説明

芳香族スルホン酸を用いて塩を沈殿および再結晶させることによって3−ヒドロキシ−アミジノ−フェニルアラニン誘導体を精製する方法

本発明は、次の工程:(a)芳香族スルホン酸を場合によっては汚染された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の溶液に添加し、沈殿物を形成させる工程、(b)工程(a)で形成された沈殿物を分離する工程、および(c)この沈殿物から遊離3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を回収する工程を含む3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の精製法に関する。3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体は、例えばウロキナーゼ阻害剤として使用されてよい。更に、本発明は、3−アミジノフェニルアラニン誘導体を製造するための高純度の3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウロキナーゼ阻害剤として使用されることができる3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を高純度な形で製造することに関する。更に、本発明は、3−アミジノフェニルアラニン誘導体を製造するための高純度な3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の使用に関する。
【0002】
ウロキナーゼプラスミノゲン活性剤系(UPA系)は、転移の場合ならびにさらに一次腫瘍、例えば肺癌、胃癌、腸癌、膵臓癌、卵巣癌および別の充実性腫瘍が成長した場合に中心的な役を演じる。UPA系を阻害することによって、2つのレベルで医学的な作用を発揮することができる:一面で、転移の遮断ならびに他面、一次腫瘍の成長の減少。3−アミジノフェニルアラニン誘導体は、高度な作用を有するウロキナーゼ阻害剤の1つの種類である。
【0003】
3−アミジノフェニルアラニン誘導体、殊にN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−アミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジド(WX-UK1)の製造およびそのウロキナーゼ阻害剤としての使用は、例えばスイス国特許第689611号明細書、WO 00/04954およびWO 00/17158ならびに出版物Stuerzebecher et al. (Bioorg. Med. Chem. Lei 0 (1999), 3147-3152)中に記載されている。しかし、前記刊行物中で使用された合成方法は、一般に比較的僅かな生成物収量を生じる。それというのも、加水分解されたTIPPS-OHは、望ましくない副生成物を生じるからである。1つの問題は、望ましい反応生成物を費用のかかるクロマトグラフィー法によってのみ副生成物を分離することができることにある。
【0004】
PCT/EP03/08230には、3−アミジノフェニルアラニン誘導体を3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン中間化合物を経て製造するための方法が記載されている。前記のオキサミジン誘導体は、高度に特異的な選択的ウロキナーゼ阻害剤であり、その上、経口的生体使用可能性の利点を提供する。しかし、PCT/EP03/08230の記載から公知の製造法において、オキサミジン中間化合物を純粋な形で得ることができず、例えばアミド副生成物の分離のために費用のかかる精製方法が必要であるという問題が存在する。しかしながら、さらに、3−アミジノフェニルアラニン誘導体の合成ならびにオキサミジン誘導体それ自体の製薬学的使用のためには、前記オキサミジン誘導体を良好な収量および高い純度で製造することができる方法を提供することが好ましい。
【0005】
従って、本発明の課題は、オキサミジン誘導体を高純度な形で得ることができる方法を提供することであった。
【0006】
この課題は、次の工程:
(a)芳香族スルホン酸を場合によっては汚染された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の溶液に添加し、塩を形成させる工程、
(b)工程(a)で形成された沈殿物を分離する工程、および
(c)この沈殿物から3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を回収する工程を含む3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の精製法によって解決される。
【0007】
本発明の範囲内で、"芳香族スルホン酸"は、芳香族またはヘテロ芳香族のモノ環系またはオリゴ環式環系であり、これらの環系は、少なくとも1つのスルホン酸基および/またはスルホネート基で置換されている。更に、芳香族環系またはヘテロ芳香族環系は、例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンから選択されていてよい他の置換基を有することができる。適当な芳香族環系またはヘテロ芳香族環系は、例えば6〜20個の炭素原子および特にN、OおよびSから選択されていてよい0〜4個のヘテロ原子を有する単環および二環を含む。
【0008】
適当な芳香族スルホン酸の例は、トルエンモノスルホン酸およびベンゼンモノスルホン酸および/またはトルエンジスルホン酸およびベンゼンジスルホン酸ならびにナフタリンモノスルホン酸誘導体および/またはナフタリンジスルホン酸である。好ましいのは、良好な結晶化傾向を有するジスルホン酸、例えばナフタリンジスルホン酸である。最も好ましいのは、ナフタリン−1,5−ジスルホン酸(アームストロングの酸)である。芳香族ジスルホン酸は、しばしば染料工業において使用され、そこで種々の、殊にナフタリンをベースとする染料の中間体およびカップリング試薬を製出する。
【0009】
ところで、意外なことに、芳香族スルホン酸、殊にアームストロングの酸は、特に相応する塩の形で3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体(オキサミジン)の良好な沈殿に適している。即ち、形成された塩は、場合によっては汚染された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の溶液から粗製生成物を沈殿させる。この場合、溶剤としては、例えばケトン、例えばアセトンおよびペンタノン、エステル、例えばエチルアセテート、極性エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ビス−(2−メトキシエチル)−エーテル(ジグリメ)、ジオキサンおよびメチル第三ブチルエーテル、ハロゲン化溶剤、例えばジクロロメタンが適当であるが、ニトリルおよび非極性アルコールも適当である。この沈殿物は、簡単な方法で次に続く工程(b)で、例えば濾過によって溶液と分離されることができる。
【0010】
引続き、分離された塩は、公知技術水準で通常の精製方法によってさらに精製されてよく、乾燥されてよい。こうして、本発明によれば、3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の純度は、なおさらに改善されてよい。
【0011】
引続き、工程(c)で3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体は、回収される。このために、本発明によれば、相応するスルホン酸塩は、例えばヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体よりも塩基性である塩基、即ち例えば炭酸水素ナトリウムと反応されてよいが、しかし、無機塩基および有機塩基と反応されてもよい。
【0012】
従って、本発明は、簡単で洗練された方法で、汚染されたエダクト、中間化合物および望ましくない生成物、なかんずく望ましくないアミド汚染物をオキサミジンと分離することを可能にする。
【0013】
本発明の方法は、殊にラセミ化合物ならびにL配置された化合物またはD配置された化合物として存在していてよい、式(I)
【化1】

