説明

船首浸水防止装置

【課題】3メートル前後の小型船は、船首方面から船室内への浸水により致命的点な転覆に至り易い。しかし、従来の浸水防止パネルは、主に大型船専用として、甲板上の荷物や上部構造物の保護用であり、大型一体成形であるため、小型船での使用とその装着が困難であった。前方視界を確保し、船首での係船行為に支障のない、簡便に持ち運びできる船首浸水防止装置を提供する。
【解決手段】小型船1のバウデッキ(船首甲板)2a上に、透明な防止パネル60を取り付ける。この船首浸水防止装置Aはすばやく取付けられ、高さも十分にあるため、航行時に前方視界を妨げることが無く、効果的に波を左右に払うことが可能となった。また、左右に開く、前後に倒れる機能により、船首における係船行為の妨げにならない。さらに、強度と安全面にも十分に配慮したため、安定した固定が可能で、致命的な浸水、転覆防止に非常に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船首浸水防止装置(ウォーターブロッカー)に関する。
【背景技術】
【0002】
平成15年11月の法律改正により、現在全長が3メートル未満で搭載船外機が2馬力未満なら、免許も船舶検査も必要なく、陸上で例えるなら自転車の扱いとなった。よってこのタイプのボートでマリンレジャーを楽しむ人が増えている。しかし、その一方で、あまりにも気軽に、また無知識で海に出船するため、ここ2年程海難事故も確実に増加傾向にあるのも事実である。そこで、本出願人は、既に、特許出願中の強力な転覆予防効果が図れる「フェンダーフロート」に続き、この度、船首の「ウォーターブロッカー(船首波よけ)」
を提案することを趣旨とする。
【0003】
そして、この発明の開発に至った理由と背景を、改めて説明すると、次のようになります。海難事故の中で最も多いのは転覆による事故であるが、その中で意外に多いのは、操船ミス等により、船首からの浸水を受け冠水状態(何らか原因により、船内が満水状態になること)になり、それ故不安定になりやがて転覆する事故である。ベテラン船長は、これらを回避するために、[1] 波が来る方向に航行する時は、船首を進行方向に対して30度から40度程の角度でジグザグ航行をする。その理由は、それより角度が浅く真っ直ぐ航行しようとすると、自ずから、船首を波間の谷に差し込むことになるとともに、この船首より一度に大量の浸水を受ける状態となる。従って、これが原因となり、船首が沈んだ前傾姿勢となり、次々と打ち寄せる波を受け、やがて冠水状態となって、転覆の大きな要因となる。その他としては、例えば、進行方向に対して、角度がそれより付きすぎると、操船上もっとも致命的な状態である「横波を受ける形」に近づく、ジグザグ操船をするため波の頂点で旋回をしようとする時、逆に波に叩かれ旋回するよりむしろ逆に船首が勝手に振られることから、「横波をまともに受ける形」になり易いことが考えられる。これも浸水と、転覆の大きな要因となる。[2] 航行時は船首をできるだけ重くしないことが肝要である。殊に、ミニボートにおいては行なわなければ成らないことである。換言すると、船首あたりに人が乗っていると、波に船首から突っ込んだ時に、船首の浮上速度が、著しく遅くなるため、船首浸水を受ける最大原因となる。従って、できるだけ乗船者のポジションを後部にずらしたいのが心境である。しかし、現実的には3m前後のいわゆるミニボート類では、船内スペースに限りがあり、主に釣りで利用されることが多い。この状況では、船内に搭載される荷物も二人分で、かなりの量になるため、簡単には重心移動がままならないのが現実である。そして、例えば、極端に後部ばかりを重くすれば、次に波の頂点から下って行き、谷部分で旋回した場合には、通常は、船尾角部分から一気に浸水を受けることにつながるため危険極まりない。よって、この種の船型と速度にあった適切な重量配分が求められる。以上で説明した2点が、操船上の最低条件、又は常識とされている。しかし、現実は、これらの操作と常識が、初心者には難しい。
【0004】
以上のような状況に鑑み、本発明に関連がある船首浸水防止装置か、防水ボードに関する先行文献を挙げる。
【0005】
