説明

苗植機

【課題】 苗植機構の苗植嘴の内面を洗浄することができるようにすることを課題とする。
【解決手段】 前部にエンジンを搭載しアクスルハウジング(10)で支架される左右の車輪(8)を備え後部にハンドル(12)を備えた車体に、苗を保持して土壌面に植付ける苗植嘴を備える苗植機構(3)と、苗を収容する多数の苗カップ(20)を備えて該苗カップ(20)に収容される苗を前記苗植嘴に落下供給する苗供給装置(1)とを設けた苗植機において、車体にオフセット状態で設けられる前記アクスルハウジング(10)の上側に液体タンク(17)を設け、液体ポンプ(16)が苗植嘴の内側上にのぞむ掃除ノズルに吐出ホースを介して連結される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植機に関する。歩行操作形態や乗用操作形態の野菜苗植機に利用しうる。
【背景技術】
【0002】
従来、苗供給装置を伝動する供給伝動系と、苗植機構を伝動する植付伝動系とが、共に一回転クラッチを経て間歇的に回転可能に構成された技術が知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−227593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、苗植機構の苗植嘴の内面を洗浄することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成とした。
すなわち、前部にエンジン(7)を搭載しアクスルハウジング(10)で支架される左右の車輪(8)を備え後部にハンドル(12)を備えた車体に、苗を保持して土壌面に植付ける苗植嘴(22)を備える苗植機構(3)と、苗を収容する多数の苗カップ(20)を備えて該苗カップ(20)に収容される苗を前記苗植嘴(22)に落下供給する苗供給装置(1)とを設けた苗植機において、車体にオフセット状態で設けられる前記アクスルハウジング(10)の上側に液体タンク(17)を設け、液体ポンプ(16)が苗植嘴(22)の内側上にのぞむ掃除ノズル(73)に吐出ホース(71)を介して連結される構成とした苗植機とした。
【発明の効果】
【0005】
よって、左右の車輪(8)を支架するアクスルハウジング(10)を設け、車体にオフセット状態で設けられる前記アクスルハウジング(10)の上側に液体タンク(17)を設け、液体ポンプ(16)が苗植嘴(22)の内側上にのぞむ掃除ノズル(73)に吐出ホース(71)を介して連結される構成としたので、前記苗植嘴(22)の内面を洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明は次のような形態で実施することができる。すなわち、この発明は、走行形態、または乗用形態の苗植機の伝動装置として、特に、野菜苗を移植する苗植機として有効に実施できる。
【0007】
まず、苗供給装置を連続伝動する供給伝動系に対して、苗植機構を伝動する植付伝動系には自動で入り切りする植付定回転クラッチを有する苗植機の伝動装置の構成として、苗植付姿勢を安定させて正確な苗植を行わせる。
【0008】
ここに、苗供給装置は、苗植装置に対して苗を供給保持させるもので、旋回するテーブル回りに沿って多数の苗カップを配置して、各苗カップに収容される苗を苗植機構位置で落下させて供給することができる。この苗供給装置であるテーブルは供給伝動系によって連続回転するように伝動構成される。
【0009】
苗植機構は、植付定回転クラッチを有した植付伝動系によって間歇的に作動されるもので、上死点の苗供給装置からの苗の供給を受ける位置で停止することができ、この間歇的伝動の植付定回転クラッチの入りは、自動的に行われる。植付伝動系には変速伝動装置が設けられて、植付苗の株間間隔を変更することができる形態では、この変速伝動装置によって回転されるクラッチピンにより植付定回転クラッチを入りに自動作動させることができる。この植付定回転クラッチは一回転クラッチ形態とすることができる。
【0010】
