説明

色判別装置および色判別方法

【課題】装置の小型化を実現でき、呈色反応の過程で反応面に色むらが生じても、反応面の色を高精度で識別することが可能になる色判別装置および色判別方法を提供する。
【解決手段】特定対象のガスと呈色反応した反応面の色を判別する色判別装置は、前記反応面よりも小さい開口部を有する光制御手段と、前記開口部が前記反応面と対向する状況で、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係を変える駆動手段と、前記反応面に光を投射する投射手段と、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記投射された光のうち、前記反応面で反射され前記開口部を通過した通過光を受光し、当該通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する受光手段と、複数の前記カラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する判別手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色判別装置および色判別方法に関し、例えば、ガスとの呈色反応にて生じた反応面の色を判別してガスを特定する色判別装置および色判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毒ガス等のガスと試薬とを化学反応させて試薬の色を変化させるガス検知装置が知られている。例えば、特許文献1(USP6228657B1号公報)には、M256キットが記載されている。
【0003】
このガス検知装置は、互いに異なる種類の試薬を内蔵する複数のアンプルと、そのアンプルが破壊されたときにアンプル中の試薬が流れ込む紙等の複数の反応面と、を含む。
【0004】
試薬は、反応面に流れ込むと、反応面に接触しているガスと化学反応する。試薬は、その化学反応により色が変わり、その試薬の色の変化に応じて、反応面の色も変わる。
【0005】
ユーザは、複数の反応面のそれぞれに、異なる試薬を流し込み、各反応面の色の変化に基づいて、ガスの強さを認識する。
【0006】
また、特許文献1には、各々がRGB(赤、緑、青)のいずれかの色に感度を有する3つのフォトダイオードまたは1つのカラーCCDカメラを用いて、1つの反応面の色に応じた信号を出力する読取装置が記載されている。
【特許文献1】USP6228657B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反応面では、呈色反応の過程で色むらが生じる場合がある。例えば、反応面上で、異なる色の領域が発生する場合がある。
【0008】
CCDカメラを用いたガス検知装置は、複数の画素からなる撮像面で、反応面の像を受光して撮像する。このため、撮像面の各画素は、反応面の像のうち、自己が受光した反応面の一部の像に対応する画像信号を出力する。よって、反応面で色むらが生じても、CCDカメラを用いたガス検知装置は、各画素からの画像信号を解析することによって、その色むらを認識することができる。
【0009】
しかしながら、CCDカメラを用いたガス検知装置では、反応面の像を撮像面に形成するために、反応面とCCDカメラの間にレンズが設けられる。このため、CCDカメラは、レンズの焦点距離に対応した距離だけ反応面から離れた位置に設置されなければならない。よって、CCDカメラから反応面までの距離が長くなり、装置が大型化するという問題があった。
【0010】
一方、RとGとBの各画素を1つずつ有したフォトダイオードを用いたガス検知装置では、反応面とフォトダイオードの間にレンズを設けなくてもよい。このため、フォトダイオードを用いたガス検知装置の大型化を防止することができる。
【0011】
しかしながら、RとGとBの各画素を1つずつ有したフォトダイオードは、呈色反応の過程で生じた色むらを高い精度で検出することが困難である。例えば、RとGとBの各画素を1つずつ有したフォトダイオードを用いたガス検知装置は、例えば、色むらがある反応面からの光を受光した場合、反応面上の異なる色を平均化した際に得られる色、つまり、実際の反応面の色とは異なる色を、反応面の色として認識する可能性を有する。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を解決することが可能な色判別装置および色判別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の色判別装置は、特定対象のガスと呈色反応した反応面の色を判別する色判別装置であって、前記反応面よりも小さい開口部を有する光制御手段と、前記開口部が前記反応面と対向する状況で、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係を変えていく駆動手段と、前記反応面に光を投射する投射手段と、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記投射された光のうち、前記反応面で反射され前記開口部を通過した通過光を受光し、当該通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する受光手段と、複数の前記カラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する判別手段と、を含む。
【0014】
本発明の色判別方法は、特定対象のガスと呈色反応した反応面よりも小さい開口部を有する光制御手段を含み、前記反応面の色を判別する色判別装置が行う色判別方法であって、前記開口部が前記反応面と対向する状況で、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係を変えていく駆動ステップと、前記反応面に光を投射する投射ステップと、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記投射された光のうち、前記反応面で反射され前記開口部を通過した通過光を受光し、当該通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する受光ステップと、複数の前記カラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する判別ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を実現でき、呈色反応の過程で反応面に色むらが生じても、反応面の色を高精度で識別することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の色判別装置を示したブロック図である。
【0018】
図1において、色判別装置100は、開口部1を有する光制御部2と、駆動部3〜3と、光源部4と、フォトダイオード5と、遮光板6〜6と、制御処理部7と、操作部8と、表示部9とを含む。
【0019】
色判別装置100には、反応面基板200が搭載される。
【0020】
反応面基板200には、反応面200aと参照用白色面200bが設けられている。
【0021】
図2は、反応面基板200の一例を示した平面図である。
【0022】
図2において、反応面基板200は、複数種類の試薬201と、試薬201を内蔵する複数のアンプル202と、紙等の媒体200aと、参照用白色面200bと、を含む。なお、媒体200aが、反応面200aとして使用される。
