芳香族ポリマーを含むポリマーアロイおよびその製造方法
【課題】芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイを提供する。
【解決手段】一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするポリマーアロイ。
【解決手段】一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするポリマーアロイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリマーを含むポリマーアロイ、およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、芳香族ポリマーAと,ポリカーボネート(成分B;以下「PC」と略称する場合がある)とを含むポリマーアロイ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドから容易に合成できる熱硬化性ポリマーであり、ベークランドによって1900年代初頭に実用化された最初の人工プラスチックである。フェノール樹脂は優れた耐熱性、機械特性、耐薬品性、絶縁性を有しておりかつ安価なため多くの工業製品の材料として使われることになった。
【0003】
しかしながら、従来の「フェノール樹脂」の用途においては、現在では成形性の勝る汎用プラスチック、高い機能性を狙い設計されてきたエンジニアプラスチックに置き換わってしまった部分も多い。これは、フェノール樹脂のもつ重合制御の難しさや、不溶性や透明性の低さなどの材料としての扱いにくさに原因がある。
【0004】
本発明者らは、最近、新しい性能を有する芳香族ポリマーを含有する組成物を提案している。例えば、特開2009−24131号公報に開示されたポリアリーレンメチレン類を含有する組成物や、特開2009−24302号に開示された、アルコキシ基含有フェニレンアルキレン樹脂をフィラーとして含む組成物が挙げられる。これらの組成物に含まれる、新しい性能を有する芳香族系ポリマーの特徴等に関しては、例えば、総説(小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年)に纏められている。
【0005】
しかしながら、従来技術においては、芳香族系ポリマーとポリカーボネート(以下、「PC」と略称することもある)との両方を含む組成物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−24131号公報
【特許文献2】特開2009−24302号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができる、芳香族ポリマーを含むポリマーアロイを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究の結果、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明のポリマーアロイは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするものである。
【0012】
(芳香族ポリマーA)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0015】
【化2】
【0016】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0017】
【化3】
【0018】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
【0019】
(ポリカーボネート類)
本発明においては、ポリカーボネート類(成分B)として、下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類を好適に使用することができる。ここに、「ビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類」は、該ビスフェノールAユニットと共重合したものでも良く、また「ポリ(ビスフェノールAカーボネート)」とブレンドしたものであっても良い。本発明において、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)ないしは、「ビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類」の分子量は、数平均分子量で、8,000以上が好ましく、更に好ましくは10,000〜200,000(特に好ましくは10,000〜100,000)である。
【0020】
【化4】
【0021】
なお、本発明のポリマーアロイが示すことができる「相溶性」(miscibility)は、後述するように、混和性(compatibility)とは明確に区別される特性である。
【0022】
本発明の芳香族系ポリマーは、上述した特許第4177685号に開示されたフェノール系ポリマーや、再表2005−103105号公報に開示された立体規則性芳香族系ポリマーと比較して、明らかに優れた透明性を有する。換言すれば、本発明の芳香族系ポリマーは、目視による着色性の有無で、上述した従来のフェノール系ポリマーとは明確に区別することができる。
【0023】
更に付言するならば、フェノール樹脂は、従来より、成形加工の点から、低分子量のノボラックやレゾールを用いて熱硬化させる方法に特化されてきたと言える。高分子量でかつ熱可塑で、光学材料に用いるという発想は、本発明が初めてである。これまでにフェノール樹脂単独でのフィルム化への試みは存在するが、ポリベンゾオキサジンからのフィルムであって、ポリマーの主鎖構造がフェノール樹脂とは異なり、かっ透明光学材料を指向したものではない(竹市力ら、High performance Polybenzoxazines as a Novel Type of Phenolic ReSin,PoJym J.第40巻、1121頁(2008))。
【0024】
上述の着色性に加えて、本発明のポリマーアロイを構成する芳香族系ポリマーは、上述したフェノール系ポリマーと比較して、明らかに優れたフィルム形成性を有する。
【0025】
本発明において、例えば、1,3,5−トリメトキシベンゼンや3、4、5−トリメトキシベンゼン由来のポリマーに代表されるフェノール樹脂をポリマーブレンドに用いることができる理由として、本発明者の知見によれば、(上記した非特許文献1の第58頁に記載されたような)本来のフェノール樹脂の構造特性とは異なり、ベンゼン環上の立体障害により、高分子鎖が折りたたまれず開いた形態を示すためと推定される。
【0026】
本発明において、立体規則性とは、隣り合うベンゼン環の位置関係に規則性があるということであり、たとえば1.3,5−トリメトキシベンゼンや3、4、5−トリメトキシベンゼン由来のポリマーの場合、ベンゼン環どうしが直交した位置関係にある。この場合、高分子鎖は折りたたまれにくく、溶液中でもフィルム中でもランダムコイルから棒状の中間の形態をとりやすくなる。ポリカーボネートとの分子レベルでの混和性の要因は、(様々な因子があり得るが)本発明者の知見によれば、この性質も大きな寄与があると推定されている。本発明者の知見によれば、さらにブレンドフィルムが、フェノール系ポリマーの形状やガラス転移点の高さが、ポリカーボネート単独のフィルムに対して大幅な強度や安定性の低下を起こさないことに寄与すると推定される。
【0027】
これまで、フェノール系高分子で本発明のような立体規則性の高分子がほとんど知られていなかったのは、本発明者らの知見によれば、例えば、レゾルシノール類がアルデヒド類と重合した場合、環状オリゴマー(カリックスアレーン)が生成するかゲル化してしまい、線状高分子を得ることが極めて難しかったからと推定される。
【0028】
これに対して、本発明においては、線状高分子を優先的に成長させることができる。なお、条件により環状オリゴマー(カリックスレゾルシンアレーン)を製造することも可能である。特に、カリックス[4]レゾルシンアレーン誘導体では合成例の少ないサドル型コンフォメーションを示す場合がある。従来のカリックスとは水酸基の方向性が大きく異なるため、三次元的なネットワーク構造を示す機能材料のビルディングブロックとして期待できる。
【0029】
本発明においては、汎用高分子であるノボラックの製造と同様のフェノール/ホルムアルデヒド縮合(付加縮合)を使用することが極めて容易であり、反応条件も穏和な場合が多いため工業的に実施しやすく、原料も比較的安価に得られるものが多い。また本発明のポリマーアロイは、置換基の種類により優れた有機溶媒または水への溶解性を示すことができ、またフィルム形成能などの優れた加工性を有している。各種機能材料の出発原料としても有用である。
