説明

芯無しティッシュロール及びその製造方法

【課題】改良された芯無しティッシュ製品及び該製品の製造方法を提供する。
【解決手段】中空中心部を形成するために接着剤を使用せずに芯無しティッシュロールを製造することができる。代わりに、水分を用いて、中空中心部を裏打ちするティッシュウェブの層間における軽い水素結合を促進することができる。水素結合は、通路を取り巻くティッシュウェブを使えない状態にすることなく、中空中心部の形状を維持するのに十分な特殊な構造を形成する。本発明に従って、ロールが芯棒を中心に回転しやすいように実質的に円形をなす通路を形成することもできる。代替実施形態においては、巻取ティッシュロールを製作する際に水分を用いない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯無しティッシュロール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バスティッシュ(トイレットペーパー)やペーパータオルなど多くのティッシュ製品が、渦巻状に巻かれたロールとして製造・販売されている。通常、このようなティッシュ製品は、堅い厚紙材料でできている筒形の芯に巻きつけられている。筒形芯が便利なのは、筒形芯を介してティッシュホルダにティッシュ製品をセットし、ホルダから製品を引き出して使うことができる点である。例えば、バスティッシュホルダは通常芯棒を含み、芯棒は中空芯を貫通して延在する。バスティッシュロールを芯棒にセットすれば、消費者は簡単にロールを巻き解いて使うことができる。
【0003】
しかし、渦巻状に巻かれたティッシュ製品を使い果たすなり使い切るなりした時点で、消費者には筒形芯が残され、筒形芯は通常廃棄される。よって、筒形芯はティッシュ製品のコストを増大させるのみならず、リサイクルされなければ環境に悪影響を及ぼす廃棄物となる。
【0004】
過去には、当業者が「芯無し」ティッシュ製品の製造を提案したことがあった。例えば、米国特許第4,487,378号明細書(特許文献1)及び米国特許第5,722,608号明細書(特許文献2)に芯無しティッシュペーパーロールが記載されており、両文献は引用を以て本明細書の一部となす。しかし、過去に提案された芯無し製品には、様々な欠点及び難点があった。
【0005】
例えば、過去に提案された多くの芯無し製品は、ロールの開口部の周りにおいて複数のティッシュシートに接着剤を塗布する必要がある。接着剤は、ロールの中心部のすぐ近くのティッシュシートを固くし、使用中に製品の変形を防止するために使われる。しかし、ティッシュシートに接着剤を塗布すると、製品に悪影響を及ぼし、ティッシュロールの終端が使用できなくなる。それゆえ、製品の一部は通常捨てられて廃棄物となる。
【0006】
過去の芯無し製品の別の難点は、製品に形成される開口部が非常に小さいか、存在しないか、または円形でないかのいずれかであることである。例えば、開口部が円形でないと、芯棒にセットしたときにスムーズに回転しにくい。その一方で、開口部が非常に小さいかまたは全くない製品には、製品を引き出すために特別なアダプタが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,487,378号明細書
【特許文献2】米国特許第5,722,608号明細書
【特許文献3】米国特許公開US2003−0160127号公報
【特許文献4】米国特許公開US2008−0061182号公報
【特許文献5】米国特許公開US2008−0105776号公報
【特許文献6】米国特許第6,056,229号明細書
【特許文献7】米国特許第6,077,590号明細書
【特許文献8】米国特許第6,896,767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、改良された芯無しティッシュ製品及び該製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、本発明は、芯無しティッシュ製品及び該製品の製造方法に関する。一実施形態においては、本発明の芯無しロールは、ロールの中心部を通る中空通路を画定する渦巻状に巻かれたティッシュシートから製造される。この通路は、ティッシュシートそのものによってのみ裏打ちされる。通路は、実質的に円形に形成することができる。本明細書において、「実質的に円形」なる表現は、通路の外周に、角または丸みのあるくびれ部分がなく、内向きに突出する部分がないことを意味する。一実施形態においては、例えば、通路の外周は、半径の変化が約25%以下、例えば約20%以下、例えば約15%以下、例えば約10%以下であるような半径を有することができる。
【0010】
特に有利であることに、渦巻状に巻かれたロールにおいて、芯を使わずに、かつ内層同士を接着する接着剤を使わずに、通路を形成することができる。例えば、過去には、芯を使わずに中空通路を形成するために、澱粉糊など様々な種類の接着剤が用いられた。しかし、残念なことに、接着剤は、ロールの端部を使えない状態にしてしまっていた。それゆえ、たとえ芯を使わずに製品を形成したとしても、やはり廃棄物が生じていた。本願出願人は、上記の問題を解決する方法を発見した。
【0011】
例えば、一実施形態において、本発明は、渦巻状に巻かれてロール形状をなすティッシュシートを含むティッシュ製品に関する。ロールは、ティッシュシートの長さに対して直交する方向に、ロールの第1端からその反対端である第2端まで延在する軸線方向通路を画定する。通路は、ティッシュシートによってのみ裏打ちされ、実質的に円形断面形状を有するものであってよい。通路は、例えば、少なくとも約0.5インチ(1.27cm)の直径、例えば一実施形態においては約0.5インチないし約3インチ(7.62cm)の直径を有することができる。本発明によれば、ティッシュシートの層同士を接着剤によって接着することなく、通路が形成される。本明細書において、「接着剤」なる語は、粘着性があるかまたはネバネバしておりかつ2つの表面同士を貼着させる物質、例えば、ペースト、ホットメルトポリマーなどを指す。
【0012】
例えば、一実施形態において、通路を裏打ちするロール内層同士を、水素結合のみを用いて軽く結合することができる。内層間に水素結合を形成するために、任意の適切な方法または技術を用いることができる。例えば、一実施形態において、水素結合を促進するような方法で内層間に水分を導入することができる。本明細書においては、水分を接着剤とは考えていない。
