説明

色抽出装置

【目的】設定キーに不用意に触れて設定値が変化するのを防止することができる色抽出装置を提供する。
【構成】判別を行う対象物の画像をカラーカメラ1にて撮像する。対象物の画像信号が色判別処理部3において処理され、操作パネル4の設定キー5により設定された各パラメータに基づいて判別される。外部機器との間でシリアル入出力部10あるいはパラレル入出力部11を介してデータ通信を行うことができる。データ通信が可能な状態では設定キー5の操作はCPU7には受け付けられない。設定キー5の操作を受け付けられるようにするには、一定時間を越えて切換キー519が押し続けられなければならない。したがって、設定キー5が不用意に操作されて設定値が意図しない値に変更されるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工場の生産ラインなどにおいて、生産工程上の部品や製品を撮像装置によって撮像し、得られた画像信号をデータ処理することによって画像信号の色情報を抽出し、予め設定された色と略同一の色のみを検出して、部品や製品の良否判定あるいは検査などを行う色抽出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、上述のような色抽出装置においては、検出のためのパラメータ(例えば、画像信号に含まれるR,G,Bの各成分や、画像信号の色相・彩度・明度)を所定の値に設定するためのボタン、スイッチやボリュームなどから成る設定部が操作パネルに設けられており、これら設定部によってパラメータを設定した後、操作者が設定部に誤って手を触れてパラメータの設定値が変化してしまうのを防止するために、設定部が設けられた操作パネルの前面をカバーで覆って不用意に手が触れないようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来構成では、操作パネルの前面に上記のようなカバーを設けることは、色抽出装置自体の構造が複雑になったり、あるいはカバーを設けるためのコストがかかるという問題があった。本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、操作パネルにカバーを設けることなく、設定キーに不用意に触れて設定値が変化するのを防止することができる色抽出装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記目的を達成するために、対象物体を撮像してカラーの画像信号を出力する撮像装置と、この画像信号をデータ処理するとともに色の情報を抽出することによって、予め設定された色と略同一の色のみを画像信号から検出する制御処理部と、少なくとも検出する色を設定するための設定キーを前面に備えた操作パネルと、外部機器との間でデータ通信を行い、外部機器から送信される少なくとも検出する色を設定するための設定データを受信し、受信した設定データを制御処理部に伝送する通信制御部とを備え、通信制御部と外部機器との間のデータ通信の禁止/許可を切り換える切換キーを操作パネルの前面に設け、制御処理部は、データ通信を許可している間は操作パネルの各キー操作を受け付けず、切換キーが一定時間を越えて操作されたときにのみデータ通信を禁止することを特徴とする。
【0005】また、請求項2の発明は、制御処理部が、データ通信を許可している間は操作パネルの各キー操作を受け付けず、切換キーが所定の時間内に一定回数を越えて操作されたときにのみデータ通信を禁止することを特徴とする。
【0006】
【作用】上記構成によれば、外部機器若しくは操作パネルの設定キーによって、少なくとも検出する色の設定を行った後にデータ通信を許可する状態に切り換えておくことにより、操作パネルの各キー操作は制御処理部に受け付けられず、且つ、操作者が意図して切換キーを一定時間を越えて操作するか、あるいは切換キーを所定の時間内に一定回数を越えて操作したときにのみデータ通信が禁止されて操作パネルの各キー操作が受け付けられるので、操作者の手が操作パネルの各キーに不用意に触れてしまったような場合にも、設定値が意図しない値に変化して誤動作してしまうのを防止することができるものである。
【0007】
【実施例】
