苗植付装置
【課題】 苗植付装置の小型化を図り、ひいては植付性能の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】 固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した。
【解決手段】 固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機等の苗移植機に設けられる苗植付装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
固定支持体の内周側で回転する回転体を設け、該回転体の回転中心に対し偏心した位置に左右方向の最終軸を回転自在に設け、回転体から突出する最終軸の突出部に苗植付具を取り付け、回転体の回転に伴って該回転体に対して最終軸を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、固定支持体と回転体の間に、回転体を回転自在に支持する軸受を設けたものが公知である。この苗植付装置は、回転体には左右の回転側部体を備え、左右の回転側部体の間で且つ固定支持体の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤと、該固定ギヤに噛み合うことにより自転しながら回転体の回転により公転する回転ギヤを備え、該回転ギヤから最終軸と一体回転する最終ギヤへ伝達する構成としている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記苗植付装置の小型化を図り、ひいては植付性能の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した苗植付装置とした。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、固定支持体(79)の内周側にブッシュ(81)を設け、該ブッシュ(81)に接触する回転体(50)の接触部位(50b)に支持軸(83)を通した請求項1に記載の苗植付装置とした。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸(83)の左右両端部を左右の回転側部体(50a)に左右方向の取付ピン(120,121)で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン(120,121)のうち、軸受(80)側に配置される取付ピン(121)の長さよりも、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)の長さを長く構成すると共に、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)はブッシュ(81)の内周側の位置まで延設した請求項2に記載の苗植付装置とした。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、ブッシュ(81)とは左右方向の位置をずらせて配置した請求項2又は請求項3に記載の苗植付装置とした。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、軸受(80)と同じ左右位置に配置した請求項2から請求項4の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とし、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ(106)と、該固定ギヤ(106)に噛み合うことにより自転しながら回転体(50)の回転により公転する回転ギヤ(97)を備え、該回転ギヤ(97)から最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体(50a)と重複する領域に固定ギヤ(106)が収まる構成とした請求項2から請求項5の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とした請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、苗植付具(49)の先端部が側面視でループ状の作動軌跡(P)を描く構成とし、該作動軌跡(P)の下死点(B)から上死点までの上動軌跡が、下死点(B)から上下中間部(D)までは斜め後上方へ作動し、上下中間部(D)から上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部(D)で大きく作動方向を転じる軌跡である請求項1から請求項7の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、軸受80を複数設けて適確に回転体50を支持できるので、回転体50を適正に回転させることができる。しかも、最終軸82とは異なる位置に支持軸83を複数設け、該支持軸83に軸受80を設けたので、最終軸82及び支持軸83の各々の軸を小型化でき、苗植付装置1の小型化が図れ、苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、ブッシュ81を設けると共に、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通すことにより、回転体50を安定して適正に支持でき、固定支持体79と回転体50の同心度が向上し、シール性能が向上すると共に、回転体50の回転による振動の発生を抑えることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、請求項2に係る発明の効果に加えて、ブッシュ81側に配置される取付ピン120により、前記接触部位50b近くの支持軸83の支持剛性が向上し、ひいては接触部位50b及びブッシュ81が傾きにくくなるため、回転体50を安定して適正に支持できる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、請求項2又は請求項3に係る発明の効果に加えて、側面視で最終ギヤ104と重複する位置にブッシュ81を配置でき、回転体50ひいては苗植付装置1の小型化が図れ、回転体50の回転抵抗が小さくなって苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によると、請求項2から請求項4の何れか1項に係る発明の効果に加えて、回転体50により回転する部分をコンパクトにできて該部分の左右幅を小さくでき、苗植付装置1の小型化が図れる。
【0018】
請求項6に係る発明によると、請求項2から請求項5の何れか1項に係る発明の効果に加えて、左右一方の回転側部体50aを取り外してできる空間から固定ギヤ106を着脱することができ、固定ギヤ106を交換する等のメンテナンスが容易になる。
【0019】
請求項7に係る発明によると、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明の効果に加えて、左右一方の回転側部体50aを取り外して最終軸回転伝達機構のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
【0020】
請求項8に係る発明によると、請求項1から請求項7の何れか1項に係る発明の効果に加えて、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用型の田植機の側面図
【図2】乗用型の田植機の平面図
【図3】植付クラッチを示す一部断面側面図
【図4】ステアリングハンドルによる前輪操向操作の構成を示す斜視図
【図5】後輪回転センサを示すミッションケースの一部の断面側面図
【図6】旋回連動制御のイメージを示す図
【図7】制御ブロック図
【図8】旋回連動制御のフローチャート
【図9】苗植付装置を示す一部断面側面図
【図10】固定ギヤ、回転ギヤ及び中間ギヤを示す苗植付装置の断面側面図
【図11】太陽ギヤ、遊星ギヤ及び最終ギヤを示す苗植付装置の断面側面図
【図12】苗植付装置の断面展開平面図
【図13】異なる苗植付装置を示す一部断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
図1及び図2は苗植付装置1を装備した乗用型の田植機2を表している。この乗用型の田植機2は、エンジン3を搭載し駆動回転する左右の前輪4及び左右の後輪5を備えた走行車体6の後方に、昇降リンク装置7を介して6条植の苗植付部8が連結されている。走行車体6の後側で且つ苗植付部8の前側には、施肥装置9を設けている。また、走行車体6の前部の左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台10を、機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けている。
【0023】
走行車体6は、左右の前輪4及び左右の後輪5を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース11が配置され、そのミッションケース11の左右側方に前輪ファイナルケース12が設けられ、該左右の前輪ファイナルケース12の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸13に左右の前輪4が各々取り付けられている。また、ミッションケース11の背面部にメインフレーム14の前端部が固着されており、そのメインフレーム14の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース15がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース15から外向きに突出する後輪車軸16に後輪5が取り付けられている。
【0024】
エンジン3はメインフレーム14の上に搭載されており、該エンジン3の回転動力が、ベルト伝動装置である伝動装置17及び油圧式変速装置(HST)18を介してミッションケース11に伝達される。尚、油圧式変速装置18は、無段変速装置であり、ハンドル19の側方に設けた変速レバー20の操作により変速操作される。変速レバー20は、無段変速装置である油圧式変速装置18を、カムにより有段感覚をもたせて有段変速操作する構成である。ミッションケース11に伝達された回転動力は、該ミッションケース11内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪ファイナルケース12に伝達されて前輪4を駆動すると共に、ミッションケース11の後面から後方に延びる左右の後輪伝動軸21を介して各々の後輪ギヤケース15に伝達され、後輪5を駆動する。尚、ミッションケース11の後部には左右各々のサイドクラッチ22を設け,該サイドクラッチ22を介して各々の後輪伝動軸21へ伝動される。また、外部取出動力は、走行車体6の後部に設けた植付クラッチケース23に伝達され、それから苗植付部伝動軸によって苗植付部8へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置9へ伝動される。
【0025】
エンジン3の上部はエンジンカバー24で覆われており、その上に座席25が設置されている。座席25の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー26があり、その上方に前輪4を操向操作するハンドル19が設けられている。エンジンカバー24及びフロントカバー26の下端左右両側は水平状のフロアステップ27になっている。フロアステップ27は一部格子状になっており、該フロアステップ27を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ27上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ28となっている。
【0026】
メインフレーム14と昇降リンク装置7の間に昇降油圧シリンダ29が設けられており、該昇降油圧シリンダ29を油圧で伸縮させることにより、昇降リンク装置7が上下に回動し、苗植付部8がほぼ一定姿勢のまま昇降する。尚、走行車体6に設けた油圧ポンプからの油圧が油圧バルブ(電磁油圧バルブ)30を介して昇降油圧シリンダー29に供給され、油圧バルブ30の切替により昇降リンク装置7すなわち苗植付部8が昇降する構成となっている。
【0027】
施肥装置9は、肥料ホッパ31に貯留されている粒状の肥料を繰出部32によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース33でセンターフロート34及びサイドフロート35に取り付けた施肥ガイド36まで導き、施肥ガイド36の前側に設けた作溝体37によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ38で駆動するブロア39で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバを経由して施肥ホース33に吹き込まれ、施肥ホース33内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0028】
苗植付部8は、走行車体6から伝動入力される伝動ケース40の上側に前部が上位となるように傾斜した苗載台41を設けるとともに、伝動ケース40の植付伝動部40aの後端部に2条ごとで1組の苗植付装置1を設けている。苗載台41は、苗取出口42aを備える左右方向に設けた横枠42に沿って左右動自在に支持され、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口42aに供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口42aに供給すると苗送りベルト43により苗を所定量だけ下方に移送する構成となっている。従って、センターフロート34及びサイドフロート35からなるフロートを接地させた状態で機体を進行させると、苗載台41の左右往復移動又は苗送りベルト43の移送によりマット苗を苗取出口42aに一株分づつ順次供給し、それを苗植付装置1が分離して取り出し圃場に植え付ける。前記苗送りベルト43は、下側の駆動ローラ44と上側の従動ローラ45に張架されている。
【0029】
苗植付部8には、整地装置46であるサイドロータ46a及びセンタロータ46bが取り付けられている。この整地装置46は、左側の後輪ギヤケース15からの動力により整地伝動軸47を介して伝動される。
【0030】
また、苗植付部8には、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ48を備えている。苗植付部8の下部の中央にはセンターフロート34、その左右両側にサイドフロート35がそれぞれ設けられている。これらセンターフロート34及びサイドフロート35を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート34及びサイドフロート35が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置1により苗が植付けられる。センターフロート34及びサイドフロート35の各々のフロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート34の前部の上下動が迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ29を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部8を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0031】
