説明

芳香族チオフェニルケトンの製造方法

本発明は、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩の存在下、芳香族チオエーテルをアシル化剤と反応させることを特徴とする芳香族チオエーテルケトンの合成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族チオエーテルケトンの新規な製造方法、並びに、前記芳香族チオエーテル化合物を使用する、α−アミノケトン光開始剤化合物の製造方法を提供する。
【0002】
芳香族化合物のフリーデル−クラフツ反応によるアシル化は、芳香族ケトン合成のための最も重要な経路であり、当業者にはよく知られていて、多くの一般的な化学の教科書に公表されている。芳香族エーテル又はチオエーテルの化合物のアシル化は、公知であり、種々のアシル化剤、及び例えば、Sulfur Letter, 1991, 12(3) 123; US 5883267及びGB 2330833に記載されているように、化学量論的な塩化アルミニウム又は毒性の塩化スズのような種々のタイプの酸性触媒を使用することが記載されている。トリフルオロメタンスルホン酸の希土類金属塩の使用は、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 2000, 73(10), 2325及びSynlett, 2002, 10, 1653に公表されている。触媒としてのトリフルオロメタンスルホン酸銅は、Tetrahedron, 2001, 57, 241から公知である。毒性のウラン塩の使用は、Journal of Molecular Catalysis A:Chemical, 2000, 164(1-2), 195に開示されている。HFの使用は、Journal of Organic Chemistry, 1991, 56(20), 5955及びEP 361790に記載されているが、一方でJournal of Organic Chemistry, 1996, 61(26), 9546ではアルミナ/無水トリフルオロ酢酸がマイクロウェーブ条件下で使用されている。触媒としての塩化亜鉛は、Indian Journal of Heterocyclic Chemistry, 2002, 11, 229から公知である。
フリーデル−クラフツ反応におけるゼオライト触媒は、例えば、US 6608232、US 6121496、US 6194616、US 5817878、US 6013840、EP 459495、EP 334096、J. Molecular Catalysis: Chemical 1998, 134, 121、Applied Catalysis A: General, 2000, 201, 159に開示されているが、一方で粘土又は交換された粘土の使用は、US 4304941及びEP 352878から公知である。
芳香族エーテル又は芳香族炭化水素のアシル化のためのヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体の適用は、Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 2004, 209(1-2), 189;Chemical Communications 2002, 21, 2508;Journal of Catalysis 2002, 208, 448;Bulletin of the Chemical Society of Japan 1980, 53, 3389及び WO 03/101925に記載されている。
【0003】
芳香族基質のアシル化は、医薬、殺虫剤、可塑剤、染料、香料及び光開始剤のような他の商品の製造のために使用される芳香族性中間体を製造するために工業的に非常に重要な関心事である。
【0004】
技術、特に光開始剤化合物のための抽出物としての芳香族チオエーテルケトンの製造において、フリーデル−クラフツ反応によるアシル化を実施するための、環境にやさしく経済的な方法の必要性が依然として存在する。
【0005】
今や、芳香族チオエーテルケトンを与えるための芳香族チオエーテル化合物のアシル化が、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体の存在下で非常に効率的に実施することができることが意外にも発見された。
【0006】
したがって本発明の対象は、芳香族チオエーテルケトンの合成方法であって、芳香族チオエーテルを、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩の存在下、カルボン酸、ハロゲン化物又は無水物からなる群より選択されるアシル化剤と反応させる、方法である。
【0007】
新しい方法は、有毒で腐食性の触媒の化学量論的な量の使用を回避し、芳香族チオエーテルケトン化合物の高収率という結果をもたらし、より短い製造時間及びより短いサイクル時間のため、製造プラントの経済的な普通の利用を可能にする。無溶剤条件さえも選択できる。
【0008】
本発明による方法で反応が行われる適切な芳香族チオエーテル化合物は、例えば、以下の式(I’)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中
円は、芳香族又は芳香族複素環を表し;
mは、芳香族又は芳香族複素環のC原子の数のマイナス2の数で定義され;
1は、同一であっても又は異なっていてもよい、1以上の置換基を表し;
2は、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の非環式の脂肪族基、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは多環のシクロ脂肪族基、環式の置換基を有している飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝状の脂肪族基、又は、単環もしくは多環の芳香族基、である1〜24個の炭素原子を含有する炭化水素基を表すか;あるいは
1及びR2は、一緒になって、場合により硫黄原子以外に更なるヘテロ原子を含む環を形成する)の化合物である。
【0011】
上記式中の円で表される芳香環は、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどである。芳香族複素環は、例えばヘテロ原子がO、S、P、Nである、1個以上のヘテロ原子、好ましくは1個のヘテロ原子を含有していてもよい。芳香族複素環の例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジルなどである。更に、芳香族複素環は縮合環、例えば、ベンゾフリル、キノリル、イソキノリルなどを含有していてもよい。
【0012】
本発明による方法において反応する芳香族チオエーテルは、例えば、式(I);
【0013】
【化4】