【0013】
特に有利であることに、本発明に従って製造され、通路を裏打ちするティッシュロールの最後のシートすなわちパネルは、消費者によって使用されることができる。具体的には、最後のシートの物性がロールの残りのティッシュシートと実質的に同じであるようにロールが製作される。例えば、ティッシュロールの最後の5枚のシート、最後の2枚のシート、さらには最後のシートでさえも、ロールの残りのシートと比較して、50%未満、例えば30%未満、例えば約20%未満、例えば約10%未満異なる物性を有することができる。実質的に不変の物性には、剛性、引張強度(引張強度の幾何平均値)、吸収性、またはそれらの組合せが含まれ得る。
【0014】
以下の手順に従って、ティッシュ製品の吸収能力を決定することができる。少なくとも2インチ(5.08cm)の深さまで水を保持するのに十分な大きさの受皿を蒸留水で満たす。ストップウォッチに加えて、OHAUS GT480秤量機などの秤量機を使用する。さらに、断裁装置(例えばテスティング・マシーン社(Testing Machines, Inc., Amityville, N.Y.)製TMI DGDなど)及び寸法4インチ×4インチ(±0.01インチ)(10.16cm×10.16cm±.0.25cm)のダイも使用する。ダイサイズの試料を切断し、乾燥重量を量って0.01gの位に四捨五入する。試料を水(またはオイル)の受皿に入れたときにストップウォッチを始動させ、3分間±5秒間浸す。規定時間後に試料をピンセットで取り除き、試料からの流体の適切な流れを確保するために吊りクランプに取り付けて「ダイアモンド」形の姿勢で吊す。さらに、試料を相対湿度100%のチャンバ内で3分間±5秒間吊す。その後、クランプを解放して試料を秤量皿に落とす。次に、重量を0.01gの位に四捨五入して記録する。次に、各試料の吸収能力を次のように計算する。
吸収能力(g)=湿重量(g)−乾燥重量(g)
【0015】
これは、試料に対してグラム単位で吸収能力を与え(多くの場合に試料の重量当たりで報告される)、試料1グラム当たりの吸収されたグラム単位で比吸収能力を与える。
【0016】
ティッシュ製品の剛性は、「カップクラッシュ(cup crush)」試験に従って測定することができる。カップクラッシュ試験は、23cm×23cmの繊維片を直径約6.5cm×高さ6.5cmの逆カップ形状にしたものを、直径4.5cmの半球形状のフット部により破砕(クラッシュ)するために必要な最大負荷(「カップクラッシュ負荷」または単に「カップクラッシュ」とも呼ばれる)を測定することによって、繊維の剛性を評価する。その間、カップ形状の繊維の均一な変形を保つために、カップ形状の繊維を直径約6.5cmの円筒体で取り囲む。10個の測定値の平均を用いる。カップ壁とフット部とが接触すると測定値に影響を及ぼすこともあり得るので、それを避けるようにフット部及びカップを整合させる。フット部を毎秒約0.25インチ(毎分380mm)の速さで降下させている間に、最大負荷をグラム(g)単位で測定する。カップクラッシュ試験からは、試料を破砕するために必要な全エネルギー(カップクラッシュエネルギー)の値も得られる。これは、試験開始から最大負荷点までのエネルギー、すなわち、一方の軸においてグラム(g)で表される負荷及び他方の軸においてミリメートル(mm)で表されるフット部の移動距離によって形成される曲線下の面積である。カップクラッシュエネルギーは、従って、g*mmで記録される。カップクラッシュ値が低いほど、柔軟な積層物を示す。カップクラッシュの測定に適した装置は、シェービッツ社(Schaevitz Company,Pennsauken, N.J.)から入手可能なモデルFTD−G−500ロードセル(500グラム範囲)である。
【0017】
通常は、本発明に従って任意の適切なティッシュシートを製品にすることができる。ティッシュシートは、例えば、バスティッシュ、ペーパータオル、ナプキン、ティッシュペーパー(化粧紙)などを含み得る。一実施形態においては、ティッシュシートは、約3cc/gより大きい例えば約3cc/gないし約15cc/gの嵩を有し、パルプ繊維を少なくとも約50重量%、例えば少なくとも約80重量%の量含み、一実施形態においては、例えば、ティッシュシートを完全にパルプ繊維から作ることができる。
【0018】
ティッシュシートの坪量は、特定の製品に応じて変えることができる。ティッシュシートの坪量は、例えば約8gsmないし約120gsmであってよく、例えば、一実施形態において、ティッシュシートは約8gsmないし約30gsmの坪量を有することができる。代替実施形態では、ティッシュシートの坪量は約25gsmないし約80gsmであり得る。
【0019】
ティッシュシートは、ミシン目線を含むこともでき、ミシン目線によって使用者はティッシュシートの一部分をロールの残りから切り離すことができる。例えば、一実施形態においては、ティッシュシートにおいて、ティッシュシートの長さに対して直交する方向に延在しかつ一定の間隔で互いから離間している複数のミシン目線を画定することができる。
【0020】
ティッシュシートは、1プライであっても複数プライであってもよく、同じシートまたは異なるシートから複数プライのシートを形成することができる。シートは2つの表面を有し、両者は互いに異なっていてよいので、1若しくは複数の同じような表面がロール上で互いに接触するように複数プライのシートを配向させることができる。プライ同士は、実質的に離れていてもよいし、互いに機械的または化学的に接着していてもよい。
【0021】
ロールの外側からティッシュシートを巻き解くか、またはロールの内側から通路を通ってティッシュシートを巻き解くことによって、渦巻状に巻かれたロールからティッシュシートを引き出すことができる。例えば、ティッシュシートを通路から引き出す場合、ティッシュシートの後縁部(トレーリングエッジ)を外周面に接着固定することができる。また一方、ティッシュシートの前縁部(リーディングエッジ)によって、通路内に位置するタブを画定することができる。使用者は、タブを引っ張って通路から製品を引き出すことができる。通路から引き出される場合、製品は「センタープル(center pull)」製品と呼ばれる。
【0022】
本発明に従って製造されるティッシュ製品は、様々な方法及び技術を用いて製造可能である。一実施形態においては、例えば、製品は、ティッシュシートの前縁部または前縁部付近を水溶液で湿らせることによって製造される。本発明によれば、水溶液は、接着剤を含まないものでもよいし、非常に少量の接着剤を含んでいてもよい。