植付クラッチケース23内には、苗植付装置1を所望の位相(3個の苗植付具49のうち、1個が回転体50の回転中心51の真上で、残りの2個が下側の略同じ高さで前後に位置する位相)で停止させるための定位置停止クラッチである植付クラッチ52を設けている。この植付クラッチ52は、駆動クラッチ爪を備える駆動クラッチ体53と、従動クラッチ爪を備える従動クラッチ体54と、該従動クラッチ体54を駆動クラッチ体53側へ押す植付クラッチスプリング55を設け、苗植付部8の駆動を入切する。従動クラッチ体54の外周面にクラッチ操作用溝54aを設けると共に、該クラッチ操作用溝54aに挿入されるクラッチピン56を設け、該クラッチピン56がクラッチ操作用溝54aに挿入されることにより、クラッチ操作用溝54aの傾斜面に案内されながら徐々に従動クラッチ体54が駆動クラッチ体53から離れる側に移動し、従動クラッチ体54の回転において定位置で従動クラッチ体54と駆動クラッチ体53の噛合が外れて伝動を断つ構成となっている。尚、クラッチピン56はPTOクラッチ作動ソレノイド57の駆動により操作され、PTOクラッチ作動ソレノイド57はフィンガレバー58の操作によるフィンガレバースイッチ58aの入力信号により制御装置59を介して作動する。
【0032】
また、変速レバー20の操作位置を検出する変速レバーセンサ20aを設け、変速レバー20が後進操作域に操作されていることを変速レバーセンサ20aが検出することによってもPTOクラッチ作動ソレノイド57を植付クラッチが切状態にするべく作動させる。これにより、後進操作に伴ってバックリフト連動機構により苗植付部8を上昇させたときに植付クラッチ52も切操作し、その後、再度前進するときに苗植付部8を上昇させたまま駆動する不具合を防止している。しかしながら、後進時は、油圧式変速装置18が逆転するため、植付クラッチ52への伝動経路に逆転防止クラッチ(一方向クラッチ)を設けて植付クラッチ52への伝動を断つ構成としているので、従来は、PTOクラッチ作動ソレノイド57によりクラッチピン56がクラッチ操作用溝54aに挿入されても植付クラッチ52ひいては駆動クラッチ体53が回転せず植付クラッチ52が切状態とならない。そうすると、再度前進するときに、植付クラッチ52が停止する定位置まで回転し違和感を感じるばかりでなく苗植付具49が既に保持した苗を振り落とす可能性がある。そこで、有段操作される変速レバー20が前進側の最低速位置(前進1段目位置)から前後進中立位置へ操作される途中の位置であることを変速レバーセンサ20aが検出すると、制御装置59によりPTOクラッチ作動ソレノイド57を作動させて植付クラッチ52を切操作する。これにより、前進走行が停止する直前に植付クラッチ52を切操作して、走行停止時には確実に植付クラッチ52を定位置で停止させることができる。
【0033】
ハンドル19は、フロントカバー26内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸59に伝動される。そして、出力軸59の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム60が固定されている。該ピットマンアーム60の前部左右側と左右の前輪ファイナルケース12とは左右のロッド61にて連結されている。
【0034】
従って、ハンドル19を回動操作すると、ステアリング軸、ステアリング変速歯車、出力軸59、ピットマンアーム60、左右のロッド61、左右の前輪ファイナルケース12へと伝達されて、左右の前輪4が左右操向操作される。
【0035】
一方、ピットマンアーム60の後部上面には、作動ローラ62が回転自在に設けられており、その作動ローラ62の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部63を有する従動体64がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体64の左右両側部には、左右のクラッチ操作アーム65に連結された左右の第二ロッド66の前部が連結されている。従って、ハンドル19を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム60も右回動し、作動ローラ62が従動体64の切欠き部63の左側面63aを押すために、従動体64を回動させ右の第二ロッド66を引き、右のクラッチ操作アーム65が操作されて右のサイドクラッチ22が切れ、旋回中心側となる右側の後輪5が遊転状態となるので、右側の後輪5が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。
【0036】
逆に、ハンドル19を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム60も左回動し、作動ローラ62が従動体64の切欠き部63の右側面63bを押すために、従動体64を回動させ左の第二ロッド66を引き、左のクラッチ操作アーム65が操作されて左のサイドクラッチ22が切れ、旋回中心側となる左側の後輪5が遊転状態となるので、左側の後輪5が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0037】
更に、ピットマンアーム60の前部上面には、左右センサ押板67が設けられており、ハンドル19を左右何れかに200度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ68がONになる(ハンドル19は左右に最大360度〜400度回転する)。
【0038】
これらのピットマンアーム60、左右のロッド61、作動ローラ62、切欠き部63、従動体64、第二ロッド66、左右センサ押板67及びオートリフトスイッチ68により、旋回連繋機構69が構成されている。
【0039】
従って、機体旋回時にサイドクラッチ22が切り操作されて、機体の旋回に伴って圃場に接地しているが為に回転する旋回内側となる後輪5の回転数(旋回内側となる後輪5の後輪伝動軸21の回転数)の検出に基づいて走行距離を算出すると、駆動されている車輪よりもスリップなどの影響を受け難く、その走行距離の算出が正確に行えて、最適な自動旋回制御が行える。そこで、左右の後輪5の各々の後輪伝動軸21に回転検出用歯車70を固定して設けて、該回転検出用歯車70の回転数を左右各々の後輪回転センサ71で検出し、後輪5の回転数を判断する構成としている。
【0040】
後輪回転センサ71は、ミッションケース11の上面部に設けてあり、ミッションケース11から左右に突出しないようにしている。これは、ミッションケース11の左右には、左右の前輪4が配置されているためであり、このように、後輪回転センサ71をミッションケース11の上面部に設けてミッションケース11から左右に突出しないようにすると、左右の前輪4が操向操作される時に邪魔にならず、操向角度が大きくできて、小型の機体構成で旋回半径の小さい機体を得ることができ、最適な機体の旋回が行える。更に、後輪回転センサ71がミッションケース11の上面部に設けられているので、後輪回転センサ71に泥が付着することが少なくなって、耐久性もよくなり、後述する機体の旋回制御を長期に亘って良好に行える。
【0041】
また、ハンドル19を左右何れかに回転させた時にオートリフトスイッチ68がONになると、制御装置59の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ30を作動させる電磁ソレノイドを制御して昇降油圧シリンダー29にて苗植付部8を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0042】
このように、畦際で機体を旋回させるためにハンドル19を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ68がONになり、自動的に苗植付部8は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部8を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0043】
また、制御装置59は、旋回内側の後輪5の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御を実行する。この旋回連動制御は、ハンドル19を切り、旋回内側の後輪5のサイドクラッチ22が切れた状態である所定値以上の操作角度にハンドル19が操作されたことをハンドル切れ角センサ72が検出すると、走行距離検出センサとなる後輪回転センサ71により、旋回内側の後輪伝動軸21の回転数の検出を開始し、旋回時の内側の後輪5の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部8を下降させる。その後、後輪5の伝動軸回転数が設定値と苗植付部8の作動が「切り」状態に入ってからハンドル19の切り操作開始までの後輪5の後輪伝動軸21の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
【0044】
まず、第一の設定回転数N1(旋回開始から旋回完了前までの内側の後輪伝動軸21回転信号設定値)、第二の設定回転数N2(旋回開始から旋回完了し更に植付「入り」にするまでの距離を走行する間の内側の後輪伝動軸21回転信号設定値)、θ1(左旋回と判断する閾値)、θ2(右旋回と判断する閾値)をセットする。
【0045】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記第1の設定回転数N1、第2の設定回転数N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節するθ1の設定ダイヤル73、θ2の設定ダイヤル74、N1の設定ダイヤル75及びN2の設定ダイヤル76により、補正値n0を設定する。
【0046】
苗植付部8が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー58の操作に伴う制御装置59の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、植付「切」になってからハンドル19が旋回操作されたことをハンドル切れ角センサ72が検出するまでの後輪5の後輪伝動軸21の回転数nを左右の後輪回転センサ71で検出して、その値(n)を記憶しておく。尚、前記値(n)は、左右の後輪回転センサ71の検出値を平均した値とするが、左右一方の後輪回転センサ71の検出値としてもよい。次いで、ハンドル19の切り角度(操舵角度)θをハンドル19のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)72で検出して旋回を開始したかどうかを検出する。
【0047】
左旋回中であると左の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出して、回転数n1がN1+n0以上になると、旋回開始から機体が所定角度旋回する距離を走行したことになるので苗植付部8を下降する。その後、左の後輪5の後輪伝動軸21の回転数n2がN2+n+n0以上になると、旋回が完了し更に前行程の植え終わり位置に揃う位置まで苗植付部8の苗植付装置1が到達したことになるので、植付クラッチ「入り」が行われ、苗植付装置1を作動させて苗の植え付けを開始させる。これにより、前行程の植え終わり位置に揃う位置で苗の植え付けが開始される。尚、右旋回の場合にも左旋回時と同様の制御が行われる。
【0048】
このようにサイドクラッチ22が切れている後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪5の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪5より回転の速い後輪伝動軸21の回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
【0049】
また、植付クラッチケース23から植付伝動軸への出力部には油圧式無段変速装置で構成される株間変速装置を設け、該株間変速装置により機体の走行に対する苗植付部8の駆動速度を変速して植付株間を変更する構成となっている。株間変速装置は、株間変速モータ77の駆動により油圧式無段変速装置を変速操作する構成となっている。フロントカバー26部に設けた株間調節ダイヤル78からの信号により制御装置59を介して株間変速モータ77へ出力し、株間調節ダイヤル78の操作に基づく植付株間に設定する。そして、ハンドル19を所定角度以上操作した旋回中であることをオートリフトスイッチ68が検出するとき、左右の後輪回転センサ71により、サイドクラッチ22が切れている旋回内側の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出すると共に、駆動する旋回外側の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出する。このとき、機体の旋回走行に伴う左右の後輪5の走行経路はあまり異ならないため、旋回内側の後輪5の走行距離と旋回外側の後輪5の走行距離の比率は所定の適正値(後輪5のトレッド等の機体の構造によって決まる値、本例では1:5)となるが、駆動する旋回外側の後輪5はスリップを発生するために回転数が大きくなる。そこで、制御装置59により、左右の後輪回転センサ71の検出値の比率を前記適正値と比較して圃場における走行スリップ率を判断し、植付株間を適正にするべく株間変速モータ77へ出力する。走行スリップ率は、検出した旋回外側の後輪5の走行距離と、検出した旋回内側の後輪5の走行距離に定数(本例では5)を乗じて得られる旋回外側理想走行距離の差を、旋回外側理想走行距離で除して得られる。この走行スリップ率に比例して、株間調節ダイヤル78に基づく株間変速装置の変速比に対して該変速比を変更するべく株間変速モータ77を駆動し、走行スリップの発生に拘らず所望の株間で植付するようにしている。これにより、圃場で使用する苗量(苗の枚数)を所望に安定させることができ、植付作業において苗が不足したり、不足しないように苗を大量に準備して多くの苗を無駄にしてしまったり、多くの苗を要して頻繁に苗補給作業を行ったりする不具合を抑えることができ、省力化及び低コスト化が図れる。
【0050】
尚、その圃場における最初の旋回時に走行スリップ率を検出し、該走行スリップ率に基づき当該圃場での以降の植付作業において株間変速装置の変速比を設定すればよい。又は、旋回するたびに走行スリップ率を検出し株間変速装置の変速比を制御すれば、圃場内の局所毎の走行スリップ率の相違に対応でき、株間を高精度で制御できる。
【0051】
尚、上例では株間変速装置を油圧式無段変速装置としたが、苗植付部8の動力源となる電動モータにより株間変速装置を構成し、電動モータの駆動速度を制御して株間を制御する構成としてもよい。
【0052】
また、上例では旋回中に検出される走行スリップ率から所望の株間となる株間変速装置の変速比を演算する構成について説明したが、旋回は圃場の畦際で行われることが多く、圃場の畦際は旋回の頻度が高いので耕盤が深くなって走行スリップ率が大きくなる傾向がある。そこで、往復走行おける圃場内側部での直進植付に適合させるべく、旋回中に検出した走行スリップ率を小さく補正し、その補正した走行スリップ率から株間変速装置の変速比を演算する構成としてもよい。
【0053】
ところで、苗植付装置1は、植付伝動部40aの後端に側面視環状の固定支持体79が一体に設けられ、その内側に回転体50が後述する軸受(ラジアル・ボール・ベアリング)80及びブッシュ81を介して回動自在に嵌合している。回転体50は左右の回転側部体50aを備えて構成され、この左右の回転側部体50aが、後述する最終軸82及び支持軸83等を含む左右の回転側部体50a間に設けた左右方向の軸により連結されて一体回転する構成となっている。回転体50には、その回転中心51を中心とする円周上に互いに120度の位相で3本の最終軸83が回動自在に設けられ、それぞれの最終軸82の回転体50から突出する左右両端部に苗植付具49がそれぞれ一体に取り付けられる構成となっている。
【0054】
