説明

芯地接着用ローラープレス機

【課題】ベルトコンベアのベルトの蛇行調整の際に、入口側で衣料用芯地と布の供給が乱れることがなく、接着された生地に歪み等が発生することのない芯地接着用ローラープレス機を提供する。
【解決手段】上下部2、3各々に配置された2つのベルトコンベア4、5と、2つのベルトコンベアのベルトの間に挟持された衣料用芯地と布地とを加熱する加熱手段20とを備え、少なくともいずれか一方のベルトコンベア4のテンションローラ8であって、衣料用芯地と布地とを挟持しているベルトとは離間した位置に配置されたテンションローラの軸線と、ベルトコンベア4の進行方向とのなす角度を変化させるローラ角度変更手段19と、ベルトコンベアのベルト4aの蛇行を検知する検知手段15、16と、検知手段により検知したベルトの蛇行を修正するようにローラ角度変更手段を制御する制御手段17とを備えるプレス機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用芯地と表地等の布を加熱及び加圧して両者を互いに接着させる芯地接着用ローラープレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用芯地と表地等の布を接着するにあたって、例えば、図4に示すような芯地接着用ローラープレス機(以下、単に「プレス機」という)が使用されている。このプレス機41は、上部42及び下部43の各々にベルトコンベア44、45が配置され、これらのベルトコンベア44、45の無端状ベルト(以下、単に「ベルト」という)の間で衣料用芯地と布とを挟持し、複数のヒータ46によって衣料用芯地と布地とを加熱しながら接着剤を徐々に軟化させ、出口側の一対の加圧ローラ47、48で加圧することによって衣料用芯地と布とを接着する。
【0003】
このプレス機41には、入口側に、テンションローラ49、50と、テンションローラ49、50を移動させるためのテンションアーム53、54、及びテンションスプリング55、56と、ベルトの蛇行を修正するための修正ローラ51、52とが配置される。また、プレス機41の出口側には、ベルトコンベア44、45のベルトの表面に付着した接着剤等を掻き落とすためのスクレーパ57、58と、クリーニングロール59が配置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のプレス機においては、ベルトコンベア44、45のベルトが蛇行した場合に、修正ローラ51、52の軸線と、ベルトコンベア44、45の進行方向とのなす角度を変化させて蛇行を調整しているが、修正ローラ51、52を移動させると、その影響がテンションローラ49、50にも現れるため、入口側での衣料用芯地と布の供給が乱れ、接着された生地に歪み(もわれ)が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来のプレス機における問題点に鑑みてなされたものであって、ベルトコンベアのベルトの蛇行調整を行った場合でも、入口側で衣料用芯地と布の供給が乱れることがなく、接着された生地に歪み等が発生することのないプレス機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、上下部各々に配置され、衣料用芯地と布地とを挟持して搬送するベルトを有する2つのベルトコンベアと、該2つのベルトコンベアの前記ベルトの間に挟持された前記衣料用芯地と布地とを加熱する加熱手段とを備えたプレス機であって、前記上下部各々に配置された2つのベルトコンベアの少なくともいずれか一方のベルトコンベアのテンションローラであって、前記衣料用芯地と布地とを挟持しているベルトとは離間した位置に配置されたテンションローラの軸線と、該いずれか一方のベルトコンベアの進行方向とのなす角度を変化させるローラ角度変更手段と、該いずれか一方のベルトコンベアのベルトの、該いずれか一方のベルトコンベアの進行方向に対して直角かつ水平方向の移動を検知する検知手段と、該検知手段により検知した前記いずれか一方のベルトコンベアのベルトの移動を修正するように前記ローラ角度変更手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、上部又は下部に配置されたベルトコンベアが蛇行した場合に、この蛇行を検知手段によって検知し、衣料用芯地と布地とを挟持しているベルトとは離間した位置に配置されたテンションローラの軸線と、ベルトコンベアの進行方向とのなす角度を、制御手段を介して、ローラ角度変更手段によって変化させることによって、前記ベルトコンベアの蛇行を修正することができるため、テンションローラの角度の変更が衣料用芯地と布地とを挟持しているベルトに与える影響が極めて小さくなり、従来のように入口側での衣料用芯地と布の供給が乱れることがなく、生地を接着した際の歪みの発生を防止することができる。
【0008】
前記プレス機において、前記ローラ角度変更手段を、前記一方のベルトコンベアのテンションローラの両端部の一方を該ベルトコンベアの進行方向に対して固定し、他方を該ベルトコンベアの進行方向及び進行方向に対して逆の方向に移動させるように構成することができる。これによって、簡易な構成により、ローラ角度変更手段を実現することができる。
【0009】
また、前記プレス機において、前記検知手段を、前記テンションローラの近傍のベルトの幅方向の両端部に近接した位置に各々配置した2つのリミットスイッチとすることができる。一方のリミットスイッチが作動した場合に、該リミットスイッチから離れる方向にベルトを移動させることにより、ベルトの蛇行を修正することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ベルトコンベアのベルトの蛇行調整の際に、入口側で衣料用芯地と布の供給が乱れず、接着された生地に歪み等が発生することのないプレス機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明にかかるプレス機の一実施の形態を示し、このプレス機1は、大別して、上部2及び下部3に各々に配置されたベルトコンベア4、5と、これらのベルトコンベア4、5のベルトの間に挟持された衣料用芯地と布地とを加熱するための複数のヒータ20とで構成される。
【0012】
上部2に配置されたベルトコンベア4は、入口側にキャリアローラ7及びテンションローラ8を備え、出口側にキャリアローラ9と、駆動ローラを兼た加圧ローラ(以下、単に「加圧ローラ」という)10を備え、矢印で示す方向に回転する。
【0013】