【0023】
アンプル202が破壊されると、そのアンプル中の試薬201は、媒体200aに流れ込む。
【0024】
試薬201は、媒体200aに流れ込むと、媒体200aに接触しているガス(例えば、特定対象のガス)と呈色反応する。なお、反応面基板200は、例えば、特許文献1に記載のM256キットである。
【0025】
図1に戻って、色判別装置100は、呈色反応した反応面200aの色を判別する。また、色判別装置100は、呈色反応した反応面200aの色に基づいて、特定対象のガスを特定する。
【0026】
開口部1は、反応面200aよりも面積が小さい。
【0027】
光制御部2は、一般的に光制御手段と呼ぶことができる。
【0028】
図3は、光制御部2と反応面基板200を説明するための平面図である。なお、図3において、図1または図2に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0029】
図3において、開口部1は、スリットであり、反応面200aと対向している。なお、開口部1の形状は、スリットに限らず、正方形または円形でもよく、適宜変更可能である。また、光制御部2は、黒色であることが望ましい。
【0030】
図1に戻って、駆動部3〜3は、一般的に駆動手段と呼ぶことができる。
【0031】
駆動部3〜3は、開口部1が反応面200aと対向する状況で、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係を変えていく。
【0032】
例えば、駆動部3〜3が矢印A方向に回転すると、反応面基板200は矢印B方向に移動する。一方、駆動部3〜3が矢印C方向に回転すると、反応面基板200は矢印D方向に移動する。
【0033】
また、駆動部3〜3は、矢印C方向に回転することによって、反応面基板200を矢印D方向に移動して、反応面基板200を色判別装置100から排出する。換言すると、駆動部3〜3は、矢印C方向に回転することによって、反応面基板200を矢印D方向に移動して、反応面基板200を色判別装置100の外部に移動する。
【0034】
本実施形態では、駆動部3〜3は歯車であり、反応面基板200に設けられた歯とのかみ合わせによって、反応面基板200を移動する。
【0035】
なお、駆動部3〜3は、光制御部2と光源部4とフォトダイオード5と遮光板6〜6を移動することによって、開口部1が反応面200aと対向する状況で開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係を変えてもよい。この場合、光制御部2と光源部4とフォトダイオード5と遮光板6〜6は、一体になっていることが望ましい。
【0036】
光源部4は、一般的に投射手段と呼ぶことができる。光源部4は、例えば、ハロゲンランプまたはLEDである。なお、光源部4は、ハロゲンランプまたはLEDに限らず適宜変更可能である。
【0037】
光源部4は、反応面200aに光を投射する。例えば、光源部4は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変化するごとに、反応面200aに光を投射する。なお、本実施形態では、光源部4は、開口部1を通じて、反応面200aに光を投射する。
【0038】
フォトダイオード5は、一般的に受光手段と呼ぶことができる。
【0039】
フォトダイオード5は、RとGとBの各画素を1つずつ有している。フォトダイオード5では、RとGとBの各画素によって、1つのカラー画素が形成される。なお、Rは赤を表し、Gは緑を表し、Bは青を表す。
【0040】
フォトダイオード5は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変わるごとに、光源部4から投射された光のうち、反応面200aで反射され開口部1を通過した通過光を受光する。
【0041】
フォトダイオード5は、通過光を受光するたびに、その通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する。フォトダイオード5は、RとGとBの各画素を1つずつ有しているため、カラー部分領域信号は、R、GおよびBの信号からなるRGB信号となる。
【0042】
なお、フォトダイオード5が、光源部4から投射された光のうち参照用白色面200bで反射された光を受光するように、駆動部3〜3が、反応面基板200を移動する場合、フォトダイオード5は、参照用白色面200bからの光に応じた参照信号を出力する。参照信号も、RGB信号となる。
【0043】
遮光板6〜6は、一般的に遮光手段と呼ぶことができる。遮光板6〜6は、フォトダイオード5が開口部1を通過した通過光と異なる光を受光することを抑制する。
【0044】
制御処理部7は、一般的に判別手段と呼ぶことができる。
【0045】
制御処理部7は、フォトダイオード5から出力された複数のカラー部分領域信号(具体的には、同一の反応面200aの各部分領域を表す複数のカラー部分領域信号)に基づいて、反応面200aの色を判別する。例えば、制御処理部7は、複数のカラー部分領域信号と参照信号とに基づいて、反応面200aの色を判別する。
【0046】
なお、同一の反応面200aの各部分領域を表す複数のカラー部分領域信号(RGB信号)にて構成される画像を「反応面のRGB画像」と称する。
【0047】
図4は、反応面のRGB画像5Aを説明するための説明図である。
【0048】
図4に示すように、反応面のRGB画像5Aは、同一の反応面200aの各部分領域を表す複数のカラー部分領域信号(RGB信号)5B〜5Bにて構成される。言い換えると、各カラー部分領域信号(RGB信号)5B〜5Bは、反応面のRGB画像5Aの画素となる。
【0049】
また、各カラー部分領域信号は、1つのR信号と1つのG信号と1つのB信号で構成されているため、反応面のRGB画像5Aは、複数のカラー部分領域信号5Bと同数の、R信号、G信号およびB信号にて構成される。
【0050】
図1に戻って、操作部8は、一般的に操作手段と呼ぶことができる。操作部8は、ユーザにて操作可能な操作開始ボタン(不図示)を有する。操作部8は、操作開始ボタンが操作された場合、発光指示を制御処理部7に提供する。
【0051】
表示部9は、一般的に出力手段と呼ぶことができる。表示部9は、例えば、制御処理部7の判別結果を表示する。なお、出力手段は、表示部に限らず適宜変更可能であり、例えば、制御処理部7の判別結果を音声報知する音声出力部でもよい。
【0052】
図5は、制御処理部7の一例を示したブロック図である。なお、図5において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。図5では、駆動部3〜3を、単に駆動部3として示してある。
【0053】
制御処理部7は、制御部71と、処理部72とを含む。処理部72は、A/D変換部72aと、参照データ記憶部72bと、メモリ72cと、バスライン72dと、演算部72eとを含む。
【0054】
制御部71は、一般的に制御手段と呼ぶことができる。
【0055】
制御部71は、操作部8からの発光指示に応じて、駆動部3、光源部4および処理部72の動作を制御する。
【0056】
例えば、制御部71は、発光指示を受け付けた場合、まず、開口部1が参照用白色面200bと対向するように反応面基板200を移動する処理を、駆動部3に実行させる。その後、制御部71は、光源部4を発光させ、また、処理部72を動作させる。