【0014】
(式中
nは、0〜4の数であり;
1は、同一又は異なる、1以上の置換基を表し;
2は、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の非置換もしくは置換された非環式である脂肪族基;飽和もしくは不飽和の、単環もしくは多環の、非置換もしくは置換された脂環式基;環式の置換基を有する、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分子鎖の、非置換もしくは置換された脂肪族基;又は非置換もしくは置換された単環あるいは多環の芳香族基;である1〜24個の炭素原子を含有する炭化水素基を表すか、あるいは
1及びR2は、一緒になって、場合により硫黄原子以外に更なるヘテロ原子を含む非置換であるか、もしくは置換された環を形成する)の化合物である。
【0015】
1は、例えば、場合によりハロゲン、CN及び/もしくはOR6で置換されたC1−C24アルキルであり;又はC2−C12アルケニル、C3−C8シクロアルキルであり;又は場合によりC1−C24アルキル、ハロゲン、CN及び/もしくはOR6で置換されたフェニルであり;又はナフチル、ハロゲン、OR6、−CO−R6、SR6、NR67又はB(OR6)(OR7)であり;
6は、水素、C1−C24アルキル、C1−C24ハロアルキルであり、そして、
7は、R6に対して与えられたとおりと同じ意味を有する。
【0016】
1〜24個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基の例は、直鎖もしくは分枝状のC1−C24アルキル、直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルケニル及び直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルキニルである。例えば、C1−C18−、C1−C14−、C1−C12−、C1−C8−、C1−C6−又はC1−C4アルキルである。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二級ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル又はイコシルである。
1−C18アルキル、C1−C14アルキル、C1−C12アルキル、C1−C8アルキル、C1−C6アルキル及びC1−C4アルキルは、対応するC−原子数までC1−C20アルキルについて上記に対して与えられたとおりと同じ意味を有する。
直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルケニル基は、モノもしくはポリ不飽和であってもよく、例えばC2−C20−、C2−C18−、C2−C12−、C2−C8−、C2−C6−又はC2−C4アルケニルである。例は、アリル、メタリル、ビニル、1,1−ジメチルアリル、1−ブテニル、3−ブテニル、2−ブテニル、1,3−ペンタジエニル、5−ヘキセニル又は7−オクテニル、特にアリル又はビニルである。
直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルキニル基は、モノもしくはポリ不飽和であってもよく、例えば、C2−C20−、C2−C18−、C2−C12−、C2−C8−、C2−C6−又はC2−C4アルキニルである。例えば、プロパルギル、1−プロピニル、2−プロピニルである。
前記1〜24個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基は、非置換であるか又は置換されている。
置換基の例は、フェニル、ハロゲン、NR910、アルキル及び/もしくはCOOR8で置換されたフェニル;ハロゲン、フェニルチオ、OR8、N3、CN、NR910、(CO)OR8、(CO)R12、Si(R113又は(PO)(OR112(R8は、水素又はC1−C12アルキルであり;R9及びR10は、互いに独立して、水素、C1−C12アルキルであるか、あるいはR9及びR10は、それらが結合された窒素原子と一緒になって、環、例えばピペリジニル環を形成し、R11は、C1−C12アルキルを表し、R12は、フェニル、C1−C12アルキル又はNR910である)である。
【0017】
したがって、1〜24個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基の意味は、本発明の文脈中では、直鎖もしくは分枝状のC1−C24ハロアルキル及び直鎖もしくは分枝状のC2−C24ハロアルケニルにも対応する。
1−C24ハロアルキルは、例えば、ハロゲンでモノもしくはポリ置換されたC1−C12−、C1−C10−、C1−C8−又はC1−C4−アルキルであり、分子のアルキル部分は、例えば、上記定義のとおりである。例えば、アルキル基において1〜3又は1もしくは2のハロゲン置換基がある。例は、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル又は2−ブロモプロピル、特にトリフルオロメチル、ジクロロメチル又はクロロメチルである。
2−C24ハロアルケニルの定義は、アルキル基について記載された1個以上のハロゲンで置換されているアルケニルについて与えられた定義に対応する。
【0018】
飽和又は不飽和の、単環又は多環の脂環式炭化水素基の例は、C3−C24シクロアルキル基である。
3−C24シクロアルキルは、例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6−、C5−又はC6−シクロアルキルであり、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、特にシクロペンチル及びシクロヘキシル、好ましくはシクロヘキシルである。更に、この定義で包含されるものは、アルキル置換基、例えばメチルシクロペンチル、メチル−又はジメチルシクロヘキシルなどを有する炭化水素環である。前記シクロアルキルは、1つの環のみで構成されていてもよいが、1つより多い環の系、例えばアダマンチルであってもよい。
前記飽和又は不飽和の、単環又は多環の脂環式炭化水素基、すなわち、C3−C24シクロアルキル基は、非置換であるか又は置換されている。適切な置換基は、1〜24個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基について上記に与えられたものに対応している。
【0019】
単環もしくは多環の芳香族基の例は、C6−C24アリールであり、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、特にフェニルのようなC6−C10−アリールである。
前記の単環もしくは多環の芳香族基、すなわちC6−C24アリールは、非置換であるか又は置換されている。適切な置換基は、1〜24個の炭素原子を含んでいる直鎖又は分枝状の飽和又は不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基について上記で与えられたものに対応している。
【0020】
1〜24個の炭素原子を含有し、環式の置換基を有する飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝状の脂肪族炭化水素基の例は、対応する炭素C原子の数まで上記で定義されたとおりである、シクロアルキル又はアリールで置換された上記定義のC1−C24アルキルである;又は、対応するC原子の数まで上記で定義されたとおりのシクロアルキルもしくはアリールで置換された上記で定義されたとおりのC2−C24アルケニルである。例は、フェニル−C1−C18アルキル、例えばベンジル、フェニルエチル、α−メチルベンジル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル又はα,α−ジメチルベンジルであるか;又は、ナフチル−C1−C14アルキル、例えばナフチルメチル、ナフチルエチル、ナフチルプロピルもしくはナフチル−1−メチルエチルである。
前記1〜24個の炭素原子を含有し、上記に定義された環式の置換基を有する飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝状の脂肪族炭化水素基は、非置換であるか又は置換されている。適切な置換基は、1〜24個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基について上記で与えられたものに対応している。
【0021】
1及びR2は、一緒になって、場合により硫黄原子以外に更なるヘテロ原子、例えばS、O、NH又はNR2を含む環を形成する場合、言い換えれば、R1及びR2は、一緒になって、場合によりヘテロ原子により中断されるアルキレンを形成する。前記アルキレンは、直鎖又は分枝状であり、適切には約2〜10個の原子、例えば2〜8個又は2〜4個の原子を有し、場合によりヘテロ原子で中断されている。例えば、以下の構造
【0022】
【化5】