文献(1)は、特公平44−30300号の「船舶」があり、この発明は、船首に航行方向に傾斜した波よけ板を設け、かつこの波よけ板の基端で、かつ船首の前甲板(バウデッキ)に空所を設けるとともに、この空所の流れ方向の両端(左右舷側)を放水口とする構造であり、波よけで集水した水を、空所から放水口を介して、船外に排水することで、甲板上を流れる水を堰きとめ、かつこの甲板上の取付具、上部構造物、荷物の被害を、失くすことを意図する。
【0006】
また、文献(2)は、実公平47−6612号の「波切板」があり、この考案は、船首の甲板上に航行方向に曲折し(船側に若干後退した傾斜曲線)、かつ抛物面上端縁を備えた波切板(波よけ板)を設けた構造であり、この波よけ板で、水をキャッチするとともに、跳返りの防止と、かつこの曲折を利用し、左右舷に向かって誘導し、この波よけ板の左右開放部より、船外に排水することで、甲板上の諸設備の被害と、この波よけ板を乗越えて後方への浸水被害を、失くすことを意図する。
【0007】
さらに、実公平7−39744号の「船舶の甲板」があり、この考案は、船首楼甲板(バウデッキ)と、この船首楼甲板の船尾側に一段高くなった遮浪甲板を設け、この船首楼甲板と遮浪甲板との段差部に、この遮浪甲板より高くなった波止め板を設ける構造であり、この波止め板は、遮浪甲板より上方に突出した部分を有し、かつこの遮浪甲板は、側面視して船首側に傾斜し、しかも平面視して略ハの字形に配備されている構造であり、前記文献(1)と、文献(2)と同じことを意図する。
【特許文献1】特公平44−30300号
【特許文献2】実公平47−6612号
【特許文献3】実公平7−39744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記文献(1)〜文献(3)は、何れも、波よけ板、波止め板等の防止パネルが、船首方向に傾斜構造か、垂設した構造であり、波及び/又は水を抱え込む構造であることから、衝撃を受け易いこと、破損の発生等の問題を抱えること、また、これを解消するためには、強度の確保が要求される故に、構造、材料、又は価格等の面で、それなりの手当てと、改良が要求されることから問題を抱える処である。
【0009】
また、この文献(1)〜文献(3)は、何れも、一体構造であり、簡易な着脱と、既存の船舶に取付けるには、問題があり、利便性と、合理性に改良の余地がある。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、以下の特徴を発揮することを意図する。
[3] 船首部分に浸水防止パネル(防水パネル)を立てることで、航行、又は帆走中に向かって来る波に対して、真っ直ぐ、若しくはかなり、船尾側に向かって浅い角度をつけるだけで、航行することが可能になる。また、多少受ける波を効率的に船外に排出することができるため、かなり高い安全性が確保できる。・・・・・請求項1
[4] 防止パネルは、安全に航行するために、前方視界を遮らない透明なパネルが有効である。・・・・・請求項5
[5] 船首浸水防止装置(取付け部、対の支持部、 対の差込み部と対の支持アームを備えた防止パネルでなる「全構造部材」)を可倒式(支持杆の一本を利用した差込み構造による倒し)とし、この可倒式を利用することで、例えば、アンカーを上げるときパネルと干渉するため、立ち姿勢でアンカーを上げなくてはならず、大変危険であること、いちいち取り外していたのでは、面倒であり利用率の低下につながることに対して有効である。・・・・・請求項2
[6] 船首浸水防止装置は、仕舞い寸法、倒す時の手間の軽減等を考慮にして、2分割構造とする。・・・・・請求項1
[7] 防止パネルを、波を受ける強度を考えるとアクリルではなく、ポリカーボネイト(アクリルの10倍以上の打ち抜き強度)を採用する。・・・・・請求項5
[8] 船首浸水防止装置は、瞬時(約10秒〜20秒)に取付けられる構造を確保する。従って、面倒であれば直接的に使用率の低下となる。本発明も、当然に、すべて瞬時にできる。また、この種の機具に関連し、例えば、ボート自体の組み立て、各種オプションの使用も、自ずから、すべて瞬時にできることが必要である。そして、この考え方は、この種の全ての機具に必要とする大きな特徴であり、また、全ての関連商品を開発する上での基本コンセプトである。・・・・・請求項1
