説明

色空間の限られた領域で光を発する効率的な固体光源

【課題】低価格で光源の色温度を変えることができる光源を提供する。
【解決手段】第1の成分光源は、色制御信号の組に応じてCIE 1976色空間の所定の二次元領域内で変化できる知覚色を有する光を発する。第2の成分光源は白色光を発する。ミキシング装置は、第1および第2の成分光源からの光を組み合わせて、知覚出力色を有する出力光信号を生成する。コントローラは、光源の外部の1つの信号源からの入力信号に応じて色制御信号の組を生成し、入力信号によって決定されるCIE 1976色空間内の1つの点で知覚出力色を維持する。前記第2の成分光源は、青色スペクトル領域および黄色スペクトル領域で光を発するLEDを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光ダイオード(LED)は、白熱電球および蛍光灯に基づく従来の光源における魅力的な代替候補である。LEDは、白熱光よりも高いエネルギ変換効率を有し、白熱光器具および蛍光灯器具の両方よりもかなり長い寿命を有する。また、LEDに基づく照明器具は、蛍光に伴う高い電圧を必要としない。
【背景技術】
【0002】
残念ながら、LEDは、前述した従来の光源に代わるものとしての広範囲に及ぶそれらの受け入れを妨げる多くの欠点を有する。第1に、大型の従来の光源の出力に等しい出力を有するLEDは市販されておらず、そのため、高出力LED光源は、所望の出力を供給するために多数の個々のLEDを組み合わせる必要がある。
【0003】
第2に、LEDは狭い光帯域の光を発する。そのため、人間の観察者が特定の色を有すると知覚できる光源を形成するために、異なる発光スペクトルを有するLEDを同一光源へと組み合わせなければならず、あるいは、蛍光体変換層を利用してLED発生光の一部を異なるスペクトルの光へと変換しなければならない。例えば、白色光を発するように知覚されるLEDは、スペクトルの赤色、青色および緑色領域で発光スペクトルを有するLEDの出力を組み合わせることにより、あるいは、青色発光LEDと出力光の一部をスペクトルの黄色領域の光へと変換する蛍光体層とを利用することにより構成することができる。
【0004】
最初の手法は、出力光が幅広い色の中の任意の色を有すると知覚される場合にほぼ同じ最大強度で光を発する3つのタイプのLEDを必要とする。特定の色帯域のLEDを形成するコストは、他の色帯域のLEDに関連するコストよりもかなり高い。その結果、光源のコストは、最も高いコストを有するLEDタイプのコストによって左右される。
蛍光体変換は、光源が光の1つの色を供給しなければならない場合に、この問題への解決策を与えることができる。例えば、前述したように、白色光源は、青色光の一部を黄色光へ変換する蛍光体層で青色LEDを覆うことにより形成することができる。変換される光の一部が正確に選択される場合、人間の観察者は、その光を白色であると知覚する。そのような光源のコストは、青色LEDのコストによって左右される。今日、費用効率の高いこの種の白色光源が販売されているが、これらの光源は1つの「色温度」の白色光しか発しない。
【0005】
多くの用途では、光源の色温度を制御できること、あるいは、白色光源によって供給される範囲近辺の狭い範囲で出力色を変えることができることが必要とされる。例えば、医師は、多くの場合、ライトボックスから構成されるバックライト付きディスプレイを用いてX線を観察し、ライトボックスは、X線が置かれる当該ボックスの1つの面を均一に照明する白色光源を収容している。これらのディスプレイと併せて2つの異なるカラー光源が使用され、特定のタイプのX線が表示されることにより特定の色が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0066266号明細書(特開2007−141834号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のライトボックスは、光源として蛍光灯を利用する。蛍光は変化可能な色度点を与えないため、ユーザは、2つの異なる観察ライトボックスを保持しなければならない。この構成により、一般に診療所内の多くの異なる検査室内に配置される観察ボックスのコストがかなり高くなる。また、第2のボックスは、検査室内でかなりの量の壁空間を占める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1および第2の成分光源と、ミキシング装置と、コントローラとを有する光源を含む。第1の成分光源は、色制御信号の組に応じてCIE 1976色空間の所定の二次元領域内で変化できる知覚色を有する光を発する。第2の成分光源は白色光を発する。ミキシング装置は、第1および第2の成分光源からの光を組み合わせて、知覚出力色を有する出力光信号を生成する。コントローラは、光源の外部の1つの信号源からの入力信号に応じて色制御信号の組を生成し、入力信号によって決定されるCIE 1976色空間内の1つの点で知覚出力色を維持する。第2の成分光源は、青色スペクトル領域および黄色スペクトル領域で光を発するLEDから構成することができる。第1の成分光源はLEDの第1、第2および第3のグループを含むことができ、各グループは、対応するスペクトル領域の光を発する複数のLEDを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】観察ステーション20の側面図である。