〔式中、
1は、式
【化2】

で示される基であり、
上記式中、R4は、
(i)非置換又は例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されたC1〜C6−アルキル基、例えばエトキシカルボニル基、またはアリール基、例えばフェニル、p−ハロゲンフェニル、ナフチル、
(ii)飽和または不飽和の、分枝鎖状または非分枝鎖状のC1〜C6−アルコキシ基または
(iii)非置換または例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されたフェノキシ基またはベンジルオキシカルボニル基を表わし、
2は、非置換または例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されたフェニル基、例えばフェニル、4−メチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルを表わし、
3は、Hまたは分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC1〜C4−アルキルであり、
nは、0または1を表わし、
Zは、NまたはCR9を表わし、この場合R9はH又は分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC1〜C4−アルキルである〕で示されるオキサミジン化合物の精製に適している。
【0014】
本発明の視点によれば、前記精製方法は、有利にN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジドを高純度な形で単離するために使用されてよい。
【0015】
オキサミジン誘導体を製造するためのこれまでに公知の合成方法の場合、オキサミジン化合物は、低い純度で生成され、30%までの大量分のアミド不純物ならびにエダクトによる不純物および公知でない化合物を有する。本発明の方法によれば、純粋なオキサミジンを得ることに成功する。好ましくは、オキサミジンは、90を上廻る純度、さらに有利には95%を上廻る純度、大抵の場合に有利には99%を上廻る純度で生成される。
【0016】
更に、本発明の視点によれば、本発明による精製方法の場合には、ラセミ化は行なわれず、したがってエナンチオマー純粋のオキサミジン生成物が得られる。
【0017】
本発明の実施態様によれば、本発明による精製は、3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を製造するための方法の一部分であることができる。好ましい製造方法は、次の工程:
(i)N−保護された3−シアノフェニルアラニンピペラジドの形成下でN−保護された3−シアノフェニルアラニンとピペラジン誘導体とを反応させる工程、
(ii)非置換または置換フェニルスルホニルハロゲン化物、殊にTIPPSハロゲン化物と反応させる工程;
(iii)シアノ基をヒドロキシアミジノ基に変換する工程、
(iv)上記の記載と同様に芳香族スルホン酸で精製する工程を含む。
【0018】
本発明による方法の工程(i)によれば、N−保護された3−シアノフェニルアラニンとピペラジン誘導体との反応が行なわれる。"ピペラジン誘導体"の名称は、本発明の範囲内でピペラジンおよびその誘導体を含み、この場合には、場合によっては環状化合物の4個までの炭素位置および/または環の1個以下の窒素原子は、置換されていてよい。好ましくは、環の2個の窒素原子の一方に置換基を有するピペラジン誘導体が使用される。
【0019】
適当な置換基の例は、C1〜C6アルキル基、飽和または不飽和の分枝鎖状または非分枝鎖状のC1〜C6アルコキシ基、フェノキシ基またはフェニルオキシカルボニル基、およびアリール基、例えばフェニル、p−ハロゲン化フェニルおよびナフチルを含む。前記置換基は、その側でそれぞれ無関係に場合によっては、例えばC1〜C6アルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されていてよい。
【0020】
本発明によれば、工程(i)で使用された3−シアノフェニルアラニンのアミノ窒素原子を保護するために、任意の保護基が使用されてよい。アミノ官能基に適した保護基の例は、公知技術水準で公知であり、例えばCbz(ベンジルオキシカルボニル)、Boc(T−ブチルオキシカルボニル)、DIMOZ(ジメトキシベンジルオキシカルボニル)、Tfac(トリフルオロアセチル)、CyOC(シアン−t−ブチルオキシカルボニル)、Phth(フタロイル)、Bpoc(2−ビフェニル−4−イソプロポキシカルボニル)、Ddz(3,5−ジメトキシフェニルイソプロポキシカルボニル)、Fmoc(フルオレニル−9−メチルオキシカルボニル)、PALOC(3−(3−ピリジル)−アリルオキシカルボニル)、Tos(p−トルエンスルホニル)、NPS(2−ニトロフェニルスルフェニル)、DNPS(2,4−ジニトロフェニルスルフェニル)を含む。本発明によれば、特に有利には、保護基Bocが使用される。
【0021】
本発明による方法の工程(i)での反応の場合には、N−保護された3−シアノフェニルアラニン−ピペラジドが形成される。