[9] 船首浸水防止装置は、海が非常に穏やかで、一人で船体を使用する時など、不使用時に、取付け冶具が目立たないなど、新艇時の前方から見たスマートな外観をできるだけ損なわない構造とする。・・・・・請求項1−4
[10] 船首浸水防止装置は、使用の際には、できるだけ、船体に溶け込み易い雰囲気とすること、いたずらにゴツイ印象を与えず、極めて、さり気なく装着となること、外部より目立たなく装着すること、等を意図して、仕上げる構造とする。そして、この防止パネルのさりげない傾斜は、丁度、スポーツ艇にあるスタイリッシュな外観の雰囲気を持たせる。また、船内に突起物等がない取付け構造とし、このスタイリッシュな外観の雰囲気と、安全対策に十分配慮する。・・・・・請求項1−4
[11] 機具の軽量化を図ることで、例えば、使用時、持運び時等の時々の場合においての簡便性と、航行時のスピードと、燃料効率の向上を図る。・・・・・請求項1−5
[12] 機具の小型化、分割化を図ることで、例えば、使用時、持運び時等の時々の場合においての簡便性と、嵩張り解消を図る。・・・・・請求項1−4
[13] 船首付近で起こる水しぶきも防止パネルの高さを持たせることで、効果的に船体前部における乗船者のストレスを、同時、かつ略完全に軽減できる。・・・・・請求項1−4
[14] 防止パネルを、取付け部を介して、バウデッキに確実に装着できるので、この防止パネルの固定化と、航行時において、防止パネル、機具の取付けによるビビリ音、キシミ音等の不快な音の発生を防止と、また、傾斜位置の決定と規格化が図れて重宝する。・・・・・請求項1−4
[15] 防止パネルの差込み部と、取付け部との差込みを強化することと、そのロックの確実性を図ることで、例えば、航行時の脱落防止、弛緩防止、又は機能低下を回避する。・・・・・請求項1−4
[16] 防止パネルを、取付け部を介して、バウデッキに確実に装着できるので、このバウデッキにむやみに大きな穴開け加工等をしない構造とし、また、2馬力より大きな船外機を使用して、小型船舶検査機構による船舶検査を受検しなければならなくなった時、バウデッキそのものが法定備品であるため、許可を受けられないなどの影響が出ることを回避する。・・・・・請求項1−3
[17] 防止パネルと、支持アームとの間に、防止パネルの幅全体に亘るパネル支持板を設ける構造と、バウデッキの芯となる、一番丈夫な折曲げ構造部の上に、防止パネルを設置することで、例えば、この防止パネルと、その船首浸水防止装置全体に対する衝撃エネルギーを効率的に受け、かつ逃がすようにすることを基本とする。・・・・・請求項1−4
[18] 防止パネルを分割形態とし、かつ防止パネルが若干左右にスライドしたまま航行できるようにすることで、アンカー上げ装置(吊上げ用のアンカーローラー等)からロープが後部の乗船者まで来ている時も問題が無く、使い勝手が良い船首浸水防止装置を提供できる。・・・・・請求項1−3
[19] 取付け部、支持杆、又は差込み部、支持アーム等の船首浸水防止装置において、人と接触する部位を、曲面・丸味形状を確保し、怪我予防と、殊に濡れている指の怪我防止を図る。また、防止パネルの周辺に、ビニールモールのクッション材を取付ける。・・・・・請求項1−4
[20] この船首浸水防止装置は、取付け・取外しには一切の工具を必要としない構造とし、かつねじをいちいち外すと落下、紛失する可能性と、又は海中に落とす危険性が非常に高いので、緊締具(支持杆に差込み部を、固定する取付けねじ)部は、落下しない構造とする。・・・・・請求項1−4
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、[3]の波を効率的に船外に排出し、かなり高い安全性の確保、[6]の仕舞い寸法、倒す時の手間の軽減等を考慮にして、2分割構造、[8]の瞬時、かつ直接的(一本から二本の差込みと緊締)な装着を達成し、使用率の向上、[9]の不使用時の利便性、[10]の瀟洒な感覚とスタイリッシュな外観の提供、[11]の軽量な構造の提供、[12]の水しぶきの受止めと排除を達成できる防止パネルの高さの確保、[14]の水しぶきの受止めと排除を達成できる防止パネルの傾斜方向と角度の確保、[15]の防止パネルの取付けと保守の容易性、[16]のバウデッキの装着の確実性と、小型船舶検査のクリヤ、[17]の船首浸水防止装置に対する衝撃エネルギーを効率的に受け、かつ逃がすように、バウデッキの芯となる、一番丈夫な折曲げ構造部の上に、この防止パネルを設置、[18]の防止パネルを分割形態とし、使い勝手が良い構造、[19]の防止パネル及びその装着の確固たる安全性の確保、[20]の防止パネル及びその装着の紛失防止を図ることを意図する。