【図2】観察ステーション20の平面図である。
【図3】様々な色温度で白熱光源に対応するCIE 1976色空間の曲線11を示す。
【図4】白色LEDと白色LED光源の出力強度にほぼ等しい出力強度を有する従来のRGB光源とから構成される光源を用いて到達できる色空間の領域を示す。
【図5】従来のRGBコントローラを利用する本発明に係る光源の1つの実施形態を示す。
【図6】本発明に係る光源の他の実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、2つの異なるカラー設定のうちの一方でX線を表示するようになっている光源に関連して更に容易に理解できる。ここで、2つの光設定のうちのいずれかを用いてX線フィルム25を観察するための観察ステーション20を示す図1および図2を参照されたい。図1は観察ステーション20の側面図であり、図2は観察ステーション20の平面図である。観察ステーション20は、複数のLED21からの光によって照明されるライトボックス24を含む。LEDの組はLEDの複数のグループと見なすことができ、その場合、各グループは、他のグループとは異なる出力スペクトルを有する光を発する。また、LEDの組は、各グループに特有のスペクトルで光を発する複数のLEDを含む。LEDからの光は、光が内部反射によって捕捉されるように所定の角度でライトボックス24に入射する。ライトボックス24の上面は透明である。
下面27は、反射し、光が臨界角よりも小さい角度で上面26と衝突するように光の一部を所定の角度で反射する散乱中心28を含む。光は、上面を通じてライトボックス24から出て、X線フィルムを照らす。散乱中心は、ライトボックス24の上面が均一に照明されるように分布されている。なお、ライトボックス24の上面も同様に散乱中心を含むことができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、ライトボックス24は、透明プラスチックから成る固体シートである。下面上の散乱中心は、プラスチックの表面をエッチングすることにより或いは粗面化することにより形成される。なお、ライトボックス24の上面が粗面化される実施形態も構成できる。そのような実施形態において、下面は、滑らかなままで反射コーティングにより覆われてもよい。
【0012】
ライトボックス内の光の色は、各スペクトルでライトボックス24内の光の強度を測定する検出器23によって抽出される。検出器23は、複数の光検出器から構成することができる。各光検出器は異なる帯域通過フィルタを含むことができる。コントローラ22は、様々な光検出器からの信号を処理して、各スペクトル領域でライトボックス内に存在する光の強度を決定する。1つの実施形態において、検出器23は、スペクトルの赤色領域、青色領域および緑色領域でライトボックス内の光を測定する。
【0013】
コントローラ22は、各LEDに対する駆動信号を調整して、ライトボックス内の光がCIE 1976空間の所定の色度点にあるようにする。特に、コントローラ22は、複数の所定の色のうちの1つと一致するように光を調整する。コントローラ22への入力信号を介して特定の色がユーザにより指定される。例えば、コントローラ22は、それぞれが所定の色のうちの1つに対応する複数の位置を有する手動スイッチを含むことができる。スイッチは、コントローラ22内のデータプロセッサにより読み取られる。
【0014】
1つの実施形態において、コントローラ22は、X線フィルムを観察するために使用される2つの標準的な色度点のうちの一方に対応する照明を行なう。ここで、様々な色温度で白熱光源に対応するCIE 1976色空間の曲線11を示す図3を参照されたい。13および14に示される点は、X線を表示するために使用される色、すなわち、P45(x=0.255,y=0.3100)およびP104(x=0.280およびy=0.304)に対応している。12に示される領域は、3つの市販の赤色、緑色および青色LEDの強度の比率を調整することにより到達できる領域である。
【0015】