【0023】
ティッシュシートを巻き取ってロール形状にするために、回転させているマンドレルにティッシュシートの前縁部を接触させる。一実施形態においては、マンドレルの速度を落としたり、マンドレルに向けて搬送されているティッシュシートの速度を落としたりすることなく、マンドレルへのティッシュシートの巻取りを行うことができる。さらに、マンドレルに最初にシートを巻き付けなくても、マンドレルへの巻取りを行うことができる。ロールが形成されたら、ティッシュシートを断裁してロールを完成させ、ロールをマンドレルから取り外す。完成したロールは、ロールの第1端からその反対端である第2端まで延在する軸線方向通路を画定する。この通路は、ティッシュシートによってのみ裏打ちされている。水溶液のおかげで、ティッシュシートの内層同士が水素結合によって互いに軽く接着されている。水素結合は、マンドレルから取り外された時点でティッシュシートが離解しないように、通路に特殊な構造を形成する。
【0024】
一実施形態においては、マンドレルとの最初の接触に向けてティッシュシートがベルト上で搬送される。マンドレルは、ベルトによるティッシュシートの搬送速度に等しいかまたはそれより大きな回転速度まで加速される。回転マンドレルと接触する前に、ティッシュシートを水溶液と接触させることができる。例えば、一実施形態においては、水溶液をティッシュシートに噴霧することができる。
【0025】
巻取り中にティッシュシートが破れることを防止するために、巻取り工程中にティッシュシートに非常に低い張力をかけることができる。例えば、一実施形態においては、マンドレルを回転させるだけでなく、巻取り中にロールの外周面を移動ベルトに係合させることによって、ロールを巻き取ることができる。このようにして、中心巻取り及び表面巻取りの組合せを用いてロールが巻き取られる。中心巻取り及び表面巻取りを用いることによって、実質的に無張力下でティッシュシートを巻き取ってロールを形成することができる。例えば、ロールの形成中にティッシュシートにかかる張力を約0.2PLI(pounds per linear inch)(約35.0N/m)未満、例えば約0.1PLI(約17.5N/m)未満に維持することができる。実際に、一実施形態では、実質的に無張力でロールを巻き取ることができる。
【0026】
実質的に無張力でティッシュシートを巻き取ることができるので、比較的弱いシートを用いて本発明に従ってロールを製造することができる。本発明に従って比較的弱いシートを巻き取る能力を有することにより、非常に柔らかい質感及び特性を有するティッシュ製品の製造が可能になる。一般的に言えば、ティッシュシートの強度が下がると柔らかさが増す。例えば、一実施形態において、巻取製品は1プライまたは複数プライのティッシュ(例えばバスティッシュなど)を含むことができる。ティッシュは、例えば、約1200g/3インチ(157.5g/cm)未満の引張強度の幾何平均値(geometric mean tensile strength:GMT)を有することができる。例えば、一実施形態においては、ティッシュシートは、約10gsmないし約45gsmの坪量を有することができ、約500g/3インチ(65.6g/cm)ないし約1000g/3インチ(131.2g/cm)、例えば約500g/3インチないし約900g/3インチ(118.1g/cm)、例えば約550g/3インチ(72.2g/cm)ないし約850g/3インチ(111.5g/cm)のGMTを有することができる。
【0027】
本明細書において、以下の手順を用いてGMTを測定する。
【0028】
23℃±1℃及び50%±2%の相対湿度で最低でも4時間調整したティッシュ試料を用いて引張試験を行う。トゥイング・アルバート・インスツルメンツ社(Thwing-Albert Instruments,Philadelphia, Pennsylvania, U.S.A.)から入手可能なモデルJDC 15M−10などの精密試料打抜機を用いて、試料をマシン方向(MD)及びクロスマシン方向(CD)に3インチ(7.62cm)幅の細長片になるように切断する。
【0029】
引張試験装置(tensile frame)のゲージ長を4インチ(10.16cm)に設定する。引張試験装置は、TestWorks 4ソフトウェアまたは同等の物を使って作動するAlliance RT/1材料試験システムである。引張試験装置及びソフトウェアは、エムティエス社(MTS Systems Corporation, Minneapolis, Minnesota, U.S.A.)から入手可能である。
【0030】
次に、引張試験装置の顎部(ジョー)に3インチ(7.62cm)の細長片をセットし、試料破壊点まで毎分25.4cmの速さでひずみを加える。ティッシュ細長片への応力をひずみの関数として観測する。計算される出力には、最大負荷(gf/3インチ,重量グラム(gf)で測定される)、ピーク伸長(%,試料の伸びを試料の元の長さで割り、100%を掛けることによって計算される)、500gfでの伸長%、破断時の引張エネルギー吸収量(TEA)(gf*cm/cm,負荷がピーク値の30%まで下がる破壊点まで応力歪み曲線下面積を積分するかまたは取ることによって計算される)、傾きA(kgf,57〜150gfまで応力歪み曲線の傾きとして測定される)が含まれていた。
【0031】
各ティッシュ基準(最低でも5回反復する)の試験をマシン方向(MD)及びクロスマシン方向(CD)においてそれぞれ行う。引張強度及び引張エネルギー吸収量(TEA)の幾何平均をマシン方向(MD)とクロスマシン方向(CD)の積の平方根として計算し、g/3インチの単位で報告する。これにより、試験方向と無関係な平均値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従って製造されるティッシュ製品の一実施形態の斜視図。
【図2】本発明に従って製造されるティッシュ製品の別の実施形態の斜視図。
【図3】本発明に従ってティッシュ製品を製造するために用いることができる巻取りシステムの一実施形態の斜視図。
【図4】図3に示した巻取りシステムから種々のフレーム部材を除いて示した斜視図。
【図5】図3に示した巻取りシステムの平面図。
【図6】図3に示した巻取りシステムの側面図。
【図7】ウェブ搬送装置によってマンドレルに近付く方向に搬送されているティッシュシートの斜視図。