【発明の効果】
【0030】
上述したように本発明によれば、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイが提供される。
【0031】
一般的に、PCは硬いが、表面がキズ付きやすいという欠点を有する。しかしながら、本発明の芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイは、このPCの欠点を解消するか、ないしは著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(ポリマーA)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(ポリマーA)のIRスペクトルである。
【図3】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の熱分析(DSC)チャートである。
【図4】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の熱分析(TGA)チャートである。
【図5】本発明で得られるポリマーブレンドの一例の熱分析(DSC)チャートである。
【図6】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクトルである。
【図7】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクトルである。
【図8】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクト
【図9】本発明で得られるポリマーブレンドの数例の熱分析(DSC)チャートである。
【図10】本発明で得られるポリマーブレンドの屈折率を示すグラフチャートである。
【図11】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)のIRスペクトルである。
【図12】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)の1H−NMRスペクトルである。
【図13】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)のIRスペクトルである。
【図14】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0034】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0035】
(ポリマーアロイ)
本発明のポリマーアロイは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、アルコキシ基を1つ以上有する芳香族ポリマー(成分A)と;ポリカーボネートBとから、それぞれの1種類以上を含むものである。
【0036】
(芳香族ポリマーA)
芳香族ポリマーAは、下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマーである。
【0037】
【化5】
【0038】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0039】
【化6】
【0040】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0041】
【化7】
【0042】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である)。
【0043】
(ポリカーボネートB)
ポリカーボネートBは、下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類である。
【化8】
【0044】
(芳香族系ポリマーAおよびポリカーボネートを与えるべきモノマー)
本発明の芳香族系ポリマーを与えるべきモノマーは特に制限されない。例えば、ベンゼン環1つにつき,アルコキシ基を1〜4個有するモノマーを出発原料として好適に使用可能である。更に、立体規則性を有し、低複屈折の実現の点からは、下記(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類を与えるモノマーから選ばれる1以上のモノマーが特に好適に使用可能である。
【0045】
【化9】
【0046】
(透明度)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの透明度を有する。この透明度は、透過率で好適に表すことができる。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上((a)〜(c)のいずれか1つの領域において、更には94%以上、特に96%以上、とりわけ98%以上)であることが好ましい。この透過率は、下記(a)〜(c)の領域の2以上(特に3領域の全て)において、透過率の値が好適な値(例えば、90%以上)であることが好ましい。
【0047】
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
【0048】
このようなUV−可視スペクトルは、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0049】
(屈折率)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの屈折率を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、1.52以上、更には1.55以上(特に1.57以上)の屈折率を有することが好ましい。この屈折率は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0050】
(複屈折)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの複屈折を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、0.005以下、更には0.002以下(特に0.001以下)の複屈折を有することが好ましい。この複屈折は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0051】
(アッベ数)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルのアッベ数を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、25以上、更には28以上(特に30以上)のアッベ数を有することが好ましい。また、本発明の芳香族系ポリマーは、50以下、更には40以下(特に35以下)のアッベ数を有することが好ましい。このアッベ数は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0052】
(分子量)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、1000以上、更には5,000〜20,000程度(特に8,000〜20,000程度)の数平均分子量を有することが好ましい。この分子量は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
[ポリマーの合成方法]
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAの合成方法は、特に制限されない。安価で着色が少ないポリマーを簡便に合成可能な点からは、該合成は,ホルムアルデヒドに代表されるアルデヒド類を酸または塩基触媒を用いて縮合することが好ましい(このような合成方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、WO 2005/103105号を参照することができる)
【0053】
[光学フィルムの作製について]
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAを使用するフィルム作製方法は、特に制限されない。簡便な操作の点からは、下記の方法のいずれかを使用することが好ましい(このようなフィルム作製方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、野瀬卓平ほか「有機・高分子測定ラボガイド」講談社サイエンティフィク(2006年)を参照することができる)。
