説明

苗搬送装置

【課題】 メンテナンス性が向上するようにする。
【解決手段】 本例の苗搬送装置1は、上下一対のプーリー4,5と、該両プーリー4,5に巻き掛けられた無端ベルト6とを含むベルト機構2,3を備え、両無端ベルト6,6の外周面における略上下方向に延びる部位同士が互いに対向するとともに該部位の間にポット苗Pの根部Paを挟持可能に配設されており、該対向する部位が下方に略等速度で移動するように回転駆動されることにより、該部位に挟持されたポット苗Pを下方に搬送するように構成されている。そして、両ベルト機構2,3は、両無端ベルト6,6が非スポンジ質に形成され、上側のプーリー4,4同士が略同一高さに支持され、無端ベルト6をそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー4,4同士の隙間Sが、根部Paの太さよりやや狭く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのベルト機構により苗を挟持して搬送するように構成された苗搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗搬送装置として、特許文献1記載の移植機の苗搬送装置を例示する。この苗搬送装置50は、図6に示すように、上下一対のプーリー52,53と、該両プーリー52,53に巻き掛けられた無端ベルト54とを含むベルト機構51を2つ備えている。そして、両無端ベルト54の外周面における略上下方向に延びる部位同士が互いに対向するとともに該部位の間にポット苗Pの根部を挟持可能に配設されており、該対向する部位が下方に略等速度で移動するように回転駆動されることにより、該部位に挟持されたポット苗Pを下方に搬送するように構成されている。両無端ベルト54は、スポンジ質に形成されており、ポット苗Pの根部の形状に応じて変形し、該根部を包み込むように挟持するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−102211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、無端ベルト54がスポンジ質に形成されているため、次の課題がある。
(1)無端ベルト54が耐久性に欠けており寿命が短い。このため、無端ベルト54を交換する手間とコストが掛かる。
(2)使用後長期保管しておくと無端ベルト54にプーリー52,53への巻き掛け癖が付き、起動時に無端ベルト54がスリップし易いことがある。このため、両無端ベルト54を周方向に互いに少しずらさなければならず、手間が掛かる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の苗搬送装置は、
上下一対のプーリーと、該両プーリーに巻き掛けられた無端ベルトとを含むベルト機構を2つ備え、前記両無端ベルトの外周面における略上下方向に延びる部位同士が互いに対向するとともに該部位の間に苗の根部を挟持可能に配設されており、該対向する部位が下方に略等速度で移動するように回転駆動されることにより、該部位に挟持された苗を下方に搬送するように構成された苗搬送装置であって、
前記両ベルト機構は、
前記両無端ベルトが非スポンジ質に形成され、
前記上側のプーリー同士が略同一高さに支持され、
前記無端ベルトをそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー同士の隙間が、前記根部の太さよりやや狭く設定されている。
【0006】
この構成によれば、前記無端ベルトが非スポンジ質に形成されているので、従来のスポンジ質のものに比べ、耐久性に優れるとともに長期保管しておいてもプーリーへの巻き掛け癖が付き難い。このため、メンテナンス性が向上する。また、前記無端ベルトをそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー同士の隙間が、前記根部の太さよりやや狭く設定されているので、前記根部を確実に挟持した状態で前記隙間を介して前記対向する部位の間へ苗を受け入れることができる。
【0007】
前記苗搬送装置においては、
前記下側のプーリー同士が略同一高さに支持され、
前記無端ベルトをそれぞれに巻き掛けた状態における該下側のプーリー同士の隙間が、同状態における前記上側のプーリー同士の隙間以下の広さに設定された態様を例示する。
【0008】
この構成とする理由は、前記苗搬送装置における苗の入口である前記上側のプーリ同士の隙間のところで前記両無端ベルトに挟まれた苗は、搬送途中に圧縮されて扁平になることがあり、該苗搬送装置における苗の出口である前記下側のプーリー同士の隙間が前記上側のプーリー同士の隙間よりも広いと苗を保持できなくなり、次の段階の装置への苗の受け渡しに失敗してしまうことがあるからである。前記構成においては、特に限定されないが、前記下側のプーリー同士の隙間は、前記上側のプーリー同士の隙間よりも狭く設定されることが好ましい。ここで、前記下側のプーリー同士の隙間を前記上側のプーリー同士の隙間よりどの程度狭く設定するかは、苗の種類、根部の直径、土質等に応じて適宜調節することが好ましい。
【0009】