つぎに、前記供給伝動系に設ける供給定回転クラッチと、植付伝動系の植付定回転クラッチとを、手動連動操作可能に設け、手動操作で供給定回転クラッチと植付定回転クラッチとを連動操作して、苗供給装置と苗植機構との停止位置を合せたり、確認する。ここに、供給定回転クラッチは、この手動操作によって入り切り操作されるもので、通常の苗植伝動時は、常時入り位置へ切替操作する形態とすることができる。また、植付定回転クラッチは、前記自動で入り切りされると共に、手動によっても入り切りされるように連動構成される形態としている。
【0011】
さらに、前記苗植機構による苗植付作動位置の左右一側寄りの位置に供給伝動系を、これと反対側寄りの位置に植付伝動系を配置し、供給伝動系と植付伝動系とを左右に配置して機体の左右重量平衡を保つ。ここに、これらの各伝動系は端末部にあって、エンジンから車輪への伝動の走行伝動系から分岐された形態としている。
【実施例1】
【0012】
この発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
苗植機は、車体の前部にエンジン7を搭載し、車輪8を軸装の車輪伝動ケース9を左右両側部にアクスルハウジング10で支架し、後部にハンドルフレーム11を有してハンドル12を配置し、この車体上部に苗供給装置1やこの供給伝動系2、苗植機構3やこの植付伝動系4等を配置する。13は車体の前端左右両側に配置の補助輪、14は苗植付土壌を培土する培土輪、15は補助苗台である。16は液体ポンプ、17は液体タンクで、アクスルハウジング10の上側に搭載される。
【0014】
苗供給装置1は、テーブル軸18の回りに水平回転できるテーブル19と、このテーブル19の周りに配置の苗カップ20とからなり、このテーブル19の回転で苗カップ20が苗植機構3の直上に位置すると底板21が開かれて、収容苗を下方へ落下させることができる。このような苗供給装置1は、ハンドル12の前方にあって、操縦者が前方の補助苗台15から床付苗を取出しながら一株ずつ苗カップ20内へ供給される。この苗カップ20内の苗は、テーブル19の回転によって苗植機構3の上部に位置する毎に、底板21の開き位置から落下される。このテーブル19の回転は供給伝動系4を経て行われる。
【0015】
前記苗植機構3は、前後に開閉作動する苗植嘴22と、この苗植嘴22を開閉すると共に昇降する一対の苗植リンク23,24とからなり、植付伝動系4によって伝動される。この苗植リンク23,24は、植付伝動系4から連動されるクランク軸25,26と、基端部を伝動ケース27の一部に揺動自在に支持するアーム28,29とでダブルクランク形態に作動されて、苗植嘴22の下端部が楕円形状の苗植軌跡線Dを描くように構成される。
【0016】
また、この苗植リンク24に沿わせて開閉リンク30が設けられて、前記苗植嘴22を開閉するように連結され、この開閉リンク30をクランク軸26のカム31の回転によって開閉リンク30を押して開閉することができる。これら苗植リンク23,24と苗植嘴22との関係は、この苗植嘴22の前後端の嘴軸32,33が苗植リンク23,24の先端に軸支され、これらの嘴軸32,33間はステー34で連結されていて、クランク軸25,26の回転によって苗植リンク23,24が上下動されて、苗植嘴22が平行状態を保って昇降される。そして、前記開閉リンク30の一部が苗植嘴22の一部の開閉ピン35に連結されて、カム31の回転によって苗植嘴22の上死点から下死点にわたる下降植付行程では、この苗植嘴22を閉鎖し、上昇行程では開くように作動する。
【0017】
前記車体3の前部に配置のミッションケース36は、エンジン7から連動を受けて、車輪伝動ケース9内の伝動機構を伝動すると共に、伝動ケース27の入力軸37を伝動する。この伝動ケース27内には、変速ノブ38の操作で変速される変速ギヤ39が変速軸40上に設けられる。この変速軸40から植付定回転クラッチ5を介して伝動される植付伝動軸41が設けられ、この植付伝動軸41から前記クランク軸25,26が伝動回転される。
【0018】
この植付伝動軸41上の植付定回転クラッチ5は、図4のように一回転クラッチからなり、ラチェットリング42上の切欠部43に、ばね44で弾発される爪45が係合される。この爪45が切欠部43に係合されると植付伝動軸41への回転伝動は停止され、切欠部43から外れると伝動される。このような爪45は、前記変速ギヤ39によって変速回転される変速軸40と一体に回転されるクラッチピン46で叩いて、ばね44に抗して回動させて切欠部43との係合を外すことができる。しかも、この爪45は爪軸47上に移動自在で、操作ロッド48で移動操作されて、クラッチピン46の回転圏内と圏外とに切替えられ、手動操作のレバー49でワイヤー50を介して連動される。51はこの操作ロッド48に連結のアームで、ばね52を介してワイヤー50と連結される。