【0054】
(1)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,キャストする方法
(2)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,スピンコーティングする方法
(3)ポリマーを融解しプレスする方法
【0055】
(ポリマー合成例A)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0056】
【化10】
【0057】
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
【0058】
【表1】
【0059】
(ポリマー合成例B)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0060】
【化11】
【0061】
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
【0062】
【表2】
【0063】
(ポリマー合成例C)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0064】
【化12】
【0065】
上記により、得られた直鎖状フェノール樹脂はポリマーにもかかわらずモノマーに匹敵するほどシャープな1HNMRスペクトル(図1に示す)を示した。
【0066】
上記により、下記表に示す633nm屈折率、複屈折率およびアッベ数のデータが得られた。屈折率の値はλ=633nmの値であり、複屈折率はスピンコートで製膜したフィルムのものを測定した値である。
【0067】
【表3】
【0068】
上記により、図10に示す透過率のデータが得られた。すなわち、ポリカーボネートと同様の屈折率を持ち、複屈折も低いポリマーが得られた。
【0069】
(成分AとBの量比)
ポリマーアロイを形成可能である限り、該ポリマーアロイを構成する成分Aと成分Bとの量比は、特に制限されない。ガラス代替用光学樹脂としての好適な利用の点からは、成分Aの100質量部に対して、成分Bが200質量部以上、更には200〜5000質量部(特には1000〜5000質量部)であることが好ましい。
【0070】
(混和性)
見た目が「透明」(光の波長による)であるのが、混和性(compatible)である。このcompatibleの状態では、DSCでTg(ガラス転位点)を測定すると「2山」を有するグラフを示す。
【0071】
(相溶性)
他方、分子レベルで実際に相溶するのが、相溶性(miscible)である。このmiscibleの状態では、DSCでTgを測定すると「1山」を有するグラフを示す。液体に喩えれば、エタノール/水系と同様の状態である。
【0072】
(ポリマーアロイの形成方法)
上記した好適な特性を満たすポリマーアロイが得られる限り、本発明のアロイの形成方法は特に制限されない。すなわち、それ自体は公知のポリマーアロイの形成方法から適宜選択して利用することができる。実用的な観点からは、下記方法が好適に使用可能である(なお、ポリマーアロイの形成方法の詳細に関しては、例えば文献:「ポリマーアロイとポリマーブレンド」、レセツク・A・ウトラツキ著、西敏夫訳、東京化学同人(1991年)を参照することができる)。
【0073】
(ポリマーアロイの好適な形成方法)
ポリマーAと、ポリカーボネートBとを、所望の混合比で、成分Aおよび成分Bの良溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解させる。その後、得られたポリマー溶液を、成分Aおよび成分Bの貧溶媒(例えば、メタノール)に再沈殿させ、真空乾燥することにより、ポリマーアロイ(ブレンドポリマー)を得る。
【0074】
(ポリマーAとPCとの相溶性/混和性の例)
後述する実施例2と同様の条件下で、PCとの相溶性/混和性を調べた例を、図5および図9のグラフ(混合物から得られたDSCチャート)に示す。
【0075】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0076】
[使用実験機器]
【0077】
[使用実験機器]
(1)1H NMR、13C NMRスペクトルはJEOL社製のLNM−EX400を用い、TMSを基準物質とし測定した。
【0078】
(2)FT−IRスペクトルはJASCO社製のFT−IR 460 plus spectrometerを用い測定した。
【0079】
(3)UV−VisスペクトルはBECKMAN COULTER社製DU 800 SPECTROMETERを用い測定した。
【0080】
(4)GPCにはJASCO社製UV−2070検出器とRI−2031検出器、TOSOH社製TSK−gel GMH−HRカラムを用い、THFを展開溶媒にして行った。検量線作成は標準ポリスチレンを用いた。
【0081】
(5)熱重量分析にはSII社製TG/DTA 6200を用い、窒素下で昇温速度は10 oC/minで行った。
【0082】
(6)示差走査熱量測定にはSII社製DSC 6220を用い、窒素下で昇温速度は10oC/MINで行った。
ポリマーのフィルムの作成はMIKASA社製Spincoater 1H−DTを用い行った。
【0083】
実施例1
[ポリマーA合成:1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
50mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(3.36g,20mmol)とパラホルム(0.63g,20mmol)を入れ、THF(20mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(4mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で3時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(2.89g)を得た。
【0084】
Mn=7,200,Mw/Mn=12,400(GPC,eluent:THF,polystyrenestandards);IR(KBr):3447(νO−H−CH2OH),2938,2830(νC−H−CH3),1595,1455(νc−cPh),1197,1106,1027(νC−O−CAr−O−C);1HNMR(400MHz,CDCl3,δ,ppm):3.40−3.87(s,9H,Ar−OCH3),3.75−3.87(s,2H,Ar−CH2−Ar)6.05−6.12(s,1H,Ar−H1),
【0085】
実施例2
[ポリマーのブレンド]
ポリマーA(1g)とポリカーボネート(1g)(注1)をクロロホルム(1mL)に溶解させる。その後、メタノールに再沈殿させ、真空乾燥してブレンドポリマーを得た。
同様に質量混合比、1:9、2:8、4:6、6:4、8:2、9:1のブレンドポリマーも作成した。
注1:ポリカーボネートは、ALDLICH社製 製品番号181625−250Gを使用した。
【0086】
実施例3
[ブレンドポリマーのDSC測定]
DSC測定により得られた結果を表4にまとめた。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例4
[ポリマーA合成:3,4,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
100 mLナスフラスコに、3,4,5−トリメトキシベンゼン(9.10 g, 50 mmol)とパラホルム(1.575 g, 50 mmol)、酢酸(20 mL)を入れ攪拌した。この溶液に濃硫酸(3 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下した。この溶液を室温において攪拌していくと、ゲル状の不溶な物質が浮かんでくる。これにクロロホルム(20 mL)をさらに加え、室温で5時間攪拌した。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(7.60 g)を得た。
【0089】
