説明

苗植付作業機

【課題】容易に苗載台を折りたたむことが可能な苗植付作業機を提供する。
【解決手段】苗を載置する苗載台31と、苗の根元に物質を供給するホッパーユニット(物質供給装置)73A〜73Dと、苗載台31とホッパーユニット73A〜73Dとを備え、苗の植え付けを行う田植作業機(苗植付作業機)30において、苗載台31が4つのユニットによって構成されるとともに、そのユニット毎にホッパーユニット73A〜73Dを備え、ホッパーユニット73A〜73Dがフレームに支持された田植機であって、苗載台の一方の側端部にある第1ユニット(苗載台31A,31B)が取り外し可能であり、取り外した第1ユニットを第3ユニット(別のユニット:苗載台31E,31F)に重ねて係止する一方、第3ユニットに対応するホッパーユニット73Cが取り外し可能であり、取り外したホッパーユニット73Cをフレームに備える受台(保持部)に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を載置する苗載台と、苗の根元に物質を供給する物質供給装置と、苗載台と物質供給装置とを備え、苗の植え付けを行う苗植付作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植作業機(苗植付作業機)は、たとえば10条植えの苗載台を駆動車両の後部に取り付ける。そして、田植えが終了すると、苗載台の両側部をそれぞれ2条分ずつ内側に折り返して苗載台を幅を狭くした後、駆動車両ごとトラックに積み込んで、倉庫へ搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−000020号公報
【特許文献2】特開2005−270113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の田植作業機には、植え付ける直前に苗の根元に薬剤を散布するための薬剤散布装置を、苗載台の後方に取り付ける(たとえば、特開2008−048667、図3参照)。この薬剤散布装置は、苗載台の幅方向のほぼ全域にわたって設けられる。したがって、苗載台の両側部を折りたたむ際に、薬剤散布装置が邪魔になってしまう。このため、薬剤散布装置を取り外した後に苗載台の両側部を折りたたんでいたため、作業に手間がかかるという問題があった。そこで、この発明は、容易に苗載台を折りたたむことが可能な苗植付作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、苗を載置する苗載台と、前記苗の根元に物質を供給する物質供給装置と、前記苗載台と前記物質供給装置とを備え、苗の植え付けを行う苗植付作業機において、
前記苗載台が複数のユニットによって構成されるとともに、該ユニット毎に前記物質供給装置を備え、該物質供給装置がフレームに支持された苗植付作業機であって、
前記苗載台の一方の側端部にある前記ユニットが取り外し可能であり、前記取り外したユニットを別のユニットに重ねて係止する一方、該別のユニットに対応する前記物質供給装置が取り外し可能であり、該取り外した物質供給装置を前記フレームに備える保持部に保持することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗植付作業機において、前記取り外したユニットに突起部を備える一方、前記取り外したユニットを重ねる前記別のユニットにスタンドをそなえ、前記突起部を前記スタンドの先端に嵌合させることで、前記取り外したユニットを前記別のユニットに重ねて係止することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の苗植付作業機において、前記突起部を前記スタンドの先端に嵌合させた後、パッチン錠にて前記突起部と前記スタンドとをロックすることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の苗植付作業機において、前記苗の植え付けを行う駆動源として駆動車両を用いる苗植付作業機であって、
前記ユニットを取り外した後の前記苗載台の幅が、前記駆動車両の幅以下となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、苗を載置する苗載台と、苗の根元に物質を供給する物質供給装置と、苗載台と物質供給装置とを備え、苗の植え付けを行う苗植付作業機において、苗載台が複数のユニットによって構成されるとともに、そのユニット毎に物質供給装置を備え、その物質供給装置がフレームに支持された苗植付作業機であって、苗載台の一方の側端部にあるユニットが取り外し可能であり、取り外したユニットを別のユニットに重ねて係止する一方、その別のユニットに対応する物質供給装置が取り外し可能であり、その取り外した物質供給装置をフレームに備える保持部に保持するので、従来のように、苗載台の幅方向のほぼ全域にわたって物質供給装置が設けられていたとき異なり、苗載台の一部のユニットを取り外す際に、そのユニットを重ね合わせる箇所のユニットに対応する薬剤散布装置のみを取り外せばよい。