前記両上側のプーリーは、径方向へ延びる凸部が外周に一定間隔をおいて列設されることにより、該外周に該凸部と、該凸部間に形成される凹部とからなる凹凸が形成されており、前記外周の周方向における前記凸部の長さは、同周方向における前記凹部の長さと比較して同一に又は短く設定されており、前記径方向における前記凸部の高さは、前記無端ベルトが巻き掛けられたときに該無端ベルトの内周面が前記凹部の底に接しないように設定されており、
該両上側のプーリー同士の隙間において、一方の前記上側のプーリーの前記凸部に対して、他方の前記上側のプーリーの前記凹部が対峙するように、該両上側のプーリーを同期させて回転駆動するように構成された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記隙間において、一方の前記上側のプーリーの前記凸部に対して、他方の前記上側のプーリーの前記凹部が対峙するようになっているので、いずれか一方の前記上側のプーリーの内周面側には前記凹部によるスペースが存在し、これにより前記無端ベルトが該スペース側にたわむことができる。このため、該隙間内に前記根部が挟持されたときに該根部に無理な力が加わることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の苗搬送装置によれば、メンテナンス性が向上するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図5は本発明を具体化した一実施形態の苗搬送装置1を備えた移植機10を示している。本例の移植機10は、図1に示すように、圃場を走行自在に支持された機体11と、ポット苗箱(図示略)から苗取出装置(図示略)により一列ずつ取り出された野菜・花等のポット苗Pを一本ずつ搬送する苗搬送装置1と、圃場に植付溝を形成する溝掘器12と、苗搬送装置1により搬送されてきたポット苗Pを受け取って溝掘器12の後方で前記植付溝に植え付ける植付装置13と、該植付装置13の後方で前記植付溝を埋め戻すための左右一対の土寄輪14とを備えている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0013】
苗搬送装置1は、図2〜図4に示すように、上下一対のプーリー4,5と、該両プーリー4,5に巻き掛けられた可撓性の無端ベルト6(本例ではゴム製)とを含むベルト機構2,3を備えている。両無端ベルト6,6の外周面における略上下方向に延びる部位同士が互いに対向するとともに該部位の間にポット苗Pの根部Paを挟持可能に配設されており、該対向する部位が下方に略等速度で移動するように回転駆動されることにより、該部位に挟持されたポット苗Pを下方に搬送するように構成されている。機体外側のベルト機構2には、その無端ベルト6の内周側に、該無端ベルト6を機体内側へ付勢する上下一対のテンションプーリー7,8が回転自在に配設されることにより、前記対向する部位に一定の張力を付与し、該対向する部位においてポット苗Pを確実に挟持させるようにしている。
【0014】
両ベルト機構2,3は、両無端ベルト6,6が非スポンジ質に形成され、上側のプーリー4,4同士が略同一高さに支持され、無端ベルト6をそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー4,4同士の隙間S(図2及び図3(a)参照。)が、ポット苗Pの根部Paの太さ(本例では根部Paの直径)よりやや狭く設定されている。
【0015】
また、下側のプーリー5,5同士は、略同一高さに支持され、無端ベルト6をそれぞれ巻き掛けた状態における該下側のプーリー5,5同士の隙間So(図2参照。)が、隙間S以下の広さに設定されている。この構成とする理由は、苗搬送装置1におけるポット苗Pの入口である上側のプーリ4,4同士の隙間Sのところで両無端ベルト6,6に挟まれたポット苗Pは、搬送途中における両無端ベルト6,6による圧縮や、テンションプーリー7,8のところでの圧縮等により、徐々に扁平になることがあり、苗搬送装置1におけるポット苗Pの出口である下側のプーリー5,5同士の隙間Soが隙間Sよりも広いとポット苗Pを保持できなくなり、植付装置13へのポット苗Pの受け渡しに失敗してしまうことがあるからである。この隙間Soは、隙間Sよりも狭く設定されることが好ましい。ここで、隙間Soを隙間Sよりもどの程度狭く設定するかは、ポット苗Pの種類、根部Paの直径、土質等に応じて適宜調節することが好ましい。
【0016】
両上側のプーリー4は、径方向へ延びる凸部4aが外周に一定間隔をおいて列設されることにより、該外周に該凸部4aと、該凸部4a間に形成される凹部4bとからなる凹凸が形成されており、図2に示すように、前記外周の周方向における凸部4aの長さLaは、同周方向における凹部4bの長さLbと比較して同一に設定されており、前記径方向における凸部4aの高さH(凹部4bの深さに対応)は、無端ベルト6が巻き掛けられたときに該無端ベルト6の内周面が凹部4bの底に接しないように設定されている。そして、図2に示すように、該両上側のプーリー4,4同士の隙間Sにおいて、一方の上側のプーリー4の凸部4aに対して、他方の上側のプーリー4の凹部4bが対峙するように、該両上側のプーリー4,4を同期させて回転駆動するように構成されている。
【0017】
両無端ベルト6,6は、図2〜図5に示すように、それぞれの外周面に周長方向に列設された突部列20を備えており、該両無端ベルト6,6におけるそれぞれの突部列20は、外周面の対向時に互いに対峙しないように、外周面における周幅方向の位置が互いにずれるように配置されている(図3参照。)。これにより、前記対向する部位において、両無端ベルト6,6の突部列20同士が干渉し合うことを防止するようにしている。なお、本例では、突部列20の構成要素である各突部21は、円錐状に形成されている。
