説明

苗保護カバー及び苗保護カバーの埋設方法

【課題】強風雨時であっても、苗の折れ、損傷、痛み等が少なく、葉や茎等に対する害虫の被害が少なく、低温時の保温効果が有り、晴天時においてもカバー内の急激な温度上昇がなく、苗の良好な保護及び良好な生育を図ることができる。また、テーパー筒状に組み立てる作業、土中に埋設する作業等が簡単且つ容易に行え、安価な苗保護カバー及び苗保護カバーの埋設方法を提供する。
【解決手段】苗保護カバー1を構成する樹脂シート2の対向側両端部を互いに接着してテーパー筒状に組み立て可能に設けるとともに、略扁平状態に折り畳むことができる折り曲げ罫線Dを複数箇所以上設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば白菜、カンラン、キャベツ、ナス、キュウリ等の農作物の苗、あるいは植木、花、樹木等の植物の苗木を、風雨、冷害、害虫その他から保護するために用いられるような苗保護カバー及び苗保護カバーの埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の苗保護カバーとしては、例えば樹脂シートの一端に形成した係入部と、他端に形成した係合部とを互いに係止して、下部開口が広く、上部開口が狭いテーパー筒状に形成した特許文献1の苗保護カバーがあるが、使用時において、樹脂シートの両端部に形成した係入部と係合部とを互いに係合して組み立てなければならず、係合作業が大変面倒であり、組み立て作業に手間及び時間が掛かる。また、係入部と係合部との係合部分に隙間が生じやすく、係合及び分離を何回も繰り返すうちに破損することがあり、保温効果が低下したり、害虫が侵入する等して、苗の生育が損なわれる。また、使用後において、苗保護カバーに付着した汚れを洗浄除去する場合、係入部と係合部との係合部分に手が接触したとき、手を切ってしまう恐れがあり、慎重に取り扱わなければならない。
【0003】
また、苗保護カバーを埋め込む方法として、例えば苗保護カバーの下端部よりも大きな穴を掘り、苗保護カバーの下端部を穴の中に入れて、苗保護カバーの内部に土を入れながら、苗保護カバーの外部にも土をかぶせて埋設した後、苗保護カバーの上端側開口部から入れた苗を植え込む方法があるが、苗保護カバーの下端部が入るような大きな穴を掘る作業に手間及び時間が掛かるだけでなく、苗保護カバーの内部全体に土を入れなければならず、埋め込み作業が捗らないという欠点がある。
【特許文献1】実用新案登録第3031523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記問題に鑑み、風雨、冷害、害虫その他から苗を保護することができるとともに、テーパー筒状に組み立てる作業、土中に埋設する作業等が簡単且つ容易に行える苗保護カバー及び苗保護カバーの埋設方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明の苗保護カバーは、樹脂シートの対向側両端部を一体的に接着して、下端側開口部が広く、上端側開口部が狭いテーパー筒状に形成したことを特徴とする。
【0006】
この発明によると、樹脂シートの対向側両端部を一体的に接着してテーパー筒状に形成した苗保護カバーの下端部を土中に埋設して、その苗保護カバーで囲繞された土の中央に植えられた苗を保護するので、苗保護カバーの接合部分に隙間や破損等が生じるようなことがなく、風雨、冷害、害虫その他から苗を確実に保護することができる。
【0007】
上記樹脂シートは、例えばポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリプロピレン等の単体又は複合した合成樹脂で構成することができる。また、接合は、例えば接着剤による接着、加熱による熱溶着、超音波振動による超音波溶着等の接合方法で構成することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1に記載の構成と併せて、上記苗保護カバーが略扁平状態に折り畳み許容される折り曲げ罫線を、該苗保護カバーの壁部に沿って縦方向に形成するとともに、該折り曲げ罫線を円周方向に対して所定間隔に隔てて複数本配列したことを特徴とする。
【0009】
この発明によると、テーパー筒状の苗保護カバーを、各折り曲げ罫線に沿って略扁平状態に折り畳むことができる。また、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバーを外側に押し広げれば、テーパー筒状の形態に組み立てることができる。
【0010】