【図8】本発明に従ってティッシュウェブをロールに巻き取る回転マンドレルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書の説明が例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明のより広範な態様を限定することを意図するものではないことは、当業者に理解されるであろう。
【0034】
全体として、本発明は「芯無し(コアレス)」ティッシュロールの製造に関する。「芯無し」ティッシュロールとは、厚紙などの異なる材料でできた別体をなす芯(コア)を含まないティッシュロールを意味する。芯をなくすことにより、様々な利点及び利益が提供される。例えば、芯及び芯と併用される接着剤は、ティッシュ製品を使い尽くしたときに通常は捨てられる製品のコストのかなりの部分に相当しかねない。従って、芯無しティッシュ製品を形成することができれば、製造のコストを低下させるばかりか、より環境に優しい製品になる。
【0035】
特に有利であることに、本発明に従って、ティッシュシートそのものから擬似芯を形成するのに接着剤を使わずに、芯無しティッシュ製品を製造することができる。詳細は後述するが、ティッシュロールは、擬似芯を形成しかつ製品の使用中に芯棒を受容するための通路を維持するために、細かい噴霧状の水などの水分を用いて、低張力または無張力下で製造される。接着剤の代わりに水を用いて擬似芯を形成しても、ティッシュシートの手触りを著しく低下させることなく、ロールの最後のシートは使用できる状態に保持される。水はティッシュシートの強度に影響を与える場合があるが、ティッシュシートに付与される細かい噴霧状の水によってシートが破れるかまたは別な形でだめになることのないように、シートは非常に低い張力下で巻き取られる。一方、水は、ロールの中に形成される通路を裏打ちするために用いられるティッシュシートの隣接層同士を軽く結合する。
【0036】
本発明に従って製造されるティッシュ製品の一実施形態を図1に示す。具体的には、図1では、バスティッシュロール11は、渦巻状に巻かれてロール形状をなすティッシュシート13で構成されている。図のように、ロールには、ロールの環状中心部を画定する通路15が画定されている。通路15は、ロールの軸線に対して対称であってよい。
【0037】
本発明によれば、図1に示されているように、ティッシュロール11は、通路がティッシュシートそのものによってしか裏打ちされていないので、芯無しである。通路15を形成するために、通路を裏打ちする複数のティッシュシート層が互いに水素結合により軽く結合されている。水素結合は、ティッシュシートの特徴を損なうことなく、通路15の特殊な構造を維持することができる。それゆえ、本発明に従って製造されるティッシュロールは、廃棄物を全く生み出すことなく、使用者によって完全に消費されることができる。
【0038】
特に有利であることに、水分のみを用いて、ロール巻取時にロールにかなりの量の圧力を加えることなく、十分な水素結合を生じさせることができることを、発明者は期せずして発見した。これに関して、比較的低い硬さを有するロールを製造するときでさえ、水素結合を用いてロールの完全性を維持することができる。
【0039】
必要に応じて、バスティッシュロール11のティッシュシート13にミシン目線を施すことができる。例えば、ティッシュシートの長さに対して直交する方向にミシン目線を入れることができる。ミシン目線は、一定の間隔で施すことができる。ミシン目線を施すことにより、ティッシュシートをロールから引き出すときに、使用者が所望のティッシュシート片すなわちパネルを切り離しやすくなる。
【0040】
バスティッシュロールに加えて、様々な他のティッシュ製品を製作するために本発明を用いることもできる。例えば、図2を参照すると、ロール状のペーパータオルまたはナプキン111が示されている。ロール111は、渦巻状に巻かれたティッシュシート113で構成されている。ロールには、ティッシュシートそのものによってのみ裏打ちされた軸線方向通路115が画定されている。上記したように、ティッシュシートの特性に悪影響を及ぼすことなく製品に通路を形成するために、水素結合が用いられている。
【0041】
通路を含むとき、本発明に従って製造されるティッシュロールの中に形成される通路の直径を、特定の用途及び所望の結果に応じて変えることができる。一般的に、通路は、少なくとも約0.5インチ(1.27cm)、例えば約0.5インチないし約3インチ(7.62cm)、例えば約1インチ(2.54cm)ないし約3インチの直径を有する。通路は、実質的に円形形状を有するように形成することができ、芯棒を収容するのに適したサイズを有することができる。
【0042】
また一方で、代替実施形態においては、実質的に通路を有しないようにティッシュロールを形成することができる。例えば、ティッシュシートがロールの中心部から引き出される場合や、ロールが別な方法で芯棒を使わずに引き出される場合には、通路は必要ないであろう。
【0043】
本発明に従って製造されるティッシュシートは、通常、かなりの量のパルプ繊維を含む。例えば、ティッシュシートは、パルプ繊維を少なくとも約50重量%、例えば少なくとも約80重量%の量含む。一実施形態においては、例えば、ティッシュシートは、実質的にパルプ繊維から構成されることができる。
【0044】
本発明に従って製造されるティッシュロールは、通常、大気中の水分量程度の水分しか含まない乾燥した製品を供給する。ティッシュシートは、一般的に、少なくとも3cc/g、例えば約5cc/gないし約15cc/gの嵩を有する。ティッシュシートは、特定の用途に応じて、約8gsmないし約80gsmの坪量を有することができる。例えば、バスティッシュは通常約8gsmないし約45gsmの坪量を有する。その一方で、ペーパータオル、ナプキン、産業ワイパなどは、約25gsmないし約80gsmの坪量を有し得る。
【0045】
本発明のティッシュ製品は、通常、当分野で既知の様々なティッシュ製造工程のうちの任意の工程において形成することができる。例えば、通気乾燥、接着剤クレーピング、ウェットクレーピング、ダブルクレーピング、エンボス加工、ウェットプレス、エアプレスなどの工程を用いて、ティッシュシートを形成することができる。
【0046】
一般的に、任意の適切な巻取りシステム及び工程を用いて、本発明に従って比較的無張力でシートを巻取り可能なティッシュロールを形成することができる。一実施形態においては、例えば、図3ないし図8に示されている巻取りシステムが用いられる。
