説明

花卉用の供給物容器

【課題】 販売する際に花卉に添えることが容易であり、かつ花卉の見栄えを損なうことのない花卉用の薬剤容器を提供する。
【解決手段】 花卉用の薬剤容器10は、切花活性剤11が収容される中空の収容部12と、この収容部12から下方に伸びるロッド部13とを有している。この薬剤容器10を花束F1に添える際には、薬剤容器10のロッド部13を切花の茎に見立てながら薬剤容器10と切花とが共に束ねられる。このように、花束F1に薬剤容器10を容易に添えることが可能となるため、包装時の手間を省くことができ、作業効率を高めてコストを削減することができる。しかも、従来のように、包装スリーブ19に切花活性剤11のパックを貼り付ける必要が無いため、粘着テープ等によって花束F1の見栄えを損なうことがなく、販売促進に寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤などの花卉供給物を収容する花卉用の供給物容器に関する。
【背景技術】
【0002】
切花の鮮度を保持するため、茎を水中に浸した状態で切断したり、茎の切り口を焼いたりすることがある。これらの方法は切花の水揚げを良好にするものであるが、十分な効果を得ることが困難となっていた。そこで、切花を新鮮な状態に保持するため、花器内の水に溶いて使用される切花活性剤が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。この切花活性剤には、切花の栄養源となる糖類、殺菌作用を有する有機酸、切花の水揚げを促進する界面活性剤等が含まれており、水の腐敗を防止するとともに切花に十分な栄養を与えることができ、切花の鮮度を維持しながら寿命を延ばすことが可能となる。
【0003】
このような切花活性剤は、業務用として使用されるだけでなく、花束等の購入者に対するサービスとして渡されることも多い。このようにサービスされる切花活性剤は、一回の使用量毎にパッキングされるとともに、花束等を包装する包装フィルムに貼り付けて提供されることが一般的である。
【特許文献1】特開2000−169302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着テープ等を用いて切花活性剤のパックを包装フィルムに貼り付けることは、包装時の作業効率を低下させるとともに、花束等の見栄えを損なう要因となっており、これらを改善することが必要となっていた。特に、贈答用に購入されることが多い花束等にあっては、見栄えを良好に保つことが重要となっている。
【0005】
本発明の目的は、販売する際に花卉に添えることが容易であり、かつ花卉の見栄えを損なうことのない花卉用の供給物容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の花卉用の供給物容器は、花卉供給物を収容する花卉用の供給物容器であって、前記花卉供給物が収容される中空の収容部と、前記収容部から下方に伸びるロッド部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の花卉用の供給物容器は、花卉に添える際には前記ロッド部が花卉と共に束ねられることを特徴とする。
【0008】
本発明の花卉用の供給物容器は、花卉に添える際には前記ロッド部が樹脂製発泡体に挿されることを特徴とする。
【0009】
本発明の花卉用の供給物容器は、前記収容部に対して前記ロッド部を取り外し自在に設け、前記ロッド部を取り外すことによって前記収容部内が開放されることを特徴とする。
【0010】
本発明の花卉用の供給物容器は、前記収容部内に連通する内部通路を前記ロッド部に形成し、前記ロッド部を切断することによって前記収容部内が開放されることを特徴とする。
【0011】
本発明の花卉用の供給物容器は、前記花卉供給物は、薬剤、水または肥料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収容部から下方に伸びるロッド部を設けるようにしたので、ロッド部を花卉の茎に見立てることができ、花卉に供給物容器を添えることが極めて容易となる。これにより、供給物容器を花卉に添える際に、粘着テープ等を用いて貼り付ける必要が無いため、作業者の手間を省くとともにコストを削減することができる。しかも、供給物容器を花卉に添えた場合であっても、花束やアレンジメントの見栄えを損なうことがなく、販売促進に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1(A)は本発明の一実施の形態である花卉用の供給物容器10を示す平面図であり、図1(B)は供給物容器10を示す側面図である。図2は供給物容器10の一部を示す断面図であり、図1(B)の範囲αに相当する部分を示している。図示する供給物容器10は、花卉供給物としての切花活性剤(薬剤)11を収容するために使用される容器であり、以下の説明においては供給物容器10を薬剤容器として説明する。