上記折り曲げ罫線は、例えば断面V字状、断面W字状の罫線溝、或いは、ミシン目等で構成することができ、苗保護カバーの壁部に対して、例えば3箇所、4箇所、6箇所等の2箇所以上設けてもよく、少なくとも二つ折り状態に折り畳み可能であればよい。また、苗保護カバーの外観形状は、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、十六角形などの多角形、或いは楕円形等の形状に形成してもよく、見た目が円形に近いものであればよい。
【0011】
請求項3に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1又は2に記載の構成と併せて、上記苗保護カバーの土中に埋め込まれる下端部を、該土中に対して係止される角度に折り曲げ自在に設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明によると、苗保護カバーの土中に埋め込まれる下端部を内側又は外側に折り曲げたまま埋設するので、抜け方向に対する抵抗が大きくなり、強風時において、苗保護カバーが土中から抜けるか、傾倒するのを防止することができる。
【0013】
上記下端部は、例えば折り曲げ部が折り曲げ許容される折り曲げ罫線を、苗保護カバーの土中に埋め込まれる下端側壁部に沿って円周方向に連続して形成し、その折り曲げ罫線と下端部との間に、折り曲げ部が個々に分離される切れ目を縦方向に形成し、該切れ目を円周方向に対して所定等間隔(数センチ間隔)に隔てて複数本形成して、複数の各折り曲げ部を内側又は外側に向けて任意角度に折り曲げ自在に設ける等して構成することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成と併せて、上記苗保護カバーの土中に埋め込まれる下部壁部に、該土中に対して係止される抜止め片を設けたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、苗保護カバーの土中に埋め込まれる下部壁部に形成した抜止め片を内側又は外側に折り曲げたまま埋設するので、抜け方向に対する抵抗が大きくなり、強風時において、苗保護カバーが土中から抜けるか、傾倒するのを防止することができる。
【0016】
上記抜止め片は、苗保護カバーの土中に埋め込まれる下部壁部に、門形の切れ目に沿って内側と外側とに折り曲げ自在に設けることができる。その抜止め片を内側又は外側に折り曲げることによって、苗保護カバーの内側と外側とを連通する連通孔が開口される。また、複数の各抜止め片を、苗保護カバーの土中に埋め込まれる下部壁部の同一円周上に形成するとともに、該各抜止め片を円周方向に対して所定等間隔に隔てて複数配列してもよい。また、各抜止め片を円周方向に対して上下互い違いに配列してもよい。
【0017】
請求項5に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1乃至4のいずれか一つに記載の構成と併せて、上記苗保護カバーの上端側壁部が内側に向けて折り曲げ許容される折り曲げ罫線を、上記開口部付近の壁部に形成したことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、苗保護カバーの上端側壁部を、開口部付近の壁部に形成した折り曲げ罫線に沿って内側に折り曲げ、開口部を所望する大きさに開口調整するか、密閉状態に閉塞する。一方、苗保護カバーの上端側壁部を外側に引き起こせば、上端側開口部を開口することができる。上記折り曲げ罫線は、例えば円弧形状、半円形状、波形状等の任意形状を有する罫線で構成することができる。
【0019】
請求項6に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1乃至5のいずれか一つに記載の構成と併せて、上記苗保護カバーの上端側開口部付近に、該開口部を所望する大きさに開口調整する絞り込み手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
この発明によると、苗保護カバーの上端側開口部を、絞り込み手段の締付け力により徐々に絞り込んで所望する大きさに開口調整するか、密閉状態に閉塞する。また、絞り込み手段による絞り込みを解除すれば、上端側開口部を所望する大きさに開口又は全開することができる。
【0021】
上記絞り込み手段は、苗保護カバーの上端側開口部付近の壁部に形成した複数の各孔部と、各孔部に挿通される例えば紐、針金等の柔軟性を有する線条体等で構成することができる。また、柔軟性を有するシート状の閉塞体を、略扁平状態に閉塞された苗保護シートの上端側開口部外面に被せたまま、上記線条体により結び止めて閉塞固定すれば、より確実に密閉することができる。
【0022】
請求項7に記載した発明の苗保護カバーは、上記請求項1乃至6のいずれか一つに記載の構成と併せて、上記苗保護カバーの上端側開口部に、通気性を有する防虫カバーを被覆したことを特徴とする。
【0023】