Mn= 12,600,Mw/Mn= 1.7 (GPC, eluent: THF,polystyrene standards);IR (KBr): 3448 (νO−H −CH2OH), 2935,2828 (νC−H −CH3), 1570,1461 (νc−c Ph), 1197,1099,1046 (νC−O−C Ar−O−C); 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 1.97(3H, Ar−CH3 ), 3.47(6H, Ar−OCH3−3,5), 3.77(6H, Ar−OCH3−4), 3.94(2H, Ar−CH2−Ar)
【0090】
実施例5
[ポリマーAのフィルムの作成]
ポリマー(0.5g)をジクロロエタン(1mL)に溶解させ、更に1時間攪拌を続けた。得られた溶液を、ろ過しスピンコーターを用い合成石英製の基板上に製膜した(条件は,1000rpm,15sec,および2000rpm,10sec)。得られた薄膜を真空下で乾燥した。
【0091】
実施例6
[ポリマーAの屈折率の測定]
プリズムカップラー法により屈折率を測定した。平均の屈折率navはnav=[(2nTE2+nTM2)/3]1/2から求め、複屈折はnTEとnTMの差より求めた。測定した波長は633nm、845nm、1558nmであり、これらの波長の屈折率をCauchyの式(nλ=n∞+D/λ2)にフィッティングし屈折率分散係数Dと絶対屈折率nλを求めた。アッベ数は求めたDとnλを用いCauchyの式より、486.1nm、589.2nm、656.3nmの屈折率を計算で求め、アッベ数の定義(νd=(nd−1)/(nF−nC))より算出した。
【0092】
[屈折率の測定結果]
下記のテーブルに示す。
【0093】
【表5】
【0094】
上記表中、屈折率は633nmの波長で測定した値である
【0095】
複屈折はスピンコーター(1000rpm,15sec,2000rpm,10sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値
【0096】
実施例7
[従来のフィルムとの透過率の違い]
下図に示すとおりポリマーAのフィルムでのUV−Visスペクトルを計測し、可視光領域の486.1nm、589.2nm、656.3nmの光線における透過率を比較した。
【0097】
比較したものはポリマーAと従来の特許公報(WO 2005/103105)で合成されたA’のフィルムであり、膜厚は各々が51マイクロメートル、49マイクロメートルのものを使用した。
【0098】
【表6】
【0099】
実施例8
[モノマー合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン]
200mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(2.0g, 12 mmol)とエンカメチレン(80 mL)、メタノール(20 mL)を加え攪拌した。この溶液にテトラブチルアンモニウムトリブロミド塩(6.36 g, 13.2mmol)をゆっくり加え、室温で10分攪拌させた。攪拌停止後、エバポレーターにより溶媒を飛ばし、残留物に水(20 mL)を加え、ジエチルエーテル(40 mL, 三回)により抽出した。エバポレーター溶媒を飛ばした後、へキサンにより再結晶を行い目的の化合物を白色の結晶にて得た。(85.6%)
【0100】
mp 84−86 oC IR (KBr):2944, 2839, 1589, 1574, 1462, 1377, 1346, 1155, 1027, 1128 cm−1,1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.82(s, 3H, Ar−OCH3−1), 3.88(s, 6H, Ar−OCH3−3,5), 6.18(s, 2H, Ar−H ), 13C NMR (100MHz, CDCl3, δ, ppm): 55.3, 56.1, 91.4, 91.6, 157.2, 160.3
【0101】
実施例9
[ポリマーA合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
【0102】
5 mLナスフラスコに、4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン(0.75g, 3 mmol)とパラホルム(0.09 g,3 mmol)を入れ、酢酸(1.2 mL)とクロロホルム(0.5 mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(0.2 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で6時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(0.43 g)を得た。
【0103】
Mn= 5,900, Mw/Mn= 2.1(GPC, eluent: THF, polystyrene standards); IR (KBr); 2938. 1577, 1457, 1401, 1109, 1010, 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.1−3.6(9H, Ar−OCH3), 3.7−4.3(2H, Ar−CH2−Ar)
【0104】
(屈折率の測定結果)
下記の表に示す。
【0105】
【表7】
【0106】
上記表中の屈折率は、633nmの波長で測定した値である。
複屈折は、スピンコーター(1000 rpm, 15 sec ,2000 rpm, 10 sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリマーを含むポリマーアロイ、およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、芳香族ポリマーAと,ポリカーボネート(成分B;以下「PC」と略称する場合がある)とを含むポリマーアロイ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドから容易に合成できる熱硬化性ポリマーであり、ベークランドによって1900年代初頭に実用化された最初の人工プラスチックである。フェノール樹脂は優れた耐熱性、機械特性、耐薬品性、絶縁性を有しておりかつ安価なため多くの工業製品の材料として使われることになった。
【0003】
しかしながら、従来の「フェノール樹脂」の用途においては、現在では成形性の勝る汎用プラスチック、高い機能性を狙い設計されてきたエンジニアプラスチックに置き換わってしまった部分も多い。これは、フェノール樹脂のもつ重合制御の難しさや、不溶性や透明性の低さなどの材料としての扱いにくさに原因がある。
【0004】
本発明者らは、最近、新しい性能を有する芳香族ポリマーを含有する組成物を提案している。例えば、特開2009−24131号公報に開示されたポリアリーレンメチレン類を含有する組成物や、特開2009−24302号に開示された、アルコキシ基含有フェニレンアルキレン樹脂をフィラーとして含む組成物が挙げられる。これらの組成物に含まれる、新しい性能を有する芳香族系ポリマーの特徴等に関しては、例えば、総説(小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年)に纏められている。
【0005】
しかしながら、従来技術においては、芳香族系ポリマーとポリカーボネート(以下、「PC」と略称することもある)との両方を含む組成物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−24131号公報
【特許文献2】特開2009−24302号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができる、芳香族ポリマーを含むポリマーアロイを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究の結果、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明のポリマーアロイは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするものである。
【0012】
(芳香族ポリマーA)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0015】
【化2】
【0016】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0017】
【化3】
【0018】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
【0019】
(ポリカーボネート類)