【0023】
などが含まれる。
硫黄原子以外に、場合により更なるヘテロ原子を含む前記環は、非置換であるか又は置換されている。適切な置換基は、1〜24個の炭素原子を含む直鎖又は分枝状の飽和又は不飽和の非環式の脂肪族炭化水素基について上記で与えられたものに対応している。
【0024】
2は、例えば、C1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、C1−C24アルキニル、C3−C24シクロアルキル、C6−C24アリール、フェニル−C1−C18アルキル又はナフチル−C1−C24アルキルであり、これらの全ては、非置換であるか、又はフェニルで置換されているか、又はハロゲン、NR910、アルキル及び/もしくはCOOR8で置換されたフェニルで置換されているか;又はハロゲン、フェニルチオ、OR8、N3、CN、NR910、(CO)OR8、(CO)R12、Si(R113又は(PO)(OR112で置換されており、
ここで、
8は、水素又はC1−C12アルキルであり;
9及びR10は、互いに独立して、水素、C1−C12アルキルであるか、又はR9とR10はそれらが結合した窒素原子と一緒になって、環、例えばピペリジニル環、を形成し;
11はC1−C12アルキルを表し、そして、
12はフェニル、C1−C12アルキル又はNR910である。
1−C24アルキル、C1−C24アルケニル、C1−C24アルキニル、C3−C24シクロアルキル、C6−C24アリール、フェニル−C1−C18アルキル又はナフチル−C1−C24アルキルの意味は上記に定義されたとおりである。
【0025】
式Iの興味があるチオエーテルは、
(式中、R1が、場合によりハロゲン、CN及び/もしくはOR6で置換されているC1−C24アルキルであり;
又はC3−C8シクロアルキルであるか;又は、場合によりC1−C24アルキル、ハロゲン、CN及び/もしくはOR6で置換されているフェニルであるか;又は、ハロゲン、OR6、−CO−R6、SR6又はNR67であり;
2は、直鎖もしくは分枝状のC1−C24アルキル、直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルケニルであり;
3−C24シクロアルキル、C6−C24アリールであり;又は、C3−C8シクロアルキルもしくはC6−C10アリールで置換されているC1−C24アルキルであるか;
あるいは、R1及びR2は、一緒になって、場合によりヘテロ原子で中断されているC1−C24アルキレンを形成するか、又は場合によりヘテロ原子で中断されているC2−C24アルケニレンを形成し、
6は、水素、C1−C24アルキル、C1−C24ハロアルキルであり、そして
7は、R6について与えられたとおりの同じ意味を有する)のようなものである。
【0026】
式Iの好ましい化合物において、nは0である。式I’の好ましい化合物において、mは0である。
【0027】
1は、特に、C1−C24アルキル、例えばC1−C4アルキル、ハロゲン、OR6、SR6又はNR67である。
2は、例えば、C1−C12−又はC1−C8アルキルである。
【0028】
特に適切なチオエーテルは、チオアニソール、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、フェニルn−プロピルスルフィド、ベンジルフェニルスルフィド、フェニルβ−フェニルエチルスルフィド、フェニル3−フェニルプロピルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、フェニルプロパルギルスルフィド、メタリルフェニルスルフィド、ビス(フェニルチオ)メタン、1,3−ビス(フェニルチオ)プロパン、1,2−ビス(フェニルチオ)エタン、1,1,3−トリス(フェニルチオ)−1−プロペン、クロロメチルフェニルスルフィド、2−クロロエチルフェニルスルフィド、3−クロロプロピルフェニルスルフィド、2−ブロモエチルフェニルスルフィド、ブロモメチルフェニルスルフィド、4−フルオロベンジルフェニルスルフィド、1−クロロ−4−フェニルスルファニルベンゼン、2−(フェニルチオ)エタノール、メトキシメチルフェニルスルフィド、2−メトキシエチルフェニルスルフィド、アジドメチルフェニルスルフィド、フェニルチオアセトニトリル、1−[(フェニルチオ)メチル]ピペリジン、4−[(フェニルスルファニル)メチル]アニリン、(フェニルチオ)酢酸、3−(フェニルスルファニル)プロパン酸、4−(フェニルスルファニル)ブタン酸、2−フェニルメルカプトメチル安息香酸、メチル(フェニルチオ)アセタート、エチル(フェニルチオ)アセタート、(フェニルチオメチル)トリメチルシラン、2−[(フェニルチオ)メチル]−2−シクロペンテン−1−オン、(フェニルチオ)プロパノン、フェニルフェナシルスルフィド、ジエチルフェニルチオメチルホスホナート、フェニルチオメチル、α−(フェニルチオ)アセトアミド、3−(フェニルチオ)プロピオンアミド、2−(フェニルチオ)エタンエチオアミドである。
好ましい方法において、チオエーテルはチオアニソールである。
【0029】
当業者は、式I及びI’によるチオエーテルの製造を熟知している。適切な製造方法は、化学の一般的な教科書、例えば、"Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms, and Strcutures; Fourth Edition, Jerry March; p.407-409."に記載されている。
数多くのチオエーテルもまた市販されている。
【0030】
アシル化剤として、技術において通常のすべての試薬が適切である。当業者は、そのような試薬を熟知しており、それらの多くは市販されている。通常前記試薬は、アシルハライド、カルボン酸、カルボン酸無水物からなる群より選択される。
【0031】
アシル化剤は、例えば、式(II)
【0032】
【化6】