【0012】
請求項1は、船首のバウデッキに設ける取付け部と、この取付け部に設けた対の支持部と、この各支持部に、それぞれ差込み支持され、かつ緊締具を備えた対の差込み部と、この各差込み部にそれぞれ設けた、側面視して、略U字形に折曲げた対の支持アームを介して、前記バウデッキの上面に設けられる対の防止パネルで構成した船首浸水防止装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の意図に、[5]の可倒式ができる船首浸水防止装置の提供を図ることを意図する。
【0014】
請求項2は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記支持部は、取付け部に長短支持杆を、前記バウデッキの裏面に沿って延設し、この長短支持杆の軸芯位置を偏倚する構成とした船首浸水防止装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の意図を達成することにある。
【0016】
請求項3は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記支持アームは、前記差込み部に基端を設けた、側面視して略U字形に折曲げた二本のアーム杆で構成されており、この二本のアーム杆の基端側から自由端側へ向かって、間隔を広くする構成とした船首浸水防止装置である。
【0017】
請求項4の発明は、前記[3]と、[8]〜[15]、又は[17]と、[19]、[20]の意図を達成することにある。
【0018】
請求項4は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記防止パネルは、支持アームに傾倒して設けたパネル支持板を介して、その上端が、船尾側に向かって傾倒する構成とした船首浸水防止装置である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1の意図に、[4]の安全な航行、[6]のポリカーボネイトの防止パネルの提供を図ることを意図する。
【0020】
請求項5は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記防止パネルは、透明のポリカーボネイトとする構成とした船首浸水防止装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明は、船首のバウデッキに設ける取付け部と、取付け部に設けた対の支持部と、各支持部に、それぞれ差込み支持され、かつ緊締具を備えた対の差込み部と、各差込み部にそれぞれ設けた、側面視して、略U字形に折曲げた対の支持アームを介して、バウデッキの上面に設けられる対の防止パネルで構成した船首浸水防止装置である。
【0022】
従って、請求項1は、[3]の波を効率的に船外に排出し、かなり高い安全性の確保、[6]の仕舞い寸法、倒す時の手間の軽減等を考慮にして、2分割構造、[8]の瞬時、かつ直接的(一本から二本の差込みと緊締)な装着を達成し、使用率の向上、[9]の不使用時の利便性、[10]の瀟洒な感覚とスタイリッシュな外観の提供、[11]の軽量な構造の提供、[12]の水しぶきの受止めと排除を達成できる防止パネルの高さの確保、[14]の水しぶきの受止めと排除を達成できる防止パネルの傾斜方向と角度の確保、[15]の防止パネルの取付けと保守の容易性、[16]のバウデッキの装着の確実性と、小型船舶検査のクリヤ、[17]の船首浸水防止装置に対する衝撃エネルギーを効率的に受け、かつ逃がすように、バウデッキの芯となる、一番丈夫な折曲げ構造部の上に、この防止パネルを設置、[18]の防止パネルを分割形態とし、使い勝手が良い構造、[19]の防止パネル及びその装着の確固たる安全性の確保、[20]の防止パネル及びその装着の紛失防止が図れる特徴がある。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