(実施例1)本実施例の色抽出装置の概略ブロック図を図1に示す。この色抽出装置は、撮像装置であるカラーカメラ1と、カラーカメラ1で撮像した対象物体の画像信号が入力され、上記画像信号をR・G・Bの各信号成分に分解して出力する画像入力部2と、画像入力部2から入力されるR・G・Bの各信号成分から色判別のためのパラメータである色相・彩度・明度を演算し、予め設定された各パラメータの上限値及び下限値と上記各パラメータの値とを比較して、判別したい色を抽出する色判別処理部3と、上記上限値及び下限値、並びに他の設定を行うための設定キー5などを備えた操作パネル4と、設定した各パラメータの上限値及び下限値やその他のデータを記憶しておくための不揮発性メモリ(例えばEEPROMなど)から成るデータ記憶部6と、設定キー5の操作による各パラメータの設定を制御したり、データ記憶部6へのデータの書込み・読出し、および色判別処理部3へのデータ記憶部6から読み出したデータの伝送などを行うCPU7と、色相・彩度・明度の各パラメータから原画像の画像信号を合成する画像出力部8と、画像出力部8から出力される画像信号に基づいて対象物体の原画像を表示するとともにCPU7からの制御信号に基づいて各パラメータの上限値・下限値などのデータを表示するモニタ9と、コンピュータなどの外部機器(図示せず)との間で各パラメータの設定値のデータなどに関してデータ通信(シリアル通信及びパラレル通信)を行うためにCPU7と外部機器との間に挿入されたシリアル入出力部10及びパラレル入出力部11とを備えている。すなわち、本実施例の色抽出装置においては、画像入力部2、色判別処理部3及びCPU7により制御処理部を構成し、また、シリアル入出力部10及びパラレル入出力部11により通信制御部を構成している。
【0008】操作パネル4は、その前面に、カラーカメラ1からの画像信号を色判別処理部3において判別処理するか否かを設定する処理設定キー51 と、判別したい希望する色を選択するための複数の色選択キー52 〜58 と、色相・彩度・明度の各パラメータの内の設定値を変更するパラメータを選択するためのパラメータ選択キー59 〜511と、上限値及び下限値を設定するためのアップキー512,514及びダウンキー513,515と、設定する上限値及び下限値をそれぞれディジタルに表示する表示部5a,5bと、設定した上限値及び下限値を確定してデータ記憶部6に記憶させるためのパラメータ設定キー516と、データ記憶部6に記憶された複数のデータを選択するためのデータ選択キー517,518と、選択したデータの番号を表示するデータ番号表示部5cと、CPU7において外部機器との間のデータ通信の禁止/許可を切り換える切換キー519とを備えている。
【0009】また、上記各設定キー51 〜519は、押して離すことで1回の操作が完了し、1回の操作毎に設定値などを切り換えたり、変化させたりできるものである。さらに、アップキー512,514及びダウンキー513,515と、パラメータ設定キー516と、データ選択キー517,518とを除く他の設定キー51 〜511,519には、操作される毎に点灯・消灯する表示部が設けてあり、各設定キー51 〜511,519による設定状態が視認できるようにしてある。
【0010】ここで、CPU7は、切換キー519が操作されて外部機器とのデータ通信が許可状態にあるときには、操作パネル4上の各設定キー5を全く受け付けないようにしてあり、通信禁止状態に切り換えて各設定キー5の操作を受け付けるようにするためには、切換キー519が一定時間(例えば数秒)を越えて押し続けられたときにのみ切換キー519の操作を受け付け、通信を禁止状態に切り換えて操作パネル4の各設定キー5の操作を受け付けるものである。
【0011】本実施例の色抽出装置においては、まず、カラーカメラ1からの画像信号を色判別処理をせずにそのままモニタ9に表示してピントや画角の調整を行う。そして、処理設定キー51 を操作して色判別処理を行うモードに設定し、判別したい希望する色に近い色を色選択キー52 〜58 によって選択する。ここで、画角内に判別したい色と類似した色がある場合には、その類似した色を誤って抽出しないように、パラメータ選択キー59 〜511、アップキー512,514及びダウンキー513,515を操作して色相・彩度・明度の各パラメータに上限値及び下限値を設定し、パラメータ設定キー516を操作して、設定した各パラメータの設定値をデータ選択キー517,518により選択した番号に対応したデータ記憶部6の番地に記憶させる。なお、本実施例の色抽出装置を生産組立ラインを流れる多種類の部品や製品の仕分けや検査に使用する場合には、多種類の部品及び製品についてそれぞれ上述のようにして各パラメータの設定値をデータ記憶部6に記憶しておき、必要に応じてCPU7により読み出すようにすればよい。
【0012】一方、色抽出装置を上記生産組立ラインにて使用するような場合には、色抽出装置の各パラメータの設定などを操作パネル4を使わずに遠隔操作によって行える方が都合がよい。そこで、本発明の色抽出装置では、コンピュータなどの外部機器(図示せず)からRS−232Cなどのシリアルインターフェース、あるいはパラレルインターフェースを介してデータ通信を行うためのシリアル入出力部10及びパラレル入出力部11を備え、CPU7と外部機器との間でデータ通信を行えるようにしてある。
