説明

花器

【課題】注排水、内部の掃除、および茎の固定が容易にでき、デザイン性に優れた花器を提供する。
【解決手段】花器10は、底部12と、側部14と、底部12の上方であって底部12に対向する頂部16と、側部14および頂部16で区画され注水および排水をする2つの注排水口18とを備え、頂部16に茎を通す茎孔20が設けられ、注排水口18の開口面積が茎孔20の開口面積よりも大きい。底部12、側部14、および頂部16は一体で構成されている。頂部16は、側部14の2個所から延伸され、これらの延伸部が重なり合っている部分を有する。そして、この重なり合っている部分にも茎孔20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切花の茎が支持できる花器に関する。
【背景技術】
【0002】
切花を飾る場合、花瓶や水盤が用いられる。一般に、花瓶の開口は切花の茎と比べてかなり大きいため、切花を花瓶に固定するのは困難である。また、水盤は浅くて広い鉢であるため、切花を水盤に固定するのも困難である。
【0003】
開口部が大きい花瓶に切花を固定する支持具が、特許文献1に開示されている。しかしながら、この支持具は花瓶の側壁の内面で保持されるため、好みの花瓶に使用する場合、その花瓶の形状に合わせた支持具を作製しなければならない。また、水盤に切花を固定する場合、剣山やスポンジを使用することが多い。剣山は取り扱いに注意を要し、スポンジは繰り返して使用する際の耐久性に劣る。
【0004】
切花の茎を支持する孔を有する花器が、特許文献2に開示されている。この花器は、茎の支持具と花器を一体化したような構造を有するため、経済性やデザイン性に優れる。しかしながら、この花器は、茎の支持孔が注排水口を兼ねているため、注排水の作業性に劣る。また、花器内部の掃除がしにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−197549号公報
【特許文献2】特開2009−247848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、注排水、内部の掃除、および茎の固定が容易にでき、デザイン性に優れた花器を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の花器は、底部と、側部と、底部の上方であって底部に対向する頂部と、側部および頂部で区画され注水および排水をする注排水口とを備え、頂部に茎を通す茎孔が設けられ、注排水口の開口面積が茎孔の開口面積よりも大きい。
【0008】
本発明の花器において、頂部が側部の複数個所と連通され、注排水口が複数設けられていることが好ましい。また、本発明の花器において、底部の内面には、茎を差し込む穴が設けられていてもよい。また、本発明の花器において、底部、側部、および頂部が一体で構成されていてもよい。
【0009】
本発明の花器において、頂部は、側部の複数個所から延伸され、これら複数の延伸部のうち少なくとも2つが重なり合っている部分を有していてもよい。また、本発明の花器において、この少なくとも重なり合っている部分に茎孔が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、注排水、内部の掃除、および茎の固定が容易にできる。また、デザイン性に優れた花器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る花器の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る花器の正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る花器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の花器について、各実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において、重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る花器10の平面図であり、図2は、花器10の正面図である。花器10は、底部12と、側部14と、頂部16と、注排水口18と、茎孔20とを備える。茎孔20の開口面積よりも大きな開口面積を有する注排水口18が花器10に設けられているので、花器10への注水および花器10からの排水や花器10の内部の掃除が容易にできる。また、花器10に茎孔20が設けられているので、切花等の茎を茎孔20に通すことによって、花器10に入れる切花等を容易に固定できる。
【0014】
花器10は、板状の陶器材料、例えば板状粘土を、切断したり折り曲げたりしながら成形した後、施釉および焼成工程を経て製造される。本実施形態の花器10は陶器であるが、本発明の花器は陶器に限定されない。本発明の花器の材質としては、陶器の他に、例えば、磁器、ガラス、セラミックス、天然石、人工石、金属、木材、炭、合成樹脂等が挙げられる。
【0015】
花器の材質を適宜選択することによって、本発明の花器は、切花を入れた場合はもちろん、単独でも美術品、工芸品として使用できる。なお、花器の製造方法は、花器の材質に応じた方法が採用できる。例えば、合成樹脂製の花器は、成型加工によって製造され、ガラス製の花器は、溶融加工によって製造される。
【0016】
また、本実施形態の花器10では、製造効率やコスト等を考慮して底部12、側部14、および頂部16が一体で構成されているが、本発明の花器はこれらが一体でなくてもよい。花器10は、図1および図2に示すような外観形状をしているが、本発明の花器はこの形状に限定されない。本発明の花器の形状としては、平面的な形状や立体的な形状が挙げられる。
【0017】
平面的な形状としては、皿形、楕円形、円形、半円形、三角形や四角形等の多角形、半月形、三日月形、星形、ハート形等が挙げられる。立体的な形状としては、直方体や立方体等の多面体形、円筒形、杯形、酒器形、土瓶形、瓦形、魚形、球形、半球形、山形、ドーム形、円錐形、角錐形等が挙げられる。花器の外観形状を適宜選択することによって、本発明の花器は、切花を入れた場合はもちろん、単独でも美術品、工芸品として使用できる。