なお、色が変化し得る領域12は、点13および14間を切り換える光源を与えるために必要とされる大きさよりも十分に大きい。前述したように、この更なる変動性はかなり高くつく。なぜなら、LEDの全てが比較的高い強度で光を発生させる必要があるからである。異なるスペクトル範囲で光を供給するLEDは、大きく異なる電力変換効率およびコストを有する。例えば、スペクトルの緑色領域のLEDは、スペクトルの赤色部分のLEDよりもかなり高価である。また、赤色発光LEDは更に高い光変換効率を有する。
【0016】
本発明の1つの実施形態は、白色LED光源とかなり低い出力のRGB光源とから構成される複合光源が、所望の出力のRGB LED光源だけを利用する光源を形成するために必要とされる価格よりもかなり低い価格で所望の色度点を包含するのに十分な色空間の限られた領域で色を変えることができる光源を形成できるという所見に基づいている。
【0017】
この点で、白色LED光源が特に魅力的である。なぜなら、これらのLEDは、今日、フラッシュ光等の電球の代わりとして大量に製造されているからである。1つのタイプの白色LEDでは、青色光の一部を黄色光へ変換する蛍光体層で青色LEDが覆われる。リンからの残りの青色光と黄色光との組み合わせが白色のように見える。
【0018】
なお、これらの白色LEDは、1ワット当たりの光変換効率が蛍光光源よりも高い。LEDディスプレイを照明するために使用される典型的な蛍光光源は、約167Nits/Wの変換効率を有する。従来のRGB LEDディスプレイは110Nits/Wの変換効率を有する。前述した白色LEDは200Nits/Wの光変換効率を有する。そのため、白色LED光源と従来のRGB光源との組み合わせは、蛍光光源の変換効率に非常に近い変換効率を有する光源を形成でき、かなりの量の色変化をもたらすことができる。
【0019】
ここで、白色LEDと白色LED光源の出力強度にほぼ等しい出力強度を有する従来のRGB光源とから構成される光源を用いて到達できる色空間の領域を示す図4を参照されたい。RGB LEDの強度を変えることにより光源の知覚色を変えることができる領域が31で示されている。この領域は、RGB LEDが多くても光源からの全ての光の半分しか供給しないため、RGB LEDにおいて殆ど電力を要することなく2つのX線観察色を組み入れるのになお十分である。
【0020】
赤色、青色および緑色のスペクトル領域で光源の相対強度を測定する検出器により生成される検出信号に応じてRGB光源のLEDの強度を変えるためのコントローラは、大量生産されており、そのため、魅力的な価格で入手できる。したがって、本発明に係る光源の構造においては、そのような市販のコントローラを利用するのが有利である。
【0021】
従来のRGBコントローラを利用する本発明に係る光源の1つの実施形態を示す図5を参照されたい。光源40はLEDの4つの組を含む。45で示される白色LEDの組は、予め設定された電流で作動する。42〜44で示される赤色、青色および緑色LEDの組はそれぞれカラーコントローラ41によって制御される。カラーコントローラ41は、LEDの4つの全ての組によって発せられる光を測定するカラーセンサ46を含む。カラーセンサ46は、様々なLEDからの光が混合する機会がある場所に配置されている。
【0022】
カラーセンサ46は、赤、青および緑にわたる光帯域でカラーセンサ46により受けられる光の強度を示す信号を生成する。カラーセンサ46は、3つのフォトダイオードから成る組によって構成することができ、その場合、各フォトダイオードは、そのフォトダイオードに到達する光を対象の光帯域のうちの1つの光に制限する対応する帯域通過フィルタを有する。しかしながら、多くの他の形態のカラーセンサが当分野で知られており利用することができる。
【0023】
カラーセンサ46の出力は、カラーコントローラ41を含むチップから生成される目標明度と比較される。光源40において、これらの信号は、光源コントローラ48に記憶され、ユーザからの入力によって選択される。ユーザ入力は、色度点および強度値の両方を含むことができる。色度点は、予めプログラムされた色度点の所定の組のうちの1つを指定することにより選択できる。
【0024】
コンパレータ47は、パルス幅変調発生器49を利用するLED組42〜44を通じて流れる平均電流を調整するために用いられる誤り信号を出力する。LEDは、非常に速いために人間の眼では気付くことができない速度でON/OFFされる。観察者には、LEDによって生成される平均光だけが見える。LEDを通じて流れる平均電流は、LEDがONする各周期で時間のパーセンテージをセットすることにより設定される。パルス幅変調発生器49は、誤り信号を最小にするためにLEDの各組ごとにデューティファクタを調整する。電流ドライバの組51〜53はLEDの各組に対して電流を供給する。
