説明

芳香族トリカルボン酸

【課題】新規な芳香族トリカルボン酸を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される芳香族トリカルボン酸。


[式中、Xはメトキシ基、アミノ基、イソシアノ基又はヒドロキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族トリカルボン酸に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族トリカルボン酸は、機能性材料の原料としての用途や、医薬中間体としての用途等、多様な用途が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−136300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な芳香族トリカルボン酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される芳香族トリカルボン酸を提供する。
【化1】


[式中、Xはメトキシ基(OCH)、アミノ基(NH)、イソシアノ基(NCO)又はヒドロキシル基(OH、「水酸基」ともいう。)を示し、nは0〜3の整数を示す。]
【0006】
また、上記一般式(1)中のXはヒドロキシル基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な芳香族トリカルボン酸が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る芳香族トリカルボン酸の好適な実施形態について説明する。
【0009】
本実施形態に係る芳香族トリカルボン酸は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化2】


[式中、Xはメトキシ基(OCH)、アミノ基(NH)、イソシアノ基(NCO)又はヒドロキシル基(OH)を示し、nは0〜3の整数を示す。]
【0010】
一般式(1)中のXとしては、製造の容易さの点から、ヒドロキシル基が好ましい。
【0011】
一般式(1)中のnは、有機溶媒への溶解性の観点から、0又は1であることが好ましい。
【0012】
一般式(1)で表される芳香族トリカルボン酸において、カルボキシル基(COOH)とベンゼン環との結合位置は特に制限されないが、下記一般式(2)で表されるものがより好ましい。
【0013】
【化3】


[式中、Xはメトキシ基、アミノ基、イソシアノ基又はヒドロキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。]
【0014】
次に、本実施形態に係る芳香族トリカルボン酸の好適な製造方法について説明する。
【0015】
本実施形態に係る芳香族トリカルボン酸は、例えば、下記スキーム1に示す反応工程により製造することができる。
【0016】
【化4】


[式中のAは17族元素を、XはOCH、NH、NCO、OH基を示し、Meはメチル基を示し、nは0〜3の整数を示す。]
【0017】
出発原料であるトリハロ化合物は市販品を用いても良いし、合成して用いても良い。
【0018】
反応スキーム1のステップ(1)では、芳香族トリカルボン酸の前駆体である芳香族トリカルボン酸トリメチルを合成する。たとえば、2,4,6−トリブロモフェノールと4−メトキシカルボニルフェニルボロン酸とをパラジウムテトラキストリフェニルホスフィンを触媒に用いたカップリング反応によって、合成できる。
【0019】
反応スキーム1のステップ(2)では、ステップ(1)で得られたエステルを加水分解することによって、芳香族トリカルボン酸を合成することができる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス4−メトキシカルボニルフェノールと水酸化カリウムなどの塩基とをメタノール/水中で還流することで、合成できる。
【0020】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
下記工程1−1〜1−2により、下記式(3)で表される化合物を合成した。
【化5】