【0057】
続いて、制御部71は、開口部1が反応面200aと対向する状況で、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変わるように、反応面基板200を移動する処理を、駆動部3に実行させる。
【0058】
また、制御部71は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変化するごとに反応面200aに光を投射する処理を、光源部4に実行させる。
【0059】
フォトダイオード5は、光源部4から投射された光のうち、参照用白色面200bで反射され開口部1を通過した光を受光した場合、参照用白色面200bからの光に応じた参照信号(RGB信号)を、処理部72(具体的には、A/D変換部72a)に出力する。なお、参照信号は、アナログ信号である。
【0060】
また、フォトダイオード5は、光源部4から投射された光のうち、反応面200aで反射され開口部1を通過した通過光を受光した場合、その通過光に応じたカラー部分領域信号(RGB信号)を、処理部72(具体的には、A/D変換部72a)に出力する。なお、カラー部分領域信号は、アナログ信号である。
【0061】
処理部72は、フォトダイオード5からの複数のカラー部分領域信号および参照信号に基づいて、反応面200aの色を識別し、その識別結果に応じた情報を出力する。
【0062】
例えば、処理部72は、反応面のRGB画像5Aを構成する複数のカラー部分領域信号5B〜5Bのバランス(R信号とB信号とG信号とのバランス)を調整するために、それら複数のカラー部分領域信号5B〜5Bを、参照信号を用いて補正し、補正後の複数のカラー部分領域信号5B〜5Bに基づいて、反応面200aの色を判別する。
【0063】
A/D変換部72aは、一般的にA/D変換手段と呼ぶことができる。
【0064】
A/D変換部72aは、参照信号およびカラー部分領域信号5B〜5Bをデジタル信号に変換する。
【0065】
デジタル信号の参照信号およびデジタル信号のカラー部分領域信号5B〜5Bでは、R、GおよびBの各信号は、信号強度が0〜255のいずれかの値をとる。
【0066】
つまり、デジタル信号の各カラー部分領域信号5Bは、信号強度が0〜255のいずれかの値をとるR、GおよびBの信号にて構成される。
【0067】
反応面のRGB画像5Aは、複数のカラー部分領域信号5Bと同数のR信号、G信号およびB信号にて構成されるため、反応面のRGB画像5Aは、信号強度が0〜255のいずれかの値をとり、複数のカラー部分領域信号5Bと同数の、R、GおよびBの信号にて構成されることになる。
【0068】
なお、R、GおよびBの各信号強度のレンジは、0〜255に限らず適宜変更可能である。
【0069】
参照データ記憶部72bは、一般的に参照データ記憶手段と呼ぶことができる。
【0070】
参照データ記憶部72bは、ガスと呈色反応した反応面の色に関する色情報と、その反応面を識別するための識別情報と、を互いに関連づけて保持する。
【0071】
例えば、参照データ記憶部72bは、ガスと呈色反応した反応面のRGB画像を構成するR、G、B信号のそれぞれの信号強度とその信号強度の頻度に関する参照用ヒストグラムと、その反応面を識別するための識別情報と、を関連づけて複数保持する。なお、参照用ヒストグラムは、色情報の一例である。
【0072】
メモリ72cは、演算部72eの作業メモリとして使用される。
【0073】
演算部72eは、一般的に演算手段と呼ぶことができる。
【0074】
演算部72eは、例えば、プログラムを実行することによって動作する。また、演算部72eは、バスライン72dを介して参照データ記憶部72bおよびメモリ72cと接続する。
【0075】
演算部72eは、参照データ記憶部72b内の色情報から、デジタル化された反応面のRGB画像に最も類似する色情報を特定し、その特定された色情報と関連づけられている 識別情報を参照データ記憶部72bから読み出す。
【0076】
例えば、演算部72eは、デジタル化された反応面のRGB画像から、RGBそれぞれの信号強度とその信号強度の頻度に関するヒストグラムを生成する。なお、本実施形態では、ある信号強度の頻度は、その信号強度を示す信号(R信号、G信号およびB信号)の数を示す。
【0077】
演算部72eは、その生成されたヒストグラムと、参照データ記憶部72b内の複数の参照用ヒストグラムとを照合して、その生成されたヒストグラムに該当する参照用ヒストグラムを特定する。
【0078】
例えば、演算部72eは、参照データ記憶部72b内の複数の参照用ヒストグラムの中から、頻度のピーク値が現れる信号強度が、その生成されたヒストグラムと最も似ているヒストグラムを特定する。
【0079】
具体的には、演算部72eは、参照用ヒストグラムごとに、生成されたヒストグラムと参照用ヒストグラムでの同一信号強度の頻度同士の積を取りその積を加算し、その加算値が最大となる参照用ヒストグラムを特定する。
【0080】
演算部72eは、その特定された参照用ヒストグラムと関連づけられている識別情報を特定し、その識別情報を表示部9に出力する。
【0081】
なお、参照データ記憶部72bに保持される参照用ヒストグラムは、予め、ガスと呈色反応した反応面からフォトダイオード5および処理部72にて生成されたRGB画像内のRGBそれぞれの信号強度とその信号強度の頻度に関するヒストグラムであることが望ましい。
【0082】
しかしながら、参照データ記憶部72b内の参照用ヒストグラムは、フォトダイオード5および処理部72が生成したヒストグラムに限るものでない。
【0083】
次に、反応面200aと、演算部72eが生成するヒストグラムとの関係について説明する。
【0084】
図6は、あるガス(例えば、ガスA)と呈色反応した反応面200aの一例を示した説明図である。
【0085】
図6では、試薬とガスAとの呈色反応により、白色の反応面200aに、色1Aと色2Aと色3Aとが存在する円形の反応領域(色むら)200aAが生じている。以下、反応領域(色むら)200aAを、色サンプルAと称する。
【0086】
フォトダイオード5は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変わるごとに、光源部4から投射された光のうち、反応面200aで反射され開口部1を通過した通過光を受光し、その通過光に応じたカラー部分領域信号5Bを、A/D変換部72aに出力する。
【0087】
A/D変換部72aは、同一の反応面200aの各部分領域を表す複数のカラー部分領域信号5B〜5Bのそれぞれを、デジタル信号に変換する。
【0088】
演算部72eは、複数のカラー部分領域信号5B〜5Bにて構成される反応面のRGB画像5A内のR、G、Bの信号強度とその信号強度の頻度のデータであるヒストグラムに生成する。
【0089】
なお、演算部72eは、まず、反応面のRGB画像5A内のR、G、Bの各ヒストグラムを生成し、その後、信号強度を共通軸にして、R、G、Bの各ヒストグラムを重ねた1つのヒストグラムを生成する。
【0090】
図7は、色サンプルAの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【0091】
図8は、試薬とガスAとの呈色反応により、図6に示した色1A、色2A、色3Aの面積比が異なる円形の反応領域(色むら)200aBが生じた例を示した説明図である。以下、反応領域(色むら)200aBを、色サンプルBと称する。
【0092】