【0015】
図1(A)および(B)に示すように、薬剤容器10は、ほぼハート形に形成される中空の収容部12と、この収容部12の下部に取り付けられるロッド部13とを有している。貯留室14を備える収容部12はブロー成形等によって加工されており、棒状に伸びるロッド部13は射出成形等によって加工されている。これらの収容部12やロッド部13は、それぞれ樹脂材料を用いて形成されており、収容部12の表面には文字情報が印刷や刻印によって印されている。なお、加工方法としては、ブロー成形や射出成形に限られることはなく、他の方法によって薬剤容器10を加工しても良い。
【0016】
図2に示すように、収容部12の下部には吐出部15が形成されており、この吐出部15には貯留室14に連通する吐出口16が形成されている。また、吐出部15には雄ねじ17が形成される一方、これに結合されるロッド部13の上端部には雌ねじ18が形成されている。つまり、ロッド部13は収容部12に対して取り外し自在となっており、ロッド部13は吐出口16を閉塞する栓として機能するようになっている。
【0017】
このような収容部12の貯留室14には液体の切花活性剤11が注入されている。この切花活性剤11は、切花の栄養源となる糖類、殺菌作用を有する有機酸、そして水揚げを促進する界面活性剤等を含んでおり、花器内の水に溶かして使用することにより、水の腐敗を防止するとともに切花に十分な栄養を与え、切花の鮮度を維持しながら寿命を延ばすことができる。なお、切花活性剤11としては液体に限られることはなく、粉状、顆粒状、またはタブレット状の切花活性剤を貯留室14に収容しても良い。
【0018】
続いて、前述した薬剤容器10を花卉である花束F1に添える際の手順について説明する。図3(A)は花束F1の包装過程において薬剤容器10を添える手順を示す分解斜視図であり、図3(B)は薬剤容器10が添えられた花束F1を示す斜視図である。図3(A)に示すように、薬剤容器10を花束F1に添える際には、薬剤容器10のロッド部13を切花の茎に見立てて、薬剤容器10と切花とを共に束ねることにより、花束F1に薬剤容器10が添えられるようになっている。そして、薬剤容器10が添えられた花束F1を包装スリーブ19によって包装することにより、花束F1の包装作業が完了することになる。なお、切花と薬剤容器10とを共に束ねるようにしているが、切花を束ねて花束F1とした後に薬剤容器10のロッド部13を挿入しても良い。図示するようにロッド部13の先端はテーパ状に細く形成されるため、花束F1の上方より薬剤容器10を挿入する場合であっても、花束F1を傷つけることなく薬剤容器10を挿入することが可能となる。
【0019】
このように、収容部12から下方に伸びるロッド部13を設けることにより、ロッド部13を切花の茎に見立てて結束することができるため、花束F1に薬剤容器10を添えることが極めて容易となる。これにより、包装時の手間を省きながら花束F1に薬剤容器10を添えることができ、作業効率を高めてコストを削減することができる。しかも、従来のように包装スリーブ19に切花活性剤11のパックを貼り付ける必要が無いため、粘着テープ等によって花束F1の見栄えを損なうことがなく、花束F1の販売促進に寄与することが可能となる。更には、収容部12をハート形に形成したり、収容部12に文字情報を記載したりすることにより、視覚効果を高めるとともに花束F1の見栄えを向上させることも可能となる。
【0020】
なお、購入者が薬剤容器10内の切花活性剤11を使用する際には、収容部12にねじ結合されるロッド部13を取り外した後に、指で収容部12を押し潰すことによって貯留室14内の切花活性剤11を押し出すことになる。薬剤容器10の収容部12は弾性を有する樹脂材料によって形成されており、軽い力で収容部12を押し潰すことが可能となっている。
【0021】
これまで説明した薬剤容器10にあっては、収容部12とロッド部13とをねじ結合しているが、収容部12とロッド部13との連結構造としてはねじ結合に限られることはなく、他の連結構造を採用するようにしても良い。ここで、図4(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である薬剤容器20,25の一部を示す断面図である。
【0022】
