説明

苗植機

【課題】苗植付け作業に適した電動モータを用いた走行駆動構成を得ることを課題とする。
【解決手段】機体に基部が回動自在に枢支された車輪支持体1を機体に装備したアクチュエータ15・17にて回動し、該車輪支持体1の先端部に装着した駆動輪10を上下作動させて機体を昇降又は左右傾斜作動させる構成とした苗植機において、車輪支持体1の先端部に設けた左右支持部1L・1Rの間に駆動輪10を配置して、該左右支持部1L・1Rの片方の支持部1Lに固定した走行電動モータ11のモータ駆動軸11aを駆動輪10のリム10aに連結すると共に、モータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸をリム10aの走行電動モータ11と反対側に延設して他方の支持部1Rで回動自在に支持した苗植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動輪で走行する苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に知られている苗植機は、エンジンの駆動力をミッションケースを介して左右の駆動後輪に伝達して走行する。また、特許文献1に示すように、自動車等でホイールインモータを用いて駆動走行する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004ー46661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の苗植機の駆動輪は、基部が機体に回動自在に枢支されたチェーンケース等の伝動ケースの先端に設けて、機体に対して上下動自在に構成し、機体の昇降や傾斜等を調節できる構成となっている。従って、自動車等で一般的に知られているホイールインモータの技術を苗植機に対してそのまま用いることはできず、苗植付け作業に適した電動モータを用いた走行駆動構成を得ることが課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、機体に基部が回動自在に枢支された車輪支持体1を機体に装備したアクチュエータ15・17にて回動し、該車輪支持体1の先端部に装着した駆動輪10を上下作動させて機体を昇降又は左右傾斜作動させる構成とした苗植機において、車輪支持体1の先端部に設けた左右支持部1L・1Rの間に駆動輪10を配置して、該左右支持部1L・1Rの片方の支持部1Lに固定した走行電動モータ11のモータ駆動軸11aを駆動輪10のリム10aに連結すると共に、モータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸をリム10aの走行電動モータ11と反対側に延設して他方の支持部1Rで回動自在に支持した苗植機とした。
【0006】
従って、請求項1に記載の発明は、車輪支持体1の先端部に設けた左右支持部1L・1Rの間に駆動輪10を配置して、該左右支持部1L・1Rの片方の支持部1Lに固定した走行電動モータ11のモータ駆動軸11aを駆動輪10のリム10aに連結すると共に、モータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸をリム10aの走行電動モータ11と反対側に延設して他方の支持部1Rで回動自在に支持したので、駆動輪10を両持ち状で支持する構成となって駆動輪10の支持構成が強固となり、駆動輪10の上下作動が適正に行えて、適正な走行性能を発揮し、良好な苗植付け作業が行える。また、車輪支持体1と駆動輪10とが前後方向で重複する配置構成となり、従来の車輪伝動ケースの側方に後輪を装着した構成に比較して、車輪支持体1と駆動輪10の左右幅が狭く構成でき、トレッド調整範囲が広くなり、苗植付け適応性が向上する。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、車輪支持体1の基部に箱状の収納部1Sを形成し、該収納部1Sから左右支持部1L・1Rを延設した請求項1記載の苗植機とした。
従って、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の作用に加えて、車輪支持体1の基部に箱状の収納部1Sを形成し、該収納部1Sから左右支持部1L・1Rを延設したので、該収納部1Sに部材1B・1Cを収納できることに加えて、車輪支持体1自体の強度が高まり、更に、駆動輪10の支持構成が強固となり、駆動輪10の上下作動が適正に行えて、適正な走行性能を発揮し、良好な苗植付け作業が行える。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、収納部1Sにバッテリー1Cを収納し、左右支持部1L・1R間に走行電動モータ11への配線h2を設けた請求項2記載の苗植機とした。
従って、請求項3に記載の発明は、請求項2記載の作用に加えて、収納部1Sにバッテリー1Cを収納したので、機体重心を低くすることができ、走行安定性が向上して、優れた走行性能を発揮し、良好な苗植付け作業が行える。また、左右支持部1L・1R間に走行電動モータ11への配線h2を設けたので、配線h2が左右支持部1L・1Rにて防護され損傷を防止できる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、モータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸を回動自在に支持する支持部1Rの先端部に先端に向けて開放する切り欠き部1L’を形成し、該切り欠き部1L’に沿ってモータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸を移動及び固定自在に設けた請求項1乃至請求項3記載の苗植機とした。
【0010】
従って、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3記載の作用に加えて、片方の支持部1Rから走行電動モータ11の固定を解除して外し、モータ駆動軸11a又はモータ駆動軸11aと同軸心の支持軸を該切り欠き部1L’に沿って車輪支持体1の先端に向けて移動させて、駆動輪10を走行電動モータ11ごと外すことができる。従って、車輪支持体1に対して、駆動輪10及び走行電動モータ11の着脱が容易に行えて、メンテナンスの作業性がとても良い。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明は、苗植付け作業に適した電動モータを用いた走行駆動構成を得ることができ、課題を簡潔な構成で解消できると共に、良好な苗の植付け作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】苗植機全体の側面図である。