したがって、ユニットを取り外して重ねる作業に手間がかからなくなる。したがって、容易に苗載台を折りたたむことが可能な苗植付作業機を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、取り外したユニットに突起部を備える一方、取り外したユニットを重ねる別のユニットにスタンドをそなえ、突起部をスタンドの先端に嵌合させることで、取り外したユニットを別のユニットに重ねて係止するので、取り外したユニットを確実に別のユニットに重ねて係止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、突起部をスタンドの先端に嵌合させた後、パッチン錠にて突起部とスタンドとをロックするので、取り外したユニットをいっそう確実に別のユニットに重ねて係止することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、苗の植え付けを行う駆動源として駆動車両を用いる苗植付作業機であって、ユニットを取り外した後の苗載台の幅が、駆動車両の幅以下となるので、駆動車両に連結されたままで苗植付作業機をトラックなどに積み込んで搬送する際に、苗載台の幅が、駆動車両の車幅以上にスペースをとることがなく、積み込みスペースを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一例としての田植機の側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】田植機に備える植付部の正面図である。
【図4】植付部の苗載台を折りたたむ動作を説明する図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】この発明の別の例の田植機の植付部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1及び2は、駆動車両にこの発明の苗植付作業機の一例としての田植作業機を取り付けた田植機の側面図及び平面図である。田植機の概要は次の通りである。作業者が搭乗する走行車体(駆動車両)10の車体フレーム11には、前部にエンジン12と後部にミッションケース13が設けられ、ミッションケース13の前方両側にフロントアクスルケース14を介して水田走行用前輪15が支持されるとともに、ミッションケース13の後部両側にリヤアクスルケース16を介して水田走行用後輪17が支持されている。エンジン12とその近傍の部材はボンネット18で被覆され、ミッションケース13とその近傍の部材はステップ19を有する車体カバー20によって被覆されている。そして、車体カバー20の上部に運転席21が取り付けられ、その運転席21の前方に操向ハンドル22が設けられている。
【0015】
走行車体10の後部には、8条植え用の苗載台31や複数の植付爪32を具備する田植作業機(苗植付作業機)30が連なる。この田植作業機30は、トップリンク33及びロワーリンク34を含む3点昇降リンク機構を用いて、走行車体10に連結されている。そして、走行車体10の後部とロワーリンク34との間に介設された油圧シリンダーの伸縮動作によって、昇降自在に構成されている。また、前高後低に設置された板状の前傾式苗載台31は、下部ガイドレール35及び上部ガイドレール36を介して、中央及び左右の植付伝動ケース37に対して左右往復摺動自在に支持されている。その植付伝動ケース37の下方には、中央及び左右の植付用均平フロート38,39が、植付深さ調節部材を介して支持されている。田植作業機30を降下させて、このフロート38,39を着地させることにより、苗載台31の上の苗マットから取り出す苗の植付深さを設定するように構成している(図1,2では、苗マットを省略して描いている)。なお、植付伝動ケース37内では、走行車体10のPTO軸から取り出した駆動力にて回転軸が回転する。
【0016】
図3には、田植作業機30の正面図を示す。田植作業機30は、8つの苗載台31A〜31H(1つの苗載台が植付時の1条分に相当する)を連結して一体に備える。各苗載台31A〜31Hの下部底面には、苗を下方へと搬送するための搬送ベルトBを2つ並列に備える。搬送ベルトBはゴム製の無端ベルトからなり、表面には無数の小突起を、裏面には一定間隔で形成された突起を備える。搬送ベルトBは、それぞれの苗載台31A〜31Hの裏面側にてプラスチック製の一対のギアに係合して回転する。この一方のギアの回転軸には、PTO軸より分岐した駆動軸をギアを介して係合させる。
【0017】