支持部は、取付け部に長短支持杆を、前記バウデッキの裏面に沿って延設し、長短支持杆の軸芯位置を偏倚する構成とした船首浸水防止装置である。
【0024】
従って、請求項2は、請求項1に記載の特徴と、[5]の可倒式ができる船首浸水防止装置の提供が図れる特徴がある。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
支持アームは、差込み部に基端を設けた、側面視して略U字形に折曲げた二本のアーム杆で構成されており、二本のアーム杆の基端側から自由端側へ向かって、間隔を広くする構成とした船首浸水防止装置である。
【0026】
従って、請求項3は、請求項1に記載の特徴がある。
【0027】
請求項4の発明は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
防止パネルは、支持アームに傾倒して設けたパネル支持板を介して、上端が、船尾側に向かって傾倒する構成とした船首浸水防止装置である。
【0028】
従って、請求項4の発明は、前記[3]と、[8]〜[15]、又は[17]と、[19]、[20]に記載の特徴がある。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
防止パネルは、透明のポリカーボネイトとする構成とした船首浸水防止装置である。
【0030】
従って、請求項5は、請求項1に記載の特徴と、[4]の安全な航行、[6]のポリカーボネイトの防止パネルの提供が図れる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】図1−1はボートの船首に船首浸水防止装置を設置した状態を縮尺して示した一方(船首側)より見た船首俯瞰図
【図1−2】図1−2はボートの船首に船首浸水防止装置を設置した状態を縮尺して示した要部の側面図
【図2】図2は他方(船尾側)より見た左側の防止パネルと差込み部、及び支持アーム等の船首浸水防止装置の要部(以下、船首浸水防止装置の要部とする)を示した背面斜視図
【図3】図3は船首浸水防止装置を、バウデッキに装着した状態を他方より見た斜視図
【図4】図4は図3の要部の拡大斜視図
【図5】図5は図3の要部の拡大斜視図
【図6】図6は図3の要部の拡大斜視図
【図7】図7は船首浸水防止装置の支持アームを把持した状態の拡大斜視図
【図8−1】図8−1は船首浸水防止装置のパネル支持板と、支持アーム、及び差込み部と、支持杆等を一方より見た拡大斜視図
【図8−2】図8−2は図8−1の平面図
【図8−3】図8−3は図8−2の要部の拡大平面図
【図8−4】図8−4は図8−1の側面より見た概念図
【図9−1】図9−1は船首浸水防止装置の要部を示しており、この船首浸水防止装置間にロープを貫通させる状態を一方側よりの俯瞰図
【図9−2】図9−2は図9−1の一方側よりの俯瞰図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の船首浸水防止装置A(防止パネル装置)は、船舶1の船首2のバウデッキ2aに設ける取付け部10と、取付け部10に設けた対の支持部20(左右舷側方向で対の構造では、一方側で説明する)と、各支持部20に、それぞれ差込み支持され、かつ緊締具30を備えた対の差込み部40(一方側で説明する)と、各差込み部40にそれぞれ設けた、側面視して、略U字形に折曲げた二本の支持アーム50(一方側で説明する)を介して、バウデッキ1aの上面に設けられる対の防止パネル60で構成される。以下、この各構成要素を順に説明する。
【0033】
: 取付け部10と、支持部20、並びに差込み部40の説明を、図3〜図6を基にする。この取付け部10は、例えば、船舶1の折曲げ構造部200の裏面構造に近似した形状のベース部11と(このベース部11は、バウデッキ2aの一番丈夫な折曲げ構造部200(船尾3側の折曲げ構造部200)の下側に取付けるので、例えば、この折曲げ構造部200の裏面構造に近似した形状とする)、このベース部11より略90°折曲げ形成し、かつ下端部を内側(船首2側)に曲折した本体部12と、この本体部12に固止した側面視して扁平C形状の樋状の部材13で構成されている。