図4(A)に示すように、薬剤容器20にあっては、収容部21の吐出口22にロッド部23の端部を嵌合させるようにしている。この薬剤容器20から切花活性剤11を取り出す際には、嵌合されたロッド部23を引き抜くことにより、収容部21の吐出口22が開口されることになる。また、図4(B)に示すように、薬剤容器25にあっては、収容部26とロッド部27とが一体に形成されており、収容部26とロッド部27との境界近傍には切り欠き28が形成されている。この薬剤容器25から切花活性剤11を取り出す際には、切り欠き28を支点にロッド部27を折り曲げることにより、ロッド部27が取り外され収容部26の吐出口29が開口されることになる。
【0023】
また、前述した薬剤容器10,20,25にあっては、収容部12,21,26に対してロッド部13,23,27を取り外し自在に設けているが、これに限られることはなく、収容部とロッド部とを一体に固定しても良い。ここで、図5は本発明の他の実施の形態である薬剤容器30を示す断面図である。
【0024】
図5に示すように、この薬剤容器30にあっては、収容部31とロッド部32とが一体に形成されるとともに、ロッド部32には収容部31の貯留室33に連通する内部通路34が形成されるようになっている。そして、収容部31内の切花活性剤11を取り出す際には、内部通路34が形成されるロッド部32を切断することによって、ロッド部32の先端から切花活性剤11が徐々に流出することになる。
【0025】
このような薬剤容器30が添えられる花卉としては、フラワーアレンジメントF2(以下、アレンジメントという)が望ましい。ここで、図6(A)および(B)は、アレンジメントF2に薬剤容器30を添えた状態を示す斜視図である。なお、図6(A)にあっては薬剤容器30の添え方を説明するため薬剤容器30のみを図示している。
【0026】
図6(A)に示すように、アレンジメントF2に使用される花器40には、樹脂材料を発泡させた多孔質の樹脂製発泡体41が収容されている。図6(B)に示すように、剣山の代用品として使用される樹脂製発泡体41には切花の茎が挿し込まれるようになっており、薬剤容器30にあってもロッド部32を切花の茎に見立てて樹脂製発泡体41に挿し込むことにより、アレンジメントF2に対して薬剤容器30を添えることが可能となる。
【0027】
このように、樹脂製発泡体41に薬剤容器30を立てておくことができるため、アレンジメントF2の購入者が薬剤容器30内の切花活性剤11を使用する際には、薬剤容器30のロッド部32を切断した後に、薬剤容器30を樹脂製発泡体41に挿し込むことにより、樹脂製発泡体41に対して切花活性剤11を徐々に染み出させることが可能となる。つまり、手間をかけることなく、長期に渡って切花活性剤11を供給し続けることが可能となる。
【0028】
なお、ロッド部32に内部通路34が形成された薬剤容器30を花束F1に添えるようにしても良く、前述した薬剤容器10,20,25をアレンジメントF2に添えるようにしても良いことは言うまでもない。
【0029】
これまで説明した薬剤容器10,20,25,30にあっては、ブロー成形によって樹脂材料を加工することにより収容部12,21,26,31を形成しているが、切花活性剤11を収容する収容部をポリエチレン等の樹脂フィルムを用いて形成しても良い。ここで、図7(A)は本発明の他の実施の形態である薬剤容器45を示す平面図であり、図7(B)は薬剤容器45を示す側面図である。なお、図1に示す部材と同様の部材にあっては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図7(A)および(B)に示すように、この薬剤容器45の収容部46は、ポリエチレン等の樹脂フィルムを折りたたみ、その外周部47を溶着することによって中空の袋状に形成されている。このように、樹脂フィルムを用いて収容部46を形成することにより、収容部46の表面に文字情報や模様を印刷することが容易となり、花束F1やアレンジメントF2の見栄えを向上させることができる。なお、収容部12を形成する樹脂フィルムに対してアルミニウムを付着させることにより、遮光性能を向上させて収容部46に収容される切花活性剤11の劣化を防止するようにしても良い。
【0031】
これまで説明した供給物容器10,20,25,30,45にあっては、花卉供給物として切花活性剤11を収容しているが、花卉供給物としては切花活性剤11に限られることはなく、花卉の種類等に応じて水や肥料を収容するようにしても良い。たとえば、図5に示す供給物容器30に水を収容することにより、花束F1やアレンジメントF2に水分を供給し続けることができるため、花束F1やアレンジメントF2を販売店から持ち帰る際にも新鮮な状態を維持することが可能となる。