【0019】
このようにして、爪45がラチェットリング42に摺接されているため、このラチェットリング42が一回転されると、この爪45が切欠部43に係合されて回転を停止されることとなる。この停止位置が苗植嘴22の上死点で苗カップ20から苗を受ける位置となるように位相設定される。そして、この植付定回転クラッチ5は、クラッチピン46の回転によって爪45を揺動させて、自動的に切欠部43との係合を外して伝動させることができる。そして、レバー49の操作でこの爪45を爪軸47に沿って移動させて、クラッチピン46の回転圏の内外に操作でき、切り位置Bに操作するとクラッチピン46の回転圏外に位置されて爪45は常に切欠部43に係合され、植付定回転クラッチ5は常時切りをなる。
【0020】
53は前記植付伝動軸41の回転を制動するブレーキで、前記爪45が切欠部43に対して係合すると同時に制動される構成とされる。前記供給伝動系2は、前記変速軸40から伝動ケース54内のチエン55を経て、テーブル19下の伝動ケース56の伝動軸59を伝動する。この伝動軸59は供給定回転クラッチ6を介してテーブル軸18へ伝動される。このため、この供給定回転クラッチ6は操作ロッド57によって入り切り操作される。この操作ロッド57は、前記レバー49とワイヤー58で連動されて、前記植付定回転クラッチ5と連動されて同期操作される。この操作ロッド57が伝動軸59部へ押込まれるとカム作動によって植付定回転クラッチ5が軸方向へ移動されて切りとなり、操作ロッド57が外側へ退出される植付回転クラッチ5がばね力で押戻されて入り状態となる形態である。
【0021】
そこで、この操作レバー49を入り位置Aに操作した状態では、植付定回転クラッチ5は、一定の回転角毎、ないし一回転毎に入りの状態となりうる形態とする。供給定回転クラッチ6は、操作ロッド57が退出されて常時入りの状態にあって連続回転状態にある。また、切り位置Bへ操作すると、植付低回転クラッチ5は、爪45が常に切欠部43に係合された状態にあって、切り状態を維持され、供給定回転クラッチ6は、操作ロッド57を押し込まれてクラッチの切り位置を維持させるものである。
【0022】
苗植付作業時は、レバー49を入り位置Aへ操作しておくことによって、テーブル19は一定回転速度で連続回転される。これにより、作業者が、前記テーブル19に設けた苗カップ20へ苗を供給しやすくなる。また、苗植機構3は、植付定回転クラッチ5によって上死点に上昇する毎に一旦停止されて、この苗植嘴22に苗の供給が行われると、このクラッチ5の入りによって下降されることとなる。このとき、植付定回転クラッチ5は、変速ギヤ39の変速によって変速伝動回転されるクラッチピン46によって入りとなるため、苗植付の株間間隔に従って植付作動される。また、このとき、供給伝動系2の伝動もこの変速ギヤ39を経た変速軸40から伝動されるため、株間間隔に応じたテーブル19の回転速度となる。
【0023】
前記テーブル19のテーブル軸18前側に位置して、昇降する苗植嘴22を作動させると共に、この苗植嘴22直上の苗供給位置Cの苗カップ20において底板21を開いて収容していた苗を落下させることができる。すなわち、苗を収容した苗カップ20がこの苗供給位置Cにくると底板21の開き位置によって収容苗が自動的に落下されて、昇降の上死点に停止されている苗植嘴22内へ落下収容される。この苗を落下させた空の苗カップ20がさらに回転されると、底板21が閉鎖位置にあって補助苗台15上から取出される苗の供給を受けることができる。
【0024】
前記植付伝動系4を収容の伝動ケース27は、この苗供給位置Cおよび苗植嘴22の前側から左外側へ迂回するように配置される。また、供給伝動系2を内装の伝動ケース54はこれとは反対の右外側に沿って配置される。これによってこれら伝動ケース27と54は、ほぼ左右に対称状に配置されて、左右の重量平衡を図ることができる。