【0023】
[工程1−1:2,4,6−トリス−(4−カルボキシフェニル)フェノールの合成]
反応容器にゴードー(株)製のN,N−ジメチルホルムアミド(1000mL)、水(670mL)を入れ、アルゴンガスをバブリングし、溶存酸素を除去した。30分後、バブリングを停止し、アルゴン雰囲気下東京化成工業(株)製の2,4,6−トリブロモフェノール(167.00g)、シグマ−アルドリッチ社製の4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(299.82g)、ナカライテスク社製の炭酸ナトリウム(256.84g)、エヌ・イーケムキャット社製のパラジウムジクロロビストリフェニルホスフィンを添加し、60℃で加熱攪拌した。12時間後、TLCで反応追跡したところ、原料の消失を確認した。室温まで放冷後、反応液に純水(7L)を添加し、更に濃塩酸でpH2(Univ.)に調整した。晶析した結晶を濾取し、更にメタノール(1.5L)で30分間分散洗浄し、濾取乾燥し、319.74gの粗生成物を得た。これをシリカゲルカラム(φ:110mm、重量:2200g、展開溶媒:クロロホルム)で精製後、濃縮残渣にメタノールを加え、ろ過、乾燥し、白色固体の目的物を187.42g得た。(収率:74.8%)
【0024】
得られた2,4,6−トリス−(4−カルボキシフェニル)フェノールのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=8.17(d,J=8.2Hz,4H,Ar),8.09(d,J=8.2Hz,2H,Ar),7.69(d,J=8.2Hz,4H,Ar),7.68(d,J=8.2Hz,2H,Ar),7.59(s,2H,Ar),5.50(s,1H,OH),3.95(s,6H,COOCH),3.93(s,3H,COOCH
【0025】
[工程1−2:2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニルフェ)フェノールの合成]
反応容器に2,4,6−トリス(4−メトキシカルボニル)フェノール(187.00g)、関東化学(株)製の水酸化カリウム(76.08g)、純水(1870mL)を入れ、加熱還流下攪拌した。2時間後、TLCで反応追跡したところ、原料の消失を確認した。室温まで放冷後、不溶物を濾去した。得られた母液に氷冷下濃塩酸を滴下し、pH2(Univ.)に調整した。晶析した結晶を遠心分離(回転速度:3100rpm、時間:5分、温度:4℃)にかけ、母液を除去後、純水で5回洗浄した。得られた湿結晶を60℃で18時間通風乾燥した後、乳鉢で粉砕した。この粉末結晶を更にイソプロピルエーテルで分散洗浄、乾燥し、微褐色粉末の目的物を151.83g得た。(収率:88.8%)
【0026】
得られたトリ(4−ブロモフェニル)ホスフィンのH−NMR、13C−NMR、MSの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=12.93(bs,2H,COOH),8.95(bs,1H,COOH),8.02(d,J=8.2Hz,4H,Ar),7.98(d,J=8.4Hz,2H,Ar),7.88(d,J=8.4Hz,2H,Ar),7.77(d,J=8.2Hz,4H,Ar),7.65(s,2H,Ar)
13C−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=167.26(COOH),167.19(COOH),151.15(Ar),143.69(Ar),142.81(Ar),131.60(Ar),130.83(Ar),129.90(Ar),129.72(Ar),129.43(Ar),129.26(Ar),129.09(Ar),128.91(Ar),126.74(Ar)
MS:m/z=454.18(M
【0027】
(実施例2)
下記工程2−1〜2−2により、下記式(4)で表される化合物を合成した。
【化6】

【0028】
[工程2−1:2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)フェノールの合成]
東京化成工業(株)製の2,4,6−トリブロモフェノール(330mg、1.0mmol)、アセンテック科学社製の4−[4−(ジヒドロキシボラニル)フェニル]安息香酸メチル(1.15g,4.5mmol)、シグマアルドリッチ社製の酢酸パラジウム(4.8mg,0.021mmol)、和光純薬工業(株)製の炭酸ナトリウム(635.9mg,6.0mmol)を20mLシュレンクに加え、純水/N,N−ジメチルホルムアミド混合溶媒(混合比は7/6)13mLを加え、60℃で12時間攪拌した。反応後の溶液を分液ロートに移し、水とエーテルを加えて二層の均一な溶液とした。その後、50mLのエーテルで4回抽出を行い、エーテル層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過、濃縮して白色の粉状生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ジエチルエーテル(1/1))で分離し、得られた白色粉状生成物を更にメタノールで再結晶することで、白色の針状結晶として目的物を0.45g得た。(収率62%)
【0029】
得られた2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)フェノールのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=7.95−7.93(m,6H,Ar),7.76−7.74(m,6H,Ar),7.49(s,2H,Ar),7.27−7.23(m,12H,Ar),5.40(s,1H,OH)3.95(s,6H,COOCH),3.89(s,3H,COOCH
【0030】
[工程2−3:2,4,6−トリス−(4−カルボキシ−4,4’−ビフェニル)フェノールの合成]
100mLナスフラスコに2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)フェノール(360mg,0.50mmol)、和光純薬工業(株)製の水酸化カリウム(281mg,5.0mmol)を加え、メタノール/純水混合溶媒(混合比は1/1)50mLを加えて、18時間還流した。反応終了後の溶液に濃塩酸を2mL加えると、目的物が白色沈殿として析出したのでそれを濾取し、水(10mL)で2回洗浄し、真空乾燥することで、微褐色の粉状生成物として目的物を収量0.290g得た。(収率85%)
【0031】
得られた2,4,6−トリス−(4−カルボキシ−4,4’−ビフェニル)フェノールのH−NMR、13C−NMR、MSの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=8.19−8.14(m,6H,Ar),7.87−7.83(d,6H,Ar),7.50(s,2H,Ar),7.32−7.28(m,12H,Ar)
13C−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=169.3(COOH),168.0(COOH),152.8(Ar),145.5(Ar),139.7(Ar),136.5(Ar),130.0(Ar),129.1(Ar),128.2(Ar),127.8(Ar),127.5(Ar),127.2(Ar),126.5(Ar)
MS:m/z=682.21(M
【0032】
(実施例3)
下記工程3−1〜3−2により、下記式(5)で表される化合物を合成した。
【化7】