図9は、色サンプルBの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【0093】
色サンプルAと色サンプルBでは、双方とも反応面200aがガスAと呈色反応したため、反応領域内の色の種類は同じである。このため、図7に示したヒストグラムと図9に示したヒストグラムでは、頻度がピークとなる信号強度は一致する。しかしながら、色サンプルAと色サンプルBでは、反応領域内の各色の面積比が異なるため、頻度の値は異なる。
【0094】
このため、同じガスと呈色反応した複数の反応面の中で、呈色反応の過程で各色の面積比が他の反応面と異なるものがあっても、それらのヒストグラムにおいて、頻度がピークとなる信号強度が一致していれば、各色の面積比が他の反応面と異なるものを、同一の呈色反応をした反応面として特定することが可能になる。
【0095】
一方、図10は、試薬とガスBとの呈色反応により、白色の反応面200aに、色4Aと色5Aと色6Aとが存在する円形の反応領域(色むら)200aCが生じた例を示した説明図である。以下、反応領域(色むら)200aCを、色サンプルCと称する。
【0096】
図11は、色サンプルCの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【0097】
色サンプルCと色サンプルAでは、化学反応したガスが異なるため、呈色反応により生じる色は異なる。よって、図7に示したヒストグラムと、図11に示したヒストグラムでは、頻度がピークとなる信号強度は異なる。
【0098】
図12は、例えば呈色反応の過程により、図10に示した色サンプルCがぼけた状態の反応領域200aDを示した説明図である。以下、反応領域(色むら)200aDを、色サンプルDと称する。
【0099】
図13は、色サンプルDの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【0100】
色サンプルCと色サンプルDとは、主要な色が同じであるため、頻度のピークとなる信号強度は一致する。しかしながら、色サンプルDには、色サンプルCがぼけて色サンプルCにはない色成分が生じたために、色サンプルDの方が信号強度の値に分散が生じ、ピーク値も小さくなっている。
【0101】
このため、同じガスと呈色反応した複数の反応面の中で、呈色反応の過程で各色がぼけてしまったものがあっても、それらのヒストグラムにおいて、頻度がピークとなる信号強度が一致していれば、各色がぼけてしまったものを、同一の呈色反応をした反応面として特定することが可能になる。
【0102】
図14は、参照データ記憶部72bに保持された色サンプルA(i=1)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。この参照用ヒストグラムは、演算部72eにて生成され、色サンプルA(i=1)を識別するための識別情報であるカテゴリ「色サンプルA(i=1)」と関連づけて保持されている。
【0103】
なお、図14に示した参照用ヒストグラムは、色サンプルAに応じたRGB画像5Aの各信号強度(0〜255)に対する頻度を表している。
【0104】
図14において、信号強度が50の場合は頻度が10となっており、この位置(信号強度50)が頻度のピークとなっている。このため、演算部72eは、参照データD(i=1)の信号強度50の値を1に設定し、その前後のデータを規格化して、参照データD(1)の信号強度49の値を1/10×3=0.3に設定し、参照データD(1)の信号強度が51の値を1/10×20=0.2に設定する。
【0105】
また、図14において、信号強度が180の場合は頻度が40となっており、この位置(信号強度180)も頻度のピークとなっている。このため、演算部72eは、参照データD(1)の信号強度180の値を1に設定し、その前後のデータを規格化して、参照データD(1)の信号強度179の値を1/40×18=0.45に設定し、参照データD(1)の信号強度が181の値を1/40×8=0.2に設定する。
【0106】
なお、図14において、参照データD(1)も信号強度の頻度を表す。
【0107】
図15は、参照データ記憶部72bに保持された色サンプルB(i=2)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。この参照用ヒストグラムも、演算部72eにて生成され、色サンプルB(i=2)を識別するための識別情報であるカテゴリ「色サンプルB(i=2)」と関連づけて保持されている。
【0108】
なお、図15に示した参照用ヒストグラムは、色サンプルBに応じたRGB画像5Aの各信号強度(0〜255)に対する頻度を表している。
【0109】
図15において、信号強度が50の場合は頻度が45となっており、この位置(信号強度50)が頻度のピークとなっている。このため、演算部72eは、参照データD(i=2)の信号強度50の値を1に設定し、その前後のデータを規格化して、参照データD(2)の信号強度49の値を1/45×20=0.44に設定し、参照データD(2)の信号強度が51の値を1/45×15=0.33に設定する。
【0110】
また、図15において、信号強度が180の場合は頻度が12となっており、この位置(信号強度180)も頻度のピークとなっている。このため、演算部72eは、参照データD(2)の信号強度180の値を1に設定し、その前後のデータを規格化して、参照データD(2)の信号強度179の値を1/12×2=0.17に設定し、参照データD(2)の信号強度が181の値を1/12×3=0.25に設定する。
【0111】
なお、図15において、参照データD(2)も信号強度の頻度を表す。
【0112】
図14に示した参照用ヒストグラムと図15に示した参照用ヒストグラムでは、ピークが現れる信号強度の位置は同じであるが、頻度は異なっている。
【0113】
図16は、参照データ記憶部72bに保持された色サンプルC(i=3)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図であり、図17は、参照データ記憶部72bに保持された色サンプルD(i=4)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【0114】
色サンプルDはぼやけているため、図17に示したヒストグラムは、図16に示したヒストグラムよりも分散が大きくなって(拡がって)いる。
【0115】
図18は、ガスBの濃度が色サンプルC発生時の濃度と異なる場合の反応面200aの参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。ガスの濃度は、呈色反応領域の明るさと関係するため、同じガスであっても濃度が異なれば、頻度のピーク値が現れる信号強度は異なる。
【0116】
このため、本実施形態では、ユーザが、予め特定のガスと化学反応した反応面200aを有する複数の反応面基板200を用意し、それら反応面基板200を順番に駆動部3で移動させ、演算部72eが、各反応面基板200の反応面200aのヒストグラムを生成していき、それらのヒストグラムを、参照用ヒストグラムとして、参照データ記憶部72bに保持していく。
【0117】
次に、動作を説明する。
【0118】
本実施形態の色判別装置100は、まず、参照データ記憶部72bに、参照用ヒストグラムと識別情報とを格納し、その後、フォトダイオード5から出力された複数のカラー部分領域信号からなる反応面のRGB画像5Aと、参照データ記憶部72b内の参照用ヒストグラムと、に基づいて、反応面200aの色を識別し、その識別結果に応じた情報を出力する。