この発明によると、防虫カバーの下端部を、テーパー筒状に組み立てられた苗保護カバーの上端側開口部に被覆固定し、防虫カバーの上端部を一つに束ねて閉塞するので、苗の生育に適した通気性と、害虫が侵入するのを防止する効果が得られる。上記防虫カバーは、例えば不織布、ネット、或いは、多数の孔部が形成されたシート等の通気性を有する筒状の被覆物で構成することができる。
【0024】
請求項8に記載した発明の苗保護カバーの埋設方法は、土を掘るための先端部が挿入方向から見て略半円形状又は略円形状に形成された掘り具を用いて、テーパー筒状を有する苗保護カバーの下端部が挿入される平面から見て略円形状の溝部を土に形成し、上記苗保護カバーの下端部を上記溝部に対して上方から挿入した後、該苗保護カバーの下端部と溝部との間に土を入れて埋設することを特徴とする。
【0025】
この発明によると、略半円形状又は略円形状の掘り具を、畑や庭、花壇等の埋め込み場所の土に押し込むだけで、苗保護カバーの下端側開口部が挿入される略円形状の溝部を簡単且つ正確に掘ることができ、溝掘り作業に要する手間及び時間を大幅に削減して、埋設作業の迅速化を図ることができる。また、苗保護カバーの下端部を溝部に対して上方から挿入した後、苗保護カバーの下端部と溝部との間に土を入れて埋設するので、溝部に入れる土の量が少なくて済み、溝部の大きさ及び深さ、溝幅が正確であるので、苗保護カバーの埋設作業が簡単且つ正確に行える。上記掘り具は、例えば略半円形状、略円形状を有する専用の掘り具、スコップ、シャベル、機械等の農具で構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、樹脂シートの対向側両端部が一体的に接合されたテーパー筒状の苗保護カバーを土中に埋設して、該苗保護カバーにより囲繞された苗を保護するので、苗保護カバーの接合部分に隙間や破損等が生じるようなことがなく、風雨時であっても、苗の折れ、損傷、痛み等々が少なく、葉や茎等に対する害虫の被害も少なく、低温時の保温効果を得ることができる。
【0027】
また、テーパー筒状の苗保護カバーを折り曲げ罫線に沿って略扁平状態に折り畳むので、組み立て時及び折り畳み時に接合部分が破損することがなく、何回でも繰り返し使用することができ、安価である。また、不使用時において、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバーを複数重ね合わせれば、保管場所のスペースが小さくて済み、取り扱い及び管理が容易に行える。
【0028】
また、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバーを押し広げるだけで、テーパー筒状に組み立てることができ、苗保護カバーの組み立て作業及び埋設作業が簡単且つ容易に行え、作業の能率アップを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明は、風雨、冷害、害虫その他から苗を保護することができるとともに、テーパー筒状に組み立てる作業、土中に埋設する作業等が簡単且つ容易に行えるという目的を、樹脂シートの対向側両端部を互いに接着してテーパー筒状に形成するとともに、略扁平状態に折り畳むことができる折り曲げ罫線を複数箇所以上設けることで達成した。
【実施例】
【0030】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、苗を保護するために用いられる第1実施例の苗保護カバー及び苗保護カバーの埋設方法を示し、図1、図2に示す苗保護カバー1は、図3に示す扇形状に打ち抜き形成された樹脂シート2の対向側両端部を接着剤により一体的に接着して、下端側開口部3が広く、上端側開口部4が狭くなるテーパー筒状に組み立てたものである。
【0031】
上記苗保護カバー1の対向壁部には、苗保護カバー1が略扁平状態に折り畳み許容される2本の各折り曲げ罫線D,Dを、該苗保護カバー1の対向壁部に沿って縦方向にそれぞれ形成するとともに、各折り曲げ罫線D,Dを円周方向に対して略180度の角度に隔てられた相対向する両側壁部にそれぞれ配列している。つまり、図3にも示すように、各折り曲げ罫線D,Dを、扇形状に展開された樹脂シート2の中央部分と、樹脂シート2の一端側に連設された接合部5の連結部分とに、樹脂シート2の上端側縁部から下端側縁部に向けて連続して形成している。
【0032】
つまり、図1に示すテーパー筒状に組み立てられた苗保護カバー1を、2本の各折り曲げ罫線D,Dに沿って二つ折り状態に変形させて、図5に示す略扁平状態に折り畳むことができる。また、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバー1を外側に向けて押し広げれば、図1に示すテーパー筒状の形態に組み立てることができる。
【0033】