【0032】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図1に示す供給物容器10にあっては収容部12がハート形に形成されており、図7に示す供給物容器45にあっては収容部46が長方形に形成されているが、これらの形状に限られることはなく、動植物をモチーフとした形状に形成したり、星形や丸形などの形状に形成したりすることにより、更に視覚効果を高めるようにしても良い。
【0033】
また、手作業によって花束に加工する場合だけでなく、結束機械を用いて花束を自動的に加工する場合であっても、本発明の供給物容器10,20,25,30,45はロッド部13,23,27,32を備えるため、結束機械によって供給物容器10,20,25,30,45を花束に添えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態である花卉用の供給物容器を示す平面図であり、(B)は供給物容器を示す側面図である。
【図2】供給物容器の一部を示す断面図であり、図1(B)の範囲αに相当する部分を示している。
【図3】(A)は花束の包装過程において供給物容器を添える手順を示す分解斜視図であり、(B)は供給物容器が添えられた花束を示す斜視図である。
【図4】(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である供給物容器の一部を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態である供給物容器を示す断面図である。
【図6】(A)および(B)はアレンジメントに供給物容器を添えた状態を示す斜視図である。
【図7】(A)は本発明の他の実施の形態である供給物容器を示す平面図であり、(B)は供給物容器を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 薬剤容器(供給物容器)
11 切花活性剤(花卉供給物,薬剤)
12 収容部
13 ロッド部
14 貯留室
15 吐出部
16 吐出口
17 雄ねじ
18 雌ねじ
19 包装スリーブ
20 薬剤容器(供給物容器)
21 収容部
22 吐出口
23 ロッド部
25 薬剤容器(供給物容器)
26 収容部
27 ロッド部
28 切り欠き
29 吐出口
30 薬剤容器(供給物容器)
31 収容部
32 ロッド部
33 貯留室
34 内部通路
40 花器
41 樹脂製発泡体
45 薬剤容器(供給物容器)
46 収容部
47 外周部
F1 花束(花卉)
F2 アレンジメント(花卉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花卉供給物を収容する花卉用の供給物容器であって、前記花卉供給物が収容される中空の収容部と、前記収容部から下方に伸びるロッド部とを有することを特徴とする花卉用の供給物容器。
【請求項2】
請求項1記載の花卉用の供給物容器において、花卉に添える際には前記ロッド部が花卉と共に束ねられることを特徴とする花卉用の供給物容器。
【請求項3】
請求項1記載の花卉用の供給物容器において、花卉に添える際には前記ロッド部が樹脂製発泡体に挿されることを特徴とする花卉用の供給物容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の花卉用の供給物容器において、前記収容部に対して前記ロッド部を取り外し自在に設け、前記ロッド部を取り外すことによって前記収容部内が開放されることを特徴とする花卉用の供給物容器。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の花卉用の供給物容器において、前記収容部内に連通する内部通路を前記ロッド部に形成し、前記ロッド部を切断することによって前記収容部内が開放されることを特徴とする花卉用の供給物容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の花卉用の供給物容器において、前記花卉供給物は、薬剤、水または肥料であることを特徴とする花卉用の供給物容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−103766(P2006−103766A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293859(P2004−293859)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(593038930)インパック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】