【0022】
引続き、本発明の実施態様によれば、N−保護基は、再び除去されてよい。それぞれの保護基の脱離に必要な条件は、当業者に公知である。
【0023】
本発明により特に有利に使用される保護基Bocは、例えば酸性媒体中、例えばHClガスまたはトリフルオロアセテートで飽和されている有機溶剤、例えばジオキサンまたはメタノール中で、特に有利にジオキサン中の4MのHCl(g)で脱離されてよい。また、次に続く反応工程(ii)において、原位置で保護基の脱離が行なわれるように条件が選択されてよい。
【0024】
工程(ii)において、工程(i)で形成された3−シアノフェニルアラニン−ピペラジドは、場合によっては置換されていてよいフェニルスルホニルハロゲン化物と反応される。
【0025】
この場合、好ましいハロゲン化物は、弗化物、塩化物、臭化物および沃化物である。フェニルスルホニルハロゲン化物に対する置換基の例は、C1〜C6アルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、カルボニル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよびハロゲンを含む。有利に使用されるフェニルスルホニルハロゲン化物は、フェニルハロゲン化物、4−メチルフェニルハロゲン化物、2,4,6−トリメチルフェニルハロゲン化物、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルハロゲン化物および殊に2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル(TIPPS)ハロゲン化物である。
【0026】
工程(iii)において、ヒドキシアミジノ官能基へのシアノ基の変換が行なわれる。この変換は、例えばヒドロキシルアミン塩酸塩により炭酸ナトリウムまたはトリエチルアミンの存在下で実施されてよい。この種の反応に適した方法は、公知技術水準で公知であり、例えばWO 03/072559中に記載されている。
【0027】
引続き、工程(iii)で形成された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体は、上記の精製方法に相応して有機スルホン酸を用いて高純度な形で得られる。この場合、3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を工程(iii)から最初に単離することは、不要である。
【0028】
こうして、3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体は、僅かな装置的費用で高い化学的収量および化学的純度で得られる。
【0029】
本発明による方法で高純度で得られるオキサミジン化合物は、例えば経口的に使用可能なウロキナーゼ阻害剤として使用されてよい。
【0030】
更に、本発明の視点によれば、オキサミジン化合物は、さらに反応されてよく、3−アミジノフェニルアラニン誘導体に変わってよい。本発明によれば、オキサミジンは、高純度な形で存在するので、アミジノ最終製品の収量も、さらに合成の経過で明らかに高められている。
【0031】
それによって、本発明は、次の工程:
(i)上記の方法により3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を製造する工程および
(ii)ヒドロキシアミジノ基をアミジノ基に変換する工程を含む3−アミジノフェニルアラニン誘導体の製造法を提供する。
【0032】
ヒドロキシアミジノ基は、還元によってアミジノ誘導体に変換されうる。これは、通常、例えばWO 03/076391、WO 03/072559、欧州特許第1294742号明細書ならびにSteinmetzer et al., J. Enzyme Inhibition, 16, 2001, 241-249, Kent et al., J. Peptide Res., 52, 1998, 201-207およびStueber et al., Peptide Res., 8, 1995, 78-85の記載と同様に当業者によく知られた反応により、接触水素化によって行なわれる。
【0033】
従って、本発明の方法によって、相応する3−アミジノフェニルアラニン誘導体は、公知技術水準の公知方法と比較して明らかに改善された収量で高純度な形で単離されてよい。
【0034】
図1は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジドの従来の合成で得られる生成物混合物のHPLCのプロフィールを示す。オキサミジンは、約21.4分間の保留時間で検出され、続いて24.3分間でアミド不純物が検出される。
【0035】
図2は、本発明による方法により得られたオキサミジンN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジドのHPLCのプロフィールを示す。
【0036】
実施例
工程1:アルキル化および脱カルボキシル
【化3】