【図2】苗植機全体の平面図である。
【図3】要部の拡大斜視図である。
【図4】鎮圧具部分の斜視図である。
【図5】鎮圧具部分の拡大斜視図である。
【図6】苗植付ホッパーの斜視図である。
【図7】油圧回路図である。
【図8】要部の作用説明用拡大平面図である。
【図9】植付け例を示す作用説明用平面図である。
【図10】本機側バッテリーの他の例を示す作用説明用側面図である。
【図11】苗植付ホッパーの他の例を示す側面図である。
【図12】ローリング制御の他の例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態の2条植え苗植機を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル8を配置した側を後とし、その反対側、即ち本機電動モータ6を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0014】
車体2は、主フレーム2aの前部に本機電動モータ6、及び伝動ケース7を配置して、主フレーム2aの後端部に操縦ハンドル8を設け、この伝動ケース7の両側に張出する左右円筒状ケース9周りに回動する回動筒部9aに各々上下揺動する左右車輪支持体1を設け、この車輪支持体1の後端部に設けた走行電動モータ11に車輪としての後輪10を軸装して、これら左右の後輪10と、車体2前端部に設けた前輪軸12に軸装した左右の前輪13とによって走行する構成にしている。尚、本機電動モータ6の左側面部には該本機電動モータ6の動力で駆動する油圧ポンプ6aが設けられている。また、本機電動モータ6の上側には大容量の本機側バッテリー6bが設けられ、その上部をボンネット6cが覆っている。また、7aは、伝動ケース7の左右両側に基部が固定された左右回動筒部9aを回動自在に支持する左右支持フレームである。
【0015】
ここで、左右後輪10の駆動構成を詳細に説明する。尚、右後輪10の駆動構成は、左後輪10の駆動構成と左右対称で同じであるので、図3に基いて左後輪10の駆動構成を説明する。
【0016】
車輪支持体1は、鉄板にて形成されており、平面視でコ字状に折り曲げた左右側板1L・1Rと、該左右側板1L・1Rの前部に底板1Aと後板1Rを溶接して形成した箱状の収納部1Sとで構成されており、該収納部1S内の前端に制御基板1Bを配置し、その後部に走行用バッテリー1Cを収納する構成となっている。そして、収納部1Sから後方に延びた左右側板1L・1R間に後輪10が配置されている。
【0017】
そして、右側板1Rの後端部内側にホイールインモータである走行電動モータ11のベース部をボルトにて固定し、モータ駆動軸11aを後輪10のリム10aの中心部に嵌合させて外側方に延設し、該外側方に延設したモータ駆動軸11aの先端部を左側板1Lに設けたベアリングにて軸受けして支持した構成としている。尚、モータ駆動軸11aを後輪10のリム10aの中心部に嵌合させて外側方に延設し、該外側方に延設したモータ駆動軸11aの先端部を左側板1Lに設けたベアリングにて軸受けして支持した構成に代えて、モータ駆動軸11aを後輪10のリム10aに連結し、リム10aの回転中心から走行電動モータ11と反対側に支持軸を延設して、この支持軸を左側板1Lに設けたベアリングにて軸受けして支持した構成としても良い。
【0018】
従って、車輪支持体1は前部が箱状の収納部1Sとなっており、その箱状の収納部1Sから左右側板1L・1Rを延設して、該左右側板1L・1R間に後輪10を配置し、左右側板1L・1Rにて後輪10を両持ち状で支持する構成であるから、車輪支持体1自体の強度が高まる構成であることに加えて、後輪10を両持ち状で支持する構成であるから、後輪10の支持構成が強固となり、後輪10の上下作動が適正に行えて、適正な走行性能を発揮し、良好な苗植付け作業が行える。また、車輪支持体1と後輪10とが前後方向で重複する配置構成となり、従来の車輪伝動ケースの側方に後輪を装着した構成に比較して、車輪支持体1と後輪10の左右幅が狭く構成でき、左右後輪10のトレッド調整範囲が広くなり、苗植付け適応性が向上する。
【0019】
また、モータ駆動軸11aの先端部を軸受け支持する左側板1L後端部には、後端に開放する切り欠き溝1L’が形成されており、右側板1Rに走行電動モータ11のベース部を固定しているボルトを外すことにより、モータ駆動軸11aの先端部のベアリングによる軸受けごと該切り欠き溝1L’に沿って後方に向けて移動させて、後輪10を走行電動モータ11ごと後方に向けて外すことができる構成となっている。従って、車輪支持体1に対して、後輪10及び走行電動モータ11の着脱が容易に行えて、メンテナンスの作業性がとても良い。
【0020】
更に、右側板1Rに走行電動モータ11のベース部を固定するボルトが右側板1Rを貫通する孔は、前記切り欠き溝1L’方向に長い長穴に形成されている。従って、該ボルトを緩めて、走行電動モータ11及び後輪10を切り欠き溝1L’方向に移動させて再度ボルトを締付けることにより、容易に後輪10の車輪支持体1に対する位置を調節することができ、機体の上昇高さを容易に変更することができる。
【0021】
次に、制御基板1B及び走行用バッテリー1Cの構成について説明する。制御基板1Bは、収納部1S内の前端に固定されており、機体に設けたメインコントローラMCには車輪支持体1に一体に設けた後述の左移動筒体9c内を通して設けたコイル状ハーネスh1にて接続されており、その後面にはプラス端子とマイナス端子が並列して設けられ、後方の走行電動モータ11に電力を供給する配線h2が左右側板1L・1R内で走行電動モータ11まで配線されている。走行用バッテリー1Cは、制御基板1Bの後方の収納部1S内に嵌合状に上方から嵌め込まれる大きさで構成されており、その上面には収納部1Sの上方を完全に覆う上蓋体1Dが固着されており、収納部1S内に走行用バッテリー1Cを入れた状態では、上蓋体1Dにて収納部1Sを密閉状態にして雨水などが入らない構成となっており、また、走行用バッテリー1Cは収納部1S内に嵌合状に嵌め込まれた構成となっているから、走行用バッテリー1Cが車輪支持体1の強度を高めるモノコック部材として作用し、作業時に車輪支持体1の強度が高まる。また、走行用バッテリー1Cの制御基板1B側には、前記制御基板1Bのプラス端子とマイナス端子に接当して電力を供給するプラス端子1Caとマイナス端子1Cbが並列して設けられており、収納部1S内に走行用バッテリー1Cを入れると、該両端子が自動的に接合して走行用バッテリー1Cから制御基板1Bに電力が供給される状態となる。また、制御基板1Bは、機体に設けたメインコントローラMCには車輪支持体1に一体に設けた後述の左移動筒体9c内を通して設けたコイル状ハーネスh1にて接続されているので、ハーネスh1が損傷することが防止でき、更に、コイル状ハーネスh1が伸縮自在であるから支障なく後輪10のトレッド調節ができる。また、走行電動モータ11に電力を供給する配線h2は左右側板1L・1R内に配線されているので、左右側板1L・1Rにて防護され損傷を防止できる。