また、折り曲げ罫線Dは、テーパー筒状に組み立てられる苗保護カバー1の壁部に沿って円周方向に対して所定間隔に隔てて複数本配列することができる。例えば3箇所、4箇所、6箇所等の2箇所以上設けてもよく、少なくとも二つ折り状態に折り畳み可能であればよい。また、苗保護カバー1の外観形状は、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、十六角形などの多角形、或いは楕円形等の形状に形成してもよく、見た目が円形に近いものであればよい。
【0034】
前記苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれる下端部全周には、土壌A中に対して係止される角度及び方向に折り曲げられる複数の各折り曲げ部6…を円周方向に対して互いに近接して配列している。また、複数の各折り曲げ部6…を円周方向に対して所定間隔に隔てて部分的に配列してもよい。
【0035】
上記各折り曲げ部6…は、各折り曲げ部6…が個々に折り曲げ許容される折り曲げ罫線Eを、苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれる下端側壁部に沿って円周方向に連続して形成し、その折り曲げ罫線Eと下端部との間に、各折り曲げ部6…が個々に分離される切れ目を縦方向に形成し、該切れ目を円周方向に対して所定等間隔(数センチ間隔)に隔てて複数本形成して、各折り曲げ部6…を内側又は外側に向けて任意角度に折り曲げ自在に設けている。
【0036】
つまり、苗保護カバー1の下端部に連設した各折り曲げ部6…を外側(又は内側)に向けて略90度に折り曲げたまま土壌A中に埋設すれば、抜け方向に対する抵抗が大きくなり、強風時において、苗保護カバー1が土壌A中から抜けたり、傾倒するのを防止する効果が得られる。
【0037】
前記苗保護カバー1の上端側開口部4付近の両側壁部には、苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aが内側に向けて折り曲げ許容される円弧形状の各折り曲げ罫線F,Fを2本形成している。また、各折り曲げ罫線F,Fの両端部は、苗保護カバー1の両側壁部に形成した各折り曲げ罫線F,Fの上端部にそれぞれ接続している。
【0038】
つまり、テーパー筒状に組み立てられた苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aのいずれか一方又は両方を、上端側開口部4付近に形成した各折り曲げ罫線F,Fに沿って内側に折り曲げるか、上下互い違いとなるように交互に重ね合わせる等すれば、開口部4を所望する大きさに開口調整するか、密閉状態に閉塞することができる。また、苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aを外側に引き起こして起立すれば、開口部4を全開することができる。
【0039】
また、苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aを内側に折り曲げることが可能であれば、折り曲げ罫線F,Fを、苗保護カバー1の上端側壁部に沿って円周方向に対して所定間隔に隔てて複数本配列してもよい。
【0040】
なお、上端側両側壁部の各折り曲げ罫線F,Fは、例えば断面V字状、断面W字状の罫線溝、或いは、ミシン目等で構成することができる。また、各折り曲げ罫線F,Fを、例えば半円形状、波形状等の任意形状に形成してもよい。
【0041】
前記苗保護カバー1をテーパー筒状に組み立てる場合、扇形状に展開した樹脂シート2を、図4に示すように上方から見て略筒状となるように丸めて、樹脂シート2の一端側に連設したノリ代用の接合部5を、他端側の裏面に重ね合わせるとともに、相互の重ね合わせ面を接着剤により一体的に接着固定して、図1に示すテーパー筒状に組み立てる。なお、接着に代わる他の方法として、例えば熱溶着、超音波溶着等の接合方法で接合してもよい。
【0042】
上記苗保護カバー1を構成する樹脂シート2は、例えばポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリプロピレン等の単体又は複合した合成樹脂で形成することができるが、実施例では、約0.4mmの肉厚tを有する透明又は半透明のポリエステル樹脂シート(A−PETシート)で形成している。また、苗Cの生育に適した任意の色に着色してもよい。
【0043】
また、テーパー筒状に組み立て完了時における苗保護カバー1の各部寸法(図2参照)の一例を示すと次の通りである。苗保護カバー1の上端側開口部4の直径D1は、約250mmπに設定し、下端側開口部3の直径D2は、約350mmπに設定し、苗保護カバー1の全高Hは、約450mmに設定しているが、上記数値に限定されるものではなく、苗Cの種類その他に対応して任意の寸法に変更することができる。