そして、この取付け部10は、バウデッキ2aの一番丈夫な折曲げ構造部200にボルト止め(一例である)することで、丁度、本体部12が、バウデッキ2aの船尾3側の端下部に垂下される状態となる(図6参照)。そして、この取付け部10の部材13には、支持部20を構成する長短構造の長短支持杆21、22が設けられており(一方側で説明する)、この長短支持杆21、22は軸芯位置(それぞれ舷側に向かって軸芯方向)を異にする構造とし、差込み部40の挿入の容易化と、固定状態を確保する。また、この長短支持杆21、22は、バウデッキ2aの船尾3側の端下部に架承される状態となる(図6参照)。そして、この一例では、長支持杆21は、手前側で、短支持杆22は、奥面側に意図する構造とし、この手前側の長支持杆21に、最初に差込み部40を差込むことで、この差込み部40を違和感なく差込み支持できる。その後、この長支持杆21を利用して、短支持杆22に差込みを図ることで、略ワンタッチで、バウデッキ2aに邪魔されること無く、スムーズに差込み作業が終了する。この長支持杆21の船尾3側の下面側には、停止用の平坦部21aが設けられている。尚、この長短支持杆21、22の位置関係(手前側か、奥面側の位置関係)は、一例であり、限定されない。
【0034】
この差込み部40は、対の管体41、42と、この対の管体41、42を支持する側面視して扁平C形状の樋状の部材43と、この部材43に脱落防止手段を介して螺着した緊締具30で構成されている。
【0035】
: 差込み部40と、対の支持アーム50の説明を、図3〜図7を基にする。この支持アーム50は、差込み部40に基端を設けた、側面視して略U字形に折曲げた二本のアーム杆51、52で構成されており、その基端側から自由端側へ向かって、間隔を広く構成することで、例えば、図7の如く、人が把持し易い構造、又は弾性を醸成できる構造とする。具体的には、船芯側の一方のアーム杆51は、その取付け部10側(基端側)を、差込み部40に垂直に立設し、そのまま直線状に延設し、その防止パネル60側(自由端側)に至る構造とする(取付け部10側から中心部51a、防止パネル60側に至るまでが直線状となる)。そして、舷側の他方のアーム杆52は、その取付け部10側(基端側)を、差込み部40に垂直に立設し(一方のアーム杆51と、略平行に設け)、その後、この他方のアーム杆52を舷側に向かって拡開し、一方と他方のアーム杆51、52の基端側の間隔に対して、一方と他方のアーム杆51、52の自由端側の間隔を広く構成する。
【0036】
そして、この二本のアーム杆51、52の自由端側には、パネル支持板53が設けられており、このパネル支持板53は、図3に示した略々山形形状を呈する。このパネル支持板53は、原則として、前記支持アーム50の構成部品とする。また、防止パネル60を確実、かつ強固に支持することを意図する。
【0037】
: 防止パネル60の説明を、図1−1〜図2等を基にする。この防止パネル60は、安全に航行するために、前方視界を遮らない透明なパネルとすること、又は波を受ける強度を考えるとアクリルではなく、ポリカーボネイトを採用すること、さらに、スポーツ艇にあるスタイリッシュな外観の雰囲気を持たせること等を基本とする。そして、さらに安全性と美観、損傷・怪我回避を意図して、ビニールモール61で周辺をカバーすることが望ましい。
【0038】
: 防止パネル60を分割形態とした特徴の説明を、図9−1〜図9−2を基にする。図示の如く、分割形態の防止パネル60では、対の一方の緊締具30の螺戻で(一方の緊締具30等で説明するが、移動は逆方向である)、後述するように、管体41と長支持杆21の緊締を解除し、この管体41と管体42(差込み部40)を舷側に移動することで、この防止パネル60が船芯より移動(スライド)する。この移動で、対の防止パネル60間に隙間70が形成される。そして、この隙間70にロープ71を、貫通等して設置できるので、例えば、図示しない、アンカー上げ装置に使用する場合において、アンカー引上げ用アンカーローラー72からロープ71が、後部の乗船者まで牽引できるので、有効である。
【0039】