【0025】
光源40は、従来のLEDカラーコントローラ41を効果的に使用するが、白色LEDを駆動させるために別個の電流源を必要とする。この電流源は可変ではなく、そのため、それぞれの特定のカラー設定で光の強度を変えることができない。他の手段として、電流源54は、光源コントローラ48によって動作される別個の強度制御装置を有する可変電流源であってもよい。しかしながら、そのような構成はコストがかかる。
【0026】
ここで、本発明に係る光源の他の実施形態を示す図6を参照されたい。光源70は図5に示される光源40と類似していることから、以下の説明を簡略化するため、光源40の要素によって果たされる機能に類似する機能を果たす光源70の要素については、同じ参照符号を付して、ここで更に説明しない。光源70は、白色LEDがカラーLED配列のうちの1つに組み込まれている点で光源40と異なっている。この実施形態において、白色LEDは、青色光の一部を黄色光へ変換する蛍光体を含む青色LEDから構成されている。そのため、白色LEDは青色LEDの組に含まれる。すなわち、LED鎖61内のLEDは、白色LED62と青色LED63との混合体である。白色LEDは鎖61内で均一に分布されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、別個の電流源および強度制御機構が必要なくなる。カラーコントローラ41は、それが図5に示される実施形態で行なったように正確にLEDの3つの組を扱うことができる。
ユーザは、所望の光強度および色度点の識別情報を、赤、青および緑の目標値の形態で光源コントローラ68へ供給する。強度は、目標値の相対値を一定に維持しつつ目標値の全てを増大し或いは減少することによりそれぞれ増大され或いは減少される。
【0028】
以上の説明および添付図面から、本発明に対する様々な変更が当業者に明らかとなる。したがって、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されなければならない。
【符号の説明】
【0029】
20 観察ステーション
21 LED
22 コントローラ
23 検出器
24 ライトボックス
25 X線フィルム
26 上面
27 下面
28 散乱中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色制御信号の組に応じてCIE 1976色空間の所定の二次元領域内で変化できる知覚色を有する光を発する第1の成分カラー光源と、
白色光を発する第2の成分光源と、
前記第1および第2の成分光源からの光を組み合わせて、出力知覚色を有する出力光信号を生成するミキシング装置と、
前記光源の外部の1つの信号源からの入力信号に応じて前記色制御信号の組を生成し、前記入力信号によって決定される前記CIE 1976色空間内の1つの点で前記出力知覚色を維持するコントローラと、
を備え
前記第2の成分光源は、青色スペクトル領域および黄色スペクトル領域で光を発するLEDを備える、
光源。
【請求項2】
前記第1の成分光源がLEDの第1、第2および第3のグループを備え、各グループは、対応するスペクトル領域の光を発する複数のLEDを備える、請求項1に記載の光源。
【請求項3】
LEDの前記第1、第2および第3のグループは、光スペクトルの赤色、青色および緑色領域の光を発する、請求項2に記載の光源。
【請求項4】
各グループの前記LEDが直列に接続され、前記コントローラは、LEDの各グループを通じて流れる平均電流を制御する、請求項2に記載の光源。
【請求項5】
前記第2の成分光源は、前記グループのうちの1つの前記LEDと直列に接続される複数のLEDを備える、請求項4に記載の光源。
【請求項6】
前記ミキシング装置は、前記出力光信号によって均一に照明される透明な平面を備える、請求項1に記載の光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54576(P2011−54576A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251846(P2010−251846)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【分割の表示】特願2007−240723(P2007−240723)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(506200186)アバゴ・テクノロジーズ・イーシービーユー・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (154)
【Fターム(参考)】