【0044】
また、土壌A中に対する埋め込み位置の目安となる目印を、苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれる下端側外壁部に予め付設しておいてもよい。例えば苗保護カバー1の下端部から所定寸法だけ隔てられた上方位置(約100mmの位置)に目印を予め付設しておけば、苗保護カバー1の下端部を目印の位置まで土壌A中に埋め込むことにより、所定の埋め込み寸法だけ正確に埋め込むことができる。また、目印の代わりに、例えば凹部や凸部を形成するか、目盛りを印刷する等してもよい。
【0045】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下、苗保護カバー1の埋設方法を説明する。
【0046】
先ず、図6に示すように、略半円形状又は略円形状を有する掘り具Bの先端部を、畑等の整地された土壌Aの植え込み面に対して上方から略垂直に押し込み、図1に示すテーパー筒状を有する苗保護カバー1の下端部が挿入許容される略円形状の溝部Aaを土壌Aの植え込み面に形成した後、図7に示すように、溝部Aa中央の土壌Aにナスの苗Cを植える。なお、掘り具Bを土壌Aの植え込み面に押し込んだまま回転させて、溝部Aaを形成してもよい。
【0047】
なお、上記掘り具Bで形成される溝部Aaの各部寸法(図6参照)の一例を示すと次の通りである。溝部Aa上端の溝幅W1は約20mmに形成し、溝部Aa下端の溝幅W2は約10mmに形成し、溝深さW3は約100mmに形成しているが、上記数値に限定されるものではなく、苗保護カバー1のサイズに対応して任意の寸法に変更してもよい。
【0048】
次に、図5に示す略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバー1を押し広げて、図1に示すテーパー筒状の形態に組み立てた後、苗保護カバー1の下端部に形成した各折り曲げ部6…を折り曲げ罫線Eに沿って外側(又は内側)に向けて略90度に折り曲げた後、図8に示すように、苗保護カバー1の下端部を土壌Aの溝部Aaに対して上方から略垂直に挿入し、所定の埋め込み寸法だけ押し込む。
【0049】
次に、図9に示すように、溝部Aa周囲の土壌Aを、苗保護カバー1の下端側外壁部と溝部Aaとの隙間に入れて、苗保護カバー1の下端側外周部の土壌Aを踏み固める。また、苗保護カバー1の下端側内壁部と溝部Aaとの隙間にも入れて押し固めてもよい。なお、苗がある程度成長し、苗保護カバー1による保護が不要となった際には取り除く。
【0050】
また、苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれた下端側開口部3の方が広く、その下端部の外側に折り曲げた各折り曲げ部6…が土壌A中に係止されるので、抜け方向に対する抵抗が大きく、強風時において、苗保護カバー1が土壌A中から抜けたり、傾倒するのを防止することができる。
【0051】
また、苗保護カバー1の上端側開口部4から灌水や肥料等を供給することができると共に、苗保護カバー1内部の急激な温度上昇を防止することができ、苗Cの良好な保護を図ることができる。
【0052】
次に、苗Cが小さいときは、苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aを、上端側開口部4付近の上端側両側壁部1a,1aに形成した各折り曲げ罫線F,Fに沿って内側に折り曲げ、上端側開口部4を所望する大きさに開口調整するか、密閉状態に閉塞する等して、苗Cの生育に適した温度、換気等に調整する。
【0053】
また、苗Cが少し大きくなれば、苗保護カバー1の上端側両側壁部1a,1aを外側に引き起こして、上端側開口部4を全開状態に開口するので、苗保護カバー1の上端側開口部4を、気温、天候、苗の生育状況等に勘案して苗Cの生育に適した大きさに簡単に調整することができる。
【0054】
上記苗保護カバー1を、例えばナスの苗Cの保護に用いた結果、風速約10m〜15mの暴風雨を約2.5時間のあいだ付与した場合、でも、苗保護カバー1及びナスの苗Cに折れ、損傷、痛み等が全くなかった。
【0055】
また、苗保護カバー1で保護した苗Cと、苗保護カバー1で保護していない苗Cの生育状況を比較した場合、苗Cを植えた時から約40日が経過したとき、苗保護カバー1で保護した苗Cには平均15%の成長が見られたが、苗保護カバー1で保護しなかった苗Cは成長が悪かった。また、苗保護カバー1で保護した苗Cには害虫による被害がなく0本であるが、苗保護カバー1で保護しなかった苗Cには害虫による被害が約6本確認された。
【0056】
上記実験結果から見ても明らかであり、苗保護カバー1で苗Cを保護すれば、苗Cの良好な保護及び良好な生育を図ることができるという結果が得られた。