【0033】
(式中
3は、1〜24個の炭素原子を含有する、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の非置換もしくは置換された脂肪族基;3〜8個の炭素原子を含有する単環もしくは多環の飽和もしくは不飽和の非置換もしくは置換された脂環式基;又は環式の置換基を有する、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族基;又は3〜10個の炭素原子を含有する単環もしくは多環である、非置換もしくは置換された芳香族基を表し;
Yは、ハロゲン原子、ヒロドキシル基、基−O−COR4又は−O−SO2−R4を表し;
4は、R3に対して与えられた意味のうちの1つを有するか、又は1つ以上のOで中断され、場合によりハロゲンで置換されたC1−C24アルキルであり;又は
3及びR4は、一緒になって、少なくとも2個の炭素原子を含有する二価の直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族基を形成する)のものである。
【0034】
3及びR4は、1〜24個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の非置換もしくは置換された脂肪族基;3〜8個の炭素原子を含有する単環もしくは多環の飽和もしくは不飽和の、非置換もしくは置換された脂環式基;又は環式の置換基を有している直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族基;又は3〜10個の炭素原子を含有する単環もしくは多環である、非置換もしくは置換された芳香族基であってもよく;
【0035】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、特に塩素及び臭素、好ましくは塩素に対応する。
【0036】
3及びR4は、例えば、1個以上のハロゲンで置換されたC1−C24アルキルである。
1個以上のハロゲンで置換されたC1−C24アルキルは、直鎖もしくは分枝状及び上記に定義され、かつ、1個以上のハロゲン(ハロゲン原子は、アルキル基の異なるC原子又は1個のC原子においてどちらでも配置される)で置換されたC1−C20−、C1−C18−、C1−C12−、C1−C10−、C1−C8−、C1−C6−又はC1−C4アルキルを意味する。例は、ブロモメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、クロロメチル、クロロエチル、ペンタフルオロエチルなどである。1個以上のハロゲンで置換されたC1−C24アルキルという用語は、対応する過ハロゲン化した、特に過フッ化アルキルを包含する。
1個以上のハロゲンで置換されたC1−C24アルキルは、例えばCn[HxHaly2n+1(x+yの合計=2n+1であり、Halは、ハロゲン、好ましくはFである)である。例は、CF3、C25、CH2F、CHF2、C817、C49、などである。
1個以上のOで中断され、場合によりハロゲンで置換されたC1−C24アルキルとしてのR4は、例えば、1から5回、例えば非連続のOで、1〜3回又は1回もしくは2回中断される。したがって、結果として生じる構造単位は、例えば:−OC1−C24アルキル、−O(CH22OH、−O(CH22OCH3、−O(CH2CH2O)2CH2CH3、−CH2−O−CH3、−CH2CH2−O−CH2CH3、−O[CH2CH2O]yCH3、−O[CH2CH2O]yCH2CH3、−[CH2CH2O]y−CH3、−[CH2CH2O]y−C25であり(y=1〜5)、−(CH2CH2O)5CH2CH3、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2CH3又は−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3である。Oで中断される前記アルキルがさらに1個以上のハロゲンで置換された場合、前記ハロゲンは1個又はそれ以上又はアルキル基の水素原子のすべてを置換することができる。例は、−O[CF2CF2O]yCF3、−O[CF2CF2O]yCF2CF3、−[CF2CF2O]y−CF3、−[CF2CF2O]y−C25であり(y=1〜5)、例えば−CF2CF2−O−CF2CF3、−O−CF2CF2−O−CF2CF3である。
【0037】
少なくとも2個の炭素原子を含有する二価の直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和の脂肪族基としてのR3及びR4は、一緒になって、例えばアルキレン又はアルケニレンである。前記アルキレン又はアルケニレンは、直鎖もしくは分枝状であり、適切に約2〜10個の原子を有する。例えば、C2−C10−、C2−C8−、C2−C4−、C4−C8−アルキレン、C2−C10、C2−C8−、C2−C4−、C4−C8−アルケニレンである。前記の基について特定の意味は、C原子の対応する数まで語尾「エン(ene)」を加えることで「アルキル」及び「アルケニル」について上記の意味に対応している。
【0038】
式IIの興味深い化合物において、Yは、ハロゲン原子、例えば塩素、ヒロドキシル基又は−O−COR4である。
3は、直鎖もしくは分枝状のC1−C24アルキル、直鎖もしくは分枝状のC2−C24アルケニル、直鎖もしくは分枝状のC1−C24ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル、クロロメチル又はジクロロメチル)、直鎖もしくは分枝状のC2−C24ハロアルケニル、C3−C8シクロアルキル、C6−C10アリール(すなわちフェニル又はナフチル)であるか;又はC3−C8シクロアルキルもしくはC6−C10アリールで置換されたC1−C24アルキルである。
4は、R3について示された意味のうちの1つを有するか、又は1個以上のハロゲンもしくはCNで置換されたC1−C24アルキルであるか、又は1個以上のOで中断され、場合によりハロゲンで置換されたC1−C24アルキルであるか;又は
3及びR4は、一緒になって、少なくとも2個の炭素原子を含有する二価の直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族基を形成するか、
あるいは、R3及びR4は、一緒になって、直鎖もしくは分枝状のC2−C10−アルキレン、もしくは直鎖もしくは分枝状のC2−C10−アルケニレンを形成する。
【0039】
式IIの特定の化合物において、Yは、−O−CO−R4である。
好ましくは、R3は、C1−C24アルキル、特にC1−C12アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルもしくはブチルであるか;又は、C1−C24ハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、モノクロルメチルもしくはジクロロメチルであるか;又は、フェニルである。
4が、R3と同一である化合物が好ましい。
【0040】
本発明による方法における好ましいアシル化剤は、無水酢酸、無水プロパン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水トリフルオロ酢酸、無水安息香酸、無水モノクロロ酢酸、及び無水ジクロロ酢酸からなる群より選択される。
好ましい方法において、アシル化剤は無水イソ酪酸である。
【0041】
当業者は、式IIのアシル化剤の製造を熟知している。適切な製造方法は、一般的な化学の教科書、例えば、"Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms, and Strcutures; Fourth Edition, Jerry March; p.401-402"に、特にY=−OSO2−R4である場合については、"F. Effenberger et al., Angew. Chem. 1972, 84, 294." に記載されている。
数多くのアシル化剤も市販されている。
【0042】
興味深いことは、請求項2記載の式(I)の芳香族チオエーテルを、請求項4記載の式(II)のアシル化剤と反応させることで芳香族チオエーテルケトンを合成する方法である。
【0043】
本明細書の文脈中の、用語「及び(並びに)/又は(もしくは)」、又は、「(もしくは)又は/及び(並びに)」は、定義された選択肢(置換基)のただ1つのものだけでなく、定義された選択肢(置換基)のいくつかのものが一緒に存在してもよい、すなわち種々の選択肢(置換基)の混合物を表すことを意味する。
用語「少なくとも」は1以上、例えば1もしくは2もしくは3、好ましくは1もしくは2、と定めることを意味する。
用語「場合により置換された」は、それが属する基が非置換かそれとも置換されていることを意味する。
以下に述べるこの明細書及び請求項の全体にわたって、文脈がそうでないと要求しない限り、単語「含む(comprise)」、又は変形語、例えば「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」は、述べられた整数もしくは工程又は整数もしくは工程の群の包含を意味し、いかなる他の整数もしくは工程又は整数もしくは工程の群の排除を意味するものではないと理解されるであろう。
【0044】
ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又は対応するヘテロポリ酸塩は、文献で公知であり、例えば、Chem. Rev. 1998, 98,1, 171-198; Chem. Commun., 2001, 1141を参照されたい。前記酸は、例えば、Chem. Rev. 1998, 98,1, 171-198中のRef. 17-24に記載されているように、基本的な構造単位として金属−酸素八面体を有するポリオキソメタレートのアニオンを組み込んだプロトン酸錯体である。
通常、ケギン型ヘテロポリアニオンは、式XM1240x-8で表され、ここでXは、中心原子(例えばSi、P)であり、xは酸化状態であり、そして、Mは金属イオン(例えばMo、W)は、最もよく知られている。他のポリオキソメタレートは、式X218622x-16(ドーソン構造)、XM1139x-12、X217612x-20(ケギン型及びドーソン型のラクナリーアニオン)で示される。ヘテロポリ酸塩は、1〜13族からのカチオン、ランタニドからのカチオン、そして、同様にアンモニウムカチオンも含んでいる。例えば、Chem. Rev. 1998, 98,1, 171-198を参照されたい。
【0045】
本発明による方法に特に適切であるものは、ケギン型アニオンを有するヘテロポリ酸である。
【0046】
すでに上記で挙げているような、P及びSi以外に、ヘテロポリ酸の中心原子は、例えば、B、Ge又はAsである。
配位原子として、ヘテロポリ酸は、Mo又はW又はそれらの混合物を含む。
【0047】
したがって、好ましい触媒は、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩又はそれらの混合物であり、ここでヘテロポリ酸は、P、Si、B、Ge、Asを含む中心原子、及びMo又はW又はそれらの混合物を含む配位原子を有する。
【0048】
本発明による方法において、ヘテロポリ酸はそのまま、あるいは、適切な担体上で使用することができる。前記担体の例としては、シリカ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、炭素、ヒドロタルサイト型アニオン粘土又は酸化アルミニウム(ALOX)である。
シリカ、酸化アルミニウム、メソ多孔性モレキュラーシーブ及びヒドロタルサイト型アニオン粘土、特にシリカ、酸化アルミニウム(ALOX)及びメソ多孔性モレキュラーシーブは、担体として興味深い。シリカ及び酸化アルミニウム(ALOX)、特にシリカが好ましい。
【0049】
すでに上述したように、広範囲のカチオンをヘテロポリ酸のために選択することができる。特に適切な例は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Fe、La、Ce、Cu、Zn、Al、アンモニウム又はそれらの混合物である。
【0050】
適切なヘテロポリ酸触媒の例は、Chem. Rev. 1995, 559-614, p.591, p.595, p.596, p.597; Chem. Rev. 1998, 359-387, p.362, p.373;Y. Izumi, K. Urabe, M. Onaka in Zeolite, Clay, and Heteropoly Acid; VCH Publishers Inc., New York, 1992; Chap. 3, p.111, p.141 (担持系), p.154; Applied Catalysis A: General 132, 1995, 127-140, p.139; The Chemical Engineering Journal, 1996, 64, 247-254; p. 252; Chem. Commun., 2001, 1141-152, p.1144, p.1150; J. Molecular Catalysis A; Chemical 219, 2004, 327-341, p.331, p.332, p.334, p.336;Chem. Rev. 1998, 98, 307-325;J. Molecular Catalysis A: Chemical 219 (2004), 327-342; Applied Catalysis A: General 257 (2004), 19-23; J. Catalysis 208 (2002), 448-455; Microporous and Mesoporous Materials 21 (1998), 227-233に公表されている。
【0051】
適切なものは、無水型の触媒、並びに対応する水和型又は対応する塩である。更に、既に述べたように、触媒は、種々の担持量で、担体に固定することができる。
適切な触媒の具体例は、K5.51.5[SbW624]・6H2O;Na5[IMo624]・3H2O;K6[Mo724]・4H2O;Cs4[W1032]・4H2O;Cs4[W1032]・5H2O;K5[BW1240]・15H2O;K3[PMo1240]・4H2O;K3[PMo1240]・5H2O;[N(C442[W619];[N(C442[Mo619];K5[(GeTi33723]・16H2O;K2.50.5PW1240;Cs2.50.5PW1240;Rb2.50.5PW1240;Cs3HiW1240;K22SiW1240;Mg3[PMo12402;Ca3[PMo12402;Sr3[PMo12402;Ba3[PMo12402;Li3[PMo1240];Na3[PMo1240];Al[PMo1240];H3[PMo1240];H3[PMo1240]・28H2O;Li3[PMo1240];Li3[PMo1240]・29H2O;Na3[PMo1240];Na3[PMo1240]・29H2O;Mg3[PMo1240];Mg3[PMo1240]・58H2O;Ca3[PMo1240];Ca3[PMo1240]・58H2O;Sr3[PMo1240];Sr3[PMo1240]・58H2O;Ba3[PMo1240];Ba3[PMo1240]・58H2O;Al3[PMo1240];Al[PMo1240]・29H2O;H0.52.5PW1240;H0.5Na2.5PW1240;H0.5Mg1.25PW1240;H4GeMo1240;(NH462Mo1862;[C1633N(CH334−xSiMo1240;[C1633N(CH334−xSiW1240;(NH41021242;(NH4621262;[C1633N(CH336Mo724;[(C44N]3PW1240;[C1837N(CH322510[H21240];H621862;H3PW1240・nH2O;H3PMo6640;(NH36[H21240];H3PW1240;H3PMo1240・30H2O;H3PW1240・30H2O;(NH43PMo1240・3H2O;K3PW1240・6H2O;Na3PMo1240・21H2O;(NH43PW1240・3H2O;K3PMo1240・6H2O;Na3PW1240・21H2O;H4SiMo1240・26H2O;Na4SiMo1240・22H2O;H4SiW1240・30H2O;Na4SiW1240・22H2O;H5BW1240・30H2O;K621862・14H2O;K1021761・22H2O;(NH46TeMo624・7H2O;(NH48CeMo1242・8H2O;(NH46MnMo32・8H2O;Na5624・8H2O;(CN366TeW624・7H2O;(NH434AsW1242・4H2O;H4GeW1240・30H2O;K2SeMo621・6H2O;Na3AlMo621・11H2O;K4ZrMo1240・18H2O;La3[PMo1240]・10H2O;Co3[PMo12402・34H2O;Ni3[PMo12402・34H2O;Mn3[PMo12402・41H2O;Co2[PMo1240]・24H2O;Ni2[SiMo1240]・21H2O;Mn2[SiMo1240]・22H2O;Cu2[SiMo1240]・20H2O;La4[SiMo1240]・71H2O;H3PW1240;H4SiW1240;H4GeW1240;H5BW1240;H6CoW1240;H621862;H4SiMo1240;H3PMo1240;K2.60.4PW1240;Cs2HPW1240;(NH4,Cs,H)3PW1240であり;そして、モレキュラーシーブで担持されたいくつかの例は、H4SiW1240/MCM−41;H3PW1240/MCM−41であり;又はケイ酸塩で担持されたCs2.50.5PW124/SiO2粉末;Cs2.50.5PW124/SiO2押出成形物;50% H3PW1240/SiO2;40% H3PW1240/SiO2;30% H3PW1240/SiO2;20% H3PW1240/SiO2;10% H3PW1240/SiO2;40% H4SiW1240/SiO2;40% H4SiW1240/MCM−41;40% H3PMo124/SiO2;40% H3PMo124/MCM−41である。
【0052】
好ましくは、方法はヘテロポリ酸触媒として、H4Si(W3104又はH3P(W3104を使用して実施される。
【0053】
当業者は、そのようなヘテロポリ酸の製造を熟知している。適切な製造方法は、化学の一般的な教科書又は例えば上述の文献、すなわち、"Y. Izumi, K. Urabe, M. Onaka in Zeolite, Clay, and Heteropoly Acid; VCH Publishers Inc., New York, 1992."に示されている。ヘテロポリ酸は、幅広い種類で市販されてもいる。
【0054】
本発明による方法は、例えば、以下の一般的な反応で記載することができる:
【0055】
【化7】