【0022】
また、前記上蓋体1Dの上部には、把持部1Eを一体に形成している。従って、走行用バッテリー1Cの持ち運びや着脱が容易に行えると共に、収納部1S内に走行用バッテリー1Cを入れた作業状態では、該把持部1Eが車輪支持体1の左右トレッド調節の際の取っ手として共用でき、トレッド調節が容易に行える。
【0023】
ボンネット6cの上面部にはコードリール6dが、自由に回転できる状態で設けられており、本機側バッテリー6bを充電する際に、自由な方向にコードを引張り出して充電することができる。
【0024】
また、本機側バッテリー6bは、本機電動モータ6を作動する為に大電力を必要とするので、大容量のバッテリーを採用し、走行用バッテリー1Cは、片後輪10を駆動する走行電動モータ11を作動する小容量のバッテリーを採用している。尚、左右走行用バッテリー1Cの電圧低下時に、本機側バッテリー6bから左右走行用バッテリー1Cに電力供給する構成としても良い。
【0025】
また、メインコントローラMC及び左右制御基板1Bにて左右走行電動モータ11を制御し、左右操縦ハンドル8に設けた左右操作レバー8dの操作にて、左操作レバー8dを操作した際には左走行電動モータ11を停止させて機体を左旋回できる構成とし、右操作レバー8dを操作した際には右走行電動モータ11を停止させて機体を右旋回できる構成とし、機体停止レバー8cの操作で左右走行電動モータ11を共に停止させて機体を停止させる構成としている。
【0026】
また、左右側板1L・1Rの後端部間を連結する形状で後輪10のスクレーパ1Fが設けられており、該スクレーパ1Fによって後輪10に付着した泥土を落として、走行性能を適正に維持できる構成としており、更に、スクレーパ1Fは左右側板1L・1Rの後端部間を連結するものであるから、車輪支持体1の強度を高めることができ、走行性能を向上させ、適正な植付け作業が行える。
【0027】
また、走行電動モータ11はホイールインモータを用いたので、機体を小型軽量に構成でき、然も、走行用バッテリー1Cを後輪10の車輪支持体1に収納する構成としたので、機体重心を低くすることができ、走行安定性が向上して、優れた走行性能を発揮し、良好な苗植付け作業が行える。
【0028】
車体2には機体に対し左右の後輪10を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、伝動ケース7の上に配置した油圧バルブユニットBUから後方に向けて昇降アクチュエータとしての昇降油圧シリンダ15が設けられ、該昇降油圧シリンダ15のピストンロッドの先端部に機体左右方向に長いアームとしての連動アーム16が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前部が油圧バルブユニットBUに支持され後部が車体2に固着された取付部材2aに支持されたガイド軸2bに沿って摺動するようになっている。連動アーム16の左右両端部と、回動筒部9aに固着した左右ハウジングアーム14とが、連結体としての左右ロッド18を介して連結されている。左側の左ロッド18は、ローリングアクチュエータとしてのローリングシリンダ17が組み込まれており、該ローリングシリンダ17を伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0029】
昇降油圧シリンダ15及びローリングシリンダ17は、各々前記油圧ポンプ6aから供給される作動油を油圧バルブユニットBU内の昇降制御バルブ49とローリング制御バルブ48とで制御して作動させられる。昇降油圧シリンダ15を伸縮作動させると、左右後輪10が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ17を伸縮作動させると、左後輪10が機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0030】
5は畝上面を検出する昇降センサであって、該昇降センサ5が上下回動すると、その回動を連結ロッド5dにて昇降制御バルブ49に伝え、昇降センサ5の角度が元に戻る方向に昇降油圧シリンダ15を作動させる(昇降制御)。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さ変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗の成育が良い。
【0031】
なお、油圧バルブユニットBU内のローリング制御バルブ48は後述の左右鎮圧具4の相対高さの変動による畝A上面の左右傾斜検出に連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ17が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。また、操縦ハンドル8の基部には操作パネル8aが設けられ、該操作パネル8aに、昇降制御バルブ49を手動操作して機体を手動にて上下動させると共に植付部の駆動を止める植付昇降レバー8bと機体停止レバー8cが設けられている。
【0032】
即ち、一方のハウジングアーム14と連動アーム16の側端部との間を連結する一側部の前記ローリングシリンダ17の伸縮によって、この側の後輪10を、他側部の前記ロッド18によって連結された側の後輪10に対して昇降させて、車体2をローリングさせて、車体2の左右傾斜を水平にしたり、土壌面に対して平行状にすることができ、車体2の左右傾斜姿勢を制御することができる。そして、このような昇降制御は、後述の昇降センサ5の検出により行い、ローリング制御は、苗植位置の植付けた苗に対して左右側部から鎮圧作用を行なう鎮圧具4によって左右傾斜状態を検出して行うものである。