【0057】
以上のように、樹脂シート2の対向側両端部が一体的に接着されたテーパー筒状の苗保護カバー1を土壌A中に埋設して、該保護カバー1により囲繞された苗Cを保護するので、苗保護カバー1の接合部分に隙間や破損等が生じるようなことがなく、風雨時であっても、苗Cの折れ、損傷、痛み等々が少なく、葉や茎等に対する害虫の被害も少なく、低温時の保温効果を得ることができる。
【0058】
また、苗保護カバー1の上端側開口部4を開口しているので、晴天時においても苗保護カバー1内の急激な温度上昇がなく、苗Cの良好な保護及び良好な生育を図ることができる。
【0059】
また、テーパー筒状の苗保護カバー1を、2本の各折り曲げ罫線D,Dに沿って略扁平状態に折り畳むので、組み立て時及び折り畳み時に接合部分が破損することがなく、何回でも繰り返し使用することができ、安価である。また、不使用時において、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバーを複数重ね合わせれば、保管場所のスペースが小さくて済み、取り扱い及び管理が容易に行える。
【0060】
また、略扁平状態に折り畳まれた苗保護カバー1を押し広げるだけで、テーパー筒状に組み立てることができ、苗保護カバー1の組み立て作業及び埋設作業が簡単且つ容易に行え、苗Cを保護する作業の能率アップを図ることができる。
【0061】
図10は、第2実施例の苗保護カバー1を示し、苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれる下部壁部に、門形の切れ目に沿って内側及び外側に折り曲げ自在に形成した抜止め片7を設けるとともに、該抜止め片7を円周方向に対して所定等間隔に隔てて複数配列している。また、各抜止め片7…を円周方向に対して上下互い違いに配列してもよい。
【0062】
つまり、苗保護カバー1の土壌A中に埋め込まれる下部壁部に形成した複数の各抜止め片7…を内側(又は外側)に折り曲げた後、苗保護カバー1の下端部を土壌Aの溝部Aaに挿入して埋設するので、各抜止め片7…が土壌A中に係止され、抜け方向に対する抵抗が大きくなるので、第1実施例と同等の作用及び効果を奏することができる。
【0063】
また、各抜止め片7…を門形の切れ目に沿って折り曲げると、苗保護カバー1の内側と外側とを連通する各連通孔8…が開口され、その各連通孔8…を介して、苗保護カバー1の内側と外側との土壌Aがつながって一体化するので、各抜止め片7…による抵抗に加えて、各連通孔8…を介して一体化した土壌Aの抵抗により、抜けや傾倒等を防止する作用及び効果を高めることができる。なお、第1実施例の各折り曲げ部6…と併用してもよい。
【0064】
図11は、第3実施例の苗保護カバー1を示し、例えば紐、針金等の柔軟性を有する線条体10を、苗保護カバー1の上端側開口部4付近の両側壁部に形成した複数の各孔部9…に挿通して、苗保護カバー1の上端側開口部4を、線条体10の締付け力により徐々に絞り込んで所望する大きさに開口調整するか、密閉状態に閉塞する。また、線条体10による絞り込みを解除すれば、上端側開口部4が所望する大きさに開口又は全開されるので、苗保護カバー1の上端側開口部4を、気温、天候、苗の生育状況等に勘案して苗Cの生育に適した大きさに簡単に開口調整することができ、第1実施例と同等の作用及び効果を奏することができる。なお、各孔部9…は、苗保護カバー1の上端側開口部4の上端側両側縁部に沿って円周方向に対して所定間隔に隔てて配列している。
【0065】
また、図12に示すように、柔軟性を有するシート状の閉塞体11を、略扁平状態に閉塞された苗保護シートの上端側開口部4外面に被せたまま、苗保護カバー1の上端側両側壁部及び閉塞体11の両側縁部に形成した各孔部9…を介して上記線条体10により閉塞固定すれば、より確実に密閉することができる。なお、線条体10の代わりに、例えば面ファスナー、粘着テープ、クリップ、マグネット、止め具等を用いてもよい。
【0066】
図13は、第4実施例の苗保護カバー1を示し、例えば不織布、ネット等の通気性を有する筒状の防虫カバー12の下端部を、苗保護カバー1の上端側開口部4に被覆して、防虫カバー12の下端側内周縁部と、苗保護カバー1の上端側外周縁部を接着剤で一体的に接着固定する。
【0067】
一方、防虫カバー1の上端側を一つに束ねて閉塞した後、例えば紐、針金、テープ、輪ゴム等の結束体13を、防虫カバー1の上端側束ね部分に巻回して締付け固定するので、苗Cの生育に適した通気性と、害虫が侵入するのを防止する効果が得られ、第1実施例と同等の作用及び効果を奏することができる。なお、接着剤及び結束体13の代わりに、例えば面ファスナー、両面粘着テープ、クリップ、マグネット、止め具等を用いてもよい。また、防虫カバー12を、多数の孔部が形成されたシートで構成することもできる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の土は、実施例の土壌Aに対応し、