前記最終軸82は、断面が円形となる丸軸状に形成され、中途部にキ−溝84を備え、左右両端の回転体50からの突出部では外面が四角形状に形成されている。この最終軸82の左右両端の外面四角形状の突出部にそれぞれ四角形状の内面を備える苗植付具49の装着用孔85を嵌合させて左右の苗植付具49を取り付けている。また、苗植付具49の装着用孔85部分には、最終軸82の左右両端の突出部が嵌る位置に苗植付具固定用孔86を設けている。この苗植付具固定用孔86に挿入される固定ピン87により、最終軸82に苗植付具49が左右移動しないように固定される。
【0055】
回転体50の内部には、該回転体50と一体回転する等径(円形)の駆動スプロケット88が設けられている。この駆動スプロケット88を植付伝動部40aの後端部に設けた等径(円形)の入力スプロケット89で入力用チェーン90を介して減速して伝動し回転させることにより、回転体50が回転する。また、植付伝動部40a内の伝動軸91と一体回転する分岐駆動スプロケット92から、チェーン伝動装置93を介して入力用軸94と一体回転する分岐従動スプロケット95へ伝動し、入力用軸94と入力スプロケット89が一体回転する構成となっている。分岐駆動スプロケット92は、各2条毎に設けられ、植付条数に応じて伝動軸91に複数(本例では3個)設けられている。なお、伝動軸91上には該伝動軸91から分岐駆動スプロケット92へ伝動する停止クラッチ96を設けており、該停止クラッチ96により伝動を切ったとき分岐駆動スプロケット92ひいては入力スプロケット89及び駆動スプロケット88ひいては回転体50が所定の位相(定位置:回転体50の回転における120度ごとの3箇所)で停止する構成となっている。駆動スプロケット88の歯数は、入力スプロケット89の歯数の3倍である。
【0056】
また、回転体50の内部には、最終軸82へ伝動するための最終軸回転伝達機構となるギヤ列が設けられている。このギヤ列は、回転体50の回転中心51を中心として円軌道を移動しながら回転する回転ギヤ97と、該回転ギヤ97と一体回転する楕円形の第一中間ギヤ98と、該第一中間ギヤ98に噛合する不等径(非円形)の第二中間ギヤ99と、該第二中間ギヤ99と一体回転する不等径(非円形)の第三中間ギヤ100と、該第三中間ギヤ100に噛合し回転体50の回転中心51を中心に回転する不等径(正三角形の近似形、おむすび形)の第四中間ギヤ101と、第四中間ギヤ101と一体回転する不等径(非円形)の太陽ギヤ102と、該太陽ギヤ102に噛合する複数(3個)の不等径(非円形)の遊星ギヤ103と、複数の各々の遊星ギヤ103に噛み合う各々(複数、3個)の最終ギヤ104により構成されている。最終ギヤ104は、最終軸82のキ−溝84に嵌合するキ−105を介して前記最終軸82と係合している。従って、最終ギヤ104と最終軸82が一体回転し、回転体50の内部のギヤ列により最終軸82を回転させる構成となっており、前記ギヤ列により回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる。尚、回転ギヤ97は、固定支持体79に固定された内歯の固定ギヤ106と噛合し、回転体50の回転に連動して円軌道を公転しながら自転する。
【0057】
また、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104は、各々2枚のギヤの歯の位相を若干ずらせたシザースギヤで構成されており、ギヤのバックラッシによるガタを抑え、苗植付具49の作動が精度良く適正に行われるように作用する。これにより、格別なガタ取り機構が不要になり、苗植付装置1の小型化及び軽量化が図れる。
【0058】
回転体50が回転すると、1条における3個の苗植付具49が円軌道を移動する。そのとき、回転体50の回転に連動する回転ギヤ97の作動がギヤ列を介して最終軸82へ伝達され、苗植付具49の姿勢が変化する。これにより、苗植付具49は、後記苗取り爪107の先端が作動軌跡(静軌跡:機体の走行を加味しない軌跡)Pを描くように作動する。作動軌跡Pにおいて下死点から更に後方へ移動する行程Cが含まれていることにより、機体の走行を加味した動軌跡では苗取り爪107が下死点から略真上へ移動するようになっている。
【0059】
苗植付具49には、先端部が鋭利に形成された二股フォーク状の苗取り爪107と、該苗取り爪の下側で突出・後退作動をする苗押出体108とが設けられている。苗押出体108の作動機構は次のようになっている。最終軸82の端部の外周に回転自在に設けた押出カム109の外周面に、アーム軸110に回動自在に軸支されたカムアーム111が接触している。各押出カム109は、回転体50の側面に爪部112を介して取り付けられ、回転体50と一体で回転する構成となっている。また、アーム軸110にはカムアーム111と一体に回動する押出規制アーム113が軸支されていて、該押出規制アーム113の先端部と苗押出体108を支持する押出ロッド114の端部とが継手部材115を介して連結されている。継手部材115は、付勢体である押出スプリング116によって押出ロッド114を突出させる側に付勢されている。押出スプリング116は苗取り爪107に対し左右にずらせて配置されているため、苗植付具49が苗押出体108の押し出し方向にコンパクトになり、回転体50の回転方向に設けられた3個の苗植付具49が互いに干渉するのを防いでいる。
【0060】
最終軸82が回転すると、該最終軸82に対し押出カム109が相対的に回転し、押出カム109とカムアーム111とからなるカム機構の働きで押出規制アーム113が揺動する。押出スプリング116を圧縮する位置に押出規制アーム113があるときは、苗押出体108が後退した状態にある。その位置から押出規制アーム113が回動して押出スプリング116の圧縮が緩和されると、押出スプリング116の弾発力で押出ロッド114が押し出され、苗押出体108が突出する。
【0061】
乗用型の田植機2での作業時、前述したように、3個の苗植付具49が作動軌跡Pを描きながら同一軌道上を互いに1/3周期の間隔を保ったまま移動する。苗取出位置で苗取り爪107が苗取出口42aの苗を一株分に分離して取り出す。このとき、苗押出体108は後退した状態にある。苗植付具49が下動して作動軌跡Pの下死点の苗植付位置Bまで移動すると、苗押出体108が突出し、苗取り爪107が保持している苗の土部を下向きに押すことにより、苗を苗取り爪107から押し出して圃場に植付ける。その後、苗植付具49はさらに後方に移動してから、下動時よりも後方の軌道を通って上動する。機体の走行を加味した動軌跡では苗取り爪107が苗植付位置Bを通過後ほぼ真上へ移動するため、先行する苗植付具49が植付けた苗に干渉しない。苗植付位置Bから苗取出位置へ移動するまでの間に、苗押出体108は後退する。
【0062】
このように、この苗植付装置1は、固定支持体79により外側から回転自在に支持された回転体50の左右両側に苗植付具49を設け、1個の回転体で同時に2条に苗を植付けるとともに、各条に3個の苗植付具49を設け、高速植付けが可能な構成になっている。上記構成を実現し、しかも機能性向上、コスト低減を図るため、この苗植付装置1には以下の特徴的な構造が採用されている。
【0063】
まず、固定支持体79は、上下方向に沿う分割面117で前後に2分割される植付伝動部40aの後部材40bに構成されている。分割面117は、回転体50よりも前側で且つ該回転体50の上下長さ以上(略同じ上下長さ)の上下長さで構成されている。植付伝動部40aの後部材40bを取り外すことにより、分割面117位置の開口から苗植付装置1の内部(ギヤ列等)のメンテナンスを容易に行える。尚、植付伝動部40aの後部材40bを取り外すにあたっては、入力用チェーン90を外しながら行う。
【0064】
次に、3本の最終軸82へ伝動するギヤ列は、回転体50の回転中心51上に配置した太陽軸118に太陽ギヤ102を取り付け、遊星ギヤ103を回転自在に支持する遊星軸119を遊星ギヤ103に対応して複数(3本)設け、1本の太陽軸118から複数(3本)の最終軸82へ動力を分岐して伝動する構成としている。また、側面視で3本のうちの2本の最終軸82の間に、回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び第三中間ギヤ100を配置している。
【0065】
また、回転体50の左右中央に駆動スプロケット88を設け、該駆動スプロケット88は中心部が開口した開口部88aを備えており、この開口部88aに太陽軸118を挿通している。駆動スプロケット88の左右一方側(左側)に回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び固定ギヤ106を配置し、駆動スプロケット88と同じ左右位置(駆動スプロケット88の内部の開口部88a)に第三中間ギヤ100及び第四中間ギヤ101を配置し、駆動スプロケット88の左右他方側(右側)に太陽ギヤ102、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104を配置した構成としている。このように、ギヤ列の各ギヤを左右に振り分けて配置することにより、左右のバランスが良好になる。
【0066】
最終ギヤ104は非円形ギヤ(不等径ギヤ)であるため、回転体50の回転位置によって最終軸82に対して最終ギヤ104が外側に張り出す幅が異なる。そこで、最終ギヤ104の最大外径部が外側にくる箇所については、側面視で最終ギヤ104の一部を回転体50よりも外側に突出させ、それに対応する部分だけ固定支持体79の外形を大きくした形状としている。これにより、固定支持体79を必要以上に大きくすることなく、回転体50を小型化できる。
【0067】
このような不等径の最終ギヤ104を採用する場合は、最終ギヤ104が移動経路の下位に位置するとき当該最終ギヤ104の最大外径部が上側になるようにすれば、最終軸82を地面に近づけることが可能になり、苗植付深さの調節範囲を広くできる。
【0068】
入力スプロケット89と駆動スプロケット88の組み合わせによる減速機構を回転体50への伝動の直前に配置することにより、停止クラッチ96を入力スプロケット89よりも伝動上手側に設ければよいので、停止クラッチ96を本例の如く伝動軸91上に設けても、入力用軸94上に設けてもよく、停止クラッチ96の配置の自由度が高くなる。また、停止クラッチ96により回転体50が停止したとき、いずれか1個の苗植付具49が回転体50の回転中心51の直上に位置するようになっている。このようにすると、奇数個(3個)の苗植付具49を含めた回転体50の重量バランスが前後均等になるので、作動停止が確実に行われると共に、停止位置が安定する。また、下側の前後一対の苗植付具49は下端の高さが略同一になるので、作動停止時に地面から下側の苗植付具49までの距離が適正に保たれ、苗植付具49が地面と干渉するのを防げる。更には、回転体50の停止時に苗植付具49が固定支持体79の後端よりも前側にあるので、後方の障害物に苗植付具49が当たることが防げ、苗植付具49の保護に有効である。
【0069】
駆動スプロケット88の内側(開口部88a)には、複数(3本)の最終軸82が各々貫通する複数(3個)の最終軸貫通孔88bと、複数(5本)の左右方向の支持軸83が各々貫通する複数(5個)の支持軸貫通孔88cを設けている。最終軸貫通孔88bと支持軸貫通孔88cは回転体50の回転中心51から同じ距離に設けられ、回転体50の回転方向における120度の位相毎に最終軸貫通孔88bを配置し、回転体50の回転方向における各最終軸貫通孔88bの間に支持軸貫通孔88cを配置している。従って、最終軸82と支持軸83は、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置で且つ互いに異なる位置に配置されている。尚、回転体50の回転方向に沿う3箇所の最終軸82間のうち、2箇所の最終軸82間に各々2本の支持軸83を配置し、残りの1箇所の最終軸82間に1本の支持軸83を配置している。回転体50の回転における残りの1箇所の最終軸82間となる位相には、回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び第三中間ギヤ100を配置しており、支持軸83の配置に制限があるため、他の2箇所の最終軸82間の支持軸83の数よりも残りの1箇所の最終軸82間の支持軸83の数を少なく設定しているのである。
【0070】
支持軸83には、右寄りの位置に軸受(ラジアル・ボール・ベアリング)80を設けている。この軸受80が固定支持体79の円形の内周面に接触し、複数(計5個)の軸受80にて回転体50を回転自在に支持している。尚、固定支持体79の円形の内周面には円形のブッシュ81を設け、該ブッシュ81の内周面が、回転体50の左側の回転側部体50aの接触部位50bの円形の外周面に接触している。従って、回転体50はブッシュ81によっても回転自在に支持されている。前記接触部位50bの内部には支持軸83が貫通しており、支持軸83の左寄りの部分に接触部位50bが位置している。
【0071】
支持軸83は、左端が左側の取付ボルト120により左側の回転側部体50aに取り付け固定され、右端が右側の取付ボルト121により右側の回転側部体50aに取り付け固定されている。左側の取付ボルト120及び右側の取付ボルト121は、支持軸83内に形成した雌ネジ部122に挿入される構成となっており、支持軸83の左右両端部を左右の回転側部体50aに取り付けて固定する左右方向の取付ピンとなる。そして、軸受80側となる右側の取付ボルト121の長さよりもブッシュ81側となる左側の取付ボルト120の長さを長く設定すると共に、左側の取付ボルト120はその先端部がブッシュ81の内周側の位置(ブッシュ81と同じ左右位置)まで延設されている。言い換えれば、左側の取付ボルト120が挿入される左側の雌ネジ部122が、ブッシュ81の内周側の位置(ブッシュ81と同じ左右位置)まで延設されている。
【0072】
また、ブッシュ81は左寄りの位置に配置されているのに対し、最終ギヤ104は右寄りの位置に配置されており、ブッシュ81と最終ギヤ104の左右位置をずらせている。回転体50の回転位置によって非円形ギヤ(不等径ギヤ)である最終ギヤ104が回転体50よりも外側に張り出すが、この状態で側面視で最終ギヤ104とブッシュ81が重複する位置関係となる。また、右寄りの位置に配置される軸受80は、最終ギヤ104と同じ左右位置に位置している。詳しくは、軸受80の左右幅内に最終ギヤ104が収まる構成となっている。これにより、左右の回転側部体50a間の構造物がコンパクトに配置されるので、回転体50ひいては苗植付装置1の左右幅を狭く構成できる。
【0073】
回転ギヤ97及び第一中間ギヤ98の回転中心軸123も、支持軸83と同様に左右の回転中心軸用取付ボルト124により左右の回転側部体50aに取り付け固定されている。左右の回転側部体50a間の最終軸回転伝達機構をメンテナンスするには、例えば、右側の苗植付具49、支持軸83の右側の取付ボルト121及び右側の回転中心軸用取付ボルト124を外し、右側の回転側部体50aを外すことにより、最終軸回転伝達機構を残してその右側を開放でき、その開放部から最終軸回転伝達機構のメンテナンスを容易に行える。従来の如く、回転側部体の取り外しに伴って最終軸回転伝達機構のギヤ列のギヤの噛合が外れると、再度組み付ける際にギヤの位相合わせが困難で煩わしいことがあるが、最終軸回転伝達機構のギヤ列をそのまま残した状態で開放できるので、メンテナンス性が極めて向上する。尚、上述は、右側の回転側部体50aを外して苗植付装置1の内部を開放する場合について説明したが、左側の苗植付具49、支持軸83の左側の取付ボルト120及び左側の回転中心軸用取付ボルト124を外し、左側の回転側部体50aを外すことにより、苗植付装置1の内部を開放してもよい。すなわち、左右何れか一方の回転側部体50aを外して他方の回転側部体50aを残し、苗植付装置1の内部を開放することができる。従って、メンテナンスするべき部材の位置に応じて、駆動スプロケット88よりも右側に配置される太陽ギヤ102、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104やその周辺をメンテナンスするときは、右側の回転側部体50aを取り外し、駆動スプロケット88よりも左側に配置される回転ギヤ97、第一中間ギヤ98及び第二中間ギヤ99やその周辺をメンテナンスするときは、左側の回転側部体50aを取り外せば、他のギヤ等の噛合を解かずに容易にメンテナンスを行うことができる。