【0033】
ここにおいて、左右車輪支持体1を、車体2に対して上下揺動可能に設けた苗植機において、機体左右方向に2つ並列して配置した左右苗植付具としての左右苗植付ホッパー3による左右各苗植付位置を鎮圧する左右鎮圧具4の上下揺動によってローリング制御する構成である。苗植付ホッパー3の昇降によって圃場に植付けた苗の左右側方を鎮圧具4によって鎮圧し、苗植付姿勢を安定した状態とする。このとき、左右の苗植付位置を各々鎮圧する左右鎮圧具4を、苗植付土壌面の左右傾斜を検出するセンサとして機能する構成にしている。左右の各鎮圧具4は、左右の苗植位置毎に独立的に上下揺動して、この揺動位置の高さの差異によって植付土壌面の左右傾斜を検出して、これらの土壌面の傾斜検出によって前記一方の車輪支持体1を上下に揺動させて、車体2を土壌面と左右平行状に維持するようにローリング制御する。
【0034】
また、前記左右車輪支持体1の非苗植位置への揺動(左右後輪10を最下動させて機体を最も上昇させた状態)によって、左右両鎮圧具4を非接地高さへ上昇するように連動構成している。即ち、機体を高く上昇させるときは、左右車輪支持体1を最下動させて車体2を非苗植姿勢に上昇させ、左右鎮圧具4が非作用姿勢位置へ連動して上昇され、車体2の走行旋回の邪魔にならない状態となり、容易に機体の旋回が行える。
【0035】
前記苗植付ホッパー3は、左右一定間隔位置に配置の2条植え構成として、左右後輪10間の後側幅内に配置している。車体2の後部には、ターンテーブル構成に複数の苗カップ19を連接して回転搬送する苗供給装置20を設け、この苗供給装置20の機体後側の下側に苗植付ホッパー3を左右に2つ配置している。この苗カップ19を左右方向へ回転することによって、車体2上部の補助苗受台21に予め搭載されている苗トレイから苗を取出しながら各苗カップ19へ供給する。この各苗カップ19が回転して苗植付ホッパー3の上側に位置したときは、カップ底部のシャッタが開かれて、収容していた苗を下側の苗植付ホッパー3に落下供給する構成である。
【0036】
この苗植付ホッパー3は、苗植ブラケット22に対して左右へ開閉回動可能に設けられて、上側に前記苗カップ19から供給される苗を落下案内するホッパ23を有し、苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としている。前記苗植伝動ケース24は車体2フレーム部に固着して、前記伝動ケース7部から伝動構成される。この伝動機構の一部によって回転されるクランクアーム軸27によってロッド28を介して上側のリンクアーム25が昇降回動されて、苗植付ホッパー3を上下方向に軌跡Pにて植付作動する。
【0037】
前記苗植ブラケット22のレバー29と下側のリンクアーク26の基端部に形成のアーム30との間は操作ワイヤ31で連結して、苗植付ホッパー3の昇降に伴って、この苗植付ホッパー3を開閉するものである。前記クランクアーム軸27の回転によって苗植付ホッパー3を略楕円形状の植付軌跡Pを描いて昇降させると共に、この上死点直前位置から下降する行程ではこの苗植付ホッパー3を閉鎖状態とし、最下降位置で開き上昇行程は開いたままである。
【0038】
左右苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に装着した位置から大きく左右外側方に変位した位置になるように構成している。即ち、左苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としているが、該平行リンクアーム25、26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体左外側に向けて折り曲げた構成としており、該平行リンクアーム25、26の先端部に装着される左苗植付ホッパー3の前方には空間部Kが構成された構造となっている。後述の左後輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部Kに左後輪10を位置させることができ、左苗植付位置のすぐ近傍に左後輪10を配置することができる。同様に、右苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としているが、該平行リンクアーム25、26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体右外側に向けて折り曲げた構成としており、該平行リンクアーム25、26の先端部に装着される右苗植付ホッパー3の前方には空間部Kが構成された構造となっている。後述の右後輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部Kに右後輪10を位置させることができ、右苗植付位置のすぐ近傍に右後輪10を配置することができる。従って、畝Aの左右端のぎりぎりの位置に苗を植付けが行える。
【0039】
次に、左右後輪10の左右位置調節(トレッド調節)の構成について説明する。
伝動ケース7の両側に張出する左右円筒状ケース9周りに回動する左右回動筒部9aに各々上下揺動する左右車輪支持体1を設け、この左右車輪支持体1の後端部に各々設けた左右車軸11に後輪10を設けているが、左右回動筒部9aの左右両端部側の内部には各々左右車輪支持体1の基部に各々固定した左右移動筒体9cが嵌入支持されており、左右取っ手付きボルト9dにて左右移動を固定している。左右後輪10の左右位置調節(トレッド調節)を行う場合には、左右取っ手付きボルト9dを緩めて、左右回動筒部9aに対して左右移動筒体9cを機体左右方向に移動させて左右後輪10の位置調節を行い、再び左右取っ手付きボルト9dを締めて左右回動筒部9aに左右移動筒体9cを固定する。このようにして、左右後輪10は、自由にその左右位置調節(トレッド調節)を行うことができる。図に示すように、後輪10を車輪支持体1の内側に付ければトレッドは最短となる。
【0040】
ここで、1畝に往復4条植えを行う例を説明すると、左後輪10は左車輪支持体1の内側に装着して機体中心からの距離を450mmとし(このとき、左後輪10は左苗植付ホッパー3の平行リンクアーム25、26前方の空間部Kに位置させて、左苗植付位置のすぐ近傍に左後輪10は配置される)、右後輪10は機体中心からの距離を725mmに設定する。そして、左右植付ホッパー3の植付位置及び左右鎮圧具4の苗鎮圧位置は、機体中心から250mmに設定する。そして、左右後輪10を畝Aを跨がして各々畝溝を走行するようにして、各部を駆動し往路行程で1条目と3条目を植付け、復路行程で2条目と4条目を植付けて、1畝に往復で4条を植付けることができる。