【0025】
前記液体タンク17の取付部は、図6、図7のように、オフセット形態に車体に支架される前側のアクスルハウジング10と後側のサブハウジング60との間にわたってタンクベース61を取付、このタンクベース61上に液体タンク17を載置して取り付ける。
【0026】
また、液体ポンプ16は、プランジャ形態として、伝動ケース27上の補助苗台15を取付支持するブラケット62にポンプベース63をボルト64で取り付ける。このポンプベース63の前端にプランジャポンプ16が取り付けられて、このポンプ16のプランジャ65には長穴66を形成する連動具67が設けられ、この長穴66を駆動ローラ68に嵌合することによって駆動可能に装着する。この駆動ローラ68は、前記苗植リンク23の基部を支持するアーム28と一体的に回動されるアーム69に取り付けられる。クランク軸25の回転によって、苗植リンク23が上下動されると共に、アーム28がアーム軸70周りに前後搖動されるため、このアーム軸70と一体回動されるアーム69によってポンプ16のプランジャ65を往復作動させる。また、この連動具67を前後動させて長穴66の長さを調節することによってポンプ16による吐出量を多E、少Fに調節できる。71は吐出ホース、72は吸入ホースである。
【0027】
前記の液体ポンプ16は、苗植機構3の苗植作動によって駆動される。この吐出ホース71は、前記苗植嘴22の内側上にのぞむ掃除ノズル73に連結されて(図9)、この苗植嘴22の内面を洗浄することができる。
【0028】
図10、図11において、上例と異なる点は、苗植嘴22によって苗植される畝土壌面Gを砕土する耕耘爪74を有した耕耘軸75を、前記車輪伝動ケース9の回動中心であるアクスルハウジング10の車輪伝動軸76からチエンケース77内のチエン78で伝動回転する構成としたものである。
【0029】
なお、この耕耘軸75は、車輪伝動ケース9の中間部に軸支してこの伝動ケース9内の伝動チエン等から連動させる構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の苗植機構部の平面図。
【図2】その伝動機構図。
【図3】その一部の拡大平面図。
【図4】その一部の拡大側面図。
【図5】苗植機の側面図。
【図6】その平面図。
【図7】タンクベース部の側面図。
【図8】液体タンク取付部の分解斜視図。
【図9】苗植嘴部の側断面図。
【図10】一部別実施例を示す苗植機の側面図。
【図11】その車輪伝動ケース部の背面図。
【符号の説明】
【0031】
1:苗供給装置、3:苗植機構、7:エンジン、8:車輪、10:アクスルハウジング、12:ハンドル、16:液体ポンプ、17:液体タンク、20:苗カップ、22:苗植嘴、71:吐出ホース、73:掃除ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部にエンジン(7)を搭載しアクスルハウジング(10)で支架される左右の車輪(8)を備え後部にハンドル(12)を備えた車体に、苗を保持して土壌面に植付ける苗植嘴(22)を備える苗植機構(3)と、苗を収容する多数の苗カップ(20)を備えて該苗カップ(20)に収容される苗を前記苗植嘴(22)に落下供給する苗供給装置(1)とを設けた苗植機において、車体にオフセット状態で設けられる前記アクスルハウジング(10)の上側に液体タンク(17)を設け、液体ポンプ(16)が苗植嘴(22)の内側上にのぞむ掃除ノズル(73)に吐出ホース(71)を介して連結される構成とした苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−149402(P2006−149402A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20887(P2006−20887)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【分割の表示】特願2003−435844(P2003−435844)の分割
【原出願日】平成12年3月22日(2000.3.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】