【0047】
巻取りシステムは、例えば、搬送されているウェブの前縁部に係合する回転マンドレルを有する複数の巻取りモジュールを含むことができる。図に示されている巻取りシステムは、材料の原反ロール(親巻取り)を巻き解き、原反ロールを複数の中間ロールすなわちログロールに変え、それを後で直交方向に断裁して複数個の完成したロールを形成する(完成したロールはその後、包装されて消費者に販売されるかまたは別な方法で流通させられる)ように構成されることができる。原反ロールは、例えば、ティッシュ製造工程から直接製造することができる。中間ロールすなわちログロールは、任意の適切な断裁装置を用いて複数の個別のロールに切り分けることができる。
【0048】
図3〜図8に示されているように、巻取りシステムは、巻き解かれている原反ロールの前縁部を受容するように配置された複数のマンドレルを含む。ウェブの前縁部がマンドレルに移動した時点で、マンドレルを中心で駆動することによってウェブを巻き取ることができる。さらに、ウェブを搬送する移動コンベヤまたはベルトによって、ロールが形成されているときにロールの外周面に回転速度を加えることができる。このようにして、中心巻取りと表面巻取りの組合せにより、ロールすなわちログが形成される。中心巻取り及び表面巻取りの両者の組合せを用いると、実質的に無張力下でティッシュシートを巻き取ってロール形状にすることができる。さらに、ロール全体にわたって種々の程度の柔らかさまたは硬さを有するロールを形成することができる。例えば、一実施形態においては、通路を支持するためにロールの外側よりも通路側の方が密に巻き取られたログまたはロールを形成することができる。
【0049】
比較的低張力下でティッシュシートを巻き取ることができるので、比較的弱い材料から本発明に従ってロールを製造することができる。例えば、ティッシュは、約1200g/3インチ(157.5g/cm)未満、例えば約1000g/3インチ(131.2g/cm)未満、例えば約900g/3インチ(118.1g/cm)未満、例えば850g/3インチ(111.5g/cm)未満の引張強度の幾何平均値を有することができる。例えば、一実施形態においては、ティッシュシートは、約500g/3インチ(65.6g/cm)ないし約1000g/3インチの引張強度の幾何平均値を有することができる。そのようなシートは、手触りが柔らかくなるようにする特性及び特徴を有することができる。
【0050】
本発明に従って用いることができる巻取りシステムには、米国特許公開US2003−0160127号公報(特許文献3)、米国特許公開US2008−0061182号公報(特許文献4)及び米国特許公開US2008−0105776号公報(特許文献5)に開示されているようなワインダーが含まれる。特許文献3ないし5は全て、引用を以て本明細書の一部となす。
【0051】
例えば、図3及び図5を参照すると、巻取りシステム10が示されている。この巻取りシステム10は、原反ロールを巻き解き、中間ロールすなわちログの製造を経て、複数のより小さな商業用及び民生用ロールを形成するのに特によく適しているので、「リワインダー」と考えることができる。図のように、巻取りシステム10は、互いに対して線形をなして配列された複数の独立した巻取りモジュール12を含む。図の実施形態では、システムは6つの巻取りモジュール1、2、3、4、5、6を含む。しかし、当然のことながら、システムは所望に応じて6よりも多いかまたは少ない数の巻取りモジュールを含み得る。フレーム14は、複数の独立した巻取りモジュール12を支持する。
【0052】
ベルトやコンベヤなどのウェブ搬送装置34が示されており、ウェブ搬送装置34は、ティッシュシートまたはウェブ36を、最終的に複数の独立した巻取りモジュール12と接触させるように搬送する。フレーム14は複数の柱16から構成され、これらの柱16に複数の独立した巻取りモジュール12が係合されかつ支持されている。例えば、図において、複数の巻取りモジュールはフレーム14上に摺動可能に取り付けられている。フレーム14は、互いを係合して剛構造物を形成するモジュール式フレーム部分から構成してもよい。モジュール式フレーム部分の数は、使用する巻取りモジュールの数に合わせることができる。
【0053】
図4は、明確にするために図3に示した巻取りシステム10からフレーム14及び他の部品を取り除いたものを示している。6つの巻取りモジュール1〜6が示されており、各巻取りモジュールは互いに異なる機能を実行する。巻取りモジュール1は、ティッシュウェブを受容する準備が整った状態に置かれている。巻取りモジュール2では、完成したティッシュロール22すなわちログがちょうどマンドレル26から取り出されたところである。ロール製品22すなわちログが、ロール状製品搬送装置20の上に置かれている。
【0054】
巻取りモジュール3を参照すると、完成したティッシュロールすなわちログ22がマンドレル26から取り出されているすなわち取り外されている過程が示されている。形成されたロールを取り出すために、各巻取りモジュール12は、製品取外し装置28を含むことができる。製品取外し装置28は、例えばフランジを含むことができ、フランジは、マンドレル26を固定し、ロール状製品22の端部に接触し、ログ22を押してマンドレル26から取り外す。ロール状製品取外し装置28は、例えば、ロール状製品搬送装置20の方向に変位する機械的装置を含むことができる。しかし、当然のことながら、他の例示的な実施形態において、製品取外し装置28を異なる構成にすることもできる。
【0055】
図4に示されている巻取りモジュール4は、ログロール22を形成するためにウェブ36を巻き取る過程にある。上記したように、中心巻取り及び表面巻取りの組合せを用いてティッシュロールを形成することができる。具体的には、マンドレル26を駆動しながら、同時にベルト34がロールの外側を巻き取るようにすることができる。
【0056】
巻取りモジュール4がティッシュウェブ36を巻き取り終わる前に、巻取りモジュール5は、ティッシュウェブを巻き取ってロール状製品22を製造する準備が整った状態に置かれる。そして、巻取りモジュール6は、「移動コンベヤから外れた(racked out)」位置に示されている。それぞれの巻取りモジュールの点検や修理または定期検査を行うために、当該巻取りモジュールを移動コンベヤ34から上記位置までスライドさせるなどして離脱させることができる。このように、巻取りモジュール6は、ウェブ36を巻き取ってロール状製品を製造する状態にはない。しかし、巻取りモジュール6の点検や修理を行っている間でも、残りの5個の巻取りモジュールは、ロール状製品の製造を邪魔することなく機能することができる。特に有利であることに、たとえ巻取りモジュールのうちの1つが作動しなくなったり、ウェブが破れたり、別々のロールの巻取りの合間でも、図4に示した巻取りシステムを用いて、中断することなくティッシュロールすなわちログを形成することができる。