【0041】
左右苗植付ホッパー3の後方には、各々、これら左右苗植付ホッパー3によって土壌面(畝)Aに植付けられた苗の左右側方を鎮圧及び覆土する左右鎮圧具4を設ける。この鎮圧具4は、各苗植付位置に対して左右一対の、左右対称状構成とし、支軸32の周りに回転自在に構成して、前側及び上側を左右に開くように傾斜させた構成としている。前記車体2には座席33や、ステップ34等を配置して、作業者が搭乗して補助苗受台21の苗を苗供給装置20の苗カップ19へ補給することができる構成としている。尚、鎮圧具4の前側の開き角度をボルト4aを緩めて調節できる構成としており、圃場条件や苗条件に応じて、鎮圧具4の圃場に植付けた苗に対する土寄せ量を変更できるようにして、圃場の条件や色々な苗に対応できるようにしている。
【0042】
次に、主として図4と図5に基づいて、左右鎮圧具40の装着構成及び作用について説明する。
前記車体2の後部に左右取付ブラケット38によって取付ける鎮圧フレーム39に、横方向に沿って外周面が正六角軸で内部に円形状の貫通孔を形成した左右一対の左右鎮圧アーム軸40L・40Rを、内側端を向かい合わせた状態で断面が円形状の回動軸40aに回動自在に設けている。そして、左右鎮圧具4は、この左右鎮圧アーム軸40L・40Rに各々正六角穴で嵌合した左右アームボス42に前端を溶接固定した左右鎮圧アーム41の後端に設けている。この左右アームボス42を左右セットボルト43の締め付けによって、横軸方向へ移動固定可能に設け、左右鎮圧具4の鎮圧位置を左右に移動調節することができる。また、左右鎮圧具4は、上記の構成により各々独立して上下動できる。尚、左右鎮圧アーム軸40L・40Rの内側端を向かい合わせた位置には座金40bを回動軸40aに回動自在に設け、左右鎮圧アーム軸40L・40Rが互いに干渉しないで回動できる構成としている。また、回動軸40aは、鎮圧フレーム39の左右両端部に設けた前記左右取付ブラケット38を下方に延設した左右支持アーム38aにて支持架設して固定している。
【0043】
左右鎮圧アーム41の後端部を各々背面視で門形状のリヤフレーム44に形成して、このリヤフレーム44の左右両側部に左右一対の鎮圧具(鎮圧輪)4を配置して、支軸32で回転自在に支持している。このリヤフレーム44は、畝Aに植付けた苗の上部を左右にまたいで前進方向へ移動することができる構成となっている。又、このリヤフレーム44上には支持アーム46によって、複数個のバランスウエイト45を嵌合支持して、バランスウエイト45の装着数を変えて鎮圧圧力を調整できる構成としている。
【0044】
また、鎮圧アーム41は鉄製のパイプ材41aの機体内側に鉄製の補強平板41bを溶接固定して構成されており、アームボス42とパイプ材41aと補強平板41bとがトラス状になるように構成して、鎮圧アーム41の強度を上げ、軽量で強固な構成とすることができ、安価でローリング検出精度の良い制御機構の構成部材を構成できる。また、補強平板41bはパイプ材41aの機体内側、即ち、パイプ材41aの苗植付ホッパー3が上下作動している側と反対側に設けているので、補強平板41bが苗植付ホッパー3の上下作動の邪魔にならず、全体をコンパクトな構成にしながらも鎮圧アーム41の強度を上げることができる。
【0045】
上記のようにして左右鎮圧輪4の左右上下支持装置Sが構成されている。
尚、左右アームボス42を各々左右鎮圧アーム軸40L・40Rに固定する左右セットボルト43をグリスニップルが一体に装備されたボルトにすると、左右アームボス42と左右鎮圧アーム軸40L・40Rとの間にグリスを容易に装填することができ、条間調節時の左右鎮圧輪4の左右移動が容易に行える。
【0046】
前記左右各鎮圧アーム軸40L・40Rの外端部(左右支持アーム38aの外側に延設した部位)には各々一体回動する左右センサアーム47を設け、各センサアーム47の上端部は各々が平行状になるように構成されており、一方のセンサアーム47にローリング制御バルブ48を切替え作動させるセンサワイヤ50のアウターワイヤ受け50aを装着し、他方のセンサアーム47にセンサワイヤ50のインナーワイヤ受け50bを装着している。従って、左右鎮圧具4が同方向に上下動する時は、各センサアーム47の上端部間隔が変化しないので、センサワイヤ50はローリング制御バルブ48を切替え作動しない。また、左右の畝A上面の高さが異なって左右鎮圧具40の上下移動量が異なる場合には、各センサアーム47の上端部間隔が変化するので、センサワイヤ50はローリング制御バルブ48を切替え作動する。例えば、右鎮圧具4が左鎮圧具4の位置よりも上動した場合(畝Aは機体左右方向で右側が高い場合)には、各センサアーム47の上端部間隔が狭まり、センサワイヤ50のインナーワイヤIN−Wが押されてローリング制御バルブ48を切替え作動して、ローリングシリンダ17を縮小作動させ、左後輪10を下動させて機体が畝に機体左右方向で平行になるようにローリング制御する。逆に、左鎮圧具4が右鎮圧具4の位置よりも上動した場合(畝Aは機体左右方向で左側が高い場合)には、各センサアーム47の上端部間隔が広がり、センサワイヤ50のインナーワイヤIN−Wが引かれてローリング制御バルブ48を切替え作動して、ローリングシリンダ17を伸ばす方向に作動させ、左後輪10を上動させて機体が畝に機体左右方向で平行になるようにローリング制御する。
【0047】
また、各センサアーム47の平行状に設けられた上端部には、各々上下方向の長穴47aが各々設けられており、該各長穴47aに各々上記のアウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bが上下方向に移動調節自在且つ締め付けボルト50cにて位置固定自在に設けられている。
【0048】