【0119】
まず、参照データ記憶部72bにデータを保持する動作を説明する。この動作は、例えば、操作部8にある参照データ作成ボタン(不図示)が操作されて参照データ作成モードとなった後に実行される。
【0120】
図19は、参照データ記憶部72bにデータを保持する動作を説明するためのフローチャートである。
【0121】
予め特定されているガスと呈色反応した反応面200aを有する反応面基板200が、色判別装置100内に挿入される。なお、このガスの濃度も予め特定されている。
【0122】
参照データ作成モード下で、操作部8にある操作開始ボタンが、ユーザによって操作されると、操作部8は、発光指示を制御部71に提供する。
【0123】
制御部71が、参照データ作成モード下で発光指示を受け付けると、処理1が実行される(ステップ1901)。
【0124】
図20は、処理1(ステップ1901)を説明するためのフローチャートである。
【0125】
処理1では、まず、制御部71は、開口部1が参照用白色面200bと対向するように反応面基板200を移動する処理を、駆動部3に実行させる(ステップ2001)。
【0126】
続いて、制御部71は、光源部4を発光させる(ステップ2002)。
【0127】
光源部4から投射された光は、開口部1を通って参照用白色面200bに到達し、参照用白色面200bで反射される。フォトダイオード5は、参照用白色面200bで反射された光のうち、開口部1を通過した光を受光して、参照信号を処理部72に出力する(ステップ2003)。このため、参照信号は、参照用白色面200bの色(白色)に応じた出力となる。
【0128】
図21は、参照用白色面200bを測定する際の、開口部1と参照用白色面200bとの位置関係を示した説明図である。なお、図21において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0129】
処理部72では、A/D変換部72aは、参照信号をデジタル信号に変換する。演算部72eは、デジタル信号の参照信号を受け付けると、その参照信号を構成する、R信号(D_red_ref)、G信号(D_green_ref)およびB信号(D_blue_ref)を、メモリ72cに保存する(ステップ2004)。
【0130】
続いて、演算部72eは、R信号(D_red_ref)、G信号(D_green_ref)およびB信号(D_blue_ref)の中の最大値を、D_ref_maxとする(ステップ2005)。
【0131】
続いて、演算部72eは、A_red=D_ref_max/D_red_refと、A_green=D_ref_max/D_green_refと、A_blue=D_ref_max/D_blue_refを計算し、その計算結果をメモリ72cに保存する(ステップ2006)。
【0132】
なお、参照用白色面200bは白色のため、本来、R信号(D_red_ref)とG信号(D_green_ref)とB信号(D_blue_ref)の信号強度は等しくなる。しかしながら、RGBの各画素の出力特性のばらつき等によって、これらの信号強度は、互いに異なる可能性がある。
【0133】
ステップ2006で計算されたA_red、A_greenおよびA_blueは、これらの信号強度のばらつきを補償するために、以下のステップで使用される。
【0134】
続いて、演算部72eは、変数iを0にする。なお、処理1では、変数iは、同一反応面の各部分領域を表すカラー部分領域信号の数を表す。また、演算部72eは、変数Xを、予め設定された初期測定位置に設定し、変数Xを制御部71に提供する。なお、変数Xは、反応面200a内の基準位置(測定位置)を表す(ステップ2007)。
【0135】
続いて、制御部71は、開口部1が変数Xで示された反応面200a内の基準位置と対向するように反応面基板200を移動する処理を、駆動部3に実行させる(ステップ2008)。
【0136】
図22は、参照用白色面200bを測定する際の、開口部1と参照用白色面200bとの位置関係を示した説明図である。なお、図22において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0137】
続いて、演算部72eは、変数iの値が、Imaxより小さいか否かを判定する(ステップ2009)。なお、Imaxは、必要とするカラー部分領域信号の数を表し、演算部72eに予め設定されている。
【0138】
変数iの値が、Imaxより小さい場合、演算部72eは、制御部71に発光指示を提供する。制御部71は、演算部72eから発光指示を受けると、光源部4を発光させる(ステップ2010)。
【0139】
光源部4から投射された光は、開口部1を通って反応面200aに到達し、反応面200aで反射される。フォトダイオード5は、反応面200aで反射された光のうち、開口部1を通過した光を受光して、位置X(i)に対応するカラー部分領域信号(RGB信号)を処理部72に出力する(ステップ2011)。
【0140】
処理部72では、A/D変換部72aは、位置X(i)に対応するカラー部分領域信号をデジタル信号に変換する。演算部72eは、位置X(i)に対応するデジタル信号のカラー部分領域信号を受け付けると、そのカラー部分領域信号を構成する、R信号(D_red_samp(i))、G信号(D_green_samp(i))およびB信号(D_blue_samp(i))を、メモリ72cに保存する(ステップ2012)。
【0141】
続いて、演算部72eは、D_red_data(i)=A_red×D_red_samp(i)を計算し、その計算結果を参照データ記憶部72bに保存する(ステップ2013)。
【0142】
続いて、演算部72eは、D_green_data(i)=A_green×D_green_samp(i)を計算し、その計算結果を参照データ記憶部72bに保存する(ステップ2014)。
【0143】
続いて、演算部72eは、D_blue_data(i)=A_blue×D_blue_samp(i)を計算し、その計算結果を参照データ記憶部72bに保存する(ステップ2015)。
【0144】
続いて、演算部72eは、X=X+ΔXとし、変数Xを制御部71に提供し、i=i+1とする(ステップ2016)。
【0145】
以下、処理は、ステップ2008に戻る。
【0146】
本実施形態では、ステップ2008からステップ2016を繰り返すことによって、駆動部3は、反応面基板200がΔXずつ移動するように、矢印C方向に断続的に回転し(図22参照)、フォトダイオード5は、反応面基板200がΔXずつ移動するたびに、反応面基板200と開口部1との相対位置(X(i))に応じたカラー部分領域信号(D_red_data(i)、D_green_data(i)、D_blue_data(i))を出力する。
【0147】
なお、ステップ2009で、変数iの値が、Imaxと同じになると、演算部72eは、位置X(i=0)に対応するカラー部分領域信号(D_red_data(0)、D_green_data(0)、D_blue_data(0))から、位置X(i=Imax)に対応するカラー部分領域信号(D_red_data(Imax)、D_green_data(Imax)、D_blue_data(Imax))までを、互いに関連づけて、同一の反応面に対応する反応面のRGB画像5Aとする(ステップ2017)。