本発明においては、ポリカーボネート類(成分B)として、下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類を好適に使用することができる。ここに、「ビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類」は、該ビスフェノールAユニットと共重合したものでも良く、また「ポリ(ビスフェノールAカーボネート)」とブレンドしたものであっても良い。本発明において、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)ないしは、「ビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類」の分子量は、数平均分子量で、8,000以上が好ましく、更に好ましくは10,000〜200,000(特に好ましくは10,000〜100,000)である。
【0020】
【化4】
【0021】
なお、本発明のポリマーアロイが示すことができる「相溶性」(miscibility)は、後述するように、混和性(compatibility)とは明確に区別される特性である。
【0022】
本発明の芳香族系ポリマーは、上述した特許第4177685号に開示されたフェノール系ポリマーや、再表2005−103105号公報に開示された立体規則性芳香族系ポリマーと比較して、明らかに優れた透明性を有する。換言すれば、本発明の芳香族系ポリマーは、目視による着色性の有無で、上述した従来のフェノール系ポリマーとは明確に区別することができる。
【0023】
更に付言するならば、フェノール樹脂は、従来より、成形加工の点から、低分子量のノボラックやレゾールを用いて熱硬化させる方法に特化されてきたと言える。高分子量でかつ熱可塑で、光学材料に用いるという発想は、本発明が初めてである。これまでにフェノール樹脂単独でのフィルム化への試みは存在するが、ポリベンゾオキサジンからのフィルムであって、ポリマーの主鎖構造がフェノール樹脂とは異なり、かっ透明光学材料を指向したものではない(竹市力ら、High performance Polybenzoxazines as a Novel Type of Phenolic ReSin,PoJym J.第40巻、1121頁(2008))。
【0024】
上述の着色性に加えて、本発明のポリマーアロイを構成する芳香族系ポリマーは、上述したフェノール系ポリマーと比較して、明らかに優れたフィルム形成性を有する。
【0025】
本発明において、例えば、1,3,5−トリメトキシベンゼンや3、4、5−トリメトキシベンゼン由来のポリマーに代表されるフェノール樹脂をポリマーブレンドに用いることができる理由として、本発明者の知見によれば、(上記した非特許文献1の第58頁に記載されたような)本来のフェノール樹脂の構造特性とは異なり、ベンゼン環上の立体障害により、高分子鎖が折りたたまれず開いた形態を示すためと推定される。
【0026】
本発明において、立体規則性とは、隣り合うベンゼン環の位置関係に規則性があるということであり、たとえば1.3,5−トリメトキシベンゼンや3、4、5−トリメトキシベンゼン由来のポリマーの場合、ベンゼン環どうしが直交した位置関係にある。この場合、高分子鎖は折りたたまれにくく、溶液中でもフィルム中でもランダムコイルから棒状の中間の形態をとりやすくなる。ポリカーボネートとの分子レベルでの混和性の要因は、(様々な因子があり得るが)本発明者の知見によれば、この性質も大きな寄与があると推定されている。本発明者の知見によれば、さらにブレンドフィルムが、フェノール系ポリマーの形状やガラス転移点の高さが、ポリカーボネート単独のフィルムに対して大幅な強度や安定性の低下を起こさないことに寄与すると推定される。
【0027】
これまで、フェノール系高分子で本発明のような立体規則性の高分子がほとんど知られていなかったのは、本発明者らの知見によれば、例えば、レゾルシノール類がアルデヒド類と重合した場合、環状オリゴマー(カリックスアレーン)が生成するかゲル化してしまい、線状高分子を得ることが極めて難しかったからと推定される。
【0028】
これに対して、本発明においては、線状高分子を優先的に成長させることができる。なお、条件により環状オリゴマー(カリックスレゾルシンアレーン)を製造することも可能である。特に、カリックス[4]レゾルシンアレーン誘導体では合成例の少ないサドル型コンフォメーションを示す場合がある。従来のカリックスとは水酸基の方向性が大きく異なるため、三次元的なネットワーク構造を示す機能材料のビルディングブロックとして期待できる。
【0029】
本発明においては、汎用高分子であるノボラックの製造と同様のフェノール/ホルムアルデヒド縮合(付加縮合)を使用することが極めて容易であり、反応条件も穏和な場合が多いため工業的に実施しやすく、原料も比較的安価に得られるものが多い。また本発明のポリマーアロイは、置換基の種類により優れた有機溶媒または水への溶解性を示すことができ、またフィルム形成能などの優れた加工性を有している。各種機能材料の出発原料としても有用である。
【発明の効果】
【0030】
上述したように本発明によれば、芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイが提供される。
【0031】
一般的に、PCは硬いが、表面がキズ付きやすいという欠点を有する。しかしながら、本発明の芳香族系ポリマーとPCとの両方を含むポリマーアロイは、このPCの欠点を解消するか、ないしは著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(ポリマーA)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(ポリマーA)のIRスペクトルである。
【図3】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の熱分析(DSC)チャートである。
【図4】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の熱分析(TGA)チャートである。
【図5】本発明で得られるポリマーブレンドの一例の熱分析(DSC)チャートである。
【図6】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクトルである。
【図7】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクトルである。
【図8】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例の1H−NMRスペクト
【図9】本発明で得られるポリマーブレンドの数例の熱分析(DSC)チャートである。
【図10】本発明で得られるポリマーブレンドの屈折率を示すグラフチャートである。
【図11】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)のIRスペクトルである。
【図12】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)の1H−NMRスペクトルである。
【図13】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)のIRスペクトルである。
【図14】本発明で得られる芳香族系ポリマーの一例(Br含有)の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0034】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0035】
(ポリマーアロイ)
本発明のポリマーアロイは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、アルコキシ基を1つ以上有する芳香族ポリマー(成分A)と;ポリカーボネートBとから、それぞれの1種類以上を含むものである。
【0036】
(芳香族ポリマーA)
芳香族ポリマーAは、下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマーである。
【0037】
【化5】
【0038】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0039】
【化6】
【0040】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【0041】
【化7】
【0042】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である)。