従って、締め付けボルト50cを緩めて、各アウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bを各センサアーム47の下方向に移動させて固定すると、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化に対して、インナーワイヤーIN−Wの押し引き量が少なくなるので(各センサアーム47の回動支点とアウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bとの距離KLが短くなり、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化が大きくてもインナーワイヤーIN−Wの押し引き量は小さくなるので)、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化が大きくないとローリング制御が作動しないような鈍感なローリング制御状態となり、逆に、締め付けボルト50cを緩めて、各アウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bを各センサアーム47の上方向に移動させて固定すると、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化に対して、インナーワイヤーIN−Wの押し引き量が多くなるので(各センサアーム47の回動支点とアウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bとの距離KLが長くなり、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化が小さくてもインナーワイヤーIN−Wの押し引き量は大きくなるので)、左右鎮圧輪4の上下作動量の変化が小さくてもローリング制御が作動するような敏感なローリング制御状態となる。よって、センサワイヤ50を各センサアーム47から外すことなく、単に各アウターワイヤ受け50a及びインナーワイヤ受け50bを各センサアーム47上をスライド移動させるだけで簡単にローリング制御の感度調節を行うことができる。尚、各センサアーム47には、感度調節位置を示すマークMが刻印されている。
【0049】
尚、アウターワイヤ受け50aにはインナーワイヤーIN−Wの張り方向に沿って凹み部50a’が設けてあり、該凹み部50a’にインナーワイヤ受け50bの係合片部50b’が嵌り込んだ状態となっており、左右鎮圧輪4の上下作動量が大きく変動しても、インナーワイヤ受け50bの係合片部50b’がアウターワイヤ受け50aの凹み部50a’の前後端に接当して、各センサアーム47の平行状に設けられた上端部の開き量は規制された構成となっている。即ち、各センサアーム47は、ローリング制御検出に必要な量だけ作動する構成となっている(各センサアーム47が大きく開いて、インナーワイヤーIN−Wを切ってしまうような事態を回避できる)。
【0050】
上記のように鎮圧フレーム39の左右外側に設けた左右支持アーム38aの内側に左右鎮圧アーム軸40L・40Rを設けて、この左右鎮圧アーム軸40L・40Rに各々嵌合した左右アームボス42に前端を溶接固定した左右鎮圧アーム41の後端に左右鎮圧具4を設け、この左右アームボス42を左右セットボルト43の締め付けによって、横軸方向へ移動固定可能に設けて、左右鎮圧具4の鎮圧位置を左右に移動調節することができる構成とし、且つ、左右センサアーム47を左右鎮圧アーム軸40L・40Rの外側端に配置させた構成としたので、左右鎮圧輪4を鎮圧フレーム39の幅内で大きく左右移動調節することができ、条間調節の領域が広がり、色々な畝や色々な苗に対応して苗植付作業が行える。即ち、多様な圃場条件や苗条件に応じた苗植付作業が行える。
【0051】
また、左右センサアーム47を上方に向けて設けその上端部は各々が平行状になるように構成し、一方のセンサアーム47にローリング制御バルブ48を切替え作動させるセンサワイヤ50のアウターワイヤ受け50aを装着し、他方のセンサアーム47にセンサワイヤ50のインナーワイヤ受け50bを装着してローリング制御バルブ48を切替え作動する構成とし、この左右センサアーム47とセンサワイヤ50の連結部を鎮圧フレーム39の左右中央位置で主フレーム2aの上方位置としたので、左右傾斜を検出する部位の前後長さを短く構成できて機体をコンパクトで簡潔な構成とすることができ、且つ、主フレーム2aが左右センサアーム47とセンサワイヤ50の連結部を保護する作用をし、機体の左右ローリング制御が適切に行える。
【0052】
また、昇降油圧シリンダ15を伸縮することによって左右両後輪10を車体2に対して同時に昇降させる昇降制御は、機体と圃場面(畝A上面)との間隔を検出する昇降センサ5の検出により、昇降制御バルブ49を切替えて行う。
【0053】
即ち、鎮圧フレーム39の前部に溶接固定した支持アーム39aの先端に昇降センサ支持板5aを機体左右方向に設けた支持軸5bにて回動自在に支持し、該昇降センサ支持板5aの右側に昇降センサ5をボルト5cにて左右位置調節自在に設けている。そして、昇降センサ5の圃場面(畝A面)の高さ変動検出にて、支持軸5b回りに昇降センサ支持板5aが回動すると、その回動を連結ロッド5dを介して昇降制御バルブ49が切替え作動する構成となっている。
【0054】
即ち、昇降センサ5の下端の圃場接地部5’が圃場面(畝A面)と接地しており、圃場面(畝A面)が高くなると、昇降センサ5の下端の圃場接地部5’が上動して、昇降センサ支持板5aを支持軸5b回りにイ方向に回動させ、連結ロッド5dを押して昇降制御バルブ49を切替え作動し、昇降油圧シリンダ15を伸びる方向に作動させて左右後輪10を下動させて、機体と圃場面(畝A面)との間隔が適切な位置になるように昇降制御する。逆に、圃場面(畝A面)が低くなると、昇降センサ5の下端の圃場接地部5’が下動して、昇降センサ支持板5aを支持軸5b回りに反イ方向に回動させ、連結ロッド5dを引いて昇降制御バルブ49を切替え作動し、昇降油圧シリンダ15を縮小する方向に作動させて左右後輪10を上動させて、機体と圃場面(畝A面)との間隔が適切な位置になるように昇降制御する。
【0055】
そして、昇降センサ5の下端の圃場接地部5’は、右鎮圧具4の前方に位置するように左右位置調節して設け、昇降センサ5の下端の圃場接地部5’が接地する圃場面(畝A面)に右苗植付ホッパー3が苗を植付け、その後を右鎮圧具4が鎮圧作用する。
【0056】