【0148】
以上で、図19に示した処理1が終了する。
【0149】
続いて、図19に示した処理2が実行される(ステップ1902)。
【0150】
図23は、処理2(ステップ1902)を説明するためのフローチャートである。
【0151】
処理2では、まず、演算部72eは、RGB画像5Aを取得する(ステップ2301)。
【0152】
続いて、演算部72eは、そのRGB画像5Aを、Rの信号強度データと、Gの信号強度データと、Bの信号強度データと、に分割し、R、G、Bの各信号強度データを、バスライン72dを経由してメモリ72cに保持する(ステップ2302)。
【0153】
続いて、演算部72eは、Rの各信号強度に対する頻度データ(Rに関するヒストグラム)を得るために、Rの信号強度のヒストグラムを演算する。例えば、演算部72eは、メモリ72cを参照して、信号強度0〜255の各信号強度について、その信号強度を示すRの信号強度データの数を計数して、Rの信号強度のヒストグラムを演算する(ステップ2303)。
【0154】
続いて、演算部72eは、Gの各信号強度に対する頻度データ(Gに関するヒストグラム)を得るために、Gの信号強度のヒストグラムを演算する。例えば、演算部72eは、メモリ72cを参照して、信号強度0〜255の各信号強度について、その信号強度を示すGの信号強度データの数を計数して、Gの信号強度のヒストグラムを演算する(ステップ2304)。
【0155】
続いて、演算部72eは、Bの各信号強度に対する頻度データ(Bに関するヒストグラム)を得るために、Bの信号強度のヒストグラムを演算する。例えば、演算部72eは、メモリ72cを参照して、信号強度0〜255の各信号強度について、その信号強度を示すBの信号強度データの数を計数して、Bの信号強度のヒストグラムを演算する(ステップ2305)。
【0156】
続いて、演算部72eは、信号強度を共通軸にして、R、G、Bの各ヒストグラムを合成して1つのヒストグラムを生成し、その合成されたヒストグラムをメモリ72cに保持する(ステップ2306)。
【0157】
続いて、演算部72eは、メモリ72cを参照して、その合成されたヒストグラムでの頻度のピーク値を検出する(ステップ2307)。
【0158】
続いて、演算部72eは、参照データD(i)のうち、ピーク値が現れる信号強度に対応する個所に「1」を設定し、その前後の個所については、その個所に対応する信号強度の頻度をピーク値に応じて規格化した値を設定する(ステップ2308)。
【0159】
続いて、演算部72eは、データの名称などのカテゴリを入力する旨のメッセージを表示部9に表示する。ユーザが、そのメッセージに応じて操作部8を操作してカテゴリを入力すると、そのカテゴリは、操作部8から制御部71に提供され、制御部71から演算部72eに提供される(ステップ2309)。
【0160】
なお、このカテゴリは、最終的に識別したデータを表示部9に表示する際に名称として使用される。
【0161】
演算部72eは、カテゴリを受け付けると、そのカテゴリを、ここまでのデータ(ステップ2306で生成したヒストグラムと、ステップ2308で生成した参照データ)と関連づけて一塊にして、バスライン72dを経由して参照データ記憶部72bに保存する(ステップ2310)。なお、ステップ2306で生成したヒストグラムと、ステップ2308で生成した参照データとで、参照用ヒストグラムが構成される。
【0162】
以上で、図19に示した処理2が終了する。
【0163】
以降、ユーザが、反応面基板200を、反応面200aで化学反応したガスおよびそれらの濃度が異なるものに変えながら、図19に示した動作が繰り返えされる。
【0164】
次に、演算部72eが、測定された反応面200aのRGB画像と、参照データ記憶部72b内の参照用ヒストグラムと、に基づいて、反応面200aの色を識別し、その識別結果に応じた情報を出力する動作を説明する。この動作は、例えば、操作部8にある参照データ作成ボタンの操作により参照データ作成モードが解除された後に実行される。
【0165】
図24は、この動作を説明するためのフローチャートである。なお、図24において、図19に示した処理と同一の処理には同一符号を付してある。
【0166】
特定対象のガスと呈色反応した反応面200aを有する反応面基板200が、色判別装置100内に挿入される。
【0167】
参照データ作成モードが解除された状況で、操作部8にある操作開始ボタンが、ユーザによって操作されると、操作部8は、発光指示を制御部71に提供する。
【0168】
制御部71が、参照データ作成モード下で発光指示を受け付けると、処理3が実行される。なお、処理3は、図19のステップ1901で示した処理1と同じ処理である。
【0169】
その後、処理4が実行される(ステップ2401)。
【0170】
図25は、処理4(ステップ2401)を説明するためのフローチャートである。なお、図25において、図23に示した処理と同一の処理には同一符号を付してある。
【0171】
演算部72eは、まず、RGB画像を取得する(ステップ2301)。以降、演算部72eは、ステップ2302からステップ2305を実行する。
【0172】
続いて、演算部72eは、信号強度を共通軸にして、R、G、Bの各ヒストグラムを合成して1つのヒストグラムDxを生成し、ヒストグラムDxをメモリ72cに保持する(ステップ2501)。
【0173】
続いて、演算部72eは、変数iを1に設定し、演算の際の初期値を0(Dmulti(0)=0、Dmulti_max=0)に設定する(ステップ2502)。
【0174】
続いて、演算部72eは、変数iに対応する参照データ記憶部72b内のデータを読み出し、そのデータを、バスライン72dを経由してメモリ72cに保持する(ステップ2503)。
【0175】
続いて、演算部72eは、メモリ72cを参照して、同一信号強度ごとに、DxとD(i)の積をとり、その積を加算していく(ステップ2504)。なお、演算部72eは、その加算値をDmulti(i)とする。
【0176】
続いて、演算部72eは、Dmulti(i)がDmulti(i−1)より大きいか判断する(ステップ2505)。
【0177】
Dmulti(i)がDmulti(i−1)より大きい場合、演算部72eは、Dmulti_max=Dmulti(i)とし、Dmatch=iとする(ステップ2506)。
【0178】
続いて、演算部72eは、i=nであるか判断する。なお、nは、参照データ記憶部72b内の参照用ヒストグラムの数を示す。
【0179】
i=nでないと、演算部72eは、変数iに1を加算し(ステップ2508)、ステップ2503の処理を実行する。
【0180】
なお、ステップ2505で、Dmulti(i)がDmulti(i−1)より大きくない場合、演算部72eは、ステップ2508を実行する。
【0181】
また、ステップ2507で、i=nである場合、演算部72eは、反応面200aに該当するデータとして、Dmatchに示されたiに対応するカテゴリを表示部9に表示する(ステップ2509)。
【0182】
図26は、D(1)とDxとの信号強度ごとの積算値およびDmulti(1)の算出値を示した説明図であり、図27は、D(5)とDxとの信号強度ごとの積算値およびDmulti(5)の算出値を示した説明図である。
【0183】
図26ではDmulti(1)=2.341であり、図27ではDmulti(5)=0.172であるため、D(1)のほうが、色判別装置100内の反応面200aとの一致度が高くなる。