【0037】
ジエチルアセトアミドマロネート(407g)を室温で窒素雰囲気中でエタノール(1 l)に添加する。懸濁液を約70℃に加熱し、エタノール(900ml)中のナトリウムメトキシド(130g)の溶液を添加する。反応混合物をさらに30分間前記温度で攪拌する。引続き、エタノール(1.4 l)中の3−ブロムメチルベンゾニトリル(300g)の懸濁液を反応容器に添加する。この反応容器中の温度をさらに2.5時間、約70℃に維持する。引続き、1.5時間で希釈された水素化ナトリウム溶液(2N;2.2 l)を滴加する。更に、約70℃で30分間攪拌し、引続き懸濁液を室温に冷却する。室温で反応混合物のpH値を、濃塩酸の添加(約1時間で)によって徐々に約7に低下させる。有機溶剤を蒸留によって減圧下(100ミリバール未満;Tmax=60℃)で除去する。残存する残留物を1N NaOH(1 l)中に溶解する。水溶液を3回エチルアセテート(それぞれ350ml)で抽出する。引続き、10℃に冷却する。水溶液を濃厚なHClで酸性にする(pH=1)。望ましい生成物をエチルアセテートで抽出する(それぞれエチルアセテート1.2 lを用いての3回の抽出)。あわせた有機相を減圧下で濃縮する。望ましい生成物は、白色の固体として沈殿する。結晶物を5℃で吸引漏斗中に捕集し、少量のエチルアセテートで洗浄し、45℃で窒素雰囲気中で乾燥させる。収量:243g(68%)。
【0038】
工程2:酵素的ラセミ分割
【化4】

【0039】
アセチル−シアノフェニル−アラニン(940g)を1N NaOH(4 l)中に37℃で溶解する。12.8の初期のpH値を4N HCl(約120ml)の添加によって7.2に低下させる。アシラーゼI(37.8g)を添加する。反応混合物のpH値を約7.2に一定に維持するために、連続的にNaOH(1N)を反応混合物に添加する。37℃で72時間後、沈殿した生成物を濾過によって20℃で単離する。結晶物を水で洗浄し、減少された圧力で約40℃で乾燥させる。濾液を減圧下で元来の体積の三分の一に濃縮した場合には、他の生成物が沈殿する。全収量:261g(34%)。
【0040】
工程3:BocでのNH2官能価の保護
【化5】

【0041】
メタノール(4.5 l)中のシアノフェニル−L−アラニン(425g)の懸濁液にトリエチルアミン(310ml)を添加する。25℃でジ−第三ブチルジカーボネート(488g)を添加する。反応混合物を一晩中、攪拌する。有機溶剤を減圧下で40℃で除去する。残存するオレンジ色の油をエチルアセテート(3 l)で希釈する。1N HCl(2.3 l)を添加し、不均質な溶液を30分間強く攪拌する。相分離を実施する。有機相を単離し、水で抽出し、MgSO4で乾燥させる。濾過後、有機相を40℃で減圧下で蒸発させ、乾燥物に変える。ジクロロメタンを残留物に添加した場合には、結晶物を得ることができる。この結晶物を濾過によって捕集し、窒素の下で45℃で乾燥させる。収量:554g(85%)。
【0042】
工程4:カップリング反応
【化6】