【0013】ところで、CPU7は、操作パネル4の各設定キー5を順次スキャンして監視し、いずれかの設定キー5が操作されるとそれを検知して操作された設定キー5に対応する設定値を変更する。しかして、上述のように外部機器から遠隔操作によって各パラメータの設定を行える通信状態にあるときに、操作パネル4の設定キー5が勝手に操作されてしまうと設定値が意図しない値になる可能性がある。すなわち、操作パネル4を使って設定した直後に外部機器からのデータ通信によって設定値が別の値に変更されてしまうような不都合が生じるので、外部機器との通信可能状態にあるときには操作パネル4の設定キー5の操作をCPU7が受け付けないようにしている。なお、外部機器とのデータ通信を行うか否かに関わらず、切換キー519を操作して通信許可に切り換えれば操作パネル4の各設定キー5の操作を受け付けられなくすることができる。
【0014】一方、データ通信を禁止して操作パネル4の設定キー5操作が受け付けられるようにするためには、上述のように切換キー519を操作者が意図して一定時間を越えて押し続けなければならない。すなわち、CPU7が、各設定キー5を順次スキャンする一定の数サイクルの間に、切換キー519の操作を連続して検出した場合にのみ切換キー519の操作を受け付けてデータ通信を禁止するように切り換えるのである。
【0015】次に、図2に示すフローチャートに基づいて本実施例の色抽出装置の動作及び処理手順を説明する。まず、CPU7は、現在データ通信が許可された通信可能状態か否かをチェックし(S1 )、通信可能状態である場合には、切換キー519が一定時間内に連続して押し続けられているか否かを監視している(S2 )。そして、上記条件を満たした場合、CPU7はデータ通信を禁止して(S3 )、操作パネル4の設定キー5操作を受け付け可能とする(S4 )。操作パネル4の設定キー5による各パラメータの設定が可能になれば、上述したように、処理設定キー51 を操作して色判別処理を行うモードに設定し(S5 )、判別したい希望する色に近い色を色選択キー52 〜58 によって選択する(S6 )。さらに、パラメータ選択キー59 〜511、アップキー512,514及びダウンキー513,515を操作して色相・彩度・明度の各パラメータに上限値及び下限値を設定し(S7及びS8 )、パラメータ設定キー516を操作して、設定した各パラメータの設定値をデータ選択キー517,518により選択した番号に対応したデータ記憶部6の番地に記憶させる(S9 及びS10)。なお、パラメータ設定キー516を操作しなければ設定したデータはデータ記憶部6に記憶されず、CPU7は、電源がオフされたか否かを判別し(S11)、電源がオンのままであれば再度通信可能状態か否かをチェックする(S1 )。
【0016】上記構成によれば、操作パネル4の設定キー5が受け付けられない状態にある時には、操作者が意図して切換キー519を押し続けない限り設定キー5の受け付け禁止を解除できないものであるから、設定キー5が不用意に操作されて設定値が意図しない値に変更されるのを防止することができ、しかも、操作パネル4の前面に設定キー5を覆って設定キー5が不用意に操作されないようにするカバーなどの機構的な保護部材を必要とせず、操作パネル4の構造の複雑化やそれに伴うコストアップを防ぐことができるものである。
【0017】(実施例2)本実施例は、その基本構成は実施例1のものと共通であり、共通する部分の説明は省略し、特徴となる部分についてのみ説明する。図3は本実施例の色抽出装置の動作及び処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施例の色抽出装置の動作及び処理手順は基本的に実施例1のものと共通である。しかして、本実施例の色抽出装置の特徴となる部分は、通信可能状態を解除して操作パネル4の設定キー5を受け付け可能とする手順にある。
【0018】すなわち、本実施例の色抽出装置においては、通信可能状態にあるときには、CPU7が常時切換キー519が操作されたか否かを監視しており(S2 ’)、一定時間内に所定の回数の切換キー519の操作があったときにのみ切換キー519の操作を受け付けてデータ通信を禁止し(S3 ’)、操作パネル4の設定キー5操作を受け付け可能とする(S4 )。