【0184】
本実施形態によれば、フォトダイオード5は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変わるごとに、光源部4から投射された光のうち、反応面200aで反射され開口部1を通過した通過光を受光し、その通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する。このため、カラー部分領域信号は、反応面200aの各部分領域に対応する画素情報として機能する。制御処理部7は、複数のカラー部分領域信号に基づいて、反応面200aの色を判別する。
【0185】
したがって、反応面200aとフォトダイオード5の間にレンズが設けられなくても、反応面200aの各部分領域に対応する画素情報を生成することが可能になる。このため、反応面200aで色むらが生じても、制御処理部7は、各画素情報を解析することによって、その色むらを認識することが可能になる。
【0186】
なお、上記作用効果は、開口部1を有する光制御部2と、駆動部3と、光源部4と、フォトダイオード5と、制御処理部7とからなる色判別装置でも生じる。
【0187】
本実施形態では、光源部4は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変化するごとに、反応面200aに光を投射する。
【0188】
この場合、必要なときのみ、光源部4は、反応面に光を投射することが可能になる。よって、無駄な光の投射を抑制することが可能になる。
【0189】
本実施形態では、駆動部3は、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係が変わるように反応面200aを移動し、また、反応面200aが色判別装置100から排出されるように反応面を移動する。
【0190】
この場合、反応面200aを色判別装置100から排出する駆動部3を用いることによって、開口部1と反応面200aとの相対的な位置関係を変えることが可能になる。よって、構成の簡略化が図れる。
【0191】
本実施形態では、駆動部3は、反応面200aと共に参照用白色面200bが設けられた反応面基板200を移動することによって反応面200aを移動し、また、フォトダイオード5が、光源部4から投射された光のうち参照用白色面200bで反射された光を受光するように、反応面基板200を移動する。
【0192】
フォトダイオード5は、光源部4から投射された光のうち参照用白色面200bで反射された光を受光した場合に参照信号を出力する。
【0193】
制御処理部7は、参照信号を用いて、複数のカラー部分領域信号を補正し、補正後の複数のカラー部分領域信号に基づいて、反応面200aの色を判別する。
【0194】
この場合、駆動部3が反応面基板200を動かすことによって、参照信号と複数のカラー部分領域信号を得ることが可能になる。また、複数のカラー部分領域信号のレベルを、参照信号を用いて調整することが可能になる。
【0195】
本実施形態では、フォトダイオード5は、RとGとBの各画素を1つずつ有する。このため、例えば、複数のRとGとBの画素を有したカラーCCD素子またはカラーCMOS素子が、受光手段として用いられた場合に比べて、受光手段の構成を簡略化することが可能になる。
【0196】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態である色判別装置100Aを説明する。
【0197】
図28は、色判別装置100Aを示したブロック図である。なお、図28において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0198】
色判別装置100Aは、色判別装置100と比べて、光制御部2の代わりに光制御部2Aが用いられ、駆動部3の代わりに駆動部3Aが用いられる点が異なる。
【0199】
図29は、光制御部2Aと駆動部3Aを説明するための平面図である。なお、図29において、図28に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0200】
図29において、開口部1Aは、スポットであり、反応面200aと対向している。なお、開口部1Aの形状は、正方形に限らず円形でもよく、適宜変更可能である。また、光制御部2Aは、黒色であることが望ましい。
【0201】
図30は、図29を矢印E方向から見た場合の要部平面図である。なお、図30において、図29に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0202】
図30において、光制御部2Aと接触している駆動部3Aは、制御部71からの指示によって、矢印F方向に回転すると、光制御部2Aを矢印G方向に移動し、矢印H方向に回転すると、光制御部2Aを矢印I方向に移動する。
【0203】
本実施形態では、制御処理部7は、駆動部3A〜3Aを制御して、反応面200aを開口部1Aで走査する。このため、反応面200aのRGB画像は、反応面200aをマトリクス状に分解した各部分領域に対応する複数のカラー部分領域信号にて構成される。
【0204】
なお、本実施形態でも、第1の実施形態で説明したように、複数のカラー部分領域信号が解析され、反応面200aの色が判別される。
【0205】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【0206】
例えば、上記各実施形態では、色情報として、ヒストグラムを用いたが、色情報は、ヒストグラムに限らず、適宜変更可能である。
【0207】
また、複数のRとGとBの画素を有したカラーCCD素子またはカラーCMOS素子が、受光手段として用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】本発明の第1の実施形態の色判別装置を示したブロック図である。
【図2】反応面基板200の一例を示した平面図である。
【図3】光制御部2と反応面基板200を説明するための平面図である。
【図4】反応面のRGB画像5Aを説明するための説明図である。
【図5】制御処理部7の一例を示したブロック図である。
【図6】あるガスと呈色反応した反応面200aの一例を示した説明図である。
【図7】色サンプルAの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【図8】反応領域(色むら)200aBが生じた例を示した説明図である。
【図9】色サンプルBの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【図10】反応領域(色むら)200aCが生じた例を示した説明図である。
【図11】色サンプルCの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【図12】反応領域200aDを示した説明図である。
【図13】色サンプルDの信号強度に関するヒストグラムを示した説明図である。
【図14】色サンプルA(i=1)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【図15】色サンプルB(i=2)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【図16】色サンプルC(i=3)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【図17】色サンプルD(i=4)の参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【図18】参照用ヒストグラムの一例を示した説明図である。