【0043】
Boc−シアノフェニルアラニン(554g)およびHOBT(52g)をジクロロメタン(2.7 l)中に懸濁させる。ジクロロメタン(1 l)中のDCC(453g)の溶液を添加する。引続き、この懸濁液を10〜15℃に冷却し、30分間でエトキシカルボニルピペラジン(347g)を滴加し、一方で、上記の温度範囲を維持する。反応混合物を一晩中、攪拌する。尿素を濾別し、廃棄する。飽和NaHCO3溶液(1.8 l)を濾液に添加する。不均質な混合物を30分間攪拌し、引続き相を分離する。有機相を水(2 l)で抽出し、引続きMgSO4で乾燥する。MgSO4を濾別し、溶液を減圧下で30℃で濃縮する。残存する油をエチルアセテート(300ml)中に溶解する。溶液に沸点に加熱する。ジイソプロピルエーテル(750ml)を溶液が混濁するまで徐々に添加する。温度を50℃に低下させ、混合物を放置させる。引続き、温度を5時間で25℃に低下させる。生成物を濾別し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、引続き窒素の下で40℃で乾燥させる。収量:660g(80%)。
【0044】
工程5:脱保護
【化7】

【0045】
Boc−L−シアノフェニルアラニン−ピパミド(442g)をジオキサン(4M;1.2 l)中のHClの溶液中に溶解する。温度は、添加中に25℃から32℃へ上昇する。3時間後、反応は終結し、ジクロロメタン(1 l)を溶液に添加する。望まし生成物は、沈殿を開始する。懸濁液を一晩中、攪拌する。HClの過剰量を混合物の排気によって除去する。この生成物を濾過によって単離し、ジイソプロピルエーテル(0.7 l)で洗浄し、45℃で高真空中で乾燥させる。収量:552g(98%)。
【0046】
工程6:スルホンアミドの形成
【化8】

【0047】
2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニルクロリド(212g)をジクロロメタン(1.6 l)中のシアノフェニル−L−アラニン−ピパミド−HCl(257g)の懸濁液に25℃で添加する。N−エチルジイソプロピルアミン(238ml)の添加によって、澄明な溶液が得られる。添加は、発熱的に進行する(25℃から35℃への温度上昇)。反応混合物を室温で2時間攪拌した後に、水(1.1 l)を反応混合物に添加する。相を分離し、有機相を1回飽和NaHCO3溶液(1.6 l)で抽出し、1回水(0.5 l)で抽出する。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。無色の油が得られ、この油を室温での放置で徐々に晶出させる。収量:423g(約100%)。
【0048】
工程7:アミドキシムの形成;N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジド
【化9】

【0049】
TIPPS−L−シアノフェニルアラニン−ピパミド(50g)をエタノール(350ml)中に溶解する。順次にヒドロキシルアミン−HCl(7.3g)およびトリエチルアミン(14.5ml)を添加する。反応混合物を沸点に加熱し(約75℃)、還流下に6時間加熱する。引続き、40℃に冷却し、溶剤を交換する。エタノールを減圧下で除去し、残留物にジクロロメタン(300ml)および水(100ml)を添加する。相分離を実施する。有機相をMgSO4で乾燥させる。濾過後、溶剤を減圧下で除去する。
【0050】
白色の固体(57g)が得られ、この固体をアセトン(200ml)中に溶解する。アセトン(150ml)中のアームストロングの酸(15g)の溶液を添加する。この混合物を30分間アセトンの沸点に加熱する。望ましい生成物のアームストロングの酸は、白色の固体として結晶化する。懸濁液を室温に冷却し、1時間攪拌し、引続き濾過を実施する。
【0051】
結晶物をアセトン(75ml)で洗浄し、乾燥し、引続きジクロロメタン(600ml)中に溶解する。飽和NaHCO3溶液(400ml)を添加する。不均質な混合物を20分間強く攪拌し、引続き相を分離する。有機相を水(400ml)で抽出し、引続きジクロロメタンを蒸留によって除去する。白色の固体(45g)が得られる。生成物をエチルアセテート/ジイソプロピルエーテルから再結晶化させ、45gは、エチルアセテート(60ml)中に溶解されている。ジイソプロピルエーテル(250ml)を添加する。こうして形成された懸濁液を30分間沸点に加熱し、引続き徐々に室温に冷却する。
【0052】
無定形の白色の固体を濾別し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、45℃で真空中で乾燥させる。収量:34g(65%)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジドの従来の合成で得られる生成物混合物のHPLCのプロフィールを示す略図。
【図2】本発明による方法により得られたオキサミジンN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトシキカルボニルピペラジドのHPLCのプロフィールを示す略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の精製法において、次の工程:
(a)芳香族スルホン酸を場合によっては汚染された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の溶液に添加し、沈殿物を形成させる工程、
(b)工程(a)で形成された沈殿物を分離する工程、および
(c)この沈殿物から遊離3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を回収する工程を含む3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の精製法。
【請求項2】
工程(a)の芳香族スルホン酸がアームストロングの酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体が式(I):
【化1】