苗載台31A〜31Hの中央部前方には、後に詳述する4つのホッパーユニット73A〜73Dを備える。このホッパーユニット73A〜73Dは、それぞれ2条分の苗載台31A〜31Hに薬剤や肥料を供給するように構成されている。詳しくは、ホッパーユニット73Aは苗載台31A,31Bに、ホッパーユニット73Bは苗載台31C,31Dに、ホッパーユニット73Cは苗載台31E,31Fに、ホッパーユニット73Dは苗載台31G,31Hに薬剤や肥料を供給するように構成されている。
【0018】
ホッパーユニット73A〜73Dはそれぞれ同一の構成をしており、ホッパータンク74、薬剤繰出ローラ部75、導出パイプ76、散布口77などを備える(図5参照)。ホッパータンク74は、正面視で底面中央がV字状に切れ上がっている。ホッパータンク74の両端の底部には、それぞれ薬剤繰出ローラ部75を備える。薬剤繰出ローラ部75の外殻は、ホッパータンク74と一体に成形される。そして、内側に横溝ローラを回転自在に備える。横溝ローラは、回転しながら、一定量の薬剤を下方に供給するためのものである。この横溝ローラには、PTO軸より分岐した不図示の回転駆動軸を取り付ける。ホッパータンク74と薬剤繰出ローラ部75とが一体成形されることによって、従来から問題となってきた、接続部分における水漏れ(接続部分から雨水などが入り込み、顆粒状の薬剤を湿らせて、薬剤繰出ローラ部75に固まりついてしまうという問題)を回避することができる。
【0019】
各薬剤繰出ローラ部75の下端には、これに連続して導出パイプ76を取り付ける。このように、1つのホッパータンク74に2つの導出パイプ76が取り付けられ、それぞれの導出パイプ74が1条分の苗載台31への薬剤の供給を受け持つ(したがって、1つのホッパータンク74で2条分の苗載台31へ薬剤を供給する)。詳しくは、田植え時に、苗載台31上を下方に向けて搬送される稲の苗の上部に、不図示の棒状の分草板(苗載台31の上方で、かつ、散布口77よりも苗の搬送方向やや上流側であって、苗載台31の幅方向全域にわたって設けられている。)を当てて苗を搬送方向上流側に撓ませる。これによって撓んだ苗とその下流側に隣接する苗(分草板をすでに通過して撓みから開放されて直立している苗)との間に開放空間が形成され、この開放空間めがけて散布口77より薬剤が散布される。
【0020】
導出パイプ76の下端には、散布口77を連続して設ける。散布口77は、2重構造になっている。すなわち、外側には、円筒状のホイールを備え、内側にはノズルを備える。ホイールの外周には突起を複数有する。この突起は、苗載台31に載置された苗と接触するようになっている。そして、田植時に苗載台31が苗を繰り出すために幅方向に移動することで突起が苗に引っかかり、散布口77の外側のホイールが回転する。したがって、苗載台31が苗を繰り出している間は、ホイールは一定速度で回転する。このホイールには針金で構成されたスクレーパの一端が固設されている。スクレーパの他端はノズル内に挿入されている。そして、ホイールが回転することで、スクレーパがノズル内で回転する。このように構成することで、水分がノズル出口に付着し、散布口77より排出される薬剤がこの水分によって散布口77周辺に固まることを防止することができる。
【0021】
このホッパーユニット73A〜73Dによって苗載台31A〜31Hを4つのユニットにグループ分けする。すなわち、苗載台31A,31Bは第1ユニット、苗載台31C,31Dは第2ユニット、苗載台31E,31Fは第3ユニット、苗載台31G,31Hは第4ユニットである。なお、苗載台31A〜31Hは、それぞれの縁部に2つずつ備える連結レバー(ロックレバー)をロック状態にすることで連結されている。また、苗載台31Eの左縁部と苗載台31Fの右縁部には後述するパイプ状のスタンドSを固設する。さらに、苗載台31Aの左側端部裏面と、苗載台31Bの右側端部裏面にはスタンドSの先端に嵌合するピン(突起部)Rをそれぞれ備える。このピンRとスタンドSの先端にはさらにパッチン錠を備え、このパッチン錠にてロックされるようになっている。
【0022】
また、苗載台31A〜31Hの下部前方には、4つの植付伝動ケース37を備え、それぞれの植付伝動ケース37の両端には植付爪32を備える。すなわち、1つの植付伝動ケース37で2条分の苗を植え付けることができるようになっている。
【0023】
ホッパーユニット73A〜73Dは、一連の受台(フレーム)72上に載置され、パッチン錠などで固定されている。この受台72は、4つの植付伝動ケース37から立ち上がって設けられたブラケットに支持される。この受台72には保持部72aを備える。この保持部72aは、一時的にホッパーユニット73A〜73Dを載置するためのものである。
【0024】