【0074】
固定ギヤ106及び駆動スプロケット88は、円形であり、同じく円形である左右の回転側部体50aと略同じ径で左右の回転側部体50aよりも若干小さく、側面視で左右の回転側部体50aと重複する領域すなわち左右一方の回転側部体50aを外したときの開放領域に収まる。従って、前記開放領域から固定ギヤ106及び駆動スプロケット88を出し入れでき、メンテナンス性が向上する。従来は、固定支持体を分割するか又は取り外して固定ギヤを着脱する必要があり、メンテナンスが煩わしいものとなっていた。尚、本例では、固定ギヤ106が固定支持体79のブッシュ81を取り付ける部分に右側から取り付けられているので、右側の回転側部体50aを外せば固定ギヤ106を右側から容易に着脱できる。左右の回転側部体50aと固定支持体79の間にはオイルシール125を設けているので、固定ギヤ106及び駆動スプロケット88の着脱にあたっては前記オイルシール125も取り外す必要がある。
【0075】
全条(6条)分の苗植付装置1の左右外側には、植付伝動部40aからの伝動により回転するバランスウエイト126を設けている。このバランスウエイト126は、側面視で苗植付装置1の回転体50の回転中心51と同じ回転中心回りに、回転体50とは逆方向に回転する構成であり、回転方向の120度の位相ごとの計3箇所の重量部126aを備えている。バランスウエイト126の回転により、苗植付具49が各条で奇数個(3個)設けられた苗植付装置1の作動による振動を打ち消し、苗植付部8ひいては機体の振動を低減している。
【0076】
また、固定支持体79の上部には空気孔127を設けており、この空気孔127により苗植付装置1の固定支持体79と左右の回転側部体50aで囲まれる内部空間の内圧を大気圧に維持している。これにより、回転体50や最終軸回転伝達機構の作動で苗植付装置1の内圧が高くなることにより内部の潤滑油が圃場に洩れ、栽培に悪影響を与えることを防止できる。
【0077】
以上により、この乗用型の田植機2における苗植付装置1は、左右方向の回転中心51回りに回転する回転体50に前記回転中心51に対し偏心した左右方向の最終軸82を回転自在に設け、回転体50から左右に突出する最終軸82の突出部に苗植付具49を一体に取り付けるとともに、回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる最終軸回転伝達機構を設けている。
【0078】
従って、この苗植付装置1は、回転体50が回転中心51回りに回転することにより、苗植付具49が円軌道を移動する。その際、苗植付具49が取り付けられている最終軸82が最終軸回転伝達機構を介して回転体50に対して回転することにより、苗植付具49の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。また、回転体50から左右両側に突出する最終軸82の左右両突出部に苗植付具49を設けて回転体50の左右両側に苗植付具49を設けられるので、1個の回転体50を2条で兼用させ、苗植付装置1全体の軽量化、コストダウンを図ることが可能となるとともに、最終軸回転伝達機構の左右に苗植付具49を配置することができるので、最終軸82ひいては苗植付具49への伝動が安定し植付精度が向上する。
【0079】
そして、苗植付具49の先端部は、側面視でループ状の作動軌跡Pを描いて作動するが、該作動軌跡Pの下死点から上死点までの上動軌跡が、下死点から上下中間部までは斜め後上方へ作動し、上下中間部Dで屈曲して、上下中間部Dから上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部でD大きく作動方向を転じる軌跡となっている。この作動軌跡Pは、最終軸回転伝達機構の不等速伝動により実現されている。これにより、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。詳しくは、下死点から回転体50の30度までは、苗植付具49の動軌跡が下死点から略真上に上動する。
【0080】
また、この苗植付装置1は、固定支持体79の内周側で回転する回転体21を設け、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置に左右方向の最終軸82を回転自在に設け、回転体50から突出する最終軸82の突出部に苗植付具49を取り付け、回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる最終軸回転伝達機構を設け、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置で且つ最終軸82とは異なる位置に左右方向の支持軸83を複数設け、該支持軸83に設けた軸受80が固定支持体20の内周部に接触して回転体21を回転自在に支持している。
【0081】
従って、軸受80を複数設けて適確に回転体50を支持できるので、回転体50を適正に回転させることができる。しかも、最終軸82とは異なる位置に支持軸83を複数設け、該支持軸83に軸受80を設けたので、最終軸82及び支持軸83の各々の軸を小型化でき、苗植付装置1の小型化が図れ、苗植付装置を円滑に作動させることができる。
【0082】
また、固定支持体20の内周側にブッシュ81を設け、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通している。
従って、ブッシュ81を設けると共に、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通すことにより、回転体50を安定して適正に支持でき、固定支持体79と回転体50の同心度が向上し、シール性能が向上すると共に、回転体50の回転による振動の発生を抑えることができる。
【0083】
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸83の左右両端部を左右の回転側部体50aに左右方向の取付ピン120,121で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン120,121のうち、軸受80側に配置される取付ピン121の長さよりも、ブッシュ81側に配置される取付ピン120の長さを長く構成すると共に、ブッシュ81側に配置される取付ピン120はブッシュ81の内周側の位置まで延設している。
【0084】
従って、ブッシュ81側に配置される取付ピン120により、前記接触部位50b近くの支持軸83の支持剛性が向上し、ひいては接触部位50b及びブッシュ81が傾きにくくなるため、回転体50を安定して適正に支持できる。
【0085】
また、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸82と一体回転する最終ギヤ104を、ブッシュ81とは左右方向の位置をずらせて配置している。
従って、側面視で最終ギヤ104と重複する位置にブッシュ81を配置でき、回転体50ひいては苗植付装置1の小型化が図れ、回転体50の回転抵抗が小さくなって苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0086】
また、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸82と一体回転する最終ギヤ104を、軸受80と同じ左右位置に配置している。
従って、回転体50により回転する部分をコンパクトにできて該部分の左右幅を小さくでき、苗植付装置1の小型化が図れる。
【0087】
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右一方の回転側部体50aを取り外しできる構成とし、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ106と、該固定ギヤ106に噛み合うことにより自転しながら回転体50の回転により公転する回転ギヤ97を備え、該回転ギヤ97から最終軸82と一体回転する最終ギヤ104へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体50aと重複する領域に固定ギヤ106が収まる構成としている。
【0088】
従って、左右一方の回転側部体50aを取り外してできる空間から固定ギヤ106を着脱することができ、固定ギヤ106を交換する等のメンテナンスが容易になる。
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体50aを取り外しできる構成としている。
【0089】
従って、左右一方の回転側部体50aを取り外して最終軸回転伝達機構のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
また、苗植付具49の先端部が側面視でループ状の作動軌跡Pを描く構成とし、該作動軌跡Pの下死点Bから上死点までの上動軌跡が、下死点Bから上下中間部までは斜め後上方へ作動し、上下中間部Dから上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部Dで大きく作動方向を転じる軌跡である。
【0090】
従って、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。
【0091】
また、この発明の実施の形態は最終軸回転伝達機構として回転体50内部に設けたギヤ列について説明したが、最終軸回転伝達機構として回転体50内部に固定支持体79側に固定された苗植付具姿勢変更用カムを設け、該カムにより回転体50の回転に伴って移動する苗植付具49(最終軸82)の位置に応じて最終軸82を適宜回転させて該苗植付具49の姿勢を変化させる構成としてもよい。これにより、前述のギヤ列に比較して部品点数が少なくなり、コストダウンが図れる。このとき、左右2条分の苗植付具49における苗植付具姿勢変更用カムを共通のものとすれば、更に部品点数を削減できる。また、回転体50の回転により最終軸が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするため、最終軸82を左右の苗植付具49に対応して左右に分割し、この左右の最終軸82の間に苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。また、前述のように最終軸82を左右の苗植付具49で共通のものとしながら最終軸82が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするには、機体側面視で複数本(3本)の最終軸82の内側又は外側にのみ苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。尚、前記苗植付具姿勢変更用カムを駆動スプロケット88内部の開口部(空間部)88aに配置すれば、回転体50内部のスペ−スの有効利用が図れて苗植付装置1の更なる小型化を図ることができる。
【0092】
ところで、従来の各条で2個の苗植付具49を設けた回転体50を備える苗植付装置1において、回転体50を駆動する軸128と回転体50をキーにより一体回転させる構成としているが、キーのガタが発生し回転体50が円滑に回転しないことが考えられる。そこで、前記軸128に針金状のスプリング129を設け、該スプリング129により回転体50を回転方向に加勢する構成とすれは、2個の苗植付具49が上下に位置する死点で回転体50の回転速度が低下しにくくなって回転体50を円滑に回転させることができ、ひいては回転体50を高速で回転させて高速植付が可能になる。尚、前述の各条で3個の苗植付具49を設けた苗植付装置1においても、スプリングにより回転体50を加勢する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は苗植付装置に限定せず、苗載台から苗を取り出す苗取出行程において使用する苗取出装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
14…苗植付装置、21…回転体、24…回転中心、25…最終軸、26…苗植付具、35…回転ギヤ、36…中間ギヤ、39…最終ギヤ、40…固定ギヤ、83…角度変更用ボルト
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機等の苗移植機に設けられる苗植付装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
固定支持体の内周側で回転する回転体を設け、該回転体の回転中心に対し偏心した位置に左右方向の最終軸を回転自在に設け、回転体から突出する最終軸の突出部に苗植付具を取り付け、回転体の回転に伴って該回転体に対して最終軸を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、固定支持体と回転体の間に、回転体を回転自在に支持する軸受を設けたものが公知である。この苗植付装置は、回転体には左右の回転側部体を備え、左右の回転側部体の間で且つ固定支持体の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤと、該固定ギヤに噛み合うことにより自転しながら回転体の回転により公転する回転ギヤを備え、該回転ギヤから最終軸と一体回転する最終ギヤへ伝達する構成としている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記苗植付装置の小型化を図り、ひいては植付性能の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した苗植付装置とした。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、固定支持体(79)の内周側にブッシュ(81)を設け、該ブッシュ(81)に接触する回転体(50)の接触部位(50b)に支持軸(83)を通した請求項1に記載の苗植付装置とした。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸(83)の左右両端部を左右の回転側部体(50a)に左右方向の取付ピン(120,121)で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン(120,121)のうち、軸受(80)側に配置される取付ピン(121)の長さよりも、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)の長さを長く構成すると共に、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)はブッシュ(81)の内周側の位置まで延設した請求項2に記載の苗植付装置とした。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、ブッシュ(81)とは左右方向の位置をずらせて配置した請求項2又は請求項3に記載の苗植付装置とした。