【0057】
ここで、図6ないし図8を参照して、材料のロールすなわちログの巻取りについて説明する。図6を参照すると、ウェブ搬送装置34によって搬送されているティッシュウェブ36が示されている。ティッシュロールが形成された後、ウェブは任意の適切な断裁モジュール60を用いて断裁される。例えば、一実施形態において、断裁モジュール60は、米国特許第6,056,229号明細書(特許文献6)に開示されているようなピンチバー(こじり棒)を含むことができる。しかし、ウェブ36を所望の長さに断裁する任意の他の適切な手段を用いることもできる。例えば、使用可能な断裁モジュール60の別の実施形態が特許文献4に記載されており、特許文献4は引用を以て本明細書の一部となす。
【0058】
図6に示されているように、巻取りシステム10は、搬送されているティッシュシート36にミシン目線を施すことができるミシン目モジュール64を含むこともできる。ミシン目線は、例えば、ティッシュシートの長さに対して直交する方向に形成することができ、後で消費者の好みに基づいてティッシュシートを破ることができるようにティッシュシート上で一定間隔離間させることができる。
【0059】
さらに、巻取りシステム10は、接着剤塗布モジュール62を含むことができる。接着剤塗布モジュールは、ティッシュロールを仕上げるためにティッシュシートの後縁部に比較的少量の接着剤を塗布するように構成され得る。接着剤は、ロールが後で断裁及び/または包装されるときにロールが巻き取られた状態を維持するように、例えば、ティッシュロールの後縁部に向けて従来法で塗布される。
【0060】
図7及び図8を参照すると、断裁されて前縁部19が形成された後のティッシュウェブ36が示されている。図のように、ティッシュウェブ36は、ウェブ搬送装置34上で搬送されている。
【0061】
本発明によれば、巻取りシステム10は、ティッシュウェブ36の前縁部19上に水溶液を放出する噴霧装置24をさらに含む。水溶液は、例えば、水を単独で含むこともできるし、水を他の少量の成分とともに含むこともできる。一実施形態においては、水溶液は接着剤を含まない。別の実施形態においては、水溶液は比較的少量の澱粉を含む場合がある。
【0062】
本発明によれば、ティッシュウェブ36の前縁部19は、マンドレル26と接触する前に軽く湿らされる。ティッシュウェブ36を軽く湿らせることにより、マンドレル26に直接隣接するティッシュウェブの層間に水素結合を形成することができる。軽い水素結合により、ティッシュウェブを傷つけることなく材料のロールすなわちログに通路を形成することができる。後で使用中に分離できるように、ティッシュウェブの層は軽く結合される。
【0063】
ティッシュウェブに付与される水分の量は、巻き取られるティッシュウェブの種類及び特定の用途によって変えることができる。一実施形態においては、例えば、シートの総繊維重量に対して少なくとも約20重量%の量の水分がティッシュウェブに付与される。例えば、繊維の約20重量%ないし約800重量%までの量、例えば約20重量%ないし約400重量%、例えば約30重量%ないし約300重量%の量の水分をティッシュに付与することができる。
【0064】
ティッシュシートの湿らせる面積またはティッシュシートの湿らせる長さを多数の因子に応じて変えることもできる。例示でしかないが、一実施形態においては、約10インチ(25.4cm)ないし約80インチ(203.2cm)、例えば約16インチ(40.64cm)ないし約50インチ(127cm)のティッシュシートの長さに沿って水分を付与することができる。シートの全幅を湿らせるように水溶液を付与することができ、あるいはシートの幅の一部分のみを湿らせるように付与することができる。例えば、シートの幅の約20%ないし約100%、例えばシートの幅の約20%ないし約80%を湿らせることができる。
【0065】
水溶液をティッシュウェブの前縁部19に直接付与してもよいし、あるいは前縁部から少し離れた所で付与してもよい。前縁部から少し(例えば約4インチ(10.16cm)ないし約20インチ(50.8cm))離れた所で付与するとき、例えば、ロールの中心からティッシュシートを引き出すことが望ましい場合に容易に掴むことができるタブをロールの通路内に形成してもよい。一実施形態においては、タブを形成せずに、前縁部から少し離れた所で水溶液を付与することができる。
【0066】
図示した実施形態では、噴霧装置を用いて水溶液をティッシュウェブに付与している。しかし、当然のことながら、ウェブに水分を付与することができる任意の適切な装置を用いることができる。例えば、代替実施形態においては、水分を蒸気としてティッシュウェブに付与することができる。さらに別の実施形態においては、インクジェットプリンタやフレキソプリンタなどの任意の適切なプリンタを用いて水溶液をティッシュウェブに付与または滴下することができる。さらに、水分をティッシュウェブの全幅に連続的に付与することもできるし、不連続的な位置に付与することもできる。
【0067】
ティッシュウェブ36への水分の付与が終わったら、ティッシュウェブは次にマンドレル26に係合してマンドレル上で巻き取られる。一実施形態において、マンドレル26は、ティッシュウェブ36と接触する前に加速される。マンドレル26は、例えば、実質的にウェブ36の速度に匹敵する速度まで加速されることができる。例えば、マンドレルを、搬送されているウェブの速度に等しいかまたは僅かに大きいか僅かに小さい速度で回転させることができる。本明細書において、例えば、ティッシュシートの搬送速度に「実質的に」等しい回転速度までマンドレルを加速させると述べているとき、それはマンドレル速度がティッシュシートの速度の約10%以内であることを示している。しかし、別の実施形態においては、マンドレル速度は、ティッシュシートの速度の約5%以内、例えば約2%以内であってよい。さらに別の実施形態においては、ティッシュウェブの速度と同じかまたは僅かに大きい速度になるようにマンドレルを加速させることができる。