以下同様に、
絞り込み手段は、実施例の苗保護カバー1に形成した孔部9と、孔部9に挿通される線条体10に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0069】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
実施例では、各折り曲げ罫線D,E,Fを長さ方向に連続して形成しているが、任意間隔に隔てて部分的に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の苗保護カバーは、植木、花、樹木等の植物の苗木の保護にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施例の苗保護カバーを示す斜視図。
【図2】苗保護カバーの埋設状態を示す断面図。
【図3】苗保護カバーの展開状態を示す正面図。
【図4】苗保護カバーの両端部接合状態を示す横断平面図。
【図5】苗保護カバーの折り畳み状態を示す正面図。
【図6】掘り具による溝掘り方法を示す断面図。
【図7】苗の植え込み状態を示す断面図。
【図8】苗保護カバーの下端部を溝部に押し込んだ状態を示す断面図。
【図9】苗保護カバーの埋設完了状態を示す断面図。
【図10】第2実施例の苗保護カバーの埋設状態を示す断面図。
【図11】第3実施例の苗保護カバーの開口部絞り込み状態を示す断面図。
【図12】図11の苗保護カバーの他の例を示す断面図。
【図13】第4実施例の苗保護カバーの防虫カバー被覆状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0072】
A…土壌
Aa…溝部
B…掘り具
C…苗
D,E,F…折り曲げ罫線
1…苗保護カバー
1a…壁部
2…樹脂シート
3,4…開口部
5…接合部
6…折り曲げ部
7…抜止め片
8…連通孔
9…孔部
10…線条体
11…閉塞体
12…防虫カバー
13…結束体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの対向側両端部を互いに接着して、下端側開口部が広く、上端側開口部が狭いテーパー筒状に形成した
苗保護カバー。
【請求項2】
上記苗保護カバーが略扁平状態に折り畳み許容される折り曲げ罫線を、該苗保護カバーの壁部に沿って縦方向に形成するとともに、該折り曲げ罫線を円周方向に対して所定間隔に隔てて複数本配列した
請求項1に記載の苗保護カバー。
【請求項3】
上記苗保護カバーの土中に埋め込まれる下端部を、該土中に対して係止される角度に折り曲げ自在に設けた
請求項1又は2に記載の苗保護カバー。
【請求項4】
上記苗保護カバーの土中に埋め込まれる下部壁部に、該土中に対して係止される抜止め片を設けた
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の苗保護カバー。
【請求項5】
上記苗保護カバーの上端側壁部が内側に向けて折り曲げ許容される折り曲げ罫線を、上記開口部付近の壁部に形成した
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の苗保護カバー。
【請求項6】
上記苗保護カバーの上端側開口部付近に、該開口部を所望する大きさに開口調整する絞り込み手段を設けた
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の苗保護カバー。
【請求項7】
上記苗保護カバーの上端側開口部に、通気性を有する防虫カバーを被覆した
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の苗保護カバー。
【請求項8】
土を掘るための先端部が挿入方向から見て略半円形状又は略円形状に形成された掘り具を用いて、テーパー筒状を有する苗保護カバーの下端部が挿入される平面から見て略円形状の溝部を土に形成し、
上記苗保護カバーの下端部を上記溝部に対して上方から挿入した後、該苗保護カバーの下端部と溝部との間に土を入れて埋設する
苗保護カバーの埋設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−104946(P2007−104946A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298334(P2005−298334)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(504069901)株式会社開伸 (7)
【Fターム(参考)】