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、軸受(80)と同じ左右位置に配置した請求項2から請求項4の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とし、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ(106)と、該固定ギヤ(106)に噛み合うことにより自転しながら回転体(50)の回転により公転する回転ギヤ(97)を備え、該回転ギヤ(97)から最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体(50a)と重複する領域に固定ギヤ(106)が収まる構成とした請求項2から請求項5の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とした請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、苗植付具(49)の先端部が側面視でループ状の作動軌跡(P)を描く構成とし、該作動軌跡(P)の下死点(B)から上死点までの上動軌跡が、下死点(B)から上下中間部(D)までは斜め後上方へ作動し、上下中間部(D)から上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部(D)で大きく作動方向を転じる軌跡である請求項1から請求項7の何れか1項に記載の苗植付装置とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、軸受80を複数設けて適確に回転体50を支持できるので、回転体50を適正に回転させることができる。しかも、最終軸82とは異なる位置に支持軸83を複数設け、該支持軸83に軸受80を設けたので、最終軸82及び支持軸83の各々の軸を小型化でき、苗植付装置1の小型化が図れ、苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、ブッシュ81を設けると共に、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通すことにより、回転体50を安定して適正に支持でき、固定支持体79と回転体50の同心度が向上し、シール性能が向上すると共に、回転体50の回転による振動の発生を抑えることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、請求項2に係る発明の効果に加えて、ブッシュ81側に配置される取付ピン120により、前記接触部位50b近くの支持軸83の支持剛性が向上し、ひいては接触部位50b及びブッシュ81が傾きにくくなるため、回転体50を安定して適正に支持できる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、請求項2又は請求項3に係る発明の効果に加えて、側面視で最終ギヤ104と重複する位置にブッシュ81を配置でき、回転体50ひいては苗植付装置1の小型化が図れ、回転体50の回転抵抗が小さくなって苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によると、請求項2から請求項4の何れか1項に係る発明の効果に加えて、回転体50により回転する部分をコンパクトにできて該部分の左右幅を小さくでき、苗植付装置1の小型化が図れる。
【0018】
請求項6に係る発明によると、請求項2から請求項5の何れか1項に係る発明の効果に加えて、左右一方の回転側部体50aを取り外してできる空間から固定ギヤ106を着脱することができ、固定ギヤ106を交換する等のメンテナンスが容易になる。
【0019】
請求項7に係る発明によると、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明の効果に加えて、左右一方の回転側部体50aを取り外して最終軸回転伝達機構のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
【0020】
請求項8に係る発明によると、請求項1から請求項7の何れか1項に係る発明の効果に加えて、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用型の田植機の側面図
【図2】乗用型の田植機の平面図
【図3】植付クラッチを示す一部断面側面図
【図4】ステアリングハンドルによる前輪操向操作の構成を示す斜視図
【図5】後輪回転センサを示すミッションケースの一部の断面側面図
【図6】旋回連動制御のイメージを示す図
【図7】制御ブロック図
【図8】旋回連動制御のフローチャート
【図9】苗植付装置を示す一部断面側面図
【図10】固定ギヤ、回転ギヤ及び中間ギヤを示す苗植付装置の断面側面図
【図11】太陽ギヤ、遊星ギヤ及び最終ギヤを示す苗植付装置の断面側面図
【図12】苗植付装置の断面展開平面図
【図13】異なる苗植付装置を示す一部断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
図1及び図2は苗植付装置1を装備した乗用型の田植機2を表している。この乗用型の田植機2は、エンジン3を搭載し駆動回転する左右の前輪4及び左右の後輪5を備えた走行車体6の後方に、昇降リンク装置7を介して6条植の苗植付部8が連結されている。走行車体6の後側で且つ苗植付部8の前側には、施肥装置9を設けている。また、走行車体6の前部の左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台10を、機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けている。
【0023】
走行車体6は、左右の前輪4及び左右の後輪5を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース11が配置され、そのミッションケース11の左右側方に前輪ファイナルケース12が設けられ、該左右の前輪ファイナルケース12の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸13に左右の前輪4が各々取り付けられている。また、ミッションケース11の背面部にメインフレーム14の前端部が固着されており、そのメインフレーム14の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース15がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース15から外向きに突出する後輪車軸16に後輪5が取り付けられている。
【0024】
エンジン3はメインフレーム14の上に搭載されており、該エンジン3の回転動力が、ベルト伝動装置である伝動装置17及び油圧式変速装置(HST)18を介してミッションケース11に伝達される。尚、油圧式変速装置18は、無段変速装置であり、ハンドル19の側方に設けた変速レバー20の操作により変速操作される。変速レバー20は、無段変速装置である油圧式変速装置18を、カムにより有段感覚をもたせて有段変速操作する構成である。ミッションケース11に伝達された回転動力は、該ミッションケース11内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪ファイナルケース12に伝達されて前輪4を駆動すると共に、ミッションケース11の後面から後方に延びる左右の後輪伝動軸21を介して各々の後輪ギヤケース15に伝達され、後輪5を駆動する。尚、ミッションケース11の後部には左右各々のサイドクラッチ22を設け,該サイドクラッチ22を介して各々の後輪伝動軸21へ伝動される。また、外部取出動力は、走行車体6の後部に設けた植付クラッチケース23に伝達され、それから苗植付部伝動軸によって苗植付部8へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置9へ伝動される。
【0025】
エンジン3の上部はエンジンカバー24で覆われており、その上に座席25が設置されている。座席25の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー26があり、その上方に前輪4を操向操作するハンドル19が設けられている。エンジンカバー24及びフロントカバー26の下端左右両側は水平状のフロアステップ27になっている。フロアステップ27は一部格子状になっており、該フロアステップ27を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ27上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ28となっている。
【0026】
メインフレーム14と昇降リンク装置7の間に昇降油圧シリンダ29が設けられており、該昇降油圧シリンダ29を油圧で伸縮させることにより、昇降リンク装置7が上下に回動し、苗植付部8がほぼ一定姿勢のまま昇降する。尚、走行車体6に設けた油圧ポンプからの油圧が油圧バルブ(電磁油圧バルブ)30を介して昇降油圧シリンダー29に供給され、油圧バルブ30の切替により昇降リンク装置7すなわち苗植付部8が昇降する構成となっている。
【0027】
施肥装置9は、肥料ホッパ31に貯留されている粒状の肥料を繰出部32によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース33でセンターフロート34及びサイドフロート35に取り付けた施肥ガイド36まで導き、施肥ガイド36の前側に設けた作溝体37によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ38で駆動するブロア39で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバを経由して施肥ホース33に吹き込まれ、施肥ホース33内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0028】
苗植付部8は、走行車体6から伝動入力される伝動ケース40の上側に前部が上位となるように傾斜した苗載台41を設けるとともに、伝動ケース40の植付伝動部40aの後端部に2条ごとで1組の苗植付装置1を設けている。苗載台41は、苗取出口42aを備える左右方向に設けた横枠42に沿って左右動自在に支持され、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口42aに供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口42aに供給すると苗送りベルト43により苗を所定量だけ下方に移送する構成となっている。従って、センターフロート34及びサイドフロート35からなるフロートを接地させた状態で機体を進行させると、苗載台41の左右往復移動又は苗送りベルト43の移送によりマット苗を苗取出口42aに一株分づつ順次供給し、それを苗植付装置1が分離して取り出し圃場に植え付ける。前記苗送りベルト43は、下側の駆動ローラ44と上側の従動ローラ45に張架されている。
【0029】
苗植付部8には、整地装置46であるサイドロータ46a及びセンタロータ46bが取り付けられている。この整地装置46は、左側の後輪ギヤケース15からの動力により整地伝動軸47を介して伝動される。
【0030】
また、苗植付部8には、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ48を備えている。苗植付部8の下部の中央にはセンターフロート34、その左右両側にサイドフロート35がそれぞれ設けられている。これらセンターフロート34及びサイドフロート35を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート34及びサイドフロート35が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置1により苗が植付けられる。センターフロート34及びサイドフロート35の各々のフロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート34の前部の上下動が迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ29を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部8を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0031】
植付クラッチケース23内には、苗植付装置1を所望の位相(3個の苗植付具49のうち、1個が回転体50の回転中心51の真上で、残りの2個が下側の略同じ高さで前後に位置する位相)で停止させるための定位置停止クラッチである植付クラッチ52を設けている。この植付クラッチ52は、駆動クラッチ爪を備える駆動クラッチ体53と、従動クラッチ爪を備える従動クラッチ体54と、該従動クラッチ体54を駆動クラッチ体53側へ押す植付クラッチスプリング55を設け、苗植付部8の駆動を入切する。従動クラッチ体54の外周面にクラッチ操作用溝54aを設けると共に、該クラッチ操作用溝54aに挿入されるクラッチピン56を設け、該クラッチピン56がクラッチ操作用溝54aに挿入されることにより、クラッチ操作用溝54aの傾斜面に案内されながら徐々に従動クラッチ体54が駆動クラッチ体53から離れる側に移動し、従動クラッチ体54の回転において定位置で従動クラッチ体54と駆動クラッチ体53の噛合が外れて伝動を断つ構成となっている。尚、クラッチピン56はPTOクラッチ作動ソレノイド57の駆動により操作され、PTOクラッチ作動ソレノイド57はフィンガレバー58の操作によるフィンガレバースイッチ58aの入力信号により制御装置59を介して作動する。
【0032】
また、変速レバー20の操作位置を検出する変速レバーセンサ20aを設け、変速レバー20が後進操作域に操作されていることを変速レバーセンサ20aが検出することによってもPTOクラッチ作動ソレノイド57を植付クラッチが切状態にするべく作動させる。これにより、後進操作に伴ってバックリフト連動機構により苗植付部8を上昇させたときに植付クラッチ52も切操作し、その後、再度前進するときに苗植付部8を上昇させたまま駆動する不具合を防止している。しかしながら、後進時は、油圧式変速装置18が逆転するため、植付クラッチ52への伝動経路に逆転防止クラッチ(一方向クラッチ)を設けて植付クラッチ52への伝動を断つ構成としているので、従来は、PTOクラッチ作動ソレノイド57によりクラッチピン56がクラッチ操作用溝54aに挿入されても植付クラッチ52ひいては駆動クラッチ体53が回転せず植付クラッチ52が切状態とならない。そうすると、再度前進するときに、植付クラッチ52が停止する定位置まで回転し違和感を感じるばかりでなく苗植付具49が既に保持した苗を振り落とす可能性がある。そこで、有段操作される変速レバー20が前進側の最低速位置(前進1段目位置)から前後進中立位置へ操作される途中の位置であることを変速レバーセンサ20aが検出すると、制御装置59によりPTOクラッチ作動ソレノイド57を作動させて植付クラッチ52を切操作する。これにより、前進走行が停止する直前に植付クラッチ52を切操作して、走行停止時には確実に植付クラッチ52を定位置で停止させることができる。
【0033】
ハンドル19は、フロントカバー26内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸59に伝動される。そして、出力軸59の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム60が固定されている。該ピットマンアーム60の前部左右側と左右の前輪ファイナルケース12とは左右のロッド61にて連結されている。
【0034】
従って、ハンドル19を回動操作すると、ステアリング軸、ステアリング変速歯車、出力軸59、ピットマンアーム60、左右のロッド61、左右の前輪ファイナルケース12へと伝達されて、左右の前輪4が左右操向操作される。
【0035】
一方、ピットマンアーム60の後部上面には、作動ローラ62が回転自在に設けられており、その作動ローラ62の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部63を有する従動体64がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体64の左右両側部には、左右のクラッチ操作アーム65に連結された左右の第二ロッド66の前部が連結されている。従って、ハンドル19を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム60も右回動し、作動ローラ62が従動体64の切欠き部63の左側面63aを押すために、従動体64を回動させ右の第二ロッド66を引き、右のクラッチ操作アーム65が操作されて右のサイドクラッチ22が切れ、旋回中心側となる右側の後輪5が遊転状態となるので、右側の後輪5が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。