また、昇降センサ5を機体の左右方向で右側(右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置の前方及び右鎮圧具4の前方)に位置させた理由は、前記ローリングシリンダ17を機体の左側に配置して左後輪10を上下動させて機体のローリング制御を行う構成としたので、該ローリングシリンダ17を配置した側と機体左右方向で反対側の右側(機体のローリング制御で上下動する左後輪10と機体左右方向で反対側の右側)に昇降センサ5を配置することにより、ローリング制御時に機体の右側は大きく上下動しないので、昇降センサ5にて正確な圃場面(畝A面)の検出が行えて、ローリング制御にあまり影響を受けずに適正な機体の昇降制御が行えて、適切な苗植付け深さで適切に苗の植付け作業が行える。
【0057】
また、支持軸5bと昇降センサ5下端の圃場接地部5’(右鎮圧具4の鎮圧位置)との距離L1よりも、支持軸5bと左鎮圧具4の鎮圧位置との距離L2の方が長くなるように、支持軸5bを配置している。これは、ローリングシリンダ17が機体左側に設けられているので、機体左側はローリング制御の影響による上下動の変化量が大きいが、機体右側はローリング制御による影響が少ないことから、支持軸5bを機体左右中央位置から右側に変位して配置することにより、昇降センサ5がローリング制御の影響を受け難くし、適正な機体の昇降制御が行えるようにしたものである。
【0058】
一方、前記各左右センサアーム47の基端部には、各リフトワイヤ51のインナーワイヤ51a後端を連結して、各リフトワイヤ51のインナーワイヤ51a前端を機体に固定し、アウタワイヤ51b前端を左右回動筒部9aに基部を固定した左右ハウジングアーム14の中途部に位置調節自在に連結している。尚、各リフトワイヤ51の各アウターワイヤ51bの後端は、各々左右支持アーム38aに位置調節自在に固定されている。
【0059】
従って、この各リフトワイヤ51の連結によって、前記左右車輪支持体1の下動(左右後輪10の下動)により、左右回動筒部9aが回動して左右ハウジングアーム14が後方に回動するので左右インナーワイヤ51aを引き、左右のセンサアーム47がロ方向に回動し、左右各鎮圧アーム41を上方に向けて強制回動することができ、機体旋回時に左右後輪10を最下動させて機体を上昇させた時、自動的に左右鎮圧具4が上方に収納回動されて機体の旋回が容易に行える。尚、各リフトワイヤ51のインナーワイヤ51a後端と左右センサアーム47の連結部には、長穴51cで構成した融通機構が設けられており、通常の左右後輪10の昇降制御及びローリング制御による下動では左右鎮圧具4が上方に収納回動されず、機体旋回時の左右後輪10を大きく下動させた時にのみ自動的に左右鎮圧具4が上方に収納回動される構成となっている。
【0060】
そして、各リフトワイヤ51は鎮圧フレーム39の左右外側に配置した左右センサアーム47に連結しているので、各リフトワイヤ51の調節部が鎮圧フレーム39の左右外側に位置し、左右鎮圧輪4の上動作用位置調節が容易に行えて、作業性が良い。
【0061】
また、右鎮圧具4に連結された右センサアーム47を引く右リフトワイヤ51は、左後輪10を上下動させる左回動筒部9a側に連結されており、左鎮圧具4に連結された左センサアーム47を引く左リフトワイヤ51は、右後輪10を上下動させる右回動筒部9a側に連結されている。即ち、左後輪10の下動で右センサアーム47(右鎮圧具10)を上動させ、右後輪10の下動で左センサアーム47(左鎮圧具10)を上動させる構成としている。これは、前記のように左右鎮圧具10の相対上下高さ変動による左右センサアーム47の相対位置変動にてローリング制御バルブ48を切替えてローリングシリンダ17を作動させてローリング制御を行なう構成としたから、もし、左後輪10の下動で左センサアーム47(左鎮圧具10)を上動させ、右後輪10の下動で右センサアーム47(右鎮圧具10)を上動させる構成にすると、右鎮圧具4が上動して右センサアーム47が変位した状態でローリング制御が作動して機体が水平状態になっている時に、機体旋回の為に左右後輪10を下動させると前記ローリング制御でローリングシリンダ17が作動したままで左右後輪10は下動し、機体最上昇時に機体が傾斜した状態となってしまう。そこで、左後輪10の下動で右センサアーム47(右鎮圧具10)を上動させ、右後輪10の下動で左センサアーム47(左鎮圧具10)を上動させる構成とすることにより、機体旋回又は機体移動の為に左右後輪10を下動させると、左右リフトワイヤ51にて左右センサアーム47がローリングシリンダ17を中立位置に戻すようにローリング制御バルブ48を切替えて、機体は水平状態で上昇する。従って、旋回時に機体は水平状態となり良好に且つ容易に旋回作業が行える。また、機体をリフトして圃場間を移動する場合(路上走行の場合)も機体は水平状態となり良好に且つ容易に機体を走行させることができる。
【0062】
前記鎮圧アーム41を左右に移動調節する時は、この調節操作を容易にするために、鎮圧アーム軸40の周りに切欠目印55を形成しておき、この目印55の位置にアームボス42の位置をあわせることによって的確な植付条位置への鎮圧位置決めを行うことができる。
【0063】
左右の前輪13の間となる機体の前端部には畝Aの上面に接地して該畝Aの終端を検出する畝終端センサ80を設け、該畝終端センサ80は下方に向けてバネで付勢した状態となっており、機体の前進により畝Aのないところに到達して畝終端センサ80がバネの付勢力で下動して、畝Aの終端に到達したことを検出する構成となっている。この畝終端センサ80による畝Aの終端の検出に基づいて、主クラッチを自動的に切って左右の後輪10の駆動と左右苗植付ホッパー3並びに苗供給装置20の駆動を停止し、機体を停止させると共に、警報(例えばブザー等の警音)を出して作業者に告知する。これにより、座席33に座る作業者は、機体の進行方向に対して後ろ向きとなり、苗補給作業に集中しているため機体の前方を確認しにくく、機体が畝の終端に達したことに気づかず、周囲の構造物への衝突等の事故を発生させるおそれがあるが、前記畝終端センサ80により畝の終端で機体を自動停止すると共に警報で畝の終端に達したことを告知するため、安全に作業が行え、また機体の前方の状況及び畝の終端の位置を気にせずに苗供給装置20への苗補給作業を集中して行え、植付作業能率が向上する。
【0064】