【図19】参照データ記憶部72bにデータを保持する動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】処理1を説明するためのフローチャートである。
【図21】参照用白色面200bを測定する際の、開口部1と参照用白色面200bとの位置関係を示した説明図である。
【図22】参照用白色面200bを測定する際の、開口部1と参照用白色面200bとの位置関係を示した説明図である。
【図23】処理2を説明するためのフローチャートである。
【図24】測定された反応面200aのRGB画像と、参照データ記憶部72b内の参照用ヒストグラムと、に基づいて、反応面200aの色を識別する動作を説明するためのフローチャートである。
【図25】処理4を説明するためのフローチャートである。
【図26】D(1)とDxとの信号強度ごとの積算値およびDmulti(1)の算出値を示した説明図である。
【図27】D(5)とDxとの信号強度ごとの積算値およびDmulti(5)の算出値を示した説明図である。
【図28】色判別装置100Aを示したブロック図である。
【図29】光制御部2Aと駆動部3Aを説明するための平面図である。
【図30】図29を矢印E方向から見た場合の要部平面図である。
【符号の説明】
【0209】
1、1A 開口部
2、2A 光制御部
3〜3、3A〜3A 駆動部
4 光源部
5 フォトダイオード
6〜6 遮光板
7 制御処理部
71 制御部
72 処理部
72a A/D変換部
72b 参照データ記憶部
72c メモリ
72d バスライン
72e 演算部
8 操作部
9 表示部
100、100A 色判別装置
200 反応面基板
200a 反応面
200b 参照用白色面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定対象のガスと呈色反応した反応面の色を判別する色判別装置であって、
前記反応面よりも小さい開口部を有する光制御手段と、
前記開口部が前記反応面と対向する状況で、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係を変えていく駆動手段と、
前記反応面に光を投射する投射手段と、
前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記投射された光のうち、前記反応面で反射され前記開口部を通過した通過光を受光し、当該通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する受光手段と、
複数の前記カラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する判別手段と、を含む色判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の色判別装置において、
前記投射手段は、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記反応面に光を投射する、色判別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の色判別装置において、
前記駆動手段は、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるように前記反応面を移動していき、また、前記反応面が前記色判別装置から排出されるように前記反応面を移動する、色判別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の色判別装置において、
前記駆動手段は、前記反応面と共に参照用白色面が設けられた反応面基板を移動することによって前記反応面を移動し、また、前記受光手段が、前記投射された光のうち前記参照用白色面で反射された光を受光するように、前記反応面基板を移動し、
前記受光手段は、前記投射された光のうち前記参照用白色面で反射された光を受光した場合に、前記参照用白色面で反射された光に応じた参照信号を出力し、
前記判別手段は、前記参照信号を用いて、前記複数のカラー部分領域信号を補正し、補正後の前記複数のカラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する、色判別装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の色判別装置において、
前記受光手段は、RとGとBの各画素を1つずつ有する、色判別装置。
【請求項6】
特定対象のガスと呈色反応した反応面よりも小さい開口部を有する光制御手段を含み、前記反応面の色を判別する、色判別装置が行う色判別方法であって、
前記開口部が前記反応面と対向する状況で、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係を変えていく駆動ステップと、
前記反応面に光を投射する投射ステップと、
前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記投射された光のうち、前記反応面で反射され前記開口部を通過した通過光を受光し、当該通過光に応じたカラー部分領域信号を出力する受光ステップと、
複数の前記カラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する判別ステップと、を含む色判別方法。
【請求項7】
請求項6に記載の色判別方法において、
前記投射ステップでは、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるごとに、前記反応面に光を投射する、色判別方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の色判別方法において、
前記駆動ステップでは、前記開口部と前記反応面との相対的な位置関係が変わるように前記反応面を移動していき、また、前記反応面が前記色判別装置から排出されるように前記反応面を移動する、色判別方法。
【請求項9】
請求項8に記載の色判別方法において、
前記駆動ステップでは、前記反応面と共に参照用白色面が設けられた反応面基板を移動することによって前記反応面を移動し、
前記受光ステップでは、前記投射された光のうち前記参照用白色面で反射された光を受光した場合に、前記参照用白色面で反射された光に応じた参照信号を出力し、
前記判別ステップでは、前記参照信号を用いて、前記複数のカラー部分領域信号を補正し、補正後の前記複数のカラー部分領域信号に基づいて、前記反応面の色を判別する、色判別方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の色判別方法において、
前記受光ステップでは、RとGとBの各画素を1つずつ有する受光手段で前記通過光を受光する、色判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−210464(P2009−210464A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54903(P2008−54903)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】