【0036】
逆に、ハンドル19を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム60も左回動し、作動ローラ62が従動体64の切欠き部63の右側面63bを押すために、従動体64を回動させ左の第二ロッド66を引き、左のクラッチ操作アーム65が操作されて左のサイドクラッチ22が切れ、旋回中心側となる左側の後輪5が遊転状態となるので、左側の後輪5が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0037】
更に、ピットマンアーム60の前部上面には、左右センサ押板67が設けられており、ハンドル19を左右何れかに200度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ68がONになる(ハンドル19は左右に最大360度〜400度回転する)。
【0038】
これらのピットマンアーム60、左右のロッド61、作動ローラ62、切欠き部63、従動体64、第二ロッド66、左右センサ押板67及びオートリフトスイッチ68により、旋回連繋機構69が構成されている。
【0039】
従って、機体旋回時にサイドクラッチ22が切り操作されて、機体の旋回に伴って圃場に接地しているが為に回転する旋回内側となる後輪5の回転数(旋回内側となる後輪5の後輪伝動軸21の回転数)の検出に基づいて走行距離を算出すると、駆動されている車輪よりもスリップなどの影響を受け難く、その走行距離の算出が正確に行えて、最適な自動旋回制御が行える。そこで、左右の後輪5の各々の後輪伝動軸21に回転検出用歯車70を固定して設けて、該回転検出用歯車70の回転数を左右各々の後輪回転センサ71で検出し、後輪5の回転数を判断する構成としている。
【0040】
後輪回転センサ71は、ミッションケース11の上面部に設けてあり、ミッションケース11から左右に突出しないようにしている。これは、ミッションケース11の左右には、左右の前輪4が配置されているためであり、このように、後輪回転センサ71をミッションケース11の上面部に設けてミッションケース11から左右に突出しないようにすると、左右の前輪4が操向操作される時に邪魔にならず、操向角度が大きくできて、小型の機体構成で旋回半径の小さい機体を得ることができ、最適な機体の旋回が行える。更に、後輪回転センサ71がミッションケース11の上面部に設けられているので、後輪回転センサ71に泥が付着することが少なくなって、耐久性もよくなり、後述する機体の旋回制御を長期に亘って良好に行える。
【0041】
また、ハンドル19を左右何れかに回転させた時にオートリフトスイッチ68がONになると、制御装置59の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ30を作動させる電磁ソレノイドを制御して昇降油圧シリンダー29にて苗植付部8を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0042】
このように、畦際で機体を旋回させるためにハンドル19を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ68がONになり、自動的に苗植付部8は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部8を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0043】
また、制御装置59は、旋回内側の後輪5の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御を実行する。この旋回連動制御は、ハンドル19を切り、旋回内側の後輪5のサイドクラッチ22が切れた状態である所定値以上の操作角度にハンドル19が操作されたことをハンドル切れ角センサ72が検出すると、走行距離検出センサとなる後輪回転センサ71により、旋回内側の後輪伝動軸21の回転数の検出を開始し、旋回時の内側の後輪5の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部8を下降させる。その後、後輪5の伝動軸回転数が設定値と苗植付部8の作動が「切り」状態に入ってからハンドル19の切り操作開始までの後輪5の後輪伝動軸21の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
【0044】
まず、第一の設定回転数N1(旋回開始から旋回完了前までの内側の後輪伝動軸21回転信号設定値)、第二の設定回転数N2(旋回開始から旋回完了し更に植付「入り」にするまでの距離を走行する間の内側の後輪伝動軸21回転信号設定値)、θ1(左旋回と判断する閾値)、θ2(右旋回と判断する閾値)をセットする。
【0045】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記第1の設定回転数N1、第2の設定回転数N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節するθ1の設定ダイヤル73、θ2の設定ダイヤル74、N1の設定ダイヤル75及びN2の設定ダイヤル76により、補正値n0を設定する。
【0046】
苗植付部8が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー58の操作に伴う制御装置59の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、植付「切」になってからハンドル19が旋回操作されたことをハンドル切れ角センサ72が検出するまでの後輪5の後輪伝動軸21の回転数nを左右の後輪回転センサ71で検出して、その値(n)を記憶しておく。尚、前記値(n)は、左右の後輪回転センサ71の検出値を平均した値とするが、左右一方の後輪回転センサ71の検出値としてもよい。次いで、ハンドル19の切り角度(操舵角度)θをハンドル19のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)72で検出して旋回を開始したかどうかを検出する。
【0047】
左旋回中であると左の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出して、回転数n1がN1+n0以上になると、旋回開始から機体が所定角度旋回する距離を走行したことになるので苗植付部8を下降する。その後、左の後輪5の後輪伝動軸21の回転数n2がN2+n+n0以上になると、旋回が完了し更に前行程の植え終わり位置に揃う位置まで苗植付部8の苗植付装置1が到達したことになるので、植付クラッチ「入り」が行われ、苗植付装置1を作動させて苗の植え付けを開始させる。これにより、前行程の植え終わり位置に揃う位置で苗の植え付けが開始される。尚、右旋回の場合にも左旋回時と同様の制御が行われる。
【0048】
このようにサイドクラッチ22が切れている後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪5の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪5より回転の速い後輪伝動軸21の回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
【0049】
また、植付クラッチケース23から植付伝動軸への出力部には油圧式無段変速装置で構成される株間変速装置を設け、該株間変速装置により機体の走行に対する苗植付部8の駆動速度を変速して植付株間を変更する構成となっている。株間変速装置は、株間変速モータ77の駆動により油圧式無段変速装置を変速操作する構成となっている。フロントカバー26部に設けた株間調節ダイヤル78からの信号により制御装置59を介して株間変速モータ77へ出力し、株間調節ダイヤル78の操作に基づく植付株間に設定する。そして、ハンドル19を所定角度以上操作した旋回中であることをオートリフトスイッチ68が検出するとき、左右の後輪回転センサ71により、サイドクラッチ22が切れている旋回内側の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出すると共に、駆動する旋回外側の後輪5の後輪伝動軸21の回転数を検出する。このとき、機体の旋回走行に伴う左右の後輪5の走行経路はあまり異ならないため、旋回内側の後輪5の走行距離と旋回外側の後輪5の走行距離の比率は所定の適正値(後輪5のトレッド等の機体の構造によって決まる値、本例では1:5)となるが、駆動する旋回外側の後輪5はスリップを発生するために回転数が大きくなる。そこで、制御装置59により、左右の後輪回転センサ71の検出値の比率を前記適正値と比較して圃場における走行スリップ率を判断し、植付株間を適正にするべく株間変速モータ77へ出力する。走行スリップ率は、検出した旋回外側の後輪5の走行距離と、検出した旋回内側の後輪5の走行距離に定数(本例では5)を乗じて得られる旋回外側理想走行距離の差を、旋回外側理想走行距離で除して得られる。この走行スリップ率に比例して、株間調節ダイヤル78に基づく株間変速装置の変速比に対して該変速比を変更するべく株間変速モータ77を駆動し、走行スリップの発生に拘らず所望の株間で植付するようにしている。これにより、圃場で使用する苗量(苗の枚数)を所望に安定させることができ、植付作業において苗が不足したり、不足しないように苗を大量に準備して多くの苗を無駄にしてしまったり、多くの苗を要して頻繁に苗補給作業を行ったりする不具合を抑えることができ、省力化及び低コスト化が図れる。
【0050】
尚、その圃場における最初の旋回時に走行スリップ率を検出し、該走行スリップ率に基づき当該圃場での以降の植付作業において株間変速装置の変速比を設定すればよい。又は、旋回するたびに走行スリップ率を検出し株間変速装置の変速比を制御すれば、圃場内の局所毎の走行スリップ率の相違に対応でき、株間を高精度で制御できる。
【0051】
尚、上例では株間変速装置を油圧式無段変速装置としたが、苗植付部8の動力源となる電動モータにより株間変速装置を構成し、電動モータの駆動速度を制御して株間を制御する構成としてもよい。
【0052】
また、上例では旋回中に検出される走行スリップ率から所望の株間となる株間変速装置の変速比を演算する構成について説明したが、旋回は圃場の畦際で行われることが多く、圃場の畦際は旋回の頻度が高いので耕盤が深くなって走行スリップ率が大きくなる傾向がある。そこで、往復走行おける圃場内側部での直進植付に適合させるべく、旋回中に検出した走行スリップ率を小さく補正し、その補正した走行スリップ率から株間変速装置の変速比を演算する構成としてもよい。
【0053】
ところで、苗植付装置1は、植付伝動部40aの後端に側面視環状の固定支持体79が一体に設けられ、その内側に回転体50が後述する軸受(ラジアル・ボール・ベアリング)80及びブッシュ81を介して回動自在に嵌合している。回転体50は左右の回転側部体50aを備えて構成され、この左右の回転側部体50aが、後述する最終軸82及び支持軸83等を含む左右の回転側部体50a間に設けた左右方向の軸により連結されて一体回転する構成となっている。回転体50には、その回転中心51を中心とする円周上に互いに120度の位相で3本の最終軸83が回動自在に設けられ、それぞれの最終軸82の回転体50から突出する左右両端部に苗植付具49がそれぞれ一体に取り付けられる構成となっている。
【0054】
前記最終軸82は、断面が円形となる丸軸状に形成され、中途部にキ−溝84を備え、左右両端の回転体50からの突出部では外面が四角形状に形成されている。この最終軸82の左右両端の外面四角形状の突出部にそれぞれ四角形状の内面を備える苗植付具49の装着用孔85を嵌合させて左右の苗植付具49を取り付けている。また、苗植付具49の装着用孔85部分には、最終軸82の左右両端の突出部が嵌る位置に苗植付具固定用孔86を設けている。この苗植付具固定用孔86に挿入される固定ピン87により、最終軸82に苗植付具49が左右移動しないように固定される。
【0055】
回転体50の内部には、該回転体50と一体回転する等径(円形)の駆動スプロケット88が設けられている。この駆動スプロケット88を植付伝動部40aの後端部に設けた等径(円形)の入力スプロケット89で入力用チェーン90を介して減速して伝動し回転させることにより、回転体50が回転する。また、植付伝動部40a内の伝動軸91と一体回転する分岐駆動スプロケット92から、チェーン伝動装置93を介して入力用軸94と一体回転する分岐従動スプロケット95へ伝動し、入力用軸94と入力スプロケット89が一体回転する構成となっている。分岐駆動スプロケット92は、各2条毎に設けられ、植付条数に応じて伝動軸91に複数(本例では3個)設けられている。なお、伝動軸91上には該伝動軸91から分岐駆動スプロケット92へ伝動する停止クラッチ96を設けており、該停止クラッチ96により伝動を切ったとき分岐駆動スプロケット92ひいては入力スプロケット89及び駆動スプロケット88ひいては回転体50が所定の位相(定位置:回転体50の回転における120度ごとの3箇所)で停止する構成となっている。駆動スプロケット88の歯数は、入力スプロケット89の歯数の3倍である。
【0056】
また、回転体50の内部には、最終軸82へ伝動するための最終軸回転伝達機構となるギヤ列が設けられている。このギヤ列は、回転体50の回転中心51を中心として円軌道を移動しながら回転する回転ギヤ97と、該回転ギヤ97と一体回転する楕円形の第一中間ギヤ98と、該第一中間ギヤ98に噛合する不等径(非円形)の第二中間ギヤ99と、該第二中間ギヤ99と一体回転する不等径(非円形)の第三中間ギヤ100と、該第三中間ギヤ100に噛合し回転体50の回転中心51を中心に回転する不等径(正三角形の近似形、おむすび形)の第四中間ギヤ101と、第四中間ギヤ101と一体回転する不等径(非円形)の太陽ギヤ102と、該太陽ギヤ102に噛合する複数(3個)の不等径(非円形)の遊星ギヤ103と、複数の各々の遊星ギヤ103に噛み合う各々(複数、3個)の最終ギヤ104により構成されている。最終ギヤ104は、最終軸82のキ−溝84に嵌合するキ−105を介して前記最終軸82と係合している。従って、最終ギヤ104と最終軸82が一体回転し、回転体50の内部のギヤ列により最終軸82を回転させる構成となっており、前記ギヤ列により回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる。尚、回転ギヤ97は、固定支持体79に固定された内歯の固定ギヤ106と噛合し、回転体50の回転に連動して円軌道を公転しながら自転する。
【0057】
また、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104は、各々2枚のギヤの歯の位相を若干ずらせたシザースギヤで構成されており、ギヤのバックラッシによるガタを抑え、苗植付具49の作動が精度良く適正に行われるように作用する。これにより、格別なガタ取り機構が不要になり、苗植付装置1の小型化及び軽量化が図れる。
【0058】
回転体50が回転すると、1条における3個の苗植付具49が円軌道を移動する。そのとき、回転体50の回転に連動する回転ギヤ97の作動がギヤ列を介して最終軸82へ伝達され、苗植付具49の姿勢が変化する。これにより、苗植付具49は、後記苗取り爪107の先端が作動軌跡(静軌跡:機体の走行を加味しない軌跡)Pを描くように作動する。作動軌跡Pにおいて下死点から更に後方へ移動する行程Cが含まれていることにより、機体の走行を加味した動軌跡では苗取り爪107が下死点から略真上へ移動するようになっている。