【0056】
式中、R1、R2、R3、Y、n及びmは、上記に定義されたとおりである。
【0057】
方法は通常、チオエーテル抽出物とアシル化剤を混合し、加熱手段を備えた適切な容器中で前記抽出物を反応させることで実施される。反応は、好都合には不活性条件下(すなわち、容器は、例えば窒素雰囲気下で操作することで前記雰囲気を作り出すための適切な手段を備えている)で実施される。その他の不活性ガス、例えばHeも、用いることができる。当業者は、これらの事実を熟知している。
【0058】
式I又はI’のチオエーテルと式IIのアシル化剤との反応は、種々の方法で実施することができる。代表的であるが、しかし排他的でない例を以下に示す。
a)反応容器中に、チオエーテルを触媒及びアシル化剤と一緒に入れ、直ちに最終反応温度まで加熱するか、又は
b)反応容器中に、チオエーテルを触媒及びアシル化剤と一緒に入れ、最終温度になるまで反応中にゆっくり加熱するか、又は
c)アシル化剤を、あらかじめ反応温度まで加熱されたチオエーテル及び触媒へ、反応の間に加えるか、
d)触媒を出発物質のいずれの一方又は両方の最小限の量の中に懸濁させ、次いで、反応剤を、続けていかなる順番で加えても、一緒に加えてもよい。
反応容器も、例えば触媒で充填したカラムから構成されてもよく、アシル化剤及びチオエーテルはカラムを通じて触媒上にポンプで注入される(例えば連続して)。
更なる可能性は、反応蒸留を経て反応物を一緒にすることであり、これは触媒化学的反応及び蒸留が単一の装置内で同時に起こる方法である。
【0059】
更に、溶剤は、原則として、反応を実施するために必要ではないが、さらに使用してもよい。溶剤は、それぞれの反応条件下で不活性でなければならないことは明白である。当業者は、そのような反応のために適切な溶剤を熟知している。好都合な溶剤は、脂肪族炭化水素(石油エーテル)、エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフランなどであることがわかっている。
【0060】
本発明による方法において、抽出物のモル比は限定的ではない。芳香族チオエーテルの過剰又はアシル化剤の過剰のどちらか一方を使用してもよい。本発明による方法において、アシル化剤に対する芳香族チオエーテルのモル比は、例えば、1:10から、1:5、1:2、もしくは1:1であるか、又は、逆に、芳香族チオエーテル化合物に対するアシル化剤のモル比は1:10から、1:5、1:2もしくは1:1である。
【0061】
したがって、芳香族チオエーテルの過剰モルが使用される方法;及び、アシル化剤の過剰モルが使用される方法は、興味深い。
【0062】
本発明の主題は、また、アシル化剤に対する芳香族チオエーテルのモル比が1〜10である方法;並びに、芳香族チオエーテルに対するアシル化剤のモル比が1〜10である方法である。
【0063】
ヘテロポリ酸触媒の量は広く変動することができる。触媒は50重量%〜0.01重量%の間の量で、例えば、25重量%〜0.05重量%、特に10重量%〜0.1重量%の間で、有利に適用される。
【0064】
反応温度は、原則として、反応において使用される抽出物及び溶媒の沸点に依存する。前記温度は、好都合に室温から約140℃、例えば25℃〜140℃又は25℃〜100℃、特に40℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃の範囲である。
【0065】
環状アミンで置換されている、式III又はIII’の新規なフェニルアルキルケトンの処理と精製は、一般的に、蒸留、結晶化及び濾過で、周知の方法で実施される。
【0066】
特に興味深いことは、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又は対応するヘテロポリ酸塩の存在下、チオアニソールを無水イソ酪酸と反応させることで2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−プロパノンを合成するための本発明による方法である。
【0067】
本発明の方法によって製造される、芳香族チオエーテルケトンは、例えば、芳香族チオエーテルケトンに対応するアミノ基を導入することで式(IV)又は(IV’)のα−アミノケトン光開始剤化合物を合成するために使用される。例えば、WO 02/42254及びEP 3002(方法H)に記載されているように、例えば、まず芳香族チオエーテルケトン化合物をハロゲン化して、続けてルイス酸の存在下、化合物を第一級又は第二級アミンと反応させることでなされる。
【0068】
【化8】