【0018】
特に、本例においては、両無端ベルト6,6は、同一仕様の共通ベルトからなるとともに、該共通ベルトの軸方向の向きを互いに反転させたものであり、該共通ベルトは、周面の周幅方向の中心線C(図3参照)を対称線とする線対称の位置に突部列20を備えていないように構成されている。これにより、無端ベルト6の製造、管理等のコストを低減することができる。
【0019】
以上のように構成された本例の苗搬送装置1によれば、無端ベルト6が非スポンジ質に形成されているので、従来のスポンジ質のものに比べ、耐久性に優れるとともに長期保管しておいてもプーリー4,5,7,8への巻き掛け癖が付き難い。このため、メンテナンス性が向上する。また、無端ベルト6をそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー4,4同士の隙間Sが、根部Paの太さよりやや狭く設定されているので、根部Paを確実に挟持した状態で隙間Sを介して前記対向する部位の間へポット苗Pを受け入れることができる。
【0020】
また、隙間Sにおいて、一方の上側のプーリー4の凸部4aに対して、他方の上側のプーリー4の凹部4bが対峙するようになっているので、いずれか一方の上側のプーリー4の内周面側には凹部4bによるスペースが存在し、これにより無端ベルト6が該スペース側にたわむことができる。このため、該隙間S内に根部Paが挟持されたときに該根部Paに無理な力が加わることを防止することができる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)無端ベルト6の材料を適宜変更すること。
(2)無端ベルト6の外周面に形成された突部21の形状、大きさ、配設間隔等や、突部列20の列数、配設間隔等を適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る苗搬送装置を備えた移植機の要部を示す斜視図である。
【図2】同苗搬送装置の後面図である。
【図3】同苗搬送装置の無端ベルトの断面図であり、(a)は図2のIIIa−IIIa線断面図、(b)は図2のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】同無端ベルトの一部を示す斜視図である。
【図6】従来の苗搬送装置の後面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 苗搬送装置
2 機体外側のベルト機構
3 機体内側のベルト機構
4 上側のプーリー
4a 凸部
4b 凹部
5 下側のプーリー
6 無端ベルト
10 移植機
La 上側のプーリー4の周方向における凸部4aの長さ
Lb 同周方向における凹部4bの長さ
H 上側のプーリー4の径方向における凸部4aの高さ
P ポット苗
Pa 根部
S 苗搬送装置の入口の隙間
So 苗搬送装置の出口の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対のプーリーと、該両プーリーに巻き掛けられた無端ベルトとを含むベルト機構を2つ備え、前記両無端ベルトの外周面における略上下方向に延びる部位同士が互いに対向するとともに該部位の間に苗の根部を挟持可能に配設されており、該対向する部位が下方に略等速度で移動するように回転駆動されることにより、該部位に挟持された苗を下方に搬送するように構成された苗搬送装置であって、
前記両ベルト機構は、
前記両無端ベルトが非スポンジ質に形成され、
前記上側のプーリー同士が略同一高さに支持され、
前記無端ベルトをそれぞれに巻き掛けた状態における該上側のプーリー同士の隙間が、前記根部の太さよりやや狭く設定された苗搬送装置。
【請求項2】
前記下側のプーリー同士が略同一高さに支持され、
前記無端ベルトをそれぞれに巻き掛けた状態における該下側のプーリー同士の隙間が、同状態における前記上側のプーリー同士の隙間以下の広さに設定された請求項1記載の苗搬送装置。
【請求項3】
前記両上側のプーリーは、径方向へ延びる凸部が外周に一定間隔をおいて列設されることにより、該外周に該凸部と、該凸部間に形成される凹部とからなる凹凸が形成されており、前記外周の周方向における前記凸部の長さは、同周方向における前記凹部の長さと比較して同一に又は短く設定されており、前記径方向における前記凸部の高さは、前記無端ベルトが巻き掛けられたときに該無端ベルトの内周面が前記凹部の底に接しないように設定されており、
該両上側のプーリー同士の隙間において、一方の前記上側のプーリーの前記凸部に対して、他方の前記上側のプーリーの前記凹部が対峙するように、該両上側のプーリーを同期させて回転駆動するように構成された請求項1又は2記載の苗搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−167745(P2008−167745A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317903(P2007−317903)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】