【0018】
底部12は、その外面が机や棚等の花器10の設置場所に接する。底部12の内面は、花器10に入れられた切花等の茎の下端に接触して茎を下から支える。なお、底部12の内面に茎を差し込む穴(非貫通孔)を設けてもよい。底部12の内面に穴を設けて茎を差し込むことによって、切花等の茎をより強く固定できる。さらに、底部12の内面に穴を設ける代わりに、底部12の内面を凹凸構造にしてもよい。茎孔20と比べて茎の径が小さい場合でも、この凹凸構造で茎の下端を保持することによって、茎の茎孔20内での移動や傾倒を抑えることができる。
【0019】
側部14は、底部12を囲んでいる。注排水口18より注入された水は、側部14の内側に貯蔵される。頂部16は、底部12の上方であって底部12に対向するように設けられている。本実施形態の花器10では、図1に示すように、側部14の2個所からほぼ水平方向に延伸され、これらの延伸部の一部が底部12の上方で重なり合っている。側部14からの2個所の延伸部が重なり合っている部分を頂部16が有するため、頂部16の強度が向上している。
【0020】
また、側部14からの延伸部が重なり合っている部分にも茎孔20が設けられている。この部分に設けられた茎孔20では、孔が深いため、切花等の茎をより強く固定することができる。なお、本実施形態の花器10では、頂部16が側部14からの2個所の延伸部が重なり合っている部分を有するが、これに代えて、頂部は、側部の3個所以上から延伸され、これら3個所以上の延伸部のうち少なくとも2つが重なり合っている部分を有する構造とすることもできる。そして、この少なくとも2つが重なり合っている部分に茎孔20を設けてもよい。
【0021】
注排水口18は、側部14および頂部16で区画され、ここから注水および排水をする。すなわち、図1に示すように、注排水口18は、側部14と頂部16で囲まれた開口部である。注排水口18の開口面積は、茎孔20の開口面積より大きい。このため、花器10への注水や花器10からの排水、および花器10の内部の掃除が容易にできる。
【0022】
本実施形態の花器10では、頂部16が側部14の2個所と連通されているため、側部14および頂部16で区画される開口部、すなわち注排水口18が2つあるが、後述する第2の実施形態のように、注排水口18が1つであってよいし、3つ以上であってもよい。なお、注排水口18の開口形状は特に限定されない。
【0023】
茎孔20は、花器10に入れられる切花等の茎が通される。底部12の上方であって底部12に対向する頂部16に茎孔20が設けられているため、茎の下端を底部12の内面で、茎の上方を茎孔20の内面でそれぞれ支持することができる。本実施形態の花器10では、直径2mmから5mmの茎孔20を5個、直径5mmから10mmの茎孔20を2個設けているが、茎孔20の大きさ、個数、開口形状は特に限定されない。
【0024】
すなわち、茎孔20は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。茎孔20の開口形状としては、円形、楕円形、半円形、三角形や四角形等の多角形、半月形、三日月形、星形、ハート形等が挙げられる。また、茎孔20の形状や大きさが、孔の深さ方向の途中で変化していてもよい。さらに、茎孔20は必ずしも鉛直方向に貫通していなくてもよく、例えば、鉛直方向に対して斜めの方向に貫通していてもよい。
【0025】
茎孔20の全てに茎を通す必要はなく、一部のみを使用してもよい。また、1つの茎孔20に複数の茎を通してもよいし、茎と他の物質、例えば棒状の装飾品を一緒に1つの茎孔20に通してもよい。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る花器30の斜視図である。花器30は、下方形状が枡形であり、側部34の1つの角とその付近から、ほぼ水平方向に側部34を延伸させて頂部36を形成している。頂部36は、ほぼ三角形の形状を有している。
【符号の説明】
【0027】
10,30 花器
12 底部
14,34 側部
16,36 頂部
18 注排水口
20 茎孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、側部と、前記底部の上方であって前記底部に対向する頂部と、前記側部および前記頂部で区画され注水および排水をする注排水口とを備え、
前記頂部に茎を通す茎孔が設けられ、前記注排水口の開口面積が前記茎孔の開口面積よりも大きな花器。
【請求項2】
請求項1において、
前記頂部が前記側部の複数個所と連通され、前記注排水口が複数設けられている花器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記底部の内面には、茎を差し込む穴が設けられている花器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、
前記底部、前記側部、および前記頂部が一体で構成されている花器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、
前記頂部は、前記側部の複数個所から延伸され、これら複数の延伸部のうち少なくとも2つが重なり合っている部分を有する花器。
【請求項6】
請求項5において、
少なくとも前記重なり合っている部分に茎孔が設けられている花器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22381(P2013−22381A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162417(P2011−162417)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(309043838)ティー・エス・メリクロン株式会社 (1)