【0019】上記構成によれば、操作パネル4の設定キー5が受け付けられない状態にある時には、操作者が意図して切換キー519を連続して所定の回数以上操作しない限り設定キー5の受け付け禁止を解除できないものであるから、設定キー5が不用意に操作されて設定値が意図しない値に変更されるのを防止することができ、しかも、操作パネル4の前面に設定キー5を覆って設定キー5が不用意に操作されないようにするカバーなどの機構的な保護部材を必要とせず、操作パネル4の構造の複雑化やそれに伴うコストアップを防ぐことができるものである。なお、その他の構成及び動作、処理手順については実施例1のものと共通である。
【0020】
【発明の効果】本発明は、対象物体を撮像してカラーの画像信号を出力する撮像装置と、この画像信号をデータ処理するとともに色の情報を抽出することによって、予め設定された色と略同一の色のみを画像信号から検出する制御処理部と、少なくとも検出する色を設定するための設定キーを前面に備えた操作パネルと、外部機器との間でデータ通信を行い、外部機器から送信される少なくとも検出する色を設定するための設定データを受信し、受信した設定データを制御処理部に伝送する通信制御部とを備え、通信制御部と外部機器との間のデータ通信の禁止/許可を切り換える切換キーを操作パネルの前面に設け、制御処理部が、データ通信を許可している間は操作パネルの各キー操作を受け付けず、切換キーが一定時間を越えて操作されたとき、あるいは、切換キーが所定の時間内に一定回数を越えて操作されたときにのみデータ通信を禁止するものであるから、外部機器若しくは操作パネルの設定キーによって、少なくとも検出する色の設定を行った後にデータ通信を許可する状態に切り換えておくことにより、操作パネルの各キー操作は制御処理部に受け付けられず、且つ、操作者が意図して切換キーを一定時間を越えて操作するか、あるいは切換キーを所定の時間内に一定回数を越えて操作したときにのみデータ通信が禁止されて操作パネルの各キー操作が受け付けられるので、操作者の手が操作パネルの各キーに不用意に触れてしまったような場合にも、設定値が意図しない値に変化せず、誤動作を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1を示す概略ブロック図である。
【図2】同上の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施例2の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 カラーカメラ
3 色判別処理部
4 操作パネル
19 切換キー
7 CPU
10 シリアル入出力部
11 パラレル入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象物体を撮像してカラーの画像信号を出力する撮像装置と、この画像信号をデータ処理するとともに色の情報を抽出することによって、予め設定された色と略同一の色のみを画像信号から検出する制御処理部と、少なくとも検出する色を設定するための設定キーを前面に備えた操作パネルと、外部機器との間でデータ通信を行い、外部機器から送信される少なくとも検出する色を設定するための設定データを受信し、受信した設定データを制御処理部に伝送する通信制御部とを備え、通信制御部と外部機器との間のデータ通信の禁止/許可を切り換える切換キーを操作パネルの前面に設け、制御処理部は、データ通信を許可している間は操作パネルの各キー操作を受け付けず、切換キーが一定時間を越えて操作されたときにのみデータ通信を禁止することを特徴とする色抽出装置。
【請求項2】 対象物体を撮像してカラーの画像信号を出力する撮像装置と、この画像信号をデータ処理するとともに色の情報を抽出することによって、予め設定された色と略同一の色のみを画像信号から検出する制御処理部と、少なくとも検出する色を設定するための設定キーを前面に備えた操作パネルと、外部機器との間でデータ通信を行い、外部機器から送信される少なくとも検出する色を設定するための設定データを受信し、受信した設定データを制御処理部に伝送する通信制御部とを備え、通信制御部と外部機器との間のデータ通信の禁止/許可を切り換える切換キーを操作パネルの前面に設け、制御処理部は、データ通信を許可している間は操作パネルの各キー操作を受け付けず、切換キーが所定の時間内に一定回数を越えて操作されたときにのみデータ通信を禁止することを特徴とする色抽出装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平7−282264
【公開日】平成7年(1995)10月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−77411
【出願日】平成6年(1994)4月15日
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)