次に、田植え作業が終了した後、苗載台31A〜31Hの第1ユニット(苗載台31A,31B)を折りたたんで苗載台31の幅を狭くする方法を説明する。図4に示すように、第3ユニット(苗載台31E,31F)の前にあるホッパーユニット73Cを受台72から外して、その受台72の(ホッパーユニット73Dの下方にある)保持部に載置して、パッチン錠で固定する。
【0025】
そして、苗載台31Aと苗載台31Bとが連結された状態で、苗載台31Bと苗載台31Cとの連結を解除する。詳しくは、苗載台31Bの縁部に備える2つの連結レバーを解除する方向に回動させ、苗載台31Bと苗載台31Cとの連結を解除する。次に、第1ユニット(苗載台31A,31B)の両端にあるハンドルを把持して第1ユニットを移動させる。
【0026】
そして、第1ユニットを第3ユニット(苗載台31E,31F)上に重ねる。詳しくは、第3ユニットに設けられた1対のスタンドSの先端に、第1ユニットに備える2つのピンRをそれぞれ嵌めこむ(図5)。次に、不図示のパッチン錠にてロックする。そして、第3ユニットの左側端部に備えるかぎ状の固定ピンの先端を、第1ユニットの裏面に形成された孔に掛け止める。次に、第1ユニットを載置していた部分の苗取出板を折りたたむ。このようにすることで、田植作業機30の幅が走行車体10の車幅以下となる。そして、走行車体10と田植作業機30とが連結された状態で、トラックなどに積み込まれて搬送される。
【0027】
なお、上述の手順を逆に行うことで第1ユニットを折りたたみ状態から広げることができる。したがって、詳細な説明は省略する。
【0028】
この例では、8条の苗載台を用いたが、この発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、7条の苗載台に適用してもよい。この場合には、2条用の3つのホッパーユニットと、1条用の1つのホッパーユニットを設ける。
【0029】
上述の例では、ホッパータンク74から延出する導出パイプ76および散布口77は、分草板によって撓んだ苗の根元に薬剤を供給するものであったが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、ホッパーユニット73A〜73Dに肥料や除草剤を投入し、図6に示すように導出パイプ66´を植付爪32の外側にまで延長する。そして、苗の植付にあわせて、散布口77´より肥料や除草剤を苗の根元に投入する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明の苗植付機は、稲の苗に限定されるものではなく、あらゆる種類の苗を植えることに適用しうる。
【符号の説明】
【0031】
10 走行車体(駆動車両)
30 田植作業機(苗植付作業機)
31,31A,31B,31C,31D,31E,31F,31G,31H 苗載台
32 植付爪
37 植付伝動ケース
72 受台(フレーム)
73A,73B,73C,73D ホッパーユニット(物質供給装置)
B 搬送ベルト
R ピン(突起部)
S スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を載置する苗載台と、前記苗の根元に物質を供給する物質供給装置と、前記苗載台と前記物質供給装置とを備え、苗の植え付けを行う苗植付作業機において、
前記苗載台が複数のユニットによって構成されるとともに、該ユニット毎に前記物質供給装置を備え、該物質供給装置がフレームに支持された苗植付作業機であって、
前記苗載台の一方の側端部にある前記ユニットが取り外し可能であり、前記取り外したユニットを別のユニットに重ねて係止する一方、該別のユニットに対応する前記物質供給装置が取り外し可能であり、該取り外した物質供給装置を前記フレームに備える保持部に保持することを特徴とする、苗植付作業機。
【請求項2】
前記取り外したユニットに突起部を備える一方、前記取り外したユニットを重ねる前記別のユニットにスタンドをそなえ、前記突起部を前記スタンドの先端に嵌合させることで、前記取り外したユニットを前記別のユニットに重ねて係止することを特徴とする、請求項1に記載の苗植付作業機。
【請求項3】
前記突起部を前記スタンドの先端に嵌合させた後、パッチン錠にて前記突起部と前記スタンドとをロックすることを特徴とする、請求項2に記載の苗植付作業機。
【請求項4】
前記苗の植え付けを行う駆動源として駆動車両を用いる苗植付作業機であって、
前記ユニットを取り外した後の前記苗載台の幅が、前記駆動車両の幅以下となることを特徴とする、請求項1に記載の苗植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115084(P2011−115084A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274377(P2009−274377)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】