【0069】
R’3及びR’’3は、上記に定義されたとおり、ハロゲン化後にR3から残っている基、特にメチルであり、すなわち、R3はC1−C24ハロアルキルである。
1、n及びR2は上記と同じ意味を有し、特にR2は、メチルであり;R5及びR6は、互いに独立して、場合によりヒドロキシで置換されたC1−C12アルキル;フェニル、ベンジルであるか、あるいはR5及びR6は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、更なるN原子又はO原子で場合により中断されたC4−C5−アルキレン、例えば、モルホリノ基を形成する。特にR5及びR6は、それらが結合したN原子と一緒になって、モルホリノ基を形成する。Halは、ハロゲン原子、特にCl又はBrである。
【0070】
他の可能性は、ハロゲン化された芳香族チオエーテル化合物(V)又は(V’)を、アルコラート、例えばナトリウムメトキシラートと、及び続いて、第一級又は第二級アミンと反応させて、例えばEP 3002に開示されているようなα−アミノケトン化合物(IV)又は(IV’)を得る。
【0071】
【化9】

【0072】
Hal、R1、n、R2、R’3、R’’3、R5及びR6の意味は、上記のとおりである。
【0073】
本発明は、したがって、α−アミノケトン光開始剤化合物の合成方法であって、上記記載の方法で得られた芳香族チオエーテルケトンを、ハロゲン、特に塩素又は臭素と反応させ、得られたハロゲン化化合物を
(a)ルイス酸の存在下、第一級又は第二級アミンと反応させるか;
あるいは
(b)アルカリアルコラート、特にナトリウムメトキシラート、続いて第一級又は第二級アミンと反応させて、
α−アミノケトン光開始剤化合物を得ることを含む、方法にも関する。
【0074】
したがって、興味深いことは、式(IV):
【0075】
【化10】

【0076】
(式中、R1、R2、n、R’3、R’’3、R5及びR6は上記に定義されたとおりである)
のα−アミノケトン光開始剤化合物の合成方法であって、
式(III):
【0077】
【化11】

【0078】
(式中、R1、R2、n及びR3は上記に定義されたとおりである)
の芳香族チオエーテルケトンを反応させることを特徴とするものであり、
式(I):
【0079】
【化12】