[工程3−1:2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)−1−メトキシ−ベンゼンの合成]
シグマアルドリッチ社製の2,4,6−トリブロモ−1−メトキシベンゼン(572.9mg、1.0mmol)、シグマアルドリッチ社製の4−メチルカルボニルフェニルボロン酸(1.64g,9.0mmol)、シグマアルドリッチ社製の酢酸パラジウム(4.7mg,0.021mmol)、和光純薬工業(株)製の炭酸ナトリウム(635.5mg,6.0mmol)を20mLシュレンクに加え、純水/N,N−ジメチルホルムアミド混合溶媒(混合比は7/6)13mLを加え、60℃で12時間攪拌した。反応後の溶液を分液ロートに移し、水とエーテルを加えて二層の均一な溶液とした。その後、50mLのエーテルで4回抽出を行い、エーテル層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過、濃縮して白色の粉状生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ジエチルエーテル(3/2))で分離し、得られた白色粉状生成物を更にメタノールで再結晶することで、白色の針状結晶として目的物を0.260g得た。(収率51%)
【0033】
得られた2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)フェノールのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=7.95−7.94(m,4H,Ar),7.88−7.87(m,2H,Ar),7.76−7.75(m,2H,Ar),7.72−7.20(m,4H,Ar),7.56(s,2H,Ar),3.90(s,6H,COOCH),3.88(s,3H,COOCH),3.83(s,3H,OCH
【0034】
[工程3−2:2,4,6−トリス−(4−カルボキシ−4,4’−ビフェニル)−1−メトキシベンゼンの合成]
100mLナスフラスコに2,4,6−トリス−(4−メトキシカルボニル−4,4’−ビフェニル)フェノール(255.3mg,0.50mmol)、和光純薬工業(株)製の水酸化カリウム(280mg,5.0mmol)を加え、メタノール/純水混合溶媒(混合比は1/1)50mLを加えて、18時間還流した。反応終了後の溶液に濃塩酸を2mL加えると、目的物が白色沈殿として析出したのでそれを濾取し、水(10mL)で2回洗浄し、真空乾燥することで、微褐色の粉状生成物として目的物を収量0.211g得た。(収率90%)
【0035】
得られた2,4,6−トリス−(4−カルボキシ−4,4’−ビフェニル)フェノールのH−NMR、13C−NMR、MSの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=8.11−8.10(m,4H,Ar),8.06−8.05(m,2H,Ar),7.89−7.88(m,2H,Ar),7.85−7.84(m,4H,Ar),7.55(s,2H,Ar),3.86(s,3H,OCH
13C−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=169.5(COOH),168.3(COOH),146.2(Ar),143.0(Ar),129.8(Ar),129.2(Ar),127.7(Ar),127.3(Ar),126.5(Ar),126.1(Ar),59.2(Ar)
MS:m/z=468.13(M
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る芳香族トリカルボン酸は、機能性材料の原料、医薬中間体などの様々な用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香族トリカルボン酸。
【化1】


[式中、Xはメトキシ基、アミノ基、イソシアノ基又はヒドロキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)中のXがヒドロキシル基である請求項1記載の芳香族トリカルボン酸。

【公開番号】特開2012−6855(P2012−6855A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142930(P2010−142930)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】