ECU10が、非標準のエンジンモデルの第5レベルのエンジンブロック壁温度の入力に対して、標準のエンジンモデルの第5レベル内の適宜の機温に換算して出力するものである。すると、図7のステップS34の判断においてブロック壁温度が第4の閾値よりも大きい場合、ステップS41へ進み、適正な第5レベルの機温を表示できる。
【0037】
上述したように、ECU10は、エンジンブロック壁温度データ値を当該エンジンモデルに固有のエンジンブロック壁温度に関する4つの閾値を用いて演算を行って、標準モデルで取り扱われる尺度に換算した機温データ値に変換して出力するように構成されている。これによって、エンジン冷却水温度の設定が異なるモデル、例えば機温が高いモデルの船外機に買い換えても船舶に備えられた既存のエンジン状態表示装置に適正なレベルの機温を表示できる。
【0038】
この実施の形態では、機温を検出する検出手段として、エンジンブロック壁の温度を検出する温度センサ(図示しない)が用いられている。この実施の形態では、従来において行っていた機温(エンジン冷却水温度)を直接検出することはせず、エンジン制御を行うためのエンジンブロック壁温度の検出をエンジン冷却水温度の表示にも利用することで、新しく温度センサを設けることを回避し、その分、コストを削減し、センサの設置スペースを不要にできる。
【0039】
この実施の形態によれば、エンジンコントロールユニット10の制御部11のソフトプログラムを変更すれば良く、エンジンコントロールユニット10の内部で標準のエンジンモデルの機温に換算して表示するための状態データ値に変換することができ、新しく専用の船舶推進装置用エンジン状態表示装置を備える必要がなく、エンジン冷却水温度以外のエンジン状態を表示することについては、既存の船舶推進装置用エンジン状態表示装置をそのまま使用することができる。
【0040】
そして、エンジンブロック壁温度を検出してECU10に入力するので、図6に示すように、エンジンブロック壁温度が59℃〜125℃の間では、緩やかな傾斜になり測定幅が広がるので、エンジン冷却水温度の45℃〜65℃の狭い測定幅で機温を検出するよりもエンジンブロック壁温度を検出する方がエンジンの正常時の温度領域を安定して検出できるメリットがある。
【0041】
本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0042】
上記実施の形態では、船外機のエンジンの各種状態を検出した温度信号をエンジンコントロールユニットの制御部により演算して機温データ値を作り、この機温データ値を船舶側に備えるエンジン状態表示装置にLANにより送信することを行う構成であるが、エンジンコントロールユニットの制御部とは別途に設ける構成であっても良い。
【0043】
上記実施の形態では、エンジンブロック壁温度を検出してECU10に入力して標準のエンジンモデルの機温に換算したが、従来と同様に、機温もしくはエンジン冷却水温度を検出してECU10に入力して標準のエンジンモデルの機温に換算した構成とした場合も含まれる。
【0044】
ゲージ20は、特許文献1に示す従来品を適用することができる。
【0045】
船外機だけでなく、船内外機にも適用される。
【0046】
ECU10とゲージ20との間のLANは、二重通信ケーブルとした場合を含むものである。この場合、船舶Aの操船者がゲージ20を操作してECU10を制御できる。また、船舶AのメインリモコンECUを操作して船外機BのECU10を操作できるようになっている。そして、二重通信ケーブルの一方が通信不能又は通信不調になったときには、警告をゲージ20に表示するように構成するのがよい。さらに、二重通信ケーブルの両方が通信不能又は通信不調になったときには、エンジンを止めると乗船者がバランスを崩してしまうからエンジンを止めるのではなくて、船外機BのECU10が両方の通信故障を判断することができて、フェイルモードに自動的に切り替わり、スロットルバルブを徐々に閉じていき全閉にして停船するように構成して、艇体に急な挙動を与えることなく安全にエンジン回転数を低下させることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の船舶推進装置用エンジンの機温表示装置を実施するための船舶推進装置用エンジン状態表示システムのブロック図である。
【図2】図1の船舶推進装置用エンジンの機温表示装置を備えた船舶の概略の側面図である。
【図3】図3の船舶推進装置用エンジン状態表示システムの表示部の詳細正面図である。
【図4】標準のエンジンモデルのエンジンブロック壁温度とエンジンエンジン冷却水温度との関係を示す折れ線グラフである。
【図5】非標準のエンジンモデルのエンジンブロック壁温度とエンジンエンジン冷却水温度との関係を示す折れ線グラフである。
【図6】図1の船舶推進装置用エンジン状態表示システムのECUの制御部が実行する制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の船舶推進装置用エンジン状態表示システムのゲージの制御部が実行する制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
A 船舶
10 ECU(エンジンコントロールユニット)
12 不揮発メモリ
B 船外機
C エンジン
20 ゲージ(船舶推進装置用エンジン状態表示装置)
21 送受信モジュール
22 制御部
23 不揮発メモリ
24 表示ドライバ
25 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進装置のエンジンに関する温度を検出し、この検出信号に基づいて機温データ値を算出し、この機温データ値をLANにより送信する機温データ値算出送信手段と、前記機温データ値を制御部で標準の閾値温度に基づいて演算して複数段階の温度レベルの中の一つの温度レベルを指示する表示データとし、この表示データを船舶側の表示器に表示するエンジン状態表示装置とを備えた船舶推進装置用エンジンの機温表示装置において、
前記機温データ値算出送信手段は、前記エンジンに固有のエンジンブロック壁温度に関する複数の閾値を用いて前記検出信号に対して演算処理を行い、前記エンジン状態表示装置で演算されるときに適正な温度レベルになるように換算した機温データ値として送信するように構成された
ことを特徴とする船舶推進装置用エンジンの機温表示装置。
【請求項2】
前記船舶推進装置のエンジンブロック壁温度を検出し、この検出信号に基づいて前記機温データ値に算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の船舶推進装置用エンジンの機温表示装置。
【請求項3】
前記エンジンコントロールユニットの制御部が、前記機温データ値を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶推進装置用エンジンの機温表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載の機温表示装置を備えた
ことを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−273287(P2008−273287A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116558(P2007−116558)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)