この畝終端センサ80は、機体の左右方向右側位置で昇降センサ5下端の圃場接地部5’及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4の前方に配置されている。即ち、畝終端センサ80及び昇降センサ5下端の圃場接地部5’及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4は、機体左側に配置されたローリングシリンダ17とは機体左右方向で反対側の機体右側に機体前後方向で一直線上に配置された構成となっている。従って、ローリングシリンダ17を配置した側と機体左右方向で反対側の右側(機体のローリング制御で上下動する左後輪10と機体左右方向で反対側の右側)に畝終端センサ80及び昇降センサ5下端の圃場接地部5’及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4を機体前後方向で一直線上に配置することにより、ローリング制御時に機体の右側は大きく上下動しないので、畝終端センサ80にて正確な畝Aの終端を検出でき、昇降センサ5にて正確な圃場面(畝A面)の検出が行えて、ローリング制御にあまり影響を受けずに正確な畝Aの終端を検出による各部停止や報知が行え、また、適正な機体の昇降制御が行えて、適切な苗植付け深さで適切に苗の植付け作業が行える。尚、畝終端センサ80も他の部材と同様に、ボルト80aを緩めて畝終端センサ80の基部を機体左右方向に移動調節して再びボルト80aにて固定することにより、機体左右方向に位置調節をすることができる。
【0065】
図10は本機側バッテリー6bの他の例を示す作用説明用側面図であり、上例のコードリール6dによる充電方式に代えて、本機側バッテリー6bを容易に着脱できる構成にしたものである。即ち、ボンネット6cの前部に機体左右方向の軸心回りに開閉自在の開閉部6c’を設け、該開閉部6c’部分に本機側バッテリー6bを搭載する構成としている。そして、本機側バッテリー6bは、上面に把持部6eを設け、下面にソケット6fを設けている。
【0066】
従って、本機側バッテリー6bの把持部6eを持って上方に引き上げると、ソケット6fが機体側の差込口から抜けて、本機側バッテリー6bを自由に取り外すことができ、本機側バッテリー6bのソケット6fを充電装置に差し込んで充電することができる。そして、充電が終了すると、充電装置から本機側バッテリー6bを外して、再び、本機側バッテリー6bのソケット6fを機体側の差込口に差し込んで機体に搭載する。よって、本機側バッテリー6bの着脱が容易に行えて、作業性が良い。
【0067】
また、開閉部6c’とボンネット6cの本体側との間には鍵付きロック部6gを設けてあり、本機側バッテリー6bを機体に搭載時に盗難されることを防止する構成となっている。
【0068】
図11は苗植付ホッパー3の他の例を示す側面図であり、苗植付ホッパー3の相互に開閉する両開閉片3a・3bの片側の開閉片3aの先端のみにマルチカッタ刃3cを装着したものである。従来は、両開閉片3a・3bの先端に各々マルチカッタ刃を装着していた為に、両カッタ刃間に泥土が付着して両開閉片3a・3bが適切に閉じなくなることがあり、適切な苗植付け作業が行えなくなる事態があった。この実施例によると、片側の開閉片3aの先端のみにマルチカッタ刃3cを装着したので、両開閉片3a・3bの開閉が適切に行えて良好な苗植付け作業が行える。また、マルチカッタ刃3cの長さを変更することにより、圃場条件や植付け条件に応じたマルチカット作業が行えて、苗植付け作業の適応性が向上する。更に、マルチカッタ刃3cを外しておけば、マルチフィルムを敷設していない畝でも苗植付け作業が行えて、圃場適応性が高いものである。
【0069】
図12は機体のローリング制御の他の例を示す背面図であり、機体前後方向で左右後輪10と左右前輪13の間に左右畝ガイドロール81を配置し、該左右畝ガイドロール81にて畝に対する機体の左右傾斜を検出し、畝に対する機体の左右方向の傾斜を補正制御して、畝に苗を適正に植付けるようにしたものである。該左右畝ガイドロール81は、機体に左右傾動自在に軸82にて枢支した揺動体83に設けた縦傾斜軸84に回転自在に設けてあり、畝Aの左右側面に接当して回転するように設けている。そして、該揺動体83に基部を固定した揺動アーム85の先端とローリング制御バルブ48とをリンクロッド86を介して連係し、畝Aに対する機体の左右方向の傾斜を畝Aの左右側面に接当して回転する左右畝ガイドロール81にて検出し、ローリング制御バルブ48を切替えてローリングシリンダ17を伸縮作動させて左後輪10が機体に対し上下動し、機体が畝Aに対して平行になるように左右傾斜制御する。
【符号の説明】
【0070】
1 車輪支持体
15 アクチュエータ(昇降油圧シリンダ)
17 アクチュエータ(ローリングシリンダ)
10 駆動輪(後輪)
1L 左支持部(左側板)
1R 右支持部(右側板)
11 走行電動モータ
11a モータ駆動軸
10a リム
1S 収納部
1C バッテリー
h2 配線
1L’ 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に基部が回動自在に枢支された車輪支持体(1)を機体に装備したアクチュエータ(15・17)にて回動し、該車輪支持体(1)の先端部に装着した駆動輪(10)を上下作動させて機体を昇降又は左右傾斜作動させる構成とした苗植機において、車輪支持体(1)の先端部に設けた左右支持部(1L・1R)の間に駆動輪(10)を配置して、該左右支持部(1L・1R)の片方の支持部(1L)に固定した走行電動モータ(11)のモータ駆動軸(11a)を駆動輪(10)のリム(10a)に連結すると共に、モータ駆動軸(11a)又はモータ駆動軸(11a)と同軸心の支持軸をリム(10a)の走行電動モータ(11)と反対側に延設して他方の支持部(1R)で回動自在に支持したことを特徴とする苗植機。
【請求項2】
車輪支持体(1)の基部に箱状の収納部(1S)を形成し、該収納部(1S)から左右支持部(1L・1R)を延設したことを特徴とする請求項1記載の苗植機。
【請求項3】
収納部(1S)にバッテリー(1C)を収納し、左右支持部(1L・1R)間に走行電動モータ(11)への配線(h2)を設けたことを特徴とする請求項2記載の苗植機。
【請求項4】
モータ駆動軸(11a)又はモータ駆動軸(11a)と同軸心の支持軸を回動自在に支持する支持部(1R)の先端部に先端に向けて開放する切り欠き部(1L’)を形成し、該切り欠き部(1L’)に沿ってモータ駆動軸(11a)又はモータ駆動軸(11a)と同軸心の支持軸を移動及び固定自在に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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