【0068】
マンドレルにティッシュウェブをセットするのに役立つように、一実施形態においては、マンドレルに複数の開口部を設けかつ真空源と連通させることができる。このようにして、マンドレルは、少なくとも巻取りを開始するために、ティッシュウェブに対する吸引力を生じさせる。
【0069】
必須ではないが、一実施形態ではその後、完成したログまたはロールをマンドレルから取り外すのに役立つように、ガス流の方向を逆にすることができる。例えば、ロールをマンドレルから容易に取り外すことができるように、マンドレルから完成したロールに対してガスを押し出すことができる。それに代えて、またはそれに加えて、マンドレル及び/またはロールに潤滑剤を塗布することもできる。
【0070】
図8を参照すると、マンドレル26上に巻き取られているティッシュウェブ36が示されている。マンドレルへのウェブ36の巻取りは、マンドレルを中心で駆動するだけでなく、ロールをウェブ搬送装置34に押し付けて接触させ、ニップを形成することによって、制御することができる。
【0071】
ウェブ搬送装置34と係合するようにロールを押す力の大きさによってニップ圧が生じ、これを用いて、ウェブを巻き取るときのウェブの張力を制御することができる。また、駆動されているマンドレル36のトルクを制御することによって、張力を制御することもできる。このように、ウェブを低張力で巻き取るために、ニップ距離及びトルク差を用いることができる。
【0072】
例えば、低張力でのウェブの巻取りは、特定の実施形態において有利である場合がある。例えば、巻き取られるティッシュウェブにもよるが、ウェブに水分を接触させると、ウェブが湿った場合にウェブを弱くすることがある。しかし、ウェブを実質的に無張力下で巻き取ることで、芯無しロール形成中のウェブの破損を防ぐ。例えば、ウェブの全張力が約0.2PLI(約35.0N/m)を超えない、例えば約0.1PLI(約17.5N/m)を超えない状態で、ティッシュウェブ36を巻き取ってロール形状にすることができる。例えば、一実施形態においては、ティッシュウェブを実質的に無張力で巻き取ることができる。
【0073】
水分を用いてティッシュシート同士を軽く結合することにより芯を形成することができるが、他の実施形態においては、水分でも接着剤でも処理していないロール状ティッシュ製品を製造することができる。本実施形態においては、例えば、外部からの物質でロールを処理することなく、ロールが製造される。それゆえ、ティッシュシートは、乾燥状態で巻き取られてロールになる。
【0074】
ティッシュシートを水分で処理せずにロールを形成する方法を用いて、例えば、明瞭に画定された中空通路を含まない中実材料ロールを製造することができる。本実施形態においては、水分が付与されないので、より高い張力でティッシュシートを巻き取ることができる。
【0075】
マンドレル上でティッシュロール22が形成されたら、任意の適切な装置を用いてウェブを断裁する。例えば、同様にウェブに張力を発生させない断裁機構を用いることができる。例えば、1約0.2PLI(約35.0N/m)未満、例えば約0.1PLI(約17.5N/m)未満の張力で、ウェブを断裁することができる。ロールを仕上げるために少量の接着剤にティッシュウェブの後縁部を接触させてもよい。その後、ロールをマンドレルから取り外し、ロールすなわちログを所望の幅に断裁する断裁工程に送った後、包装する。
【0076】
図示されている巻取りシステム10を用いることによって、種々の特徴を有する様々な異なるロール状製品を形成することができる。例えば、巻取り中にウェブの張力を変えることによって、形成されるロールの特徴を変えることができる。例えば、低密度でより柔軟なロール状製品を製造することもできるし、あるいはより高密度でより硬い巻取製品を製造することもできる。一般的に、より低密度でより柔軟なロール状製品は、より柔軟でより高品質の製品であるという印象を与える。
【0077】
柔軟な製品を形成するとき、例えば、約2より大きい、例えば約2ないし約14のカーショウロール硬さ(Kershaw roll firmness)を有するティッシュロールを製造することができる。カーショウロール硬さは当分野で既知であり、米国特許第6,077,590号明細書(特許文献7)及び米国特許第6,896,767号明細書(特許文献8)に開示されているように決定することができる。例えば、より低いロール硬さを有するロールを形成する場合、ティッシュロールは、約3より大きい例えば約3ないし約14のカーショウロール硬さを有することができる。
【0078】
さらに別の実施形態においては、半径方向の位置に応じて種々の硬さを有するティッシュロールを製造することができる。例えば、一実施形態においては、中心部に近いロールの内側部分がロールの外側部分よりもきつく巻かれている芯無し製品を製造することができる。このように、適切に画定された変形しにくい中心部を有すると同時に、外層は圧縮しやすいので、消費者に柔らかさを感じさせるようなティッシュロールを製造することができる。
【0079】
1つの特定の実施形態においては、例えば、ロールの内側部分は約1ないし約4のカーショウロール硬さを有することができるが、ロールの外側部分は約4ないし約14のカーショウロール硬さを有することができる。ロールの内側部分は、例えば、ロールの半径の約10%ないし約50%、例えば約10%ないし約30%を占めることができる。その一方で、ロールの外側部分は、ロールの残りを占めることができる。
【0080】
最後に、通路を取り巻くティッシュ層同士を、ティッシュウェブの全長を消費者が完全に使うことができるような形態で軽く結合させた芯無しティッシュ製品が製造される。
【0081】
本発明に対するこれら及び他の変更形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実行され得る。さらに、当然のことながら、様々な実施形態の態様を、全部または一部において置き換えることができる。さらに、前述の説明がほんの一例であり、本発明をそのような添付の特許請求の範囲のさらなる記載に限定する意図がないことは、当業者であれば分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティッシュ製品であって、