【0059】
苗植付具49には、先端部が鋭利に形成された二股フォーク状の苗取り爪107と、該苗取り爪の下側で突出・後退作動をする苗押出体108とが設けられている。苗押出体108の作動機構は次のようになっている。最終軸82の端部の外周に回転自在に設けた押出カム109の外周面に、アーム軸110に回動自在に軸支されたカムアーム111が接触している。各押出カム109は、回転体50の側面に爪部112を介して取り付けられ、回転体50と一体で回転する構成となっている。また、アーム軸110にはカムアーム111と一体に回動する押出規制アーム113が軸支されていて、該押出規制アーム113の先端部と苗押出体108を支持する押出ロッド114の端部とが継手部材115を介して連結されている。継手部材115は、付勢体である押出スプリング116によって押出ロッド114を突出させる側に付勢されている。押出スプリング116は苗取り爪107に対し左右にずらせて配置されているため、苗植付具49が苗押出体108の押し出し方向にコンパクトになり、回転体50の回転方向に設けられた3個の苗植付具49が互いに干渉するのを防いでいる。
【0060】
最終軸82が回転すると、該最終軸82に対し押出カム109が相対的に回転し、押出カム109とカムアーム111とからなるカム機構の働きで押出規制アーム113が揺動する。押出スプリング116を圧縮する位置に押出規制アーム113があるときは、苗押出体108が後退した状態にある。その位置から押出規制アーム113が回動して押出スプリング116の圧縮が緩和されると、押出スプリング116の弾発力で押出ロッド114が押し出され、苗押出体108が突出する。
【0061】
乗用型の田植機2での作業時、前述したように、3個の苗植付具49が作動軌跡Pを描きながら同一軌道上を互いに1/3周期の間隔を保ったまま移動する。苗取出位置で苗取り爪107が苗取出口42aの苗を一株分に分離して取り出す。このとき、苗押出体108は後退した状態にある。苗植付具49が下動して作動軌跡Pの下死点の苗植付位置Bまで移動すると、苗押出体108が突出し、苗取り爪107が保持している苗の土部を下向きに押すことにより、苗を苗取り爪107から押し出して圃場に植付ける。その後、苗植付具49はさらに後方に移動してから、下動時よりも後方の軌道を通って上動する。機体の走行を加味した動軌跡では苗取り爪107が苗植付位置Bを通過後ほぼ真上へ移動するため、先行する苗植付具49が植付けた苗に干渉しない。苗植付位置Bから苗取出位置へ移動するまでの間に、苗押出体108は後退する。
【0062】
このように、この苗植付装置1は、固定支持体79により外側から回転自在に支持された回転体50の左右両側に苗植付具49を設け、1個の回転体で同時に2条に苗を植付けるとともに、各条に3個の苗植付具49を設け、高速植付けが可能な構成になっている。上記構成を実現し、しかも機能性向上、コスト低減を図るため、この苗植付装置1には以下の特徴的な構造が採用されている。
【0063】
まず、固定支持体79は、上下方向に沿う分割面117で前後に2分割される植付伝動部40aの後部材40bに構成されている。分割面117は、回転体50よりも前側で且つ該回転体50の上下長さ以上(略同じ上下長さ)の上下長さで構成されている。植付伝動部40aの後部材40bを取り外すことにより、分割面117位置の開口から苗植付装置1の内部(ギヤ列等)のメンテナンスを容易に行える。尚、植付伝動部40aの後部材40bを取り外すにあたっては、入力用チェーン90を外しながら行う。
【0064】
次に、3本の最終軸82へ伝動するギヤ列は、回転体50の回転中心51上に配置した太陽軸118に太陽ギヤ102を取り付け、遊星ギヤ103を回転自在に支持する遊星軸119を遊星ギヤ103に対応して複数(3本)設け、1本の太陽軸118から複数(3本)の最終軸82へ動力を分岐して伝動する構成としている。また、側面視で3本のうちの2本の最終軸82の間に、回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び第三中間ギヤ100を配置している。
【0065】
また、回転体50の左右中央に駆動スプロケット88を設け、該駆動スプロケット88は中心部が開口した開口部88aを備えており、この開口部88aに太陽軸118を挿通している。駆動スプロケット88の左右一方側(左側)に回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び固定ギヤ106を配置し、駆動スプロケット88と同じ左右位置(駆動スプロケット88の内部の開口部88a)に第三中間ギヤ100及び第四中間ギヤ101を配置し、駆動スプロケット88の左右他方側(右側)に太陽ギヤ102、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104を配置した構成としている。このように、ギヤ列の各ギヤを左右に振り分けて配置することにより、左右のバランスが良好になる。
【0066】
最終ギヤ104は非円形ギヤ(不等径ギヤ)であるため、回転体50の回転位置によって最終軸82に対して最終ギヤ104が外側に張り出す幅が異なる。そこで、最終ギヤ104の最大外径部が外側にくる箇所については、側面視で最終ギヤ104の一部を回転体50よりも外側に突出させ、それに対応する部分だけ固定支持体79の外形を大きくした形状としている。これにより、固定支持体79を必要以上に大きくすることなく、回転体50を小型化できる。
【0067】
このような不等径の最終ギヤ104を採用する場合は、最終ギヤ104が移動経路の下位に位置するとき当該最終ギヤ104の最大外径部が上側になるようにすれば、最終軸82を地面に近づけることが可能になり、苗植付深さの調節範囲を広くできる。
【0068】
入力スプロケット89と駆動スプロケット88の組み合わせによる減速機構を回転体50への伝動の直前に配置することにより、停止クラッチ96を入力スプロケット89よりも伝動上手側に設ければよいので、停止クラッチ96を本例の如く伝動軸91上に設けても、入力用軸94上に設けてもよく、停止クラッチ96の配置の自由度が高くなる。また、停止クラッチ96により回転体50が停止したとき、いずれか1個の苗植付具49が回転体50の回転中心51の直上に位置するようになっている。このようにすると、奇数個(3個)の苗植付具49を含めた回転体50の重量バランスが前後均等になるので、作動停止が確実に行われると共に、停止位置が安定する。また、下側の前後一対の苗植付具49は下端の高さが略同一になるので、作動停止時に地面から下側の苗植付具49までの距離が適正に保たれ、苗植付具49が地面と干渉するのを防げる。更には、回転体50の停止時に苗植付具49が固定支持体79の後端よりも前側にあるので、後方の障害物に苗植付具49が当たることが防げ、苗植付具49の保護に有効である。
【0069】
駆動スプロケット88の内側(開口部88a)には、複数(3本)の最終軸82が各々貫通する複数(3個)の最終軸貫通孔88bと、複数(5本)の左右方向の支持軸83が各々貫通する複数(5個)の支持軸貫通孔88cを設けている。最終軸貫通孔88bと支持軸貫通孔88cは回転体50の回転中心51から同じ距離に設けられ、回転体50の回転方向における120度の位相毎に最終軸貫通孔88bを配置し、回転体50の回転方向における各最終軸貫通孔88bの間に支持軸貫通孔88cを配置している。従って、最終軸82と支持軸83は、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置で且つ互いに異なる位置に配置されている。尚、回転体50の回転方向に沿う3箇所の最終軸82間のうち、2箇所の最終軸82間に各々2本の支持軸83を配置し、残りの1箇所の最終軸82間に1本の支持軸83を配置している。回転体50の回転における残りの1箇所の最終軸82間となる位相には、回転ギヤ97、第一中間ギヤ98、第二中間ギヤ99及び第三中間ギヤ100を配置しており、支持軸83の配置に制限があるため、他の2箇所の最終軸82間の支持軸83の数よりも残りの1箇所の最終軸82間の支持軸83の数を少なく設定しているのである。
【0070】
支持軸83には、右寄りの位置に軸受(ラジアル・ボール・ベアリング)80を設けている。この軸受80が固定支持体79の円形の内周面に接触し、複数(計5個)の軸受80にて回転体50を回転自在に支持している。尚、固定支持体79の円形の内周面には円形のブッシュ81を設け、該ブッシュ81の内周面が、回転体50の左側の回転側部体50aの接触部位50bの円形の外周面に接触している。従って、回転体50はブッシュ81によっても回転自在に支持されている。前記接触部位50bの内部には支持軸83が貫通しており、支持軸83の左寄りの部分に接触部位50bが位置している。
【0071】
支持軸83は、左端が左側の取付ボルト120により左側の回転側部体50aに取り付け固定され、右端が右側の取付ボルト121により右側の回転側部体50aに取り付け固定されている。左側の取付ボルト120及び右側の取付ボルト121は、支持軸83内に形成した雌ネジ部122に挿入される構成となっており、支持軸83の左右両端部を左右の回転側部体50aに取り付けて固定する左右方向の取付ピンとなる。そして、軸受80側となる右側の取付ボルト121の長さよりもブッシュ81側となる左側の取付ボルト120の長さを長く設定すると共に、左側の取付ボルト120はその先端部がブッシュ81の内周側の位置(ブッシュ81と同じ左右位置)まで延設されている。言い換えれば、左側の取付ボルト120が挿入される左側の雌ネジ部122が、ブッシュ81の内周側の位置(ブッシュ81と同じ左右位置)まで延設されている。
【0072】
また、ブッシュ81は左寄りの位置に配置されているのに対し、最終ギヤ104は右寄りの位置に配置されており、ブッシュ81と最終ギヤ104の左右位置をずらせている。回転体50の回転位置によって非円形ギヤ(不等径ギヤ)である最終ギヤ104が回転体50よりも外側に張り出すが、この状態で側面視で最終ギヤ104とブッシュ81が重複する位置関係となる。また、右寄りの位置に配置される軸受80は、最終ギヤ104と同じ左右位置に位置している。詳しくは、軸受80の左右幅内に最終ギヤ104が収まる構成となっている。これにより、左右の回転側部体50a間の構造物がコンパクトに配置されるので、回転体50ひいては苗植付装置1の左右幅を狭く構成できる。
【0073】
回転ギヤ97及び第一中間ギヤ98の回転中心軸123も、支持軸83と同様に左右の回転中心軸用取付ボルト124により左右の回転側部体50aに取り付け固定されている。左右の回転側部体50a間の最終軸回転伝達機構をメンテナンスするには、例えば、右側の苗植付具49、支持軸83の右側の取付ボルト121及び右側の回転中心軸用取付ボルト124を外し、右側の回転側部体50aを外すことにより、最終軸回転伝達機構を残してその右側を開放でき、その開放部から最終軸回転伝達機構のメンテナンスを容易に行える。従来の如く、回転側部体の取り外しに伴って最終軸回転伝達機構のギヤ列のギヤの噛合が外れると、再度組み付ける際にギヤの位相合わせが困難で煩わしいことがあるが、最終軸回転伝達機構のギヤ列をそのまま残した状態で開放できるので、メンテナンス性が極めて向上する。尚、上述は、右側の回転側部体50aを外して苗植付装置1の内部を開放する場合について説明したが、左側の苗植付具49、支持軸83の左側の取付ボルト120及び左側の回転中心軸用取付ボルト124を外し、左側の回転側部体50aを外すことにより、苗植付装置1の内部を開放してもよい。すなわち、左右何れか一方の回転側部体50aを外して他方の回転側部体50aを残し、苗植付装置1の内部を開放することができる。従って、メンテナンスするべき部材の位置に応じて、駆動スプロケット88よりも右側に配置される太陽ギヤ102、遊星ギヤ103及び最終ギヤ104やその周辺をメンテナンスするときは、右側の回転側部体50aを取り外し、駆動スプロケット88よりも左側に配置される回転ギヤ97、第一中間ギヤ98及び第二中間ギヤ99やその周辺をメンテナンスするときは、左側の回転側部体50aを取り外せば、他のギヤ等の噛合を解かずに容易にメンテナンスを行うことができる。
【0074】
固定ギヤ106及び駆動スプロケット88は、円形であり、同じく円形である左右の回転側部体50aと略同じ径で左右の回転側部体50aよりも若干小さく、側面視で左右の回転側部体50aと重複する領域すなわち左右一方の回転側部体50aを外したときの開放領域に収まる。従って、前記開放領域から固定ギヤ106及び駆動スプロケット88を出し入れでき、メンテナンス性が向上する。従来は、固定支持体を分割するか又は取り外して固定ギヤを着脱する必要があり、メンテナンスが煩わしいものとなっていた。尚、本例では、固定ギヤ106が固定支持体79のブッシュ81を取り付ける部分に右側から取り付けられているので、右側の回転側部体50aを外せば固定ギヤ106を右側から容易に着脱できる。左右の回転側部体50aと固定支持体79の間にはオイルシール125を設けているので、固定ギヤ106及び駆動スプロケット88の着脱にあたっては前記オイルシール125も取り外す必要がある。
【0075】
全条(6条)分の苗植付装置1の左右外側には、植付伝動部40aからの伝動により回転するバランスウエイト126を設けている。このバランスウエイト126は、側面視で苗植付装置1の回転体50の回転中心51と同じ回転中心回りに、回転体50とは逆方向に回転する構成であり、回転方向の120度の位相ごとの計3箇所の重量部126aを備えている。バランスウエイト126の回転により、苗植付具49が各条で奇数個(3個)設けられた苗植付装置1の作動による振動を打ち消し、苗植付部8ひいては機体の振動を低減している。
【0076】
また、固定支持体79の上部には空気孔127を設けており、この空気孔127により苗植付装置1の固定支持体79と左右の回転側部体50aで囲まれる内部空間の内圧を大気圧に維持している。これにより、回転体50や最終軸回転伝達機構の作動で苗植付装置1の内圧が高くなることにより内部の潤滑油が圃場に洩れ、栽培に悪影響を与えることを防止できる。
【0077】
以上により、この乗用型の田植機2における苗植付装置1は、左右方向の回転中心51回りに回転する回転体50に前記回転中心51に対し偏心した左右方向の最終軸82を回転自在に設け、回転体50から左右に突出する最終軸82の突出部に苗植付具49を一体に取り付けるとともに、回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる最終軸回転伝達機構を設けている。
【0078】
従って、この苗植付装置1は、回転体50が回転中心51回りに回転することにより、苗植付具49が円軌道を移動する。その際、苗植付具49が取り付けられている最終軸82が最終軸回転伝達機構を介して回転体50に対して回転することにより、苗植付具49の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。また、回転体50から左右両側に突出する最終軸82の左右両突出部に苗植付具49を設けて回転体50の左右両側に苗植付具49を設けられるので、1個の回転体50を2条で兼用させ、苗植付装置1全体の軽量化、コストダウンを図ることが可能となるとともに、最終軸回転伝達機構の左右に苗植付具49を配置することができるので、最終軸82ひいては苗植付具49への伝動が安定し植付精度が向上する。
【0079】
そして、苗植付具49の先端部は、側面視でループ状の作動軌跡Pを描いて作動するが、該作動軌跡Pの下死点から上死点までの上動軌跡が、下死点から上下中間部までは斜め後上方へ作動し、上下中間部Dで屈曲して、上下中間部Dから上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部でD大きく作動方向を転じる軌跡となっている。この作動軌跡Pは、最終軸回転伝達機構の不等速伝動により実現されている。これにより、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。詳しくは、下死点から回転体50の30度までは、苗植付具49の動軌跡が下死点から略真上に上動する。