そして、この船首浸水防止装置Aを、船舶1に装着するには、例えば、一方の防止パネル60(防止パネル60とする)に設けたアーム杆51、52を把持し(図7参照)、長支持杆21の舷側に、その管体41を差込み、この長支持杆21の船芯方向に向かって移動する。この移動後に、他の管体42を短支持杆22に差込むことで、この防止パネル60の傾斜角度が確保され、かつ船尾3に傾斜するように設置される準備が完了する。そこで、さらに、船芯方向に移動し、例えば、停止手段(図示せず)を利用して、この管体41、42が停止すると、丁度、緊締具30の螺子杆31が、長支持杆21の平坦部21aに位置する状態である(図5参照)。続いて、緊締具30を螺合することで、差込み部40が、長短支持杆21、22(支持部20)に固定されるとともに、前記の如く、防止パネル60の傾斜角度が確保されるとともに、バウデッキ2aの上に、防止パネル60が装着される。また、他方の防止パネル60(防止パネル60とする)の取付けも、前述の例と同様である。
【0040】
尚、図3の如く、一方の防止パネル60を船席側(船尾3側)に倒して、簡易に収容する場合には、緊締具30を螺戻し、その螺子杆31の先部が平坦部21aより離間することで、長支持杆21と管体41の緊締が解除される。この緊締解除の際に、螺子杆31に捲装したスプリング32の力により、螺子杆31の螺戻(上昇)が簡易にできることと、また、この緊締具30の螺戻位置を確保できる。この螺戻により、長支持杆21と管体41の緊締が解除されるので、差込み部40を舷側に移動していき、短支持杆22から管体42が離間された状態で(差込み部40が開放されるので)、この長支持杆21を支軸として、差込み部40を船尾3側に回転する。この所作で、図3の状態となり、必要により、緊締具30を螺入して、仮止めすることも可能である。尚、他方の防止パネル60も同様である。
【符号の説明】
【0041】
1 船舶
2 船首
2a バウデッキ
200 折曲げ構造部
3 船尾
10 取付け部
11 ベース部
12 本体部
13 部材
20 支持部
21 長支持杆
21a 平坦部
22 短支持杆
30 緊締具
31 螺子杆
32 スプリング
40 差込み部
41 管体
42 管体
43 部材
50 支持アーム
51 アーム杆
51a 中心部
52 アーム杆
52a 中心部
53 パネル支持板
60 防止パネル
61 ビニールモール
70 隙間
71 ロープ
72 アンカーローラー
A 船首浸水防止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首のバウデッキに設ける取付け部と、この取付け部に設けた対の支持部と、この各支持部に、それぞれ差込み支持され、かつ緊締具を備えた対の差込み部と、この各差込み部にそれぞれ設けた、側面視して、略U字形に折曲げた対の支持アームを介して、前記バウデッキの上面に設けられる対の防止パネルで構成した船首浸水防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記支持部は、取付け部に長短支持杆を、前記バウデッキの裏面に沿って延設し、この長短支持杆の軸芯位置を偏倚する構成とした船首浸水防止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記支持アームは、前記差込み部に基端を設けた、側面視して略U字形に折曲げた二本のアーム杆で構成されており、この二本のアーム杆の基端側から自由端側へ向かって、間隔を広くする構成とした船首浸水防止装置。
【請求項4】
請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記防止パネルは、支持アームに傾倒して設けたパネル支持板を介して、その上端が、船尾側に向かって傾倒する構成とした船首浸水防止装置。
【請求項5】
請求項1に記載の船首浸水防止装置において、
前記防止パネルは、透明のポリカーボネイトとする構成とした船首浸水防止装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公開番号】特開2010−247564(P2010−247564A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96252(P2009−96252)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(500479821)