【0080】
(式中、R1、R2及びnは、上記に定義されたとおりである)
のチオエーテルを、
式(II):
【0081】
【化13】

【0082】
(式中、R3は上記に定義されたとおりである)
のアシル化剤と、
ハロゲン、特に塩素又は臭素と反応させ、得られたハロゲン化化合物を
(a)ルイス酸の存在下、第一級又は第二級アミンと反応させるか;
あるいは
(b)アルカリアルコラート、特にナトリウムメトキシラート、続いて第一級又は第二級アミンと反応させる、
方法である。
【0083】
更に、本発明によれば、α−アミノケトン光開始剤化合物の製造のための、上記のとおりの方法で得られた芳香族チオエーテル化合物の使用である。
【0084】
したがって、本発明は、光重合性組成物であって
(A)エチレン性不飽和成分を含む少なくとも1つの化合物、及び
(B)上記の方法で得られた光開始剤化合物、
(成分(B)に加えて、組成物は、他の光開始剤(C)及び/又は他の添加剤(D)も含むことができる)を含む、組成物にも関する。
【0085】
ラジカル光重合性配合物のための適切なエチレン性不飽和化合物は、当業者にとって公知であり、多数の特許、例えばWO 03/091287において公表されている。
不飽和化合物は、1個以上のオレフィン性二重結合を含むことができる。それらは、低分子量(モノマー性の)又は比較的高分子量(オリゴマー性の)であることができる。
光重合性化合物は、それら自体で又は所望の混合物においても使用されてもよい。好ましいのは、ポリオール(メタ)アクリラートの混合物を使用することである。
本発明による組成物に結合剤を加えることも可能であり;これは、光重合性化合物が液体又は粘稠物質である場合、特に有利である。
光開始剤とは別に、光重合性混合物は、また、様々な添加剤(D)を含有することができる。その例は当業者に知られており、例えば、蛍光増白剤、充填材、色素、白と着色した色素の両方、染料、帯電防止剤、湿潤剤又はレベリング補助剤、熱阻害剤、暗所内で貯蔵安定性を増加させる添加剤、使用してもよい光保護剤は紫外線吸収剤であり、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、オキサルアミド又はヒドロキシフェニル−s−トリアジン型のそれらである。立体ヒンダードアミン(HALS)を使用して、又は使用しないで、これらの化合物は個々に又は混合物として使用することができる。
更に、添加物(D)は、レベリング補助剤、アミン、連鎖移動剤、接着増強剤、チオール、チオエーテル、ジスルフィド及びホスフィン、感光剤であり、これらは、感度を移行し及び/又は広げ、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、カンファーキノンばかりでなく、エオシン、ローダミン及びエリスロシン染料である。
添加剤の選択は、問題となる適用分野及びこの分野に要求される特性に依存する。上記添加物(D)は、従来技術において慣用的であり、したがって、従来技術において慣用的な量で使用される。
組成物は、更に、当業者に知られている光開始剤(C)、例えばベンゾフェノン及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール、グリオキサル酸フェニル及びその誘導体、二量体のグリオキサル酸フェニル、ペルエステル、例えばベンゾフェノンテトラカルボン酸のペルエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、例えばビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンタ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドもしくはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド]、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば2−[2−(4−メトキシフェニル)ビニル]−4,6−ビストリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビストリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−メチル−4,6−ビストリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン]、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば2−メルカプトベンゾチアゾールと組み合わせたオルト−クロロヘキサフェニルビスイミダゾール;フェロセニウム化合物もしくはチタノセン、例えばジシクロペンタジエニルビス(2,6−ジフルオロ−3−ピロロフェニル)チタン、も含んでいてもよい。使用してもよい共開始剤は、ボレート化合物である。
【0086】
光重合性組成物は、有利には、組成物に基づいて、0.05〜20重量%、例えば0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜5重量%の光開始剤を含む。述べられた光開始剤の量は、それらの混合物が使用される場合、すべての加えられた光開始剤の総量、すなわち、光開始剤(B)及び光開始剤(B)+(C)の両方に基づく。
【0087】
光重合性組成物は、種々の目的、例えば、印刷インキ、例えばスクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ又はオフセット印刷インキとして、透明コートとして、カラーコートとして、例えば木材や金属のための、白色コートとして、粉末コーティングとして、光学的再生方法のための、ホログラフィックな記録材料のための、画像記録方法又は版面の製造のための、スクリーン印刷のためのマスクの製造のための、塗料として、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧接着剤として、ラミネート樹脂として、フォトレジスト、えば、ガルヴァーニ電流レジスト、エッチング又は永久レジスト、液膜及び乾燥膜の両方として、光構造誘電体として、電子回路用のはんだ遮蔽マスクとして、あらゆる種類のスクリーン用の又はプラズマディスプレイ及び電界発光ディスプレイの製造工程における構造体用のカラーフィルタの製造のためのレジストとして、光スイッチ、光学的回折格子(干渉回折格子)、内部硬化(透明の型のUV硬化)で又はステレオリソグラフィ方法で三次元物体の製造のために、複合材料及び他の厚い層材料の製造のために、ゲルコートの製造のために、電子要素のコーティング又はシーリングのために又は光学ファイバーのためのコーティングとして、使用することが可能である。組成物は、光学レンズ、例えばコンタクトレンズ及びフレネルレンズの製造や医療機器、補助剤又は移植片の製造のために適切である。
当業者は、ラジカル重合可能な組成物のための前記の多様な用途を熟知している。
【0088】
以下の実施例は、更に本発明を説明するが、これらは本発明を実施例に限定することを意図するものではない。ここで、残りの記載及び請求項中のように、特に明記しない限り、部及びパーセントは重量に関する。アルキル基又はアルコキシ基については、それらの異性体の形態を特定せずに述べている場合、n−異性体を意味する。
【0089】
反応は、窒素を用いて、不活性雰囲気下で気密キャップを備えた25mlのガラス反応管を使用するRadley Carousel Reaction Station(商標)中で行われる。
【0090】
実施例1
【0091】
【化14】


の製造
【0092】
チオアニソール4.47g(36mmol)と無水イソ酪酸1.89g(12mmol)をガラス反応管中に入れた。次いで、H4Si(W3104 0.19gを、反応物に加え、ガラス反応管に気密キャップを付けた。ガラス反応管を80℃に加熱した。ガスクロマトグラフィーによる分析(GC)は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が94%であることを示した。
【0093】
実施例2
4Si(W3104をH3P(W3104 0.19gに置き換えた以外は、実施例1の手順を繰り返した。GC分析は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が93%であることを示した。
【0094】
実施例3
チオアニソール1.49g(12mmol)及び無水イソ酪酸5.69g(36mmol)を、ガラス反応管中に入れた。次いで、H4Si(W3104 0.57gを反応物に加え、ガラス反応管に気密キャップを付けた。ガラス反応管を80℃に加熱した。GC分析は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が68%であることを示した。
【0095】
実施例4
4Si(W3104をH3P(W3104 0.19gに置き換えた以外は、実施例3の手順を繰り返した。GC分析は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が76%であることを示した。
【0096】
実施例5
ガラス反応管を45℃に加熱した以外は、実施例1の手順を繰り返した。GC分析は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が80%であることを示した。
【0097】
実施例6
ガラス反応管を45℃に加熱した以外は、実施例2の手順を繰り返した。GC分析は、3時間後に生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が79%であることを示した。
【0098】
実施例7
無水イソ酪酸23.5g(0.15mol)及びチオアニソール56.0g(0.45mol)を、250mlのフラスコ中に入れた。担体触媒(=SiO2担体上の実施例1による触媒)6gを、反応混合物に分割して添加した。添加終了後、温度を90℃(油浴)に上げた。90℃で23時間後、GC分析は、生じた生成物(無水イソ酪酸に基づく)が97.3%であることを示した。
【0099】
実施例8
α−アミノケトン光開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンの合成:
【0100】
8.1:塩素化
【0101】
【化15】

【0102】
HCl(32%)887gを、2Lの反応器中に入れた。実施例1の方法により製造された、チオケトン(99.0%)500g(2.55mol)を、滴下漏斗を使用して滴状で添加した。添加終了後、漏斗をキシレン22gで洗浄した。室温で塩素ガス184.4g(2.6mol)を、2時間にわたって投与した。反応混合物を、一晩撹拌した。その後、キシレン420gを添加し、15分間攪拌後、水相を分離した。有機相に、pHを7〜8に調整するために水150gと炭酸ナトリウム溶液110gを添加した。最後に、水相を分離し、有機溶媒を蒸発させると黄色の油状物としてクロロチオケトン578.1g(94.4%)を得た。
【0103】
8.2:エポキシ化
【0104】
【化16】