下部3に配置されたベルトコンベア5は、入口側にキャリアローラ11及びテンションローラ12を備え、出口側に駆動ローラ13及び加圧ローラ14を備え、矢印で示す方向に回転する。
【0014】
ヒータ20は、衣料用芯地と布地とを加熱するため、上部2及び下部3の各々のベルトの内側にベルトの進行方向に複数配置される。
【0015】
さらに、本発明の特徴部分として、上部2のベルトコンベア4の蛇行を防止するため、テンションローラ8の一方の端部8aをベルトコンベア4の進行方向に対して固定するとともに、他方の端部8bをベルトコンベア4の進行方向及び進行方向に対して逆の方向に移動させるためのエアシリンダ19と、ベルトコンベア4のベルトの両側に設けられた2つのリミットスイッチ15、16と、エアシリンダ19及びリミットスイッチ15、16を制御する制御部17で構成される蛇行防止機構が設けられる。尚、図示及び説明を省略するが、下部3に配置されたベルトコンベア5についても、上記と同様の構成を有する蛇行防止機構が設けられる。
【0016】
次に、上記構成を有するプレス機1の動作について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1において、プレス機1の入口側から衣料用芯地と布地とを供給すると、衣料用芯地と布地は、ベルトコンベア4、5のベルトに挟持された状態でプレス機1の出口側に向かって移動する。衣料用芯地と布地は、移動しながらヒータ20によって加熱され、衣料用芯地と布地との間に塗布された接着剤によって互いに接着される。衣料用芯地と布地とは、出口側の加圧ローラ10、14によって加圧されて完全に接着され、ベルトコンベア18によって次工程に搬送される。
【0018】
ここで、ベルトコンベア4は、ベルトの移動速度が比較的遅いことから蛇行しやすい。そこで、上記蛇行防止機構によってベルトの蛇行を防止する。具体的には、図2及び図3に示すように、矢印Y方向を進行方向とするベルトコンベア4のベルト4aが右側に偏り、リミットスイッチ16がこの偏りを検知すると、ベルト4aを左方向に移動させる必要があるため、制御部17は、図1に示したエアシリンダ19を用い、図2に示すように、矢印X方向に回転するテンションローラ8の移動側端部8bを矢印M方向に移動させる。
【0019】
すると、これまでベルト4aとテンションローラ8の表面とがC点で接触していたのが、B点(線ABは、テンションローラ8の軸線に対して直角)で接触するようになるため、ベルト4aが左方向に移動し、蛇行が修正され、リミットスイッチ16とベルト4aとの接触状態が解除される。
【0020】
一方、左側のリミットスイッチ15がベルト4aの偏りを検知した場合には、ベルト4aを右方向に移動させる必要があるため、図1に示したエアシリンダ19を用い、テンションローラ8の移動側端部8bを矢印M方向とは反対方向に移動させることにより、蛇行を修正し、リミットスイッチ15とベルト4aとの接触状態が解除される。
【0021】
そして、上記動作を繰り返すことにより、ベルトコンベア4のベルト4aが左右に蛇行しても、その都度エアシリンダ19、リミットスイッチ15、16及び制御部17で修正することができる。また、下部3のベルトコンベア5についても同様に蛇行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるプレス機の一実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】本発明にかかるプレス機の蛇行防止機構による蛇行防止の原理を説明するための図である。
【図3】本発明にかかるプレス機の蛇行防止機構による蛇行防止の原理を説明するための図である。
【図4】従来のプレス機の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 プレス機
2 上部
3 下部
4 ベルトコンベア
4a ベルト
5 ベルトコンベア
7 キャリアローラ
8 テンションローラ
8a 端部(固定側)
8b 端部(可動側)
9 キャリアローラ
10 加圧ローラ
11 キャリアローラ
12 テンションローラ
13 駆動ローラ
14 加圧ローラ
15 リミットスイッチ
16 リミットスイッチ
17 制御部
18 ベルトコンベア
19 エアシリンダ
20 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下部各々に配置され、衣料用芯地と布地とを挟持して搬送する無端状ベルトを有する2つのベルトコンベアと、該2つのベルトコンベアの前記無端状ベルトの間に挟持された前記衣料用芯地と布地とを加熱する加熱手段とを備えた芯地接着用ローラープレス機であって、
前記上下部各々に配置された2つのベルトコンベアの少なくともいずれか一方のベルトコンベアのテンションローラであって、前記衣料用芯地と布地とを挟持している無端状ベルトとは離間した位置に配置されたテンションローラの軸線と、該いずれか一方のベルトコンベアの進行方向とのなす角度を変化させるローラ角度変更手段と、
該いずれか一方のベルトコンベアの無端状ベルトの、該いずれか一方のベルトコンベアの進行方向に対して直角かつ水平方向の移動を検知する検知手段と、
該検知手段により検知した前記いずれか一方のベルトコンベアの無端状ベルトの移動を修正するように前記ローラ角度変更手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする芯地接着用ローラープレス機。
【請求項2】
前記ローラ角度変更手段は、前記一方のベルトコンベアのテンションローラの両端部の一方を、該ベルトコンベアの進行方向に対して固定し、他方を該ベルトコンベアの進行方向及び進行方向に対して逆の方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の芯地接着用ローラープレス機。
【請求項3】
前記検知手段は、前記テンションローラの近傍の無端状ベルトの幅方向の両端部に近接した位置に各々配置された2つのリミットスイッチであることを特徴とする請求項1又は2に記載の芯地接着用ローラープレス機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−197844(P2007−197844A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14530(P2006−14530)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(592244723)アサヒ繊維機械株式会社 (5)