【0080】
また、この苗植付装置1は、固定支持体79の内周側で回転する回転体21を設け、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置に左右方向の最終軸82を回転自在に設け、回転体50から突出する最終軸82の突出部に苗植付具49を取り付け、回転体50の回転に伴って該回転体50に対して最終軸82を回転させる最終軸回転伝達機構を設け、回転体50の回転中心51に対し偏心した位置で且つ最終軸82とは異なる位置に左右方向の支持軸83を複数設け、該支持軸83に設けた軸受80が固定支持体20の内周部に接触して回転体21を回転自在に支持している。
【0081】
従って、軸受80を複数設けて適確に回転体50を支持できるので、回転体50を適正に回転させることができる。しかも、最終軸82とは異なる位置に支持軸83を複数設け、該支持軸83に軸受80を設けたので、最終軸82及び支持軸83の各々の軸を小型化でき、苗植付装置1の小型化が図れ、苗植付装置を円滑に作動させることができる。
【0082】
また、固定支持体20の内周側にブッシュ81を設け、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通している。
従って、ブッシュ81を設けると共に、該ブッシュ81に接触する回転体50の接触部位50bに支持軸83を通すことにより、回転体50を安定して適正に支持でき、固定支持体79と回転体50の同心度が向上し、シール性能が向上すると共に、回転体50の回転による振動の発生を抑えることができる。
【0083】
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸83の左右両端部を左右の回転側部体50aに左右方向の取付ピン120,121で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン120,121のうち、軸受80側に配置される取付ピン121の長さよりも、ブッシュ81側に配置される取付ピン120の長さを長く構成すると共に、ブッシュ81側に配置される取付ピン120はブッシュ81の内周側の位置まで延設している。
【0084】
従って、ブッシュ81側に配置される取付ピン120により、前記接触部位50b近くの支持軸83の支持剛性が向上し、ひいては接触部位50b及びブッシュ81が傾きにくくなるため、回転体50を安定して適正に支持できる。
【0085】
また、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸82と一体回転する最終ギヤ104を、ブッシュ81とは左右方向の位置をずらせて配置している。
従って、側面視で最終ギヤ104と重複する位置にブッシュ81を配置でき、回転体50ひいては苗植付装置1の小型化が図れ、回転体50の回転抵抗が小さくなって苗植付装置1を円滑に作動させることができる。
【0086】
また、最終軸回転伝達機構のうち、最終軸82と一体回転する最終ギヤ104を、軸受80と同じ左右位置に配置している。
従って、回転体50により回転する部分をコンパクトにできて該部分の左右幅を小さくでき、苗植付装置1の小型化が図れる。
【0087】
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右一方の回転側部体50aを取り外しできる構成とし、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ106と、該固定ギヤ106に噛み合うことにより自転しながら回転体50の回転により公転する回転ギヤ97を備え、該回転ギヤ97から最終軸82と一体回転する最終ギヤ104へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体50aと重複する領域に固定ギヤ106が収まる構成としている。
【0088】
従って、左右一方の回転側部体50aを取り外してできる空間から固定ギヤ106を着脱することができ、固定ギヤ106を交換する等のメンテナンスが容易になる。
また、回転体50には左右の回転側部体50aを備え、左右の回転側部体50aの間で且つ固定支持体79の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体50aを取り外しできる構成としている。
【0089】
従って、左右一方の回転側部体50aを取り外して最終軸回転伝達機構のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
また、苗植付具49の先端部が側面視でループ状の作動軌跡Pを描く構成とし、該作動軌跡Pの下死点Bから上死点までの上動軌跡が、下死点Bから上下中間部までは斜め後上方へ作動し、上下中間部Dから上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部Dで大きく作動方向を転じる軌跡である。
【0090】
従って、機体の走行を加味した苗植付具49の動軌跡を下死点から上動するときに前側へ移動しないようにでき、植え付けた苗を苗植付具49で前側に倒すようなことを抑えて植付精度の向上が図れる。
【0091】
また、この発明の実施の形態は最終軸回転伝達機構として回転体50内部に設けたギヤ列について説明したが、最終軸回転伝達機構として回転体50内部に固定支持体79側に固定された苗植付具姿勢変更用カムを設け、該カムにより回転体50の回転に伴って移動する苗植付具49(最終軸82)の位置に応じて最終軸82を適宜回転させて該苗植付具49の姿勢を変化させる構成としてもよい。これにより、前述のギヤ列に比較して部品点数が少なくなり、コストダウンが図れる。このとき、左右2条分の苗植付具49における苗植付具姿勢変更用カムを共通のものとすれば、更に部品点数を削減できる。また、回転体50の回転により最終軸が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするため、最終軸82を左右の苗植付具49に対応して左右に分割し、この左右の最終軸82の間に苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。また、前述のように最終軸82を左右の苗植付具49で共通のものとしながら最終軸82が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするには、機体側面視で複数本(3本)の最終軸82の内側又は外側にのみ苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。尚、前記苗植付具姿勢変更用カムを駆動スプロケット88内部の開口部(空間部)88aに配置すれば、回転体50内部のスペ−スの有効利用が図れて苗植付装置1の更なる小型化を図ることができる。
【0092】
ところで、従来の各条で2個の苗植付具49を設けた回転体50を備える苗植付装置1において、回転体50を駆動する軸128と回転体50をキーにより一体回転させる構成としているが、キーのガタが発生し回転体50が円滑に回転しないことが考えられる。そこで、前記軸128に針金状のスプリング129を設け、該スプリング129により回転体50を回転方向に加勢する構成とすれは、2個の苗植付具49が上下に位置する死点で回転体50の回転速度が低下しにくくなって回転体50を円滑に回転させることができ、ひいては回転体50を高速で回転させて高速植付が可能になる。尚、前述の各条で3個の苗植付具49を設けた苗植付装置1においても、スプリングにより回転体50を加勢する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は苗植付装置に限定せず、苗載台から苗を取り出す苗取出行程において使用する苗取出装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
14…苗植付装置、21…回転体、24…回転中心、25…最終軸、26…苗植付具、35…回転ギヤ、36…中間ギヤ、39…最終ギヤ、40…固定ギヤ、83…角度変更用ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した苗植付装置。
【請求項2】
固定支持体(79)の内周側にブッシュ(81)を設け、該ブッシュ(81)に接触する回転体(50)の接触部位(50b)に支持軸(83)を通した請求項1に記載の苗植付装置。
【請求項3】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸(83)の左右両端部を左右の回転側部体(50a)に左右方向の取付ピン(120,121)で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン(120,121)のうち、軸受(80)側に配置される取付ピン(121)の長さよりも、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)の長さを長く構成すると共に、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)はブッシュ(81)の内周側の位置まで延設した請求項2に記載の苗植付装置。
【請求項4】
最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、ブッシュ(81)とは左右方向の位置をずらせて配置した請求項2又は請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項5】
最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、軸受(80)と同じ左右位置に配置した請求項2から請求項4の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項6】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とし、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ(106)と、該固定ギヤ(106)に噛み合うことにより自転しながら回転体(50)の回転により公転する回転ギヤ(97)を備え、該回転ギヤ(97)から最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体(50a)と重複する領域に固定ギヤ(106)が収まる構成とした請求項2から請求項5の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項7】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とした請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項8】
苗植付具(49)の先端部が側面視でループ状の作動軌跡(P)を描く構成とし、該作動軌跡(P)の下死点(B)から上死点までの上動軌跡が、下死点(B)から上下中間部(D)までは斜め後上方へ作動し、上下中間部(D)から上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部(D)で大きく作動方向を転じる軌跡である請求項1から請求項7の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項1】
固定支持体(79)の内周側で回転する回転体(50)を設け、該回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置に左右方向の最終軸(82)を回転自在に設け、回転体(50)から突出する最終軸(82)の突出部に苗植付具(49)を取り付け、回転体(50)の回転に伴って該回転体(50)に対して最終軸(82)を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置において、回転体(50)の回転中心(51)に対し偏心した位置で且つ最終軸(82)とは異なる位置に左右方向の支持軸(83)を複数設け、該支持軸(83)に設けた軸受(80)が固定支持体(79)の内周部に接触して回転体(50)を回転自在に支持した苗植付装置。
【請求項2】
固定支持体(79)の内周側にブッシュ(81)を設け、該ブッシュ(81)に接触する回転体(50)の接触部位(50b)に支持軸(83)を通した請求項1に記載の苗植付装置。
【請求項3】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、支持軸(83)の左右両端部を左右の回転側部体(50a)に左右方向の取付ピン(120,121)で左右各々取り付けて固定し、左右の取付ピン(120,121)のうち、軸受(80)側に配置される取付ピン(121)の長さよりも、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)の長さを長く構成すると共に、ブッシュ(81)側に配置される取付ピン(120)はブッシュ(81)の内周側の位置まで延設した請求項2に記載の苗植付装置。
【請求項4】
最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、ブッシュ(81)とは左右方向の位置をずらせて配置した請求項2又は請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項5】
最終軸回転伝達機構のうち、最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)を、軸受(80)と同じ左右位置に配置した請求項2から請求項4の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項6】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とし、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構は、移動しない内歯の固定ギヤ(106)と、該固定ギヤ(106)に噛み合うことにより自転しながら回転体(50)の回転により公転する回転ギヤ(97)を備え、該回転ギヤ(97)から最終軸(82)と一体回転する最終ギヤ(104)へ伝達する構成とし、側面視で前記左右一方の回転側部体(50a)と重複する領域に固定ギヤ(106)が収まる構成とした請求項2から請求項5の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項7】
回転体(50)には左右の回転側部体(50a)を備え、左右の回転側部体(50a)の間で且つ固定支持体(79)の内周側に最終軸回転伝達機構を配置し、最終軸回転伝達機構を残して左右一方の回転側部体(50a)を取り外しできる構成とした請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗植付装置。
【請求項8】
苗植付具(49)の先端部が側面視でループ状の作動軌跡(P)を描く構成とし、該作動軌跡(P)の下死点(B)から上死点までの上動軌跡が、下死点(B)から上下中間部(D)までは斜め後上方へ作動し、上下中間部(D)から上死点までは斜め前上方へ作動する上下中間部(D)で大きく作動方向を転じる軌跡である請求項1から請求項7の何れか1項に記載の苗植付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−139113(P2012−139113A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292072(P2010−292072)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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