【0105】
室温で、ナトリウムメトキシド溶液223gを、1Lの反応器中に入れ、撹拌した。キシレン160gに溶解した、8.1で製造した、クロロ−チオケトン250gを、滴下漏斗を使用して3時間以内で、滴状で添加した。その後、反応混合物を50℃に加熱した。水338gを加えた。最後に、水相を分離し、有機溶媒を蒸発させると黄色の油状物としてエポキシド241.8g(96.2%)を得た。
【0106】
8.3:エポキシ環の開環
【0107】
【化17】

【0108】
室温で、8.2で製造した、エポキシド241.8gを、1Lの反応器中で、モルホリン223g中に溶解し、水酸化カルシウム2.7gと混合した。反応混合物を125〜138℃に加熱し、生じたメタノールを20時間にわたって連続的に留去した。その後、残りのモルホリンを蒸発させると、α−アミノケトン光開始剤294.4gが得られ、これをメタノールから結晶化すると、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン248.8g(90.2%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族チオエーテルケトンの合成方法であって、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩の存在下で、芳香族チオエーテルをカルボン酸、ハロゲン化物又は無水物からなる群より選択されるアシル化剤と反応させることを含む、方法。
【請求項2】
芳香族チオエーテルが、式(I)
【化1】


(式中
nは、0〜4の数字であり;
1は、同一又は異なる1以上の置換基を表し;
2は、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の、非置換もしくは置換された非環式の脂肪族基;飽和もしくは不飽和の、単環もしくは多環の、非置換もしくは置換された脂環式基;環式の置換基を有する飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝状の、非置換もしくは置換された脂肪族基;又は非置換もしくは置換された、単環もしくは多環式の芳香族基;である1〜24個の炭素原子を含有する炭化水素基を表すか、
1及びR2は一緒になって、場合により硫黄原子以外に更なるヘテロ原子を含む、非置換又は置換された環を形成する)
である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
芳香族チオエーテル化合物が、チオアニソール、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、フェニルn−プロピルスルフィド、ベンジルフェニルスルフィド、フェニルβ−フェニルエチルスルフィド、フェニル3−フェニルプロピルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、フェニルプロパルギルスルフィド、メタリルフェニルスルフィド、ビス(フェニルチオ)メタン、1,3−ビス(フェニルチオ)プロパン、1,2−ビス(フェニルチオ)エタン、1,1,3−トリス(フェニルチオ)−1−プロペン、クロロメチルフェニルスルフィド、2−クロロエチルフェニルスルフィド、3−クロロプロピルフェニルスルフィド、2−ブロモエチルフェニルスルフィド、ブロモメチルフェニルスルフィド、4−フルオロベンジルフェニルスルフィド、1−クロロ−4−フェニルスルファニルベンゼン、2−(フェニルチオ)エタノール、メトキシメチルフェニルスルフィド、2−メトキシエチルフェニルスルフィド、アジドメチルフェニルスルフィド、フェニルチオアセトニトリル、1−[(フェニルチオ)メチル]ピペリジン、4−[(フェニルスルファニル)メチル]アニリン、(フェニルチオ)酢酸、3−(フェニルスルファニル)プロピオン酸、4−(フェニルスルファニル)酪酸、2−フェニルメルカプトメチル安息香酸、メチル(フェニルチオ)アセタート、エチル(フェニルチオ)アセタート、(フェニルチオメチル)トリメチルシラン、2−[(フェニルチオ)メチル]−2−シクロペンテン−1−オン、(フェニルチオ)プロパノン、フェニルフェナシルスルフィド、ジエチルフェニルチオメチルホスホナート、フェニルチオメチル、α−(フェニルチオ)アセトアミド、3−(フェニルチオ)プロピオンアミド、2−(フェニルチオ)エタンチオアミドである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
アシル化剤が、式(II)
【化2】


(式中、
3は、1〜24個の炭素原子を含有する、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の非置換もしくは置換された脂肪族基;3〜8個の炭素原子を含有する、単環もしくは多環の、飽和もしくは不飽和の、非置換もしくは置換された脂環式基;又は環式の置換基を有する、直鎖もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族基;又は3〜10個の炭素原子を含有する、単環もしくは多環である、非置換もしくは置換された芳香族基を表し;
Yは、ハロゲン原子、ヒロドキシル基、基−O−COR4、又は−O−SO2−R4を表し;
4は、R3について示された意味の1つを有するか、又は1個以上のOで中断され、場合によりハロゲンで置換されたC1−C24アルキルであり;あるいは
3及びR4は一緒になって、少なくとも2個の炭素原子を含有する二価の直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和の脂肪族基を形成する)
である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
アシル化剤が、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水トリフルオロ酢酸、無水安息香酸、無水モノクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
触媒が、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩又はそれらの混合物であり、ここで、ヘテロポリ酸が、P、Si、B、Ge、Asを含む中心原子、及びMo又はW又はそれらの混合物を含む配位原子を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ヘテロポリ酸が、シリカ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、炭素、ヒドロタルサイト型アニオン粘土又は酸化アルミニウムで担持されている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ヘテロポリ酸塩が、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Fe、La、Ce、Cu、Zn、Al、アンモニウム又はそれらの混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応温度が、室温から140℃、好ましくは40℃〜80℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸塩又はそれらの混合物の量が、50重量%〜0.01重量%、好ましくは10重量%〜0.1重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
芳香族チオエーテルの過剰モルが用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
アシル化剤の過剰モルが用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
アシル化剤に対する芳香族チオエーテルのモル比が1〜10である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
芳香族チオエーテルに対するアシル化剤のモル比が1〜10である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
請求項2記載の式(I)の芳香族チオエーテルを、請求項4記載の式(II)のアシル化剤と反応させることで、芳香族チオエーテルケトンを合成する方法。
【請求項16】
芳香族チオエーテルがチオアニソールである、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
アシル化剤が無水イソ酪酸である、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ヘテロポリ酸が、H4Si(W3104又はH3P(W3104である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸含有の固体担体又はヘテロポリ酸の対応する塩の存在下で、チオアニソールを無水イソ酪酸と反応させることで、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−プロパノンを合成するための、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
α−アミノケトン光開始剤の合成方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法で得られる芳香族チオエーテルケトンを、ハロゲン、特に塩素又は臭素、と反応させ、得られたハロゲン化化合物を、
(a)ルイス酸の存在下で、第一級又は第二級アミンと反応させるか;
あるいは、
(b)アルカリアルコラート及び続いて第一級又は第二級アミンと反応させて、
α−アミノケトン光開始剤化合物を得ることを含む、方法。
【請求項21】
α−アミノケトン光開始剤化合物の製造のための、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法で得られた芳香族チオエーテル化合物の使用。
【請求項22】
(A)エチレン性不飽和成分を含む少なくとも1つの化合物、及び、
(B)請求項20記載の方法で得られた光開始剤化合物
を含む光重合性組成物。

【公表番号】特表2008−514671(P2008−514671A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534001(P2007−534001)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054638
【国際公開番号】WO2006/034966
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】