渦巻状に巻かれてロール形状をなすティッシュシートを含み、該ティッシュシートが或る長さ及び幅を有し、前記ロールが、前記ティッシュシートの前記長さに対して直交する方向に前記ロールの第1端からその反対端である第2端まで延在する軸線方向通路を画定し、該通路が前記ティッシュシートによってのみ裏打ちされており、前記通路が実質的に円形の断面形状及び少なくとも約0.5インチ(1.27cm)の直径を有し、前記ティッシュシートが、第1の端部、中間部及び、前記通路を裏打ちしている第2の端部を含み、前記ティッシュシートの前記第2の端部の引張強度の幾何平均値、吸収性及び剛性が、前記ティッシュシートの前記中間部の引張強度の幾何平均値、吸収性及び剛性のそれぞれ50%以内であることを特徴とするティッシュ製品。
【請求項2】
前記ティッシュシートの前記第2の端部の引張強度の幾何平均値、吸収性及び剛性が、前記ティッシュシートの前記中間部の引張強度の幾何平均値、吸収性及び剛性のそれぞれ30%以内、例えば10%以内であることを特徴とする請求項1に記載のティッシュ製品。
【請求項3】
前記ティッシュシートが約8gsmないし約45gsmの坪量を有し、前記ティッシュシートが約500g/3インチ(65.6g/cm)ないし約1000g/3インチ(131.2g/cm)の引張強度の幾何平均値を有し、前記渦巻状に巻かれたロールが約2ないし約14のカーショウロール硬さを有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項4】
前記軸線方向通路が、約0.5インチ(1.27cm)ないし約3インチ(7.62cm)の直径を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項5】
前記ティッシュシートにおいて前記通路を裏打ちしている前記部分が、隣接する前記ティッシュシートの層に水素結合のみによって結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項6】
前記ティッシュシートにおいて、前記ティッシュシートの前記長さに対して直交する方向に延在しかつ一定の間隔で互いから離間している複数のミシン目線が画定され、該ミシン目線によって、前記ティッシュシートに沿って個々のパネルが画定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項7】
前記ティッシュシートの前記第2の端部が、最後の5枚のパネル、または最後の2枚のパネル、または単に最後のパネルのみを含むことを特徴とする請求項6に記載のティッシュ製品。
【請求項8】
前記ティッシュシートのいかなる層同士も接着剤によって接着されることなく前記通路が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項9】
前記ロールが内側部分及び外側部分を含み、前記内側部分のカーショウロール硬さが、前記外側部分のカーショウロール硬さより小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のティッシュ製品。
【請求項10】
前記内側部分が約4未満のカーショウロール硬さを有し、前記外側部分が約5より大きなカーショウロール硬さを有することを特徴とする請求項9に記載のティッシュ製品。
【請求項11】
前記ロールが或る半径を有し、前記ロールの前記内側部分が前記半径の約10%ないし約30%を占めることを特徴とする請求項10に記載のティッシュ製品。
【請求項12】
芯無しティッシュロールを製造する方法であって、
ティッシュシートの前縁部または前縁部付近を、接着剤を含まない水溶液で湿らせるステップと、
前記ティッシュシートの前記前縁部をマンドレルに接触させるステップと、
巻取られているときに外周面を有するロールを形成するように前記ティッシュシートを巻き取るために、前記マンドレルを回転させるステップと、
前記ティッシュシートを断裁して前記ロールを完成させるステップと、
完成したロールを前記マンドレルから取り外すステップとを含み、
前記完成したロールが、前記ティッシュシートの前記長さに対して直交する方向に前記ロールの第1端からその反対端である第2端まで延在しかつ前記ティッシュシートによって裏打ちされている軸線方向通路を画定するものであることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ロールの形成中に、前記ティッシュシートの張力が約0.2PLI(約35.0N/m)未満、例えば約0.1PLI(約17.5N/m)未満に維持されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マンドレルを回転させるステップに加えて、移動ベルトが巻取り中に前記ロールの前記外周面に係合するようにして、中心巻取り及び表面巻取りの組合せを用いて前記ロールを巻き取り、
前記マンドレルとの最初の接触に向けて前記ティッシュシートを前記ベルト上で搬送し、前記マンドレルを、前記ティッシュシートと接触する前に、前記ベルトによる前記ティッシュシートの搬送速度に実質的に等しい回転速度まで加速させることを特徴とする請求項12または請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ティッシュシートを約0.2PLI(約35.0N/m)を超えない張力で断裁して前記ロールを完成させることを特徴とする請求項12、請求項13または請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記マンドレルが、巻取り中に前記ティッシュシートに吸引力を加えることを特徴とする請求項12、請求項13、請求項14または請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記マンドレルが、複数のガス通路を画定する溝付マンドレルを含み、前記ティッシュシートの前記前縁部との接触中、前記マンドレルに吸引力が加えられることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−506518(P2013−506518A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532684(P2012−532684)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053910
【国際公開番号】WO2011/042818
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】