【0043】
(ポリカーボネートB)
ポリカーボネートBは、下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類である。
【化8】
【0044】
(芳香族系ポリマーAおよびポリカーボネートを与えるべきモノマー)
本発明の芳香族系ポリマーを与えるべきモノマーは特に制限されない。例えば、ベンゼン環1つにつき,アルコキシ基を1〜4個有するモノマーを出発原料として好適に使用可能である。更に、立体規則性を有し、低複屈折の実現の点からは、下記(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類を与えるモノマーから選ばれる1以上のモノマーが特に好適に使用可能である。
【0045】
【化9】
【0046】
(透明度)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの透明度を有する。この透明度は、透過率で好適に表すことができる。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上((a)〜(c)のいずれか1つの領域において、更には94%以上、特に96%以上、とりわけ98%以上)であることが好ましい。この透過率は、下記(a)〜(c)の領域の2以上(特に3領域の全て)において、透過率の値が好適な値(例えば、90%以上)であることが好ましい。
【0047】
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
【0048】
このようなUV−可視スペクトルは、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0049】
(屈折率)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの屈折率を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、1.52以上、更には1.55以上(特に1.57以上)の屈折率を有することが好ましい。この屈折率は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0050】
(複屈折)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルの複屈折を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、0.005以下、更には0.002以下(特に0.001以下)の複屈折を有することが好ましい。この複屈折は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0051】
(アッベ数)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、光学樹脂として使用可能なレベルのアッベ数を有する。本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、25以上、更には28以上(特に30以上)のアッベ数を有することが好ましい。また、本発明の芳香族系ポリマーは、50以下、更には40以下(特に35以下)のアッベ数を有することが好ましい。このアッベ数は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
【0052】
(分子量)
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAは、1000以上、更には5,000〜20,000程度(特に8,000〜20,000程度)の数平均分子量を有することが好ましい。この分子量は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
[ポリマーの合成方法]
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAの合成方法は、特に制限されない。安価で着色が少ないポリマーを簡便に合成可能な点からは、該合成は,ホルムアルデヒドに代表されるアルデヒド類を酸または塩基触媒を用いて縮合することが好ましい(このような合成方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、WO 2005/103105号を参照することができる)
【0053】
[光学フィルムの作製について]
本発明のアロイを構成する芳香族系ポリマーAを使用するフィルム作製方法は、特に制限されない。簡便な操作の点からは、下記の方法のいずれかを使用することが好ましい(このようなフィルム作製方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、野瀬卓平ほか「有機・高分子測定ラボガイド」講談社サイエンティフィク(2006年)を参照することができる)。
【0054】
(1)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,キャストする方法
(2)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,スピンコーティングする方法
(3)ポリマーを融解しプレスする方法
【0055】
(ポリマー合成例A)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0056】
【化10】
【0057】
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
【0058】
【表1】
【0059】
(ポリマー合成例B)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0060】
【化11】
【0061】
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
【0062】
【表2】
【0063】
(ポリマー合成例C)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
【0064】
【化12】
【0065】
上記により、得られた直鎖状フェノール樹脂はポリマーにもかかわらずモノマーに匹敵するほどシャープな1HNMRスペクトル(図1に示す)を示した。
【0066】
上記により、下記表に示す633nm屈折率、複屈折率およびアッベ数のデータが得られた。屈折率の値はλ=633nmの値であり、複屈折率はスピンコートで製膜したフィルムのものを測定した値である。
【0067】
【表3】
【0068】
上記により、図10に示す透過率のデータが得られた。すなわち、ポリカーボネートと同様の屈折率を持ち、複屈折も低いポリマーが得られた。
【0069】
(成分AとBの量比)
ポリマーアロイを形成可能である限り、該ポリマーアロイを構成する成分Aと成分Bとの量比は、特に制限されない。ガラス代替用光学樹脂としての好適な利用の点からは、成分Aの100質量部に対して、成分Bが200質量部以上、更には200〜5000質量部(特には1000〜5000質量部)であることが好ましい。
【0070】
(混和性)
見た目が「透明」(光の波長による)であるのが、混和性(compatible)である。このcompatibleの状態では、DSCでTg(ガラス転位点)を測定すると「2山」を有するグラフを示す。
【0071】
(相溶性)
他方、分子レベルで実際に相溶するのが、相溶性(miscible)である。このmiscibleの状態では、DSCでTgを測定すると「1山」を有するグラフを示す。液体に喩えれば、エタノール/水系と同様の状態である。
【0072】
(ポリマーアロイの形成方法)
上記した好適な特性を満たすポリマーアロイが得られる限り、本発明のアロイの形成方法は特に制限されない。すなわち、それ自体は公知のポリマーアロイの形成方法から適宜選択して利用することができる。実用的な観点からは、下記方法が好適に使用可能である(なお、ポリマーアロイの形成方法の詳細に関しては、例えば文献:「ポリマーアロイとポリマーブレンド」、レセツク・A・ウトラツキ著、西敏夫訳、東京化学同人(1991年)を参照することができる)。
【0073】
(ポリマーアロイの好適な形成方法)
ポリマーAと、ポリカーボネートBとを、所望の混合比で、成分Aおよび成分Bの良溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解させる。その後、得られたポリマー溶液を、成分Aおよび成分Bの貧溶媒(例えば、メタノール)に再沈殿させ、真空乾燥することにより、ポリマーアロイ(ブレンドポリマー)を得る。