〔式中、R1は、式
【化2】

で示される基であり、
上記式中、R4は、
(i)非置換又は例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されたC1〜C6−アルキル基、例えばエトキシカルボニル基、またはアリール基、例えばフェニル、p−ハロゲンフェニル、ナフチル、
(ii)飽和または不飽和の分枝鎖状または非分枝鎖状のC1C6−アルコキシ基または
(iii)非置換または例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソおよび/またはハロゲンで置換されたフェノキシ基またはベンジルオキシカルボニル基を表わし、
2は、非置換または例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C3−アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソ又は/及びハロゲンで置換されたフェニル基、例えばフェニル、4−メチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルを表わし、
3は、Hまたは分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC1〜C4−アルキルであり、
nは0または1を表わし、
Zは、NまたはCR9を表わし、この場合R9はHまたは分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC1〜C4−アルキルである〕を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体がN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(D,L)−フェニルアラニン誘導体またはそのL−エナンチオマーである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体がN−α−TIPPS−3−ヒドロキシ−5−アミジノ−(D,L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドまたはそのL−エナンチオマーである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)でアセトン中の3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の溶液を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
沈殿物の分離を工程(b)で濾過によって行なう、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
回収を工程(c)でNaHCO3との反応によって行なう、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を90%を上廻る純度で得る、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を95%を上廻る純度で得る、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を99%を上廻る純度で得る、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の製造法において、次の工程:
(i)N−保護された3−シアノフェニルアラニンをピペラジン誘導体とN−保護された3−シアノフェニルアラニンピペラジドの形成下で反応させる工程;
(ii)非置換または置換フェニルスルホニルハロゲン化物と反応させる工程;
(iii)シアノ基をヒドロキシアミジノ基に変換させる工程、
(iv)形成された3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法により精製する工程を含む3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体の製造法。
【請求項13】
工程(i)でBoc N−保護された3−シアノフェニルアラニン誘導体を使用する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(i)のピペラジン誘導体がエトキシカルボニルピペラジンである、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)で2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリドとの反応を行なう、請求項12から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
シアノ基を工程(iii)でヒドロキシルアミン塩酸塩を用いてナトリウムカーボネートまたはトリエチルアミンの存在下でヒドロキシアミジノ基に変換する、請求項12から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を90%を上廻る純度で生じる、請求項12から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を95%を上廻る純度で生じる、請求項12から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を99%を上廻る純度で生じる、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
3−アミジノフェニルアラニン誘導体の製造法において、次の工程:
(i)請求項9から19までのいずれか1項に記載の方法により3−ヒドロキシアミジノフェニルアラニン誘導体を製造する工程、および
(ii)ヒドロキシアミジノ基をアミジノ基に変換する工程を含む3−アミジノフェニルアラニン誘導体の製造法。
【請求項21】
ヒドロキシアミジノ基を工程(ii)で無水酢酸との反応および引続く接触水素化によってアミジノ基に変換する、請求項20記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−516908(P2008−516908A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536080(P2007−536080)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010970
【国際公開番号】WO2006/042678
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(501022343)ヴィレックス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Wilex AG
【住所又は居所原語表記】Grillparzer Strasse 16, D−81675 Muenchen,Germany