【0074】
(ポリマーAとPCとの相溶性/混和性の例)
後述する実施例2と同様の条件下で、PCとの相溶性/混和性を調べた例を、図5および図9のグラフ(混合物から得られたDSCチャート)に示す。
【0075】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0076】
[使用実験機器]
【0077】
[使用実験機器]
(1)1H NMR、13C NMRスペクトルはJEOL社製のLNM−EX400を用い、TMSを基準物質とし測定した。
【0078】
(2)FT−IRスペクトルはJASCO社製のFT−IR 460 plus spectrometerを用い測定した。
【0079】
(3)UV−VisスペクトルはBECKMAN COULTER社製DU 800 SPECTROMETERを用い測定した。
【0080】
(4)GPCにはJASCO社製UV−2070検出器とRI−2031検出器、TOSOH社製TSK−gel GMH−HRカラムを用い、THFを展開溶媒にして行った。検量線作成は標準ポリスチレンを用いた。
【0081】
(5)熱重量分析にはSII社製TG/DTA 6200を用い、窒素下で昇温速度は10 oC/minで行った。
【0082】
(6)示差走査熱量測定にはSII社製DSC 6220を用い、窒素下で昇温速度は10oC/MINで行った。
ポリマーのフィルムの作成はMIKASA社製Spincoater 1H−DTを用い行った。
【0083】
実施例1
[ポリマーA合成:1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
50mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(3.36g,20mmol)とパラホルム(0.63g,20mmol)を入れ、THF(20mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(4mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で3時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(2.89g)を得た。
【0084】
Mn=7,200,Mw/Mn=12,400(GPC,eluent:THF,polystyrenestandards);IR(KBr):3447(νO−H−CH2OH),2938,2830(νC−H−CH3),1595,1455(νc−cPh),1197,1106,1027(νC−O−CAr−O−C);1HNMR(400MHz,CDCl3,δ,ppm):3.40−3.87(s,9H,Ar−OCH3),3.75−3.87(s,2H,Ar−CH2−Ar)6.05−6.12(s,1H,Ar−H1),
【0085】
実施例2
[ポリマーのブレンド]
ポリマーA(1g)とポリカーボネート(1g)(注1)をクロロホルム(1mL)に溶解させる。その後、メタノールに再沈殿させ、真空乾燥してブレンドポリマーを得た。
同様に質量混合比、1:9、2:8、4:6、6:4、8:2、9:1のブレンドポリマーも作成した。
注1:ポリカーボネートは、ALDLICH社製 製品番号181625−250Gを使用した。
【0086】
実施例3
[ブレンドポリマーのDSC測定]
DSC測定により得られた結果を表4にまとめた。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例4
[ポリマーA合成:3,4,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
100 mLナスフラスコに、3,4,5−トリメトキシベンゼン(9.10 g, 50 mmol)とパラホルム(1.575 g, 50 mmol)、酢酸(20 mL)を入れ攪拌した。この溶液に濃硫酸(3 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下した。この溶液を室温において攪拌していくと、ゲル状の不溶な物質が浮かんでくる。これにクロロホルム(20 mL)をさらに加え、室温で5時間攪拌した。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(7.60 g)を得た。
【0089】
Mn= 12,600,Mw/Mn= 1.7 (GPC, eluent: THF,polystyrene standards);IR (KBr): 3448 (νO−H −CH2OH), 2935,2828 (νC−H −CH3), 1570,1461 (νc−c Ph), 1197,1099,1046 (νC−O−C Ar−O−C); 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 1.97(3H, Ar−CH3 ), 3.47(6H, Ar−OCH3−3,5), 3.77(6H, Ar−OCH3−4), 3.94(2H, Ar−CH2−Ar)
【0090】
実施例5
[ポリマーAのフィルムの作成]
ポリマー(0.5g)をジクロロエタン(1mL)に溶解させ、更に1時間攪拌を続けた。得られた溶液を、ろ過しスピンコーターを用い合成石英製の基板上に製膜した(条件は,1000rpm,15sec,および2000rpm,10sec)。得られた薄膜を真空下で乾燥した。
【0091】
実施例6
[ポリマーAの屈折率の測定]
プリズムカップラー法により屈折率を測定した。平均の屈折率navはnav=[(2nTE2+nTM2)/3]1/2から求め、複屈折はnTEとnTMの差より求めた。測定した波長は633nm、845nm、1558nmであり、これらの波長の屈折率をCauchyの式(nλ=n∞+D/λ2)にフィッティングし屈折率分散係数Dと絶対屈折率nλを求めた。アッベ数は求めたDとnλを用いCauchyの式より、486.1nm、589.2nm、656.3nmの屈折率を計算で求め、アッベ数の定義(νd=(nd−1)/(nF−nC))より算出した。
【0092】
[屈折率の測定結果]
下記のテーブルに示す。
【0093】
【表5】
【0094】
上記表中、屈折率は633nmの波長で測定した値である
【0095】
複屈折はスピンコーター(1000rpm,15sec,2000rpm,10sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値
【0096】
実施例7
[従来のフィルムとの透過率の違い]
下図に示すとおりポリマーAのフィルムでのUV−Visスペクトルを計測し、可視光領域の486.1nm、589.2nm、656.3nmの光線における透過率を比較した。
【0097】
比較したものはポリマーAと従来の特許公報(WO 2005/103105)で合成されたA’のフィルムであり、膜厚は各々が51マイクロメートル、49マイクロメートルのものを使用した。
【0098】
【表6】
【0099】
実施例8
[モノマー合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン]
200mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(2.0g, 12 mmol)とエンカメチレン(80 mL)、メタノール(20 mL)を加え攪拌した。この溶液にテトラブチルアンモニウムトリブロミド塩(6.36 g, 13.2mmol)をゆっくり加え、室温で10分攪拌させた。攪拌停止後、エバポレーターにより溶媒を飛ばし、残留物に水(20 mL)を加え、ジエチルエーテル(40 mL, 三回)により抽出した。エバポレーター溶媒を飛ばした後、へキサンにより再結晶を行い目的の化合物を白色の結晶にて得た。(85.6%)
【0100】
mp 84−86 oC IR (KBr):2944, 2839, 1589, 1574, 1462, 1377, 1346, 1155, 1027, 1128 cm−1,1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.82(s, 3H, Ar−OCH3−1), 3.88(s, 6H, Ar−OCH3−3,5), 6.18(s, 2H, Ar−H ), 13C NMR (100MHz, CDCl3, δ, ppm): 55.3, 56.1, 91.4, 91.6, 157.2, 160.3
【0101】
実施例9
[ポリマーA合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
【0102】
5 mLナスフラスコに、4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン(0.75g, 3 mmol)とパラホルム(0.09 g,3 mmol)を入れ、酢酸(1.2 mL)とクロロホルム(0.5 mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(0.2 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で6時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(0.43 g)を得た。
【0103】
Mn= 5,900, Mw/Mn= 2.1(GPC, eluent: THF, polystyrene standards); IR (KBr); 2938. 1577, 1457, 1401, 1109, 1010, 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.1−3.6(9H, Ar−OCH3), 3.7−4.3(2H, Ar−CH2−Ar)
【0104】
(屈折率の測定結果)
下記の表に示す。
【0105】
【表7】
【0106】
上記表中の屈折率は、633nmの波長で測定した値である。
複屈折は、スピンコーター(1000 rpm, 15 sec ,2000 rpm, 10 sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするポリマーアロイ。
(芳香族ポリマーA)
【化1】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化2】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化3】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
(ポリカーボネート)
【化4】
【請求項2】
前記成分Aと成分Bとが、混和性を有する請求項1に記載のポリマーアロイ。
【請求項3】
前記成分Bが、エンジニアリングプラスチックまたは樹脂材料である請求項1または2に記載のポリマーアロイ。
【請求項4】
UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
【請求項5】
屈折率が1.52以上である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項6】
複屈折が0.005以下である請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項7】
アッベ数が25〜40である請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項8】
ジメトキシベンゼンまたはトリメトキシベンゼンに由来する請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項9】
下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマーAと,
下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を組み合わせることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
(芳香族ポリマーA)
【化5】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化6】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化7】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
(ポリマーB)
【化8】
【請求項10】
前記芳香族ポリマーAと、ポリカーボネートBとの組合せが、成分Aおよび成分Bの良溶媒に溶解させ、次いで、得られたポリマー溶液を、成分Aおよび成分Bの貧溶媒に再沈殿させることによって行われる請求項9に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項11】
前記良溶媒がクロロホルムである請求項10に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項12】
前記貧弱溶媒がメタノールである請求項9または10に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマー(成分A)と;下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を含むことを特徴とするポリマーアロイ。
(芳香族ポリマーA)
【化1】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化2】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化3】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
(ポリカーボネート)
【化4】
【請求項2】
前記成分Aと成分Bとが、混和性を有する請求項1に記載のポリマーアロイ。
【請求項3】
前記成分Bが、エンジニアリングプラスチックまたは樹脂材料である請求項1または2に記載のポリマーアロイ。
【請求項4】
UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
【請求項5】
屈折率が1.52以上である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項6】
複屈折が0.005以下である請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項7】
アッベ数が25〜40である請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項8】
ジメトキシベンゼンまたはトリメトキシベンゼンに由来する請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
【請求項9】
下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする芳香族ポリマーAと,
下記一般式(4)で示されるビスフェノールAユニットを80%以上含むポリカーボネート類(成分B)とから、それぞれの1種類以上を組み合わせることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
(芳香族ポリマーA)
【化5】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化6】
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
【化7】
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である);
(ポリマーB)
【化8】
【請求項10】
前記芳香族ポリマーAと、ポリカーボネートBとの組合せが、成分Aおよび成分Bの良溶媒に溶解させ、次いで、得られたポリマー溶液を、成分Aおよび成分Bの貧溶媒に再沈殿させることによって行われる請求項9に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項11】
前記良溶媒がクロロホルムである請求項10に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項12】
前記貧弱溶媒がメタノールである請求項9または10に記載のポリマーアロイの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−209226(P2010−209226A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57147(P2009−57147)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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